• 落葉

【落葉】剣魔クリピクロウズと再戦せよ!

マスター:きりん

シナリオ形態
イベント
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
6日
締切
2018/11/26 09:00
完成日
2018/11/30 13:29

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●無数の剣魔クリピクロウズ
 ハンターズソサエティにもたらされた情報は非常に膨大な量になった。
 例えば剣魔クリピクロウズが見せる凶悪な回避性能は、同じ武器でも武器種を切り替えることによって誤魔化すことができる場合があるということ。
 同じ武器でも、通常攻撃の後にスキルによる攻撃が通用すること。
 違う武器でも、同じスキルならば極めて高確率で回避されてしまうこと。
 同武器による物理攻撃と魔法攻撃は、別々だとカウントされること。
 無抵抗主義は無意味ということ。
 これらは、ジェーン・ドゥがあの激しい戦いの中で観察を続けながら記録を取り続け、持ち帰った情報の一部だ。
 惜しくも倒したクリピクロウズ本体は「本体の一つ」でしかなく、特殊性を際立たせるだけの結果となったが、それでも四霊剣の一つである剣魔を、一度とはいえ撃破できたのは喜ばしいことだといえよう。
 帝国内ではこの勝利を受けて剣魔クリピクロウズ討伐の機運が高まり、一時は大規模な討伐隊の結成も噂されるほどになった。
 そこへ冷や水を浴びせかけるかのように起きた、各地の異界化という事象は、浮足立った帝国首脳部を我に返らせるには十分過ぎる出来事だった。
 帝国各地に出現する異界への対応はいたちごっこで、消しても消してもその分だけまた別の場所に出現する有様で、終わりが見えない。
 しかしそれは裏を返せば、こうして消し続ける限りは剣魔クリピクロウズも永遠に目的を果たすことができないということでもあり、異界に対する対応はもはやどちらが音を上げるかを競う持久戦の様相を見せ始めていた。

●彼女たちの願い
 異界に飲み込まれたラズビルナムの一角に、剣魔クリピクロウズは佇んでいた。
 ラズビルナムは、負のマテリアルに満ちているのに平和そのものな風景が広がっているという、奇妙な場所に変化していた。
 空を見上げれば茜色の空が広がっている。
 クリピクロウズは森を望む崖の上を浮遊しており、そこからは景色を一望することができた。
 崖の下には、かつて、自分を信仰する亜人たちがまだ生きていた頃にあった、亜人が住むラズビルナムの森が広がっている。
 森の向こうには、無人の街まで見える。
 ラズビルナムを飲み込んだ時点で異界化がせき止められてしまったため、実際のラズビルナムより、再現されたラズビルナムは一時的にだいぶ小さくなってしまっているが。
 ここは、異界だ。
 帝国の歴史を再現し、模倣して作り出された偽りの世界。
 どこまで行っても住人はスケルトンと亜人しかおらず、そしてクリピクロウズを含め彼らは歪虚でしかない。
 しかし侵入する人間たちがいない今、彼らは平穏に日常を謳歌していた。
 これは、クリピクロウズが思い描いた平和そのもの。
 そして、ハンターたちと交戦を繰り返したことで、クリピクロウズ自身にも変化が表れていた。
 今までの自分は、亜人や歪虚にしか目を向けてこなかった。そういう意味では、人間たちと何も変わらなかった。
 立場の違い、考え方の違い、種族の違い、それを否定し受け入れないからこそ、争いが起きる。
 現実の世界で人間、亜人、歪虚たちが争いばかり繰り返し、融和が上手くいっていないのは、そのためだとクリピクロウズは思っている。
「──受け入れましょう、全て」
 クリピクロウズが見下ろす中、遠くの街で、人間の姿をした歪虚たちが次々と発生していく。
 それらはクリピクロウズに見守られながら、帝国の歴史を刻み始めた。
 人間も亜人も歪虚も、全てを一つに模倣した世界を作り上げる。
 望むのは平和だけ。
 そのためには、全てを歪虚として取り込まなければならない。
 それが、戦いの歴史を観測し続け、自らも戦いを押し付けられた果てに彼女たちが得た、新しい願いだった。

●ハンターズソサエティにて
 その日、ハンターズソサエティは浮足立っていた。
 ラズビルナムに潜む剣魔クリピクロウズの再討伐が決定したのだ。
 この歪虚を完全に滅しない限り、ラズビルナムを人間の手に取り戻すことはできない。
 また、最初の出現以降、各地で頻繁に剣魔クリピクロウズ本体が確認されるようになったことも、再討伐の理由として挙げられる。
 今や遺跡内のあらゆる場所に、彼女が出現する。
 いや、違う。
 誤解を恐れずいうなら、亜人や人間を模した歪虚のような異界が生み出したものを除く、全てのスケルトンが、広義的な意味ではクリピクロウズ自身なのだ。
 スケルトンは分体。元を辿れば、例外なく彼女に繋がっている。
 そして、今やクリピクロウズはラズビルナムに留まらず、帝国中のどこにでも転移することを可能としていた。
 転移した先で作り出された異界も、全て過去の歴史が再現されたものだ。
 帝国中の異界を消してもきりがない。
 大本を叩かなければならない。
 こうして、剣魔クリピクロウズの再討伐が決まった。
 お前も行けとジェーン・ドゥが再び上司のエルス・モウザルに無茶振りされ、彼女は死んだ目でハンターを集め始めた。

●再戦、剣魔クリピクロウズ
 集まったハンターたちは、ラズビルナム前にて呆然とすることとなった。
 ラズビルナムは平和そのものな光景に変化していた。
 これは模倣によって作られた、亜人と人間が手を取り合って暮らす風景だ。
 無論、それらは異界によって再現されたもので、その正体は歪虚に過ぎない。
 そして、彼らが受けることになる衝撃は、それだけではなかった。
 濃密な負のマテリアルが吹き荒れる奔流を伴い、剣魔クリピクロウズが転移してくる。
 一体。
 二体。
 三体。
 四体。
 たった一体でも苦戦するクリピクロウズ本体が、四体も現れたのだ。
 それだけ、クリピクロウズも本気だった。
 これは、彼女にとっても賭けに等しい。
 集まったハンターたちだって、全て取り込み歪虚として再誕させてあげればきっと分かってくれるはず。
 そうクリピクロウズは信じていた。
 立場や種族が違えど、平和を願うのは、皆同じはずなのだから。
 そのために、戦いを嫌う心を押し殺して、四体もの自分を揃えた。
「──この世界を、見てください。平和な光景だと思いませんか?」
 剣魔クリピクロウズたちが歌うように語りかけてくる。
 彼女たちは、本当の意味での対話を求めていなかった。
「争い合う限り、私たちはいつまでも分かり合えません」
 どこまでも彼女は歪虚であり、、彼女たちの思考は『剣魔クリピクロウズ』という集合体の中で、完結してしまっている。
「分かり合うためには、全てを忘れるのが一番です」
 そしてそのことに、何の疑問も抱かない。
 だから。
 自らの理想であるはずの平和を、対話の前に争いで自ら汚す決断をした矛盾に、思い至らないのだ。
「──ですから」
 四体のクリピクロウズの、負のマテリアルが活性化する。
「一つになりましょう」
 平和な光景を汚すように、巨大なスケルトンが召喚された。

