忘年会を温泉で

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
イベント
難易度
やや易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
3日
締切
2014/12/29 07:30
完成日
2014/12/30 13:53

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●今年の締めはリアルブルー式で!
 年末がすぐそこまでやってきて、人々の忙しさもそれに拍車をかけるこの季節。
 以前雑魔が沸いたりならず者が居座ったり、その対処のお礼としてハンターを招いたりした結果、随分とハンターとの接点が多くなった、帝国で開発されたリアルブルーの文化を取り入れた温泉街の中のひとつの施設。
「リアルブルーでは年末年始に忘新年会というパーティー……宴会、の方が近いか。そういうものを執り行うらしい。なんでも参加者と年末は一年の苦労をねぎらい合い、新年はこれからの一年もよろしく頼む、というような挨拶をかわしながら行く年くる年を賑やかに過ごすのだとか」
 宿泊施設を兼ね備えた温泉施設の館長は従業員たちに重々しく告げる。
「リアルブルーからの転移者の皆さんにとっては年末年始の恒例行事なのではないかと思う。クリムゾンウェストに来たことが原因で忘新年会が出来なくなる、と残念に思っている人も中に入るかもしれない。
 そこで転移者も多いハンターの皆さんをもう一度招待して忘新年会の知識を実地で仕入れようと思う。
 各自もてなしの方法を考えて前回以上に皆さんに満足して頂けるよう、努力する。
 それが我々に課せられた今回の使命だ。皆、忙しい時期だが全力で励むことでより一層リアルブルーの文化を取り入れたこの施設の発展へとつなげよう!」
 温泉施設の戦争が、その一言で勃発した。
 銃火器も刀剣類も魔法も飛び交わないがそれは『サービスを供する側』にとって正しくある種の戦争、と言えるだろう。

「二回ほど戦闘依頼をこなしてもらった温泉施設を覚えているかな。あの、のぞきダケとして生まれ変わったならず者とかがいるところ。
 リアルブルーの文化を取り入れるって事で今回は試験的に、ええと、なんだったかな。忘新年会、だっけ。そういうのをやってみようって事になったみたいだよ。
 リアルブルーの人たちの本場仕込みの忘新年会の仕方を教わりつつクリムゾンウェスト出身者にも楽しんでほしいんだってさ」
 あそこもサービスの向上目指すのに熱心なところだよね。ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は感心したように言葉を紡ぎながら集まったハンターの面々に招待状を手渡す。
「リアルブルーの忘新年会を実地で学び、広めていきたいらしいからさ。どっちの世界の人も教えるなり楽しむなり好きに過ごすといいと思うよ。
 あぁ、でも忙しさで忙殺されてるだろうから覗きとかで向こうの手間を増やすのは駄目だよ。
 お酒は……飲酒可能な年齢なら、羽目を外さない程度に楽しんでいいんじゃないかな。リアルブルーのお酒もあるみたいだしね。
 温泉は男女別のものと混浴が内湯と露天風呂を備えてるから異性の肌を見たい人は素直に露天にね。
 露天だけ水着必須だけど。
 マナーを守って楽しく過ごせればいいんじゃないかな」
 前回出してもらった足湯の実装とか覗き対策とかはあの後リニューアル期間を置いて実装されたみたいだよ、と最後に付け加えて招待状の説明は終わったのだった。
 戦いへ明け暮れる覚醒者たちへの、温泉施設からのプレゼント。受け取るかどうかはそれぞれの判断にゆだねられた。

