• 陶曲

【陶曲】同盟モーターショー

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/08/24 19:00
完成日
2018/09/18 02:37

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●モーターショーの開催決定
 同盟領は蒸気工業都市「フマーレ」にて。
「魔導トラックに必要なのはどこでも走れる踏破性だよ。つまり、ユニバーサル・モータードライブ・ギアだ」
「いーや、古いよ。いま魔導トラックに求められているのは快適な居住性、スーパーサルーンさ」
 どこぞの顔役の園遊会にてそんな熱い口論がなされている。いかにも現場たたき上げ風の男性といかにも商人風の男だ。
「いやいや。魔導トラックにこれまで欠けていたものは洗練されたデザイン。誰もがこの車の所有者になりたいと思わせるプライオリティ溢れるアーバンスタイルだね」
「おほほほほ。魔導トラックをそんな下品なものと捉えていてはこれからの需要は開拓できませんわ。これからはゴージャスでグラマラスでありませんと。いわゆるラグジュアリースタイル」
 そこに気取った男とケバいご婦人が。
「デコならこれまでにも方向性はありましたね」
「馬力だよ」
 執事風の保守派な老人が加わり、男は背中で語る風熱血男性が加わる。
「そんじゃ、魔導トラックの最先端を展示するイベントでも開きましょうかね」
「あら、いいわね」
「それがいい。『同盟モーターショー』と銘打ち大々的にやろう」
 わっと盛り上がるところ、別の男が会話に加わった。
「それなら俺のとこも参加するぜ? 戦闘時の被弾経始を最大限に考慮して……」
 ――びくり。
 騒いでいた者たちが一斉に固まった。
「戦闘的なものはダメだ!」
「ど、どうして?!」
 止められ理由を求める先の男。
「……以前、軍への採用を目指し【可変魔導トラック「BM‐X」】を開発していたところが歪虚に狙われただろ?」
 元「十三夜(ギボス・ムーン)」のガリアや技術者たちが襲われ新型ビルドムーバーを奪われている。
「ガリアさんらは全員死亡。あの悲劇だけは繰り返したくない」
 しんみりする中、誰かが声を挙げた。
「なあ。今回のモーターショー、また歪虚に襲われないか?」
「ふむ、一理あるが……護衛を頼めばいいだろう」

●そのころのルモーレ
「ひゃっ、ほー!」
 荒野を疾走する【可変魔導トラック「BM‐X」】――いや、マイナスマイナスマテリアルを纏った【可変歪虚トラック「BM‐X」】の運転席で、堕落者「ルモーレ」がアクセルを踏み込む。
 ――ぶろぉん!
 小砂利を跳ねて加速するBM‐Xこと「ビルドムーバー」。
「カカカ……。面白れぇ。チェスの手駒は失ったが新しいオモチャはやっぱりいいねぇ」
 楽しそうに運転するルモーレ。すでに腰に提げた以前までのオモチャ――オリーブハイプ「♭」には意もくれない。
 ――したたっ。
「ん?」
 その横に、魔導トラックより少し小さいくらいの黒豹――といっても、明らかに生物ではない。表面は泥のようである――が現れて並走しはじめた。
 で、その黒豹がくいっと横に首を一つだけ振る。
「……おもしれぇ」
 ぶろん、と方向転換。
 そしてしばらく走ったところでは、先のような黒豹泥歪虚が幌馬車の商隊を襲っていた。
 護衛には魔導バイク部隊がついていた。黒豹泥歪虚と交戦している。
「こりゃ……初華を誘わなくてよかったねぇ」
「何を言うか。戦線は維持されているではないか!」
 いつも南那初華(kz0135)のPクレープの隣で自転車修理屋台を開いている「戦場詩人」ことダイン・マイルと「兵飛神速」の赤いバイクがシンボルのマッハ・リーが言い合う。
 実際、黒豹泥歪虚三匹はバイク護衛団の奮闘で抑えていた。このまま逃げ切れるかどうかの踏ん張りどころだった。
「いや……新手だよ。多分」
「なに?!」
 ダインに言われたマッハが首を巡らせると、上がっていた土煙から一気に歪虚トラックがばうんと加速して来た。
 そのまま突っ込んで来ると見て斉射するが、歪虚ビルドムーバーはジャンプしつつ人型に変形。
「何だと?!」
 見上げた中空に、ガニ股で跳躍頂点に達するするビルドムーバー。
 そして金田パースもといド迫力で手にした銃を構え射撃。バイク部隊の数人が倒れる。
「着地間際を狙え!」
 ――どしゃっ、ぶろん……。
「なんだとぉ?!」
 ビルドムーバー、着地。しかし衝撃に耐えるため動きを止めることなしに歪虚トラックに変形し、着地の衝撃をそのまま推進力にしてその場を後にした。動きが止まると読んでいたマッハとダインの射撃は外れる。
「まずいね。多分狙いは俺らだ。……ここは商隊から引き離すのが得策だね」
「うむむ。仕方あるまい」
 ダインの言葉に従うマッハ。その逃げ足の速いこと。
「ほう、おもしれぇ」
 ついていくルモーレ。

