恋とか愛とかその他とか

マスター:KINUTA

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
締切
2018/11/26 19:00
完成日
2018/12/03 01:10

みんなの思い出

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オープニング

●某出版社オフィスで



 ハンター兼画家の八橋杏子はこの度縁ある出版社から、とある企画に参加してくれないかとの申し出を受けた。
 以下は彼女と出版関係者の会話である。

「一般から恋愛にまつわる体験談を公募する?」

「そうです。そして集まってきた体験談の中からモノになりそうな話を厳選し、ノンフィクション短編集として出版するという流れでして。それに挿絵をつけてもらいたいんです。お代はこの位で」

「へえ……なかなかいい数字ね」

「なにしろ初めての企画ですので、社の方も気合が入っておりまして。まず試しに出版してみて手応えがありましたら、第二弾、第三弾と続けたい所存で。引き受けてくださいますでしょうか?」

「いいわよ」



●バシリア刑務所で


 仕事終わり、晩飯前。
 新聞を手にした服役囚ブルーチャーが、服役囚スペットに言った。

「スペットの旦那、これに応募してみちゃどうですかい?」

「なんや……『あなたの恋バナ』大募集?」

「旦那にゃうってつけの題材じゃねえですか? 何しろ恋のおかげでそんな顔になって、もとの世界からおん出されてここに来て、またかつての恋人に再会するっていう波乱万丈な人生送ってるわけですから。所長に聞いたら、応募するのはかまわねえってことらしいですぜ」

「あほくさ。俺の話書いて送ったって作り話と思われるのがオチや」

「そんなこと言わずに、書くだけ書いてみたらどうですかい」

「ええて。お前が書けや。ネタはあるやろ。自分はバツイチやいうていつか言うてたやんけ」

「いやー……わしにはもう全てが時の彼方過ぎて……」


●某出版社オフィスで



「なんだこれは……」

 恋愛体験談募集企画課のメンバーは、一様に頭を抱えていた。山積みになった応募原稿を前にして。

「課長……この企画は失敗だったんじゃあないでしょうか」

「何を言うんだタナカ君、どこが失敗なんだね。こんなに大量の体験談が集まってきたというのに」

「だって大半が作り話じゃないですか。森を歩いていたら白馬の貴公子に見初められただの、貴族の令嬢が迫ってきただの、美女の精霊に惚れられただの、美男子の歪虚と悲恋をしただの……どいつもこいつも妄想大爆発ですよ」

「勉強も運動も出来なくて何のとりえもない僕がクラスのマドンナに告白されたとか」

「平凡な女の子の私が今を時めく人気役者に一目ぼれされたとか」

「キミたち、すべて作り話と決めつけるのはよくない。もしかしたら万一本当かもしれない話が交じっているかもしれないんじゃないかとは思わないのか?」

「もしかしても万一にも作り話に決まってんでしょーが。こんな都合のいい話」

「盛ってくる奴幾らか出てくるやろなーとは思っとったけどな。内容が本当かどうか確認しようがないんやし。それにしてもなあ……」

「募集内容の趣旨を勘違いしてるんじゃないかってのもいっぱいあるし。老いてもなお衰えず、若い女にモテモテだとか」

「その手の妄想はおっさんの専売特許よ」

「そうでもないすよ。逆バージョンもあるっす。若い男と週3の割合で旦那に隠れて逢い引きするおばちゃんの体験談」

「そんなのまだまだ。もっとパンチきいたのありますよ。皇帝ヴィルヘルミナと付き合ったことがあるとか、システィーナ王女と前前前世からの恋人だとか……確かハンターオフィスのナディア会長ペロペロしたいとか延々書いてきてる奴もいましたですね」

