「緊急の依頼です」
　青いＨＳの制服を着た受付嬢のクラヴィーア・キルシェ（kz0038）が神妙な面持ちで、集まったハンター達に向かって言った。
「辺境部族の村がゴブリンの集団に襲われ、冬への蓄えや家畜を奪われ、それに村の若い娘数人が攫われました」
　よくある話である。しかも雑魚のゴブリン退治など新米ハンターの仕事。
　だが今回は人攫いもあったということでハンター達はそれなりに気を引き締める。
「ハンターの皆さんは速やかにゴブリンが巣にしている洞窟へ向かい、攫われた女性達を救出してください」
　そう言った後にクラヴィーアは「ごほん」と咳払いして付け加える。
「……ええと、緊急の依頼でしたので先行しているハンターＰＴが居ます。でも、全員が駆け出しの新米なので不安なのです……」
　クラヴィーアは、ゴブリンの総数は襲われた村人に聞く限り十数体とのことだったので、新米ハンターでもなんとかなるか？　と思ってしまったそうな。
「たかがゴブリンと侮ってしまいがちですがアレは数に物を言わせる種族です。下手をすれば巣にはもっとたくさんのゴブリンが居る可能性が……それに中堅ハンターともやり合える上位個体も存在しますし……」
　嫌な予感がする……とクラヴィーアは呟く。
「ですので、皆さんはなるべく早く先行している新米ハンター達と合流し、フォローしてあげてください。よろしくお願いします。どうぞ、よろしくお願いします」
　危険かもしれない依頼を新米ハンターに斡旋してしまったことにクラヴィーアは罪悪感を覚えているらしい。
「よろしく」と繰り返し言った後、クラヴィーアはハンター達に向かって深々とお辞儀するのだった。

●
　ゴブリン退治――正確にはゴブリンに攫われた村娘達の救出依頼を受けたハンター達。

「……新人だけで向かうにしては、無謀だったかもしれないわね……」
　エルフ三姉妹の長女、フローレンス・レインフォード(ka0443)が考え込んだ様子で言う。
「だねー。新人さん達、しかも四人だけではたぶん荷が重いと思うー」
　次女、ネフィリア・レインフォード(ka0444)が頷いた。今回の依頼には先行した新米ハンターのＰＴが居るのだ。
「んと、目的は……ゴブリンの殲滅、攫われた女性達の救出、新米ハンター達の救援……と」
　三女のブリス・レインフォード(ka0445)は依頼概要を再確認。

「仕事に重体かぶせるとかハンター失格ですよぅ。身体半分消し炭にされたとはいえ、誠に申し訳なくっ……！」
　ソフィア ＝リリィホルム(ka2383)はすっごく凹んだ様子。今回彼女は負傷を押しての参加である。
（……出来る限り邪魔にならないように、やれることをやっていきます……）

　ベル＝ベルファ(ka2670)も思案中。
（捕まった人たちも心配だけどわたしは先に入った新人さんたちが心配かな）
「これが初めての冒険でしょ？　楽しいはずのものが嫌な思い出になるなんてやだからさ」
　ハンターにとっての初依頼。それは必ずしも楽しい物とは限らないだろうが、記憶に残るのは確か。
（カインさんにシンパシーを感じる……先輩って呼びたくなる……）
　全身甲冑を身に付け、フルアーマーといった出で立ちのベルは、同じく全身を覆う武者甲冑――
　頭部には東方の一角の鬼をモチーフとした兜を被ったハンターへと視線を向ける。
「ゴブリンによる誘拐か、村ごと占拠して奴隷化しようとした集団や歪虚が指揮して軍隊化させたものが居たな」
　ベルの視線の先、その様に呟いたハンターの名はカイン・A・A・マッコール(ka5336)。
「他のエリアでは誘拐した村人を教練して兵士にしようとしたって話も聞く、その類か？」
（集団誘拐を行えるほど統制が取れていてその指揮を行える程の知恵を持ったやつがいるか）

