【夢視】引き裂かれた姉妹

マスター:びなっす

シナリオ形態
シリーズ(新規)
難易度
不明
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/11/19 07:30
完成日
2018/11/27 18:13

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 山々に囲まれた道を、妹の手を取り必死に駆け抜ける姉。
 姉妹は強大な何かから逃げていた。その正体は、よく分からない。
 だが姿を説明するのは簡単だった。蜘蛛だ。4mもの異常な巨体を持つ蜘蛛が、突然目の前にに現れたのだ。
 とある村に住んでいた姉妹は、仕事で忙しい両親のためにサプライズで料理を作ろう……そう計画して、街へ買い物に行くところだった。
 この近辺は治安が良く、雑魔の発生などほとんど見られない土地……のはずだ。
 そんな安全な場所で、突然巨大な蜘蛛の化け物と遭遇してしまった。

 とにかく、あの蜘蛛から逃げないと……姉は必死に妹の手を引く。
 幸い、蜘蛛は脚が早いわけではないようで、どうにか逃げることが出来ていた。
 これなら、逃げ切れる……そう思った時だった。
 突然『なにか』に引っ掛かり、姉は地面に倒れてしまう。
「!? お姉ちゃん!」
 姉はすぐに立ち上がろうとするが、片足が動かない。それどころか、今まで受けたことのない激痛が走る。
 見てみると、姉の脚には細い糸が巻き付いていた。
 それはピアノ線のような硬さをもっていて、無理に動かすと、スポンジを切るように何の抵抗もなく糸が脚に食い込む。
 最初に引っ掛かった時の勢いで、既に脚の半分も糸が食い込み、結構な量の血が流れてしまっている。
 これでは、無理矢理走ろうとすれば脚が切断してしまうだろう。
 その状況を前に、姉は焦りと恐怖に染まり、未だ無事な妹に言う。
「ノア、私は大丈夫だから、ここから逃げてっ!」
「でも! お姉ちゃんを置いていけないよっ!」
 涙を浮かべ、そう力強く訴える妹。
 そうこうしてる間にも、後ろから巨大な蜘蛛がやってくる。
「ノアお願い! 誰か助けを呼んできて!」
「でも……お姉ちゃん……」
「早く……えっ!?」
 妹を見上げ急かそうとする姉は、妹よりも上、崖のような場所の上にいる巨大な蜘蛛の姿を捉えた。
 姉は咄嗟に、妹を強く押す。
 その瞬間、姉を押しつぶすように、崖の上の蜘蛛が飛び降り覆い被さってきた。
 姉の脚に、更に頭を真っ白にする程の激痛が生まれた……もしかしたら、無茶な動きをしたせいで、糸で脚が切断してしまったかもしれない。
 しかし、蜘蛛に捕獲されてしまった今の現状からすれば、脚のことなどさほど気にならなかった。
 背中を覆う柔らかくもぞもぞした感触も、最初だけで数秒経つ頃には何も感じなくなっていた。
「お……姉ちゃん? あ…あああぁああっ!!」
「ノア……お願い……逃げ……て」
 最後の力を振り絞り、妹を逃がそうとする姉。
 妹は少しの間動けずにいたが、覚悟を決めたのかくるりと振り返り走り出す。
 離れていく妹の姿を見ながら、姉はただ妹の無事を願った。
 その時、光の加減なのか、キラキラと光る何かが見えた。
 それは走り去っていく妹の前に広がっていて……それの正体に遅れて気付いた姉は、目を見開き、もう上手く出ない声を絞り上げた。
「ノア……だめっ……」
 だが、それは妹の耳には届かず、妹は前に張り巡らされていた糸を身体中に受け、大量の血を流しながら倒れた。
 それを待っていたかのように、どこからともなく別の場所から蜘蛛がやってきた。
 妹の側に張り巡らされていた鋼の糸を脚で引きちぎり、巨体に当たってギリギリと軋んでいた糸もパァンと弾けた音を立て、引きちぎられていた。
 そのまま巨大蜘蛛はピクリとも動かない妹を覆う。
 絶望に瞳の輝きを失った姉の視界には、妹の姿を隠す蜘蛛と、自分を覆う蜘蛛から覗く赤い目、そしてそこら中にキラキラと輝く光を映していた……