 この後、バイク部隊は命からがら逃げおおせたという。

リプレイ本文


 同盟領は蒸気工業都市「フマーレ」の広場に多種多様な魔道トラックが集結していた。スポーティなものや、大きなタイヤがついたものなどさまざまな車が並んでいる。
 その広場から離れた、連結見張り櫓の上。
「楽しそうだね~」
 フラ・キャンディ(kz0121)が手すりに寄りかかって眺めながら呟く。
「そうだね。ワクワクするよね。暗いムードも明るくなるし」
「し、仕事が終わったら行ってみますかぁ」
 手すりに腰を預けた姿勢で、背中越しに会場を見やる霧雨 悠月(ka4130)がクスクス笑っている。フラの隣にいる弓月・小太(ka4679)はさっそく誘いの言葉を掛ける。
「うんっ!」
「十三夜のガリアさんが生きていれば、間違いなく参加してたんでしょうけどね~」
 元気に返事するフラとは対照的に、少し離れた場所にたたずんでいるメルクーア(ka4005)は溜息交じりで元気がない。
「改造車強奪時に皆殺し、だったか?」
 カイン・A・A・マッコール(ka5336)が声を掛け確認する。
「そうなるわねー。全部アイツの仕業」
 会場とは反対、フマーレの外側を警戒しているキーリ(ka4642)の気の抜けたような返事。かなりご機嫌斜めのようで。
「技術者皆殺しの件はいかにも歪虚ってところで、とうてい許せるってモンじゃねぇぜ? そろそろアイツの……」
 トリプルJ(ka6653)が帽子のつばを指で押し上げにぃと不敵に笑ったときだった。
「トラックによるレースと聞いて楽しみにしていたのだが、とんだヤツに目を付けられてるみたいだね」
「いや、レースじゃねぇだろ展示会だろ?」
 アルバ・ソル(ka4189)の一言に反応してすぐさま突っ込むJ。
 そこに、遠方監視を続けていたキーリのつぶやき。
「来たわよ、レースのお相手が」
 ばっ、と皆が郊外側を監視するキーリの方に移った。
 確かに、遠くに砂煙が立っている。
 通常のよりも大きなヒョウを従えた魔道トラックらしきものが急接近していた。
「ガリアさんの弔い合戦ね……みんな、打ち合わせ通りにいくわよ!」
 思うところのあるメルクーアが振り向き叫ぶ。
「トラックによるレースだね?」
「ああ、そういうこった。街ン中にゃ入らせねぇ」
 出撃用意するアルバとJがにやり。
「シグレ、行こう! 思いっ切り歌うよ」
「二段構えの作戦だったな」
 悠月が櫓横の屋根に飛び乗ってきたイェジド「シグレ」(ka4130unit001)にまたがる。カインは反対の屋根に飛び乗ってきたイェジド「-Wild Hunt-」(ka5336unit002)に向かう途中で振り向き作戦を確認。
 そこに、思うところのあるメルクーア!
「そうよ! もちろん侵入阻止もだけど……」
「いーかげん、仕留めたいわよね。ルモーレは」
 ふん、と鼻息荒くキーリ。
「無粋を戒めるのはやぶさかでもない。……アルバ・ソル。ローゼス、出る」
 アルバ、偽装櫓内に格納していた金色のR7エクスシア「ローゼス改」(ka4189unit002)に乗り込む。
「それだけじゃねぇだろ……ついでにBM‐Xも取り戻す!」
 Jも櫓に隠していたコンフェッサー(ka6653unit005)に乗り込み気合いを込めて言い放つ!
「頼もしいわね……最っ高ーの仲間じゃない! フラさんもよろしく」
「もちろんだよ!」
 メルクーアとフラは櫓の背後に隠していた魔導アーマー「プラヴァー」二機にそろって搭乗。メルクーアが緑の機体のギムレット(ka4005unit002)で、フラがロリポップだ。
「ともあれ、今回で終わりに出来るようがんばりますよぉ。ダインスレイブ、出るのですぅっ」
 小太、近くの偽装櫓に移り内部に隠していた大口径砲換装カスタムのダインスレイブ(ka4679unit003)に乗り込み内部から出て来た。
「じゃ、撃ってる間によろしくねー」
 キーリはラムルタフル(刻令ゴーレム「Volcanius」)(ka4642unit002)だ。ある程度前進すると砲撃開始。
 フマーレ郊外の戦いの火ぶたが切って落とされた。