「どっかにオーロラ姫云々てのもなかったか?」

「ありました」

「怖いもの知らずやな……与太吹いてるのが本人に知れたら殺されんで」

「本人より先に周囲の取り巻きが殺しに来るな」

「ていうかなんなの、この妄想率の高さ。皆真夜中に原稿書いて投稿してきたわけ?」

「さあ、そこはなんとも言えないけど。で、どーすんですか課長」

「う、うーん……まあ、あれだ、明らかにまずそうなビッグネームが出てくる妄――体験談は没。なるべく無難そうなのを選んで残すことにしようじゃないか」

「あ、それならこのエピソード推薦します。優秀なオートマトンの経理ジョン・Lと、人間若社長ルーカス・Lのオフィスラブ」

「へえー、異種族恋愛すか。何ともトレンディな……て、これ両方男じゃねーすか!」

「いいじゃない別に。むしろ読む方としてはそっちの方が萌えるわ」

「そりゃキミだけじゃないのかねタナカ君……」

「僭越ながらうちも萌えます。このハンター:アレックス×ハンターオフィス職員:ジュアンのエピソードも収録したほうがええと思います」

「コバヤシ君、キミまで……」


リプレイ本文

 

 雑誌の片隅に乗っていた原稿募集広告に、レイア・アローネ(ka4082)は目を留めてしまった。

「変わった募集だな」

 続けてこう思ってしまった。

「……自分でものを書いてみるのも面白いかもしれないな」

 最近少し読書に嵌まってきている故か、やる気満々。
 原稿用紙を持ち出し『こないだ告白された事はある』との一文を綴り――早くも行き詰まる。

「……駄目だ、語れる程経験してはいない……」

 自己体験に基づいた創作活動には限界があった。

「待て。「あなたの体験談」とあるが、当人かどうかは問題ではないだろう。であれば周りの友人達の話を参考にしてみては」

 意気揚々『こないだ友人から聞いたのだが』との一文を綴り再度行き詰まる。

「……駄目だ、友人の体験談など余計に語れる程知ってない……」

 他者体験に基づいた創作活動にもまた限界があった。

「……そうだ、別に体験談である必要はないのではないか? これまでに読んだ数々の恋愛小説を取捨選択しインスパイアしオリジナルの小説を作る。なんて斬新な発想だ!」

 レイアの燃え立つ創作意欲が迷走を始めた。超素人の発想を自画自賛しつつ時と己と理性を忘れ、書いて書いて書きまくる。
 最終章、エピローグ、後書きまで仕上げ心地よい陶酔感のもとペンを置き、時計を見れば真夜中。

「おお、もうこんな時間か。寝よう」

 やり切った顔で原稿を封筒に入れ机の上に置く。
 そして翌朝。改めて原稿を読み返し滝のような汗をかく。

「……何をやっているんだ私は……こ、この話は処分せねば……こんなのが世に出たら私は死ぬ……!」

 ゴミに捨てるか?
 駄目だ、絶対誰かが拾って読む。
 じゃあビリビリに破って捨てる?
 いやそれでも全然安心出来ない。拾って繋ぎ合わせてやろうという酔狂な輩がいないとも限らない。
 一体どうすれば……。

「そ、そうだ、燃やせばいいんだ! 灰になれば誰にも読めないからな! マッチ、マッチ――くそっ! 切れてる! 買いに行かねば!」





「はいはい私は未だ恋愛の一つもした事ありませんよ」

 うそぶきつつ天竜寺 詩(ka0396)は原稿用紙を広げ、父と今は亡き母との昔話を綴った。

『私のママはリアルブルーのアメリカという国の高級クラブで、ピアノの弾き語りをしてたの。グランパは有名な俳優だったけど金遣いが荒く遺産も残さず早世して、ママは特技を活かして生計を立てていたんだって。お父さんは日本って国の歌舞伎役者。海外公演のスポンサーとママのお店に来て一目でママに惹かれたらしい。ママも一目でパパに惹かれて愛し合うようになったんだって。でもその時お父さんはもう結婚してた。だからいわゆる不倫関係。でもお互い遊びじゃなくて本気だったってママの後見人のおばさんは言ってた。だけどお父さんは自分の妻、今の私のお義母さんのことも愛してたし、ママもそれを解ってた。それに海外公演が終わったらお父さんは日本に帰らないといけない。だから余計燃え上がっちゃったみたいだね。海外公演が終わってお父さんが日本に帰った後、ママはお腹の中に私と赤ちゃんが居ることを知ったけどお父さんには知らせなかった。そして私たちを生んですぐに死んじゃったんだ。それでもお父さんを愛せて幸せそうだったっておばさんは言ってた。私にはママの気持ちはまだ解らないけど、一つだけ、男の人ってしょうがないなってのは解ったよ。』

