落ち葉掃除と肥ゆる秋

マスター:きりん

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/10/19 07:30
完成日
2018/10/22 10:17

みんなの思い出? もっと見る

-

オープニング

●落葉の季節
 やかましく蝉が鳴き、猛暑が続く夏が終わり、暑さも随分と和らいできた。
 たまに思い出したように残暑が戻ることもあるが、最近は概ね涼しい日が続いている。
 秋の到来だ。
 紅葉が色付くこの季節、秋といえば何を思い浮かべるだろうか。
 食欲の秋。
 読書の秋。
 スポーツの秋。
 人によって思い浮かべるものは多種多様だろうけれども、秋が多くの作物を収穫できる実りの秋であることは確かだ。
 例えば芋。特にリアルブルーでいう甘いサツマイモなどは、秋や冬にかけて食べる芋としては、もしかしたら一番ポピュラーな食べ物かもしれない。
 便宜的にサツマイモと呼ぶが、クリムゾンウエストにも同じようなイモは存在し、秋になればおやつ代わりに子どもたちが食べることも、よくある話だ。
 ただし、その前に秋になれば解決しなければならない問題があった。
 そう。大量の落ち葉である。

●並木街道は落ち葉だらけ
 街の中ならば街の人間が掃除するからそれでいいのだが、問題は街の外である。
 さすがに人が立ち入らない場所については意味がないので何かをすることはないが、街道周りくらいは整備しなければならない。
 特に、一部の街道は植林活動などの一環で木が植わっている場所もあり、秋になればその木々が一斉に色付くのである。
 紅葉の並木道はそれはそれで大変美しい景色なのだが、問題は落ち葉。
 はらはらと落ちる枯れ葉は並木街道を埋め尽くし、旅をする人間にとって非常に邪魔になる。
 邪魔になるだけならまだしも、風で舞い散るなどして視界を遮られて、そのせいで獣や雑魔の接近を許しましたでは冗談では済まない。
 そのため、秋になれば定期的に掃除をする必要があった。
 人の手が入った街道といえど、街の外。
 雑魔が出現する可能性がある以上、街の人間にやらせるわけにはいかない。
 必然的に、ハンターがその任を請け負うこととなった。

●ハンターズソサエティ
 本日のうさんくさい受付嬢、ジェーン・ドゥの笑顔は普段よりも三割増しでうさんくさかった。
 内心を隠す張り付いたような営業スマイルが眩しい。
「というわけでして、皆さま慈善活動は如何ですか?」
 依頼の内容によるとはいえ、ハンターが受ける依頼は基本的に危険なものも多い。
 そのためハンターには依頼を選り好みする自由裁量が与えられているというのに、ジェーンは自分が選んだ依頼をハンターたちに受けてもらいたくてたまらないようだ。
 何が彼女をそこまで駆り立てるのだろうか。
「依頼の内容は、街と街を結ぶ街道のうち、街近くにある並木道の落ち葉掃除です。降り積もった落ち葉を掃除していただきます。掃除道具が必要ならその街が提供するそうです」
 ジェーンの説明を聞く限りでは、危険はない低難易度な依頼のようだ。
 斡旋が必要なほど面倒くさかったり、危機迫ったりしている依頼ではないようだが。
「ちなみに、早めに掃除が終われば集めた落ち葉を盛大に燃やして焼き芋を焼くそうです。あ、私もハンターですので参加させていただきますが、気にしないでくださいね」
 さりげなく付け加えられたジェーンの一言に、彼女を良く知るハンターたちは悟った。
 彼女は多分、依頼にかこつけてタダで焼き芋が食べたいだけなのだと。

リプレイ本文

●並木街道にて
 雑魔が出るのならば、ハンターであるシレークス(ka0752)達が一肌脱ぐのは当然のことだ。
「んではでは、ちゃっちゃと終わらせて、焼き芋と酒を楽しむとしますですか♪」
 シレークスとともに来たサクラ・エルフリード(ka2598)は、たまにはこういう普通の依頼もいいものだと思い参加している。
「あのー、落ち葉掃除と雑魔退治が終わったら、私にもお酒を……」
「サクラには呑ませねーです」
「ええ!?」
 がっくりと肩を落としたサクラは、せめてさくっと終わらせてゆっくりしようと頑張る事にした。
 夢路 まよい(ka1328)は、ジェーン・ドゥをじっと見る。
「危険な依頼では真面目な顔で道連れとかいいだすくせに、こういう依頼になると嬉々としてハンターを頼るんだから……」
「その時のお礼でもあるんですよ、一応ですけど」
「まあ、いいけどね。焼き芋美味しそうだし」
「雑魔退治……という名目の公共奉仕というところか」
 レイア・アローネ(ka4082)はまよいと話していたジェーンに目を向けた。
「それよりお前、最近堂々とハンターを名乗るようになってきたな……」
「本当のことですから」
 三割増しで笑顔がうさんくさい。
 さあ、依頼の始まりだ!