「そら、どうせ乱戦になったら持ち味生かせないんだからドンドン砲撃しなさい」
 ――ドゥン、ドゥン……。
 キーリの指示でラムルタフルが24ポンドゴーレム砲を半自動照準で派手にぶっ放す。
「まずは砲撃でよぉ」
 ――ドゥッ、ドゥッ!
 小太は味方の誤射を防ぐべくダインスレイブの2門の滑腔砲で山なりの砲撃。給弾・支持を行う背部の補助腕が次弾をセットする。
 この手始めの砲撃により、敵に動きがあった。

「へ、やはりいやがったか。……行ってこい」
 接近していたルモーレ、たっぷり距離があるうちからの牽制射撃を挑発と取り、こちらからも挑発することにした。
 ちょっとBM‐Xの速度を落とし、代わりに取り巻きの豹型泥歪虚四匹を突っ込ませた。そして自身は右へと転進する。

 この動きに反応したのは、悠月。
「そうだよね。モーターショーなんて面白そうなこと、ルモーレが放っておくはずはないよね」
 BM‐Xの操縦席に陶器のような皮膚をした薄ら笑いの似合う細身の青年――ルモーレの姿を確認して笑みを浮かべている。
「シグレも忘れてないだろ? このエンジン音……前回は痛み分けだったけど、今回はそうはいかない。来るなら相応の覚悟をして貰うよ」
 だっ、と横に曲がってルモーレだけを追う。

「ま、抜けてくるだろうな」
 悠月の背後にはカインがいた。
 一直線に加速してくる豹型泥歪虚に対応する。
 まずは毛が伸び放題で灰色気味になったワイルドハントの痩せた体をポンと叩く。
 任せた、の合図である。
 ワイルドハント、がっと噛みこんだ口の動きで獣機銃「シエージュR4」の引き金を引いた!
 ――ドッ……ドッ!
 まっすぐ伸びる射線。
 が、外れた。
 泥豹の左翼隊二匹、カインらに気付いてやってくる!
「……それで、いい」
 ぎらり、と睨み斬魔刀「祢々切丸」を構えるカイン。
 そして意図する位置へと相棒を走らせる。
「制圧射撃で先手を取れば……」
 黒い刀身に白銀の波紋が浮かぶ。
 妖しい巨大刀が溜めの位置から一気に横薙ぎに加速した!
「終わりだ」
 ぶうん、と大きく薙ぎ払い一匹を吹っ飛ばす。
 もう一匹は上に跳躍して抜けていった。
「後は任せる」
 振り向くこともなくワイルドハントの鼻先を悠月の向かった方に向け、ルモーレを追う。

