星屑の横流し

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/01/07 15:00
完成日
2019/01/13 22:32

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ハンター達は要塞都市郊外の町から部族なき部族のメンバーである赤翡翠と飯綱の保護に成功し、要塞都市ノアーラ・クンタウへ移送した。
 二人はハンターオフィスから秘密裏にドワーフ工房の工房管理者であるアルフェッカ・ユヴェーレンの保護下におかれる。
 二人は怪我や疲れを見せていたが、今は傷も癒えており、いつでも任務に戻れるようになった。
「暫くは別の任務についてもらうにゃ」
 部族なき部族のリーダーであるテトの命令に二人は頷く。

 赤翡翠と飯綱がアルフェッカの保護下に置かれた当初、賊についての聞き取りがアルフェッカとカペラ、シェダルにされていた。
 賊の名前は『タットル』。
 全容は把握できないが、町に来た賊は約四十人前後。全員同じ刺青を入れており、テトが調べた通りの図だったという。
 内、幹部は二人と、首領となる。
 幹部は『コマ』と呼ばれ、二十人前後の手下を連れている。
 片方の幹部は東方で買い付けしていた者という情報があった。
「買い付けに行っていた時期は?」
「どうやら、東方の依頼に行ったハンターと入れ違った。特徴もほぼ確定、あの幹部は俺の部族を襲った連中の一人だ」
 赤翡翠はあっさり肯定する。彼の様子は至極普通であり、カペラが心配そうに窺う。
「平気じゃない。今すぐ、追いかけたい……けど、今慌てても仕方ない……」
 今は赤翡翠のコードネームをもっているルックスだが、彼の中にある焦燥が晴れることはない。今も夢にみるほどあの絶望と憎悪が彼の中に渦巻いているのだから。
「あと、何かあるかい?」
 話を変えるようにアルフェッカが訪ねると、二人は顔を見合わせて首を傾げる。
「小さなことでも構わない」
 穏やかに語りかけるアルフェッカに飯綱は言ってもいいのかわからないといったように困った表情となる。
「何か、あるのか?」
「首領の愛人なんだけど……」
「連れ拐われたエーノス族の女性と聞いたが」
 何かあるのかとアルフェッカが聞く姿勢になるが、飯綱は「どうでもいいことなの……」と声が小さくなる。
「どうやら、結構取っ替え引っ替えというか……同じ顔の女をばかり囲って、囲った女には必ず同じところに刺青を入れてるみたい……って話で」
「どこにだ?」
 シェダルが口を開くと、飯綱は両手首の内側を合わせてトントンと、位置を知らせる。
「視界に入る部分だからな、逃げられないという暗示をかけているつもりなのだろう」
 ふむと、思案するアルフェッカに飯綱は気になって仕方ないようだった。
「あと……どうでもいいことなんだけど……フォニケに似てるんだけど」
 申し訳なさそうに呟く飯綱にアルフェッカとシェダルが貸す微かに目を細める。
「あー、顔の雰囲気が似てるよね」
 確かにと、ルックスが頷く。
「この街の人じゃなかったら、フォニケさんも狙われるかもしれない」
 心配そうに呟くルックスだが、アルフェッカと目が合って「この街の中なら、大丈夫ですよね」と慌てて訂正する。
「そうだな……と言いたいが、東方に現れた幹部が単身で来たなら危険度が増すけどね」
 アルフェッカの言葉にテトが鳴く。
「にゃぁ、奴は身分を偽装して動いている可能性があるにゃ。相手を見たことがあった歪虚が危険だと言ってた報告もありますにゃ。もっとも、その歪虚はもう倒されましたがにゃ」
「まぁ、今は身体を休めてくれ。何か思い出したら教えてほしい」
 労わる言葉をアルフェッカがかけると、二人は頷いてその場は解散となった。

