• 落葉

【落葉】剣魔クリピクロウズと交戦せよ!

マスター:きりん

シナリオ形態
イベント
難易度
難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/10/31 07:30
完成日
2018/11/05 10:41

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●スケルトンの正体
 地下遺跡に巣くっていたスケルトンたちは、全て剣魔の分体だった。
 このスケルトンたちを通じて、剣魔はハンターたちとの戦闘経験を蓄積し、本体にフィードバックしていたのだ。
 大本たる剣魔クリピクロウズは今もラズビルナム地下遺跡内に留まっている。
 剣魔の性質から放っておけば戦闘は起こらない可能性が高いとはいえ、歪虚である以上存在するだけで回りの環境に悪影響を与え続けることは想像に難くない。
 そもそも、剣魔の打倒なくしてラズビルナムの解放は成し得ないだろう。
 とはいえどうやって彼女と戦うべきか。
 通信機は……たまにノイズが聞こえるかもしれないが、使えないわけではないだろう。
 ただし、場所が場所なためここぞという時に使えない可能性もある。
 そこまで考えて、ハンターズソサエティーの受付嬢にしてハンターでもあるジェーン・ドゥは本題を切り出した。
「……で、どうして私が呼ばれたんでしょうか」
「分かってるくせに」
「……ええ、ええ、分かっていますとも。どうせまた、ラズビルナムに行けというのでしょう」
 知らない振りをして逃れようとしたジェーン・ドゥは上司のエルス・モウザルに逃げ道を防がれ、ため息をつく。
「察しが早くて助かるよ。剣魔の調査を頼みたい。できるだけ多くの交戦データが欲しいんだ。後々の戦いできっと役に立つだろうからね」
 公開する予定の依頼が、エルスからジェーンの手元に送られてくる。
 確認を終えたジェーンは考えた。
 できるだけたくさん、ハンターを募集しよう。そしてその中に自分は紛れるのだ。仕事をしている体で安全な位置にいよう、そうしよう。
「ちなみに、君自身も剣魔と交戦してきてね。データは多い方がいい」
「ええええええええええええええええ」
 これ以上ないくらい、ジェーンは嫌そうな顔をした。

●ルート決め
 腹を括ったジェーンは、依頼を公開するとテーブルにハンターたちの協力で作り上げられた地下遺跡の地図を広げ、すぐに作戦を練り始めた。
 何せ自分も交戦しなければならないのだ。時間はいくらあっても足りない。
 ただ地下遺跡に突入すればいいという簡単な話でもなかった。
 剣魔クリピクロウズは地下遺跡内ならばどこにでも現れる。
 神出鬼没の剣魔本体と出会うまでが、まず大変だ。
 スケルトンたちは相変わらずうようよしているだろう。
 自分たちはこの大群を蹴散らしながら、剣魔クリピクロウズを見つけ出さなければならない。
 だが、地下遺跡の深部には何かが、おそらくは異界のコアとなるものがあるはずだ。それが剣魔自身にしろそうでないにしろ、深部を目指せば自ずと剣魔も出てくるだろう。
 まずは剣魔を引きずり出すことを目標にしよう。
 今までの調査が実を結び、地下遺跡の地理は徐々に解明されつつある。
 判明している中で、深部へのルートは主に三通りある。
 一つは部屋から部屋へと最短距離を正面突破していくルート。
 絡め手も何もなく、ただスケルトンの群れを薙ぎ払い、粉砕して進む。
 距離的には一番短いが、その分戦闘は激しくなることが予想される。少人数ではスケルトンたちの物量に圧殺される可能性が高い。対抗するためには少なくとも、十人以上でチームを組む必要がある。同行する人数は多ければ多いほどいい。
 二つ目は通路を使って部屋を迂回しつつ進むルート。
 部屋を避けることができるため、その分相手をする数は少なくて済むだろう。通路を長く進むことになるので、戦闘を考えると一度に同行できる人数は四人から八人ほどが限界か。あまり人数が多いと動き辛いかもしれない。
 部屋には高い天井があり、天井近い壁に人が一人通れるくらいの横穴が空いている。
 この横穴は、他の部屋にもあった。通気口のように空いている横穴だ。
 数々の部屋の天井近くを横断する形で続くこの横穴を通っていけば、おそらく正面突破ルートとほぼ同じルートで深部に出れる。場所が場所だけに、敵が待ち伏せしている可能性もほぼないと見ていい。
 これが、三つ目のルートだ。
 横穴を伝って部屋から部屋へと隠れ潜みながら進み、隠密して敵を避けながら進む。
 直立できないほど道が狭いので、行けるのは一人か二人程度だろう。また、空を飛んだり壁を歩いたりしなければ、そもそも横穴に辿り着くことができない。
 狭い横穴内ではまともに戦闘を行えない。どうしても戦闘しなければならなくなった場合は部屋の上空や壁、天井などに張り付いて行う必要がある。当然、墜落すれば下には大量のスケルトンたちが待っている。
 どのルートを行くべきか。
 ジェーンは十分な人数が集まることを祈りながら、今度は可能な限り依頼に必要な資料を集め始めた。