●ハンターオフィスにて
「う~~~む」
 ハンター職員は、受付でうなり声を上げながら手紙を見ていた。
 その様子が気になったのか、別の職員が声を掛ける。
「そんなに難しい顔をして、どうした?」
「あ、いえ、これ依頼の手紙なんですが……なんだか不思議で」
 そう言うと、手紙を見ていた職員は、それを声を掛けてきた職員に見せる。
「普通は雑魔が発見されてから、それをどうにかしてくれって依頼が来ますよね?」
「そうだな」
「でも、この依頼は、必ず雑魔が現れるはずだから、助けてほしいって内容なんですよ」
「雑魔が出現する可能性があれば、前もって依頼することはあるが……」
「でも、この地域は今まで雑魔が現れた事がないんですよ。しかも、報酬がまた不思議で……かなりの高額の報酬なんです」
「その依頼は、どういった内容なんだ?」
「え……と、地方の端の村に住んでる姉妹が、雑魔に突然襲われるそうなんです。一応、その辺りの支部に連絡してみたんですけど……そういった雑魔の目撃情報は一切無いそうで……しかも、依頼人の住んでる場所と依頼の場所は離れていますし、依頼人は姉妹の事をあまり知らないようだったので、接点が全く無いんです」
「確かに不思議な依頼だ……」
「一応、上に相談した方がいいですかね?」
「……あの、私もその手紙を見せてもらってもいいですか?」
 たまたま通り掛かり話を聞いたリュゼ・ミシュレン(kz0268)は、興味本位で手紙を見せてもらった。
 二人の職員があれこれと話をしている間に、その手紙に目を通したリュゼは先輩職員に申し出る。
「あの! この依頼、私が担当していいですか!?」
 
 
「……と、言うわけで、不思議な依頼です。依頼の場所には雑魔の目撃情報などはありません。ですが、手紙には絶対に雑魔が現れると断言しています」
 リュゼは受付でハンター達にそう言いながら、手紙に目を通し情報を伝えていく。
「現れる雑魔は巨大な蜘蛛型の雑魔で、突然周囲に複数体現れ、少なくとも三体はいるそうです。その雑魔は鋼の糸を使うかもしれないらしく、本来蜘蛛が使う柔らかく粘着性のあるものとは真逆な性質のようです。ピアノ線? のようなものですかね? 硬度が非常に高いため絡まると抜け出す事が困難のようです。それと蜘蛛自身の身体も硬度があるそうです。手紙には、ある村の姉妹が雑魔の被害に遭うと書かれていました。妹の名前は『ノア』ちゃん、姉の名前は……分からないそうです。雑魔が出現する日付、時間帯などは分かっていま……って、今日の夕方じゃないですか!?」
 リュゼは手紙を見返し驚く。コホンと咳払いをし誤魔化しつつ、さっきとは一転し真剣な表情で言う。
「この手紙には、『お願い』『信じて』という言葉が多くありました。これを書いた依頼人は、とても真剣なんだと思います。もしかしたら今まで相手にされなかったのかもしれません。私はこれがただの悪戯だなんて思えません。お願いします。この依頼を受けていただけませんか?」
 リュゼの必死な訴えに心を動かされたのか、得たいの知れない依頼に名乗りを上げるハンター達が現れた。