リプレイ本文

●温泉施設は平和ですか? いいえ戦争真っ只中です
 リアルブルーで馴染みの忘年会を、クリムゾンウェストでも。
 そう言い出したのは覚醒者たちに何度か窮地を救われ、そのお礼に一度彼らを招待した事のある温泉旅館だった。
 オープンしたばかりで忘年会をとり行うのは誰しも初めてのこと。
 賑わっている温泉施設なので客人が多すぎて手も足も出ないほど忙しい、というレベルではなかったが、クリムゾンウェストの人間にとってリアルブルーの文化というものは大体が伝聞。
 リアルブルーについての知識やマナー、食事の供しかたなどはオープン前にある程度学んだがその知識は忘年会にどれほど効力を発揮するか。
 初月 賢四郎(ka1046)は最初はゆっくり休むつもりで忘年会に参加したのだが生来の几帳面さが裏目に出て宴会指導役となっていた。
「す、すみません。せっかくおもてなしをするつもりでご招待したのに手伝っていただいてしまって……」
「いえ、裏方にとっては、こういう時こそが戦場でしてね。
 初めての仕切りとなれば不安も大きいでしょう。
 放っておくわけにもいきませんし、最低限のことはお話しますよ」
 俗にいう宴会芸などの話や忘年会と対になる新年会の雰囲気を中心に指導する賢四郎。
 接客や料理を出すタイミングはどうやら心配なさそうだと判断したところで自分も本来の目的である慰安を楽しむことにする。
「あぁ……そうだ。最後に一つ。普段の宴会より忘年会や新年会は羽目を外してお酒を飲みすぎる方が多い印象を受けます。
 入浴中の飲酒はお酒の周りも早いですから注意しておいた方がいいかと」
「はい、ご教授、いろいろありがとうございました!」
「いえ、後は楽しませてもらいます。頑張ってください」
 賢四郎からみれば甘さも目立つ部分はあったがそれをやる気とチームワークで乗り越えようとする温泉施設の職員たちの今後に期待、だろうか。
 指導を終えた後、指導の疲労と今年の疲労を纏めて癒させてもらおうと温泉でリアルブルーの日本酒の作り方を真似て作られた米酒を飲みながら一休み。
「やれやれ、やっぱりこれですかねぇ。ホント、落ち着ける暇なんてありませんでしたし。
 とはいえ……帰れるんでしょうかねぇ……」
 リアルブルーの空気の一端を感じたのか、露天風呂で天を仰ぎながらぽつりとそんなことを呟いたのだった。

 榊 兵庫(ka0010)もまた、宴会についての応急処置的な知識を温泉施設の館員に伝えていた。
 一般的な概念を速記しながら復唱していく器用な館員は学ぶことに熱心で分からないことは積極的に尋ねてくる。
 クリムゾンウェスト側から見ればそれなりに見知った存在とはいえリアルブルーはやはり異世界。
 局地的な文化は学ぶことが難しい面もあり、今回は手探り要素も大きい。
 指導を済ませた後兵庫は温泉に浸かることに。
「……温泉にゆっくり浸かって日ごろの疲れを癒すとか、ある意味贅沢の限りだな。
 せっかくのご招待だ。楽しませてもらおう」
 足を伸ばすのに合わせて上半身も大きく伸びをする。
「……足を伸ばして入れる風呂というのは貴重だしな。
 こちらの世界にも温泉や風呂屋が普及してくれると日本人の俺としても大いに助かるんだが」
 風呂あがり、料理を摘まむ際は女湯で寛いでいたらしい同行者の日下 菜摘(ka0881)に隣に座ってもらう。
 菜摘も温泉に招待してもらったことに感謝し、せっかくだから常日頃の疲れをゆっくり癒すことにしようと温泉に浸かり、日ごろの疲れをより効率よくとるために湯上りにはマッサージをして体調を整えていたらしい。
「……こちらでの生活にもずいぶん慣れましたけれど、やはりゆっくりお湯に浸かる機会が少ないというのは難点ですね。
 こういう場所にもっと気軽に来れるようになるといいんですけど」
 そんな言葉を紡ぎながら兵庫へとお酌をする菜摘。
「兵庫さんはいける口ですよね。おひとつどうぞ」
「ドクターも一杯どうだ? ……こちらに慣れるまで、ドクターにもお世話になった。今後もよろしく頼むな」
「いつまでもドクターじゃなくて、菜摘と呼んでくれてもいいですよ」
「それは……うん、まぁ。……前向きに検討するってことで」
「そんなに呼びにくいですか?」
「ずっとドクターと呼んでいたからな。癖になっていそうだ」
 困ったように頬をかく兵庫に菜摘は強要も急かすことはしませんから呼びたくなったらどうぞ、と助け舟を出したのだった。