リプレイ本文

●激戦の予兆
 キヅカ・リク(ka0038)が考える全体の流れでは、まず一体目の剣魔と大型スケルトンの処理から始まる。
 攻撃対象にする剣魔にまず着色化を行い判別しやすくし、集中砲火で速攻を仕掛け、並行して大型スケルトンの処理を行う。
(そうしたら、一度後退して陣形を立て直した方がいいかな。特に他と競合しなければ僕が指示を出してもいいし)
 パーソナルカラーである赤と黒に塗装されたR7エクスシア、オリアスからアニス・テスタロッサ(ka0141)の声が通信機を通じて響き渡る。
「射線入んなよ!巻き込まれても文句は聞かねぇからな!」
 アニスは初弾から剣魔とスケルトンを巻き込む角度で射撃を行うつもりだ。
 攻撃タイミングは作戦に準じ、独断専行的な攻撃はしない。
 クリピクロウズの姿はユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が思っていたものとは違ったが、これだけはいえる。
「忘れてしまうなんてできない。そんなのは自分自身を、自分がこれまで生きてきた過去を、心に抱いた祈りも願いも、全部否定する事になる。私はそんな世界は要らない。そんなもの、平和でも何でもない。ただの虚無よ……」
 剣魔クリピクロウズたちを見据え、アーサー・ホーガン(ka0471)は啖呵を切る。
「平和はともかく、不変や停滞は求めてねぇんだ。押し売りは勘弁だぜ。つまり何だ、お前に戦う理由がなくても、こっちにはあるってことだな」
 アーサーもまた速攻で剣魔クリピクロウズ本体を一体撃破するつもりだ。
 仲間たちへ気遣いも必要だろう。
 四体の剣魔クリピクロウズに対して、Uisca Amhran(ka0754)は果敢に言い返した。
「みんなが一つになっても、それは「平和」ではなく、ただの「孤独」ですっ。そんな「平和」は望んでないっ」
 彼女たちを全て倒そうと、Uiscaは意志を固めた。
 銀雫に騎乗し、軽やかに空中へ舞い上がる。
 同時に無線を味方に繋いでおく。
 ゆっくりと武器を手に取ったボルディア・コンフラムス(ka0796)は、その表情をその表情を戦意に満ちたものに変えた。
「ほーん……話できるようになったのか、テメェ。でも結局言ってるこたぁ一ミリメートルも分かんねぇな。ハッキリ言っとくぜ。ンなもん"クソ食らえ"、だ」
 いくら平和主義でも歪虚だ。
 その思想には歪さがある。
 夢路 まよい(ka1328)の身体から気の高ぶりに合わせて魔力が滲み出る。
「戦いを嫌うから争う、かあ。クリピクロウズの戦いはここでもう終らせてあげないとね。……クリピクロウズを、やっつけて」
 そのまままよいはマテリアルを練り上げ始めた。
 攻撃魔法の準備に入ったのだ。
 傍にはまよいが同行させたトラオムが寄り添っている。
 静かに異界の風景を見渡し八島 陽(ka1442)は呟く。
「……あの丘の下辺りかな」
 陽の目的はクリピクロウズ本体たちの撃破だ。
 また、剣魔が記憶や情報を記録、あるいは保存しているものがあれば捜索を行う。
 剣魔を一体処理し、大型スケルトンを倒し、その後中央の崖方向へ移動して立て直し、消耗戦に移行する。
 作戦通りに動きたい。
 剣魔クリピクロウズの言葉は、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)にとって到底受け入れられないものだった。
「全てを忘れろ? 平和の対価にしちゃ安いんだろうが、オレはノーサンキューだ」
 同時に通信で味方と連絡、連携できるようにしておく。
「お前と一つになって得るのは平和じゃねえ。ただ争う相手も居ない孤独だ」
 魔導トラックに乗り込んだ神楽(ka2032)は、エンジンをかけて発車準備に入った。
 フロントガラス越しに、クリピクロウズたちが呼び出した巨大なスケルトンの姿が目に映る。
 場合によっては辺り一面スケルトンたちで埋め尽くされることもあるだろう。
「やってやるっす!」
 そういう時、魔導トラックの高い移動力は頼りになるはずだ。
 セレスティアと協力する予定のリュー・グランフェスト(ka2419)は、基本的にキヅカの作戦に乗る形で動く。
 紅狼刃に跨りクリピクロウズを睨みつけ、片手で通信機の調子を確かめつつ、リューは考えた。
(一気にクリスピロウズを一体叩いておきたいな。その後は一旦引いて引き撃ちする味方を護衛しながら戦うのが適任か?)
 PzA-3 ユックユックで出撃したアウレール・V・ブラオラント(ka2531)は、召喚された巨大なスケルトンと、剣魔クリピクロウズ本体を狙う。
「有象無象のスケルトンたちについては後回しだね」
 異界の中の、草原地帯と森林地帯の境目を目指し、移動を開始する。
 到着次第射撃体勢を取ることになる。
 何かあれば引き撃ちだ。
 手早くセレスティア(ka2691)は味方に挨拶を済ませた。
「セレスティアです。宜しくお願いします」
 イェジドとともに迎撃する。
 幼馴染みのリューと一緒に行動することになるだろう。
 初めにクリピクロウズの一体を集中攻撃し倒す際に露払いを行い、クリピクロウズを倒す前後の様子を覚えておくようにする。
 幻惑させてくるかもしれない。
 軽やかな動きでワイバーンに飛び乗るGacrux(ka2726)は、召喚された巨大スケルトンと、あれから不気味に沈黙を保つ四体の剣魔クリピクロウズたちを見据える。
「これが邪神の末端か……。出鱈目で不合理……全て世界を落とすための詭弁でしょう。本人達に自覚があるのかは知りませんが」
 彼女たちは何も語らない。
 ただ、願うのみ。
 リリア・ノヴィドール(ka3056)は複雑な表情でクリピクロウズたちを見つめる。
「貴女の想いは伝わるけれど、分体が出した被害の分は……なの」
 クリピクロウズはただ平和に暮らしたいだけ。
 そのことはリリアとて分かっているが、歪虚はいるだけで周りに被害をもたらす存在だ。
 本人の意志の介在関係なく、結果的にそうなってしまう。
 方針としては、剣魔クリピクロウズへの対応を支援しようとエラ・"dJehuty"・ベル(ka3142)は考えた。
 特に周辺のスケルトンたちを担当する。
 通常のスケルトンはともかく、巨大スケルトンの方は早期の対応が必要だろう。
(あの四体の間で学習の共有が働いているかどうか、その調査も平行して行いたいものですが……)
 スージーちゃんのコックピット内で、ゾファル・G・初火(ka4407)は軽口を叩く。
「あーあ、俺様ちゃんも遊びたかったにゃーん」
 普段であれば誰のいうことも聞かずに集団のど真ん中に突っ込み、縦横無尽に暴れ回るのが常であったゾファルであったが今日は違うらしい。
 なんと剣魔クリピクロウズたちの幻惑から皆を守ろうと判断した。
 モニターに映ったのは、キャリコ・ビューイ(ka5044)にとって見覚えがある姿だった。
「また、アイツか……懲りない奴だな。まぁ、いい。また、阻止するだけだ。アラドヴァル、エンゲージ!」
 アラドヴァルを駆り、キャリコは戦闘機動に移ろうとする。
 そんなキャリコに警戒を抱かせるのは、やはり剣魔クリピクロウズの強力な幻惑攻撃だ。
 黒曜封印符を剣魔クリピクロウズ全部に打つまで重体に注意して動くというのが、夜桜 奏音(ka5754)の考えだ。
「今度の剣魔は四体ですか」
 奏音はクリピクロウズの言葉に心を乱されるようなことはなかった。
 ただ油断なく、召喚されたスケルトンやクリピクロウズたちの行動にすぐ反応できるよう、身構えている。
 いかに幻惑を防ぎ切るか。それが重要だ。
 剣魔クリピクロウズの主張に、鞍馬 真(ka5819)は真っ向から反発した。
「全てを忘れるなんて、真っ平ゴメンだ!」
 真は既に、クリムゾンウエストへ転移してくる前の記憶を忘れてしまっている。
 再び記憶を失うことを恐れる真が、その思考に同意できるわけがない。
 主の感情に同調するかのように、レグルスも闘志に満ちている。
 皆が狙うクリピクロウズを含め、もう一体または召喚された巨大スケルトンが入るよう、六十メートルから百二十メートルほど離れた場所で、狙撃にちょうどいい位置をマリィア・バルデス(ka5848)は探す。
 幻惑を考えると、あまり孤立するわけにもいかない。
「この辺りなんてどうかしらね」
 目星をつけたマリィアは、静かに時を待った。
 剣魔クリピクロウズの方を優先する考える星野 ハナ(ka5852)は、ポンポンとリーリーの首筋を軽く叩いた。
「それじゃリーリーちゃん、頑張りましょぉかぁ」
 リーリーには皆で狙ったクリピクロウズを中心点として、直径二十四メートル以内を走り回って全力移動しろと命じておく。
 ハナ自身はリーリーの鞍の上で、黒曜封印符を試みるだろう。
 剣魔クリピクロウズが歌う平和を、フィーナ・マギ・フィルム(ka6617)は認めるつもりなどない。
「種の同一化による平和なんて偽りです。絶対に潰してみせます……!」
 異種族の共存こそが、フィーナが目指しているもの。
 それを真っ向から否定する答えを、フィーナが容認できるわけがなかった。
 考え得る限り、最悪の答えだ。
「剣魔クリピクロウズ! お前は必ず倒す!」
 即興の打ち合わせを済ませた南護 炎(ka6651)は、打倒剣魔クリピクロウズに燃える闘志を漲らせた。
 まさか四体も剣魔クリピクロウズの本体が現れるというのはどう考えても予想外の展開という他なく、この場で作戦を決める必要があったのだ。
 幸い時間はかからずに済んだ。
 フィロ(ka6966)はあまり剣魔クリピクロウズにはあえて触れずに、スケルトンたちへの対応に的を絞った。
 剣魔クリピクロウズ本体、しかもそれが複数というのは厄介極まりないが、かといってスケルトンたちを放置しておくわけにもいかない。
「早急な排除が必要と認識します」
 呟いたフィロは、魔導ヘリコプターに乗り空へ飛び上がった。
 さあ、戦いの始まりだ!

●巨大スケルトン
 レグルスを駆って飛び出した真は、召喚された巨大スケルトンへの対応に向かった。
 咆哮により巨大スケルトンを威圧したレグルスが、その行動の阻害を試みる。
 委縮したのか、巨大スケルトンの動きがどことなくぎこちなくなったような気がした。
 生体マテリアルを魔導剣に流し込み、真は魔法剣化させる。
 魔法的な輝きで輝く魔導剣を利き手に、もう片方の手で蒼機刀を引き抜いた真は、レグルスの踏み込みに合わせ次々に攻撃を繰り出した。
 無数の斬撃が巨大スケルトンに吸い込まれる。
 転進するレグルスの動きすら二刀による攻撃の予備動作とした真は、連続攻撃の終わる頃には最大まで斬撃を加速させていた。
 これにて条件は揃った。
「出し惜しみはしない! お前はここで倒れろ!」
 真のマテリアルが膨れ上がり、オーラとなって魔導剣と蒼機刀に集っていく。
 放たれた三撃目の斬撃からオーラによる刃が迸り、巨大スケルトンを斬り裂いた。
 長々と戦っている暇はない。
 剣魔クリピクロウズ本体がまだ四体も控えているのだ。
 戦闘開始後、ボルディアはすぐさま前衛に飛び出た。
 ヴァーミリオンが暴れ回るのを見ながら、味方の盾になれるよう位置取りを行いつつ、穏やかで静かな歌とステップを詠唱とし、周囲にいる味方のマテリアルを活性化させた。
 巨大スケルトンが手に持つ剣を振り下ろしてくる。
 特殊能力もなさそうな、何の変哲もない剣だが、大きさだけは巨大スケルトンの獲物に見合うものを持っている。
(でけぇっての!)
 咄嗟に魔斧に持ち替える暇もなく、魔脚の脛当て部分で剣を受け止めた。
 踏み締めたボルディアの片足が草原の上を滑り、草を剥がして地面を露出させていく。
 大きく後退したものの、耐えきったボルディアは獰猛な笑みを浮かべる。
「いってぇなぁ……だが、堪えられねぇ重さじゃねぇな!」
 魔脚で守られていながらなお、衝撃が生身の足にまで響いていたが、戦意高ぶったボルディアは意に介さない。
 魔斧に持ち替えたボルディアは、炎のような闘志をまとい、マテリアルを全身から吹き出させる。
 マテリアルは炎の幻影に形を変え、噛み砕く火の名のごとく、まるで炎の獣が敵を咀嚼するように、巨大スケルトンへ上下から襲い掛かった。
「"砕"は"災"に通じ、"火"は"禍"に通じる。すなわちこの炎は、テメェにとっての"災禍"……なんてな」
 振り抜いた魔斧を肩に担ぎ、ボルディアは不敵に笑った。
 ゼフィールに騎乗した奏音は騎獣一体となって疾駆する。
 前方を走るユーリの背後に陣取り、通り過ぎるついでに複数の符を使って張った結界の中に巨大スケルトンを閉じ込め、光で焼いた。
 フィロは巨大スケルトンと通常のスケルトンに対応する。
 搭載された二基のローターを回転させて飛行する魔導ヘリコプターを操縦するフィロは、巨大スケルトンに接敵できる場所まで魔導ヘリコプターを移動させた。
 一般女性な見た目に反し機械故重量があるフィロだが、魔導ヘリコプターはかかる荷重をものともしないで飛行する。
 生体マテリアルを流し込んだレイオスは、魔法剣となって強化された闘旋剣を手に巨大スケルトンの対応に向かう。
 剣魔クリピクロウズ本体対応の人数不足や召喚待ちならそちらへ流れるが、まずはとにかく早期の巨大スケルトン撃破を目指すべきだろう。
 あんな図体のスケルトンが二匹三匹と現れては面倒なことになる。
 剣魔クリピクロウズへの対応班に横槍を入れられるのが一番危険なので、アウレールは最初の予定通り予防として分厚い装甲を貫通する性能に特化した徹甲弾を発射する。
 放たれた徹甲弾は巨大スケルトンを撃ち抜き、わらわらと召喚され始めた通常サイズのスケルトンを次々粉砕し、クリピクロウズのうち一体に直撃した。
 徹甲弾が直撃し、よろめいたクリピクロウズの口から、嘆きが漏れる。
「……戦えば苦しく、こんなにも痛い。それはあなたたちだって同じはずなのに、何故あなたたちは戦うことを止めないのですか」
 召喚された大型スケルトンはまだ我が物顔でのさばっている。
 まずはこいつを撃破するべきだろう。
 蒼姫の剣が舞う。
 踏み込んだ部分の草原が雷轟を思わせる轟音とともに爆ぜ、高速の刺突が放たれる。
 雷刃と化した一撃は吠え猛る咆哮のような鋭さで伸び、震える空気を余韻に消え失せた。
 まさに刹那。
 巨大スケルトンに対応できるわけもなく、その骨の身体には蒼姫刀による大きな穴が穿たれていた。
 味方を巻き込まないよう射線に気を付けつつ、増えて目障りになってきたスケルトンたちを、オリアスに搭乗するアニスがマテリアルライフルで薙ぎ払い、撃ち抜いていく。
 紫色の光線が、命中したスケルトンたちを消し飛ばしていった。
 巨大スケルトンが、首を巡らせて遠くにいるアウレールを捉えた。
 どうやら何かの拍子に注意を引いてしまったらしい。
 PzA-3 ユックユックは曲がりなりにもCAMなので、大きく目立つので仕方ない部分もあるが。
 どの道釣られて自分の方へ来るようならそのまま引き撃ちして対処するつもりではあったので、アウレールとしては想定内の出来事でしかない。
 余裕を持って対処する。
 近付いてくる巨大スケルトンの歩みを咎めるように、アウレールは機体を後退させながら射撃をしていく。
 モニターで前方を見ながら、同時に背後も警戒し、躓いたりしないよう操縦にも意識を割き、さらには攻撃まで行うアウレールだったが、やはり射撃しながらだといつまでも距離を取り続けることは難しく、少しずつ距離が詰まっていく。
 全力後退するキャリコのアラドヴァルは、クリピクロウズとの距離を十分に空けると、地面にアンカーを打ち込み、機体背嚢の補助腕を展開、バリスタを固定する。
 その状態でさらに機体の両手でバリスタを保持し、完全に揺れなどの微動で照準のずれが起きないようにした上で、バリスタの矢装填を行う精霊に新たな矢を装填させた。
 この矢はいわゆる徹甲弾を同じ効果を持ち、装甲貫通後に内部で爆発するようになっている。
 精霊の力を借りた時限信管により目標到達前に爆発させることも可能で、広範囲の敵を殺傷することもできる強力な矢だ。
 十分過ぎるほど狙いをつけたキャリコは、アラドヴァルでバリスタによる徹甲射撃を敢行した。
 作られた隙に、マリィアが支援射撃を捻じ込む。
 広い視野を持つ彼女ならば、集団戦における攻撃チャンスを見逃さない。
 巨大スケルトンに対し、陽のペガサスが光の結界を出現させた。
 移動を制限され封印状態に置かれた巨大スケルトンに対し、さらにペガサスは追加で光弾を発射し、行動を阻害する。
 巨大スケルトンの妨害、撃破が最優先だ。
 Gacruxは蒼機槍に生体マテリアルを注ぎ込み、強化する。
 歪虚、暴食の眷属に対抗する為に編み出された魔法を使っておく。
 攻撃を仕掛け、魔法剣解除によるオーラ解放に繋げた。
 巨大スケルトンに対し、フィロは魔導ヘリコプターに搭載された専用の機導装置で魔法の煙を発生させ、視界を塞いだ。
 風などで吹き飛ばされない煙が視線を遮り、煙の向こうの情景を見失わせる。
 煙の中闇雲に攻撃する巨大スケルトンは、いまいち的を絞れていないようだ。
 それでもその図体故、まぐれ当たりすることもあるようだが。
 攻撃の邪魔をし終えたフィロは、魔導ヘリコプターを操縦して悠々とその場から離脱した。
 放っておけばあっという間に増えていく大量のスケルトンを間引きながら、再び接近し巨大スケルトンにも攻撃を加えていく。
 幸い魔導ヘリコプターの武装なら、遠距離からの攻撃には事欠かない。
 基本はちょこまかと高度差や移動で、攻撃に当たらないようにしながら近くを飛び回るヒット&アウェイ的な機動を行う。
 ヘリコプターごと叩き落とされたら気迫で堪え、さらにダメージを体内を巡る気功へと転化することで重体を避け、ポーションを使用するつもりでいたが、幸いその機会はなかった。
 マテリアルを溜めた状態の闘旋剣を振り抜くことで衝撃波を発生させ、その勢いで遠くの巨大スケルトンに対して攻撃を行う。
 幸い援護が複数あったので、割と順調に戦いは進んだ。
 エラは射程強化を施したものと使用効率を重視した二種類の魔法の矢を使い分け運用する。
 その間にも山葵が辺りを駆け回り、巨大スケルトンへの攻撃支援を行っている。
「穿て。散矢」
 飛翔する魔法の矢が真っ直ぐ巨大スケルトンに突き刺さる。
「閃け、瞬矢」
 使い勝手の良い魔法の矢が次々巨大スケルトンに命中した。
 とにかく巨大スケルトンを真っ先に片付けた方がいいというのが、エラの判断だった。
「二体以上現れては厄介です。ここで潰します」
 さらに念のため、劣勢時に備え長期戦運用を前提に単発あたりの効率化を極限まで追求したデルタレイの集中運用や、雑魚群掃討を念頭に影響範囲と回数に特化した攻勢的なファイアスローワーの使用も念頭に入れておく。
 特に味方を巻き込む恐れのあるものはその心配がない状況で使わなければならない。
 他に巨大スケルトンとクリピクロウズ一体目の撃破後にあるでさろう引き撃ちへの移行と、再突入時の進路確保で使用する機会があるだろう。
「他方友軍の動静を見ると、戦況には余裕がありそうですね」
 長期戦を想定してスキルの息切れをしないよう、蒼機弓での通常射撃も考慮しながら、エラは呟いた。
 巨大スケルトンの攻撃はかわしにくい。
 その大きさもさることながら、読みとでもいうべきものが冴えているのか、はたまた別の何かがあるのかまでは分からないものの、回避した場所を読んでいたかのように攻撃される。
 だが、ゾファルが奮戦するお蔭で致命の一撃を後衛に貰わずに済んでいる。
「何のこれしきー!」
 味方への攻撃を引き受けたゾファルが機体で巨大スケルトンの攻撃を受け止め、アラートが鳴り響くコックピットの中で吠えた。
 攻撃を引き付けて稼いだ時間を利用して、仲間たちが攻勢に出るのを見ながら、ゾファルは満足そうに笑った。
「俺様ちゃんも中々やれるじゃーん」
 喜びに満ちた、無邪気な笑顔だった。
 巨大スケルトンに対し、マテリアルの力を偏らせることで、魔法威力を強化すると、マテリアルライフルでレイオスのエスクが援護射撃をした。
 巨大スケルトンの斬撃を、エラはしっかりと聖盾剣で受け止めた。
 獣盾爪で、山葵も巨大スケルトンの攻撃を受け止めた。
 防具の性能も合わさり、かなりダメージが軽減されている。
 軽微といっていいだろう。
 やがて、エラが止めを刺して巨大スケルトンは倒れた。

