新米受付嬢の災難

マスター:びなっす

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2018/11/01 09:00
完成日
2018/11/10 10:15

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 研修が一通り終わり、新しくグラズヘイム王国内に配属されたハンターズソサエティの受付嬢リュゼ・ミシュレン(kz0268)は、その記念に前々から来たいと思っていた王都イルダーナを散策していた。

 様々な景色を見るのが好きなリュゼにとって、この王都の格式ある景色はたまらない物だった。
 レンガ造りの美しい街並みが広がり、大規模な商店街が街を彩る。
 時たま脇を通っていく馬車の豪奢な装飾、芸術的な彫刻が施されている大きな時計塔、精巧な造りで神聖な雰囲気を醸し出す噴水などなどに、リュゼは目をキラキラと輝かせていた。
 地方の田舎出身のリュゼにとっては、目に映る全ての光景が衝撃的だった。
「おぉ~凄い! 綺麗なものがたくさん!」
 一人テンションを上げながら道を歩いていくリュゼだったが……
「わぶっ!」
 建物に気を取られていたリュゼは、何か柔らかく大きなものにぶつかり、レンガ造りの道に尻餅をついてしまう。
「いたたたた……」
「ワンッ!」
「え?」
 目の前に立ちはだかっていたのは、へたりと座り込んでいる状態のリュゼと同じぐらいの背がある大型の犬だった。
 そしてその大型の犬の両隣には、背は高いがスラッとしている細身の犬。小型でせわしなく動き回る子犬がいる。 
 首輪が付いているのを見て、飼い犬かな? と予想するリュゼ。そこであることに気づく。
 何らや、犬達が付けている首輪にはリードが繋がっているのだが……その先にいるはずの飼い主は見当たらない。
 リードは地面に横たわり、持ち手の部分も引きずられている状態だった。
「……もしかして、飼い主から逃げてきたの?」
 そんな疑問が浮かんだ時だった。
 ふと、大型の犬が、道に転がっていた物を咥え上げた。
 それを見て、リュゼは目を丸くする。
「あ、それは……」
 見覚えのある柄の縦長の物体。それはリュゼの財布だった。
 リュゼはハッとしてレンガ造りの道を見る。
 持っていた鞄の中身が、通りに散乱していた。
 その内の一つである財布が、犬達の遊び道具に選ばれてしまったのだ。
 伸ばしたリュゼの手は財布に届かず、大型の犬はそのまま走り出してしまう。
「ちょっ! 止まって! それ私の財布……って、おい~!!」
 リュゼの叫び声など意に介さず、三匹の犬達は大通りを駆けた。

 散乱した物をかき集め、無造作に鞄に放り込み、すぐに犬達を追い掛けるリュゼ。 
 幸い、足には自信があったので、むざむざ逃がすことはないはずだ。
 そんなリュゼの思いの通り、どうにか犬達に追いつくことが出来た。
 どうやら、最初にぶつかった大型の犬は鈍足のようで、他の二匹が前で速さを合わせているように見える。
 財布を咥えているのはその大型の犬なので、これなら簡単に取り戻せそうだった。
 そう思った矢先。
「ワンッ!」
 声と共に上に投げ出された財布。
 その財布を、前で走っていた細身の犬が速度を落としキャッチした。
「へ? うそ!? そんな事ってある!?」
 更にその細身の犬が放り投げた財布を、今度は小型の犬が飛びながらキャッチした。
「なに、あの凄いパスワーク!?」
 次々と放り投げられる財布が、それぞれの犬にキャッチされ、これではどの犬を追い掛ければいいのか分からない。
 