●行く手を塞ぐ者たち
 ラズビルナム地下遺跡で待っているであろう敵たちの情報も、今では随分と多く集まっていた。
 地下遺跡内に出てくる敵は主に剣魔の分体であるスケルトンたちだが、当然それが全てというわけでもない。
 異界化している遺跡から直接発生した、いわば異界産とでもいうべき歪虚たちもいる。
 彼らは一見すると人間や亜人といった既存種に似た外見だが、強い負のマテリアルを発していることから、歪虚だということが推測できる。
 出現場所も合わせて鑑みると、ほぼ断定していいだろう。
 スケルトンたちは基本的に数で押してくる。そのため正面突破ルートで一番遭遇率が高く、亜種が出てくる可能性も高い。武装は多種多様だが、剣や槍、斧に弓など、中世的なものが主で、銃の類は確認されていない。弓も天井近くの横穴にまで届くほど長射程なものはない。
 お互い気付くのがほぼ同時になりやすく、小細工なしの戦いになる。
 一つの部屋に出てくるのは三十体だ。奥に進めば進むほど、剣魔クリピクロウズが出てくる可能性は高くなる。
 異界産の歪虚たちは、通路で多く出現する。
 彼らは外見に加え似た種族の特徴も引き継いでおり、コボルドやゴブリン、ジャイアント、エルフなどが主に該当する。
 それぞれ俊敏さや連携能力、同行する動物型雑魔への騎乗能力、脅威的な筋力、種類豊富な魔法など、それぞれ長所を備えている。
 通路一つにつき四体ほどと遭遇するようだ。挟み撃ちや後背からの奇襲に警戒しなければならない。正面突破ルートに出てくるスケルトンたちの脅威が量ならば、迂回ルートの脅威は質だといえる。
 横穴ルートで敵について考える必要はないだろう。どの道まともに戦闘などできやしないのだから。
 ただ一つ可能性として、タイミングが合えば下で戦う正面突破ルートの仲間たちを援護できるかもしれない。
 もっとも、時と場合により通信機のノイズが酷い場合もあるので、タイミングよく鉢合わせられるかは多少運が絡むが。

リプレイ本文

●作戦会議
 当日。
 ハンターズソサエティに集まった一行を、目に隈を作ったジェーン・ドゥが出迎えた。
 総勢二十四人。ジェーンが受け持つ依頼としては、最大人数を軽々と更新する数だ。
「まずはこちらへどうぞ。遺跡に突入すれば、後は突き進むしかありません。準備は入念に行いましょう。大会議室を予約してあります」
 案内された大会議室は広かった。会議机が四角く並べられており、椅子がずらりと並ぶ様は壮観だ。
 全員入っても、狭苦しさを感じない。
「進行役は不肖私が務めさせていただきます。この依頼で集められた剣魔についての情報は、分析を経て後日正式に公開予定となっております。まずは陣形と班の振り分けですが……」
 ジェーンが始まりを告げ、ホワイトボードに概要を書き込み作戦会議が始まる。
「ボクは正面突破班に行かせてもらうよ。もちろん後衛で」
 フワ ハヤテ(ka0004)が一番に意見を述べた。
「僕も同じだね。前衛に立って戦線を支えよう」
 続いて発言したのはキヅカ・リク(ka0038)だ。
「正面突破班に志願する。前衛として戦うつもりだ」
 落ち着いた様子で、ヴァイス(ka0364)が配置の希望を出した。
「ここまで正面突破班ばかりだな。俺も向かうぜ。前衛希望だ」
 アーサー・ホーガン(ka0471)がヴァイスに目をやる。
 二人は酒を呑み交わす友人関係だ。
「迂回通路を担当するよ。アルトちゃんやアルスレーテさんと一緒になれたらいいな!」
 繋がりがある仲間にリューリ・ハルマ(ka0502)が手を振る。
「色々見知った顔がいますね。正面突破班に回ります」
 Uisca Amhran(ka0754)はヴァイスと南護 炎(ka6651)を見ていた。
「ホムラと一緒に正面突破班でお願い! リクもこっちだけど、リューリとアルトはどうだろ?」
 炎と隣合わせに座るミリア・ラスティソード(ka1287)が、元気いっぱいに主張して首を傾げる。
「正面が一番戦いやすそうだからそっちに行こうかな。後衛で戦うよ」
 魔術師である夢路 まよい(ka1328)が手を上げる。
 八島 陽(ka1442)は依頼仲間である神楽(ka2032に目を向けた。
「オレも正面突破班にする。後衛から援護するよ。神楽くんも来るかい?」
「そうっすね。正面突破班で臨機応変に動くっす」
 神楽は陽に同意した。
「迂回通路にしておくか。シガレットやアルトもこっち来そうだしな」
 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が希望を出した。
「カナタは正面突破班かのう。おおヴァイスどん、よろしく頼むぞ。後はウナパイどんの動向じゃな」
 自分がどこの担当か定めたカナタ・ハテナ(ka2130)は、会議の行方を見守る。
「天井横穴から忍び込む。……すっげぇ狭いって話だが何とかなるだろ」
 リュー・グランフェスト(ka2419)がレイア・アローネ(ka4082)と視線を交わす。
 二人は同じ小隊仲間だ。
「正面突破班で行かせてもらおう。戦友が二人いるのでね」
 アウレール・V・ブラオラント(ka2531)がいう戦友とは、キヅカとカナタのことだ。
「となると、俺は迂回通路の方だな。キヅカとは別だが後で合流するなら同じだ」
 シガレット=ウナギパイ(ka2884)とキヅカは冒険仲間だ。
「あたしは天井横穴から行くよ。カナタさん、剣魔戦で会おうね」
 カナタとは対剣魔仲間であるリリア・ノヴィドール(ka3056)が自分の行動予定を発表する。
「迂回通路から深部を目指そう。……リューリちゃんと一緒だね。アルスレーテさんもそうなるのかな」
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は友人であるリューリと仕事仲間のアルスレーテ・フュラー(ka6148)に対し、他には見せない砕けた態度を覗かせた。
「……正面突破班で前衛を希望だ」
 神城・錬(ka3822)は言葉少なに告げる。
 その視線は知り合いであるリューに向けられていた。
「正面突破班に参加だ。リューとは最後に合流する形になるな」
 レイアにとって、彼は戦友だ。
「私は迂回通路を使う。早く剣魔と一戦交えたいものだ」
 不動 シオン(ka5395)は静かにその時を待つ。
「二人とも正面突破班にしたんですね。では私もそれで」
 夜桜 奏音(ka5754)はUisca、キヅカと関係が深く、二人が所属する班に入った。
「朝騎は迂回通路でいきまちゅ。ヴァイスさんとは別になるでちゅ」
 クールに北谷王子 朝騎(ka5818)が希望を出す。
 彼女にとってヴァイスは友人だ。ヴァイスにとっても朝騎は戦友である。
「横穴も考えたけど、迂回通路にするわ。……別につっかえたりしないか心配したわけじゃないわよ? 本当よ?」
 アルスレーテはリューリやアルト、シガレットに対して弁明する。
 この三人は仕事仲間だ。そして今回は同じ班になった。
「俺はミリアと正面突破させてもらおう。ああ、ヴァイス兄貴がいるじゃないか。オーローンさんとグランフェストさんまで。ウナギパイさんとは深部で合流かな」
 炎が最後に所属を決め、これで全員の振り分けが終わった。
 全ての打ち合わせが終わり、各々は動き出す。
 目指すはラズビルナム、その奥地にある地下遺跡。
 さあ、依頼の始まりだ!