 最後の行を書き終えた後、窓から外を見た。
 青い空にぽかりと浮かぶ2つの白い月。
 リアルブルーにいる家族のことが胸を過る。ついで同じ世界にいる姉のことを思い、苦笑する。

(まあ、私はお父さんも好きだけどね。お姉ちゃんはクソ親父って未だに怒ってるけど)





 現在恋人と同棲中である七夜・真夕(ka3977)にとって、恋バナなどもうお手の物。鼻歌交じりにすらすらと、よどみのない筆運び。最後にピリオドを打って終了。

「……ふう、語っちゃったわね。ちょっと恥ずかしいかな」

 余裕たっぷりに一人ごち応募原稿を封筒に入れ、最寄りの市営宅配所に足を運ぶ――途中ふと思い立ち、友達であるレイアの家に立ち寄った。

「レイアー、いるー?……いないのかしら。あら? 扉が空いてる。不用心ね」

 と言いながら中に入る。
 彼女の鋭敏なる視角は、机の上に放置してあった封筒をすぐさま見つけてしまった。

「あら? レイアも何か書いたの?……同じところに送るのなら読んでもいいわよね」

 本人の了解なく分厚い原稿を全部――最終章とエピローグそして後書きまできっちり読み切る。

「……どうしよう。私黒歴史っての初めて見ちゃった……」

 見なかった事にした方がいいのではという理性の声。いやいやそれは勿体ないという感情の声。その二つが真夕の中でせめぎ合い、最終的に後者が勝つ。

「ううん、前は本も読まなかったレイアの多分これは処女作よ。私は全力を上げてささやかに生暖かく応援するべきよね。もう完成してるみたいだし」





 ユニゾン島港湾地区に、ドッグフードの大袋を担いだルベーノ・バルバライン(ka6752)が降り立つ。
 コボルド・ワーカーたちが束になって走ってくる。

「うう、うべーの」「るべのーう」「きたきたー」

「ハッハッハ、元気だったかお前達。ほら、土産だ」

「かりかりー」「うまうまー」「あありあと」

 その後からマゴイがゆったり歩いて来た。いつもの簡素なワンピースではなく、いつぞやのサマードレスを着ている。花飾りがついたつば広帽子も被って。

『……いらっしゃい……ルベーノ……』

 思わず見入りつつ、何故いつもと違う服装をしているのかとルベーノは聞いた。
 答えはしごく簡単だった。

『……今日、私は休日……』

 どうやら自分はいいタイミングで島を訪れたようだ。
 思いながらルベーノは彼女に土産の髪飾りを渡す。そして『恋バナ募集』の応募要綱を取り出し、マゴイ、コボルド、そしてそのあたりで勝手にくつろいでいる人魚たちに、参加しないかと呼びかけた。

「――お前たちの書いた内容に興味を持てるということは、お前たちと思考が近しいということだ。ユニオンの理念に賛同する新たな仲間が増えるかも知れんぞ?」

 ユニゾンの市民を増やす助けになるかもしれないというあたりに、心惹かれらしい。マゴイは興味深げに要綱を見やり、ルベーノに尋ねる。

『……あなたは応募するの……?』

「俺は文才がなくてな、自分が納得するものがまず書けなかったのだ。ゆえにμやコボルド達がどんな参加賞を貰うのか覗きに来たというわけだ」

 一度書いて破り捨てた自分とマゴイの時代劇風妄想話を脳裏に過らせ、微妙に恥ずかしくなったルベーノは、それを誤魔化すために高笑いした。

「まあそれは冗談だが。真面目な話をすれば今度ソルジャー候補がこの島に来るのだろう? 彼らがこの地への移住を考えたのはこの地の人間関係を好ましく思ったのではないかと人伝に聞いたのでな。この地へ来ればどういう人間関係が築けるか、というのを書けば、パンフレット以上に移住希望者に分かりやすいのではないかと思ったのだ。お前や仲間のユニオン時代の恋愛や人間関係がどんなものだったか、書いてみる気はないか、μ」

