ゲスト
(ka0000)
兵どもが、夢の跡
マスター:きりん
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/10/05 12:00
- 完成日
- 2018/10/06 14:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●とある古戦場
その場所は、遥か昔には大きな戦いが起きた元戦場だった。
今では見渡す限りの草原で、凄惨な戦いが起きたとは到底思えない場所だ。
当時は多くの人の死と、死体、そしてそれらで崩れたマテリアル環境に引き寄せられて集まった歪虚たちで、一時期溢れかえっていたという。
しかしそれも今は昔。定期的に行われる浄化術により、この地は平穏を保たれている。
どれだけ手を尽くしても、ここのマテリアルは淀みやすく、放っておけば負のマテリアルのたまり場になりやすいという特徴があった。
これが元々の地理条件が悪かったのか、それとも過去に起きた戦争と、定期的に集まってくる雑魔たちのせいなのかは分からないが、何度浄化しても、時が経つにつれて再び土地のマテリアルは澱んでいく。
そのため、定期的に人員を派遣し、浄化を行うのが通例になっていた。
今年も、その季節がやってきた。
●雑魔蠢く
草原に、白い怪異が何体も佇んでいる。
直立する骸骨たち。
スケルトンだ。
低位の雑魔である彼らは、ここで発生した個体もあれば、他所から引き寄せられてこの地を訪れた個体もあった。
この場所は中の雑魔を閉じ込めるため四方を外壁で囲まれており、四つ門を閉めることで完全に行き来を遮断できるようになっている。
増えていく雑魔が溢れ、他の場所へ流れて行かないようにするための処置だ。
ここへの流入自体は円滑に行わせるために通常は全て門を開けておき、浄化の日取りが近付けば、門を閉めるのだ。
「くわばらくわばら。結界を敷設してあるとはいえ、こんな近距離でご対面なんてしたくねえなぁ」
見張りの兵士の一人が、外壁の上から中の雑魔を見下ろしてため息をついた。
「そうだな。本格的に浄化できればいいんだが、全て浄化したように思えても、十年ほどで元に戻ってしまうからな」
もう一人の兵士が会話を続ける中、彼らの眼下ではスケルトンたちがカタカタと骨を鳴らして動き回っている。
兵士たちは見張りを行いながら、浄化の準備が整うのを待ち続けるのだった。
●浄化が必要
その土地の責任者である男は、浄化の手配が滞っていることに焦っていた。
「ええい! 浄化術の使い手はまだ見つからんのか! 練魔院はどうした! 錬金術師組合に当たっても駄目なのか!」
「そ、それが大きな作戦でほとんど出払っているらしく、現在こちらに動かせる人員の都合がつかないそうで……」
部下である男の答えは至極真っ当で、当たり散らすわけにもいかず、男はイライラと足を踏み鳴らしながら考え込む。
「……そういえば、ラズビルナムの浄化作戦があったな。そのせいか」
「はっ。断言はできませんが、その可能性は高いと思われます」
答える部下に、幾分か冷静さを取り戻した男は鷹揚に頷いてみせる。
真っ当な理由があるならば、諦めるしかない。
「仕方ない。今回はハンターに頼むことにする。せめて雑魔だけでも片付けなければ」
「それが、同作戦でハンターの方々も、かなり出払っているようで」
「なにぃ!?」
「依頼は出してみますが、すぐというわけにはいかないかもしれません」
男たちの間に、沈黙が満ちた。
●ハンターズソサエティ
受付嬢であるジェーン・ドゥは、一つの依頼を手に悩んでいた。
比較的早急な対応が必要な依頼なのだが、普段のハンターズソサエティとは違い今はたむろしていたハンターの数が一時的に減っているのだ。
斡旋したくても、肝心のハンターがこの場にいないのでは意味がない。
「まあ、今いる方々にダメ元で当たってみましょうか」
ジェーンは受付から出て、ハンターを捕まえては依頼の売り込みをかけた。
「一つお勧めの依頼がございますが、よろしければ如何でしょうか? 土地に蔓延る雑魔退治と浄化代行依頼です」
営業スマイルが相変わらずうさんくさいのは、もはやある意味では彼女の個性といっていいかもしれない。
「雑魔が発生している古戦場に赴き、これを駆除していただきます。浄化作業自体は強制ではございませんが、行っていただけるなら当然評価に加えさせていただきます。強力な雑魔は確認されておりませんので、ハンターの皆様なら問題なく倒せるでしょう。浄化が必要な土地は草原地帯で、外壁で囲まれています。見張りの兵士たちが通用門の開閉を担当していますので、浄化作業は中に入って行ってくださいませ」
最後にジェーンは深く頭を下げた。
その場所は、遥か昔には大きな戦いが起きた元戦場だった。
