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【CF】蒼の世界を夢見て…コスプレ?

マスター:四月朔日さくら

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2014/12/30 22:00
完成日
2015/01/09 18:50

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 十二月のこの時期ともなれば、クリムゾンウェストでもクリスマスだ。
 街はどこか浮き足だった感じがして、歩いているだけでも楽しげな笑い声があちこちから聞こえるし、店の軒先からは良いにおいが漂ってくる。
 クリスマスはお祭りだ。

 ……そう、どんな人にとっても。
 リア充な人々にとっても。
 リアルから逃避しがちな人々にとっても。


「……で、今日は何しに来たんや、トモエちゃん」
 ピースホライズンで『ギョーサンアン』という店を営んでいるリアルブルー出身者、佐藤(仮)が独特の訛りのある口調でポニーテイルの少女に質問を投げかける。
「何って、クリスマスだし? ぱーっとパーティするならこの店よねって思って」
 トモエ――リアルブルー出身ハンターのトワ・トモエはけろりと応えた。普段はリゼリオに住んでいるわけだが、かつてはハンターだった佐藤(仮)とよくつるんだものだ。
 この佐藤(仮)という男、転移した際に自らに関する記憶をスコーンと飛ばしてしまったという経歴の持ち主。そんな彼に妙ちくりんな『佐藤(仮)』と名前を与え、何かと世話を焼いてきたのは年下のトモエだったというわけだ。佐藤(仮)、そんなわけでトモエには頭が上がらないところも多い。
「パーティなぁ。でもトモエちゃんのことやし、コスプレとか考えとるんやろ?」
「あ、わかる?」
 佐藤(仮)に言われて、トモエは相好を崩す。
 コスプレパーティ、それは確かに甘美なる響き。一般的には仮装パーティのことなのだが、『コスプレ』というと漫画やアニメといった二次元作品の仮装という認識が、リアルブルーでは何となく定着している。
 そしてこのトモエ、見た目に反してというかなんというか、漫画や小説をこよなく愛する少女なのだ。知っているからこそ、佐藤(仮)も苦笑を浮かべざるを得ない。
「とりあえず、こちらの仮装とリアルブルーのコスプレって、随分認識が違うじゃない? その辺の認識を知ってもらうのも良いかなーって思って」
 なるほど、いちおうこれも異文化交流の一種としての認識らしい。そう言う考えは、佐藤(仮)も嫌いではなかった。
「……ま、持ち寄りパーティみたいなんやったら、飲み物や場所は提供するけどなぁ?」
「わぁいありがとう!」
 トモエは嬉しそうに、佐藤(仮)の手を持ってぴょんぴょんと跳びはねた。

 ……トモエがコスプレパーティ開催の告知をしにハンターオフィスに向かったあと、佐藤(仮)は店舗兼住居の奥からなにやら衣装ケースを引っ張り出す。
「あったあった」
 それは赤い上下。襟元や袖裾などは白く縁取られていて、見るものが見ればサンタクロースの衣装とわかるだろう。そして近くにあった姿見の前で、赤いサンタ帽をスキンヘッドの上にのせる。
 正直似合っているかどうかはおいといて、彼は笑った。
 ――今年のクリスマスは、面白いことになりそうだ。