「年忘れか……リゼリオにきて出逢った大切な仲間と経験した出来事はどれも忘れられないけれど、ともあれ一年の労をねぎらって」
 温泉施設の館員と共に忘新年会について学び、サービス提供の手伝いをしていたエイル・メヌエット(ka2807)がぽつりとそんな言葉をこぼす。
 宴では楽しむよりもてなす方が性に合っているというエイルは宴会や入浴で飲みすぎ、湯あたりで気分が悪くなった人や千鳥足で歩いて怪我をした人には聖導士であり医者であるという立場から手当てを受け持った。
 ある程度裏方面での戦争が落ち着いた頃合いを見計らって自分も寛がせてもらうことに。
 温泉で水着を着て、というのもなんだから、と女湯でのんびりする。
「皆、今頃どうしてるかな……」
 共に戦ってきた仲間たちに思いを馳せて、胸に宿る感謝と一抹の寂しさを感じながらエイルの忘年会は過ぎていった。

 神薙 綾女(ka0944)はこの温泉施設のことを知った現在所属する傭兵部隊の隊長から日々の業務のねぎらいとして休暇をもらって来訪していた。
「温泉ですか……ふふ、なかなか粋なことをしますね。ゆっくりさせてもらいましょう」
 刺身や寿司、そのほかリアルブルーの日本で祝い事の際に出されるメニューの中から適当に見繕い味を楽しんだ後温泉へ向かう綾女。
 向かったのは女湯だが水着は着用、さりげなく覗き対策用のナイフを持ち込んでいる。
 賑わっている面々から少し離れ、一人湯に浸かり桶酒を浮かべて景色を堪能しながら酒を味わう。
 覗きなどの不測の事態にはほろ酔い状態でのナイフ投擲で制裁を加えるつもりだったが平和な時間が流れたので杞憂だったようだ。
「いやはや生き返りますね……一緒にこれたらよかったのに」
 温泉に浸かっての酒は回るのが早いのでいつもより早い段階で酔いを自覚し、風呂で酔いつぶれては迷惑をかける、と名残惜しさを感じながら脱衣所へと向かう。
「温泉、楽しませていただきました。また、機会があれば今度は連れと一緒に来ますか」
 温泉宿の仲居たちに見送られて綾女はひと時の休息を終え彼女の日常へと戻っていったのだった。

