トランクケース片手に

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/09/02 07:30
完成日
2018/09/19 00:28

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 塀の中から見上げる空は、変わらず青かった。
 アンナ=リーナ・エスト(kz0108)は大きなトランクケースを携えながら、正門に立つ憲兵に深く頭を下げる。
「お世話になりました」
「おう、路頭に迷ったらまたいつでも来いよ」
 互いに敬礼を交わして、同盟軍本部に背を向けた。
 軍に残り続けること、別の道を探すこと、正解は分からない。
 だけど選択が与えられているのであれば、今は新しい一歩を踏み出してみたい。
 それだけを胸につめて、彼女はヴァリオスの雑踏へと足を踏み出した。
 
 しばらく街を歩きながら、これからの事を考える。
 とりあえずこれまでの報酬でしばらく生活に迷うようなことはない。
 だが、それもそう長くは続かないのは自明の理だ。
 そもそも、軍の宿舎を出てしまった以上は今夜の宿もない。
 しばらくはホテル暮らしも悪くはないものの……これまたそう長くは続けられない。
「アテはある……か」
 ぽつりとつぶやいて、その足は迷うことなく何度もあるいた道筋をたどっていく。
 
「それで、ここに来たってわけねー」
 窓口で提出された書類に記帳をしながら、ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)はほむりと小さく頷いた。
「食べていくには仕事は必要だ。それに住居も融通してもらえるならば――これ以上にありがたいことはない」
「なるほどー。でも、環境を変える意気込みの割には堅実な選択ですネ」
 話半分のルミの返事に、アンナは一瞬息を詰まらせる。
「だ……ダメだろうか?」
「いえいえ、ソサエティとしても優秀な経歴の人が登録してくれるのはありがたいことですよ。はい、これで完了っ」
 ルミは書類の最後に丸っこい文字で自分のサインを連ねてからペンを置いた。
「とりあえず、しばらくの仮住まいがここです。ちゃんとしたお部屋は準備ができ次第に連絡しますから、待ってくださいね」
 広げた地図に印を書き込みながら、仮住居の場所を伝えるルミ。
 頷くアンナに満足しながら、彼女の持つ手荷物を眺める。
「それで、荷物とかって」
「これだけだ。軍の宿舎には最低限のものは揃っていたから」
 アンナが足元のトランクケースに視線を落として答えると、ルミは腕組みをして小さく唸るように声をあげる。
 それからポンと拍子を打って自分のデスクへ駆けていくと、積み上げられた書類の中から1つを引っ張りだして戻ってきた。
「これから新生活を始めるにあたって、いろいろ必要なものがあるよね。ちょうどいい依頼があるの」
「依頼?」
「そ、ハンターだもん。どうかな初仕事――」

 顔合わせために指定された建物を訪れたアンナ。
 ヴァリオスの一角のある小洒落た外見の一軒家の中はまだ改装中のようで、真新しい木や塗装の臭いと共に、封の開けられてない商品が所狭しと並んでいる。
 大きく2つの区画に分けられた建物の中は、お店らしいスペースとは別に飲食店のようにカウンターと数人掛けのテーブルが並ぶスペースがあった。
 そのテーブルの1つにほかのハンター達と共に座って依頼主の到着を待つ。
 やがて、1人の男が店に現れた。
 膝丈まである蒼くいジャケットを着こんだ姿は見るからに上流階級のいで立ち。
 これまでそういう人間との関わりに慣れていないアンナは多少緊張した様子で椅子に深く座り直す。
「初めまして、オーナーのエヴァルドです。今回はよろしくお願いします」
 エヴァルド・ブラマンデ(kz0076)と名乗った男は自信に満ちた笑顔で恭しくお辞儀をすると、ざっと準備中の店内を見渡す。
「すみません、まだ散らかったままで。事前に依頼書で告知させていただいておりましたが、ここが新しい事業のお店です」
 依頼の内容はヴァリオスで新たに出店する雑貨屋のレセプションパーティスタッフ。
 お店とカフェを備えた複合施設で、そのプレオープンのお手伝いということだそう。
「リアルブルーでは珍しくない営業方法のようですね。実際に商品を使っているところを見せることで、使用イメージと購買意欲を持たせる。そういったコンセプトのお店となります。当日は多くの中~上流階級のお客様がいらっしゃいますので、まずはくれぐれも失礼のないように。そのうえで財布の紐を緩めさせて頂ければ――これ以上申し分のないことはありませんね」
 そう言って、もう一度あの自信に満ちた笑顔を浮かべるエヴァルド。
 あ、苦手なタイプだ――アンナは直感でそう思う。
 だが、仕事は仕事。
 これもハンターとして生活していくための第一歩として、彼女はテーブルの下でそっと拳を握りしめた。