●再戦、剣魔クリピクロウズ
 Gacruxの目的は、剣魔クリピクロウズの調査だ。
 まず、Gacruxが取ったクリピクロウズへのアプローチは、会話の応酬からだった。
「その仮面の下に、下卑た無数の人格が渦巻いている事はバレていますよ」
「……否定はしません。でも、私たちの本質は違います」
「この世を嘆いていながら、死んでも尚、未だ現世に執着し続ける。死後の安息を拒絶し、歪虚と化してまで争いの世界にしがみつく」
「むしろ、私には人間たちの方が争いの世界にしがみついているように思えてなりません。だってそうでしょう? 死後の安息を受け入れ、争いの世界から解放されたいと願うのであれば、どうして全てを忘れることを受け入れないのですか……?」
「この星の一角を、長年に渡り負のマテリアルで侵食し続けていた事については、何と弁解しますか。この理想郷は"クリピクロウズにとっては"都合のいい世界ですね」
「……私たちはたくさんのものを見てきました。色々なものを見たんですよ。嘆き、苦しみ、怒り、憎しみ……そんな悲しい想いをたくさん。……本当に、たくさん」
 クリピクロウズは多くを語らない。けれど。
「歪虚が生まれて、四霊剣と呼ばれるようになって。でも、誰もあの者たちを救いませんでした。あの者たちは何にもなれずに消えていきました」
 この場に四人いて、それぞれが喋っているから、饒舌なように聞こえる。
「──何もできずに奪われて、消え去っていく命が、私には可哀そうに思えてならないのです。人も、亜人も、歪虚も、被害者になれば皆同じ。ヒトは忘れて生きていく生き物です。痛み。苦しみ。憎しみ。忘れなければ生きていられない。癒し、楽しさ、愛しさ。どんなに正しい思いも、ヒトは忘れていく。それでも生きていけてしまう」
 ただ、それだけ。
「想いが忘れ去られても、命は続いていく。だからあなたも全て忘れて、ここに落としていってしまえばいい。この楽園で、永遠に見守り続けましょう。かつて私たちが神として望まれた、その役割通りに――」
 ここでGacruxは対話を切り上げた。
 無理やり、これからの行動指針を頭に捻じ込むことで思考を断ち切る。
 味方からの状態異常に対する抵抗支援を活用し立ち回る。
 Gacrux自身とワイバーンが行動混乱時は攻撃しない。
 適宜回復はもらう。
(……これで行きますかねぇ)
 ワイバーンに騎乗し地上を行く。
 まだ飛びはしない。
 以前に海底火山クラスタ戦にて狂気に充てられて混乱し、戦線に迷惑をかけてしまったことがあるゾファルは、仲間と連携するつもりだった。
 普段はひりつくような戦場を求めてやまないバトルジャンキーのちんぴら少女であるが、今は自重している。
 短気で喧嘩っ早くて軽薄であけすけな性格も、今は我慢している。
 機体を操り、ゾファルはイニシャライズフィールドを自分の周囲に展開し、周りの味方に対して状態異常を軽減させる結界を発生させた。
 独断専行的な攻撃は控え、アニスは作戦通り攻撃タイミングを窺った。
 ゾファルのイニシャライズフィールド展開に合わせ、アニスも既にイニシャライズフィールドを発生させている。
 機体を中心に三十メートル程度の範囲内なら、幻惑効果の軽減を期待できるだろう。
 さすがにそれ以上の距離まで離れられると無理だが。
 おそらく、イニシャライズフィールドをいかに維持するかが、戦いの難度に関わってくる。
 大事な時に状態異常にかかっていたのでは洒落にならないので、イニシャライズフィールド展開に必要なマテリアルエネルギーは、アニス自身の生体マテリアルを注ぎ込んででも確保した。
 無事進んで森手前まで移動することに成功したアウレールは、機体に射撃体勢を取らせた。
 状態異常スキルを警戒したキャリコは、クリピクロウズのスキルができるだけ届かない位置を維持して攻撃を試みる。
 剣魔クリピクロウズや召喚されたスケルトンたちに対し、味方が突入する時だけ援護できる位置に移動し攻撃を行う感じだ。
 オリーヴェに騎乗したまま、ユーリは剣魔クリピクロウズ本体の対処へ向かう。
 一気に駆け抜け、クリピクロウズたちの前に躍り出た。
 己の願い、そして祈りをマテリアルに重ねて蒼姫刀に込め、魔法剣化させる。
 使い手であるユーリの心と魂を映す鏡のように、マテリアルを宿した蒼姫刀が蒼白い雷光を纏い輝いた。
 奏音は剣魔クリピクロウズ本体たちの下へ向かう。
「剣魔一体を封印しますので攻撃お願いします」
 通常の手札とは異なる札を先に配置することで、符術の効果を高めると、封印術により剣魔クリピクロウズ本体のうち、一体の力を抑え込みにかかった。
 しばらくせめぎ合いが続いたが、封印は無事成功した。
 代償として、封印術を行使している間ずっと奏音は動くことができないものの、代わりにゼフィールが動いてくれる。
 東方の巫女がお付きの侍と共に戦うことを前提として符術を組み立てるように、奏音も仲間たちやゼフィールを頼りにして封印術を行使しているのだ。
 アーサーを乗せてゴルラゴンが疾駆する。
 まず、速攻を仕掛けクリピクロウズ本体を一体撃破するのが、アーサーの目的だ。
 巨大スケルトンを素通りし、湧いてきた通常サイズのスケルトンたちをツインドリルランスにマテリアルを溜めて振り抜き、衝撃波による遠当てを行う。
「一度に四体とは、豪勢なことだな!」
 剣魔クリピクロウズ四体と接敵すると、そのうちの一体に狙いを絞り、攻めに意識を傾注して構えを取った上で、ツインドリルランスに生体マテリアルを流し込み、魔法的な強化を施す。
 草原を無数のイェジドたちが駆け抜ける。
 そのうちの一体を駆り、幼馴染みのリューと行動を共にするのはセレスティアである。
 狙うは四体いる剣魔クリピクロウズ本体のうち、一体だ。
 まずはこの一体を倒して、どんどん増えていくであろう敵戦力を、少しでも削ぐ必要がある。
「グランフェストくん、露払いするね」
 騎乗するイェジドの移動力によりリューに少し先行したセレスティアは、星剣を引き抜くと、巨大スケルトンをスルーしつつ、召喚され始めた通常のスケルトンを斬り払いながら、クリピクロウズ本体たちと接敵した。
 リーリーに跨ったハナは前を行くイェジドの集団を追いかける。
 ハナが騎乗するリーリーは、巨大な鳥の姿をした幻獣だ。
 鮮やかな美しい羽の色を持つ優美な姿をしており、大きな身体と太い足は、空を飛べない代わりに走行能力と荷重性能に優れている。
 騎獣として高い適正を持ち、鋭く発達した足の爪が特徴的な、中々頼りになるハナの相棒だ。
 当初の予定通りリーリーにクリピクロウズを中心点として全力移動させながら、鞍の上からハナは狙ったクリピクロウズに封印術を仕掛ける。
 しかし、激しいせめぎ合いの末、ハナの封印術はクリピクロウズを抑えきれず、破られてしまった。
 何度か再チャレンジしてみるものの、全て失敗してしまったことから、ハナはこう判断した。
「うーん……。どうも偶然とかそういう問題じゃなさそうですぅ。根本的に強度が足りませんかぁ?」
 抵抗を突破できる確率がゼロではないのなら、数撃てばの精神で何とかなるかもしれないが、そうでなければ符の無駄である。
「まあ、私には別の手もありますしぃ」
 消費した符を補充しながら、ハナは時を待つ。
 Uiscaを乗せた銀雫が空に飛び上がる。
 無線で狙うべきクリピクロウズ本体をどれにするか打ち合わせし確認すると、Uiscaは具体的な行動を始めた。
 穏やかで静かな旋律の歌がUiscaの口から紡がれる。
 同時に踏むステップは巫女の舞のようで、この歌とステップによって周囲にいる味方のマテリアルが活性化していく。
 続いて銀雫が幻影魔法による結界を展開し、クリピクロウズへの魔法発動妨害を試みた。
 幻影の結界は特に魔法に対して強い効果を持ち、結界内にいる敵の攻撃精度を低下させる。
 さらに一度だけ、かつ結界の消滅を代償に成立するはずだった魔法術式を瓦解させる効果を持つ。
 使いどころ次第では非常に強力な能力だ。
 詠唱を始めたフィーナは、今まで得た知識を紡ぎ、魔力として発動体である魔杖へ注ぎ込んだ。
 長時間の詠唱になるにつれ、魔杖に込められた魔力は累積し、膨大なものとなっていく。
 ともすれば魔杖が崩れ去りそうになるほどの魔力を用いて、フィーナは次に詠唱する魔法の威力と効果範囲を拡大させていった。
 魔力の制御に心血を注がなければならないフィーナに代わり、Schwarzeがクリピクロウズの位置を監視し、不測の事態に備える。
 ペガサスに騎乗し、陽は上空から剣魔クリピクロウズ本体たちを見下ろす。
 陽としては皆と協調し、本体を一体ずつ集中攻撃して落としていくつもりだが、やはり幻惑能力に対して何かしらの対策を立てなければならない。
 というわけで、陽なりに試行錯誤してみることにした。
 錬魔剣を活性化させ、機導浄化デバイスに接続して浄化術を発動できるようにしておく。
 周囲のマテリアル汚染を挿入したカートリッジに吸収、封印しようというのだ。
 リリアを乗せ、ワイバーンが空へと舞い上がる。
 本体のうち、一体を集中攻撃する集団に混じって飛ぶリリアは、絶火槍を構え、眼下のクリピクロウズたちを見下ろす。
 エラは剣魔クリピクロウズ本体たちの対応を行う仲間たちの周辺で、情報収集と交戦状況の安定させることを念頭に行動を開始する。
 クリピクロウズの動静、特にスキルの被弾確率の変化を収拾する。
「……ふむ。他方で命中済スキルが未被弾の剣魔に影響を及ぼす可能性をキヅカと共有しておきましょう」
 無線はいつでも使えるようにしておき、後退、突入時機の周知も無線経由で周辺へ伝達し、意思統一を図る。
 とっさに打ち合わせた割には、皆いい連携をしている。
 CAMや幻獣に乗って先行した仲間たちを追いかけ、キヅカはできる限り急いでいた。
 幸い大きく引き離されるということもなく、集団の中にいる。
 これなら間に合わないということもない。
 まよいがマテリアルを練り上げ始める。
 無防備になるほどの高い集中力を用いて、大量のマテリアルがまよいの中で運用される。
 渦を巻くマテリアルはやがてまよいの身体から外へと吹き出し、オーラとなって迸った。
 だがまだ足りないとばかりに、まよいは精神の集中を継続する。
 トラックの中で、神楽は祖霊や精霊の力を引き出し、自分の戦闘能力を上昇させた。
「輝け俺の三下力!」
 さらにそれを周囲にまで影響するように霊呪で進化させ、トラックの性能を高めた。
 射撃に最適な位置を確保したマリィアは、その場所に陣取ると射撃の機会を窺った。
 この場所なら、離れているのでほとんどの幻惑攻撃から逃れることができる。
 一部はどうしようもないけれども。
 前に出たキヅカは、剣魔クリピクロウズのうち、三体の頭上にそれぞれワイン、火酒、蜂蜜を投げ、機導術で光の三角形を作り出し、その頂点一つ一つから光を飛ばして破壊した。
 瓶の中身が降り注ぎ、それぞれのクリピクロウズを濡らし、色を付けた。
 何もないものも含め、これで識別できるようになるはずだ。
(透けろとかそんな。でもちょっと期待は)
 巨大スケルトンと剣魔クリピクロウズのうちの一体に、光の三角形がから光線が一つずつ伸びていく。
 キヅカの機導術だ。
 両方に着弾し、被害を与えた。
(これで、あの剣魔クリピクロウズにはデルタレイに対する攻撃耐性がついたはず……。あとはその共有の有無を立証することができれば……)
 再び光の三角形が現れ、その頂点一つ一つから伸びた光がそれぞれ巨大スケルトン、一度攻撃した剣魔クリピクロウズ本体、別の剣魔クリピクロウズ本体へと飛んでいく。
 対象になった三体のうち、巨大スケルトンに対してはまた直撃した。
 それはいい。
 問題は残る二体だ。
 一度攻撃した後の剣魔クリピクロウズ本体は、まるで攻撃されることを予知したかのように余裕を持って回避した。
 しかし、もう一体も回避に成功したのだ。
(共有した? いや、違う? タイミングが……少しずれていた気もする。……判断するのはまだ早計かもしれない)
 二体目のクリピクロウズの回避は、少し不自然だった。
 まるで、攻撃耐性はないが、偶然回避に成功しただけのような。
 しかし、そう決めつけて一斉攻撃を仕掛け、違ったら大問題だ。
 まだ博打を打つタイミングではない。
 とにかく四体のクリピクロウズ本体たちは、一時的に個体識別が可能となった。
 即興の打ち合わせでは、このうちの一体に総攻撃を仕掛けることになっている。
 キャリコはアラドヴァルを操作し、バリスタを構えさせた。
 矢が装填機構によって引き絞られ、発射準備が完了する。
 クリピクロウズのうち、仲間たちが先に攻撃した一体に射撃を行った。
 放たれた矢はまっすぐ飛び、狙ったクリピクロウズに突き刺さる。
 当然それで倒れるような敵ではないものの、命中した衝撃でクリピクロウズが身じろぎをする。