 那月 蛍人(ka1083)は【メネル】のなかでもマッシュ・アクラシス(ka0771)と中心に行動を共にしていた。
 温泉は初めてだというマッシュにリアルブルー出身者として張り切って利用方法をレクチャーしようとする蛍人。
「休暇で温泉なんて最高だな!」
 温泉に来たからには露天風呂、と力説する蛍人が連れていったのは露天風呂は露天風呂でも混浴の露天風呂だった。
「ほ、ほら。他の人と交流するには混浴のほうが便利だから……っ!」
 水着を着用してください、という注意書きを見て少し残念に思いながらもま、そうだよな。と諦めて水着を着る蛍人。
 温泉に皆ではいるという行動は初めてのマッシュも蛍人が基本的なマナーをレクチャーしてくれたおかげで比較的早く温泉になじめたようだ。
「何故か露天風呂とやらに熱心な関心を寄せているようですが……いったいなにがあるのか。
 風景を楽しみ、酒宴に興じることができるなら、それもうなずける話ですが。
 ……よもや、それ以外に何かありましたでしょうか」
「い、いや、そんなことはないぞ! しいて言うなら……そう、露天風呂は外気で体を冷やしながら温泉で温まり、のぼせそうになったらまた外気で体を冷やして、とゆっくり浸かるのにぴったりなんだ、冬だから特に!」
「ふむ、そういうものですか」
 ちょっと挙動不審な蛍人の言動に首を傾げつつ風呂をあがる二人。
「コーヒー牛乳は腰に手を当てて飲むのがルールですよ」
 フルーツ牛乳派と白牛乳派との論争は尽きませんけど今日はコーヒー牛乳でいきましょう。
 そういいながら腰に手を当てて牛乳瓶を傾ける蛍人。
「珈琲牛乳、とやら。飲料に対してフォームの必要性とは一体……」
 不思議なルールもあったものだ、と思いながらもそれがルールならば従おう、とマッシュも腰に手を当てコーヒー牛乳を煽ったのだった。
「さて、ほかの隊員が何か用意しているようなので合流しましょう。
 この休暇も次のため……また、なにやら騒がしくなることですしね」
「そうだな。戦いに向けての英気は養った。この恩は平和な世界に近づけることで返そう」
 ラウィーヤ・マクトゥーム(ka0457)と妹のラミア・マクトゥーム(ka1720)は作った弁当は後で【ネメル】のメンバーと一緒に食べることにして、混浴の露天風呂へ。
ラウィーヤは露出の少ない水着を用意していたとはいえ混浴とは知らず、場に馴染めなくて少し拗ね気味に温泉を堪能していた。
 ラミアが皆に温泉休暇を提案してくれたのは本当に助かったしお弁当作りはいい気分転換になった。
 温泉でのんびり羽根を伸ばすつもりだったが……混浴ということがどうも気になる。
 ついてきたパルムに気づくと膝にのせてそっと目を塞いでみたり。
 そんな風にむくれる姉がかわいいなぁ、と思いながら宥めて一緒に入っているラミアは幸せそうだ。
「お酒もちょっと入れようか。あたしはあんまり強くないけどね。これからもよろしくね、姉さん。
 そんなに怒らないでよ。息抜きに来たんだから楽しもう?」
「……あ……怒ってるわけではない、ですよ……?」
「そう? ならいいんだけど。一年間おつかれさま」
「はい、お疲れ様……です」
 慈姑 ぽえむ(ka3243)は久しぶりの温泉に心躍らせていた。
「温泉かぁ……リアルブルーにいたころはそんな暇なかったし……凄い久し振り」
 こっちに来てからは働いてばかりだったしたまには休もう、と【ネメル】のメンバーと慰安会に参加。
 混浴で蛍人やマッシュが飲んでいるのをみてフリフリの可愛らしい水着に身を包んだぽえむは少し近づいてみることに。
「ほんと飲むの好きよねぇ……倒れないようにしてよね?」
 あとでお弁当をみんなで食べようという誘いには喜んで快諾し、まずは温泉を楽しむ。
「……私も、妹とか弟ときたかったなぁ」
 マクトゥーム姉妹をみながらぽつりとつぶやく。
 こうして過ごしている間も故郷の弟妹のことはやはり心配で。
 自分だけこっちに来て、毎日こんな風に楽しく過ごしていいのかな、としんみりした気分になる。
 そんな様子を剥げます傭兵隊の仲間たちに感謝しつつ、いつか再会出来たらこの世界についていろいろ教えてあげよう、そして離れていた時間がすこしでも埋まるようにたくさん話をしよう。
 そう胸の中で誓うのだった。
 シュテル・クーヘン(ka0644)は故郷のドイツにも温泉があったこともあり温泉好きなので今回の企画を楽しみにしていた。
「こっちの温泉はどんな感じかなー」
 混浴の露天風呂で黒のビキニを着用しながらまったりとする。
 温泉から出た後は【ネメル】の傭兵隊の仲間たちとラウィーヤの作ったお弁当で食事会。
 故郷のドイツでは十六歳から飲めるから、と酒を飲もうとするとまだ早い、と止められる。
「えーいいじゃん別に―。……ねぇ、ダメぇ?」
 色仕掛けで粘ってみるものの施設の人にも止められしぶしぶ従うシュテル。
 傭兵隊の慰労会は終始和やかな雰囲気で過ぎていったのだった。