 この時、豹型泥歪虚の右翼側。
「ちょっと! この敵、戦う気あんの!」
 ギムレットの30mmアサルトライフルを連射しながらメルクーアが叫ぶ。正面から高速接近した二匹に左右から突破されたのだ。
「こっちは何とかするよ!」
 背後に続いていたフラ、メルクーアを突破した一匹に接近しハンマーでぶっ叩いた。敵の動きが止まる。フラはローラーを生かして一撃離脱で通過した。
「雑魚には火力を集中ね!」
 振り向いたメルクーア、ここで小型ミサイルランチャーをシュート。サーカス軌道を取った弾頭が起き上がろうとする敵に集中しドゴォ…ンと爆発。
「やった!」
「まだまだ! コアも倒さないとね」
 気を緩めたフラに言い聞かせてライフルを放つ。ばらばらになった敵の中心に残る小さな光球を撃ち抜くのだった。

「どうやらこちらを抜くことが目的みたいだな」
 メルクーアたちプラヴァー隊の後方には金色の機体がいた!
 アルバ搭乗のローゼスだ。陽光を浴びて機体が輝く。
「まずは街の安全確保。抜かれるわけにはいかない」
 プラヴァー二機を抜けた狼型歪虚が加速しつつローゼスの進行する軸から外れた。
 ――ドウッ!
 ローゼス、上体をひねりながらスラスタージャンプ。歪虚の逃げた方を塞ぐべく横っ飛び。狼歪虚はこれを嫌いさらに軸線を外にずらすが、ローゼスのランスカノンが火を噴いた。歪虚、すんでのところでバックステップ。
 ――ガシン、ザザザ……。
 この隙にローゼスが敵進行軸線上に着地。いま、屈んだ状態から身を起こしそそり立つ。敵は完全に止まった。
 いや、突破を断念してローゼスに牙を剥いた!
「受けて立とう」
 アルバは慌てない。
 ランスカノンをパイロンに戻すと可変機銃に素早く換装。マテリアルの剣を掲げて突っ込んで来た敵の噛み付きを食い止めた。
「こちらローゼス。一匹抜けた」
 コクピット内のアルバは冷静。カイン側を突破した一匹を後方の遊軍に知らせた。その間にのしかかっていた歪虚が蹴りをかまして距離を取る。戦闘継続。

 その少し前。
「すまねえ、後は任せたぜ!」
 向かってくる歪虚に目もくれず、Jの乗るコンフェッサーが敵進行軸から外れた。そのままスラスター・オンで左前方へジャンプ飛行。完全な離脱である。カインサイドの敵がノーマークとなり一直線にプチ抜かれた。隣ではアルバ機がメルクーアサイドを抜けて来た一匹を止めるべく横に開いていた。

「はい。任されましたよぉ」
 Jに応じたのは、ダインスレイブの小太。
「この黒豹も今までのチェスの駒と同じタイプでしょうかぁ」
 ビジョンに映る敵の疾走する様子に目が細められた。
「なら、コアに気を付けないとですねぇ」
 言うと同時に2門の滑腔砲が唸りを上げた!
 ごうん、ごうんと放物線を描いて着弾。が、敵はさらに加速することで着弾する前に危険地帯を抜けていた。無傷。
 そのまま敵、ダインスレイブに突っ込むように位置取りを変え緩いカーブを描きつつ正面に迫ってきた。砲戦タイプなら接近すれば与しやすし、となめられたのかもしれない。
「こんなこともできるのですよ……仰角ゼロ。水平連続射撃ですっ!」
 ごうん、ごうん、と二門並んだ状態での砲撃。
 真正面から文字通り突っ込んできた敵はなんと、これをかわしたッ!
「連続射撃ならどうですかぁ!」
 背中では補助腕が動いて次弾装填。間髪入れず気合いとともに発射。
 ――ゴ……ドゴォン……。
 敵、油断したかこれをもろに食らった。さらに砲撃が入る。
 今度は命中後炸裂した!
「……忘れず残ったコアも撃ちますが……体に比べて小さくて意外と難易度高いですよぅ」
 貫通徹甲弾から徹甲榴弾に切り替えバラバラにした敵の中心に、光るコア。ロングレンジライフルを構え狙い撃ちする。