今では見渡す限りの草原で、凄惨な戦いが起きたとは到底思えない場所だ。
当時は多くの人の死と、死体、そしてそれらで崩れたマテリアル環境に引き寄せられて集まった歪虚たちで、一時期溢れかえっていたという。
しかしそれも今は昔。定期的に行われる浄化術により、この地は平穏を保たれている。
どれだけ手を尽くしても、ここのマテリアルは淀みやすく、放っておけば負のマテリアルのたまり場になりやすいという特徴があった。
これが元々の地理条件が悪かったのか、それとも過去に起きた戦争と、定期的に集まってくる雑魔たちのせいなのかは分からないが、何度浄化しても、時が経つにつれて再び土地のマテリアルは澱んでいく。
そのため、定期的に人員を派遣し、浄化を行うのが通例になっていた。
今年も、その季節がやってきた。
●雑魔蠢く
草原に、白い怪異が何体も佇んでいる。
直立する骸骨たち。
スケルトンだ。
低位の雑魔である彼らは、ここで発生した個体もあれば、他所から引き寄せられてこの地を訪れた個体もあった。
この場所は中の雑魔を閉じ込めるため四方を外壁で囲まれており、四つ門を閉めることで完全に行き来を遮断できるようになっている。
増えていく雑魔が溢れ、他の場所へ流れて行かないようにするための処置だ。
ここへの流入自体は円滑に行わせるために通常は全て門を開けておき、浄化の日取りが近付けば、門を閉めるのだ。
「くわばらくわばら。結界を敷設してあるとはいえ、こんな近距離でご対面なんてしたくねえなぁ」
見張りの兵士の一人が、外壁の上から中の雑魔を見下ろしてため息をついた。
「そうだな。本格的に浄化できればいいんだが、全て浄化したように思えても、十年ほどで元に戻ってしまうからな」
もう一人の兵士が会話を続ける中、彼らの眼下ではスケルトンたちがカタカタと骨を鳴らして動き回っている。
兵士たちは見張りを行いながら、浄化の準備が整うのを待ち続けるのだった。
●浄化が必要
その土地の責任者である男は、浄化の手配が滞っていることに焦っていた。
「ええい! 浄化術の使い手はまだ見つからんのか! 練魔院はどうした! 錬金術師組合に当たっても駄目なのか!」
「そ、それが大きな作戦でほとんど出払っているらしく、現在こちらに動かせる人員の都合がつかないそうで……」
部下である男の答えは至極真っ当で、当たり散らすわけにもいかず、男はイライラと足を踏み鳴らしながら考え込む。
「……そういえば、ラズビルナムの浄化作戦があったな。そのせいか」
「はっ。断言はできませんが、その可能性は高いと思われます」
答える部下に、幾分か冷静さを取り戻した男は鷹揚に頷いてみせる。
真っ当な理由があるならば、諦めるしかない。
「仕方ない。今回はハンターに頼むことにする。せめて雑魔だけでも片付けなければ」
「それが、同作戦でハンターの方々も、かなり出払っているようで」
「なにぃ!?」
「依頼は出してみますが、すぐというわけにはいかないかもしれません」
男たちの間に、沈黙が満ちた。
●ハンターズソサエティ
受付嬢であるジェーン・ドゥは、一つの依頼を手に悩んでいた。
比較的早急な対応が必要な依頼なのだが、普段のハンターズソサエティとは違い今はたむろしていたハンターの数が一時的に減っているのだ。
斡旋したくても、肝心のハンターがこの場にいないのでは意味がない。
「まあ、今いる方々にダメ元で当たってみましょうか」
ジェーンは受付から出て、ハンターを捕まえては依頼の売り込みをかけた。
「一つお勧めの依頼がございますが、よろしければ如何でしょうか? 土地に蔓延る雑魔退治と浄化代行依頼です」
営業スマイルが相変わらずうさんくさいのは、もはやある意味では彼女の個性といっていいかもしれない。
「雑魔が発生している古戦場に赴き、これを駆除していただきます。浄化作業自体は強制ではございませんが、行っていただけるなら当然評価に加えさせていただきます。強力な雑魔は確認されておりませんので、ハンターの皆様なら問題なく倒せるでしょう。浄化が必要な土地は草原地帯で、外壁で囲まれています。見張りの兵士たちが通用門の開閉を担当していますので、浄化作業は中に入って行ってくださいませ」
最後にジェーンは深く頭を下げた。
リプレイ本文
●穢れた土地
見張りの兵士たちに門の開閉を頼んだユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は、壁の上から中を睥睨する。
「しかし、これはまた結構数が多いわね。とはいえ、放っておくわけにもいかないし、少しばかり軽く身体を動かしておきたい気分ではあったからね。それじゃあ、油断する事無く一匹残らず殲滅しましょうか」
大量の雑魔を一網打尽にするつもりの夢路 まよい(ka1328)も、外の階段から登れる外壁の上から中の光景を見下ろす。