 ラルス・コルネリウス(ka1111)とエルフィ・ウルリーケ(ka1116)は【ネメル】のメンバーと温泉と食事会を楽しんだ後部屋を借りて月見酒に興じていた。
「たまにはこういうのも、いいよなー」
 エルフィにお酌をしてもらいながらゆったりと過ぎていく時間。
 着付けてもらった浴衣でお酌をするエルフィの湯上りの色っぽさを眼福眼福と眺めているラルス。
 チラチラと目を泳がせるが下心を隠す気はゼロ。
「あら、飲みすぎでしょうか……少し顔が赤いですわ?」
 そんなラルスの様子に首を傾げ、ラルスと自分の額と額を重ねて熱を測るものの平熱。
 湯あたりしたわけでも酒に酔いすぎて体温が上がっているわけでもなさそうだ。
 目を瞬かせながら右に傾げていた首を左に傾ぎなおす。
「いや、いいものがみれてるんでな」
「いいもの?」
「……一年か、あっという間だったよなぁ」
 エルフィの言葉には敢えて明確な返事を返さず、一年を振り返るラルスにエルフィもうなずく。
「そうですね、あっという間……でしたわ」
 ラルスの言葉に、里を抜け出して間もなく、世間知らずという自覚のある自分を常に気遣ってくれる隣に座っている青年に深く感謝の念を抱きなおす。
「来年もよろしくな。どっかいくなら俺の手の届くとこにしてくれよ。
 知らないところで何かあったらかなわねーからな」
「はい、これからも、どうぞよろしくお願いしますわ」
 頭をぽむぽむと撫でながら告げるラルスにエルフィははにかみながら頷くのだった。

 キヅカ・リク(ka0038)はリサ=メテオール (ka3520) を依頼のお礼もかねて温泉に誘ってこの場に来ていた。
 クリスマス用に用意したプレゼントは流行の胸開きタートルネック。
「これ、よかったら」
 キヅカからのプレゼントを受け取り服だということを確認して礼を言ったあと後で着てみる、と答えるリサはキヅカから温泉は混浴するもの、と事前に言われて鵜呑みにしてしまう程度には素直な性格だった。
 誰とも被らない時間に水着を着て混浴の内風呂へ。
 水着越しのボディラインにドキッとするキヅカと水着を着ているとはいえ入浴をキヅカとともにするという事態にはじらうリサ。
 何とも初々しい空気が流れる中リサはそんな空気を払拭するために、キヅカにリアルブルーの同年代はどんな生活をしているのか質問する。
「んー、学校ってところにいったりカラオケいって遊んだり……あ、カラオケっていうのは機械が伴奏してくれて歌うためにある施設で、歌のうまさを採点してくれるシステムとか拍手機能とかあるんだけど……」
 いつかリアルブルーにいける日が来たら、案内するよ。
 微笑んで約束した後逆にリサがハンターになるまでのことを興味本位で聞いてみる。
 孤児院出身で酒場で働いていたことをリサが告げるとキヅカは苦労したんだね、と目を伏せた。
 お互い入浴を満喫した後男女別の脱衣所で体を拭いて着替えることに。
 リサはプレゼントにもらった胸開きタートルネックを着てお披露目したが胸元を気にして湯上りで紅潮した頬が余計に赤くなっている。
 上目づかいで本当にこれがリアルブルーで流行っているのか問いかけた。
「……えっち……でも、ありがと。プレゼントのお礼ね」
 出てきたリサのタートルネックの衣装の胸元に意識がいきつつも似合っている、と褒めたキヅカの頬に軽くキスをして照れて逃げるリサだった。