『……そうね……書いてみてもいいわ……』

「そうか――おお、そうだ忘れるところだった。土産だ」

 と言ってルベーノは、マゴイに渡す。白百合を模した髪飾りを。





 夢路 まよい(ka1328)は書き終えた原稿を封筒に入れ、最寄りの市営宅配営業所に持って行った。
 年末も近いからか、人でごった返している。
 封筒の宛て先をじろじろ見られているような(もちろん実際は誰も見ていないのだが)気がしてならないまよいは、心中こんな弁解をしていた。

(こ、これは私の妄想から出来た作り話だよ! なにも自分の話をそのまま書くのが恥ずかしいから、作り話ってことにして照れ隠ししてるとかじゃないからね! 本当だよ!)

「送りご依頼のお客様、こちらの窓口にどうぞー」

「あ、はーい」

 せかせか空いている窓口に向かった彼女は、そこに真夕の姿を見つけた。大きな封筒を2通抱えている。宛先は、自分のと同じ。
 同志を見つけた心強さにまよいは、にっこりする。

「真夕もそれに応募するの?」

「ええ、そうよ」

「2通も出すんだ?」

「あ、違うのよ。こっちの1通は私のじゃなくて、レイアのなの」





 大量のマッチを買い込み家に戻ってきたレイアを待ち受けていたのは、友人の真夕だった。

「真夕……ここにあった封筒はどうした……?」

「素敵だったわね」

「まさか……読んだのか……!」

「彼氏が滅びた亡国の王子様で0人目のガーディアンっていう設定、とても独創的だったわ。二刀一対の知られざる12本目の星神器とか、自分の前世が王子様の死んだ恋人で天翔る戦乙女だとか」

「やめろ! 言うな! 私をなぶる気か! くそう! 殺せ!」

 耳を押さえ叫ぶレイアに真夕は、限りなく優しい眼差しを向けた。

「私信じてる。きっとレイアの作品も選ばれるって」

「……何?……もしかしてお前……あれを出版社に……」

「大丈夫よ、もし掲載されるとしても投稿者の本名は伏せられるらしいから」






 詩は出版社から送られてきた小包を開いた。
 中から出てきたのは表彰状、賞金、投稿作が掲載された『あなたの恋バナ』、粗品『宴会芸の指南書』。

「うわー、自分の書いたものが本に載るって、なんだか感動だなー」

 心弾ませながら自分の投稿作を探す。

「えーと、投稿者名は『決意を祈りに』だったよね」

 そのページを開いた瞬間目に飛び込んできたのはドレス姿の女性とスーツ姿の男性が見つめ合っている場面――お互いうっすら口が開いている。
 これは挿絵画家が完全に想像で描いたものだ。でも写真以上に本当らしく見える。母親と父親の会話が聞こえるような気がしてくる……。
 詩は、そっと挿絵を撫でた。

「……これ、後でお姉ちゃんに見せてあげないと」

 呟いて次のページをめくる。

 挿絵は魔女っ娘的な服を着た女の子が頬杖をつき、眉を八の字にしているもの。誰かの後姿に視線を送りながら。
 
『投稿者:夢路に誘う青き魔女 そもそも、この気持ちは恋愛って言うのかな? 初めての経験だから、私、よく分からなくて。でも、他の人の恋バナなんかを聞いてると、なんか私も似てるなって思うこともあり。最初に会ったころは、別にこんな感じじゃなかったのになあ。わりと仲が良かったのは確かだよ? でも今は気持ちの種類が違ったっていうか……。ただ、私の気持ちは変わってきても、相手の気持ちは変わらないまま。見てたら分かるもん。戦いの相棒としては認めて貰えるようになった、と思ってる、けど。でも、私がこんな小っちゃいから子ども扱いされて、私と同じような気持ちにはなって貰えないのかな? それなら、私がおっきくなれば……。ううん、でも私は怖がってるのかも。もし、私と同じような気持ちになって貰えないのが、私が小っちゃいせいじゃなかったら……私がおっきくなっても振り向いて貰えなかったら。その時、私には何ができるだろう?』