予定としては、このまま敵を攻撃するつもりだ。
「なーんか敵がうじゃうじゃいるなあ。ま、これだけ固まってくれてたら、むしろ範囲魔法のいい的だけどね。久しぶりに、一発メテオかまそうかな?」
「リアルブルーでいうオヒガンに、あの世から帰ってきてどんちゃん騒ぎのお祭りしてる、って思えばちょっとは可愛いのかしら。いや前言撤回。どこ見ても骨。祭りって雰囲気じゃないわ」
門の兵士に向かって愛想を振りまきながら、せめてこの鎮魂に花を添えてあげようと、カーミン・S・フィールズ(ka1559)は考えた。
「わぁ! これまた、沢山湧いていますね! 雑魚とはいえ、油断はできません!」
雑魔の殲滅を目的にするのは当然として、問題はその方法だ。
アシェ-ル(ka2983)としては、通信機器で情報交換を密に行いながら自身が前衛の支援をし、集めた敵を城壁の上から後衛が一網打尽にするのがいいのではないかと考えている。
「根本的な解決が出来ないのが歯痒いが……。せめて兵士達の供養はしてやるか」
壁の中での戦闘を想定し、馬から降りたレイア・アローネ(ka4082)は、門の前で待機し門が開くのを待つ。
「数が多いからな……仲間と連携をとるのなら小回りが利く方がやりやすい」
敵を誘導することで、外壁に立つ後衛組の射撃や魔法を援護する予定だ。
「今はどこも人手不足なんだなあ……。私は浄化では力になれないし、その分戦闘面で全力を尽くそう」
真っ正面から突入する準備をしている鞍馬 真(ka5819)は、不意打ちや敵の逃亡も警戒しつつ、うまく敵を誘導するように動き、味方の範囲攻撃が効果を発揮するように敵を集めるつもりだ。
いわゆる敵を釣る役目である。
「他が色々大変なようだけれど、放置してたら一般の人に被害が出るかもしれない。といっても、私は浄化なんか無理だから、現出した個体を滅ぼすことしかできないけれどね」
あるものは使う主義のコロラ・トゥーラ(ka5954)は、外壁上から門周りの様子を確かめる。
敵の数は多くない。今なら問題なく入れるだろう。
「スケルトン、か。ボクも拾ってもらえなければ、どこかで野垂れ死んで、あいつらみたいになってたのかね……。いや、戦場で倒れた者たちと、ボクみたいなただの不良を一緒にしちゃ失礼かな? まあ、気にしてもしょうがないか。さっさと仕事を始めよう」
城壁の上で、ウィーダ・セリューザ(ka6076)は待ち続ける。
門番の声が通信機から響き、門が地響きを立てて開いていく。
下にいたハンターたちが中に入り、城壁上のハンターたちが攻撃準備に入る。
そして、再び門が閉められた。
さあ、戦いの始まりだ!
●壁の中で
先手を取ったのはハンターたちだった。
「侮るつもりは毛頭ないけど、こちらから飛び込ませて貰うわよ!」
他の前衛と散開する形で敵が密集してる場所へ飛び込むように移動したユーリは、赤く燃え上がるマテリアルオーラで一体でも多くのスケルトン達の意識を惹きつけられないか試みる。
蒼姫刀に、願いと祈りがマテリアルとともに込められる。
重ねるは心、宿すは魂。
心と魂を映す鏡の如く、蒼白い雷光を纏い輝く蒼姫刀を強く握り締め、美しく剣舞を舞う。
その剣舞は一振りの刃たる蒼姫の剣、迅雷が型の一つ。
雷の如き速度と、暴風の如き白銀の刃によって成される剣舞だ。
美麗な舞いは、周りのスケルトンたちを次々に斬り飛ばしていった。
そして型が切り替わる。
単純かつ愚直なまでに真っ直ぐな刺突。鋭く、迅く、雷の如き速度で放ち穿つ一閃が、スケルトンたちを貫く。
二つの型を披露した直後のユーリに、剣と盾を構えたスケルトンたちが殺到する。
絶体絶命。だが、ユーリの唇は弧を描く。
「死地に踏み込むは一体どちらかしらね? 私の方なら、斬り拓いて踏み越えるだけよ」
蒼姫の剣、迅雷が型の一つ、崩しの業でもって迎撃態勢を取り、ユーリは彼らを迎え撃つ。
返しの刃が先頭のスケルトンを仕留め、ユーリは舞うように包囲を抜け優雅に死地から帰還を果たした。
真は外壁から離れ過ぎている敵を、外壁上の味方の射程に入るように誘導する。
敵を集め、自分が静かな鎮魂歌に聞こえる旋律を奏で歌い上げ、まとめて動きを止めた後、味方の範囲攻撃で数を減らしてもらうためだ。
「範囲攻撃に巻き込まれないよう、位置取りは気を付けなきゃな」
呟いた真がバイクに乗って走り出した直後、先ほどまでいた場所へ誰かが召喚した隕石を思わせる火球が降り注いだ。
続いて夕立ちのような勢いで矢が降り注ぎ、場が落ち着くとそこにいた雑魔の数がごっそりと減っている。
「……私自身も、そろそろ攻撃に参加しようか」
自身の生体マテリアルを魔導剣に伝達して強化すると、時に振り回し、時に踏み込みながら突き出し、後衛組が仕留め損なった雑魔を効率的に撃破していく。