「温泉は初めてと言っていたな。まぁ、そう気負うこともあるまいよ。楽しんでもらえれば十分だ」
 弥勒 明影(ka0189)は共にやってきたナイトメア(ka2259)にそんな言葉を投げかけた。
 宴会ということで酒を他の面子の振る舞いを肴に飲んだ後は混浴の露天風呂へ。
 下心を微塵も持たなかったのは魅力がないからではなく、単に信頼に反するだろうと思うが故のことだった。
 適当に選んできた水着を身にまとい、今度は夜空を肴に酒を酌み交わす。
「――メアにとって、今年一年は如何であった? よき時を過ごせたかな。俺は十分に。
 周りに恵まれていたからな。まぁ、なんだ。
 ――来年もよろしく頼むよ」
 一方のナイトメアは慣れない行事に戸惑いつつも酒を片手に宴会も温泉も楽しんでいる様子で。
 露天風呂の、薄ら積もった雪に風情を感じると弥勒をエスコートをかねていろいろつきあわせて満足したようだ。
 露天風呂での時間は最低限の恥じらいは残していたが信頼からか共に語りたい気持ちの方が強く、酔いに任せた言葉の中にさまざまな本音を混ぜる。
 すこし変われたこと、酒癖が悪くなったこと。そして、ただただ『楽しかった』こと。
「弥勒が前を見せてくれて、あの子が後ろから支えてくれた。私にはもったいない『仲間』を持てたという意味で私も周りに恵まれた。
 そんな素晴らしい年だったよ。
 ――こちらこそ、来年もよろしく」
 その頃にはきっと酔いはなく、本音だけが真摯に告げられた。
 弥勒は帰り際に土産の購入を考えたが何が、とは特に思い浮かばなかったので温泉饅頭を買ったのだった。

 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はせっかくの休暇になるいい機会だし、この際ハンター稼業を忘れて寛ぐのも悪くない、とリアルブルーの製法で作られた米酒と、米酒にあわせたつまみをお供に温泉に向かった。
「禁止されると覗きたくなるのが男ってもんだが、せっかくの酒が飲めなくなるのは残念だからな。大人しくしておくか。
 それにしても温泉で飲む酒もイイもんだ」
 もし覗きを企てる男がいたら桶でも投げつけておこうかと思ったがどうやらそんな不届き者はいない気配。
 折角の酒を騒ぎのせいで湯船に飲ませるというもったいない現象は幸い起きずに済み、湯上りはきちんとした食事とビールを味わう。
「くぅー、冷たいビールが五臓六腑にしみわたるぜ」
 食後は街に繰り出して温泉饅頭や温泉の蒸気を使って蒸かした芋を探して味わうことに。
 クリムゾンウェストの食文化には不満もあるレイオスだったが今日食べたものは満足のいくものが多かった。
「英気は十分に養った。新しい年も頑張れるな!」

(一年の終わりに鵤さんと温泉なんて嬉しいです。でも態度には出しません。嫌われたくないです……)
 同行者の鵤に対してブラコン気味の感情を抱くGacrux(ka2726)は鵤(ka3319)と共に過ごせる今日という日をとても楽しみにしていた。
 だが楽しみはそれだけでは終わらず、宴会の席では料理に感動。
「こんな贅沢は久しぶりですねえ!」
「今度は風呂の他にタダ飯付ってかぁ? いやー最高だねぇ。メニューも充実してるし」
 Gacruxや同席した人とあれが美味い、此処での依頼はこうだった、そんな風に他愛もない話に花を咲かせつつ料理と酒を楽しむ鵤。
 そんな彼の傍にいるととても楽しく、鵤の前でなら自分も素で笑える、というGacruxも嬉しそうだ。
 鵤は食事を終えるとGacruxをまいて一人でゆっくりするために男湯へ。
 髪と体を洗ってから湯船に浸かるが髪を洗う際はおろすから一見別人のようにも見える。
 入浴時に頭を一度湯船に沈めた後ゆったりと夜空を眺めているとGacruxがやってきた。
 Gacruxものんびり湯に浸かりつつ悪戯心が持ち上がって鵤の顔に水鉄砲を飛ばす。
「悪い子にはエレクトリックショックでツッコミ入れちゃうよ?」
 謝りながらも叱られたことさえ構って貰えてうれしいと前向きにとらえたのか、楽しそうなGacruxに鵤は諦めたように息を吐いた。
 風呂上りは雪景色を眺めつつ鵤と話をしたがるGacruxを相手にしつつ鵤は冷たいビールで一息。
(本当は肩を抱いたり、頭を撫でて欲しいです。口が裂けても、鵤さんには言えないですけどね……)
 その願いがかなわなくても、一緒にいられるだけで十分楽しいから今はまだこのままで。