「若い娘達のみを攫っていった、か。女を侍らせて満足する様な連中でもないだろう。……あまり、良い想像は出来ないな」
（先行した新人達にしても。ゴブリン一匹一匹が弱くとも、地の利を取られている連中に数で攻められたら、新人には荷が勝ち過ぎる）
　クラン・クィールス(ka6605)も嫌な予感を隠せない。この依頼には自分達以外の不安要素が多い。
（出発した時間次第では……惨状を覚悟する必要があるか。……戦場に出る者に悲惨な末路など、それこそ“よくある話”だ。……とはいえ、最善くらいは掴みたい所だがな）

「ゴブリンねぇ……普通なら灰も残さず焼き尽くすんだが。嫌な予感がするな……」
　ソティス＝アストライア(ka6538)はローブとバスタオルを準備しながらその様に口にする。
「娘ばかりを攫って新米ハンターのメンバーも娘ばかり……“案件”でなければいいが」

（恋人のソティス、冒険団仲間のエメラルド達と一緒に、新米ハンターと合流し、ゴブリンを殲滅して攫われた娘さん達を救出する冒険だよ！）
「放っておいたら新米新米ハンターも浚われた人達も大変なことになるかもしれないもん……。冒険家として、見過ごす事は出来ないよ！」
　グッと拳を握るのは少女と見紛う美青年、時音　ざくろ(ka1250)。
「ざくろじゃないか、お前も行くのか」
　エメラルド・シルフィユ(ka4678)は見知った顔の美青年の声に反応。
「まあ私も聖導士だ。助けを求められれば否やはない」
　キリッと超ドヤ顔をするエメラルド。今回一番言いたかった台詞らしい。
「……兎も角急ぐか。先に新人達が向かってる以上、事は一刻を争う」

　ゴブリンに攫われた娘達に、ゴブリンの巣にたった四人で向かった新人ＰＴ。
　……不安要素だらけなので急ぐに越した事はない。ハンター達は馬車へ乗り込み現場へ向かった。

●
　ゴブリン達が根城にしているという洞窟近くまでやって来たハンター達――。

「狭い洞窟ではないが、十人が固まっては機動力や対応力が落ちるな。まして早めに奥に進みたいなら尚更だ。予定通り二組に分かれよう」
　エメラルドは同じ聖導士のフローレンスが先行なので後行に。
「なんか新人達がゴブリンに口に出す事を憚られるような目に遭わされてる事を心配している者もいるが……」
　皆を見回しつつ言う彼女。
「いやいや、それは無いだろう。いや、無いとは言い切れないのだが……ほら、なあ？」
　……残念ながら、実際に合流して見なければ判らない、というのが現状だった。

「恐らく上位種かそれ以上のが居る、もっと厄介な事になる前に排除する必要がある、ゴブリンは全て殺す」
　カインの殺意はかなり高い。

　ベルは可能なら松明に使える薪を村か道中で調達しようかと考えていたが、洞窟への到着が遅れそうだったので止めておいた。

「じゃあ、ちょっと先に行って来るから、ソティ、後ろは任せたよ」
　ざくろは先行組。後行組のソティスに挨拶。

「今現在どうなっているか解らないけど、早く助けてあげないと。ネフィ、ブリス。貴女達も、無理はし過ぎては駄目よ」
　妹二人に言い聞かせるフローレンス。
「どうにも胸騒ぎがするわね。急ぎましょう」
「それじゃあ急いで新人さんと合流してゴブリンを倒しに行くのだ♪　あ、今日は突出しないよ？　よ？」
　ネフィは姉の言葉に従いつつ、仲間と共にいざ敵中へ。

　＊＊＊

　ブリスはランタンで明かりを灯しながら洞窟内を進む。
「気付かない横穴とかあるかもだし……奇襲には常に警戒しないと……」

　ネフィは行軍中【超聴覚】を使用し、怪しい物音に注意。尚、奇襲を警戒し前衛組を前後に配置。

　先頭を進むざくろ。仲間と歩調を合わせ、急ぎつつもマスク『スターゲイザー』の暗視能力を活かす。
　洞窟内の分かれ道等を注意。手早く後行組に判る様に目印も付ける。不意打ちへの警戒も厳に。
（暗がりを見通せるのがお前達だけだと思うな、ゴブリン！）