「……討ち漏らし分もこれで消えたわね」
 小太のさらに後方にいたキーリ、聖書「クルディウス」を右手に抱えたたずんでいた。カインに倒された後再生し、ここまで迫っていた黒豹歪虚にメテオスウォーム。残ったコアにアイスボルトを撃ち込んだのだ。
  これで取り巻きの歪虚は全滅。
 その分、味方の隊列はバラバラだ。
 敵はルモーレ一機だが、隊列など気にせず爆走。乱れた戦場をさらにかき回し好き放題に振る舞っている。
「そーゆーの見ると邪魔したくなるに決まってるわ……弾幕張って」
 キーリ、ふんと唇を尖らせラムルタフルに砲撃指令を下す。ひゅるるる……と放物線を描いた炸裂弾が逃げるルモーレの近くに着弾し派手に土煙を上げた。
「弾幕っていうくらいだから何が起こるか……分かるわよね」
 んふふ、と意地悪そうに笑みを浮かべる。
 そしてすぐに撃ち方止めの指令。
「作戦通りね……さて、今度は前に出て二重包囲を作るわよ」
 作戦の第二段階、開始である。
 
 そのころ、最前線。
 BM‐Xのルモーレ。
「さて、ここんとこ走り回って磨いたドラテクを披露するかな」
 横に逃げ続けていたルモーレが気にしているのは、砲弾で土煙が上がる中後方から追いすがる悠月のシグレだった。
「銃口が前に向いてるからって安心してるとあぶねぇぜ?」
 急ハンドルを切った。
 がりがりとドリフトしながら左斜め後ろに向きを変えるBM‐X。この時、車体脇のパイロンに固定してある銃を乱射した。
 非実体弾が扇状にばら撒かれる!
「シグレ!」
 悠月、ジャンプを指示。数発食らったが、敵は水平射撃。上に逃げることでそれ以上の被害を免れた。
 いや、それだけではない。
 着地したのはBM‐Xの近く。敵が向きを変えたことで接近戦に持ち込めた!
「これでどうだ!」
 悠月は自ら持つ斬魔刀「祢々切丸」で着地の勢いのまま天蓋を斬り付ける。
 ガシッ、と天板にもろに入ったが黒い瘴気がにじみ出ただけ。車体に傷一つない。
 そこにもう一つ突っ込んでくる機影が!
「ラルヴァの部下のネジ歪虚は一からCAMを作りあげたが、お前は奪って負のマテリアルを流し込んだだけ。ただ走らせるだけ。お前の方が役立たずで低能ってことだろ?」
 Jのコンフェッサーだ。スラスタージャンプで追いすがっている。
「これでも食らっとけ!」
 気合いとともに超々重斧をぶちかます。もちろん着地の勢いとともに。
 が、今度も車体はばいんばいん揺れるが傷はない。やはり黒い瘴気がにじみ散るだけ。
「どうやらダメージは全部この瘴気になって消費されてるみたいだね」
「低能なりに工夫はしてるってか、ふん」
 再び走り出して距離を取るルモーレ。分析した悠月が追い、Jも鼻息荒く続く。
 ここでキーリからの砲撃が再び届き始めた。

 この時、ルモーレ。
「カカカ……。撃たれ弱い分工夫してあるに決まってんじゃねぇかよ」
 気分よくかっ飛ばして戦線離脱。周囲に再びキーリからの砲撃が土煙を上げている。
「ハ! 数を撃とうが直撃するなんてヘマするわけねぇだろ、これだけ動きがいいってのによ」
 が、上機嫌もここまで。
 砲撃の土煙が止むと、一瞬で状況が変わっていたのだ。
 さながら舞台転換で下ろされていたオペラカーテンが上がったように!
「うおっ? いつの間に」
 視界が晴れたところで周りを見ると、ハンターたちに左右をがっちり固められていたのだ。 