 その後、すぐにキャリコはアラドヴァルを後退させ、飛行姿勢を取らせると飛行戦闘や空間戦闘などにおける安全のための機体制限を解除し、技術的な解決に加え、覚醒者ならではの第六感じみた反応により、アラドヴァルを飛行状態に適応させた。
 策を弄するよりは真正面から斬り捨てる方を好む性格からか前に出がちなゾファルであるが、今回は頑張って皆と歩調を合わせていた。
 特に同型機のR7エクスシアであるオリアスで出撃するアニスに対し、意識して連携行動を取っている。
「さすがに同じ轍は踏まないじゃん」
 いざとなれば自らの生体マテリアルを機体にコンバートすることで、イニシャライズフィールドの展開時間を伸ばし機体周辺に展開するであろう剣魔クリピクロウズの忘却や幻惑に対抗するつもりだ。
 必要とあらば機体背部の円形マテリアルエンハンサーから最大出力でマテリアルを放出し、光の翼を形成することで、敵の攻撃や移動を阻害する障壁を張り、歪虚が侵入不可能な移動拠点として立ち続ける。
 だから突っ込まずに皆の橋頭保であり続けるのだ。
 リアルブルーのスキルトレース技術を覚醒者のスキルとして再現し、ゾファルはベクトル操作をコックピットの中ではなく、まるでスージーちゃんが使ったかのように、機体を介して発動させる。
 攻撃を吸い込み気味に集めることで、最高の攻撃タイミングと攻撃配置を提供するのだ。守りの構えによる移動不能でいったんテリトリーに掴んでしまえば逃走も許しはしない。
 戦場を味方好みに操作し続ける。
「うんうん、これはこれで楽しいじゃんよ。クッピーちゃん楽しんでるー?」
 隙あらば、ゾファルは敵への挑発を忘れない。
 攻撃については、それほど重要視せずに防御や味方へのカバーを主体に動いた。
 戦闘が長引いてくると、クリピクロウズの戦闘行動もパターンが掴めてきて読みやすくなってくるので、守りやすくなるというものだ。
 確実に減らすため、集中攻撃の対象になった剣魔クリピクロウズに対して、マテリアルキャノンで通常砲撃を行う。
 知識通りなら、もうこの個体に対してマテリアルキャノンの通常砲撃は通用しないはずなので、FMガンポッドの射程に入った時点で再攻撃を仕掛けた。
 ボルディアは剣魔クリピクロウズ本体と交戦に入る。
 魔斧による炎の幻影をまとった素早い連撃を叩き込むと、魔脚に包まれた足を跳ね上げ、格闘攻撃を行う。
 ローキックやフェイント、回し蹴り、膝蹴りなども試してみたが、全て同じ魔脚による攻撃なせいか、最初の一撃以外は回避されてしまった。
 小手先の攻撃は予想外の事態でも起きない限り通用しないようだ。
 だが、ヴァーミリオンとの同時攻撃を行ったところ、クリピクロウズの意表を突くことができた。
 今ので学習してしまった可能性もあるので、次も通じるかは定かでないが。
 ゼフィールは良く動き、味方のマテリアル活性化効果を持つ歌と踊りの効果が受けられる位置をキープしつつ、危なくなったらボルティアが割って入れるよううに立ち位置を調整している。
 奏音は味方を信頼して、抵抗されて封印術が打ち破られるか自ら効果を終了させるまで、こうしてゼフィールの背に揺られているだけでいい。
 内なる龍の力を呼び覚ましたUiscaは、空中に無数の闇色の龍牙や龍爪を生み出していく。
 意志の発露によって一斉に飛翔した牙や爪は、次々に巨大スケルトンやスケルトンたちを巻き込んで、クリピクロウズたちに突き刺さった。
 スケルトンたちの動きは止まったものの、クリピクロウズたちの動きは止まらない。
 巨大スケルトンは一瞬動きを止めたものの、短時間でまた動き出してしまった。
 通常のスケルトンが召喚されていく。
 それを見て、フィーナが多重魔法陣を起動させた。
 幾何学的な回転を始める各魔法陣の中央に、小さな光の微粒子が発生した。
 魔法陣の回転数に応じて微粒子はその体積を増し、大きな光の輝きとなっていく。
 そしてフィーナが集めに集めた魔力を喰らい、光は暴虐的なまでに輝きを強めていった。
 フィーナが魔杖を振ると、全ての魔法陣がスケルトンたちに照準を向ける。
 この頃になると、魔杖に込められた魔力はあらかた魔法陣に注ぎ込まれ、今や魔法陣そのものが大きく輝いていた。
 その輝きすら、魔法陣中央の光の粒子が喰らっていく。
「……準備完了。範囲内に味方の存在なし……行ってください」
 多重魔法陣から粒子ビームが発射される。
 展開された六つ全ての魔法陣から、同じように粒子ビームが放たれ、スケルトンたちを薙ぎ払った。
 さらに全ての粒子ビームがスケルトンたちの中心で爆発し、広範囲に炎と衝撃を巻き散らす。
 Schwarzeの背に乗り空の人となったフィーナは、Schwarzeが急加速と共に攻撃目標をクリピクロウズ本体のうち一体に定め、奇襲を行うのと同時に、スタッフに持ち替え、燃える火球を1つ生み出し、そのクリピクロウズ本体に向かって投げつける。
 見事火球はクリピクロウズ本体に命中して爆発し、火と衝撃によるダメージを巻き散らした。
 上空に離脱し、様子を見る。集まる危険性を認知させ、散らばらせることで新たな巨大スケルトンの召喚を防ごうと考えたフィーナだったが、それでも集まったままなので、今度は聖魔杖に持ち替え新たに魔法を発動させた。
 冷気の嵐が吹き荒れる。その冷気は絶対零度まで達し、液化した窒素がクリピクロウズたちを凍りつかせた。
 行動阻害は無理だったが興味を引けたらしく、クリピクロウズたちの一人がフィーナを見上げた。
 辺りからマテリアルがまよいに集まっていく。
 魔力の奔流が生まれ、まよいに集い、風の流れが起きた。
 木の葉が舞い、まよいの方へと吸い込まれては、魔力に当てられて弾けて消えていく。
 まよいの瞳が強い輝きを放っている。
 見えないオーラに吹き上げられているかのように、髪や服がなびいて舞い踊り、それらは時間が経過するごとに輝きと勢いを増していった。
「トラオム、お願い」
 まよいの求めに応じて、トラオムがユグディラ式演奏術を披露した。
 歌声と演奏によりマテリアルを調和させ、まよいが操る魔力に自分の魔力を瞬間的に上乗せする。
 吹き荒れる魔力の奔流が激しさを増した。
 遥か上空に七つの頂点を持つ巨大な星型が魔法陣を描き出される。
 ハンターの視力をもってしても、ようやく見えるか見えないかくらいの高さだ。
 星型魔法陣の頂点に、魔力によって生まれた火が集っていく。
 火は勢いを強め炎となり、炎は火球となり、火球は太陽のごとき大きさにまで膨れ上がり……まよいが目を見開いた。
 錬金杖を手に、まよいは詠唱する。
「天空に輝ける星々よ、七つの罪を焼き尽くす業火となれ……ヘプタグラム!」
 七芒星から、七つの太陽が落ちてきた。
 いや、それらは全て火球だ。
 まるで太陽のような大きさと輝きの火球が七つ、剣魔クリピクロウズ本体たち目掛け降ってくる。
 クリピクロウズたちが空を見上げ、凍り付く。
 無論、転移する以外に、逃げ場などない。
 そして回避は一体しか間に合わなかった。
 冷静に陽は四体の剣魔クリピクロウズ本体の行動パターンを観察する。
 一番最初に巨大スケルトンを召喚してから、すぐに普通のスケルトンを召喚し始めた。
 とはいっても四人いるので一度に召喚される数は馬鹿にならない。
 幸い巨大スケルトンはすぐに倒されそうなので巨大スケルトンまで複数並ぶなどということはなさそうだが、早めの行動パターンの割り出しが必要だろう。
「それじゃあ、行こうかしら……なの」
 ワイバーンを降下させ絶火槍が届く間合いにまで近付いたリリアは、振り被った絶火槍を投擲した。
 飛翔するかのように投げられた絶火槍は、過たずクリピクロウズを狙い通りに貫いた……かのように見えた。
「おかしいの……」
 思わずといった様子で、リリアは目を擦る。
 確かに当たったはずなのに、現実では絶火槍は見当違いの場所に突き立っている。
 転移で回避されたのかというと、それも違う。
 認識阻害。
 これが、リリアが攻撃を外してしまった正体だ。
「やっぱり、厄介な能力なのよ」
 手元に戻ってきた絶火槍を再び投げつけるが、命中した認識とは別に、実際は回避されている。
 いや、回避されているというより、回避されるまでもなく当たっていないというべきか。
 埒が明かないので、当たらずとも近くに落ちればいいと見切りをつけ、投擲した絶火槍に自らのマテリアルを紐づけ、引き合う様に加速を受けてワイバーンごと移動する。
「当たらずとも、この距離なら外さないのよ!」
 クリピクロウズの至近にまで接近したリリアは、絶火槍を手繰り寄せ、果敢に突きを打ち込んだ。
 直後にスケルトンが召喚され、攻撃されたワイバーンが身体を回転させつつ不規則な飛行軌道を取ることで、回避して再び高度を上げた。
 その際に、ムーンチャクラムにマテリアルを込め、さらにそれを変質させて毒にし、即座に投げつける。
 今度は命中し、クリピクロウズに傷をつけた。
 しかし毒は効かなかったようだ。
 世界樹の盾で殴るのは最後の手段にしておく。
 剣魔クリピクロウズの攻撃耐性に対しては、レイオスが持つ闘旋剣の豊富な武器種が実に有効に働いた。
 生体マテリアルを流し込んで魔法剣に強化してやれば、物理、魔法にさらに切り替えられるので、マテリアルを溜めて衝撃波を放つことで、複数の本体に一度にダメージを与えられる。
 神楽は剣魔クリピクロウズ本体に向けて幻影の触手を伸ばした。
 回避しようとしたクリピクロウズに、触手が絡まる。
「ひゃっはー! 久しぶりの触手映えする敵っす~!」
 クリピクロウズが、神楽の方へと引き寄せられていく。
 エロスとロマン溢れる形で拘束され、更には幻影とはいえ分泌されたヌルヌル粘液でびしょ濡れになったクリピクロウズは、呆然としているようだ。
 まさかこんな扱いを受けるとは思わなかったようで、転移で脱出することも考えつかない様子である。
 すかさずマリィアが射撃を行う。
 天に向かって一斉に放たれた矢はマテリアルをまとい、光の雨となって降り注ぐ。
 封印の力はクリピクロウズによってはねのけられた。
 マテリアルを瞬間的に体に満たし、素早くリロードを済ませると、マリィアは再び天に向かって一斉に矢を放った。
 放たれた矢はマテリアルをまとい、光の雨となって降り注ぐ。
「……ええと、これはどっちなのかしら」
 見事に当たらなかったのだが、それが攻撃耐性で回避されたせいなのか、状況のせいなのかが判断できない。
 というのも、当たらなくても仕方ない状況が出来上がってしまっている。
 この攻撃そのものに命中率低下の補正が大きくかかる上、クリピクロウズ自身を狙うのだから認識阻害も受けてしまう。
 さらには距離による命中率減衰まであるのだ。
「まあいいわ。数撃てばそのうち当たるわよね」
 落ち着いて、マリィアは射撃を続けた。
 幾度目かの高速リロードを終え、マリィアはクリピクロウズを射撃する。
 封印は全て簡単に破られた。
 動きを戒めるにはどれも至らない。
 前衛に立つ炎は剣魔クリピクロウズに攻撃を仕掛けた。
「容赦はしない!」
 防御を捨て大上段に構えることで、攻撃力を高め機先を制すると、炎の意志に応じて燃える花びらによる桜吹雪の幻影が発生する。
 精神を研ぎ澄まし、構えた状態から肉体を加速させ敵の懐に飛び込み、一刀にてクリピクロウズを斬り裂く。
 容赦ない全力の一撃だったが、クリピクロウズは桜吹雪に翻弄されなかったようだ。
 それでも極めて回避が困難な一撃だったことに違いはない。
 アーサーはツインドリルランスの真価を発揮させた。
 二股に分かれたドリルの刃がアーサーのマテリアルを帯びて、それぞれ赤と青に発光し、ゆっくりと回転を始める。
 次第に回転速度が上がるにつれ、強い振動と轟音をツインドリルランスが発し始める。
 暴れ出しそうになるそれをしっかりと保持し、アーサーは高速回転するドリル部分をクリピクロウズに叩き込んだ。
 直撃した部分から、クリピクロウズの肉体が捩れる。
 ドリルの回転に引きずられているのだ。
 まだアーサーの攻撃は終わらない。
 この状態から、ツインドリルランスの魔法的強化解除を代償に、オーラを解放した。
 魔力によりドリルの回転はさらに加速し、捩れたクリピクロウズの身体をさらに巻き込み、最終的に大きな風穴に広げた。
 レイオスは近付くスケルトンたちを闘旋剣を振り回してまとめて薙ぎ払いつつ、クリピクロウズに大きく踏み込みながら闘旋剣を突き出し、鋭い刺突を一閃する。
 エスクが追随し、レイオスの攻撃に合わせて追撃を行う。
 クリピクロウズに対しても多少の能力低下は覚悟で魔法威力を重視し、隙を作るようにマテリアルライフルを撃たせた。
 ユーリが駆けつけ、剣魔クリピクロウズ本体と相対する。
 再び蒼姫の剣が舞い、別の型を見せる。
 白銀の雷をまとって輝く蒼姫刀を握り締めると、ユーリは、雷光を思わせる速度の踏み込みを小刻みに繰り返し、斬撃を縦横無尽に叩き込んでいく。
 その剣舞はまるで暴風のようで、蒼き雷のような姿を凄烈に示し、蒼姫刀の美しき舞でその証を苛烈に刻み付けた。