リプレイ本文


(……カオスですね)
 そう思ったのはきっとカグラ・シュヴァルツ(ka0105)だけではないに違いない。
 仮装と言うだけならば、このクリムゾンブラッドでも折々見かけることのできる行事として存在する。しかし『コスプレ』、しかもリアルブルーのポップカルチャー的なそれとなれば、まったくと言っていいほど意味が異なってくる。
 コスプレとは、わかりやすく言葉を換えてみれば、『なりきり』。実在・非実在問わずのキャラクターになりきるわけだ。まあ、それが受け入れられる風土をリアルブルーは持っているわけで、それがクリムゾンブラッドに流入するのも時間の問題だったかも知れないが。
 さてそんなことを思っているカグラは従妹のシュネー・シュヴァルツ(ka0352)の側にスマートに立っているわけだが、その姿はたとえて言うなら黒いスーツに黒い仮面、黒いセーラー服系魔法少女をどこか思わせるシュネーの姿と対になるかのようである。
(帰りたい……衣装は無駄に派手だしメイクは慣れないし)
 シュネーの方はそんなことを考えつつ、カグラからはなれない。元々の性格もあるが、慣れない場所、慣れないシチュエーションで慣れない服装、というのは内気な彼女ならずとも恥ずかしくなってしまうものだ。
 それをにやにやとみていたのは改造ブレザー風の純白ひらっひらな魔法少女服に身をつつみ、トレードマークともいえる分厚い眼鏡を外している南條 真水(ka2377)。ついでに言えば更にその上からロングコートを羽織って魔法少女服をまるっと隠しているのだが、まあこの姿でも十分なんぞかのコスプレに見えなくはないというのは恐ろしいところである。彼女の側には同じように、白スーツに白い仮面をつけた魔法使い――に扮したヒース・R・ウォーカー(ka0145)が、やはりにやにやと笑いながら周囲を見回してみる。あちらこちらに見受けられるコスプレでも目立つのはやはり流行りのライトノベル『エリュシオン』のものだろうか。
「面白いことになりましたよね」
「ああ、南条の奴も色々と吹っ切れてるなぁ。いや、今は『魔法少女』だっけぇ?」
 白と黒の少女たちを見て、小さく口元に笑みを浮かべるカグラとヒース。しかしシュネーはそれにいっそう顔を赤くして、首をぶんぶんと横に振る。と、すっと真水に近づきロングコートを無言のまま、しかし力任せに脱がしにかかった。普段内気な彼女からすれば珍しい行動だが、よく考えればいまの服装のままいる方が彼女にとっては何倍も恥ずかしい、と言う現れなのだろう。
「うわぁちょっと待ってシュヴァルツさん剥がないでー!?」
 思いっきりうろたえる真水だが、コートはそのままさっくりとシュネーが羽織る。
 そんな中、一人冷や汗をかきつつコスプレをしているのが一人。周囲にはめられ、猫耳魔法少女に扮している猫実 慧(ka0393)、性別男性。何でも『男性だが変身すると女性化してしまう』というややこしい設定なのだとか。しかしやるからにはと完璧なメイクと衣装なあたりは凄い。そして今回はめた男性陣にしっかり悪戯をしようともくろんでいた。さあどうなることか。


(存在は知っていましたが、実際に体験する機会が来ようとは。不安はありますが……)
 紫条京真(ka0777)が着こなしているのは学校制服で戦う美少女戦士、と言う奴らしい。多分正式名称はあるのだろうが、世の中に入ってはいけない言葉もあるのだ。青を基調とした服装だが、何しろ美少女戦士だから、露出は必要よりはほどほどに高め。足元も美しく見せる為、処理はばっちりだ。
(まさかこの年齢になってスカートなんて……と思いましたし、なんでしょうね、この丈の短さは)
 スカートをぺろりと触れて一つため息。しかし京真、自分よりも体格の良い自称ダンディの碓井 道灌(ka1729)がやはり脛毛を剃り、更に胸にパッドまで入れるという間違った方向への『全力』っぷりに負けてはられぬと言うことらしい。ちなみに彼のイメージカラーは黒、いかにも最年長キャラという貫禄ばっちりだ。
「……やだ、私ってば綺麗すぎ?」
 嘘ですきもいです俺はこんな世界で何やってるんだ。道灌、頭を抱えつつも演技指導を受けていた。他にも同じような、通称『美脚戦隊』は合計五人。残りの三人はノリノリで男性陣のメイク担当をしている紅の戦士(巫女服からのミニスカセーラーへ華麗なメタモルフォーゼ)の桃園ふわり(ka1776)、桃色のセーラーに身をつつんだ銀 桃花(ka1507)――よく考えたら彼女、紅一点である――の二人は特にやる気満々で、唯一のクリムゾンウェスト出身者コトラン・ストライプ(ka0971)がコスプレの意味がわからないことを良いことに(?)、『リアルブルーの服を着て遊ぶ』くらいの認識ですっかり巻き込んでしまっている。
「なあこれってやったらひらひらしてっけど、女の格好じゃねーの? すげー短くて知り見えそうだけど、リアルブルーの奴は皆こんな格好してるのか?」
 緑が基調の衣装に身をつつんだコトラン、鋭い突っ込み。でも
「こういうのはやるからには徹底的に遊ぶのがいいんだよ! ノったもの勝ち!」
「そうそう、コスプレっていうのは変身みたいなものだからね! うん、ちゃーんと綺麗にしてあげるから♪」
 ふわりと桃花にしっかり言いくるめられるあたり、まだまだお子様だった。


