この種が木になる日には

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/09/25 15:00
完成日
2018/10/03 04:58

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●イスルダ島にて
 リシャール・べリンガーは大江 紅葉(kz0163)から預けられた巾着を手に、イスルダ島に到着した。船が完全に止まるのを待つ。
「ウィリアム様に会うのはあの時以来で、緊張します」
 べリアル(kz0203)との戦いがひと段落着いたときに催されたイベントの時であり、プエル(kz0127)にウィリアム・クリシスが攻撃を受けたときだった。
 覚醒者でもあるのに何もできなかった自分を恥じ、エトファリカ連邦国に行き修行を試みた。ハンターたちの助けも得て、徐々に自信や目指す方向を見出しつつあった。
 ウィリアムはリシャールの父の友人であり、プエルはウィリアムの長子ニコラスである。歪虚となった経緯もそれとなく父親やニコラスの妹イノアからリシャールは聞いていた。
「……身軽になったウィリアム様がここに来ていたんですよね」
 結局、貴族同士のパワーバランスやら、王国のためになることとは何かとか考えた結果、イスルダ島の調査に入りたいという民間人の助太刀に入ったということだった。出資だけでなく来たのは、情報を得る為でもあるらしいが、本心は不明だ。
「私はウィリアム様の代わりにはなれないですが、覚醒者であるため、汚染地域でも行けるのは強みです」
 元領主であるウィリアムも権力はないが、実績はある。リシャールはただの領主の跡取り息子で各種実績はない。
 大きく船が揺れ、止まった。
 出迎えているウィリアムとリシャールに年の近い二人の青少年を見つける。
 リシャールは船から下りると挨拶をする。
「リシャール君、大きくなったな」
「あ、ありがとうございます。最近、身長が伸びたんです!」
「いや、それだけではないよ?」
 リシャールは嬉しくなる。
「初めまして、シールです。本名、忘れてしまいました」
「……え? ちょ、待て、シー坊……嘘だろう。俺はライル・サヴィスです……いや、シーラル・ディーラだっただろう!」
「……そ、そうだったっけ」
 リシャールは目の前で繰り広げられていることが事実か、気を紛らわせるためのパフォーマンスなのか計りかねた。
 リシャールがウィリアムを見ると純粋に驚いている。つまりこれは事実ということだろうか。
「本当に忘れていたということですか?」
「はい。だって……島出るときのこと忘れていたし、できれば、なんというか」
 そのあと、忘れたいためにライルに八つ当たりをしていた。その間、ライルはできるだけ道化を演じていたということもある。
「そうですか」
「あ、いや……そんなに深刻な顔しないでくださいよ! 僕はもう大丈夫だし、そうじゃないと、ここにいられないですよ」
 リシャールの顔を見てシールが慌てる。
「それより、これをお二人に。紅葉さんが渡すようにと、育てやすい木の種だそうです」
 巾着を渡した。
「え? 種の名前は?」
 リシャールは首を横に振った。
 シールが中を見るといくつかの種類があると知った。
「つまり、どれかが育つし、育たないかもしれない……育てばわかる」
 ライルが苦笑する。
「でも、なんでリシャール様に?」
「あ、様なんていらないですよ」
 いわれても二人は顔を見合わせ、ウィリアムを見て、リシャールを見て悩んだ。
「えと……リシャールさんになんで持たせたんですか?」
 リシャールは経緯を話すことにした。