リプレイ本文

「何だか最近蜘蛛型雑魔に会うことが多いような……蜘蛛って雑魔になりやすいんでしょうか」
 バイクで遭遇予定現場まで来ていた穂積 智里(ka6819)は、最近の雑魔の傾向から、うんざりとそう呟く。
 バイクから降りて周囲を確認。まだ日は暮れていないようだが、暗くなった時のために灯りは常備している。
 それからすぐに、星野 ハナ(ka5852)も現場にやってきた。ひとまずは、辺りを重点的に捜索する。
「先に蜘蛛を見つけられる方がこっちとしてはありがたいんですけどぉ、予知の系統なら難しいかもしれませんねぇ」
 一方、夢路 まよい(ka1328)は杖に『マジックフライト』をかけ、上空を飛行し辺りを見回していた。
 姉妹や雑魔を見逃さないように目を凝らす。
 すると、早速姉妹らしき2人の人影を発見した。。
「姉妹を見つけたよ~こっちに向かってるみたい」
 まよいは、側にいた智里とハナに姉妹の事を伝える。
 姉妹は手紙に書いてあったとおり、一本道の方へ向かってきているようだった。

 智里はやってきた姉妹を呼び止め、キャンディを渡しながら話をする
 背の低い妹と思わしき少女ノアは、智里から渡されたキャンディを喜んで受け取っている。
 しかし、姉のシエーナは怪訝そうに見ていた。
「私達はハンターです。お二人に聞きたことがあるので、ちょっとお話を聞かせて貰ってもいいですか? 町に帰るには少し遅い時間な気がしますけど、貴方達のおうちはどちらでしょう?」
「え……と、私達はすぐそこの村から来ました。今から町に行って買い忘れた物を買ってこなくちゃいけないんです」
 シエーナがそういう。そこにハナも駆け付け、二人に声を掛けた。
「こんにちはぁ、お嬢ちゃん達ぃ。私は符術師の星野ハナって言いますぅ。2人ともぉ、おっきな蜘蛛を見かけたりしませんでしたかぁ?」
「大きな蜘蛛……ですか?」
「そんなの見なかったよね、お姉ちゃん?」
「実はおっきな蜘蛛の歪虚がこっちに向かったって言う通報がオフィスに来たんですぅ。それで私達が調査に来ましてぇ。もう夕方だし歪虚に行き会うと危ないからおうちに送りますよぅ」
「歪虚だって……どうしよう、お姉ちゃん」
「……本当に歪虚がここに現れたんですか?」
 シエーナはハナの言葉を疑っているようで、素直に従わず聞き返してくる。
「だって……今までここに虚歪が現れた事はありませんし、それに私はさっき町の方に行って帰ってきたばかりなんです。その時は何もありませんでしたよ?」
 彼女は、さっき買い忘れた物と言っていた。本当に一度町に行ってきているのだろう。
「今日はどうしても、お母さんとお父さんにお料理を作ってあげたいの。二人とも仕事で忙しいみたいだから……」
 妹のノアも自分達の思いを必死に訴えた。それから智里達は説得を続けるが、二人の思いは変わらないようだった。
 そこに高度を下げながら姉妹に近付いたまよいは提案する。
「なら私達が護衛について行くよ。それなら雑魔に襲われても守ってあげられるから」
 智里とハナも、二人が帰らないのなら、それしか無いと渋々判断する。
「そうですね。本当なら引き返すのが一番だとは思いますが……」
「仕方ないですねぇ。私達から離れないでくださいねぇ」

 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、襲撃されると言われていた一本道の先を調べていた。
 雑魔が待ち伏せをしているのなら、見つけて先に始末できるかもしれないと思ったからだ。
 隠密スキルで自分だったらどこに隠れるか、土の色が変わっているような場所はないかなど辺りを注意しながら慎重に探す。
 話に出ていた鋼の糸に関しても留意していた。常に法術刀で進む方向に糸がないか確認しながら行動する。
 鞍馬 真(ka5819)もアルトと同じく、いるかもしれない雑魔を捜していた。
 道の途中に、鋼の糸のトラップが仕掛けられていないかも注意深く見て歩く。
「ん? これは……例の鋼の糸かな?」
 木と木の間に張っている糸のような細い線。
 触ってみると、思いのほか鋭利だったのか、真の指先が少し切れてしまう。
「なるほど、これは気を付けないと危険だね」
 真の様子を見ていたアルトは、試しに法術刀で糸を斬ってみる。
 すると、多少硬いがどうにか切断する事が出来た。
「どうやら、斬ることは出来るみたいだな。注意さえしていれば大事にはならないだろう」