●ラズビルナム地下遺跡道中~正面突破
 突入した正面突破班の前に、大量のスケルトンが立ち塞がる。
 ハンターたちも総勢十五名とかなりの大集団なのだが、スケルトンはその二倍もの数に達した。
 まず行われるのは、後衛同士の攻撃だ。
 スケルトン亜種たちが弓を構え、大量の矢を放つ。
 雨のような密度で、ハンターたちの前衛目掛け矢が降り注いだ。
 反撃とばかりに、奏音、ハヤテ、まよい、陽の四名が動く。
「わらわらと沸いてますね……。切り開きます!」
 符をばらまいて張られた結界が、中に閉じ込めたスケルトンたちを光に満たし焼き尽くす。
 続いて白龍のドラゴンブレスを思わせる閃光が一直線上にスケルトンたちを薙ぎ払った。
 どちらも奏音の攻撃だ。
「この程度で足止めされてる場合じゃないからね。押し通るよ」
 静かにハヤテが詠唱を始めると、空中に魔法の矢が作られた。
 次々に数を増し、五本になった矢を、ハヤテはスケルトンたちへ向ける。
「今なら味方を巻き込まないし、絶好のチャンスでしょ?」
 荒ぶるマテリアルを操るまよいの頭上で、紫色の球体が輝いている。
 まよいが錬金杖を振り下ろすと、ゆっくりと球体が降下を始めた。
 スケルトンたちの頭上にまでくると、球体が弾け巨大な重力場を発生させ、圧し潰す。
 さらに魔法を完成させたまよいは、一条の雷撃を放ちスケルトンを貫いた。
「ここがあいつのマグ・メルなのさ」
 剣魔と戦う前に苦戦などしていられないとばかりに、陽はこの場を死者の国に例えた。
 生み出された魔法の矢が五本、呪画が指し示す方角へ飛翔していく。
 奇しくも、その方角はハヤテが狙ったのと同じ。
 二人分、十本に増えた矢がスケルトンたちを射抜いた。
 これで先制攻撃の応酬は終了、後は力と力のぶつけ合いである。
「他の班の人たちも動き出したようですね。なら、私たちも前進あるのみです!」
 Uiscaに眠る内なる龍の力が呼び覚まされ、闇色の龍牙や龍爪が無数に生み出された。
 錬金杖により射出された龍の牙爪はスケルトンたちを串刺しにする。
 未だスケルトンの数は多いが、Uiscaの攻撃で空白ができた。
「引き裂くぞ! 私に続け!」
 その隙間にアウレールが飛び込んでいく。
 聖祈剣と絶火刀を構え、武器強化や魔法剣の解放も交え、真っ直ぐ傷口を広げてスケルトンたちの陣形を斬り裂いた。
 体内のマテリアルを活性化し、オーラを炎のように激しく燃え立たせたミリアが、スケルトンたちの目を引き付ける。
 そして、炎と呼吸を合わせ、機会を窺った。
「この角度なら、焼くのはスケルトンだけだ!」
 続いて飛び出したキヅカが、マテリアルを集中させ燃焼する破壊エネルギーを噴射する。
 スケルトンたちが赤い炎の中で蠢くのを確認したキヅカは、光の三角形から放たれる三条の光で追い打ちをかけた。
「先に行かせてもらうぞ!」
 仲間を巻き込まないよう前に出たレイアが、強化された魔導剣を薙ぎ払い、スケルトンたちを攻撃する。
 叩き斬られた骨が何本も宙を舞った。
 アウレールが広げた隙間へさらに楔を打ち込むがごとく、レイアは左手で星神器を引き抜いた。
 二刀を構え、大きく踏み込み刺突を一閃しスケルトンを粉砕する。
 取りこぼしたスケルトンたちが出ても、錬がその処理に回っている。
「すまんが前を通るぞ!」
 全速力で駆け抜ける錬は、レイアの目前を横切りスケルトンたちをすれ違いざまに斬り倒していく。
 同じ軌跡がもう一度走り、目にも止まらぬスピードで縦横無尽にスケルトンを蹂躙した。
 錬は傷を負った個体を優先的に狙い、確実にスケルトンの数を減らす。
「数は少なくとも俺たちの方が強い! このまま圧し潰せ!」
 ヴァイスは蒼い炎のオーラを魔鎌にまとわせ、そのまま踏み込み器用に鎌の先で刺し貫いた。
 スケルトンたちも先に進ませまいと抵抗するものの、全く意に介せず進む。
 勢いは完全にこちらにあった。
「おう、任せろ!」
 即座にアーサーが反応する。
 試作溶断刀とパリィグローブで攻撃を仕掛け、加速して放たれた三撃目の斬撃がオーラとなり、スケルトンたちを貫いた。
 死角からスケルトンに襲われかけるが、直前でヴァイスが知らせ大事には至らなかった。
「後ろには通さないっす」
 暴れ回る前衛たちを抜けてくるスケルトンを、神楽は一匹ずつ潰していく。
 後のことを考えると節約しなければならないので、ペースはそれほど早くない。
 それでも、スケルトンの数は順調に減っていく。
「いくぞミリアさん! 剣魔を倒す……そのためにお前たちは、邪魔だっ!」
「ホムラの方こそ、ボクにちゃんとついてきなよ!」
 炎とミリアが入れ替わり立ち代わり、自分たちは二人で一人なのだといわんばかりのコンビネーションを見せ、スケルトンたちを翻弄する。
 止めとばかりに炎の攻撃に全てを賭けた一刀が、スケルトンたちをまとめて両断した。
「クリピクロウズ本体も分身体が使っていた技を使う可能性がある。警戒せねばならんの。まあ、まずは目前の脅威を取り除く方が先か」
 静かに戦況を見つめるカナタは、頃合いを見計らって祈り、法術を発動させる。
 癒しの力が傷付いた仲間を癒していく。
 スケルトンたちとは底が違うのだ。
 傷付いても、回復してくれる仲間がいるのだから。
 激戦を制し、正面突破班は第一の部屋を制圧した。
 まだまだ、先は長い。