●経緯
 リシャールが来た経緯は、ハンターとしての腕を磨くとかトップに立つための行動を学ぶという意味合いだった。結局、家の近辺にいてもやれることは決まっているし、かといってハンター業を勧めるのも父親としては悩んだらしい。その結果、ある程度行動が決まっているここに置くことになったというのだ。
 種が来た経緯は紅葉の思い付きらしいが、王国に運んでもらうものがあったからだった。国外に行ってみたかった紅葉の師匠が届けに来たのだが、運がいいのか悪いのかわからない物品だった。
「え? あの人が拾っていた石に、特殊なものがあったって?」
 シールもライルも紅葉がうろうろして地面を掘って、カバンに石を詰めていたのは見ている。
「そういえば、神殿跡地でも掘っていたから……何かあってもおかしくはないよね」
 結果、王国にその石は返却するついでに、シンボルツリーにどうぞと種を持ってきたというのだ。
「シンボルツリーか……とはいってもランダム」
「でも、あの場所にだってすぐに戻れるわけではないし、拠点というか目印があってもいいよな」
「そうだよね」
 シールとライルはうなずいている。
「そうだね、私も見てみたよ、帰る前に」
 にこやかにウィリアムが告げる。リシャールと入れ替わりにウィリアムが帰ることになっている。リシャールは今の言葉に不穏な意味を感じた。
「駄目ですよ、ウィリアム様は何があるかわからないから植えに行くの連れて行きませんよ!」
「リシャールさん、そんな顔しないでください! ウィリアム様、フットワーク軽いのはいいのです。すごくいい人だと僕は思いますだけど……だけど……汚染地域の近くまで行こうとするのは本当、やめてほしいんです」
 この瞬間、リシャールはこの二人の苦労を知った。話を聞くと、二人が行く場所は汚染からは脱却してはいるというが、何が有るかわからない。
 ウィリアムが来た時、紅葉が護衛として来ていたのは、浄化状態がわからないため、安全を考えイノアが依頼したという。結果的に彼女は石を拾っているだけで護衛らしいことはしていないのだが。
「……駄目です、今は駄目です。木が立派に育った頃ならいいと思いますが」
 リシャールが念を押したところで、シールとライルが味方を得たとばかりにリシャールを頼もし気に見た。
「しかし、そこは汚染地域ではないんだよ?」
 ウィリアムがおずおずと言った事実に、三人は反論できなかった。

リプレイ本文

●衝撃
 シレークス(ka0752)は半年ぶりに会ったシールとライル・サヴィスの顔を見て自然と笑みが浮かんだ。
「都合がつかねぇうちに半年ぶりになっちまいやがりました。シールもライルも元気そうでなによりなのですよ」
 シールとライルは気にかけてくれたことに礼を述べる。
「……それはそうとして……まぁ、気持ちは解かりやがりますが、よいおっさんが若者を困らせもんじゃねーですよ?」
 ウィリアム・クリシスはシレークスの指摘に穏やかに笑って「すまないね」と言った。
 マリィア・バルデス(ka5848)はリシャール・べリンガーとシールとライルを連れて、一旦拠点から離れた。
「リシャール、ライル、シール、今からあなたたちを叱るわよ」
 三人はキョトンとした。
「ハンターがこれだけいて、依頼人もちゃんと落としどころをわきまえている。それで護衛依頼を受けないのはハンターとして恥だと思いなさい。あなたたちが一般人である前クリシス卿を心配するのはよくわかるわ。それでもハンターなら依頼人が何を願って依頼を出したか考えなさい」
 三人はバツの悪そうな顔でうなずいた。
「この地に息子がいたかもしれない、その上、息子の軌跡と被害を与えたかもしれない相手への鎮魂と謝罪の旅なのよ」
 リシャールが首を傾げた。
「何かおかしいこと言ったかしら」
「……その、イスルダ島は直接被害を出していないのです」
「え?」
「ホロウレイドの戦いの時、生きていますし、ウィリアムさんが来た理由、出資者代表として情報収集に来たとことになっているのです」
 ライルとシールがうなずいている。
「……つまり、そこまで重い話ではないのかしら?」
「……でも、ウィリアムさんの心の中は私たちには解かりませんし」
「まあ、ウィリアム様に僕たちの村があったということを見てもらうことは良いと思うから」
 リシャールとシールが互いにうなずき合う。リシャールは二人と打ち解けることはできたようだった。