 ひとまずリュゼは、三匹の中で一番足が遅いであろう大型の犬に狙いを絞った。
 一匹を止められれば、他の二匹も止まってくれるかもしれない。
 だが狙われていることに勘付いたのか、大型犬は今までよりも速度を上げる。
 しきりにリュゼの方をチラチラ見ながら走る大型犬。
 リュゼの顔が鬼気迫っていたのか、大型犬は脇目も振らず更に速度を上げた。
 速度を上げたと言っても、元々鈍足だったのが少しましになった程度だ。
 前を行く二匹には到底及ばない。
 リュゼを引き離すにも全く足りていなかった。
 リュゼは、徐々に差を詰め大型犬を捕まえようとする。
 その時、目の前に、運悪く道を渡ろうとしている少年がいた。 
「あ、危ないっ!!」
 リュゼの声掛けも空しく、大型犬は少年とぶつかり体勢を崩す。
 しかし、大柄で安定感があったのか、倒れることも無くそのまま走っていく。
 一方、ぶつかった少年の方は、少し飛ばされ道に倒れてしまっていた。
「だ、大丈夫、君!?」
 焦りながら少年に駆け寄るリュゼ。
 よく見ると、少年の足からは少し血が出ていた。
 リュゼは持ってきていた救急用具で応急処置を施す。
 ふと気付けば、財布を加えていった犬達は視界から姿を消してしまっていた。
「ああぁぁぁっ~うそぉぉぉ~!」
 頭を抱えて、叫び声を上げてしまうリュゼ。
「どうしよう……あれが無いと、生活費が……身分証が……」
 地面に膝と手を付き、深く肩を落とすリュゼ。
 あまりのその様子に、怪我をした少年の方がリュゼを心配する。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ごめん……大丈夫じゃないかも」
 犬達を見失い、途方に暮れるリュゼ。
 そんなリュゼの様子が気になったのか、たまたま通り掛かった数人のハンター達が、彼女に声を掛けた。

リプレイ本文

 リュゼは突然声を掛けられ振り返る。
 そこには、リュゼを心配し集まってきたハンター達の姿があった。
「どうしたんだい? そんなところに座り込んで?」
「あの犬と何かあったんですか?」
「トラブルか? 良ければ話を聞かせてほしい」
「え……と、実は……」
 突然の手を差し伸べられたことで、リュゼは縋るように今までの経緯を説明した。
 
「……というわけなんです」
 話を聞いた鳳凰院瑠美(ka4534)は、犬の行動に驚いていた。
「わわっ、大変みたい! あのワンコ達を捕まえてお財布取り戻せばいいんだよね?」
「リュゼさんは新人さんなんですか。私も新人なのでリュゼさんには近いものを感じます! 犬くらい私がさくっと捕まえてみせますとも! おまかせください!」
 近しい立場の百鬼 一夏(ka7308)の明るい振る舞いに、リュゼの不安な気持ちも少し和らいだ。
「うぅ……皆さん……ありがとうございます」
「相手は3匹か……どの犬が財布を持っているんだろうね」
 ミトラ(ka7321)は、追うべき犬がどれかを考える。
「お財布を奪った犬がどの犬であっても、全てを確保してしまえば問題ないのではないでしょうか」
 フィロ(ka6966)の意見を聞き、作戦を提案するレイア・アローネ(ka4082)。
「そうだな。こちらは5人、それぞれの犬を捕まえるように動こう」
「私はさほど素早くないので、大型犬を追いかけさせていただきます」
 フィロはそう申し出る。それに続くように、皆が追う犬を決めていく。
 話し合いの結果、小型犬はレイアと瑠美が。
 細身の犬はミトラと一夏が担当する事になった。
 リュゼは、怪我をした子供を家に送った後、すぐ分かるように広場で待機する事になった。
「皆さん、すみませんがどうかよろしくお願いします」
 リュゼは申し訳なさそうに深く頭を下げる。
 それを見て、早く安心させてやろうと各々に思った。

 方針が決まったメンバーは、さっそく犬を見つけるため走り出す。
 途中で通行人に犬達の情報を聞きながら、向かったであろう場所へと目指した。 
 犬が去ってから時間が経ってしまったため、見つけるのは困難に思われたが……そんな心配はよそに、意外と簡単に見付かった。
 犬達は住宅街の通りを一緒に走っていて、通行人を上手く避けながら進んでいる。

 追い掛けてくるハンター達の気配に気付いたのか、犬達は露骨に速度を上げた。
 ……と言っても、速度を上げたのは細身の犬と小柄な犬だけで、大柄の犬は気持ちスピードが上がったかもしれないが、やはり遅いままだ。
 スピードを上げた二匹の犬は、それぞれ二手に分かれ、実質犬達は三方向に分散してしまった。
 ここからでは、どの犬が財布を持っているのかは判別できない。
 先程決めたとおりに、皆はそれぞれの担当の犬を追った。