ある程度殲滅し終えると、捨て置いたバイクに再び飛び乗り、次の群れを誘導するため走り回った。
敵が弱いので楽だが、いちいち集めなければならないのは若干面倒くさくも感じる。
「毎年こんなことをしなければいけないとは大変な場所だなあ。わかりやすい汚染の源とかがあれば根本的な解決に繋げることもできるんだろうけど」
バイクを走らせながら、真は誰にともなく呟いた。
壁の中は、見渡す限りのスケルトン地獄だった。
「敵の数が多い……。やはり、仲間と連携をとるのなら小回りが利く方がやりやすい。馬を降りたのは正解だったな」
さっそく外壁から降ってくる隕石や矢が壁の中に空白を生んで移動するスペースができたので、レイアは同じく壁の中にいるユーリや真、カーミンと呼吸を合わせ、次々スケルトンを引き付けていく。
レイアもまた体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏って、スケルトンたちの注目を集め、誘き寄せる。
「こら、ばらけるな。行儀よくしろよ」
個体差が出たのか、それとも初期位置の差によるのか、巻き込み範囲外に出そうになるスケルトンに対し、レイアは自身の生体マテリアルを魔導剣に流し込み、強化する。
マテリアルを帯びた魔導剣にさらにマテリアルを溜め込むと、レイアはそれを振り被り、思い切り振り抜くことで衝撃波を発生させた。
空を裂いて飛ぶ衝撃波が、孤立していたスケルトンを砕いた。
「そろそろか。……あいつらは派手にやりそうだな」
レイアは脚にマテリアルを集中することで、移動速度を高めると、マテリアルを体に巡らせて重力のくびきから離れ、一気に外壁を駆け上がって避難した。
壁上からの攻撃が落ち着く。
ユーリ、レイア、マコトが燃やすマテリアルの光が、カーミンの周りで幻想的に踊っている。
三人と通信して連携を取りながら、カーミンは降り注ぐ範囲攻撃の合間を縫って壁内を駆け抜ける。
その動きが速さを増し、残像を残すようになっていく。
全身をマテリアルのオーラで覆い、肉体を加速させたのだ。
花言葉は「変わらない愛情を永遠に」「不朽」。技名に込められた花言葉と、昇華された機動戦術がこれを可能にする。
その勢いでもって、カーミンは全速力で駆け抜けた。
ドレスを広げて優雅に踊る女性のような、花と花の間を飛ぶ可憐な蝶のように、カーミンの剣刃が敵を求め、舞う。
「多少散ってても、別に問題ないわ?」
スケルトンが道を塞いでいてもカーミンの動きは止まらない。
移動の瞬間毎に残され消えゆく、花弁の如きマテリアルの幾多の光が、既にスケルトンを飛び越えたカーミンの残滓だ。
猫や猛禽類のように、カーミンの瞳が琥珀色に輝いた。
「さあ、狩りの時間よ? 黄泉に還りなさい?」
黄昏を瞳に映したカーミンは、微笑むと目にも止まらぬスピードで縦横無尽に駆け抜け、大きな光の軌跡を残して壁内のスケルトン分布に穴を空け、大きな爪痕を刻んだ。
「そろそろでしょうか?」
敵が集まってくるまでは魔法の矢を乱れ撃ちしていたアシェールは、他の前衛組が敵を集めて城壁まで戻ってきたタイミングで、魔法攻撃を行った。
術者であるアシェールの背に白龍に似た虹色の翼が広がり、白く輝く光線が放たれる。
いや、光線と呼ぶにはこの光の帯は太過ぎた。
ドラゴンブレスと言い表した方が、まだしっくりとくるだろう。
アシェールが放った疑似的な白竜の吐息は一瞬にしてスケルトンたちを恐慌に追い込み……そのまま消し飛ばした。
「数が多いのは怖いですが、逆に弱点でもありますよね」
何条もの疑似白竜の吐息を撃ちながら、アシェールは胸を張る。
「久々に魔術師っぽい事してます、私!」
合間に魔法の矢をばらまいて撃ち漏らしを処理することも忘れない。
続いて、アシェールは祈りの力を癒しの波動に変えて前衛組に解き放った。
「まだまだ、釣ってきてくださいね♪」
スケルトンたちが近付いてきて次々アシェールに剣で斬りかかる。
剣と盾を構えて応戦するものの、多勢に無勢で城壁まで下がらされた。
「……前言撤回です。これじゃ、やっぱり、魔術師っぽくないですよ、ね!」
箒に乗って空を飛び、一時壁上まで退却するアシェールだった。
●壁の上から
「ボクは安全、確実に仕事ができるのに、わざわざスリルを求めるようなマゾじゃないんだよね」
バリスタにゼノンの矢を番えながら、ウィーダが呟く。
「これで、ほとんど動かなくてもほぼ全域をカバーできるといいんだけど、無理そうだったら移動するしかないな。……って、やるじゃん」
仕事は簡単だった。
壁の中の味方が上手く敵を誘導してくれるのに合わせ、味方を巻き込まないことだけを念頭に置いてとにかく面制圧をこなせばいいだけだ。
時間をかけてマテリアルを矢に収束し、天に向かって一斉に放つ。
矢はマテリアルを纏い、光の雨となって降り注いだ。