 夢路 まよい(ka1328)は表面上暗い雰囲気をウィリアムから感じないが、その心情を考えてみる。
「やっぱり、プエル(kz0127)がこの島でいろいろしてたことあったみたいだから?」
 トリプルJ(ka6653)はまよいに同意するようにうなずく。
「そうらしいよな、プエルが生活していた場所とか何やら見に来たんだろう? そうでなきゃ、貴族が領地でも王都でもない場所に来るわけないだろうし。連れて行ってやろう」
 レイア・アローネ(ka4082)が同意した。
「あのあたりなら問題ないだろう。多く人が通っているし、徐々に歪虚にかかわるものも減っているだろう。私たちがいるのだし」
 種を埋める場所は、シールの住んでいた村だったところであり、一度ハンターは行っている。
 ウィリアムがまよいとトリプルJの言葉に首を傾げた。それを見た二人が困惑する。
「ちょ、待って、それが目的で来たんだじゃなかったのか?」
「どこでそうなったのか、わからないが。妙に君達がしんみりしながら私を見ているとは思っていたよ? まさか……そこまで深い思惑はないのだけれども……。確かに、あの子がいた形跡はちらほら見つかっている。事実、べリアルと対峙する直前、ここにいたらしいからね」
 ウィリアムは苦笑している。
「じゃ、何で来たんだ?」
「雑貨屋の三人に出資したから」
「まさかのビジネス!」
 トリプルJが目を見開く。
「え、プエル関係ないの!?」
「偶然だよ。自力で戻りたい、状況を知りたいという人たちの支援だよ。国の動きは全体的になるし。私はお金を出し、兵を出した人もいた。一応確認のため誰か行こうとなって、私が来たんだよ、隠居したし」
「しんみりしていた心はどこに行ったのか」
 レイアがトリプルJやまよいを見る。
「あれ、じゃ、プエル討伐しちゃったけど、私」
「仲良かった司祭まで殺してしまったあの子が、それ以上の被害を出す前に止めてくれたのだから、感謝こそすれ、恨みはしないよ?」
 まよいはウィリアムの顔を覗き込み、確かに複雑な思いを持っている様子には見えないと納得した。

●移動
 ユーレン(ka6859)は復興がなされる地に対し複雑な思いを抱いていた。
(二度と戻れぬ、二度と戻りたいと思わぬ。たった独りで村を再建できるわけがない。この地はそれでも、何人も生存者がいたのだな)
 ここの戦いがどのような状況であったか詳しいことは知らない。
 活気のある港にユーレンは種の入った巾着を借りて立っている。種が何か手がかりが得られないかと思ったのだった。そのため、仕事のためにいると気持ちを切り替えた。
「注意書きの一つもよこさぬとは、大江殿も迂闊が過ぎるのではなかろうか。せめて、どんなところに植えるか書いて添えてくれてもよかろうに」
 一つだけは想像がついたが、それ以外はさっぱりわからない。
 教会関係者らしい人にまずは声をかけた。種に詳しい人がいないかというと、時間をかければ見つかるかもしれないという返答だった。しかし、その人は話をきちんと聞いてくれた上で口を開いた。
「種をくれた人がどのような人物か知らないけれど、この地を見てくれたなら育つと推測はしてくれているのではいかな? それに、その種は君が思っているモノだと思うよ?」
「そうか……信用すればいいのか」
「そうだね。あとは、種ごとに分けて、日当たりがよさそうなところと陰になるところと分けて埋めるという案だよ」
 ユーレンは礼を述べ立ち去り、出発の支度が整った仲間と合流した。居残りのリシャールに見送られ、一行は出発した。