●本当の戦い
 巨大スケルトンを仲間たちが撃破した少し後、クリピクロウズの広範囲幻惑能力が四体同時に発揮される。
 攻撃せずに即座に距離を取ることを優先したものの、範囲内からは逃れられず、リリアはとっさに絶火槍を投擲して自らのマテリアルを紐づけ、加速を受けることで難を逃れた。
 突然、ユーリはオリーヴェの上から振り落とされた。
 見てみれば、オリーヴェの様子がおかしい。
 困惑の鳴き声を上げて、ユーリとクリピクロウズたちを交互に見つめている。
 その様子は否応なく陽に警戒心を抱かせた。
 機導浄化術を試した陽だったが、上手くいかなかった。
「……やっぱり、マテリアル由来の汚染じゃないのか」
 どうやら、失敗したようだ。
 ユーリはオリーヴェを叱咤した。
「しっかりしなさい! 敵はまだまだいるわよ!」
 びくりと身体を震わせたオリーヴェは、何かを払うかのように二度三度首を振ると、歯を剥き出しにしてクリピクロウズたちを睨みつけた。
 まだ巨大スケルトンが残っていたら魔導ヘリコプターに装着している小型ミサイルランチャーでも撃ち込んでやろうかと思っていたが、杞憂だったようなのでフィロは予定を変更する。
 一応手を付けられないほど大量に召喚され始めたら新型のプラズマロケットランチャーを撃ちこむことも考えていたが、これも行わずに済んだ。
 特に煙幕を展開した箇所で仲間の攻撃の邪魔をしないように、クリピクロウズに近づきすぎないよう注意しながら、フィロは魔導ヘリコプターを飛ばしている。
 ようやくクリピクロウズ本体が一体倒れると、残りの三体の雰囲気が変わる。
 何をしてくるか分からないので、一同は一度後退し陣形立て直す安全策を取った。
 攻撃を強行しても攻撃耐性でいなされる恐れがあるし、速攻をかけても息が合わなければ返って危険だ。
 残った他のクリピクロウズたちから負のマテリアルが吹き出した。
 ユーリはオリーヴェに幻獣としての力を解放させ、上昇させた身体能力で一気に距離を取ろうと試みた。
 クリピクロウズたちの様子がオリーヴェにまで悪寒をもたらし、離脱の判断を取らせる。
 急いでボルディアもヴァーミリオンに騎乗し、引き撃ちさせながら後退する。
 十分な距離を取り、ヴァーミリオンが背負う獣機銃、幻獣用キャノンで次々に召喚されていくスケルトンを銃撃、砲撃を行う。
 ヴァーミリオンで崖の上に上がれるかと思ったが、生憎補助なしで上がるには崖が高過ぎるようだ。
 まあヴァーミリオンの移動能力なら引き撃ちに支障はないので、そのまましばらく敵の様子を観察する。
 剣魔クリピクロウズ本体が一人倒れ、巨大スケルトンも倒れた。
 残された三人の本体がまとう異様な雰囲気を察して、封印術の負担から逃れた奏音はゼフィールを駆りその場から後退を決める。
 その多くはマテリアル活性化の影響内にいたこともあって、大した問題はなかったものの、ユーリがワンテンポ遅れ、幻惑に取り込まれかけた。
「なら、これは返させていただきます!」
 とっさに奏音がマテリアルによる不調を跳ねのけることで幻惑効果そのものをシャットアウトし、それをクリピクロウズ本人へと移し替える。
 さすがに自分の幻惑に引っかかりはしなかったが、取り込まれかけた仲間を正気に戻すことができた。
 もっとも放っておいても自力で正気に戻っただろうが。
 後続の前衛や範囲攻撃の邪魔にならないように、ゴルラゴンを飛び退かせて場所を譲ったアーサーは、一体目のクリピクロウズが消滅したのを確認すると、他のクリピクロウズ本体たちの変調を感じ取り、一度撤退を選択した。
 撃破後は、攻撃耐性が本体全員で共通なら生命力を消費させるために消耗戦、別々なら早期撃破のどちらかにしようと思っていたのだが、この状況で取り残されるのはあまり良くない。
 確認するタイミングは他にもあると考え、念のため消耗戦に移行した時のことを考え、力を温存しておくことにした。
 一体目のクリピクロウズを倒した直後、残った三体の様子が変わったのを見て、セレスティアはすぐに詠唱を始めた。
 高い集中力で完成された法術が発動する。
 大いなる祝福が、セレスティア自身とリュー、あともう一人にもたらされる。
 発動が早いのは当然だ。
 これは既にかかったものを治すのではなく、備えを目的としている。
 クリピクロウズが一体倒れると、巨大スケルトンが倒れた時と同じような悪寒が走り、リリアは即座に逃げ出し身を隠した。
 幸い余裕を持って行動できたので無理なく逃れることができ、引き撃ちする面々とはやや逸れた方向で身を隠し、確実に本体が狙えるタイミングを窺う。
 巨大スケルトンは撃破され、剣魔クリピクロウズの一体目もほどなく撃破が完了すると、フィーナは味方が陣取る予定の崖まで退避する。
 ──私たちは、あなたの敵じゃない。
 ──むしろ、私たちはあなたの理解者。
 ──辛いこと、悲しいことは全て忘れて、一つになりましょう。
 案の定、三人掛かりによる広範囲の幻惑が振りまかれた。
 一体目のクリピクロウズが倒れたことを切欠に、三体のクリピクロウズが幻惑を用いてハンターたちに干渉してきたのだ。
「させません!」
「お断りして、返品しますぅ。キャハ♪」
 合計三つの幻惑を、一つは奏音が、もう一つをハナが無効化し、打ち消す。
 生憎移し替えの方は奏音と同じく失敗してしまったものの、無効化さえできたなら最低限の仕事は果たせたといえるだろう。
 それでも一つは通してしまっているため、ハナは全力で離脱した。
 紅狼刃で一気に詰め寄り、クリスピロウズを一体叩いた後、一旦引いたリューは幻惑に耐えつつ、引き撃ちを行う面子を護衛し接近してきた敵を叩いていく。
 クリスピロウズが召喚するスケルトンは本人も消耗するが故に有限とはいえ、中々の量が沸くため、適度に間引かなければ取り返しのつかない事態になる恐れがある。
「魔法で数を減らして、一気に接近するか?」
 提案してみるものの、もう少し待つことになった。
 紅狼刃が鼻を利かせて警戒している間、リューは星神器にマテリアルを込め、慣れた動作で衝撃波を飛ばした。
 狙うのは当然、スケルトンたちだ。
 引き撃ちも立派な間引き作業である。
 Uiscaはこのまま速攻をかけたかったが、この時点では攻撃耐性が共通なのか個別なのかまだ判別がつかず、判断に踏み切れなかった。
 道を塞いでいるスケルトンたちを暗色の龍爪や龍牙で蹴散らし、血路を開くと、撤退を開始する。
 クリピクロウズたちが三人同時に幻惑を振りまき、二体は符術によって妨害され、もう一体の幻惑も銀雫が張った結界のおかげで大事には至らなかった。
 それでも被害は皆無というわけにはいかなかったが。
 一度後退して陣形を立て直す。
 キヅカの指示の下、前衛を殿に一度距離を取り前衛、後衛を組み直した。
 攻撃に対する回避の上昇が個体別だった場合は一体ずつの撃破に変更したいが、生憎どちらかに確定できる結果は得られなかった。
 これから改めて行う必要がある。
 溢れ出したスケルトンたちに対し、陽はペガサスに乗ったまま光でできた三角形を作り出し、その頂点一つ一つから光を飛ばす。
 囲まれても慌てず、背に白龍にも似た虹色の翼が広げ、白竜のドラゴンブレスのような閃光で直線状を薙ぎ払った。
 白龍は争いに長けた龍ではなく、あくまでも戦闘を停止させるために力を振るったといわれている。
 陽が放った光線も、意識を混乱させる方にどちらかといえば主目的を置かれているものだ。
 案の定スケルトンたちは統制が完全に崩れており、陽は囲みを突破することができた。
「エスク、退路を作れ!」
 後退する際にレイオスは命じ、自動兵器を動かすマテリアルの力を近接能力方面に偏らせることでエスクを強化する。
 偏りの結果一部の能力は低下してしまうが、そのリスクを背負うだけの効果はある。
 さらにレイオスからマテリアルの供給を受けることで、エスクは最大出力を発揮する。
 能力強化はレイオスとの連携が必須であり、大幅に距離が離れると効果は中断されてしまうが、今回その心配は必要なさそうだ。
 その場で回転し斬魔刀を用いて、さらにフォトンオーラを周囲に発し、スケルトンたちを薙ぎ払い、弾き飛ばす。
 スケルトンたちからはなるべく隠れ、攻撃されれば回避を試み、それでも無理なら銀雫は獣大爪で、Uiscaはシールドで防御する。
 白龍へ祈りの歌を謡うことで白龍の幻影を纏い、白龍の力を借りて治癒を行う。
 術を発動させた瞬間、白龍に酷似した角や尾がUiscaの肉体に顕現した。
 エラは機導浄化デバイスを用いた浄化術を発動する。
 幻惑による不調をカートリッジに吸収し、取り除く。
 使用済みカードリッジを適切に処置し、新しいカードリッジをデバイスに挿入した。
 処置は剣魔対応を行う前衛、幻惑を解除できる仲間を優先した。
 物には優先順位というものがあるのである。
 余裕があれば、もちろん他の者にも行うつもりだが。
 歩行していた山葵が飛行する。
 引き撃ちが始まったのだ。
 山葵は風の魔法を操り、指定地点に小型の竜巻を発生させ、味方の一時退避を支援する。
「一旦退くっすよ! 足が無い奴は早く乗るっす!」
 希望者を乗せ、神楽は魔導トラックを操作し魔導エンジンの出力を上昇させた。
 魔導エンジンが唸りを上げ、魔導トラックは加速する。
 崖を目指して走る魔導トラックを、神楽はタイヤ部分を変形させ、魔導エンジンから供給されるマテリアルエネルギーを噴射することで一時的な大跳躍を行った。
 飛行と表現して差し支えないほどの高さを稼ぐそれを、神楽は非常に高度で繊細なマテリアルコントロールで成功させた。
 魔導トラックを空に飛ばすことにロマン以上の意味はない。
 だがやればできる。そういうことだ。
「トラックが飛べないと誰が決めたっす!」
 崖の上に希望者を降ろし、残りを乗せて神楽は魔導トラックで崖を降り、引き撃ちに参加した。
 一体が倒れ、後退のタイミングが来る。
「皆下がれ! お互いがフォローを受けられる位置を保つんだ!」
 拡声器で叫びながら、キヅカは前衛として味方を護りつつ殿を務める。
 偶然の回避で試行を妨げられないために、キヅカはきびきびとした迫力のある歌とステップを行うとともに、静かな鎮魂歌に聞こえる旋律を奏で歌い上げた。
 一体目のクリピクロウズが討伐されたので、マリィアも一時戦線移動する。
 後退し態勢を整えると、範囲攻撃が止んだ後に炎がスケルトンたちに近付いていく。
 スケルトンが相手もでも炎のするべきことは変わらず、することといえば構えて抜いて斬る。言葉にすればそれだけだ。
 アニスが舌打ちする。
「ちっ。やっぱり元を断たないとジリ貧だな」
 首尾よく本体一体と巨大スケルトンを倒したはいいものの、次から次へと召喚されるスケルトンたちに押され、一行は崖にまで追い詰められた。
 統制まで失ったわけではないのが救いか。
 技術的な対空攻撃対策はもちろん、飛行戦闘や空間戦闘などにおける適性、覚醒者ならではの第六感じみた反応により、特殊な状況に機体を適応させることができるので、アニスたちCAM乗りはまだ一人も脱落していない。
 巨大スケルトンが倒れ、剣魔クリピクロウズも一体が倒れた。
 それ以来巨大スケルトンが再召喚される気配はなく、剣魔クリピクロウズたちは通常のスケルトンたちを召喚し続けている。
 それはそれで大変な物量であり、結構な脅威であることに間違いはないものの、それは同時に召喚でクリピクロウズ本体が消耗しているということでもあり、適当に間引いていれば勝手に疲弊してくれそうだ。
 対話による解決を捨てた以上、クリピクロウズは群体にものをいわせて無理やり力でねじ伏せる以外に方法がない。
「いいぜ。そっちがその気なら、俺も覚悟決めてやるよ」
 アニスの感覚が拡張され、機体と一体化していく。各種計器やカメラが映し出す映像、情報が網膜に直接投影され、脳への情報書き込みが行われた。
 同時に反射強化も行われ、脳への負荷が非常に大きく、アニスは歯を食いしばって痛みを堪え、この副作用を耐えた。
 メインカメラが赤く発光し、各部から噴出したマテリアルが赤光と緑光の軌跡を描く。
 即座にアウレールは前線の退却支援に入る。
 目標をスケルトンに変え、直線突破口の形成を図り、崖上に移動して今度は上から撃ち下ろす。
 スケルトンたち榴弾を撃ち込み、召喚による消耗を狙った。
「この程度で!」
 幻惑の影響で異常を示すアラドヴァルのコンピュータに対し、キャリコは異常部分に再起動をかけて正常化させることで対処した。
 これもまた、パイロットに必要なダメージコントロール技術の一種である。
 次々に召喚されるスケルトンたちへの対処を行う。
 蒼姫の剣の型のうち、刺突の型で複数体巻き込む形で攻撃し、二体目以降のクリピクロウズに攻撃を仕掛ける機を窺った。
 幻惑を即座に振り払った真は、己を背に乗せるレグルスの様子を確認する。
 問題ないことを真に告げるかのように、レグルスは勇ましく一鳴きしてみせた。
 方針通り後退し態勢を立て直す間、既に三体のクリピクロウズたちは無数のスケルトンを召喚していた。
 大量のスケルトンが召喚され続ける。
 次から次へと押し寄せてくるスケルトンたちを、なるべく多く範囲に入れて光の結界術を張り、溢れる光で焼き尽くす。
「……単調作業ですね」
 ゼフィールもそうだが、イェジドの機動力であればスケルトンたちを引き離すのは難しくなく、ゆっくりと剣魔クリピクロウズの本体たち三人が召喚で弱っていくのを待つことができた。
 幻惑を受けた人のためにも法術を用意していたが、三体のうち二体はほぼ確実に符術によって無効化されるため、実質警戒する必要があるのは一体だけだった。
 当然符術を発動させる回数には限界があるのでいつまでもというわけにはいかないが、セレスティアにかかる負担は当初想定していたよりも遥かに少ない。
 一体の幻惑に運悪くかかってしまった味方に、セレスティアは法術を発動させ祝福を与え、異常を取り除く。
 その後セレスティアは自分を乗せるイェジドを後退させ、態勢を整える。
 同時に生まれた時間を使い、仲間の間を駆け回り、怪我人に対して法術を行使する。
 マテリアルの力を大きく引き出し、祈りを捧げて強くも暖かい光を生み出し怪我人を包み、癒していく。
 祈りの力を強く広げ、一度倒れた者さえ立ち上がらせるほど強力な治癒を施すことも考えたものの、幸いというべきか、その必要に迫られる機会はまだ訪れていない。
 巨大スケルトンとクリピクロウズ本体が一体倒された後もフィロの取るべき行動にあまり変化はなく、他の味方がクリピクロウズ本体に注力している間、ひたすらスケルトンの相手をする。
 ここまで来ると魔導ヘリコプターに乗ったままではかえって戦いにくいので、降りて直接殴り合う。
 ガードマン兼用とはいえ、メイド型のオートマトンがスケルトンの群れと一歩も引かずにやり合うのは何か不思議な雰囲気があるが、フィロはいたって真面目に戦っている。
 巨大スケルトンとクリピクロウズの一体が倒れた後の消耗戦で、レイオスはバリスタで引き撃ちを行う。
 悪役みたいで気は引けるものの、街や再現歪虚を攻撃して剣魔の気を引き隙をできないか試みる。
「お前の大事な平和が守れてないぞ?」
 クリピクロウズは反応を見せないものの、心なしかスケルトンたちの敵意が増したような気がした。
 消耗戦に移行しつつ、クリピクロウズたちの攻撃耐性を探る。
 スケルトンもどうせ処理しなければならないし、倒していけば勝手にクリピクロウズたちは疲弊していくだろう。
 キヅカは打って出るタイミングを窺う。
「チャム、回復頼む」
 入れ替わりでペリグリー・チャムチャムに皆の治療を行わせる。
 中央には崖がそびえ立っている。
 登ることができれば高所から有利が取れそうだ。
 リーリーは飛べない鳥ではあるが跳躍力は高い。
 この跳躍力と、騎乗しているハナがマテリアルを供給することで、リーリーは跳躍から飛行状態に移ることができる。
 転移能力があるクリピクロウズ本体なら崖の上まで追ってくるだろうが、スケルトンに対しては一先ず安全地帯と考えて良さそうである。
 ハナとリーリーも今のうちに怪我の治療をしておくことにした。
 撤退完了後の大量スケルトンの対処は、レイオスとエスクは共に協力して行った。
 人間と機械でありながらその連携は中々のもので、確実にスケルトンを減らしていく。
 レイオスとエスクだけならそれでも焼け石に水だったろうが、頼りになる仲間が大勢いるので、むしろ倒し尽くす勢いだった。
 スケルトンを大量に狩ったおかげで、クリピクロウズたちも消耗したようだ。
 そろそろ頃合いだろう。
 仲間たちに倣い準備に入った。
 PzA-3 ユックユックが空になったプラズマキャノンの弾倉に、背嚢から追加の弾薬を取り出し、次弾を装填した。
 無論、操作しているのはアウレール自身である。
 これにより継続的な砲撃戦闘が可能となったPzA-3 ユックユックは、プラズマキャノンを構え貫通徹甲弾を発射する。
 砲撃は過たずクリピクロウズAに直撃した。
「ふむ。こちらは命中……ならば」
 次にクリピクロウズAと、位置取りを変え射線上にクリピクロウズBも入れて、貫通徹甲弾による砲撃を放つ。
 クリピクロウズAはまるで未来を予測したかのように回避したが、クリピクロウズBにはまともに命中した。
「なるほど。個体ごとというわけか」
 耐性共有の有無を確認したアウレールは、PzA-3 ユックユックのコンピュータに各個体への攻撃した人物と攻撃手段などを全て記録し、定期的に通信で流して周知させることにした。
 スケルトンたちを蹴散らしながら、アニスは味方の様子を窺う。
 強引にポジションを効率よく撃破できる場所に移動させたことで、効率が下がって飽和気味になっていたスケルトンたちの数が少しずつ減っていき、味方が息を吹き返すのを、モニター越しに見て取る。
 ようやくアニスにも余裕の表情が見え始める。
「よし。余裕が出てきたな」
 本体同士で耐性情報を共有しないということも分かって、戦いの趨勢は一気にハンター側へと傾いた。
「どうして……拒むのですか……」
「ハッ。そもそも俺はそんなのに興味ねえんだよ」
 マイクが拾ったクリピクロウズの戸惑いを、コックピット内のアニスは鼻で笑い飛ばした。
 合流した真は早めにクリピクロウズ本体のうち一体をさらに落としにかかる。
 散発的に攻撃してしまうとそれぞれの攻撃パターンを学習され、攻撃を読まれて回避されてしまう恐れがある。
「注意してくれ……!」
 同時に真は試行錯誤する。
(四体全てで学習が共有されるかはわからないから、本格的な攻撃に移る前に、一度試してみようかな……?)
 しかしその心配は杞憂に終わった。
 本体同士で学習は共有されないことが発覚したのだ。
 アウレールは砲弾の種類や武器の種類を切り替えながら、耐性を発動させずに攻撃する。
「次弾はまだまだあるんだ!」
 バリスタの精霊と協力して次から次へと徹甲榴弾相当の矢を補充するキャリコが駆るアラドヴァルは、矢弾切れの心配はもうしばらくなさそうだ。
 機を見逃さず、ユーリは再び仲間たちと攻撃に転じる。
 全く同じ型を使ったが。既に当たっている個体には避けられたものの、当たっていない個体には普通に一体目と同じく命中した。
 やはり、共有されていない。
 リューと連携し、彼の背中を守るようにしてセレスティアは戦う。
 イェジドは嗅覚や聴覚を駆使した総合的な追跡能力で、残ったクリピクロウズたちの位置を感知しようと試みたが、これが中々上手くいかない。
 成功する可能性も皆無ではないはずだが、今回は単純に運がなかったようである。
 何事も上手くいくとは限らない。
 再び魔導剣を魔法剣にした真は先ほど巨大スケルトンを相手にしたのと同じ二刀による怒涛の斬撃を叩き込み、オーラによる刃の追撃へ繋げた。
 さらに魔法剣の全魔力を解放する。
 解放された魔力はオーラとなり、既に加速している一撃を、限界を超えてさらに加速させた。
 二重に加速を受けた魔導剣が、視認も許さぬ速度で剣魔クリピクロウズのうち一体を襲う。
 桜吹雪の幻影に巻き込まれたクリピクロウズたちは、全く意に介さなかった。
 学習したというわけではなく、素で抵抗されたようだ。
 レグルスも攻撃に参加し、咆哮を放ち支援する。
 さすがにクリピクロウズ本体を委縮させるほどではないが、それでも分体スケルトンたちを影響下に置き、十分仕事をした。
 殺到するスケルトンたちを、レグルスは余裕を持って避け間合いを取る。
 危機は同時にチャンスでもある。
 続けて真は己の星神器に宿った力を解放した。
 真を中心に周囲の認識と現象を書き換える結界が展開され、強固な守りと攻撃に対する加護を付与した。
 増えに増えたスケルトンをあらかた間引いたところで、疲弊した残りのクリピクロウズたちの撃破を狙い、ボルディアが戦闘を再開する。
「レクイエム、頼むぜ!」
 歌と踊りで高めたマテリアルを更に練り上げ、魔法の歌の効果を共鳴させたヴォルディアは、新たにきびきびとした迫力のある歌とステップを詠唱とし、クリピクロウズ本体たちのマテリアルを威圧しようと試みた。
 無事攻撃耐性は共有しないことが確認されたので、アーサーもまた一斉攻撃に参加する。
 双龍剣による剣部分と棍部分の使い分け、ツインドリルランスの槍形態やドリルとしての機能、さらには生体マテリアルを流し込むことによる魔法的強化の有無など、巧みに使い分けて学習の隙を与えない。
 さらにはゴルラゴンも攻撃参加し、狼牙、獣槍、龍爪による通常攻撃の他、マテリアルを牙に込めてクリピクロウズの肉体を噛み砕いたり、勢いをつけてクリピクロウズに飛びかかるなど、同じく多様な攻撃を行った。
 その際、下半身の召喚結界を狙って、結界への干渉やその結果としての召喚妨害が可能か試してみたものの、あまりはっきりとした効果は分からなかった。
 何度か幻惑をくらいかけたものの、その都度仲間が上手く対処してくれたので、厄介な状態異常に陥ることもなく、落ち着いてアーサーは戦うことができた。
 結局目視で発見し、セレスティアは再戦となった。
 幻獣としての力を解放し、イェジドが一時的に身体能力を高める。
 オーラを纏った姿は大幻獣フェンリルのようで、不思議な優美さがあった。
 肉体への負担は大きいが、それだけの価値はある。
 追加で召喚されるスケルトンたちが攻撃してくる。
 回避したイェジドはセレスティアを乗せたままその場を飛び退き、距離を取って回避するとそのまま残るクリピクロウズたちの死角に回り込もうと移動する。
 全てのクリピクロウズ本体が倒れるまで、セレスティアはリューを支援し続けた。
 二匹目さえ倒してしまえば、状態異常対策は簡単だ。
 奏音とハナの符術で状態異常を無効化し返すだけで事足りる。
 返した呪詛は相変わらずあっさり抵抗されてしまうものの、その前の幻惑の無効化こそが狙いであり、タイミングさえ分かっていれば合わせるのは難しくない。
 後はリーリーに全力移動でヒット&アウェイさせつつ、符の結界による光で焼くのみである。
 剣が届く間合いにまで近付くと、リューは紅狼刃から飛び降り別行動を取った。
 移動が必要になったら呼び戻して再び乗るつもりだ。
 武器に覚悟を込めたマテリアルを宿す事で魔法剣化させ、己の魂に同化させる。
 宿ったマテリアルが、刀身に篝火を模した紋章を描き、陽炎の如く立ち昇った。
 剣魔クリピクロウズに対し、リューは攻撃を仕掛ける。
 披露するのは紋章剣『天槍』と呼ばれる技だ。
 大量のマテリアルと共に星神器が前方に突き出される。
 輝きと共にその切っ先が伸びていき、剣でも槍を超える射程が形成された。
 その正体はオーラだ。
 竜の頭部を後頭部まで貫いたとされる技は、ここでも正常に威力を発揮した。
 学習による攻撃耐性も、データがある程度出揃ってしまえば大した脅威ではない。
 一度見せた攻撃に対する反応も、その速度にこそ驚かされるものはあるが、それ故引っ掛けにかかりやすい。
 実際一度見た紋章剣『天槍』を回避しようとしたクリピクロウズは、それが今度は魔法攻撃に変換されているということに気付かず、二撃目をまともに貰った。
 クリスピロウズがリューに対し近接の間合いに入る。
 リューは紋章剣から『双樹』を選択する。
 星神器と超々重鞘を片手にそれぞれ持ち、別個の生き物の様に操り攻撃を仕掛ける。
 マテリアルの輝きを乗せた二振りは、無数の星のごとき輝きを軌道上に散りばめた。
 紋章剣『星竜』が発動する。
 散りばめられた星を食らいながら、光纏う竜が現れクリピクロウズに襲いかかり、クリピクロウズのその姿を飲み込んだ。
 次の状態異常に対しても危なげなく対処をした仲間たちは、自然とリューの近くへ集まってきていた。
「そろそろ仕掛けます。あの色の個体に封印術をかけるので合わせてくださいね」
 続いて奏音がクリスピロウズに対し封印術の行使を決め、慎重に、クリピクロウズに対して封印を試みる。
 一体分召喚されるスケルトンの数が減るので、試行には値千金の価値がある。
 成功したが当然動けず、回避は全てゼフィールに任せ、奏音自身は封印術の維持に努める。
 ゼフィールも上手く間合いを取って安全圏を維持してくれた。
 そこへすかさずリューは大精霊の力を借り「世界」の物理法則を書き換える。
 味方の傷を癒し、彼らと同じだけの力を分け与える。その剣はたった一人の英雄を作るためではなく、その力を分け隔てなく広めるためにある。
 範囲内のハンターたちだけでなく、幻獣やCAM、オートソルジャー、魔導トラックや魔導ヘリコプターにまで全て付与する形だ。
 ここから反撃が始まった。