一応優先順位を設けてはいるが、範囲攻撃が得意なメンバーが揃っているので、特に気にせずとも勝手に全滅していそうだ。
「いいね。やりやすい仕事だ」
マテリアルを込めた連続射撃を行い、矢の雨を降らせる。
光の雨とは対照的な矢の雨がさらにスケルトンの数を減らしていく。
「はい、ボクの仕事終わりっと。次が来るまで準備しよ」
ぽつんと離れたところに残っていたスケルトンをマテリアルを使って高加速をかけた射撃で射抜き、ウィーダは再びマテリアルを矢に収束し始めた。
通常よりも多くのマテリアルを練り上げるまよいの周囲では、集められた魔力が渦を巻いていた。
集まる魔力に吹き上げられているかのように、髪や服がなびいて舞い踊り、その勢いを強くしていく。
尋常でないその様子に、同じ壁上で待機している仲間の視線が否応なしに注がれる。
集まる視線に向けて、まよいはにっこり笑った。
「当たったら冗談じゃ済まないからね。巻き込まないように、撃ちどころはちゃんと考えるよ」
そこへ壁内組から退避完了の報告が入る。
「それじゃあ、行くよ」
どこかワクワクを隠し切れない子どものような表情で、まよいが束ねた魔力を形にする。
遥か高く、まよいの頭上に小さな火の玉が三つ生み出された。
いや、違う。小さな火の玉などではない。
上空にあるから小さく見えるだけで、その実態は激しく燃え盛る巨大な火球だ。
少しずつ、三つの火球が大きくなっていく。落下を始めたのだ。
広範囲を焼き払い爆散させる大魔法の熱気が、術者たるまよいにも伝わってきた。
周りで味方が慌てた様子で頭を伏せて蹲った。
その様子にきょとんとした表情で振り向くまよいの背後で、静かに紅蓮の業火が壁内を舐め尽くす。
全ての音は、一拍遅れてやってきた。
破壊が収まると、壁内組が再び下に降りてスケルトンを集める。
そうなのだ。あれほど強大に見えたまよいの大魔法をもってしても、全てのスケルトンを仕留めるには至らないほど、集まったスケルトンの数は多い。
「一網打尽にさせてもらうわ」
コロラは赦矢を番える。
なるべく多く巻き込むように、マテリアルを込めた赦矢を連続で放つ。
放たれた大量の矢は空高く飛んでいき、やがて頂点に達して落下を始め、矢の雨となった。
雨の音とはまるで違う、まるで特大の雹が地面に当たって砕け散るような音が連続して響く。
砕けているのはスケルトンだ。
「……効いているみたいだけれど、どの道赦矢を使わなくても一撃なような気もするわね」
呟きつつ、マテリアルを瞬間的に体に満たし、高速でリロードを行うと、今度はゼノンの矢を番え、誘導を待たずに遠距離攻撃持ちのスケルトンを優先して狙撃していく。
当初の頃に比べれば、スケルトンの数はかなり減ってきた。
「闇属性はどうかしら?」
続いてマテリアルをまとって光り輝く矢を複数打ち上げ、雨に見立てて降り注がせる。
「うーん、効きにくいのかしら? 一方的過ぎてよく分からないわ」
首を傾げつつ、通信機を手に取るコロラだった。
●浄化作業
思い切り隕石魔法をぶちかましていたら、魔法の矢を使うことなくそれだけで終わってしまったので、まよいは箒に乗って空を飛びながら浄化の様子を観察していた。
「幻想的だねぇ」
「毎度浄化が必要な土っていうわね。花は育たないのかしら」
土を調べ、改めて行われる浄化時には種を持ってこようと思い候補を思い浮かべながら、カーミンも同じく浄化を見守る。
「ストロベリーフィールズ、これにしましょう。花言葉は『不死・不朽』。彼らにぴったりじゃないかしら」
話を振られたアシェールは、辺境の巫女に伝わる浄化術で土地の浄化を行っている。
「多分、これくらいじゃ完全に浄化できないでしょうけど、後日、また来た時に雑魔が沸いていても嫌ですし」
浄化術をアシェールに任せる代わりにレイアは手を合わせる。
「迷い出た兵士達も、これで一時安らげるといいのだが……」
「もう迷い出て来ないといいけど、難しいだろうね」
浄化を見守りつつ、真が念のため周辺を警戒する。
その間、ユーリとコロラは撤収する準備を始めた。
後日、護衛にウィーダを交え、浄化隊がこの地を訪れた。
その中にはあの時選んでおいた種が入った袋を手にしたカーミンと、花とお供え物の菓子を持ったアシェールの姿もあり、彼らが浄化を行う様子をずっと眺めていたという。
見張りの兵士たちに門の開閉を頼んだユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は、壁の上から中を睥睨する。
「しかし、これはまた結構数が多いわね。とはいえ、放っておくわけにもいかないし、少しばかり軽く身体を動かしておきたい気分ではあったからね。それじゃあ、油断する事無く一匹残らず殲滅しましょうか」
大量の雑魔を一網打尽にするつもりの夢路 まよい(ka1328)も、外の階段から登れる外壁の上から中の光景を見下ろす。