●ラズビルナム地下遺跡道中~迂回通路
 地響きがした。
 何部屋目の戦いなのかは分からないが、壁の向こうでは正面突破班が戦闘を繰り広げているのだろう。
 部屋を迂回して通路を進む一行は、もう幾度目かも分からない敵の襲撃を受けた。
 ラプトルに乗ったゴブリンが突っ込んでくる。
 続いてコボルドがまるで騎兵に随伴する雑兵のように統制の取れた動きで続く。
 大きな足音を立てて、天井に頭をぶつけそうなほど大きいジャイアントが一行を見下ろしながら歩き、最後尾ではエルフが既に魔法の詠唱を始めている。
 しかも、これらが一組ずつ、前後から挟み撃ちで迫ってきている。
 亜人に見えるが、彼らは皆歪虚だ。
 通路は狭く、移動して回避するのは難しい。
 早急に陣形を組み直さなければ、後衛がまともに被害を受けることになるだろう。
 最も早く動けるのは、リューリとアルトだ。
「アルトちゃん! 先頭はよろしくね!」
「うん! ボクたちで食い止めよう! 後ろはリューリちゃんに任せるよ!」
 元気いっぱいなリューリにつられ素が出たか、凛々しさよりも元気さを見せてアルトが前に出る。
 背後の敵にはリューリが向かい、アルトはそのまま敵先頭のゴブリンナイトに激突し……一蹴した。
 感じた手応えでは見かけ通りの弱さではなかったようだが、どんなに強くともアルトを相手取れるほどではないらしい。
 オーラをなびかせ残像を纏うアルトはそのまま壁から天井へと駆け上がると、次のコボルドに反応を許さず、法術刀を振り下ろした。
 しかしリューリが相手をするゴブリンナイトの方は、攻撃に耐えた。
 如何に超人といえども、限られた時間に発揮できる運動量には限度がある。
 拳を振り切ったリューリの目の前で、ゴブリンナイトの姿を取る歪虚が武器を構える。
「悪いけどね、私もいるのよ!」
 そこへ、アルスレーテが躍り出た。
 鉄扇を振るい、ゴブリンナイトの攻撃の芽を潰し、止めを刺した。
 前方を塞ぐジャイアントにレイオスが挑んでいく。
「元は迫害された亜人達か。経緯にゃ同情するが戦う以上は手加減無しだ!」
 レイオスの闘旋剣がマテリアルで淡く輝き、そのまま振り上げられる。
 対するジャイアントは、こん棒でその巨体を生かした振り下ろしを行う。
 闘旋剣とこん棒が激突し、轟音を上げ……競り勝ったのは、レイオスの闘旋剣の方だった。
 防御を抜いたレイオスの薙ぎ払いが、ジャイアントの胴体に直撃する。
 ジャイアントが大きくよろめく。だが、倒れない。
 そこへシオンが飛び込んだ。
「戦場こそ我が楽園、闘争こそ我が命。おまえが私の闘争心を満たすに足る敵か否か、見極めてやろう!」
 マテリアルに満ちた妖刀を手に、そのマテリアルを爆発的に放出させる。
 シオンは大上段から妖刀を振り下ろし、爆炎のような閃光がジャイアントを貫いた。
 なおも健在のジャイアントの背後で、エルフが魔法の詠唱をしている。
「させませんでちゅ。……無理でちゅか?」
 朝騎が符を投げると、空中で稲妻と化しジャイアントを黒焦げにし、エルフにも雷撃を浴びせた。
 ついにジャイアントは倒れ、攻撃に耐えたエルフが魔法を行使する。
 耐えがたい眠りの欲求が、アルト、レイオス、シオンの三人を襲う。
 しかし三人ともその誘惑をはねのけた。
 後方ではジャイアントが暴威を振るっていたが、前方はもうすぐ決着が着きそうなので増援が見込める。
「……何とかなりそうだな」
 仲間に任せて戦況を見守っていたシガレットは、アルト、レイオス、シオンの三人が前方のエルフを倒し、残るその足でリューリとアルスレーテの助太刀に入り、後方のジャイアントとエルフを蹂躙していくのを見て、煙草を取り出し一服しようとし……やめた。
 仕事を終えるにはまだ早い。
 最後の楽しみに取っておくべきだと判断したのだ。