●打倒せよ
 もう恐れることはない。
 反撃の時は来た。
 Uiscaが歌い、銀雫が幻影の結界を張り、今度こそ速攻を仕掛ける。
「さぁ、今こそ反撃のときです!」
 クリピクロウズに銀雫が獣大爪による通常攻撃を仕掛けた。
 さらに上空から急襲し、離脱するヒット&アウェイの攻撃を行う。
 最後はUiscaが自ら前に出て、星海へと立ち昇る翡翠色の光を放つ。
 発する光は波動となり、光の龍へと姿を変え、魂が震えるほどの衝撃を与えた。
 移動の妨害はクリピクロウズに転移能力があるからか、決まってもあまり効果がないようだ。
 魔杖に魔力を注ぎながら、フィーナは待ち続けた。
 同時に多重魔法陣を起動し、粒子ビームを残りのクリピクロウズたちに向けて薙ぎ払う。
 その後はSchwarzeに乗って飛行し、急加速して接近し聖魔杖で本体に冷気の嵐を放つ。
 できなければスタッフで本体狙い火球を放っては、上空に離脱を繰り返した。
 残るは三体の剣魔クリピクロウズのみである。
 既に攻撃耐性を共有していないことも割れた。
 突入路確保に、山葵は風の魔法を操り、指定地点に小型の竜巻を発生させた。
「散れ、散炎」
 同時にエラがマテリアルを集中させ、扇状に炎の力を持った破壊エネルギーを噴射する。
 ワイバーンはクリピクロウズには接近させず、Gacrux自身は蒼機槍を薙ぎ払ってスケルトンを駆除する。
 一体目が撃破された後、飛び上がりワイバーンのブレスで自軍の退路を開く。
 スケルトンたちに対し、ワイバーンを地上で自立状態にし、ブレスで掃討させる。
 突撃を開始する味方に合わせ、アラドヴァルを駆りキャリコは機体の飛行性能と己の操縦技術をいかんなく発揮し、爆発する矢をばらまいて突入支援を行い、突入路を開削していった。
 それでできた空間に、仲間たちが突入して活路を切り開いていく。
 スケルトンのまぐれ当たりが発生したが、山葵の防具は優秀で、その攻撃をほとんど通さなかった。
 陽は錬魔剣とシールドを構えると白兵戦を仕掛け、己のマテリアルを活性化させて体と錬魔剣にまとわせ、魔力を込めて振り下ろす。
 回避しようと身体を動かしたクリピクロウズは回避し切れず、直撃を受ける。
 攻撃耐性も、要は別の攻撃を行えばいいので、一度距離を取ってもう一度光の三角形を作り出し、三つの光弾を飛ばした。
 魔導銃に持ち替え、さらに銃撃する。
 ワイバーンが急加速と共に攻撃目標をクリピクロウズに定め、リリアは奇襲攻撃を行った。
 このまま騎乗したまま攻撃しても当たらないと考え、素直に降りて攻撃を仕掛けた。
 いざとなれば、ワイバーンに投げたものにマテリアルを紐付け飛び乗るのもいいかもしれない。
 集中攻撃には、当然まよいも参加する。
 精神を集中させたまよいの身体の周囲にマテリアルが集まってくる。
 そのマテリアルを感じ取ったまよいは、そのマテリアルを取り込み始めた。
 マテリアルを魔力に変換し、攻撃魔法を組み立てる。
 水と地の力が次々に射出された。
 皆が狙った一体に二つの力が殺到し、無数の氷柱と岩柱となって具現化する。
 まるで磔になったかのような状態のクリピクロウズだったが、何事もなくずるりとそこから這い出てきた。
 どうやら行動の自由を妨げるとまではいかなかったようだ。
 まよいの魔法の矢が三本、クリピクロウズたちへ降り注ぐ。
 トラオムが精霊に祈りを捧げ、マテリアルの力を引き出した。
 柔らかい光が傷を包み、癒していく。
 再突入のタイミングが来る。
 突入前に、神楽は魔導トラックに搭載した対歪虚用試作弾頭の発射準備に入った。
「少し早いけどクリスマスプレゼントっす!」
 クリピクロウズたちの中心に向かって巨大なクリスマスツリー型のミサイルが発射される。
 爆発すると同時に色とりどりの花火を発生させ、鮮やかなクリスマスツリーを大空に描いた。
 神楽は魔導エンジンの出力を臨界近くまで持っていく。
「剣魔行き特急発車の最終便っす! 早く乗るっす!」
 加速する魔導トラックが爆走し、剣魔クリピクロウズたちの元に向かう。
 再び大跳躍を見せた魔導トラックの上で、神楽は全てのドアを開いた。
「今っす、飛び降りるっす!」
 味方を送った後は、神楽は他の味方を回収に向かい、クリピクロウズたちの近くまで連れていく運搬役を担った。
 全ての味方が戦闘に参加するのを確認し、神楽も離れた位置にトラックを置いて戦闘に加わる。
 祖霊や精霊の力を引き出し周囲の味方へ分け与え、幻影の触手で再びクリピクロウズの一体を縛り上げ引き寄せた。
 マリィアもクリピクロウズへ射撃を行った。
 大型魔導銃の銃器と魔導機械という二種属性を使い分ける。
 炎もまた飛び出し、剣魔クリピクロウズに攻撃を仕掛けた。
 構えは攻撃をひたすら一辺倒に突き詰めたもの。攻撃こそ最大の防御とばかりに、いっそ潔いほどに特化している。
 再び炎に包まれた花びらによる桜吹雪の幻影が発生する。
 相変わらずクリピクロウズに効いてくれる様子はないが、構わない。
 精神を研ぎ澄まし、構えた状態から神速を発揮し超人的な反応速度で懐に飛び込み、聖罰刃を振り抜いた。
 全力の一刀だったが、クリピクロウズはやはり桜吹雪に翻弄されてはくれなかったようだ。
「剣魔は滅するのみだ!」
 叫ぶ炎の攻撃が、クリピクロウズを襲う。
 攻防は、クリピクロウズに軍配が上がったようだ。
 剣魔クリピクロウズが、まるで未来を予知するかのように、炎の斬撃を回避しようとする。
 無駄のない美しい動きだった。
 しかし、ここで炎の技が冴え渡る。
 渾身の一撃。
 会心の手応えを感じた炎は、全力で聖罰刃を振り抜いた。