予定としては、このまま敵を攻撃するつもりだ。
「なーんか敵がうじゃうじゃいるなあ。ま、これだけ固まってくれてたら、むしろ範囲魔法のいい的だけどね。久しぶりに、一発メテオかまそうかな?」
「リアルブルーでいうオヒガンに、あの世から帰ってきてどんちゃん騒ぎのお祭りしてる、って思えばちょっとは可愛いのかしら。いや前言撤回。どこ見ても骨。祭りって雰囲気じゃないわ」
門の兵士に向かって愛想を振りまきながら、せめてこの鎮魂に花を添えてあげようと、カーミン・S・フィールズ(ka1559)は考えた。
「わぁ! これまた、沢山湧いていますね! 雑魚とはいえ、油断はできません!」
雑魔の殲滅を目的にするのは当然として、問題はその方法だ。
アシェ-ル(ka2983)としては、通信機器で情報交換を密に行いながら自身が前衛の支援をし、集めた敵を城壁の上から後衛が一網打尽にするのがいいのではないかと考えている。
「根本的な解決が出来ないのが歯痒いが……。せめて兵士達の供養はしてやるか」
壁の中での戦闘を想定し、馬から降りたレイア・アローネ(ka4082)は、門の前で待機し門が開くのを待つ。
「数が多いからな……仲間と連携をとるのなら小回りが利く方がやりやすい」
敵を誘導することで、外壁に立つ後衛組の射撃や魔法を援護する予定だ。
「今はどこも人手不足なんだなあ……。私は浄化では力になれないし、その分戦闘面で全力を尽くそう」
真っ正面から突入する準備をしている鞍馬 真(ka5819)は、不意打ちや敵の逃亡も警戒しつつ、うまく敵を誘導するように動き、味方の範囲攻撃が効果を発揮するように敵を集めるつもりだ。
いわゆる敵を釣る役目である。
「他が色々大変なようだけれど、放置してたら一般の人に被害が出るかもしれない。といっても、私は浄化なんか無理だから、現出した個体を滅ぼすことしかできないけれどね」
あるものは使う主義のコロラ・トゥーラ(ka5954)は、外壁上から門周りの様子を確かめる。
敵の数は多くない。今なら問題なく入れるだろう。
「スケルトン、か。ボクも拾ってもらえなければ、どこかで野垂れ死んで、あいつらみたいになってたのかね……。いや、戦場で倒れた者たちと、ボクみたいなただの不良を一緒にしちゃ失礼かな? まあ、気にしてもしょうがないか。さっさと仕事を始めよう」
城壁の上で、ウィーダ・セリューザ(ka6076)は待ち続ける。
門番の声が通信機から響き、門が地響きを立てて開いていく。
下にいたハンターたちが中に入り、城壁上のハンターたちが攻撃準備に入る。
そして、再び門が閉められた。
さあ、戦いの始まりだ!
●壁の中で
先手を取ったのはハンターたちだった。
「侮るつもりは毛頭ないけど、こちらから飛び込ませて貰うわよ!」
他の前衛と散開する形で敵が密集してる場所へ飛び込むように移動したユーリは、赤く燃え上がるマテリアルオーラで一体でも多くのスケルトン達の意識を惹きつけられないか試みる。
蒼姫刀に、願いと祈りがマテリアルとともに込められる。
重ねるは心、宿すは魂。
心と魂を映す鏡の如く、蒼白い雷光を纏い輝く蒼姫刀を強く握り締め、美しく剣舞を舞う。
その剣舞は一振りの刃たる蒼姫の剣、迅雷が型の一つ。
雷の如き速度と、暴風の如き白銀の刃によって成される剣舞だ。
美麗な舞いは、周りのスケルトンたちを次々に斬り飛ばしていった。
そして型が切り替わる。
単純かつ愚直なまでに真っ直ぐな刺突。鋭く、迅く、雷の如き速度で放ち穿つ一閃が、スケルトンたちを貫く。
二つの型を披露した直後のユーリに、剣と盾を構えたスケルトンたちが殺到する。
絶体絶命。だが、ユーリの唇は弧を描く。
「死地に踏み込むは一体どちらかしらね? 私の方なら、斬り拓いて踏み越えるだけよ」
蒼姫の剣、迅雷が型の一つ、崩しの業でもって迎撃態勢を取り、ユーリは彼らを迎え撃つ。
返しの刃が先頭のスケルトンを仕留め、ユーリは舞うように包囲を抜け優雅に死地から帰還を果たした。
真は外壁から離れ過ぎている敵を、外壁上の味方の射程に入るように誘導する。
敵を集め、自分が静かな鎮魂歌に聞こえる旋律を奏で歌い上げ、まとめて動きを止めた後、味方の範囲攻撃で数を減らしてもらうためだ。
「範囲攻撃に巻き込まれないよう、位置取りは気を付けなきゃな」
呟いた真がバイクに乗って走り出した直後、先ほどまでいた場所へ誰かが召喚した隕石を思わせる火球が降り注いだ。
続いて夕立ちのような勢いで矢が降り注ぎ、場が落ち着くとそこにいた雑魔の数がごっそりと減っている。
「……私自身も、そろそろ攻撃に参加しようか」
自身の生体マテリアルを魔導剣に伝達して強化すると、時に振り回し、時に踏み込みながら突き出し、後衛組が仕留め損なった雑魔を効率的に撃破していく。