 部族なき部族のメンバーが隠れ家へ戻ったあと、アルフェッカの執務室でシェダルとカペラが顔を合わせていた。
「アルフェッカさん、大丈夫……?」
「何が?」
 心配するカペラの問いかけにアルフェッカはあどけない表情で首を傾げる。
「煙に巻かれる前に言うけど、貴方、お姉さんが失踪しているのよね。十年くらい前に。しかも、フォニケさんに似てるって」
 その言葉でアルフェッカの表情は一転してしまう。じとりと、シェダルを見やる。
「俺は言ってねぇぞ」
「だろうね」
 どうやら、シェダルは知っているようだった。カペラはシェダルを庇うように自身で調べたと告げた。
「貧乏くじでドワーフ工房の管理官をするには怪しすぎたのよ。ずっと、調べていたんじゃないの?」
 次の言葉にアルフェッカは素直に頷いた。
「姉は顔も知らない男との結婚も嫌がってたけど、あれは家出なんかじゃない。生きているとは思えないけど、知りたいんだ」
 とはいえ、今言ったアルフェッカの言葉は推測に過ぎない。

 聖輝節が終わった頃、ファリフが要塞都市へ入った。
 同時期、部族なき部族のメンバーよりテトへ報告があがる。
 飯綱と赤翡翠は張り込み失敗したが、他のメンバーが行方を追っていたという。
 固定のアジトが存在してなく、辺境部族同様に移動をしているようだ。
「今はガチガチに守りを固められてて、これ以上は探れない。一応、見張りを立てているけどね」
 部族なき部族のメンバーである花豹がテトと話しているのは以前、アクベンスが賊の裏切り者を殺した娼館だった。
「無理はダメですにゃ。下手につついてはあぶにゃいですから……」
 心配そうに言うテトに花豹は頷く。
「まぁ、もう少し様子を見るよ」
「お願いしますにゃ」
 そう言ったテトだが、娼館を出て行こうとする花豹を止める。
「テト?」
「外に誰かいますにゃ」
 訝しげに名を呼ぶ花豹にテトは注意を促す。
 娼館の外には旅人と云うには物騒な服装をした男達がいた。
 多いな声で話しながら娼館の前を歩いており、会話の内容もしっかり聞こえている。
「そういや、タットルの競売がダメになったって聞いたぜ」
 丁度その話をしていたので、テトと花豹は隠れつつ顔を見合わせた。
「ああ、結構いいものが入ったって話だったろ? 何でダメになったんだ?」
「なんでも、頭の女に手を出そうとしたからってさ、女くらいで目くじら立てなくてもなぁ」
「そうそう。十五年くらい前に逃げたガキが忘れられなくって、似た女を捕まえては囲ってたんだってよ。コマが流したヤツ、取引はどうする?」
「暫くこの近くにいるよ。二、三日中ならいつでもこいよ」
「そうするわ」
 声が聞こえなくなるまで二人はじっと隠れていた。
「テト、どうする?」
「にゃぁ。まずは、賊は捕まえましょうかにゃぁ」
 二人は音を立てずに要塞都市へと帰っていったのだが、先ほど話していた片割れの男が要塞都市へと入っていったのを二人は確認する。
 商人という身分で、持ち物も問題ないという事で難なく入っていった。
 更に尾行すると、商人は治安が良くない地域に入っており、盗品の密売を行っているのを確認する。
 目視だけの証言であるが、テトは密売人を抑える依頼をしようと、ハンターオフィスへと向かう。