　後方に位置するベル。得物が大きいので大きく振り回さない、身体の前でいつでも自重で叩き潰せる様、構えておく。
　……幸い、まだゴブリンとは遭遇していなかった。

　＊＊＊

　後行組も間を空けて洞窟内部へ突入。

　ソフィアは横穴を見つけた（またはざくろ付けた目印を見つけた）際、穴の出口の足元にロープを張り、音が出る様に空き缶や金属片などを提げ、簡易の鳴子状にしておいた。
「これでもし後ろに回られても音で警戒しやすくなる筈」

　カインは先行組が進んでいるのに合わせ背後や横道、天井等の周囲を警戒しつつ進行。
　壁を掘り進まれた時の事の警戒と武器の取り回しを考え、壁際には寄らず洞窟の中央を進んでいく。
　また、灯りは常にゴブリンの目の高さに合わせておいた。

「戦闘が始まったら出番だ、先行組を挟撃するなら容赦はいらん。先行組には我が主たるざくろも居る、そう易々と手出しはさせんさ」
　ソティスも仲間と共に進む。
「燃やす。噛み砕く。狩る側がどちらなのか、はっきりさせよう」

「一見一本道の様だが、此処は洞窟。暗さで見落としがちなだけで、抜け道や横穴などあってもおかしくはない。そこからの奇襲も、敵陣ならありえる話だ」
（目を引く道、置物や目印があっても気を取られず。灯りで周囲を照らして注意深く探索、警戒を行っていこう）
　クランも警戒を最大限に。奇襲の目になりそうな物は予め潰す。

●
　洞窟内部。先行組――。

　ベルは新人ＰＴに気付いて貰える様、声を上げながら前へ進む。
「聞こえますかー！　援軍です！　声が聞こえても油断しないで周りに気を付けて！」
　声に気づいたゴブリンの不意打ち、足止め、新人の気の緩みを誘発しない様に注意も呼び掛ける。
「気が緩んだ瞬間の不意打ちが怖いよ！　後退してこっちに合流して下さい！　動けないなら駆けつける！」
　新人達が戦闘不可能な状態なら入口まで一度全員で撤退する事も考慮。

　フローレンスは基本、後衛として、末妹のブリスの更に後方に位置取り。
　何かあっても仲間達を直ぐに回復役としてサポート、立ち回れる様に。
「ブリス。落ち着いていきなさい……ネフィ、貴女もよ？　突撃は厳禁ね」
【ディヴァインウィル】は、娘達や新米達を保護する時に使用するつもりである。
　回復・解毒用の【ヒーリングスフィア】と【ピュリフィケーション】は、残りの使用回数に常に注意を払う。
（どうか、無事で居てね……）
　……彼女は新米ＰＴの中でも、信仰対象は違えど同業な聖導士の少女を気に掛けていた……。

　途中、散発的に少数のゴブリンと遭遇し、戦闘へ。

　ブリスは近接戦を行う姉、ネフィの援護主体。但しスキルは可能な限り温存しておく。
　遭遇した敵が十体を下回るならば副武器のリボルバー『レインメイカー』にて銃撃。
　仲間（特に姉達）の側面や背後を守る形を取り、死角から襲い掛からんとする敵を優先的に狙う。
　戦闘後、周囲に敵の気配がなければリロード。

　ネフィがざくろと共に前衛を張り、少数のゴブリン群を撃破した時。
「あっ！　新人さん発見！」

　……そうして先行組は新米ハンターＰＴと合流。
　魔術師の女性はゴブリンの攻撃で毒を受けて倒れ、動けずに居た。
　聖導士の少女はその傍でへたり込み、何も出来ず、すすり泣いている。
　フローレンスは周囲の安全を確認してから駆け寄る。

　落ち着かせて話を聞くと、闘狩人の男性と格闘士の女性は前衛で何とかゴブリンを食い止めているという。
　まずフローレンスの【ピュリフィケーション】で魔術師の女性から毒を除去。【ヒーリングスフィア】で生命力も回復させる。