「うう……改めて自分で読んでみると……結構くる……ていうか何でこの絵こんなに私に似てるのー!」

 全身を襲うこそばゆさにまよいは、じたばた転がる。本を伏せ顔をうつ伏せ呼吸を整えること数分。やっと気を取り直し次のページへ。

『投稿者:轟雷の巫女 私は転移者で、リアルブルーから来てその人に出会ったわ。一目惚れっていうわけじゃない。というか、私も好意は抱いていたけど告白は向こうからだもの。どうして私なのか、実はわからなかった。自慢のつもりもないけど、最高の人。引く手なんて数多だろうに、なんで私?でもあの人はこういった目を逸らさずに。私がいいんだって。そのセリフ、そしてそれをいってくれた人の瞳を見て私は観念したわ。この人からは逃げられないなって。だって、私もその時に恋に落ちてしまったんだもの。それ以来、お互いパートナー一筋よ♪』

 申し分なく完全無欠なラブラブ体験談だ。挿絵がどう見ても女の子同士であるが。






 性別は明記していないはずだのに、ドンぴしゃの挿絵。顔まで自分とパートナーに激似。そのことに真夕はちょっと驚く。

「この挿絵画家、ものすごく勘がいいのね」

 一人ごちつつレイアの方をちらり。

「ねえ、読まないの? レイアのも載ってるのよ、ほら、ここ。投稿者名『精霊への導き手』で」

「読まん」

「すごくいい挿絵つけてもらってるのよ? ほらほら、レイアの理想の王子様と戦乙女のレイアが」

「絶対見ん」

「強情ねぇ……」

 後でどうにかして見せてやろう。
 ひそかに企みつつ彼女は次のページをめくる。珊瑚の森で戯れる男人魚と女人魚の挿絵があった。

『投稿者名:人魚 外海回りの海流に乗って遠くへ遊びに行ったとき、きれいな人と出会ったわ。一週間ほどそこにいて一通り遊んでから別れたの。すごく楽しかった。』

 続けてのページには、ぶちのコボルドが茶色のコボルドからそっぽを向かれている挿絵。

『投稿者名:こぼるどのわーかー わたくし、きょねんのはる、ちかくのやまにすむ、めす、むれにこないかとさそいにいったら、わたくしのむれ、ちいさいし、たべものもなさそうだからとことわられた。わたくしたいへんしょんぼり。でもいまならむれにはたべものたくさん。らいねんのはるもういちどちょうせん』

 さらに次のページには、ほぼ見分けがつかない容姿の少年少女たちが和やかに話し合っている挿絵。

『投稿者名:白イ精霊  未成年社会化訓練所にいたとき、私は同一クラスの複数人と付き合っていた。その複数人もまた複数人と付き合っていた。要するにクラスの皆が皆と付き合っていた。ところで同一クラスは同一遺伝グループで構成されるのが常。だから相手と付き合い慣れていないうちは、かなりの頻度で取り違えが起きた。実際私も何度か間違えられたし間違えた。』

「……ねえレイア、あなたの話この本の中では、結構目立たない方かも知れないわよ?」





 ユニゾン島港湾地区。
 再度その地を訪れていたルベーノは読んでいた本を閉じ、傍らのマゴイに聞いた。


「取り違えられたことで悶着が起きるということはなかったのか?」

『……?……なぜそんなことが起きるの……間違えたなら後でやりなおせばいいだけではないの……』

 同じ顔だらけの世界では人違いについての感覚も大らかになるのだろうか、とルベーノは思った。首後ろを掻きながら。

「俺なら間違えんがな」

『……私もあなただったら、間違えそうにないわね』

 マゴイの手が彼の頬に触れた。
 ルベーノは目を見張る。指が触れている感触がかすかに感じられたのだ。

『……なにしろあなたと同じ顔の人がいないから……この世界では多くの人間がそうだけど……』

 すうっと指が離れていく。その感触も確かに感じられた。


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MVP一覧

  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕ka3977
  • 乙女の護り
    レイア・アローネka4082

重体一覧

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

サポート一覧

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/23 21:58:42
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/11/24 07:47:11