潮騒とともに

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
締切
2018/08/28 12:00
完成日
2018/08/29 10:28

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●セイレーンに似た歪虚
 海には歌声で人を惑わせるものがいる。これはそんな、リアルブルーでセイレーンと呼ばれる、クリムゾンウェストでいうところの歪虚の話。
 歌で船乗りたちを誘惑し船を沈めたり嵐を起こし、その四体は船を沈め、船乗りたちを惑わしてきた。
 歪虚と人間は相いれない。価値観も異なる。罪悪感は特にないだろう。彼女たちは歌うだけ。船乗りはその歌声を聞いて運悪く惑わされてしまっただけ。それによって船乗りが惑わされて船が沈むなら海へ出るのに歪虚への対策をしなかった船乗りたちが悪いのだと彼女たちなら考えるのだろうか。
 一体の歪虚はとても美しい声を持っていた。その声を持って人々を魅了した。もう一体の歪虚は男を惑わす絶世の美しさを持って男たちを惑わせた。三番目の歪虚は激しい嵐を呼ぶ歌声を持っていた。その歌声によって魅了された男たちは船ごと海の藻屑になった。四体目の歪虚は特別な力を持たないが四体の歪虚が協力して船を沈めるきっかけになった、まだ歪虚として未成熟な、疑似的な姉妹の要石だった。
 最近歪虚の住む海域には船があまりやってこない。だけど歪虚たちは歌う。それが本能だからだ。歌で魅了する海の歪虚が歌が下手では格好がつかないからだと思っているのかもしれない。歪虚たちはそうやって日々は続いていくのだと思っているのだろう。ただの船乗りが魔物にかなうわけがない、と。彼女たちは歪虚と戦うハンターを詳しくは知らなかったし、知っていても自分たちを倒す能力があるわけがないと驕っていたので。
 一番幼い歪虚は姉のように思う歪虚たちのように早く一人前になりたい。そう願って今日も歌を歌うのだった。
 魔性の美しさを秘めた歌声が響き渡る。海底へと招く、危険な歌が。誰かがその歌を止めなければならなかった。

●歪虚への反逆
「近頃ある海域では四体の歪虚によって船を沈められて損害が多発し、船の出航を見合わせているようなんだ。商船や漁船が何隻も犠牲になってる。噂では戦艦も沈んだそうだよ」
 オフィスでルカ・シュバルツエンド(kz0073)が珍しく仕事の話題を切り出した。
 セイレーンに似た歪虚の討伐に向かうためには船が必要だ。大きめの商船が荷を空にしてハンターたちを運んでくれるという。かじ取りができないならば船頭も同行するとのことだったが同行させる場合船頭の命も守らなくてはいけない。
「歪虚の一体ずつの特徴を説明させてもらうね。一体目はとても魅力的な歌声の持ち主。この歌声に惑わされてかじ取りを失敗して座礁した船が多いらしいよ。二体目は四体の中で一番美しくて、一度目が合うと魅了されてしまいしばらく身動きが取れなくなったり仲間に不利な行動をとったりする。バッドステータス担当だね。三体目は大きな嵐を歌声によって呼ぶことができて船を沈めるのはこの個体の役目なのかもしれない。この三体は強敵といっていいと思う。最後の一体はほかの三体に比べて幼く、特に大きな力は持っていないようだけど三体は四体目を護るように動く。歪虚に家族愛があるのかはわからないけれど疑似的な姉妹のような関係に見えてくるね。四体目以外は厄介な能力を持っているから一点撃破を目指すべきかダメージを均等に与えて複数を同時に撃破するか悩みどころだね」
 歪虚である以上討伐は避けられないけれど人語に似て非なる歌声で歪虚たちはハンターたちを揺さぶってくるだろう。
「前に似たような雑魔の討伐を頼んだけれど歪虚である以上それ以上に強力だろうね。耳栓も役に立たないかもしれない。それと、海の上で嵐も呼び込まれるだろうから甲板は非常に滑るよ。意図せぬ方向に進んでしまったり足を滑らせて船から転落する恐れもあるかと思う。ロープは用意してあるけど、なだらかな平地のように自由に動くことはできないから注意して。飛行するにしても嵐で体が流れたり豪雨で視界が利かなかったりでどっこいどっこいだと思う。歪虚たちが陣取っているのは広めの岩場だから到着したら降りて戦うこともできるけど海の上の岩場なので波にさらわれる危険があるね。遠距離攻撃ができるなら船の上からのほうが幾分安全かもしれないな。戦い方にまでは口出ししないけどさ」
 どうか海の平和を守ってあげて。依頼人らしい漁師や貿易商と一緒にルカは航海の無事を祈ったのだった。