リプレイ本文


「……は? 軍やめた!?」
 開店準備に追われる小洒落た店内に、キヅカ・リク(ka0038)の素っ頓狂な声が響いた。
 思わず取り落としかけた陳列用のティーカップを咄嗟にキャッチし、ほっと一息。
「何もそこまで驚くことはないだろう?」
「いや、ま、それはそうだけど……」
 答えるアンナ=リーナ・エスト(kz0108)に、リクはカップに付いてしまった指紋を丁寧にふき取りながら煮え切らない様子で言葉を詰まらせる。
「気持ちはわかるけど世間話はあとあと。制服届いたからみんなフィッティングして着替えちゃって」
 店の奥から顔をのぞかせたクリス・クロフォード(ka3628)が手を叩きながらハンター達を急かした。
「ごめんなさい、じゃあわたくし行ってきますので……他の商品も、このニュアンスで見繕っていただけますか?」
「ええ、分かりました。仕入れの者に選ばせておきましょう」
 アシェ-ル(ka2983)の手渡すリストを受け取って、エヴァルド・ブラマンデ(kz0076)はにこやかにほほ笑む。
「ねね、アシェール見て見て!」
 そんなところに、一足先にフィッティングを済ませた天王寺茜(ka4080)が飛び出してきて、合わせたばかりの衣装でひらりと翻る。
 オードソックスな濃茶色のメイド服。
 長いスカートはリアルブルーでイメージするようなキャピキャピのそれとは違って、厳粛で趣きのある古風なスタイル。
「電気街のカフェじゃないんだから、客層考えればこれが正解よ」
 同じく着替えを終えたクリスが腕組み頷きながら補足した。
 トレードマークのツインテールはシニョンで1つにまとめられ、上品さをプラスする。
 とはいえ、クリムゾンウェストでは使用人としては現在も当たり前の衣装スタイル。
 そのままでは「リアルすぎる」と、生地のカラーの違いで差別化を図っている。
「それで確認だけど、あっちに居たとき接客経験は?」
 同じように身なりを整えて来たのを見計らって、クリスがアンナに尋ねた。
 揃いのメイド服に着替えた彼女は、着慣れない服装に少しばかり萎縮しながらも答える。
「あ……ああ、ファミレスのバイトくらいなら」
「あら、意外ね。やってても洒落たカフェとかかと」
「アパートから一番近かったことと……あと時給がな」
 クリスは納得したように頷く。
 経済的な文明レベルの違いか、生活と金とを切っては切り離せないのはリアルブルーの常だ。
「こっちの世界に来て忘れがちだけど……改めて思い出させられると、こう、世知辛いよね」
 パリッとした同色のジャケットに身を包んで、リクが苦笑交じりに頬をかく。
 自分でお金を稼ぐ身分でこそなかったものの、限られた小遣いの中でやりくりして生きていくことは、あちらの世界では幼いころから自然と身に付くこと。