「車泥棒さん、防衛隊から逃げて街へいくの? 防衛隊に一泡吹かせないの?」
 メルクーアのギムレットがメーラー全開でBM‐Xの右手、街とは遠い側にぴたりとついて並走していた。挑発も忘れない。
「るせー、こちとら好きに走ってんだ。邪魔する奴は排除するぜぇ!」
 どなり返すルモーレ。
 その反対にロリポップが付く。
「もう逃げられないんだからね!」
 フラである。こちらもローラー全開。

「さあ、明るく勢いのある曲だ。……シグレ、好きな時にウォークライしていこう」
 悠月はメルクーアの外側につく。下がり気味に位置を変えたのは、ファセット・ソングで味方のマテリアルを活性化させるためだ。
「……いつでもどうぞ」
 フラ側の外にはカインのワイルドハントが付いた。まずはじっくり観察する構えだ。

 そして後方にはJのコンフェッサーがいる。先の攻撃後、再度の移動に遅れたのだ。
「ちょい、誰か足止めしてくんねーか?」
 Jの見上げた上空を、アルバのローゼス改がスラスタージャンプで飛んでいく。
「分かった。まずは足止めしよう……敵の進路を少し変えてくれないか?」
 アルバ、プラヴァー隊に連絡。
「了解。……じゃ、好きに走るのじゃましちゃおっかな!」
 メルクーア、ジェットブーツでBM‐Xに急接近。エレクトリックショックで横からぶん殴る。
「うおっ?! なにしゃがる!」
 行動阻害するが進行方向に進むのは止められない。その分、ダメージとして相殺した瘴気を吐き散らしつつ横にずれたが。
 これで進路が斜めになった。フラの方にずれた形だがあらかじめフラは距離を取っていた。
「ありがたい。……これなら止まるだろう」
 上空を一直線にジャンプしていたアルバ、横に流れたBM‐Xを射程距離に収めた。
 そして、BM‐Xの進路上にアースウォール!
「うおっ、アブねぇ!」
 ルモーレ、BM‐Xをジャンプさせ人型に変形させた!
「え?」
 止まってからの攻撃に備えていたフラ、不意を突かれそのまま通過。
「よしっ! 耐えてくれよ?」
 ルモーレの方はアーマー形態の機体を壁に激突させるのではなく、足から突っ込んで水平の姿勢でガニ股で膝を曲げ「着地した」のと同じ格好に。
「よし、これを待ってた」
 フラより距離を取っていたカインは冷静に対応。すぐにフラをやり過ごしカットインする軌道で突っ込む。
 カイン、祢々切丸は背中に収め蒼機剣「N=Fシグニス」と聖盾「コギト」に持ち替えている。
「膝を狙って立てないようにすればいい」
 狙いを定め一直線に突きを入れる!
 が、しかし。
 ――ぐぐぐ、ばいん……。
「何?」
 振り向くカイン。
 何とBM‐X、壁に着地し屈んだ姿勢から一気に伸身し、自分が突っ込んで来た方向にガニ股ジャンプしたのだ!
「空中なら避け慣れないと思ったけど……」
 反対のメルクーアもこれを待っていてここぞと射撃したが、やはり防御用の瘴気を消費するだけだ。
「カカカ……グッバイベイベだ」
 ルモーレはドドドと銃を乱射しつつ百八十度の方向転換。きききとハンターたちも方向転換するがずいぶん水をあけられた。
 いや。
 Jのコンフェッサーが残っている!
「おっと。二重包囲をなめてもらっちゃ困るぜ?」
「だったらこれでも食らっときな」
 コンフェッサーに集中的に乱射しておいて着地。同時に魔導トラック形態に変形して加速する。