ある程度殲滅し終えると、捨て置いたバイクに再び飛び乗り、次の群れを誘導するため走り回った。
敵が弱いので楽だが、いちいち集めなければならないのは若干面倒くさくも感じる。
「毎年こんなことをしなければいけないとは大変な場所だなあ。わかりやすい汚染の源とかがあれば根本的な解決に繋げることもできるんだろうけど」
バイクを走らせながら、真は誰にともなく呟いた。
壁の中は、見渡す限りのスケルトン地獄だった。
「敵の数が多い……。やはり、仲間と連携をとるのなら小回りが利く方がやりやすい。馬を降りたのは正解だったな」
さっそく外壁から降ってくる隕石や矢が壁の中に空白を生んで移動するスペースができたので、レイアは同じく壁の中にいるユーリや真、カーミンと呼吸を合わせ、次々スケルトンを引き付けていく。
レイアもまた体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏って、スケルトンたちの注目を集め、誘き寄せる。
「こら、ばらけるな。行儀よくしろよ」
個体差が出たのか、それとも初期位置の差によるのか、巻き込み範囲外に出そうになるスケルトンに対し、レイアは自身の生体マテリアルを魔導剣に流し込み、強化する。
マテリアルを帯びた魔導剣にさらにマテリアルを溜め込むと、レイアはそれを振り被り、思い切り振り抜くことで衝撃波を発生させた。
空を裂いて飛ぶ衝撃波が、孤立していたスケルトンを砕いた。
「そろそろか。……あいつらは派手にやりそうだな」
レイアは脚にマテリアルを集中することで、移動速度を高めると、マテリアルを体に巡らせて重力のくびきから離れ、一気に外壁を駆け上がって避難した。
壁上からの攻撃が落ち着く。
ユーリ、レイア、マコトが燃やすマテリアルの光が、カーミンの周りで幻想的に踊っている。
三人と通信して連携を取りながら、カーミンは降り注ぐ範囲攻撃の合間を縫って壁内を駆け抜ける。
その動きが速さを増し、残像を残すようになっていく。
全身をマテリアルのオーラで覆い、肉体を加速させたのだ。
花言葉は「変わらない愛情を永遠に」「不朽」。技名に込められた花言葉と、昇華された機動戦術がこれを可能にする。
その勢いでもって、カーミンは全速力で駆け抜けた。
ドレスを広げて優雅に踊る女性のような、花と花の間を飛ぶ可憐な蝶のように、カーミンの剣刃が敵を求め、舞う。
「多少散ってても、別に問題ないわ?」
スケルトンが道を塞いでいてもカーミンの動きは止まらない。
移動の瞬間毎に残され消えゆく、花弁の如きマテリアルの幾多の光が、既にスケルトンを飛び越えたカーミンの残滓だ。
猫や猛禽類のように、カーミンの瞳が琥珀色に輝いた。
「さあ、狩りの時間よ? 黄泉に還りなさい?」
黄昏を瞳に映したカーミンは、微笑むと目にも止まらぬスピードで縦横無尽に駆け抜け、大きな光の軌跡を残して壁内のスケルトン分布に穴を空け、大きな爪痕を刻んだ。
「そろそろでしょうか?」
敵が集まってくるまでは魔法の矢を乱れ撃ちしていたアシェールは、他の前衛組が敵を集めて城壁まで戻ってきたタイミングで、魔法攻撃を行った。
術者であるアシェールの背に白龍に似た虹色の翼が広がり、白く輝く光線が放たれる。
いや、光線と呼ぶにはこの光の帯は太過ぎた。
ドラゴンブレスと言い表した方が、まだしっくりとくるだろう。
アシェールが放った疑似的な白竜の吐息は一瞬にしてスケルトンたちを恐慌に追い込み……そのまま消し飛ばした。
「数が多いのは怖いですが、逆に弱点でもありますよね」
何条もの疑似白竜の吐息を撃ちながら、アシェールは胸を張る。
「久々に魔術師っぽい事してます、私!」
合間に魔法の矢をばらまいて撃ち漏らしを処理することも忘れない。
続いて、アシェールは祈りの力を癒しの波動に変えて前衛組に解き放った。
「まだまだ、釣ってきてくださいね♪」
スケルトンたちが近付いてきて次々アシェールに剣で斬りかかる。
剣と盾を構えて応戦するものの、多勢に無勢で城壁まで下がらされた。
「……前言撤回です。これじゃ、やっぱり、魔術師っぽくないですよ、ね!」
箒に乗って空を飛び、一時壁上まで退却するアシェールだった。
●壁の上から
「ボクは安全、確実に仕事ができるのに、わざわざスリルを求めるようなマゾじゃないんだよね」
バリスタにゼノンの矢を番えながら、ウィーダが呟く。
「これで、ほとんど動かなくてもほぼ全域をカバーできるといいんだけど、無理そうだったら移動するしかないな。……って、やるじゃん」
仕事は簡単だった。
壁の中の味方が上手く敵を誘導してくれるのに合わせ、味方を巻き込まないことだけを念頭に置いてとにかく面制圧をこなせばいいだけだ。
時間をかけてマテリアルを矢に収束し、天に向かって一斉に放つ。
矢はマテリアルを纏い、光の雨となって降り注いだ。