「アンナさんもLH044の方なんですよね?」
 茜がうずうずした様子で尋ねると、アンナは若干気おされたように答える。
「ああ。両親は地球生まれだそうだが、私は生まれた時からコロニー育ちだ」
「私もなんです! 同郷の人と知り合うのってなんだか嬉しくって」
 彼女の上機嫌の理由を理解してか、アンナも気を抜いてふと笑みをこぼす。
 それを横目に、クリスが彼女の腕を肘で小突いた。
「まー、つもる話もあるんでしょうけど、とりあえずは今までで一番いい表情してるわ。それなら“仕事”の方も大丈夫かしら」
 彼女の言葉にちょっと驚いた様子のアンナは、すぐに表情を緩めると涼やかな笑顔で頷いてみせる。
「おら、くっちゃべってる暇はねぇぞ! 客は店の準備が終わるのを待っちゃくれねぇ!」
 どことなく緩んだ和やかムードに切り込んだジャック・J・グリーヴ(ka1305)は、鍛えた身体にフィットしたパツパツのジャケット姿で喝を飛ばす。
「ささ、お仕事ですよ。トークタイムはその後に、ですね」
 フィッティングを終えて戻ってきたアシェールも、後ろ手でエプロンの結びを整えながら意識をお仕事モードに切り替えて来た様子。
「アンナさん、ラテの試作をしたいのですけどお願いできますか? パターンの種類とか知りたくって」
「ああ、厨房が借りられれば……」
 自然と向いた2人の視線に、エヴァルドは「もちろん」と頷いて答える。
「良かった! 実は、試して貰いたいコンセプトがいくつかありまして――」
 カフェスペースの奥へと向かっていく2人とは別に、残った人間はせっせと最後の陳列作業だ。
 短い時間だが、陳列しつつ商品のことをある程度覚えておかなければならない。
「これって、何に使うんだろう?」
 リクが輪っかにハサミの握りのようなものが付いた機材を手に首を傾げると、ジャックがキョトンとして答えた。
「エッグオープナー、使ったことねぇのか?」
「へ?」
 どうやら半熟たまごの殻を切るために使う道具だそう。
「あ~、日本人にはちょっと馴染みがないですね。たまごはこうです、こう」
 言いながら、茜は机の角を使って片手で器用にエアたまご割り。
「そ、それは手慣れた人かな」
 自分はこうだ、とリクは両手で。
「ま、俺様も基本はこうだけどよ」
 一方のジャックは、手に何か細いものを持ったていで鐘でも鳴らすように手首のスナップを利かせる。
「まって、全く状況がイメージできないんだけど!?」
「いや……なぁ?」
 驚くリクを前にジャックが同意を求めると、クリスは苦い顔で頷いた。
「それも含めてリク達には馴染みがないことでしょ。それよりほら、手が止まってるわよ」
 言われてはっと我に返り、各々作業へと戻っていく。
 そうはしないと言い聞かせても、ついつい使う姿を想像して意識がトリップしてしまう。
 生活雑貨店おそるべし。