「これ以上好きにさせるわけにはいかないのですぅ」
 この動きに対応したのは、ダインスレイブの小太。二重包囲の外側から観察しつつ、包囲を抜けたとみるや砲撃開始。空中移動があったので動きが読みやすく、命中させている。散り消える瘴気の量がだんだん減っている。
 が、狙われた。
 BM‐Xが小太に迫って来る。
「そうはさせないわよ~」
 ここで、追走のメルクーアが射程内に追い付く。
 曲がったルモーレに対し最短距離でカットイン!
「どけぇ!」
「どく必要ないのよねぇ」
 突っ込んだBM‐X、変形し盾を構えて体当たりするがスペルウォールに阻まれた。
「ち!」
 ルモーレ、素早く壁を足場に再び方向転換ジャンプ。
「動きが止まった今ならぁ! 連続砲撃、いきますよぉ!」
「ラムルタフル、キャニスター弾よ」
 気合いとともに小太が連続砲撃。そしてキーリの指示からラムルタフルも発射。霰玉を撒き散らしダメージを与える。
「ち……くそっ」
 BM‐X、着地。人型のままだ。
 そこに八の字を描くような起動を描くように祢々切丸を振り回し、ワイルドハントのカインが入って来た。
「線で躱されるなら面で切り込んでいけばいい」
「点で耐えりゃいーだろ!」
 がしん、と盾で受けるルモーレ。ただし、ダメージはあるようで瘴気が散っている。
 さらにその背後!
「ルモーレ、まるで鋼の体を手に入れたようだ。りうん、男の子の浪漫は感じる……でも恐れない」
 面の攻撃の死角に悠月のシグレが入り込んだ。悠月、言葉を続けつつ斬魔刀を振るう!
「その悪魔の身体を穿つのは 勇気の刃 ……ってねっ」
 ぶんっと振った攻撃、入る。
「しゃらくせえ……うおっ?」
 振り向きざまナイフを投げたBM‐X。その姿勢が膝から崩れる。
「……関節狙っても瘴気が散るだけか。便利すぎだろ」
 カインが二の太刀を膝裏に入れていた。
 慌てて変形して逃げるルモーレ。
「逃がすわけにはいかないよ」
 スラスターで追ってきたアルバがブリザード。
「逃がしたくないってんなら行ってやるよ! これでも食らいな」
 吹雪の中に入ったBM‐Xは変形しナイフを投擲。
「炸裂するナイフか? 動揺させてここを抜く気なら……」
 アルバ、予想外の攻撃にひるむもマテリアルカーテンで防……いや、ブラストハイロゥで光の翼を出現させた!
「ち……何かあるな?」
 様子見したルモーレの元に、新たな影が!
「そんなに命中に自信があるなら全部打ちとして見ろや、口だけ歪虚」
 Jのコンフェッサー、ここで突撃。マテルアルバルーンを放出し前面に押し出している。
「くっ」
 ――ぱぁん、どごぉ……。
 ルモーレの銃撃がバルーンを破壊し、その陰から振った超々重斧がBM‐Xの脇に入る。
「こいつらぁ!」
 激高したルモーレ、身をひねって回転しつつ全方位に炸裂ナイフを投げまくった。
 逆に弾幕を張られた形だが……。
「削り合いは上等なんだよ!」
「少しはまともに喰らえよ、モヤシ野郎が! 短刀ばっかりチマチマ投げてきやがって」
 Jが、カインが、ダメージにひるまず攻撃してくる。
「ちっくしょう! まさかこいつに頼ることになるたぁ!」
 ルモーレ、車両に変形させると車窓からエルフの隠れ里特産のオリーブハイプを投げ捨てて走り去った。
 パイプは地に落ちると、中の灰――光のコアがこぼれ、じわじわと周りの土を引き付けていくのだった。



 その頃、キーリ。
「それじゃ私は行くから下がっていいわ。……もし敵に嫌がらせができるならあんたも砲撃しといて」
 ラムルタフルにそれだけ指示して前線に向かった。
 キーリ、アイスボルトで嫌がらせ攻撃する気満々で前線に上がっていった。