●雑魔出現
 赤や黄色で鮮やかに色付いた並木がずらりと続く景観は、それはもう見事なものだった。
 ただ、風が吹くごとに物凄い勢いで落ち葉が散り、舞い踊るのを除けば。
「……できれば落ち着いて掃除をしたいものだ」
「これ、雑魔のことを抜いても面倒くさそう」
「たぶん、掃いたそばから風で舞い上がるんじゃないでしょうか」
 レイアの呟きに、まよいとジェーンも呼応する。
「ソウルトーチを使ってみよう。もし現れたら皆、気を引き締めていくぞ」
 幸い、掃除を始めてしばらくすると雑魔が現れた。
 動物型雑魔が四体だ。
 さりげなく、ジェーンが四人の手から掃除道具を回収していく。
「む、さっさと倒してしまいましょう……」
 サクラは法術で侵入を阻む不可視の境界を作り上げ、落ち葉を守るつもりだった。
 集め直しは勘弁して欲しい。
「守ります……全力で……。悪しき力から落ち葉を守る結界を……ディヴァインウィル……!」
 攻撃を重んじる構えを取ったレイアは、利き腕の魔導剣に生体マテリアルを流し込んで強化した。
 もう片方の腕で星神器を抜き放つ。
「あまり周囲を荒らさない方向で早めに倒すぞ」
 レイアは二刀で連続攻撃を仕掛け、三撃目の斬撃にオーラを乗せて放った。
 斬撃の軌跡を沿ってマテリアル光が走り、雑魔を貫く。
 続いてまよいの魔法の矢が無慈悲に残りの雑魔たちを射抜いた。
 消滅していく雑魔たちを背に、まよいはサクラとシレークに振り向き謝罪した。
「ごめん、もう終わっちゃった」
「いえ、早く終わるに越したことはありませんから」
「仕方ねーですよ。被害が出ずに済んだだけ良しでやがります」
 サクラが作った境界を強風が通り過ぎ、三人は落ち葉まみれになった。
「……うん、こっちの方が強敵だね」
「紅葉した葉っぱが舞い散る様子は風流ですよね……」
「くぉら、落ち葉ども! 街道に飽き足らず、わたくしたちまで汚そうとするんじゃねーです!」
 渋面で服をはたいて落ち葉を叩き落とすまよいの横で、サクラは現実逃避気味に並木街道の風景を眺め、シレークスが吠えた。
「では、再開しましょうか」
 ちゃっかり難を逃れていたジェーンが澄ました顔で再び掃除道具を配っていく。
 本当にいい度胸である。
 力仕事は任せろと腕まくりをしたシレークスは、戦闘で攻撃する機会がなかった分、まるで鬱憤を晴らすかのようによく働いた。
 燃える炎のように赤くなったオーラを全身にまとい、エクラの聖印を両手の甲に浮かび上がらせ、落ち葉をまとめて抱え上げ、袋の中に詰めていく。
 同じようなことをしたことのある人間ならば、この動作がいかに大変か分かるかもしれない。
 落ち葉といえども、大量に集まれば普通に重い。
 もっとも、からっからに乾いているので濡れている落ち葉を掃除するよりはるかにマシであるが。
 最終的に、パンパンに中身が詰まった袋が、なんと十三個も出来上がった。
「んでは、わたくしはこれを運びやがりますです」
 平然とそれらを一度に抱え上げたシレークスは、まるで小山を担いでいるような有様だった。
「待ってください。どうして当たり前のように一人で行こうとしてるんですか」
「一人では大変だろう。私たちも手伝うぞ」
「絵面が凄いことになってるよ?」
 サクラ、レイア、まよいが慌てて駆け寄る。
「別に一人でも大丈夫でやがりますよ?」
「おそらくあなたが大丈夫でも、見ている方が落ち着かないかと」
 首を傾げるシレークスから、ジェーンが袋を一つ取り上げた。