 それから更に歩き、もうすぐ山に囲まれた道も終わりを迎えようといったところに、もぞもぞと蠢く大きな影を発見した。
 そこには大きな蜘蛛型の雑魔が何かをしているようだった。
 沈み掛けている日の光が当たり、キラキラと光る線を見て、それが『鋼の糸』なのだろうと予測する。
 雑魔は今まさに、獲物を狩るための罠を張っている所だったのだろう。
「……個人的には蜘蛛は襲撃時刻まで見つからないかなと思っていたんだけどね」
「先に見つけられたのなら好都合だ。このまま始末してしまおうか」
 真とアルトはそれぞれ蜘蛛型に攻撃し、鉄のような硬さの蜘蛛型を持ち前の高火力でねじ伏せた。
 雑魔自体は大したことは無いと判断した二人だが、彼らはふと崖の上の方に潜む雑魔に気が付いた。
 蜘蛛型は異常な跳躍力で飛び上がり、二人に襲い掛かる。
 事前に動きを察知した二人は、蜘蛛型の押し潰しを躱し挟むように対峙した。
 だがその時、アルトの後ろにどこからともなく蜘蛛型が現れ、逆に挟まれる形になってしまう。
 更に状況を悪化させるように、崖の上にまた別の蜘蛛型が現れ二人の間へと飛び降りてきた。
「……思ったよりも不味い状況かな」
「たしか、現れる雑魔は3体以上と言っていたが……」
 既に1体は倒し、この場に蜘蛛型の雑魔は3体いる。ならば、蜘蛛型はこの場所に集中していたのだろうか?
 アルトは蜘蛛型の動きに警戒しつつ、スマートフォンに手を伸ばした。

「やっぱり雑魔が出たみたいね」
 姉妹を護衛中だったまよいは、アルトからの連絡を受けぽつりとそう呟いた。
 その言葉を聞き、智里とハナも周囲への警戒を強めた。
 そんな場の空気の変化に戸惑っていたシエーナは、ふと何かに気付いたのか目を見開き崖の上の方を見上げた。
 気になり、他のメンバーもその方向へ目を向けると、そこには大きな蜘蛛の形をした雑魔がいた。
 現れた蜘蛛型は、高く宙を飛び、そのままハンター達を飛び越えた先に着地する。
 このまま後ろに逃げれば、襲撃地点とされていた一本道の奥へと追いやられてしまう。
 雑魔がわざわざハンター達を飛び越え着地したのも、一本道に誘導するためだろう。
「2人とも私の傍でしゃがんで下さい!」
 智里は姉妹にそう言うと同時に、辺りに『ディヴァインウィル』による不可視の境界を作り上げる。
「全てを無に帰せ……ブラックホールカノン!」
 まよいはすぐさま、『集束魔』で一点に集め威力を高めた『ブラックホールカノン』を蜘蛛型に放った。
 その凄まじい威力に、蜘蛛型は跡形も無く消え去ってしまう。
 雑魔を倒し安心したのも束の間、まよいが背を向けていた崖の上から潜んでいた別の蜘蛛型が飛び上がり、飛行中のまよいを襲う。
 高い崖の上からの高い跳躍が、まよいへと届いてしまう。狙われたまよいは、回避も叶わず攻撃を受けてしまった。 
 そして新たな蜘蛛型がどこからか飛び上がり、ハナの前に降り立つ。
 更に物陰に隠れていたのか、蜘蛛型がもう一体後方へと現れた。
 気付けば、皆は蜘蛛型に囲まれる形になってしまっていた。
「いつの間にかぁ、囲まれてますぅ」
「2人とも、絶対に私から離れないでくださいね」
 突然の事態に青ざめている姉妹は、智里の言葉にこくんと頷きその場で固まった。
 こうして、囲まれた状態での厳しい戦いが始まった。