●激闘の終わり
 スケルトンも一匹一匹はそれほど強くないが、数の暴力で少しずつまぐれ当たりが積み重なり、フィロの身体にもいくらか損傷が見られてきた頃、事態に動きがあった。
 それ以上スケルトンが増えなくなったのだ。
 剣魔クリピクロウズ本体四体が、全て倒されたのである。
 その後、仲間たちが合流してきた。
 後は残ったスケルトンたちを倒せば終わりだ。
 まよいの魔法の矢が飛んでいく。
 五本の矢はスケルトンたちに突き刺さり、彼らを塵に返した。
 リーリーを走らせスケルトンたちの密集地点に符術で結界を張り、光で焼く。
 後は周辺にぽつんと残っているぼっちスケルトンたちをハナがリーリーと一緒に蹴りまくって終わった。
(各地へソードオブジェクトを射出した源は……邪神と同様に剣魔が記憶や情報を収集、記録した神霊樹だったりするんだろうか? なら、それを叩かないと、剣魔はその記録からいくらでも復活する?)
 推測が当たっているかどうかはともかく、陽は脱出するまでの間、異界となったラズビルナムを観察するのだった。
 戦闘が終わった後で、リリアは少し思う。
「もっと早く出会いたかったのよ」
 剣魔クリピクロウズという存在が消滅したわけではないが、何かしら思うところのあるリリアだった。
 最後にペリグリー・チャムチャムとトラオムが午睡を誘うような優しい旋律の曲を演奏し、歌声を響かせる。
 ゆったりとした旋律で、聞くだけで癒される、そんな歌だった。
 ラズビルナムを脱出する。
 こうして、今回の依頼が終わった。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 54
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸ka0038
  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌスka0239
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよいka1328
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェストka2419
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラントka2531
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacruxka2726
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベルka3142
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音ka5754
  • 覚悟の漢
    南護 炎ka6651