●ラズビルナム地下遺跡道中~天井横穴
 リリアとリューは狭い横穴をひたすら先に進んでいた。
 正面突破班や迂回通路班が激戦を繰り広げているのか、何かの破壊音や地響きが振動となって壁を伝い、二人がいる横穴の中にまで聞こえてくる。
「せまーい……こわーい……」
「くそ、つっかえやがった」
 這いつくばらねば通ることすらできないくらいの狭さなので、比較的小柄なリリアはともかく、クリムゾンウエスト人の平均身長としては大柄な方のリューは進むのも一苦労な状況だった。
 この横穴は、蹲れる場所では広さを感じてしまえるくらい本当に狭く、ほとんどはこのように匍匐しなければ進めない。
 しかも匍匐前進しているということはある意味隙だらけということでもあり、横穴内で待ち伏せたところでろくな戦闘行動が取れるわけでもないのだから、常識的に考えて敵がいるはずもないということが分かってはいても、無防備な姿勢を強いられるというのは強いストレスを与えられる。
 横穴をしばらく進むと、光が見えた。
「あ、また部屋だよ」
「注意しろよ。落っこちたら冗談じゃなく死ぬからな」
 唯一襲われる可能性があるとすればこの部屋に出た時のみで、それもきちんと距離を取って天井などを移動していけば問題なく先に進める。
 もう既に三回部屋を通り抜けてきた二人だが、四部屋目となるこの場所も、スケルトンたちで埋め尽くされていた。
 まだ、正面突破班はここまで来ていないらしい。
 到着を待っても良かったが、待ったところで援護ができるわけでもないので、先に進む。
 リリアもリューも限界まで気配を消して、天井と一体化しているかのように歩く。
 この部屋は天井の一部が崩落しており、まるで空に向かって掘られたかのように穴が空いている。
 もしかしたら穴は地上に繋がっているのかもしれないが、穴から明かりが漏れているわけでもないので望み薄だろう。
 それどころか、ここが異界であることを鑑みると、穴に入ればとんでもない場所に連れていかれて戻れなくなる恐れすらある。
 かといって迂回するのは時間がかかり過ぎるうえに、地形の関係上かなり下の方にまで降りなければならない。
 具体的にいえば、眼下のスケルトンたちに気付かれてしまう高さまで。
 飛び越えなければならない。
 天井を蹴った瞬間、重力が役目を思い出したかのように活動を始め落下しそうになるのを堪え、穴が空いた向こう側の天井にある凹凸に手を伸ばして落ちるのを拒み、再度マテリアルを身体に巡らせ重力のくびきから逃れる。
 向こう側の横穴に潜り込むと、二人の口から自然とため息が漏れた。
「ひー、心臓に悪いよ」
「命を賭けたアスレチックだなこりゃ」
 気持ちが落ち着くのを待ったリリアとリューは、再度横穴を進み始める。
 現在判明している範囲内での最終部屋まで、後もう少しだ。