「温泉……こっちの世界にも……あるんですね……」
 そこはかとなくほくほく顔で呟いたのは浅黄 小夜(ka3062)だ。
 彼女は忘年会もいいな、と思いつつ目当ては温泉。
「招待してもろて、おおきに」
 施設の人たちにお礼を言いつつ女湯へ向かい、女湯でのんびりとしたひと時を過ごす。
 水着を着て混浴の露天に行こうかとも思ったが女湯にも露店はついていたので星を見ながら入ってみよう、と露天へ移動。
 誰もいないことを幸いに、ちょっとだけ泳いでみたり。
 ご飯を食べた後は施設の探索をしたり、もう一度温泉に浸かったり。
 たくさん楽しいがあるといい、そう願った彼女の期待に温泉施設は応えられただろうか。

 クリムゾンウェストの謎を解くことを今の楽しみとしているエリオット・ウェスト(ka3219)は手始めに温泉の成分を解析してみることに。
「硫黄が多いから関節炎にはいいかもね。成分的、地理的に欧州に近いのかな」
 温泉に浸かって気持ちよさを堪能しながら応酬に似た文化圏なのに日本の風習に偏っているのはなぜなのだろう、と疑問が浮かぶ。
 温泉から上がった後、忙しくなさそうな時間帯を見計らって館員に尋ねてみると「リアルブルーの日本は四季折々の風情を大切にしているから、日ごろの癒しを取ってもらうには向いていると開発の段階で研究されたからだと思う」という返事が返ってきた。
 次のターゲットはいつもオフィスでダークマター的な何かを飲食しているルカ・シュバルツエンド(kz0073)のダークマターの解析だ。
 解析のために少しくれないか、と問うと持参していた強烈な刺激臭を放つ何かを口にしていたルカは小皿にとって手渡してくれる。
「うーん、炭水化物が主成分だけど、ナトリウム、糖分……普通だね。ただ、手持ちじゃ解析できない物質があるね」
「おかしいな。普通に店で売っている食材しか使っていないのだけど。……あぁ、心当たりをあげるとするなら、一つあるかな」
 普通の店で売っているものしか使っていないのにここまで危険を感じさせる物体を作り上げるのもある意味凄いが、エリオットはそこには突っ込まず心当たりが何なのかを尋ねる。
「愛、かな」
「…………」
「…………ほら、料理は愛情っていうじゃないか。ふむ、そう考えると僕の愛は重いのかな」
 重い以前に危険すぎる。そのツッコミは結局なされることなく、エリオットは微妙な顔を続ける。
「冗談だよ。何が原因なのかわかったら教えて欲しいな。普通の料理も、僕は好きだからね。僕基準で美味しいものなら、だけど」
 エリオットは善処するよ、と言ってそそくさとその場を離れたのだった。
 何かの異臭が届かない場所まで移動すると、アルコールを飲める年ではないので紅茶とケーキを頼んで味わう。
「この世界はまだまだ僕のしらない不思議であふれているんだろうな」
 来年も、たくさんの不思議を解明できますように。
 そんな願をかけるエリオットだった。