 開店からしばらく、お店はゆったりとお客を受け入れていた。
 流石は高階級のお客様向けというところか、誰もかれもせかせかした様子がなく自分達の時間の中で来ているのだという余裕が垣間見える。
「もうちょっと、どばーっと来るかと思ってたな」
「時間に捕らわれない、というのは1つのステータスですからね」
 肩透かしを食らったような茜に、エヴァルドは落ち着いた様子で語る。
「だからこそ、じきに込み合うでしょう」
 その言葉の通り、客足の伸びはゆっくりだが、その分お店の物色もまたゆっくりだ。
 前の客が帰るより先に次の客が訪れ、徐々に店内は新旧のお客であふれ始める。
「いらっしゃい、ご婦人がた。今日はどこから?」
 ジャックはジャケットから覗くシャツをラフにはだけて、(なぜか薔薇の花を咥えながら)ふさりと前髪をかきあげる。
 余所行きのドレスに身を包んだ婦人がたは、覗いた彼のムーディな胸元に頬を染め、口元を扇で隠しながらしどろもどろと答えた。
「西の郊外から来ましたのよ」
「わたくしたち、ご近所さんなの」
 ご近所と言っても数千ヤードも離れているのだろうが、それは別として。
「川が流れる辺りか。あの辺は山も近くて、四季が感じられていい」
「そうなのよ。今日も主人たちったら張り切って猟に出かけちゃって」
 ねぇ、と顔を見合わせながら頷きあう。
 なるほど、家族ぐるみで仲のいいグループということなのだろう。
「なら、ご主人の猟果に負けず劣らねぇ食器を用意しねぇとな。まずは実際に使ってみてくれ。話はそれからだ!」
 さっと身を開いて誘導する彼につられて、カフェブースへと移動するご一行。
 その姿を見て、ジェットブーツでさーっと床を滑るように駆け寄ったリクが席へと案内する。
「あら、席によって彩りが違うのね?」
 ブースを眺めながら首を傾げた婦人にリクは静かに頷く。
「実際のイメージを掴んでいただくため、テーブルをモデルセットとして設えました」
 口にしながら指し示すセットたち。
 あるはテーブルはかわいらしく、あるテーブルはムードたっぷりに、またあるテーブルはモノトーンで上品に――テーブルごとにテーマをもって雑貨や装飾、食器などを変えてみようというアシェールの発案だった。
「あ~、緊張した……」
「問題ないじゃない、上出来よ」
 バックヤードに下がって一息ついたリクの肩を、クリスが労うように叩く。
 そのまま入れ違いにティーセットの乗ったワゴンを押して、別のテーブルへとサーブに向かう。
「おかわりの際はお申し付けください」
 すっきりとした香りの紅茶を注いで、深く頭を下げるクリス。
 胸元に付けた葉モチーフのブローチが光り、お客の目を引いた。
「それも売り物かね?」
 彼女はにこやかに答える。
「従業員がお客様が使うものと等価のものを身に着けるわけにはいきません。しかし、商品と同じ職人が作った作品となっています」
 肌の色や髪の色など様々な要因によって、アクセサリーはその輝きを増しも減らしもする。
 だからパッと見て見栄えの確認ができる“マネキン”として、従業員それぞれが思い思いのアクセサリーを身に着けているのだ。
「それでは、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
 もう一度深く頭を下げてバックへ戻るクリス。
 その間にも、トレンチを片手に持ったリクがフライトスケートでくるくると客席の間を駆け回る。
「アンナさん、3番さんラテ2つ入ります!」
「了解した」
 てきぱきと温めたミルクを泡立てながら、額の汗を拭うアンナ。
「3番テーブルだと木目調がウリのところですね。葉っぱとか自然イメージので行きましょう!」
 テーブルイメージを思い出しながら語るアシェールの指示に頷くアンナ。
 デザインカプチーノとラテアートは今日の目玉の1つだ。
 先の2人でのデザインチェックを元に、テーブルイメージに合わせた1杯を提供する。
「しかし……こういう仕事もするんだな、ハンターは」
「まあ、いわゆる便利屋だよね。俺も最初はそうだったから、気持ちはわかるよ」
 苦笑しながら料理をトレンチに乗せていくリクは、自身もとても接客のプロとは言えないことを理解している。
「でも、何かしら困った人がいてそれを助ける。それは変わらない」
 そう口にして、ちょっと臭い事言っちゃったかとこっ恥ずかしく視線を逸らした。
「ま~、こういう依頼には多少私情も入ってくるけどね」
「私情、とは?」
「それは内緒」
 意味深に言い置いて、さーっとホールへ駆けていくリク。
 日常を確かめるため――流石にこのタイミングで口にするのは先輩風を吹かし過ぎだろう。
 だけど皆が、そして自分が笑っている時間を実感することは確かに次へとつながっていくのだ。
 そうこうしている間に出来上がった葉っぱ型のラテアート。
 趣味の宴会芸程度のものであったが、回数をこなすうちにどんどん精錬されてきたものだ。
「リクさん戻ってきませんし、わたくしたちで運んじゃいましょう」
「ああ、そうだな」
 トレンチを持とうとしたアンナを、アシェールはちょっと待ってと呼び止める。
「せっかくだし、メイドに見せかけた用心棒という位置づけで太ももに銃のホルダーを付けましょう! そうしましょう!」
 思いつきの提案に目を白黒させるアンナ。
「それは……何か宣伝になるのだろうか?」
「もちろん、イメージですよイメージ! 実益も兼ねた!」
 有無を言わさぬ勢いの彼女に、アンナはたじたじ首を縦に振らされる。
 なるほど、こういう咄嗟の機転が時として様々な奇跡を生んでいるのだろう――とハンターとして日の浅いアンナは好意的に解釈していた。
 