●ラズビルナム地下遺跡深部~どこか
 それは、美しい女性の姿をしていた。
 それには、戦意がなかった。
 それは、争いを嫌った。
 ただ、静かにこの場所で暮らせるならそれでよかった。
 本当に、他には何も望まなかった。
 しかし、それは歪虚だった。
 剣魔クリピクロウズ。
 それが、彼女の名前である。
 ずっとクリピクロウズは考えていた。
 どうして、戦わなければならないのか。
「私たちは、ただここで暮らしていたいだけなのに……」
 人間に対して恨みはない。
 嫌悪もない。
 ただ、争いを厭う心だけがある。
 自分を信仰した者たちが眠るこの地で、ただ穏やかに過ごしていたいだけなのだ。彼女は。
 しかし、クリピクロウズが歪虚であることもまた、覆すことはできない事実である。
 本人がどんなに善良な人格だろうと、その行動が結果的に生きとし生けるものにとって害悪となってしまう。それが歪虚という存在だ。
 彼女も、例外ではない。
「戦いたくはないのに……彼らも、平和を求めているはずなのに……。どうして、そこまで争おうとするのですか……?」
 誰に向けたかも分からぬ呟きを残して、クリピクロウズは消えた。

●ラズビルナム地下遺跡深部~最終部屋~序幕
 ついに、一行は現段階で判明している時点での最深部へ辿り着いた。
 とにかく広い部屋だ。
 今まで正面突破班が駆け抜けてきた部屋よりも、さらに広い。
 その広さが、どこか不穏だった。
 まるで、それだけの広さを必要とする理由があるかのようで。
 魔導パイロットインカムで通信を試し、状況を確認したリューとリリアも合流している。
「おい、点呼を取るぞ。一だ。回復もするからな」
 シガレットが音頭を取り、次々に声が上がる。
 最終的に、二十四まで全ての数字が告げられた。
 全員、無事だ。
「重傷者を癒します。皆さん集まってください」
 Uiscaが声をかけて回り、散らばっていた人員を集合させる。
「今のところ敵は見えんが、負のマテリアルを一際濃く感じる。皆の者よ、油断してはいかんぞ」
 治療を施しながら、カナタが注意喚起を促す。
 三人がかりで回復を済ませた。
 突然、負のマテリアルが渦巻く。
 全員が警戒態勢を素早く取る中、彼女は姿を現した。
 剣魔クリピクロウズ。
 黙して語らない、非戦の歪虚。
「貴女の目的、望みは何です……?」
 思い切ったように、クリピクロウズへUiscaが問いかける。
「分身体は骸骨じゃったが本体は美人でボインさんなのじゃな。剣魔どんは何が目的なのじゃ? 剣王どんの事は知ってるかの? ここは邪神と何か関係がある所なのかの?」
 カナタもまた、クリピクロウズに会話を試みた。
「どうして何もいわないのですか……? 口にしなければ、何も伝わらないのに……」
 恐る恐る、奏音がクリピクロウズに向けて話しかけた。
 沈黙が痛くなるほど張り詰めてから、ようやくクリピクロウズが口を開いた。
「……出ていってください。もう、私たちに関わらないで」
 返答は、大量のスケルトン召喚と同時に行われた。