「クリスマスにコスプレパーティ、ですか」
 会場にやってきたのはサンタをイメージした魔法少女、エルバッハ・リオン(ka2434)。とはいえ彼女の来歴からお察しの通り、布地の面積がかなりきわどいことになっている。ぶっちゃけ、衛兵に連れて行かれないぎりぎりというレベルだ。会場である『ギョーサンアン』は既にずいぶんな人数で賑わっており、セーラー服姿のトワ・トモエとスキンヘッドサンタの佐藤(仮)は正直目立つことこの上ないのだが、エルはそんな浮ついた雰囲気に少しばかり目を細め、そして――ここぞとばかりに男性に胸をそっと押しつけていく。たわいのない悪戯であるが、標的にされた男性陣は突然のクリスマスプレゼント(?)に驚かないわけがなく、真っ赤になったり真っ青になったり、反応は人それぞれだったようだ。
 ちなみに女装男子は標的にならなかったらしい。幸か不幸か。


「……とりあえず、着ぐるみ、着てきた」
 でも暑くて動きづらいからすぐ脱いでしまった、そんな少女がここに一人。
 ナツキ(ka2481)である。不機嫌そうにみえる上、口べたな彼女はぼんやりとパーティ会場を見回してみる。絡める相手もほとんどいないのか、そうやって見ているのが面白いのか、それはわからない。
「お、お嬢ちゃん。一人でいてもつまらへんやろ、めりーくりすます」
 佐藤(仮)がそう声をかけると、ナツキは不思議そうに首をかしげる。
「サンタさん?」
「おう、こう見えてもな。似合うやろ?」
 そうどや顔で言ってみるものの、ぶっちゃけ強面スキンヘッドがサンタな訳で、似合っているかと聞かれると非常に怪しい。
「ギョーザアン、餃子、食べられる、そう聞いた。……どこ?」
「ああ、それ、皆に一度は間違えられるんよなぁ。ギョーサンアン、で、ぎょーさんなんでもあるでー、ってコトや」
 佐藤(仮)が説明をすると、少し寂しそうな顔をしたけれど、すぐに機嫌を取り戻したらしい。
「仕方ないから、他のもの、いっぱい食べる」
 その胃袋はまるで宇宙。
「あ、ナツキちゃん」
 トモエは以前に出会ったことのある少女に、屈託なく声をかける。
「えっとね、今回はドレスコードとか一応あるんだけど……難しかったかなあ」
「あ、トモエ、久しぶり。……どれすこーど、なにそれおいしい?」
 聞き慣れぬ言葉に首をかしげるナツキ。しかしトモエはここぞとばかりにさまざまな衣装を用意してきた。ナツキ、すっかり着せ替え人形である。まあ、彼女の見目が良いのもかなり幸いしているのだろうが。