リプレイ本文

 要塞都市内にあるハンターオフィスの一室でそっと息を吐いたのはアイラ(ka3941)。
「……『タットル』……か」
「賊の名前?」
 鞍馬 真(ka5819)が言えば、アイラが頷く。
「どんな賊なのかなぁって」
「今回私達が捕縛する密売人と関係があるのですよね」
 美しい姿勢で座っていたエルバッハ・リオン(ka2434)はアイラの方を向く。
「みたいだな……」
 オウガ(ka2124)がぼんやりと頷いた。
「にゃぁ。現状わかっているのは、辺境部族を襲って金品を強奪する盗賊。他所の町で盗品を競売や密売をする。他所の土地の盗賊から盗品を買い付ける密売人……。あと、怠惰の歪虚アクベンスが裏切り者の始末をしている害虫……もとい、外注をしている。そんなところですかにゃ」
 いつの間にかに入ってきたテトが解説を入れる。霊闘士のハンターもいるが、いつでも超聴覚を発動しているわけではない。
「あいつの場合、訂正しなくてもいいと思うわ」
 手厳しいアイラの返しにオウガも「同感」と頷く。
「本当に猫みたいですね」
「にゃぁ。テトの部族は猫を祖霊としてましたにゃ。祖霊に感化されてこうなってますにゃぁ」
 目を見張る夜桜 奏音(ka5754)の感想に感想にテトは胸をはるが、その説明は結構な確率で胡散臭い。
「密売人はまだ要塞都市内にいますか?」
 木綿花(ka6927)の問いかけにテトは鳴いて肯定する。
「向こうの方にも同時に取り押さえてほしいですにゃ。皆さん、宜しくお願いしますにゃ」
 そう言ったテトにハンター達は行動へ移る。


 要塞都市郊外に潜んでいる密売人の取引相手を確保するため、アイラとオウガ、エルバッハが向かう。
 助っ人としてテトも同行している。
「そいやさ、飯綱が首領の愛人を見たって言ってたよな
「その似顔絵を用意してくれないか?」
「首実験ですか。了解ですにゃ。飯綱もルックスもフォニケに似ているって言ってましたにゃぁ」
 荒くれ者どもが集まるドワーフ工房の女技師の顔を思い浮かべつつ、テトは確認するように呟く。
「そいや、以前にドワーフ工房と提携していた下請けの部族の鉱山を狙われていた……って話がありましたにゃぁ」
「娼館で取引があるから行ってみたら、アクベンスがいたっけ……あいつ、裏切り者を頼まれて殺したって言ってたよね」
 アイラが記憶を思い出しつつ呟く。
「裏切りの理由は分かりませんにゃけど、目的には鉱山だけではにゃく、ドワーフ工房の商品を奪おうとしていた可能性もありますにゃが」
「まぁ、あのドワーフ王の工房ですからね……滅茶苦茶ですが」
 ふふりと微笑むエルバッハに他の三人もよく聞く話を思い出してはため息をついてしまう。
 売ろうとすれば何かの箔が付くかもしれないが、あまりついてもいいものかは不明だ。
 もう少しで郊外に到着する。

 離れたところからオウガが超聴覚を発動し、町の音を聞こうとしていた。
 すっかり降り積もっている雪で音が聞こえにくくなっているが、誰かが外に出ている様子はない。
 今はちらほら雪が降っているが、足跡が見えてないので、ここ数日は出歩いていないのだろう。
 テトが先頭に歩いていくと、娼館を通り過ぎて宿屋のような建物が見えてきた。
「声はここから聞こえるね」
 アイラが言えば、オウガも頷く。
 建物の様子を伺うため、エルバッハが呪符を取り出す。
「では、発動中は宜しくお願いします」
「了解よ」
 エルバッハが声をかけると、アイラが頷く。
 式符を発動させ、彼女の繊手より式神がゆっくりと宙を浮かび、動いていった。
 意外と戸や窓は朽ちておらず、冷気を防ぐためか締め切られている。
 裏に回り、勝手口の辺りに猫の出入り口のような戸を見つけ、中に入っていった。一階には特に人の気配はない。
 二階には人がおり、同じ部屋に三人が暖を取っていた。
 偵察を終えたエルバッハが見た事を三人報告し、動きを見張ることにする。