●ラズビルナム地下遺跡深部~最終部屋~剣魔クリピクロウズ
 召喚されたスケルトンたちはいくら倒そうとも再召喚された。
 まるで果てがないのではないかと思ってしまうほどの物量で、スケルトンたちが押し寄せてくる。
 この戦いが始まってからだけでも、既に数えきれないほどのスケルトンを倒しているのに、まだ果ては見えない。
 キヅカがワインをクリピクロウズに浴びせてみたものの、別に視覚を介して幻惑させているわけではないのかもしれないという予測がついただけだった。
 全員が疲弊し、本当に倒せるのだろうかと、少しずつ不安が弱気となって忍び寄ってくる。
 撤退を考えるべきだろうか。
 クリピクロウズの唇が小さく何かを紡いだ。
 ──私たちは、あなたの敵じゃない。
 声に出てはいないが、彼女はそう口にした。
 その瞬間、クリピクロウズの意志に反応して負のマテリアルが励起し、幻惑となって前衛に立つ一行の多くを飲み込んだ。
 抵抗する者もいたが、少なくない数が幻惑に囚われてしまったかのように思えた。
 しかし、その幻惑を取り払うかのように、歌が響く。
 いや、歌は最初から響いていた。
 より大きくなっただけで。
 歌っている。
 キヅカが、Uiscaが、まよいが。マテリアルを活性化させる祈りの歌を。
 三人が起点となって、クリピクロウズの幻惑をはねのける。
 再びクリピクロウズが何かを紡いだ。
 ──私たちを忘れて。ここから去って。
 声にはならない声。
 それは紛れもない、クリピクロウズ本人の想い。
 しかしそれが伝わることはない。
 彼女は歪虚なのだし、そもそもクリピクロウズ自身が、声に出していないのだから。
「厄介な状態異常攻撃は返しておきます!」
 負のマテリアルの励起によって予兆に気付いた奏音が、負のマテリアルの影響をはねのけ、呪いをクリピクロウズ自身に移し替えようとした。
 移し替え自体は成功したものの、クリピクロウズは返された呪いを意に介さない。
「本当のクリピクロウズか……なんだかんだ初めて見るかもね」
 できればクリピクロウズ本体に攻撃を仕掛けたいが、いささか距離が遠い。
 故に、ハヤテはスケルトンたちに意識を切り替える。
 生み出した魔法の矢がスケルトンたちに突き刺さる。
「雑魚散らしは任せて!」
 まよいが生み出した紫色の球体が、重力波となってスケルトンたちを圧し潰す。
「ごめんよ、引篭もりを放っとけないお節介なんでね」
 陽の魔法の矢が続けてスケルトンたちに降り注いだ。
 ハヤテ、まよい、陽の攻撃でスケルトンたちがあらかた一掃される。
「レイオスさん! 前に出るのでガードお願いしまちゅ!」
「分かった!」
 ともに駆け出したレイオスと朝騎が、クリピクロウズに接近する。
 ──私たちを、傷つけないで。
 再びクリピクロウズが声なき言葉を紡ぐ。
 負のマテリアルが幻惑の力を振りまいた。
 しかし、まだキヅカとUisca、まよいたち三人の歌が続いている。
 事前に自分で抵抗力を強化していたレイオスはもちろん、朝騎も幻惑を振り払う。
 朝騎は符を引き抜き、封印術を行使する。
 異なる手札の配置によって効果を増幅し、クリピクロウズの能力を封じ込めにかかった。
 当然、クリピクロウズも抵抗しようとする。
 せめぎ合いは互角の様相を呈していたが、少しずつクリピクロウズの方へ傾き始める。
 しかし朝騎は諦めず、封印術に力を込め続ける。
 クリピクロウズの身体が震える。朝騎の封印術が勢いを盛り返し、今度は逆にクリピクロウズへと浸透していく。
 ここに、封印は成った。
「今のうちに倒せぇ!」
 数々の援護を受けてなお状態異常を喰らった一部の味方に浄化魔法をかけて正気に戻したシガレットが、声よかれろとばかりに大声で叫ぶ。
 千載一遇の好機。
 ここで決めねば、おそらく次はない。
 彼はおそらく分かっているのだ。
 そして、全員が同じ予感を抱いていた。
 リューが大精霊の力により物理法則を書き換える。
 周囲の味方が負った傷を癒し、自らの力を分け与えていく。
 反撃の狼煙だ。
「アルトちゃん、いくよ!」
「うん! リューリちゃんと一緒に!」
「リューリ、アルト! 私も付き合うわよ!」
 いち早く飛び出したリューリ、アルト、アルスレーテの三人が、息の合った連携でクリピクロウズに襲い掛かる。
 ギガースアックスに持ち替えたリューリが両手でそれを振り被り、野生の力を引き出して連撃を叩き込んだ。
 アルトが大量の赤い花弁を舞い散らせるかのようにオーラの奔流を発して急加速し、クリピクロウズの身体に鮮やかな血の華を刻み込む。
 封印術を受けた影響から脱し切れていないクリピクロウズのマテリアルを乱したアルスレーテが、意識外から必殺の一撃を一度、二度と放つ。
 クリピクロウズが苦悶に悶えた。
 続いてリリア、ヴァイス、アーサーの三人がクリピクロウズに接敵した。
「まだまだ行くのよ!」
 リリアがマテリアルを変質させた毒をムーンチャクラムにまとわせ、投げつける。
「これが、俺の全力だ!」
 守りを捨てたヴァイスが攻撃のみに意識を集中し、オーラを激しく燃え上がらせると鋭く踏み込み蒼のオーラを放つ魔鎌を一閃する。
 同時に解放された蒼のオーラが爆炎となり追撃の刃を形作った。
「なるほど、分かってきたぜ!」
 手を尽くしてクリピクロウズの特性を調べたアーサーは、最後に威圧を放ち、次に続く攻撃に繋げた。
 抵抗されてしまったが、それはそれで収穫になる。
「どうして……人間は……あなたたちは……」
 致命的な一撃を次々に受けていくクリピクロウズの呟きは、もはや意味をなさない。
 アウレール、リュー、レイア、錬の四人がさらに挑みかかる。
 マテリアルで強化した聖祈剣と絶火刀をアウレールが振るい、無拍一調子の三閃連撃を加え、さらに魔法剣を解放し駄目押しの追撃を飛ばす。
「俺の力を見せてやるぜ!」
 リューの紋章剣が次々に発動する。
 振るう剣はマテリアルの尾を引き、星の煌きを思わせる連撃が鮮やかに舞う。
 散りばめられた星を喰らう竜が、光の中を泳いでクリピクロウズを飲み込んでいく。
「私も負けていられんな!」
 その竜を追いかけるかのように踏み込み飛び込んだレイアが、マテリアルで輝く魔導剣をクリピクロウズに一閃する。
 リューとレイアの攻撃が終わった時、二人が攻撃した軌跡は奇しくも十字を描いていた。
 次々に痛打を受けてよろめくクリピクロウズがふと別の方向を振り向く。
 残像を伴って錬が迫っていた。
「今更気付こうが、遅い!」
 全速力で走る錬がすれ違いざまに太刀に加え小太刀を居合抜きし、一瞬間を置いて再び駆け抜け斬り裂いていく。
 クリピクロウズに対し、ミリア、炎、神楽、シオンがさらに攻撃した。
「ホムラ、ボクたちも仕掛けるよ!」
 大身槍を構えたミリアが突撃する。
「ミリアさんに続こう!」
 炎もまたミリアと一緒に疾走を始めた。
 二人は並び、同時に武器を振るう。
 マテリアルの輝きを放つ大身槍をミリアが神速で突き出し、クリピクロウズを強引に貫く。
 聖罰刃を大上段に振り上げた炎が花びらによる桜吹雪の幻影とともに、肉体を加速させ全力かつ神速の一撃を繰り出す。
 直後に、ミリアが槍に込めた根性を気合でぶっ飛ばした。
「私の正面攻撃ごときを軽くいなせぬようでは話にならんぞ! 貴様の本気はその程度か!?」
 妖刀に込めたマテリアルを爆発的に放出させながら、シオンが渾身の力で刺突を打ち込む。
 佇んだまま、クリピクロウズは悲痛な表情を浮かべる。
「……ただ、そっとしておいて欲しかっただけなのに」
 神楽が真っ直ぐ駆け寄っていく。
「悪いがそっちに戦う気がなくても俺たちはあるんすよ!」
 聖盾剣による神楽の斬撃が、クリピクロウズを斬り裂いた。