 二匹の犬は、住宅街の路地に逃げ込む。
 素早く走る小型犬を、レイアと瑠美は離されることなく追い掛けていた。
「あの子結構足早いね、ちょっとびっくりだよ☆」
「う~む。どうにか回り込んで捕まえたいところだが……」
 今走っている場所は住宅街の裏側の路地で、細い通路が入り組み迷路の様になっていた。
 これでは下手をすれば、迷ってしまうだろう。
「とにかく、今は見失わないようにしないとね」
 一方、細身の犬を追うミトラと一夏。
 狭い道幅が続く中、一夏は空を飛び上空から細身の犬の姿を捉える。
 上からなら、多少見失ったところですぐに見つけられるだろう。
 そして細身の犬のすぐ後ろには、ミトラがぴったりとくっつき、捕獲のチャンスを狙っていた。
「早く捕まえて、あの子を安心させないとな」
 すると細身の犬は、更に狭くなった道に入り込んだ。
 子供がなんとか入れそうな細い道だったが……細身の犬はその道を難なく走っていく。
 さすがに飛行しながら細過ぎる道を進むのは危険と判断した一夏は、軌道を上昇させ、出てくるであろう場所に先回りしようとする。
 しかし、路地の中は幾重にも道が分かれていて、どこから出てくるのかが分からない。
 ミトラの方はその小柄な体型を生かし、細い路地を走り犬を追い掛ける。
 少しずつ距離を縮めていき、やっと手が届くかというところまで差を詰めたミトラだが、路地を抜けたのか視界が突然広がる。
 それと同時に、細身の犬は直角に曲がりミトラの手から逃れてしまった。
 どうにか喰らいつこうと、勢い良く細い路地から出たミトラの眼前には、レイアの姿があった。
「え!? レイアさん」
「ミトラ!?」
 咄嗟のことで、スピードを緩めることも出来なかった二人は、盛大にぶつかってしまう。
「大丈夫!? 二人とも!?」
 心配し、駆け寄ってくる瑠美。
 地面に倒れぐらつく二人の視線の先には、細身の犬と小型の犬が並び、財布を投げ合いながら走る姿が見えた。
「……やられたな」
「まさか狙ってやったのか? ……なんだよ、あの連携は?」
「頭いい子達だね」

 それから犬達は路地を抜け、示し合わせたかのように3匹共合流する。
 現在、犬達は商店街へとやって来ていた。
 先程の住宅街にもちらほらと道行く人影があったが、ここは更に人通りが多かった。
 いくつもの店々が並び、買い物を楽しむ人達で溢れかえっている。
 そんな混雑した中を、犬達は誰にもぶつからずにすり抜けていく。
 ……いや、大柄の犬だけは、僅かに身体の一部を掠めているようだった。 
「思ったよりも、難しい状況ですね。この辺りではあまりあの犬を刺激をしない方がいいかもしれません」
 フィロは状況を見てそう呟く。
 住宅街でもまばらに人がいたため、行動を見送ったが……この場所は更に人が密集している。
 あの巨体を下手に追い詰めるのは危険だ。
 フィロはひとまずは大型犬に気付かれぬよう、所持していた魔箒の『星に願いを』を使用し、気付かれないように空を飛び追跡を続けた。

 一方、小型犬の方は器用に人混みを駆けているが……走りにくさからかスピードが若干落ちているようだ。
 追っていたレイアは、ここが勝負所だと判断し、どうにか犬に追いつこうと辺りを見渡しルートを考えた。
 一旦、小型の犬から離れ、通りの端にある店々の建物に走る。
 『瞬脚』を使い加速した脚で地面を強く蹴り、店の壁へと足を付け『壁歩き』で一直線に進んだ。
 障害が何もない場所を疾走することで、人混みを全てスルーしていく。
 横目で小型犬を追い、あるポイントへ差し掛かったと同時に、壁を強く蹴り、犬の少し先へと飛翔した。
 そのまま小型犬の目の前に見事着地するレイア。突然の事に、さすがに小型犬は動揺したようだ。
 だが、レイアが手を伸ばすよりも先に、犬は真横へ方向転換し離れていく。
 出来る事ならここで捕まえたかったが、それでもレイアはこれを『成功』と取った。
 進路を変更した小型犬は、逃げようと一目散に前を駆ける。
 その時、騒動に気付き目を向けていた人達の間に、一陣の風が吹いた。
 それは立っていた人達の髪をふわりとかき上げ、服をはためかせる。
 その風の正体は瑠美だった。
 『瞬脚』で一気に加速し、『マルチステップ』で密集している人々の間を華麗に駆け抜ける……一陣の風は、そうやって起こされたものだった。
 瑠美は、犬が向かった先へと回りこむ。
 選択肢のない方向へ追いやられた小型の犬は、突然現れた瑠美に対応できなかった。
 瑠美は即座に小犬を捕まえ、逃げられないように首に繋がれているリードをしっかりと掴んだ。
「捕まえた~☆」
「よくやった、瑠美」
「いえいえ、レイアさんの誘導のおかげです」
 ふと、瑠美は足元に落ちている物体に気付いた。
「あれ……これは?」
 瑠美が拾い上げたそれは、犬のよだれで汚れている財布だった。
 リュゼの言っていた財布の特徴と一致していることから、リュゼのもので間違いないだろう。
 ここで財布を取り戻すという目的は無事に達成することが出来た。
「やりましたね! 目的達成です」
「ああ、そうだな。しかし、この犬……首輪つけてるし……飼い犬か? というかここまでの動き、野生とも思えないし」
「う~ん……飼い主さんがいるとしたら、どこに行ったんだろう……?」
「悪い事に使わせる為しつけてるのなら捕まえねばな……」