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ペリグリー・チャムチャム
    ペリグリー・チャムチャム(ka0038unit004
    ユニット|幻獣
  • 赤黒の雷鳴
    アニス・テスタロッサ(ka0141
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    アールセブンエクスシア
    オリアス・マーゴ(ka0141unit004
    ユニット|CAM
  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    オリーヴェ
    オリーヴェ(ka0239unit001
    ユニット|幻獣
  • 蒼き世界の守護者
    アーサー・ホーガン(ka0471
    人間(蒼)|27才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ゴルラゴン
    ゴルラゴン(ka0471unit002
    ユニット|幻獣
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    キラリ
    銀雫(ka0754unit005
    ユニット|幻獣
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    イェジド
    ヴァーミリオン(ka0796unit001
    ユニット|幻獣
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    トラオム
    トラオム(ka1328unit001
    ユニット|幻獣
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽(ka1442
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ペガサス
    ペガサス(ka1442unit014
    ユニット|幻獣
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    エスク
    エスク(ka1990unit007
    ユニット|自動兵器
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    魔導トラック
    魔導トラック(ka2032unit001
    ユニット|車両
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    クロハ
    紅狼刃(ka2419unit001
    ユニット|幻獣
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    パンツァーアルティレリー
    PzA-3 ユックユック(ka2531unit008
    ユニット|CAM
  • 淡光の戦乙女
    セレスティア(ka2691
    人間(紅)|19才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    イェジド
    イェジド(ka2691unit003
    ユニット|幻獣
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    ワイバーン(ka2726unit004
    ユニット|幻獣
  • それでも尚、世界を紡ぐ者
    リリア・ノヴィドール(ka3056
    エルフ|18才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ワイバーン
    バリアント(ka3056unit001
    ユニット|幻獣
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ヤマアオイ
    山葵(ka3142unit005
    ユニット|幻獣
  • ゾファル怠極拳
    ゾファル・G・初火(ka4407
    人間(蒼)|16才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    スージーチャン
    スージーちゃん(ka4407unit007
    ユニット|CAM
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    アラドヴァル
    アラドヴァル(ka5044unit004
    ユニット|CAM
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    ゼフィール
    ゼフィール(ka5754unit001
    ユニット|幻獣

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    レグルス
    レグルス(ka5819unit001
    ユニット|幻獣
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    リーリー
    リーリー(ka5852unit006
    ユニット|幻獣
  • 丘精霊の絆
    フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
    エルフ|20才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    シュヴァルツェ
    Schwarze(ka6617unit002
    ユニット|幻獣
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士
  • ユニットアイコン
    マドウヘリコプター「ポルックス」
    魔導ヘリコプター「ポルックス」(ka6966unit003
    ユニット|飛行機

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/11/26 00:59:58
アイコン 質問卓
夢路 まよい(ka1328
人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2018/11/24 10:37:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/23 09:37:34