 ヒーローに憧れない者は、いないと言っていいだろう。
 鳴神 真吾(ka2626)はそう思っているし、周囲もそうだと信じている。だから彼は常日頃からこの衣装を身に纏っているのだ。『機導特査ガイアード』のコスチュームに。
 元々はスーツアクターだった真吾。ヒーロー足りうるだけの力――各政社としての能力を手に入れ、そして彼は彼の正義を貫いている。
(ヒーローの扮装をしているのだから、それに恥じるようなまねはできない)
 それが彼の持っている一つの信念。
 だから彼は、このパーティにもこの格好のまま登場した。むやみにヘルメットを外すことで夢を壊すわけにも行かず、飲み物はストローで摂れるもの程度。しかしこんな浮かれた場ではさすがに彼も楽しい気分になってくる。
「ガイアード、決めポーズお願いー」
 頼まれればそれに応えるくらいはお手の物だ。だってそれも、ヒーローの役目――なのだろうから。


「それにしてもまさかこんなところでこんなことをするとは思ってもいなかったわね」
 猫耳にメイド服を着けた姿の十色 エニア(ka0370)は、そんなことを言いながら小さくため息をつく。どうやらこの猫耳メイドはアンドロイドらしく、ちらりと見える腕関節に球体型の飾りをつけている。球体関節を意識しているのは間違いないだろう。リアルブルーのコミックが元ネタらしい。
 ちなみにエニアは男性である。……が、本人からはあえてそのことを言わないでいる。
(だってその方がおもしr……げふん、無用に幻滅させる必要はないし)
 エニア、案外意地悪である。ちびちびと酒を含めば、ほんのりと朱色に染まる目元。楽しんでいるのなら、まあ良いのだろうが。

「ヒャッハー」
 そう言って通り過ぎるのは赤い帽子に赤いシャツ、オーバーオールに付けひげという姿の超級まりお(ka0824)……いやもうこれ以上深く詮索すると負ける気がするのでしない。
「ヒアウィーゴー♪」
 うん、ほら、やっぱり。


 さて、そんな転移者をはじめとしてハンターたちに人気があるのは異能力バトルを題材にしたライトノベル『エリュシオン』もだが、異世界活劇コミック『舵天照』も忘れてはなるまい。
 アルナイル・モーネ(ka0854)も、そんなひとりだ。
 獣人や『相棒』と呼ばれる生物たちと繰り広げるアヤカシとの活劇ロマンがなかなかに受けているらしいのだが、元々アルナイルが刀を得物としているのも、その作品の影響が強いらしい。
 そこで彼女が選んだコスプレは――『人妖』。
 ヒトよりも小柄だが、妖力に優れた相棒の一種である。髪の毛を緩く纏め、時代めいた雰囲気の姿をとれば一気にそれらしくなると言うわけだ。
(お姉ちゃんといっしょだと、なかなかこういうこともできないものね)
 双子の姉には自身がコスプレイヤーであることは秘密らしい。まあ、こういうことはリアルブルーでもあるあるなので、別におかしいわけではないが。
(他にも、『舵天照』や『エリュシオン』のコスプレしている人いたら、写真撮りたいなの)
 アルナイルはきょろきょろと首を回す。と、
「あっ」
 そこには『エリュシオン』の舞台となっている久遠ヶ原学園の制服を着た少女――実は紛れもない男性のアルファス(ka3312)なのだが――が、天使をあしらったショートケーキと悪魔をあしらったチョコレートケーキを持って笑い合っていた。隣にいるのもやはり久遠ヶ原学園の男子制服を着た、ただしこちらはさらしなどでごまかしてはいるもののぎこちなさで女性とわかるエルフのユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)である。
「わぁ、それ、エリュシオンのコスプレなの!」
 アルナイルは嬉しそうに話しかけると、
「あ、はい♪ どうです?」
 とアルファスがにっこり笑顔。一方のユーリは実はこれが初めてのコスプレ、わずかに赤面しながら
「ああ……そっちはええと」
「はい、舵天照なの♪」
 すっかり嬉しそうなアルナイル。喜んでもらえるのなら、ユーリもアルファスも悪い気分はしない。
「二人は仲が良いですなの!」
「ふふ、ありがとう。まあ幼なじみだからね♪」
 小説のキャラにすっかりなりきっている模様で、腕に絡みついてにっこり。
「ぼっちクリスマスに誘ってあげたんだから、感謝してよね?」
 いかにもな台詞を吐いて、ケーキをすっとユーリに差し出すあたりは手慣れている感じだ。
「……っ、恥ずかしいからやめろって。……仕方ないな」
 はい、あーん。
 どこかでリア充爆発しろなんて声が聞こえそうだが気にしてはいけない。たぶん。
(……でも)
 ユーリは思う。最近戦闘ばかりだった上に怪我までしてしまった自分をこうやって引っ張り回してくれる仲間のありがたみを。
(また、いっしょに参加してみたい……な)
「どうしたの? 顔、赤いよ?」
 そんなことを思っているとアルファスに指摘され、いっそう顔を赤らめるユーリ。
「っ、何でもないっ」
 でもこんな些細なことこそ幸せなのだと、そう思えるのかもしれないのだった。