「どうやら、向こうにも雑魔が出たみたいだな」
 繋いでいたスマートフォンから聞こえる音を聞き、アルトはそう判断した。
「戦力が分断されたのか……これは厄介だね」
 真はそう苦り切る。するとアルトは真に告げた。
「真、おまえは姉妹の元へ行け。ここは私が引き受ける」
 その申し出に真は少し考えるが、卓越した疾さ、そして力を合わせ持っているアルトならば、ここを任せても問題ないと判断する。
「分かった。ここは頼んだよ」
 真はアルトにこの場を託し、姉妹の元へと急いだ。
 来た道を戻る真を、逃がすまいと追撃しようとする蜘蛛型だったが……アルトの『飛花』『踏鳴』『飛燕』による連なる超高速の動きで放たれる『散華』が、蜘蛛型を複数回斬り付け、硬いはずのその身体をあっさりと消滅させた。
 別の蜘蛛型が、アルトをやり過ごし姉妹の元へ向かおうとしていたが……アルトの超速の剣がそれを許さない。
 すぐに蜘蛛型に追いつき、そのまま『散華』で移動ざま数回斬り付ける。そして、側に控え動向を窺っていた蜘蛛型にも、アルトの剣閃が煌めいた。
 瞬く間の間に、アルトは辺りにいた3体をすれ違いざまに両断した。
 しかし、辺りにはまだ蜘蛛型が隠れ潜んでいたようで、更に3体もの蜘蛛型が湧いて出た。
 確かに敵の数は3体以上とは聞いていたが、予想外の数に苦い顔をするアルト。
 もし、ここで蜘蛛型を後ろに逃がせば、状況は悪くなる一方だろう。
 援護のない孤立した状態だが、アルトは攻撃に集中する。
 なんとしてでもここを死守する。そう気を引き締め、アルトは雑魔に向かい構えた。

 姉妹側は相変わらず囲まれている状況のまま、次々に湧き出てくる雑魔達を相手に混戦状態だった。
「う~ん。一カ所に固まってたらまとめて倒せるんだけどなぁ。こう囲まれてると戦いにくいね」
 まよいは辺りの敵を、集束させた『ブラックホールカノン』で一体ずつ確実に仕留める。
 そして、ハナは『五色光符陣』を放ち、蜘蛛型を焼き払う。
「3体以上とは聞いていましたけどぉ、こんなに多いなんて思ってなかったですぅ」
 ぼやいているハナに向かって、蜘蛛型は糸を噴射してきた。
 鋼製のそれを身に受けたハナはダメージを受け、更に糸で動きを封じられる。
 しかし、ハナが即座に放った『呪詛返し』で、逆に相手を捕縛。
「お返しですぅ」
 複数存在する脚々に絡みつき、蜘蛛型の動きを封じた。