リプレイ本文

●海の魔物、セイレーン退治
 リアルブルーの伝承でいうセイレーンに今回の歪虚はありようが似ているからハンターたちはこの歪虚をセイレーンと呼称することにした。この四体のセイレーンたちは幾たびも商船や漁船、とくには軍艦を海の藻屑にしてきたという。
「そう何度も船を沈められるわけにもいかないな。下手に追い散らしても面倒だし、この場できっちり仕留めてしまおう」
 ロニ・カルディス(ka0551)は数年前歪虚と戦った時からなぜか髭が生えなくなり、ドワーフの社会から半ば排斥された過去を持つ。歪虚に対して恨みはあるが、同じくらいに歪虚の被害者をこれ以上生み出させない、増やさないという熱い使命感を持つ。
 彼の性格上、助けを求めるものには手を差し伸べてしまうし苦しむものを良しとしない、いわゆるお人よしなのだ。
(もう二度と、俺のような者を生まぬために俺ができる最善をなさねばならない)
 船を沈められて出た損害はいくらだろう。失われた人命はどれほどだろう。彼らの死を嘆き悲しむ家族や友人や恋人の数は。そう思いながらロニは危険な任務だが人数の少なさから操船を買って出たくれた船頭に危険になったら船内に逃げるよう、動けないようなら自分が抱えて連れていくので従ってほしいと告げる。
「これ以上船を沈められたら海と生きる連中は干上がっちまう。ハンターの皆さん、歪虚の討伐は任せたぜ。魅了とやらと嵐が厄介だが、俺もできる限りのことはしよう」
 今回船頭として同行するのは四十路を過ぎたくらいの海の男だった。彼は持ち船を沈められて今は今回セイレーンが出現するポイントまでハンターたちを連れていくための船で下働きをしているという。
「無事歪虚が討伐されたら、貯金と給金といくらか降りた保険で新しい船を買いてぇんだ。二度と沈められないようにって願いをかなえるために、協力は惜しまねぇよ」
 海の男だって踏まれてもただじゃ起き上がらねぇんだ、と息巻く船頭にロニはそうか、と告げてあまり無理をしなければいいが、と血気盛んであることを頭に留めておく。
 ズィルバーン・アンネ・早咲(ka3361)はこの任務において注意するべきは敵の魅了だと考えていた。
「BS対策をしてくれる仲間のそばにはいちして、魅了の影響を避けるように、する」
 今回集まったメンバーは全員が遠距離からの攻撃を可能としているため船から降りる必要はないが、嵐によって船は揺れるし波が船の甲板を濡らして足が滑るだろうと事前に忠告があったため命綱を付けて足を統べなせないように対策を練っている。
「疑似的な、姉妹で末っ子を護るなら。三体の姉を同時に攻撃、姉を優先して撃破」
 セイレーンが出る海域までに仲間とたてた作戦に不備がないか口に出して確認する。とぎれとぎれの口調は彼女の特徴といえた。
「ほう? 姉妹的な関係をもつ歪虚か……ならば、アレが使えるかもしれんな。試してみるか」
 目的地に到着するまでにマストにロープを結び、体を結び付けて命綱としたキャリコ・ビューイ(ka5044)は思案顔。疑似的な家族愛に彼はなにがしかの策を見出したらしい。
 そしてアンネの提案した魅了を使用してくるセイレーンの討伐からにキャリコも賛成していた。BS対策をして乗り切るにしても無限に使用できるわけではない、早目に倒すに限る、と考えているのだ。
「人を魅せることにかけては、手品師のあたしがセイレーンの歌なんかに負けるわけにはいかないの。ここはセイレーンなんかじゃなく、あたしのステージだと理解させてあげるの」
 札抜 シロ(ka6328)もまた船に命綱を付けて滑り止め対策としたうえで手品師としての誇りにかけてセイレーンを討伐する、と決意を新たにする。
「そろそろ歌声が聞こえてくるあたりだ、注意してくれ!」
 船頭の声に四人のハンターは顔を引き締め、自分たちと同数の歪虚との戦いに備え身構える。