 ――さて。
 そんな中、ひときわ異彩を放つコスプレが一組。
 『エリュシオン』に出てくる登場キャラでも豪快なキャラクター性が人気の天使・ダルドフに扮した――と言ってもその体格にはずいぶん差があるのだが――春咲=桜蓮・紫苑(ka3668)(本人曰く父親にどことなく似ているのだそうだ)、よれよれの白衣に黒縁の眼鏡、『くず鉄先生』の異名を持つ門木章治のコスプレをしたファウストゥス(ka3689)、そして緑髪に猫耳をつけたショタっこ――これは作中に出てくる隠しキャラ、らしいのだが――の鬼百合(ka3667)。
 この中でコスプレに理解があるのは紫苑だけだったという有様。
「まあ、簡単に言うなら物語の中の登場人物を真似てみることでさ」
 どうやら二人の衣装は紫苑があつらえてやったらしい……が、オリジナルに比べるとどうしても体格の差が見えてしまう。男性に扮した紫苑はもちろんのことながら、オリジナルよりもどう見ても体格の良いファウストゥスがいて、紫苑は思わず苦笑い。
「なんか、こう……もうちょいひょろいほうが違和感はなかったでしょうねぃ。ま、眼鏡はよく似合ってますぜ、かっこいいですよぃ」
 元ねたに似せるため、髪もわざとくしゃくしゃにされたファウストゥスとしては少し不満気味。
「コスプレとはここまでせんといかんのか……?」
「ま、その人の根性とかにもよるとは思うけどねぃ」
 そう言いながら、紫苑はかっかと笑う。その笑い方は、なかなかに様になっていて、一瞬そのコスプレの男性が笑っているかのような錯覚にさえとらわれた。
「貴様はずいぶんと勇ましいな」
 その言葉にマァな、と笑う紫苑。その横では猫耳帽子の鬼百合がちょっとばかりブーたれた様子。
「姐さん姐さん、これは俺にゃちょっとかわいすぎやしませんかねぃ?」
 しかしそんな少年を見てこらえきれないと言わんばかりに吹き出した紫苑は、すぐに鬼百合の頭を優しく撫でてやる。
「いや、わりぃ。いや、つい、つい……その猫耳帽子も似合いやすよ、世界一かわいい」
 そう言って撫でられても、鬼百合は複雑そうな表情を浮かべたまま。
「いや、笑って悪かったって」
 しかし次の瞬間、鬼百合はかぁっと真っ赤になって、
「か、っかわいくねーでさ!! 鬼っ子にかわいいは違いまさー!!」
 ぴょいっとファウストゥスの後ろに隠れる。耳たぶまで真っ赤になるあたり、本当に照れているのだろう。
「むー……ねーさんは、もっと色っぽいの着てみてもいいんじゃねぇですかぃ?」
 顔を赤らめたまま、鬼百合がそうぽつりと呟くと。
 紫苑は、苦笑を浮かべてもう一度頭をわしゃわしゃと撫でてやった。