 移動はシレークスとトリプルJが前を行き、ウィリアムを守るようにライルとシールが続く。レイアとマリィアが後方を守り、ユーレンとまよいが左右を固める形となった。
 神殿跡地にも人が向かうこともあり、道では異変はない。
 道から逸れ、森に入ると状況は一転する。用がある人はシールたち以外に限られるため、人通りは極端にない。見通しの悪さにより、何がいるか全くわからない。人が通らないことは雑魔などが闊歩しても見つけづらいという問題がある。
「ちょっと上から見てくるよ」
 まよいは錬金杖に【マジックフライト】をかけて空に舞う。ウィリアムの側にユーレンだけでなくシールとライルもいる為、離れても問題ない。上空が見えづらいため、飛べる雑魔や歪虚に来られるのは危険だ。
「この先は、以前来た時と変わっているか?」
 トリプルJはライルに念のため地形を問う。現状見る限りでは以前来た時と変わっていないように見える。一方で、季節が巡ることを考えるとどこか違う森にも見え、記憶に頼るのは良くないと考えるふしもあった。
「むしろ、変わっていないです。港の補強や汚染地域の対策などが優先されているからあまりこちらに来られてませんので」
「距離もあるしな」
「そうですね。最初は勢いでやれていたのですが、現状を知っていくと難しくなりました」
 トリプルJはうなずいた。
 マリィアは村がどうなったかの調査も兼ねて拠点づくりの依頼を受けていたため、会話を聞いて仕方がないとはいえ、残念だとは思う。
「協力していただいたのに」
「仕方がないわよ。安全が優先だもの。人が多く集まるところが優先されるのは。でも、こうして理由をつけるようなことをするのは重要よ」
 マリィアの言葉に、二人は少し表情を明るくした。
「そうだぜです。わたくしたちがあれこれしても、全体の動きに流されちまうですよ。でも、毎日筋トレと礼拝時間を忘れないのと同じように、種を埋めることで、行かねぇいけないと思い出すようになりやがるですよ。結果、理由ができ行きやがるのです」
 シレークスがこぶしを握っていった。
「筋トレと礼拝……そうですね、訓練は重要ですよね!」
 シールが困惑しながらも何かを理解した。
(一人だとできない。二人でも難しい……気持ちがまぶしい)
 ユーレンは話を聞きながら、二人を見た。うらやましいのか、悔しいのかわからない気持だった。仕事と割り切って行動はするが、気持ちはどこか彷徨う。
「雑魔も動物もが出ないというのも気持ちが悪いな。何もいないならいないでいいが」
 レイアは呟く。強度な汚染地域が島のところどころに残っている。そうなると何かしらいても当たり前という部分がある。何も出ないことはいいことだが、逆に不安につながることもある。
 ガサガサという音がした。
 マリィアが銃を構えるが、まよいが下りてきた。
「撃たないでー」
「撃たないわよ!」
「それより、上空に雑魔が二体いたよ。群れている感じじゃないけれど、森にヒトが来たーという感じかもしれない。ということで、私は上空のを狙うから、何かあったら声をかけるね」
 ハンターたちは了解した旨を告げる。
「というわけで、クリシスさん、戦闘になる可能性が出てきた」
 うなずくウィリアムを見て、トリプルJは一瞬考えた。怯えが見ない上、戦場に出たことあるという雰囲気がある。
「どうかしたのかな?」
「いや、戦場に出たことがあるのかとふと思ってな」
「領内でゴブリン退治に行ったり、兵を率いてユグディラを守りに行ったよ?」
 トリプルJは納得した。
「……何か来ましたぜです」
 シレークスが盾と槌を構え、注意を促す。
 一行は一旦止まる。上空では羽と葉が揺れる音、まよいの魔法を使う声がする。
「ライル君、広いところに出るには?」
「敵は気配だけだ。すぐに抜けられるならそこで戦う方がいい」
 ウィリアムの問いかけの理由をレイアが補足する。
「百メートルもしないで村跡に出ます」
 ライルが告げる。
「分かった。俺が先行する。シレークスとユーレンはクリシスさんと来てくれ。ライルとシールは続け」
 レイアとマリィアはその指示で自身の行動を決める。しんがりであるため、後ろと全体を見る。
 シレークスはふとシールが緊張しているのを見た。
「肩の力は抜きやがれです」
 シールは照れたように笑う。
「我がいるし、もし前線に行くのが不安ならば、我と位置を変えるか?」
 ユーレンが助け舟を出す。
「いえ、行きます。心配してくださってありがとうございます」
 シールはライルとトリプルJを追った。
 舗装されている道ではないため、足元の不安定さは危険である。倒れないことが重要であり、そのまま森を抜けた。
 まよいが合流するように下りてくる。
「上空は今のところいないから」
 その言葉は心強い物だった。
 物陰から雑魔が出てくる。複数おり、トリプルJとライルが前に出る。まよいはシールを気にしつつ、状況の把握に努める。そのシールはできることが限られているため森を背に警戒をする。そこにシレークスとユーレンがウィリアムが追いついた。しんがりできていたレイアが一行の側面から来る敵に向かった。マリィアはウィリアムの後方を守るように銃を構え、敵を狙った。
 広い場所で戦うことで手早く確実に、雑魔たちを倒し切った。その後、目的地の村の跡に向かった。