「あらかわいい、この子はおいくらなの?」
「も、申し訳ありませんがこの子は売り物では……」
 展示用の椅子に鎮座して大あくびをした猫の隣で、茜が苦笑気味に頭を下げる。
「リアルブルーでは“ペットも家族”という考え方があるのはご存知ですか? ご自分のお子さんに接するように、ペットにも家族同様の愛情をもって接する文化があるんです」
「ああ……何となくわかる気はするわ」
 しげしげと頷く婦人に、茜はこれ好機とずずいと距離を詰める。
「例えば! 愛らしい猫にも同様のお洒落を……! この首輪とか見てください。このワンポイントのミニコサージュがKAWAIIポイントでして――あっ、私がつけてるのと同じデザインなんですよ!」
 自身の胸元のアクセサリーを強調しながら宣伝、宣伝。
 聞いたところ、やはり家畜のイメージが先行する中で「ペット」の位置づけは曖昧のよう。
 意識を根付かせることは難しいかもしれないが、何事もチャレンジだ。
 意気揚々と目を輝かせる主人の横で、愛猫ミールは素知らぬ顔で大あくびをついていた。


「それじゃあ、注文は確かに。安全かつスピーディーに、お届けするぜ!」
 サインの済んだ注文票を受け取って、ジャックが(なぜか)薔薇の花を咥えて視線を投げる。
「は、配達はあなたがしてくださるの……?」
「おっと、それは扉を開けてのお楽しみだ……いい夢見ろよ!」
 どぎまぎする客を玄関先で見送ると、1日酷使された薔薇の花びらがひらりと風に乗って飛び上がった。
 時刻は夕方。
 今のが最後の客だ。
「ふぅ~、お疲れ様でした!!」
 一斉に零れた大きなため息とともに、頭を下げ合う従業員たち。
 店内に戻ってきたジャックは完全に意気消沈した様子で、どっかりと椅子に腰かけた。
「新しい商売のいい経験になるかと思ったが……流石にこれは、何度もできることじゃねぇな……」
「いいじゃないですか、薔薇も羨むいいオトコって……そういうコンセプトカフェもありかもですね?」
 アシェールの提案にジャックはゲッソリとした表情で顔を引きつらせる。
「エヴァルドさん、これお客様から集まったアンケートです。今後の本営業に役立つかもって思って」
「これはありがたい。助かりますよ」
 紙束をまとめて差し出した茜も、流石に少し疲れた様子で小さく一息。
「あ、それと……この猫用の首輪って買えますか? この子、気に入っちゃったみたいで外させてくれなくって……その、できればお安くしてもらえればなぁなんて」
 毛づくろいに余念がないミールの首に光るコサージュ付きの首輪。
 エヴァルドは満足げに頷いて「では従業員価格ということで――」と、財布を握りしめる茜に微笑みかけた。

「あまり心配いらなかったわね。意外と向いてるんじゃない?」
 バックヤードでコップを拭きながらふと口にしたクリス。
 洗い物をしていたアンナは皿の水気を払いながら、視線だけをそちらへ向ける。
「接客業が、か?」
「いや、きっとそうじゃないよ」
 クリスの代わりに答えたのは、棚に食器を戻していたリク。
 彼はうんと背伸びをすると、きれいに拭いた調理台の上にコトリと何かを置く。
 それはリアルブル-で言うタブレット端末と、ルームフレグランスが入った小包みだった。
「ちょっとキザっぽいけど、出発祝い」
 突然のことに戸惑うアンナに彼は真正面から向き合い、手を差し出す。
 過酷で残酷で、それでも可能性に満ちている。



 ――ようこそ、ハンターライフへ。

依頼結果

依頼成功度成功
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MVP一覧

  • 東方帝の正室
    アシェ-ルka2983

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 魂の灯火
    クリス・クロフォード(ka3628
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 語り継ぐ約束
    天王寺茜(ka4080
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談するとこです。
天王寺茜(ka4080
人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2018/09/01 20:28:11
アイコン 質問するとこです。
アシェ-ル(ka2983
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2018/08/29 13:57:42
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/28 22:45:36