 世にも妙なる歌声がまず聞こえ出した。歌声にたけているという歪虚のものだろう。
 シロが符を中心に薄く輝く光の壁のような結界を作り、空間を包み込んで同士討ちをさけるために味方と船頭の抵抗力をあげる。
 海を縄張りとし、何隻もの船を沈めてきたセイレーンたちは四体とも美しかった。中でも美しいのは右端に端座するセイレーンだ。この個体が美しさで船乗りを惑わしてきたのだろう。
「あらあら、久しぶりのお客様よ、お姉さま」
「本当ね。歌でおもてなしをしなくっちゃ」
「嵐を巻き起こして沈めて差し上げないと。ここは私たち四姉妹のテリトリー。侵略はよくないわ」
「姉さまたち、今日もお手本を見せてくれるのね」
 笑いさざめく声すら人間のものではないことを示すように気を抜けば魅了されそうな魔力に満ちている。
「貴方たちのテリトリーは今日で解散よ。だってあたしたちはあなたたちを討伐して海の平和を取り戻しに来たんだから。イッツ、ショータイム!」
 遊びましょうよ、死体になったら可愛がってあげるわ、おうちに骨を飾ってあげる。そんなむごたらしい内容なのになぜか魅力的に聞こえる声をテーブルマジックで鍛えた話術で切り伏せたのはシロだった。
 アンネが光でできた三角形を呼び出し、その頂点一つ一つから伸びた光で姉を名乗る歪虚三体を同時に攻撃する。
 岩場に集まって座っていたため一撃はさほど大きなずれを生むことなく末の妹を除く三体を貫いた。
 キャリコは疑似的な姉妹の愛情を利用して庇われる形の末の妹を集中的に狙うことにより他の姉たちがかばってダメージを受けるようにもくろむ。
「狙撃手の基本的な戦術だな……とりあえず、死ね」
「戦士が来たみたいよ、姉さま」
「どうなさるの?」
「嵐を呼びましょう、姉さま。人間は船が沈めばろくに動けないわ?」
 一体のセイレーンが歌声によって強大な嵐を呼び起こす間も姉と思しきセイレーンたちは歌声と美貌でハンターたちを陥落しようとする。そんな姉たちに庇われ末の妹にあたるセイレーンもまだ未熟ながら歌声で姉たちを支援した。
 ロニはお互いがBSにかかっていないか相互確認を怠らないようにと嵐の中声を張り上げ、海中に逃げられて取り逃したり形勢を立て直されたりしないように確保撃破を目指すが彼の今回の主目的は味方の支援だ。
 船の上で船頭を含む味方に可能な限り支援が届く場所に位置どっているのがその証明。
 船頭を優先してレジストをかけたあとはBSにかかっている仲間がいないことを確認する。
 ひとまずは大丈夫だと判断すると歌には歌で対抗というように鎮魂歌を奏でる。正ならざる生命であるセイレーンたちの攻撃が鈍った。
 キャリコの各個撃破の攻撃に合わせてアンネが牽制射撃を行うことで回避行動をとろうとしたり海に逃げようとしたセイレーンに牽制を加えて回避を困難にさせる。
 それにさらに合わせる形でキャリコは攻撃を当てやすくなったセイレーンに追撃を決めた。
 魅了することにたけたセイレーンのサポートに回ろうとした他のセイレーンをシロが投げ上げた符が空中で稲妻と化して貫く。
「痛い、痛いわ。この人たち、ただの人間じゃないのかしら」
「何者なの、貴方たち」
「私たちは歌っているだけよ。歌って船を沈めるのが私たちの生存理由よ。邪魔をするの?」
「姉さま、姉さま、傷が痛そうだわ。どうするの?」
「どうして邪魔をするか、ですって? それは貴方たちが歪虚で、私たちが歪虚と戦うハンターだからよ!」
 同情を引いたすきに逃げ出そうとありったけの魅了の力を声に込めて慈悲を乞うセイレーンたちにあらがうのはシロの話術とロニのレジストだ。
「強い人は嫌いじゃないわ。でも乱暴はよくないわ」
「貴方たちは生存理由を否定されたらおとなしく殺されるの? 違うでしょう?」
「だから私たちもあらがうのよ」
「だってそれが生きるということでしょう?」