 エミリー・ファーレンハイト(ka3323)はのぞきダケが好評だったことを知り嬉しく思いながら、更に宣伝効果を期待できないかとお土産部門の担当者と企画を詰めていた。
「せっかくのぞきダケがウケたみたいですので、もっといろいろな形で広めるのがいいかもしれません。
 というわけで、余った布を頂いて手乗りサイズ『のぞきダケ人形』を試作してみたわけですが。
 今回のお客さんたちに好評なようでしたら、たくさん作って温泉名物にするのです。
 宣伝効果と思い出づくりとプレミア感あふれる戦略だと思うのです」
 木彫り技術者がいるなら絵板付きキーホルダーや木製置物版を作ってみてはどうだろう、そんな提案をするエミリーにお土産部門担当者が食いついた。
「ご当地ゆるキャラというやつに発展させられるよう前向きにお話を進めていきたいと思います。
 素敵なアドバイス、誠にありがとうございます」
「いえいえ、もっともっと集客効果があがるといいですね」
 宴会では来年へ向けて食いだめするようにたらふく食べる。
 食べ終わったら元ならず者たち、現在はのぞきダケの一行に差し入れを持っていくことに。
「これからものぞきダケ役、頑張ってくださいね」
「おう、あんたか。最近働くのが楽しいんだ。飯も、お宝強奪して豪遊しながら食ってた頃より此処の賄いを仕事のあとに食う方が美味いしな。
 道を正してくれたこと、感謝してるぜ」
「それは何よりです。これからもその気持ちを大事にしてくださいね」

 屋外(ka3530)は温泉の外で雑魔が沸いたりしないかと見回りをしたり、道行く人にお疲れ様です、と声をかけ天然蜂蜜を手渡したりしていた。
 何をしているのかと問われれば少し考えた後正直に答えることに。
「見回りを……それと、一寸、滝を探しています」
 一通り見回りを終え、滝行に励む。
 万が一にも人に迷惑をかけないよう覚醒状態で五十分ほど打たれた後水から上がった。
 可愛すぎて生きるのが辛い、と思うほどの存在を思い返しながらそっと帰路につく屋外。
 彼にとって忘年会もまた、修行の一環だったのだろうか?

 扼城(ka2836)は温泉を楽しみながら依頼の報酬を使い切る勢いで大量の酒とつまみを消費することに。
(……戦っているか、酒を飲んでばかりな気がしたが……まぁ、いいか)
 自分の生きざまを振り返りつつ酒を飲む。飲む。飲む。
 着実に持ち込んだ酒類の量は減っているのに酔った気配がない。
 ザルというより枠に近い酒の強さを自覚しているのかいないのか、男湯の露天風呂で景色を眺めながら淡々と酒を飲み続けるのだった。

 それぞれが思い思いに過ごした忘年会。
 これから待ち受ける試練への英気を養ったハンターたちは彼らの日常へと戻っていく。
 温泉施設の方は今回の反省会を経て次回へ生かすための相談会を始めるのだろう。
 一年が、終わろうとしていた。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 輝きを求める者
    弥勒 明影(ka0189
    人間(蒼)|17才|男性|霊闘士
  • ともしびは共に
    ラウィーヤ・マクトゥーム(ka0457
    人間(紅)|23才|女性|闘狩人

  • シュテル・クーヘン(ka0644
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • 無明に咲きし熾火
    マッシュ・アクラシス(ka0771
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士
  • 影の戦士
    神薙 綾女(ka0944
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 矛盾に向かう理知への敬意
    初月 賢四郎(ka1046
    人間(蒼)|29才|男性|機導師
  • ガーディアン
    那月 蛍人(ka1083
    人間(蒼)|25才|男性|聖導士
  • 勝利をもぎ取る強運
    ラルス・コルネリウス(ka1111
    人間(紅)|20才|男性|機導師
  • 愛しき羊に愛の手を
    エルフィ・ウルリーケ(ka1116
    エルフ|19才|女性|霊闘士
  • ずっとあなたの隣で
    ラミア・マクトゥーム(ka1720
    人間(紅)|15才|女性|霊闘士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人

  • ナイトメア(ka2259
    人間(紅)|21才|女性|聖導士
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士

  • 扼城(ka2836
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜(ka3062
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エリオット・ウェスト(ka3219
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2014/12/28 00:56:10
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
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2014/12/28 16:10:09