一応優先順位を設けてはいるが、範囲攻撃が得意なメンバーが揃っているので、特に気にせずとも勝手に全滅していそうだ。
「いいね。やりやすい仕事だ」
マテリアルを込めた連続射撃を行い、矢の雨を降らせる。
光の雨とは対照的な矢の雨がさらにスケルトンの数を減らしていく。
「はい、ボクの仕事終わりっと。次が来るまで準備しよ」
ぽつんと離れたところに残っていたスケルトンをマテリアルを使って高加速をかけた射撃で射抜き、ウィーダは再びマテリアルを矢に収束し始めた。
通常よりも多くのマテリアルを練り上げるまよいの周囲では、集められた魔力が渦を巻いていた。
集まる魔力に吹き上げられているかのように、髪や服がなびいて舞い踊り、その勢いを強くしていく。
尋常でないその様子に、同じ壁上で待機している仲間の視線が否応なしに注がれる。
集まる視線に向けて、まよいはにっこり笑った。
「当たったら冗談じゃ済まないからね。巻き込まないように、撃ちどころはちゃんと考えるよ」
そこへ壁内組から退避完了の報告が入る。
「それじゃあ、行くよ」
どこかワクワクを隠し切れない子どものような表情で、まよいが束ねた魔力を形にする。
遥か高く、まよいの頭上に小さな火の玉が三つ生み出された。
いや、違う。小さな火の玉などではない。
上空にあるから小さく見えるだけで、その実態は激しく燃え盛る巨大な火球だ。
少しずつ、三つの火球が大きくなっていく。落下を始めたのだ。
広範囲を焼き払い爆散させる大魔法の熱気が、術者たるまよいにも伝わってきた。
周りで味方が慌てた様子で頭を伏せて蹲った。
その様子にきょとんとした表情で振り向くまよいの背後で、静かに紅蓮の業火が壁内を舐め尽くす。
全ての音は、一拍遅れてやってきた。
破壊が収まると、壁内組が再び下に降りてスケルトンを集める。
そうなのだ。あれほど強大に見えたまよいの大魔法をもってしても、全てのスケルトンを仕留めるには至らないほど、集まったスケルトンの数は多い。
「一網打尽にさせてもらうわ」
コロラは赦矢を番える。
なるべく多く巻き込むように、マテリアルを込めた赦矢を連続で放つ。
放たれた大量の矢は空高く飛んでいき、やがて頂点に達して落下を始め、矢の雨となった。
雨の音とはまるで違う、まるで特大の雹が地面に当たって砕け散るような音が連続して響く。
砕けているのはスケルトンだ。
「……効いているみたいだけれど、どの道赦矢を使わなくても一撃なような気もするわね」
呟きつつ、マテリアルを瞬間的に体に満たし、高速でリロードを行うと、今度はゼノンの矢を番え、誘導を待たずに遠距離攻撃持ちのスケルトンを優先して狙撃していく。
当初の頃に比べれば、スケルトンの数はかなり減ってきた。
「闇属性はどうかしら?」
続いてマテリアルをまとって光り輝く矢を複数打ち上げ、雨に見立てて降り注がせる。
「うーん、効きにくいのかしら? 一方的過ぎてよく分からないわ」
首を傾げつつ、通信機を手に取るコロラだった。
●浄化作業
思い切り隕石魔法をぶちかましていたら、魔法の矢を使うことなくそれだけで終わってしまったので、まよいは箒に乗って空を飛びながら浄化の様子を観察していた。
「幻想的だねぇ」
「毎度浄化が必要な土っていうわね。花は育たないのかしら」
土を調べ、改めて行われる浄化時には種を持ってこようと思い候補を思い浮かべながら、カーミンも同じく浄化を見守る。
「ストロベリーフィールズ、これにしましょう。花言葉は『不死・不朽』。彼らにぴったりじゃないかしら」
話を振られたアシェールは、辺境の巫女に伝わる浄化術で土地の浄化を行っている。
「多分、これくらいじゃ完全に浄化できないでしょうけど、後日、また来た時に雑魔が沸いていても嫌ですし」
浄化術をアシェールに任せる代わりにレイアは手を合わせる。
「迷い出た兵士達も、これで一時安らげるといいのだが……」
「もう迷い出て来ないといいけど、難しいだろうね」
浄化を見守りつつ、真が念のため周辺を警戒する。
その間、ユーリとコロラは撤収する準備を始めた。
後日、護衛にウィーダを交え、浄化隊がこの地を訪れた。
その中にはあの時選んでおいた種が入った袋を手にしたカーミンと、花とお供え物の菓子を持ったアシェールの姿もあり、彼らが浄化を行う様子をずっと眺めていたという。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ウィーダ・セリューザ(ka6076) エルフ|17才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/10/05 09:47:01 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/10/05 00:53:38 |