「俺たちとお前たちでは存在が相いれない。殺し合うだけだ。そして俺たちは負ける気も、見逃す気もない。もう一度言うぞ。死ね」
 末の妹を護るように身を寄せ合うセイレーンにキャリコがマテリアルを込めた連続射撃を行うことで弾丸を雨のように降らせる。
 セイレーンから悲鳴が上がり、BSを生み出す魅了の効果が消えて一体のセイレーンが消失した。
「姉さま、姉さま……? あぁ、なんてこと」
 妹の嘆きを聞いて嵐を呼び起こすセイレーンが最後の抵抗とばかりに竜巻を呼び起こす。
「ただでは死なないわ。貴方たちも、道連れよ」
「単体に対してなら、威力も通常射撃のほうが、高い。命中精度も、ね」
 死に物狂いで攻撃してくるセイレーンにアンネが告げるとアーマーキラーで散弾を撃ち込む。魔導アーマーのような分厚い装甲すら打ち倒せる火力から名づけられた魔導猟銃の弾丸に歪虚といえど度重なったダメージと相まって二体目も命を落とした。
 ロニが最後の姉を魔法により無数の闇の刃を作って串刺しにすれば空間に縫い付けられたように動けなくなり、そこを他の三人が火力を集中させて打ち倒す。
「姉さまたちが……」
「最後はおまえだ。姉と呼ぶ連中のところへおくってやる」
「私たちは、人の味方。歪虚とは、分かり合えない。戦うのが、役目。だけど、できるだけ苦しまないように、してあげる」
「その歌声を、魅了する美貌を、来世では違うことに生かせるといいんだけど。あたしみたいに手品師になって人を楽しませるような、ね」
「眠れ、ヴォイド。お前たちは生まれてきたのが間違いだった」
 そうして最後に残った末の妹、疑似的な家族の要石となっていた未熟なセイレーンも海に散る。
 嵐はいつの間にかやんでいて、太陽が海を照らしていた。
「終わったな。船頭は無事か?」
「海の男をやって長いがこんなひどい嵐で転覆しなかったのは奇跡だぜ。討伐お疲れさん。陸に戻ろうや。歪虚がいなくなったならこの海域にもまた船が出せる」
 痛手を負った海の男たちの生活も、これ以上被害が出ないのなら少しずつ元の水準へと戻っていくことだろう。それを思って船頭はほっとした顔を見せる。
「お疲れさんでした。あんたがたには感謝してもしたりねぇ。……しかし歪虚ってのも気の毒なもんなのかもな。歌うこと、船を沈めることが生存本能、か」
「生き物には等しく生存本能はある。それが原因で他種族と争うこともあるだろう。だが、それによって淘汰されるのも自然の摂理だろうさ」
 キャリコの言葉に船頭は神妙な顔で頷くと戦果を報告するために帰港しようと船を操舵し始めたのだった。
 セイレーンの歌声は、もう聞こえない。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 5
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディスka0551
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイka5044

重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士

  • ズィルバーン・アンネ・早咲(ka3361
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • イッツァショータイム!
    札抜 シロ(ka6328
    人間(蒼)|16才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/27 07:50:03
アイコン 相談卓
札抜 シロ(ka6328
人間(リアルブルー)|16才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2018/08/28 00:47:11