 密売人の動きを見張ろうとしていた真は商人の格好をしようと考えており、服装もそれに合わせていた。
「にゃかにゃかいいですにゃ、念のため、ドワーフ工房に行くといいですにゃ」
 テトが勧める通りに工房へと向かう。
 要塞都市内の密売人を一緒に追う木綿花と奏音、花豹も一緒に同行する。
「あら、いらっしゃい」
 にこやかに微笑むのは茶の髪に深緑の瞳の二十代の女性。荒くれ者どもの中で気ままに仕事をしている女技師フォニケだ。
 手首から肘の半分辺りまでの長さのリストバンドを両手首にしていた。
「こんにちは。ハンターオフィスの依頼で商人風の服を着ていこうと思ってた話をしたら、ここに行くように言われて……何かあるかな」
「ご苦労様。ちょっと待ってて」
 三人を笑顔で迎え入れてたフォニケが背負い式の葛籠篭を用意してくれた。
「手ぶらでいいローブ着てたら狙われるわ。この葛籠篭も面倒だったら途中で捨ててもいいわよ」
「有難く借ります」
 フォニケが真に葛籠篭を背負わせる。
 奏音に薄いグリーンのマフラーを首元に巻き、木綿花には布で出来た花の飾り止めを風の外套の合わせ目につけた。
「カスケードもよ」
 聞きなれない名前を呼んだフォニケに花豹が「はいはい」と防寒具を受け取った。目を瞬くハンター達に花豹はいつもクールな様子を崩して、人懐っこく笑う。
「コードネームは花豹だけど、名前はカスケード・ケンブルっていうんだ。部族名の方はもう必要ないけどね。呼びやすい方で呼んどくれ」
 そう言った彼女は防寒具を着こむ。
「時間あったら、寄ってね。お菓子用意しておくから」
 手を振って見送るフォニケを三人は肩越しに見つめ、控えめに手を振ったり、会釈をする。
 ドワーフ工房を出ていき、密売人がいる場所へと向かう。
 賑やかなところから静けさと喧騒が聞こえてくる。整備された街並みから壁がひび割れたり、傾いた建物が並び、人目を隠れるように天幕が道を歩く人の頭上に張られていった。
 物売りをしている者もいるが、表の市場とは違うと感覚的に思わされる……と、木綿花は思う。
 先を歩くのは花豹だ。彼女を見失わないように三人は通りを歩く。
 旅の巫女を装っている奏音は歩いていると、拝まれたりしているが、花豹の合図を他の者に気取られないようにしている。
「旅のお嬢さん。何か好いのはあったかい?」
 敷いた茣蓙に座っていた物売りだろう男が木綿花に声をかけてきた。砂色の外套は外気に触れないようにきっちり閉じられており、首元もマフラーが巻かれている。
「どうでしょう……」
「こんなところにいたら、悪い奴らに狙われっちまうぜ。特にあの男には気を付けるんだな」
 そう言った男が見た方向は青く染めた毛皮の襟がついた茶色いなめし革のコートを着ている男。
 どくり……と、木綿花の胸が鳴る。
 目標の密売人だ。前情報通り、護衛が三人いた。
「あいつは盗賊が奪ったものをこっそり横流しして、他所に流しているやつだ。その他、女を攫っては売春宿に売り飛ばす。あんたみたいなナリは珍しいからな。気を付けた方がいい」
 種族の事だろうかと思ったが、男は足元を見ていたので、草履だと思った。
「貴方は、何故を知っているのですか」
 静かに問いかける木綿花に男はふぅむと考えて彼女を真っすぐ見る。
 整った顔立ちに水色の瞳は穏やかで笑みすら窺えるのだが、妙に落ち着かないと本能が警鐘する。
 視線をずらすと、首元から伸びている古傷が頬まで伸びていた。
「あんたが可愛いからかな」
 にやっと笑う男に木綿花は呆れた表情をしてしまう。
「失礼、連れが何を」
 真が割って入ると、男は「気を悪くしたらすまなかった」と謝り、その場を辞した。
「ありがとうございます」
「無事ならいいよ。からかわれただけならいいけど……アイツ、なんだろうね」
「そうですね……でも、いましたね」
 木綿花は奏音に目くばせをしてそれとなく合流させた。
「大丈夫でしたか?」
 通りすがりの市民に声をかけられていた奏音が話を切り上げて木綿花に声をかける。
「怪しい人でしたが……その方の情報通りでしたら、余罪の追及はありそうです」
 どうにしろ、捕縛は必須のようであった。
 花豹の近くに行くと、彼女は超聴覚を発動させて話を聞いていた模様。
「どうやら、取引に行くようだよ」
 奏音と木綿花も密売人に気づいたようで、距離を離れて尾行を開始する。