●彼女の願い
 ハンターたちの猛攻を受け続けたクリピクロウズがついに力尽きる。
 自らの身体を構成している負のマテリアルが解けていくのを、クリピクロウズは感じていた。
 集合体である剣魔クリピクロウズという存在が消滅するわけではない。
 だが、今この場にいる彼女は間違いなく消え去るのだ。
 後には何も残さず。
 いや。初めから、何も残すものどなかったのかもしれない。彼女にあったのは捧げられた祈りと、過去の面影だけだったのだから。
 意識が茫洋とする。
 最後に、彼女は己を討ち果たしたハンターたちに顔を向けた。
「……私はあなた方を恨まない。ですからお願いです。もう、来ないでください」
 過去の姿が色濃く残るこの地下遺跡で、誰にも干渉されず、憎まれず、憎まず、ただ穏やかに過ごしていたい。
 願っていたのは、結局それだけのこと。
 ぼやけていく意識が、闇に帰る。
 そのまま、剣魔クリピクロウズを構成する本体の一つだった彼女は消滅した。

依頼結果

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MVP一覧

  • 丘精霊の配偶者
    北谷王子 朝騎ka5818

重体一覧

参加者一覧

  • THE "MAGE"
    フワ ハヤテ(ka0004
    エルフ|26才|男性|魔術師
  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師

  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 蒼き世界の守護者
    アーサー・ホーガン(ka0471
    人間(蒼)|27才|男性|闘狩人
  • 元気な墓守猫
    リューリ・ハルマ(ka0502
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽(ka1442
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 猫の守り神
    カナタ・ハテナ(ka2130
    人間(蒼)|12才|女性|聖導士
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 戦いを選ぶ閃緑
    アイビス・グラス(ka2477
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • それでも尚、世界を紡ぐ者
    リリア・ノヴィドール(ka3056
    エルフ|18才|女性|疾影士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 良き羅針盤
    神城・錬(ka3822
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 飢力
    不動 シオン(ka5395
    人間(蒼)|27才|女性|闘狩人
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師
  • 丘精霊の配偶者
    北谷王子 朝騎(ka5818
    人間(蒼)|16才|女性|符術師
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/10/29 12:13:31
アイコン 作戦会議場
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/10/30 22:06:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/28 22:54:52