●場所はどこに
 建物がある方が心に重くのしかかる、恐怖と不安が。何か隠れている可能性、ありしの姿があるための胸の中のざわめき。
「……ここは」
「僕が生まれ育った村です」
 ユーレンにシールが言う。その先に牧草地がありそこに家があったという。
「本当、戻ってこられるとは思いませんでしたよ」
「そうか……戻りたいと思ったのか?」
「そうですね……正直、戻りたくなかったという気持ちもあります」
 シールは辛そうな表情になる。
「すまない」
 ユーレンは謝罪するが、シールが慌てる。
「いえ、僕は恵まれていて、助けてくれた人がいたのです」
「我は……」
「種を埋めに来たんだぜーですよ?」
 シレークスはユーレンに「種の話をするのですぜ」と告げる。
「どこに植えるんだ?」
 スコップを持ってトリプルJは確認する。
「雑魔なんかも出る可能性があるのだろう? 私は警戒を中心にしておくから」
「同じくそうしておくわね。死角も多いし」
 レイアとマリィアが一行に背を向けるように、立つ。建物があるということはそれにつながる。
「一応、推測であるが、これがアーモンドだろうということ」
 ユーレンが聞いた話をもとに種を幾つか分けた。
「埋める間隔は開けた方がいいよね」
 まよいは確認する。
「この辺りを整地するってことですね。埋めた後、獣に掘り返されるのも嫌なもんですね」
 シレークスは腕まくりをして準備をする。
「……あー、それは確かにある」
 まよいは獣を見ていないが、負のマテリアルがなくなれば、何らかで動物もいるかもしれないから。
「簡単に柵でも作るというのも一つの手だぞ?」
 レイアが助言を出す。
「確かに、柵を作りやがれです。まずは埋める準備をしやがるです。石などあるならつぶすですよ」
 シレークスはスキルを用いて耕す。土が固くなっているため、スキルがあると早かった。
 そこから、種ごとにどこに埋めるか決めた。同じ種を同じところに埋めて生えないのも問題なので、何か所かに分散させる。
「植林みたいだな」
「確かに、シンボルツリーじゃないわね、イメージが。でも、いいんじゃないの?」
「そりゃ、一本でもたくさんでも、新しい芽が出る方がいいだろうから、これでもOK」
 マリィアはトリプルJの答えに笑いうなずいた。
 ユーレンは緑に覆われる地域の想像をした。アーモンドならば、育てば花も咲くだろう。
「戻るといいな」
 ぽつり、つぶやいた。

●種が木になる日まで
「立派な木に育ってくれたらよいですねぇ」
 シレークスの言葉に、ライルとシールはうなずく。
「それより、お世話しなきゃならないんじゃないの?」
 まよいの言葉にライルとシールが「あっ」という顔になった。
「まさか、何も考えていなかったの?」
「お前ら……」
 マリィアとトリプルJがあきれたと苦笑する。
「土自体が水を貯えるからあわてることはないと思う。ただ、始めの内は細かく水やりはしたほうがいいかもしれない」
 ユーレンの言葉に二人はうなずいた。
「どっちにしろ、最初はここの手前に拠点を築こうとしていたし、徐々に、動けるようになるろう?」
「そうだね、リシャールさん、覚醒者だし……」
 ライルはシールに黙るようにしぐさで示した。
「別に気にしてはいないよ。非覚醒者でも来られるとしても限度があったのは事実。見る事は見たから、次どうするかは決めるし、少しずつ、人が住めるようになることは必要だ」
 ウィリアムは苦笑する。教会だった建物を見て、周囲を見渡す。地形、土の状態を確認していた。
「うまく育つといいな……いや、育つさ。そのときはまた私たちを呼んでくれ。それに、ウィリアムも見たいだろうからな」
 レイアは立ち去るとき、一度、埋めたあたりを見たのだった。

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MVP一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークスka0752
  • 黒鉱鎧の守護僧
    ユーレンka6859

重体一覧

参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 黒鉱鎧の守護僧
    ユーレン(ka6859
    鬼|26才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 植樹と領主の同行
トリプルJ(ka6653
人間(リアルブルー)|26才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2018/09/25 10:46:42
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/09/25 10:35:33