 人混みの中を過ぎ去り、窮屈そうに走っていた大型犬は、ゆったりと誰もいない道を走っていた。
 すっかり安心しきった大型犬は、疲れたのか少し速度を落とし進む。
 その時、空からチャンスを窺っていたフィロは、またとないこの状況を前に、即座に行動を開始した。
 急降下で大型犬の元へ降りたった瞬間、『縮地瞬動』で、犬との間を瞬く間に0にし、『怪力無双』で筋力を爆発的に高め、『縮地瞬動・虚空』にて空高くまで飛び上がり、再び箒を使い空を飛ぶ。
 まさに一瞬の出来事だった。例え近くに大型犬をジッと見つめていた者がいたとしても、何が起こったのかを理解することは出来なかっただろう。
 その紛うこと無き仕事人の動きに、捕まえられた犬でさえも、なぜ自分が空を飛んでいるのかを分からずにいた。
 フィロは大型犬を連れ、少し離れた高台の様な場所に降り立つ。
 そこから見下ろす景色は、今いる区画よりも下を見下ろせ、上の区画へと続く壁が目の前に広がっている。
 フィロは広い場所に降り立ち、すぐさま大型犬を押さえ付けた。
 当然、大型の犬は大人しくするはずも無く、暴れ回るが……それに対しフィロは、『怪力無双』、『金剛不壊』を使い、上から体重かけ首を絞める形で押さえこむ。
 犬は強者と認めれば降参する。その本能を利用し、犬が降参するまで押さえこみを続けようとするが、強情なようで中々大人しくならない。
 そこで最終手段と言わんばかりに、フィロは犬の口の中に手を突っ込んで舌を掴み頭突きを喰らわせる。
 フィロの圧倒的な力に、犬もやっと敗北を認め……いや、恐怖におののき……生まれたての子鹿のようにピクピクと小刻みに身体を震わせ地面で呻いている。
 力無く倒れている大型犬に向けて、フィロはヒーリングポーションを与え怪我を治す。
 手荒な真似はしたが、傷を癒やしたのだから、これで何も問題は無い。
 そう、問題は無い……はずだ。少なくとも、フィロはそう判断していた。
「さて、この犬はどうしましょう。飼い主がいないのなら、私が連れて帰って飼いましょうか」
 勢いよく後ずさり、懇願するようにフィロを見詰める犬。それは、かたや命乞いをする者のそれだった。
「あの……その犬は……」
「?」
 突然の声に振り返ったフィロの目の前には、一人の少女の姿があった。