 智里はただひたすらに、『ディヴァインウィル』で姉妹を守る事に徹する。
 中心で直立し、伏せている子供達より狙われやすいようにした。
 それは二人に攻撃が向かないようにという智里の考えだ。
 近くにいた蜘蛛型は、思惑通り智里に狙いを付けるも、上手く近付くことが出来ずその攻撃は智里達に届かない。
 まれに『ディヴァインウィル』を通過してくる雑魔もいたが……そこは智里の『攻性防壁』により雷撃を纏った障壁を発生させ、雑魔を弾き飛ばした。
「ノア、大丈夫?」
「怖いよ……お姉ちゃん」
 震えている姉妹に向かって、智里は優しく言う。
「大丈夫です。私達が絶対に守りますから」
 それを聞いた姉妹は、少しだけ安心した様子を見せた。
 智里の元へと這い寄ってきた他の蜘蛛型は、近付けないと悟るや、鋼の糸を噴出する。
 『ディヴァインウィル』では防ぐことの出来ない攻撃。
「っく……二人には傷一つ付けさせません」
 智里は姉妹を庇い、鋼の糸を受けた。
 運良く糸が絡まる事は無かったが……このまま糸で攻撃されれば、姉妹に被害が及ぶかもしれない。
 そこに真がようやく駆け付ける。
 姉妹の無事な姿を見て、ホッと胸をなで下ろす真。
「ふぅ……間に合ったみたいだね」
「真さん、気を付けてください! 雑魔は鋼の糸を吐いてきます!」
 智里の状態と言葉で状況を察し、全ての糸から姉妹を守る事が困難と判断した真は、『ヤルダバオート』を使い辺りに結界を展開した。
 周囲の認識と現象を書き換える真の大魔法。智里の『ディヴァインウィル』と合わさり、姉妹の守りを強固なものにする。
 更に離れた場所にいるまよいの『ウィンドスラッシュ』が、姉妹の近くにいる雑魔を切り裂き、そしてハナの『五色光符陣』が同じく姉妹へ這い寄っていた雑魔2体をまとめて焼き尽くす。
 そうして、まよいとハナの攻撃により、姉妹へと向かう蜘蛛型の多くを消滅させた。
 追い詰められた数体の雑魔は、一斉に姉妹の方へ目掛けて鋼の糸を噴出する。
 しかし、それは真による『ヤルダバオート』により、ことごとくあらぬ方へと飛んでいった。 
 畳みかけるように、まよいとハナの猛攻が、残りの雑魔達を攻め立てた。
 わらわらと群がっていた蜘蛛型は、ハンター達の苛烈な攻撃により1体も残らず消滅した。

●その後
「皆さん、ありがとうございました」
「ハンターさん、ありがと」
 シエーナとノアは、深く礼をし感謝の言葉を伝える。
「無事で本当に良かったです」
 智里は無事な二人を見て、安堵しながら優しく言う。
「ところで2人ともぉ、何か不思議なことに遭ったりはしなかったですかぁ?」
「不思議なこと……ですか?」
 シエーナはしばらく考え込むが……
「いえ、これといって特別なことは無かったと思います。……ノアは何かある?」
「ううん、変なことは何もなかったよ」
 念のため皆は二人に付き合い、町で買い物をした後、村へと送った。
 ハンターズソサエティへ帰る道中、
「う~ん、どうしてあの子達が狙われたのかな?」
 まよいは、ふと疑問を口にしていた。
「雑魔達は道に罠を張っているようだった。道を通る者なら誰でも良かったのかもしれないな」
「たまたま、あの姉妹が雑魔の被害に遭って、それを何かで知った依頼人が私達に頼んだ……とうことかな?」
 アルトと真はそれぞれ考えを述べる。すると、智里も思っていた疑問を口にする。
「そもそもどうして突然、あんなに多くの雑魔が現れたのでしょう。今まであの辺りには雑魔は出なかったそうですし」
「手紙の送り主が気になりますねぇ。内容からして予知の能力がありそうですけどぉ」
 ハナの言葉に、思うところがあったのかアルトが言う。
「たぶん、あれは子供が書いたんじゃないかな。大人なら、根拠を示したり事前に手を何か打ちそうだし。中身の書き方もな」
 そんなアルトの推察を聞き、真も口を開く。
「可能なら依頼人に会ってみたいね。文面の拙さと真剣さを見るに、予知はできるけど防ぐ力は無くて、それでも悲劇を防ぎたいと考えている子……なのかな?」
「なんだか謎が多い依頼だったね」
 今回の依頼を振り返り、そう呟くまよい。
 それは他の皆も同じ考えだったようで、無事に依頼を達成できたものの、胸の内に僅かな蟠りが残った。

 とにもかくにも、ハンター達は姉妹を無事守り切り、最悪な事態を回避することが出来た。
 その後の調べで、手紙の主は身元が特定できないよう架空の情報を記載していたことが分かった。
 謎の依頼人、狙われた姉妹、突然発生した雑魔、いくつかの謎を残しつつも今回の事件は一旦幕を下ろした。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/11/18 18:58:58
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/18 09:45:36