 一方、前線。
「てめえの悪ノリのために無関係な人間を巻き込ませるわけには行かねえんだよ」
「カカカ……関係者になりゃもっと楽しいのによぉ」
 カインとルモーレが激しくやり合っている。
「何だと……」
「言って分からねぇやつぁ、これで分からすだけだぜ!」
 Jが横からカットインしてコンフェッサーの拳をマテリアルフィストで強化し殴る!
「お?」
 ついに瘴気が切れたか、受けた盾がへこんだ。
「ち、そろそろ潮時か?」
 魔トラ形態にして逃げるルモーレ。
 そこに、ぴたっとシグレが並走する。
「ううん、ダメだよ…逃がさない。僕と一緒に踊ってもらう。二重包囲のデュエットホイールの中で!」
 悠月、祢々切丸をガツンと横からぶちかます。
 車体はすでにそのままダメージを受けている状況だ。

 その様子を遠巻きに見ていたアルバがこぼす。
「……転移する能力があると聞いたが」
「そのための二重包囲。これだけ距離を空けてれば大丈夫のはずよ」
 通信で応じるメルクーア。
「機体を破壊しても本体に逃げられたら意味ないですし、そこだけは注意しないとですねぇ」
 小太もこちら組。敵の逃げを警戒していた。
「フラっち、私が街の方を見るから反対に回ってくんない?」
「了解、キーリさん」
 キーリは徒歩移動なのでフラに移動をお願いしていた。
 その時だった!

 ――どんっ……ひゅるるる、どぉん……。
「何? ラムルタフル、どこに撃ってんのかしら?」
 キーリが遠方からの砲撃に振り向いた。
「あっ。あそこに何かいるよっ!」
「巨大なモグラ……ですかねぇ」
 フラの叫びに小太の分析。
「モグラ型の泥歪虚か……穴を掘ってたようだが」
「あ! BM‐Xがシグレとワイルドハントに突っ込んだ?」
 アルバが上からより詳しい状況を知らせた時、前線を見ていたメルクーアが叫んだ。悠月とカイン、BM‐Xの爆発に巻き込まれて大被害を被る。
「影、伸びたぜっ!」
 Jは振り向き後衛に叫ぶ。
 偽影の伸びた先は、モグラ歪虚の近く。ルモーレ、いま影に隠れての瞬間移動完了。モグラ歪虚の傍に立つ。
「穴から逃げる気ですかぁ?!」
 小太の砲撃でモグラ型歪虚、吹っ飛ぶ。
「そうはさせん!」
 アルバのブリザードが時間を稼ぐ。
「ごめん、ボク間に合わない!」
「任せて。ガリアさんの仇!」
 フラの声を背にメルクーアが突っ込む。
「うおっ?!」
「あんたは……名無しの車泥棒堕落者として消えてもらうわ!」
 射撃とともに迫るメルクーアの迫力にルモーレは……。
「知るか! じゃあな」
 モグラ歪虚の開けた穴に逃げ込んだ。
 その時だった!
 ――ひゅるるる……がぽっ。ずずん……。

 ルモーレはモグラの穴の中にずっぼりと入って炸裂したラムルタフルの嫌がらせ砲撃で死亡。
 逃げ場もなくバラバラになっていたという。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 9
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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • Pクレープ店員
    メルクーア(ka4005
    ドワーフ|10才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ギムレット
    ギムレット(ka4005unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    シグレ
    シグレ(ka4130unit001
    ユニット|幻獣
  • 正義なる楯
    アルバ・ソル(ka4189
    人間(紅)|18才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ローゼス・カバリエ
    ローゼス改(ka4189unit002
    ユニット|CAM
  • メテオクイーン
    キーリ(ka4642
    エルフ|13才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ラムルタフル
    ラムルタフル(ka4642unit002
    ユニット|ゴーレム
  • 百年目の運命の人
    弓月・小太(ka4679
    人間(紅)|10才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ダインスレイブ
    ダインスレイブ(ka4679unit003
    ユニット|CAM
  • イコニアの夫
    カイン・A・A・カーナボン(ka5336
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ワイルドハント
    -Wild Hunt-(ka5336unit002
    ユニット|幻獣
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    コンフェッサー
    コンフェッサー(ka6653unit005
    ユニット|CAM

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談ですぅ
弓月・小太(ka4679
人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2018/08/24 12:48:12
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/23 08:57:04