　前衛へはざくろが救援、ネフィも続く。ベルは万が一を考え、護衛として残る。
「着装マテリアルアーマー！　輝けデルタレイ！」
　ざくろは【マテリアルアーマー】を纏い防御を上げ、【攻性防壁】でゴブリンを弾き飛ばし、【デルタレイ】による攻撃を行う。
「お待たせ、もう大丈夫だよ」
　闘狩人・格闘士と戦闘中であったゴブリン群を排除後、ボロボロの状態の二人をＳＡ【ヒール】で回復させる。
　二人は「ありがとうございます」とお礼を言った後に疲労困憊だったのか、その場にへなへなと座り込んだ……。

　回復中、警戒に当たるネフィ。
「ふむん、後はゴブリンを倒して、捕まってる人達の救出だね」

　＊＊＊

　洞窟内部。後行組――。
　こちらは先行組へ背後から奇襲しようとしていたゴブリン群と接敵。

　ソフィアは戦闘時、クラルテマントで身を包み、気配を殺し極力的にならぬよう動く。

　エメラルドは傷ついた仲間の回復用に【ヒーリングスフィア】と【フルリカバリー】を準備。
　ゴブリンに囲まれれば【セイクリッドフラッシュ】を放って対処。

　カイン。彼の基本戦術はゴブリンを発見した時、距離があるならば喉や頭を狙い、蒼機剣『N＝Fシグニス』の光刃を飛ばして仕留める。
　接近されれば【カウンターアタック】で反撃し排除。
「やはりゴブリンにしては練度が高いか」
　通常のゴブリンはリーダーに率いられており統率が取れている。
【鎧受け】や、バックラーで防御しつつ、出来るだけ壁や敵に挟まれない様に心掛ける。

「出て来たなゴブリン共、纏めて燃やしてやろう」
　ソティスは敵が散開するならSA【マジックアロー】、SA【［BH］BW―ハンティング】。
「皆仲良く焼く。燃やす。焼き焦がす。灰すら残さず焼き尽くそう。……む、纏まるか。格好の的だな」
【［BHs］BW―ヒートシャワー】！
「……狩りの時間だ、雑魚は雑魚らしく燃え尽きよ！」
　仲間を巻き込まぬ様、注意しつつ、炎の魔法を乱舞させる。

「救出を安全に行う為もそうだが。次の被害を起こさない為にも、ゴブリンは全て殲滅しておきたい所か」
　クランは負傷しているソフィアや、後衛のソティスを【ガウスジェイル】にて守りながら戦闘。
　攻撃を受けた後は【カウンターアタック】で切り返し、手数を増やす。
「道幅を考慮すると剣を振るうにも考える必要があるな……」
　声を掛け合って連携を取り、敵が横に広がっていれば【薙ぎ払い】。
　奥に広がっているか離れているなら【衝撃波】をそれぞれ使い分ける。

●
　新米ＰＴは、生命力は回復した物の、精神的な消耗が激しかったので先に帰らせた。
　彼らだけでは心配だったが一応戦闘は可能な様子。来た道は念入りにゴブリンを排除したので大丈夫と判断。
　先行組と後行組は合流し、攫われた娘達が囚われている最深部を目指す。
　フローレンスは新米ＰＴと別れる際、聖導士の少女の背中を優しく擦ってあげた。
「……こういう事も、ある物よ」

　＊＊＊

　道中、散発的なゴブリンとの戦闘が何度かあった。

　ベルは【超聴覚】を使って哨戒。壁を注視。
　ゴブリンが通れそうな横穴を見つければ火をつけた松明を投げ入れ、燻り出し、確実に排除した。

　暫く歩いて最深部へ到着。やはり多数のゴブリン。上位種らしき姿も見え……最奥には拘束されている救出対象の娘達！
　――殲滅、開始。

　ソフィアは、攻撃は他に任せ、自分は周囲の警戒。空気の流れや臭い、不自然な置物や岩を注視し、抜け穴や伏兵等が居ないか留意。
　発見時はすぐに周囲に伝達。後は牽制にでもなればと必要なら拳銃で射撃も。

（あれはＨＳにあった資料で見たシャーマンとウォーロード……？　やり合ってみたい気もするが……前衛は足りているし、そこは仲間達に譲ろう）
「こちらは雑魚やリーダーを片付けてシャーマンへの道を拓く。なので前衛はシャーマンを出来るだけ早く潰してくれ」
　剣を抜くエメラルド。負傷したソフィアに攻撃が向かえば【ホーリーヴェール】で防御し、守る。