 郊外が見えてくると、先に向かっているエルバッハ達に向かっている旨を伝えた。
 取引相手達も動いており、向かう先は娼館だ。
 アイラ達が先に郊外の街に入った後、雪が降っており、彼らの足跡は消えていた。
 密売人と取引相手は娼館の中にて話し合いを始めていた。
 周囲にはハンター達が包囲しており、一番聞こえるところには地球連合軍用PDAの端末に記録をしている。
 中では品物について話し合いをしていた。
「そいや、この腕輪、どこで手に入れたんだ? あのダメになった競売か?」
 取引相手が尋ねると、密売人は「キヒヒ」と笑う。
「タットルのボスの女が連れ去られようとした時にちょいちょいとな」
 盗品を盗んで流す気だった模様で、相手の男も知っているようだ。
 今回は金のやり取りではなく、密売人も欲しかった品物との物々交換をしていた。
 無事に取引は終了……という流れになった途端、取引相手達が得物を抜き出して密売人へ構える。
「お前さんをここで殺しても俺達に足はつかないからな」
「もとから殺す気だったのか! お前達! 何をしている!」
 密売人が護衛に声をかけるが、三人の護衛は回れ右をして逃げ出した。
「こんな仕事だなんて!」
「ずらかるぜ!」
 護衛は密売人を置いて正面玄関のドアへ走って行く。
 両開きのドアを開けると、そこには銀糸の髪を持つ美少女が立っていた。
 スタッフ「ネポスナウム」を突きつけ、青白い雲状のガスが広がる。
 ガスは奥まで広がり密売人や取引相手まで広がっていく。
 男達は唸り声をあげ、眠気と戦う。
 倒れた者もいたが、無事な者は目の前のエルバッハを突き飛ばしても逃げようとしたが、
それは彼らの周囲に現れた無数の手がそれを阻む。
「中で待ってて」
 静かに告げたアイラの言葉に呼応し、ファントムハンドが男を中へと引きずっていった。
「くそぉ!」
 もう一人護衛の男が抵抗に成功していたようで、武器を構える。顔に先ほどまでなかった『刺青』があった。
「戦いたいのは山々だが、今回は抑えているんだよ」
 その声は背後から聞こえた。脚と神経にマテリアルを巡らせた真が低い姿勢で素早く背後に回り込んでいた。
 膝に活人剣の一撃を叩き込んで体勢を崩させるが、相手も覚醒者であり、まだ動こうとしてダガーを真へ突き刺そうとする。
 しかし、その抵抗は空しく、オウガが発動したファントムハンドに捕らわれてしまった。
 取引相手の内、二人が走って裏口から逃げようとする。必死の形相でドアを蹴り開けると、純白のドレスを身に纏った黒髪の美少女が立っている。
 先ほどの例も鑑みて、只者ではないことを伝えるように見事な水墨画の掛け軸である呪画「山河社稷図」を広げた。
 瞬間、男達の足元が泥のようにぬかるみとなり、動けなくなる。
 後ろの方にいた男は横をすり抜けようと試みるが、木綿花がジェットブーツで間合いを詰め、拘束に成功した。