●楽しい焼き芋、落ち葉焚き
 場所を変え、ハンターズソサエティにほど近い空き地へ集めた落ち葉が運び込まれた。
「わざわざ戻らなくても現地で良かったんじゃない?」
 不思議そうなまよいをジェーンは振り向き、軽く肩を竦める。
「向こうは風が強いですから」
 掃除中のことを思い出したレイアが、表情を引きつらせた。
「……容易に想像がつくな」
 同じことを想像したかサクラもシレークスも、若干表情が青い。
「移動して正解でしたね」
「さすがに火がついた落ち葉がぶっ飛んでくるのは勘弁して欲しーです」
 ハンターだから多少火に巻かれたところで死ぬような傷は負わないが、予想外の事態に焼き芋どころでなくなっていた可能性は高い。
「そろそろ落ち葉焚きといきませんか……?」
「そうだね。ほいっと」
 サクラがそわそわし、まよいが魔法で落ち葉の山に火をつけた。
 パチパチと音を立てて、落ち葉が燃え上がる。
 そこに、新聞紙とアルミホイルで二重に包んだ芋が投下された。
 ちなみにこのアルミホイルはジェーンが持ってきたものだ。
 どうやらハンターズソサエティ職員という身分を生かして、取り寄せたらしい。
 クリムゾンウエストではそれなりに貴重品であるが、手に入らないわけではない。
「それにしても、塩水に浸すなんて裏技、良く知っていましたね」
「甘さが引き立つんだよ」
 感心するジェーンに、まよいはにっこり得意げな顔を向けた。
 やがて、焼き芋の良い匂いが漂い始める。
「そろそろ良いんじゃないのか?」
 ビールを手にレイアが火を覗き込む。
 ちなみにシレークスとジェーンの提供だ。
 ジェーンが火かき棒ですっかり焼けた落ち葉の山から焼き芋を掘り出す。
「わたくしには、何だか焼き過ぎに見えるのですが」
「中身、炭になっていません?」
「……大丈夫なのか?」
 クリムゾンウエスト出身の三人は、これで本当に美味しい焼き芋が食べられるのか戦々恐々としているようだ。
 まよいとジェーンは顔を見合わせ、悪戯っぽく笑い合った。
「ううん、これでいいんだよ」
「新聞紙と貴重なアルミホイルを使いましたからね。断熱されるので、これくらい焼いてちょうどいい感じです。水気もちゃんと残しましたから、ホクホクですよ」
 ジェーンが自分の芋を取り、包みを開いて二つに割ってみせた。
 黄金色の中身からふわっと湯気が立ち上り、甘い匂いが今まで以上に強く香る。
 ごくり、と三者が喉を鳴らす音が聞こえた。
「サクラ! 酒を! 今すぐ酒をここに!」
「はい!」
「私も行こう!」
 大きく身を乗り出すシレークスに、サクラとレイアが飛び上がって酒を取り戻ってくる。
 それぞれ焼き芋を手にお楽しみとなった。
「かぁ~っ! 仕事を終えた後のこれは、たまんねぇですね! ちゃーんっと全ては巡ってゆく。これも精霊の恩恵でありやがります!」
「何て美味しそうなお芋……。これとお酒の組み合わせはきっととても美味しいに違いありません……!」
「断固阻止するです!」
「く、またお酒を取られてしまいました……!」
 呑むと大変なことになるサクラが、シレークスにビールを取り上げられ蹲った。
「むぅ、ノンアルコールでもお芋は美味しいからいいのですが、お酒が飲みたかったです……。少しだけ、ほんの少しだけでもダメですか……?」
「ダメです」
「そうですか……」
 仕方なく、サクラは酒無しで焼き芋を味わうことにする。
 よく一緒に依頼を受けることも多い面子同士なので、かつて受けた依頼の話などで盛り上がった。
「いつも涼しい顔してるジェーンだけど、夏の肝試しでは肝を冷やしてたんだよー」
「ブッ」
 笑顔のまよいに突然恥を暴露されジェーンが吹く。
「そういえばそんなこともあったな」
 同じ依頼を受けていたレイアがニヤリと笑う。
「雑魔絵画の依頼を持ち込んだのも、そういえばあなたでしたね」
「ああ、わたくしとサクラが受けたやつですねそれは」
 サクラとほろ酔いシレークスが話題に乗っかる。
「それなら私とまよいもいたな」
「もしかして、ジェーンの依頼でこの四人全員が集まったのって、それくらいじゃない?」
 レイアとまよいがジェーンに目を向ける。
「こほん。少なくとも、私が公開、あるいは斡旋させていただいた依頼ではそうなっていますね」
 軽く咳払いして赤い顔を誤魔化したジェーンに、まよいは感心した。 
「へー、覚えてるんだ」
「受付嬢ですから。必須スキルです」
 早くも表情を落ち着かせるジェーンの発言に、レイアは考え込む。
「必須なのか……?」
「そこはたぶん深く突っ込んだら負けな奴でやがりますよ」
「あはは……」
 シレークスの突っ込みに、サクラは同意も否定もせず苦笑して誤魔化した。
 焼き芋が終わった後の灰やら何やらは残ってジェーンが処理するということで、一同は報酬の受け取り手続きに向かった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/17 19:23:09
アイコン 相談です…
サクラ・エルフリード(ka2598
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/10/18 12:19:41