「親玉には特別に【［BFr］BW―フレイムレイン】だ。取り巻き諸共こんがり焼いてやれ。焦げる？　何、ウェルダンの方が良かろう」
　ソティスは間違っても救出対象を巻き込まぬ様にしつつ、敵の武将を狙って先制攻撃。
「来たれ我が眷属！　我らに仇成す不埒者に業炎の裁きを！」
　捕まっている娘達は最深部、広い空間の最奥に居る。ならばまずは敵を燃やして安全を確保。

「此処にいるゴブリンは殲滅！　なのだ♪　ゴブリン殲滅すべし、慈悲はない、だっけ？」
　ネフィはナックルでの近接攻撃を主体に戦闘。三姉妹の得意分野を活かし連携して対応する。
【地を駆けるもの】を使用し、洞窟の壁等を活かし走り回りつつ、一撃を加える。足を止めない様に動き回る。
　救出対象へ敵が向かわない様に【ファントムハンド】や【マッスルトーチ】で誘引。
「洞窟内で大きな武器は使い辛いんだよ？　こういう所は小回りの効く武器でないとね♪　そこ、猫ロケットパンチなのだ♪」

　ブリスは【スリープクラウド】で敵群一部の無力化を試みる。
　最も多くの敵を巻き込め、且つ味方を巻き込まない位置を指定し、発動。
　その後、起きている敵に対してリボルバーの引き金を引きつつ、仲間へ呼び掛け。
「敵の一部を眠らせたから……今の内に数を減らして……！」
　そして近接攻撃を行う仲間に【ウィンドガスト】を付与。
　残りの敵、特にシャーマンを狙い、【ウィンドスラッシュ】を詠唱し放つ。

　ベルは、時間が掛かってもゴブリンは後腐れない様に全滅させるつもりで戦闘中。
「どうせ放っておいたらまた人を襲っちゃうでしょ？」
　武将との戦闘時、【地を駆けるもの】からの【鎧通し】をぶつける。

　カイン、武将と戦闘、シグニスの光刃射撃による牽制や仲間の攻撃に隠れ、【踏込】で接近。
　大型ハンマーを振り被り足の爪先を打ち付け、膝、肩口、頭部の順に殴り付ける。
　当然抵抗を受けるが、ざくろの機導術＋剣技と連携。敵が動かなくなるまで頭に鎚を叩き付け続けた。
　最後にざくろが【超重練成】を発動。
「よくも女の子達を……絶対に許さない！　――『超・重・斬、縦一文字斬り』！！」
　巨大化させた魔導剣の斬撃によって武将を真っ二つにして撃破した。
　……残存の敵も程無く掃討完了。

「強い奴が居たか……やはりキツイな、ゴブリン退治は」
　カインは、救助は女性陣に任せ、最奥を調べ……隠し扉を発見。
「…………」
　隠れていたゴブリンの幼体群も速やかに排除した。

　＊＊＊

「……ざくろよ、こういう場面でのらきすけは私だけにしておけよ？　さもなくば戻ってから燃やすからな？　どこでとは言わんが」
　ソティスはざくろに目を瞑っている様に言い、鎖で繋がれていた娘達を解放し、全員にローブを被せる。
「我々が来たからには安心するといい」

　フローレンスは捕えられていた娘達一人一人をきつく抱き締めて落ち着かせる。
「もう大丈夫……大丈夫よ……」

　それでも所緒不安定な娘には、ここからの脱出もあるので、ソフィアが精神安定剤を投与。
「安心して下さい。もう帰れますから」

「よくある話……か。そうならない為に私は戦っている。主よ……お導き下さい……」
　エメラルドは静かに祈りを捧げる。

　＊＊＊

　その後、一行はネフィを先頭とし、残敵を捜索しながら来た道を戻る。

　……無事、と言えるかは定かではないが、娘達の救出を完了。洞窟の外へ。出口で待っていた新米ＰＴと合流。

　カイン達が洞窟付近にも残存のゴブリンが居ないか念入りに捜索した後に、一行は迎えの馬車で辺境のＨＳへ帰還。
　そうして依頼は完了となったのだった。