 ハンター達は密売人とその護衛、取引相手を引きつれて要塞都市へ戻っていった。
 途中、治安部隊の兵たちが手伝いに来てくれた。
 治安部隊の建物に入ると、カペラがお茶と軽食を用意しており、ハンター達は寒さで奪われた熱量を取り戻す。
 一息ついた頃、金髪碧眼の美青年が現れた。帝国の軍服を着ていることから、帝国軍の者だろう。
「初めまして……だな。俺はアルフェッカ・ユヴェーレン。要塞管理者の補佐官と、その下部組織ドワーフ工房の工房管理官をしている。これまで、関連する依頼に出ている者も、今回初めて縁が出来た者もよろしく頼む」
 挨拶をした後、アルフェッカは「尋問に参加したい者は任意で来てくれ」と告げて一足先に向かう。
 一番先に部屋を出たのはオウガとアイラだ。
 その姿を見送った木綿花の様子を見たエルバッハが気遣う。
「私にとって、家族は大事な存在です。それを故意で失われる事は辛い事です。少しでも出来る事をしようと思います」
「そうですね」
 ふわりとほほ笑むエルバッハに木綿花は一瞬笑みを浮かべ、尋問室へと向かう。

 尋問は捕まえた密売人と取引相手と護衛と別れて行われていた。
 オウガとアイラが入っていったのは密売人の部屋。
 冷えた部屋の中、密売人は上着を着ていなく、顔がよく見える。年齢は五十に差し掛かろうとした頃だろう。
「聞きたいことは『タットル』のことよ」
 どんな賊という認識をしているのか、どんな取引をしたのか……というのがメインの質問だった。
「タットルは百人近い手下を抱える大盗賊だ。今は二代目の頭目が手広くやってるって話だ。盗賊から密売まで」
「品物は?」
「赤ん坊から墓石までだ」
 色々とありすぎるという事だろう。
「貴方は賊の一味なの? 取引相手?」
 後者だった。幹部の名称であるコマの者と仲がいいそうで、何かと売ってもらっていることがあるという。
 今回の取引は前回、ルックス達が潜入していた町で彼らが街を出るドサクサに盗んだものだそうだ。
「そのコマの名前は?」
「アケルナル。賊の次点だ。東方にも向かうって聞いたな」
「どんな人ですか?」
 奏音が言葉を差し込むと、彼は思い出しながら要点を伝える。
 整った顔の男前に青目、胸から頬まで伸びる古傷を持っているという。
「それは……!」
 後ろに控えていた木綿花が叫ぶ。
「私も見た」
 オウガの後ろにいた真と奏音、花豹も頷く。
 密売人は瞬間、嘘だと叫びたかったが、尋問に控えめだった木綿花のリアクションは本物の驚愕であり、真実味が増している。
「気付いていたのか……」
 震える密売人は自分がしたことを気づかれ、恐怖に震えた。
「アイツは、横流しする部下をよく歪虚に始末させていたって……」
「その歪虚って、青灰色の髪に気障な喋り方の?」
 アイラが特徴を言えば、密売人は何度も頷く。アクベンスで当たりだ。
「正体をなくすほど怯えられる前にもう一つ」
 オウガが用意してもらった紙を開いて密売人に付きつける。
「こんな顔をした女、知らないか?」
 似顔絵をしげしげと見た密売人は「こりゃぁ、首領の女に似てるなぁ」と答えた。
「けど、この女、五年も前に死んだって聞いたぞ。後から似た女を他所から攫って来たって。赤い羽根の首飾りをつける部族だったかな」
 密売人が見ている女の似顔絵は貴族令嬢と風貌。アルフェッカが渋顔になったのをテトは見逃さなかった。
「どうにしろ、あいつとやり合うんだな」
 オウガの呟きに、アイラが頷く。

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重体一覧

参加者一覧

  • 援励の竜
    オウガ(ka2124
    人間(紅)|14才|男性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 太陽猫の矛
    アイラ(ka3941
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 虹彩の奏者
    木綿花(ka6927
    ドラグーン|21才|女性|機導師

サポート一覧

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鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/01/07 09:15:25
アイコン 質問卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/01/04 13:39:10
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/01/04 08:30:21