(コスプレなんて楽勝だと思いきや、こいつは少々難易度が高えな)
 そう思いながらワインを味わっているのは鮫島 群青(ka3095)、筋骨隆々な肢体をリアルブルーで言う十八世紀頃の西欧風軍服を身に纏っている。胸に手を入れているあたり、かつての『皇帝』をイメージしたものだろう。なるほど、夢追い人たる群青が纏うにふさわしい人物の扮装であった。屋内パーティながらも、馬を駆り、マントを翻して不敵に登場したあたりも、『彼』を意識していると言えよう。
 言われてみれば、クリムゾンウェストの人にわかりやすく、なおかつリアルブルー人が見てもにやりとできる――それは確かになるほど敷居の高い問題なのかも知れない。
 そもそもリアルブルーの人から見たクリムゾンウェストの住人たちというものがまるでコスプレのごとき服装であるのだが、だからこそこういう場は個々のセンスが試されるというものだ。
 そう、まさに勝負の場。
 にやりと笑えばリアルブルー人たちもにやりと笑い返す。彼の意図が伝わっている良い証拠だ。
「新たな出会いに乾杯、だな」
 手にしていたワイングラスを軽く回し、男はそんな不思議な高揚感に浸っていたのだった。
 また、こちらも『特定の人物』ではないが、一種の職業服を身に纏う二人がいた。
 朱と白が目にもまぶしい巫女装束――ただしずいぶんと誤解を生じるアレンジがなされているが――に身をつつんだ銀髪エルフ・リュイ=ユウエル(ka3652)と、それに合わせて神主風の格好をした奄文 錬司(ka2722)の二名だ。
 もっとも、リュイはその大胆なアレンジの加えられている巫女装束が『普通』と思っているため、
「ねえレンジ様、リアルブルーの文化というのは刺激的ですわね……この、ミコショーゾクというのは、舞踊りやすくするためにこんな作りになっているのかしら?」
 お色気たっぷりの巫女装束ながら、本人はどこか楽しそう。クリムゾンウェストの住人からすれば、未知の世界の装束に胸躍らせるのもまた一興というわけである。
「そう言えば地味な野菜シチューしかできなかったのだけれど……でも味は保証いたしますわ」
 鍋ごとで持参してきた彼女を、錬司はしっかりサポート。
「衣装合わせのちょっとした礼だ。注文を言ってくれりゃぁ、何でも取ってくるぜ?」
 浄衣に身をつつんだ錬司はそう言って笑う。
「それにしても、リアルブルーではこんなのが流行ってんのかねぇ」
 周囲の面々の服装を見回し、わずかに苦笑い。そこへひょっこりとやってきたのはトモエであった。
「基本的にこういうのは若者の文化かな。いわゆる変身願望って奴? この世界とはずいぶん違うから、こういうのも文化になっちゃうんだよね」
 そんなことを笑いながら解説する。
「ま、とにかく今日は無礼講だから。楽しんでいってね!」
 少女はセーラー服を翻して、また雑踏に紛れていった。
(にしても大丈夫かな、変な風に見られないだろうか)
 そんなことを思いながら仏頂面で神楽服に身をつつんでいるのはオウカ・レンヴォルト(ka0301)、しかしもともとが巫覡の一族ゆえに違和感自体はそれほどない。こちらは正統派の神楽装束ゆえ、肌の露出の少ないものとなっている。浮いていることはないが、本人はずいぶん気にしているようだ。
(でも、こういう機会ならば友人を増やせるかも知れぬ)
 そんなことを思うと、わずかに瞳が優しい光をたたえた。