「本当ですか!? 良かった~」
 レイア、瑠美ペアから連絡を受けた一夏は、朗報を聞き自分の事のように喜ぶ。
「ミトラさん、良い知らせです! 無事にリュゼさんの財布を取り戻せたそうですよ!」
「あんの犬め! 絶対捕まえてやるからな!」
「あの……ミトラさ~ん……」
 最初の頃は冷静だったミトラは、度重なる細身の犬の取り逃がしにより、今ではすっかりとムキになっていた。
 何が何でもあの犬は捕まえなくては!!
 ミトラは当初の目的を忘れ、細身の犬を捕まえることに全意識を向けた。
 そうこうしているうちに、細身の犬は大きな公園の中へと入っていく。そこで、唐突に細身の犬の動きが止まった。
「よし、いまだ!」
 ミトラはここぞとばかりに飛び込むが、それを華麗に躱す細身の犬。どうやら、止まったのはわざとのようで、細身の犬は完全にミトラをからかっているようだった。
 ミトラの醜態を見て、ニヤリと口元を歪める細身の犬。
 それに対し、ミトラの怒りのボルステージがうなぎ登りに上がっていく。
 そんな時、突如細身の犬の目の前に壁が現れた。それは一夏の『アースウォール』によるものだ。
 細身の犬は驚き、進路を変更せざるを得ない状況に追い込まれる。
 そこに左右のうち右側から一夏の姿が現れた。
 仕方なく残る左の方向へと逃げるが……そこは行き止まりで、細身の犬は動くことが出来ない。
「ふっふっふ。もう逃げ道はありませんよ! 大人しく掴まりなさい!」 
 そして……
 ぱふっ……と言う、気の抜けた音と共に、細身の犬の身体は、一夏に覆われてしまった。
「はい、捕まえました。人のもので遊んじゃいけません! めっ!」
 一夏は軽く犬を叱り、逃げないようにしっかりと捕まえる。
 そこに遅れて、鬼のような形相のミトラが追いついてきた。
「一夏! そいつを僕によこせ!」 
「だ……ダメですよ。可哀そうです。ほらこんなに怖がってるじゃないですか」
「くぅ~ん」
 細身の犬はそう弱々しく泣き、一夏にすり付いてくる。
「む……」
 その様子を見て、ふと我に返るミトラ。
「……僕も大人げなかったな。ほら、もう大丈夫だ」
 ゆっくりと手を差し出すミトラ。そこに……ガリっと、細身の犬が爪を立てた。
「あ……」
「……こ……この、犬っころがあぁぁぁっ!!」
 公園には、ミトラの咆哮が響いた。

●その後
「皆さん、ありがとうございます! 本当に助かりました!」
 合流した皆に深くお辞儀をし、感謝を伝えるリュゼ。
「さて、この犬達はどうしようか?」
「このままにできないですし、飼い主を探さなきゃですね!」
「それなのですが……飼い主を連れてきました」
 フィロのその言葉に、皆は驚きの声を上げた。
「え? 飼い主を見つけたの!?」
「はい、高台で犬を探そうとしてたところを連れてきました」
 フィロが連れてきたのは、小さな女の子だった。
 早速レイアが、少女に詰め寄った。
「まさか、犬達に悪いことをさせていたわけじゃないだろうな?」
「レイアさん、そんなに怒らない」
「む……怒っているつもりはなかったんだが」
 少しショックだったのか、うつむくレイア。
 それから少女は経緯を説明した。
 本当はいつもは兄が散歩に連れて行くそうなのだが、今日はその兄が出かけてしまっていた。
 犬にせがまれてしまったため、少女が三匹を散歩に連れ出したのだが……
 しかし、少女の力では元気よく暴れ出す犬を抑えきれず、三匹のリードを離してしまったのだという。
「迷惑を掛けてしまって、本当にごめんなさい」
 涙目でリュゼに謝る少女。
「財布もちゃんと戻ってきたし、私は気にしてないよ。ワンちゃん達だって遊びたかっただけなんだろうし」
 そこにフィロが厳しい口調で言った。
「今回は大きな被害が出ませんでしたが、犬が逃走に夢中になって幼児にぶつかったら重体以上の重篤な事故が発生する可能性もあります」
「あ、ごめんなさい、ごめんなさい! 私……」
「今度からは気を付けないとね〜」
「色々と大変だったけど……まぁでも、何事もなくて良かったよ」
「私は怒っているわけじゃないからな」

 なにはともあれ、今回の騒動はハンター達の頑張りにより特に二次被害もなく迅速に財布を取り戻す事ができた。

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参加者一覧

  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • おしゃべり大好き☆
    鳳凰院瑠美(ka4534
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士
  • ヒーローを目指す炎娘
    百鬼 一夏(ka7308
    鬼|17才|女性|格闘士
  • 激闘を乗り越えしルーキー
    ミトラ(ka7321
    オートマトン|14才|男性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 仕方ね~助けてやるよ。
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/11/01 06:55:18
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/31 16:07:18