「とにもかくにも、ここでこうやってパーティができる程度には平和に乾杯!」
 佐藤(仮)の音頭で、パーティは再度盛り上がる。
 なし崩し的に始まってはいたが、こうやってちゃんと挨拶をすれば皆もグラスを傾ける。そしてたわいのないおしゃべりを繰り返し繰り返し、気づけば見知らぬ相手も仲間だ。
「そういや魔法少女っぽいのは二組……? いやもっといるんだな」
 リアルブルー出身の誰かがそんなことを指摘する。
 魔法少女と言えば辺境の一部族にそんな集団がいたような気もしなくはないが、ここの魔法少女は比較的正統派だ。『比較的』をつけたのは……お察しください、な理由である。
「ふふふ、魔法少女ピュアリィ☆アクア、華麗にショウダウン!」
 真水がくるっと回って決めポーズ。
 まあ、反応は推して知るべし。
 涙目になった真水がいたことだけは付け加えておく。
 もっとも、それでめげる真水ではない、慧とともに魔法少女コスをしなかったヒースとカグラのズボンにこっそり謎のアップリケを施していく。
「兄さん、ヒースさん……それっ」
 シュネーに言われて気づくカグラとヒース。
 ……うん、二人の笑顔が何より怖かった、というのは、後日参加者が話してくれたことであった。


 しかし、時間というのはあっという間に過ぎる。楽しければなおのこと。
「でも、今日はわざわざありがと!」
 発起人のトモエがにっこり笑った。
「こうやって楽しいのがやっぱりいちばんだよね! いい年を迎えられますように!」
 その言葉が、パーティの締めであった。
 そして、佐藤(仮)サンタが帰りがけになにやら渡していく。
 ちょっとしたプレゼント、と言う奴だろう。
「……来年も、歪虚との戦いを頑張らねばなりませんね」
 エルは独りごちた。
 そう、こんな『なんてことない日常』を送るためにも。
「片付け。大変なら、手伝う?」
 ナツキが問うが、佐藤(仮)は笑った。
「気ぃつかわんでええよ。こういうんも、まあ楽しかった名残っちゅーやつやからな」
 そう言って少女の頭をわしわしと。
「サンタさん。……ありがと」
 少女の笑みこそ、何よりのクリスマスプレゼントだろう。

 そう、すべてのヒトに。
 幸いが、訪れますように!
 

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重体一覧

参加者一覧


  • カグラ・シュヴァルツ(ka0105
    人間(蒼)|23才|男性|猟撃士
  • 真水の蝙蝠
    ヒース・R・ウォーカー(ka0145
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 求道者
    猫実 慧(ka0393
    人間(蒼)|23才|男性|機導師
  • 打鞠拳の哲学
    紫条京真(ka0777
    人間(蒼)|28才|男性|聖導士

  •  (ka0824
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • ガンタのともだち
    アルナイル・モーネ(ka0854
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士

  • コトラン・ストライプ(ka0971
    人間(紅)|10才|男性|霊闘士
  • 身も心も温まる
    銀 桃花(ka1507
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士

  • 碓井 道灌(ka1729
    人間(蒼)|28才|男性|疾影士
  • お菓子な仲間
    桃園ふわり(ka1776
    人間(蒼)|15才|男性|機導師
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • にゃんこはともだち
    ナツキ(ka2481
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • ヒーローを目指す者
    鳴神 真吾(ka2626
    人間(蒼)|22才|男性|機導師

  • 奄文 錬司(ka2722
    人間(紅)|31才|男性|聖導士
  • 浪漫人・鮫
    鮫島 群青(ka3095
    人間(蒼)|30才|男性|霊闘士
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファス(ka3312
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 最後の砦
    リュイ=ユウエル(ka3652
    エルフ|24才|女性|聖導士
  • 瑞鬼「白澤」
    鬼百合(ka3667
    エルフ|12才|男性|魔術師
  • 任侠姐さん
    春咲=桜蓮・紫苑(ka3668
    人間(蒼)|22才|女性|闘狩人
  • 幸せを願うもの
    ファウストゥス(ka3689
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/30 20:03:27