ゲスト
(ka0000)
新春、食人植物退治のお知らせ
マスター:秋月雅哉
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/01/13 22:00
- 完成日
- 2015/01/14 04:57
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●冬なのに元気な植物もいるようで。元気が余り過ぎてもいるようで
帝国の一角。冬の山の中にある集落の一つ。家族が風邪を引いたため家を暖めようとした結果、冬に備えて用意していた薪が乏しくなってきた。
これ以上減る前に薪になりそうな木や火を熾すときに使う小枝を拾っておいた方がいいだろうか。
新年を迎えてそうそう肉体労働をすることにはなるが冬に温かさを奪われることは飢えと同じ位怖いことだとその家の大黒柱である中年の男性とその息子は知っていた。
だから雪が比較的落ち着いている間を見て山に分け入り、薪を集め始めたのだが。
不意に視界に入った鮮やかな緑色。冬なのに常緑樹でもない植物を見かけるのは珍しい。
よくよく目を凝らせば毒々しい色合いの触手のようなものや、牙の生えた植物本体。
その触手の内の二本がまるで自分たちを捕えて捕食でもしようというように伸びてくることまでを、スローモーションのように視界で把握した男性二人はすぐさまその場を後にした。
ふよふよと漂う食人植物は残念そうに触手を蠢かせて次の獲物を待つのだった。
「食虫植物って知ってるかな。ハエ取り草とかそういうの。あれを食人植物に変えたような雑魔が出たよ」
なんか季節外れな感じがするけどね、雑魔に言っても仕方ないか。
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は額を抑えてため息を吐いたあと説明を続けた。
「この、赤く囲んでいる辺りで何かに集中しているといつの間にか現れるみたい。幸い動きは鈍いからね、奇襲をかけられることはないと思うんだけど、相手が油断してるところに忍び寄ってバクンってタイプらしくて周囲を警戒してる人の前には出てきたって報告がない。
もとになった植物が何なのか分からないけど食虫植物がもとになってるならその名残かな。
溶解液を分泌するみたいだから高い服は着ていかない方がいいよ、万一掴まると溶けるから。
大人一人くらいなら余裕で飲みこめる大きさだから遠距離でも近距離でも傷をつけるのに苦労はしないだろうけど、攻撃に集中しすぎると飲み込まれるから注意して」
ちなみに同じ姿の食人植物は五体確認されてるよ。
此処の戦闘能力は大したことないけど溶解能力だけは注意した方がいいかもね。
そう言ってルカは言葉を締めたのだった。
帝国の一角。冬の山の中にある集落の一つ。家族が風邪を引いたため家を暖めようとした結果、冬に備えて用意していた薪が乏しくなってきた。
これ以上減る前に薪になりそうな木や火を熾すときに使う小枝を拾っておいた方がいいだろうか。
新年を迎えてそうそう肉体労働をすることにはなるが冬に温かさを奪われることは飢えと同じ位怖いことだとその家の大黒柱である中年の男性とその息子は知っていた。
だから雪が比較的落ち着いている間を見て山に分け入り、薪を集め始めたのだが。
不意に視界に入った鮮やかな緑色。冬なのに常緑樹でもない植物を見かけるのは珍しい。
よくよく目を凝らせば毒々しい色合いの触手のようなものや、牙の生えた植物本体。
その触手の内の二本がまるで自分たちを捕えて捕食でもしようというように伸びてくることまでを、スローモーションのように視界で把握した男性二人はすぐさまその場を後にした。
ふよふよと漂う食人植物は残念そうに触手を蠢かせて次の獲物を待つのだった。
「食虫植物って知ってるかな。ハエ取り草とかそういうの。あれを食人植物に変えたような雑魔が出たよ」
なんか季節外れな感じがするけどね、雑魔に言っても仕方ないか。
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は額を抑えてため息を吐いたあと説明を続けた。
「この、赤く囲んでいる辺りで何かに集中しているといつの間にか現れるみたい。幸い動きは鈍いからね、奇襲をかけられることはないと思うんだけど、相手が油断してるところに忍び寄ってバクンってタイプらしくて周囲を警戒してる人の前には出てきたって報告がない。
もとになった植物が何なのか分からないけど食虫植物がもとになってるならその名残かな。
溶解液を分泌するみたいだから高い服は着ていかない方がいいよ、万一掴まると溶けるから。
大人一人くらいなら余裕で飲みこめる大きさだから遠距離でも近距離でも傷をつけるのに苦労はしないだろうけど、攻撃に集中しすぎると飲み込まれるから注意して」
ちなみに同じ姿の食人植物は五体確認されてるよ。
此処の戦闘能力は大したことないけど溶解能力だけは注意した方がいいかもね。
そう言ってルカは言葉を締めたのだった。
リプレイ本文
●雪山に毒々しい緑の群れ
何とも時期外れなことに雪山に人を食らう植物が五体現れた、と報告が入り、八人のハンターは討伐と、ついでに依頼主の男性が集めそこなった薪を代わりに集めてこようかと目撃された地点へと向かったのだった。
「植物雑魔か……なんとも季節はずれよな。存在していても邪魔なだけだ、さっさと処理するか」
バルバロス(ka2119)は囮役として薪になりそうな枝を拾いながら呟きを漏らした。
仲間を信じ、周囲を警戒することなく薪集めに集中するバルバロスを少し離れた場所に隠れた仲間たちが見守っている。
「人を食べちゃうのはいけないこと! そんな悪い植物は私が退治しちゃう!」
敵が現れるまでバルバロスを見守る側の攻撃班の一人、桜庭 あかり(ka0326)は待機している間雪だるまを作るふりをしながら辺りを警戒したり、仲間に雪玉を投げるふりをしながら警戒をしたりしている。
警戒している相手の前には姿を現さないという事前情報からの行動なのだが、もしかすると雪にはしゃぎたいという思いもあるのかもしれない。
「植物系なら火に弱そうなものだが……さて、どんなものか。
雪山で、姿の見えぬ敵……まるでホラーだ」
そんなあかりのはしゃぎっぷりを見るともなしに見ながら、バレル・ブラウリィ(ka1228)はこれから対峙することになる食人植物の弱点や特性について思いを馳せる。
「……最近、この辺りで獲物が取れないと思ったら、食人植物のせいだったのね」
野宿しながら生活しているミノア・エデン(ka1540)は、この付近でも山や川で狩猟したり、今は季節的にあまりないかもしれないが山菜を取ったりして日々の食事を調達しているらしい。
食人植物を倒す理由が一つ増えた、と小さく呟いた彼女の言葉を、攻撃班のメンバーは深く突っ込まずにおくことにした。
どんな理由にしろ討伐対象に対して討伐の意欲を高めることはメンバーにとってもいいことだろう、多分きっとおそらくは。
「動物は冬眠の時期だってのに動き回ってまで食いもん探すなんて、食い意地が張った植物もいたもんだなあ。恐れ入るぜ」
毛皮のマントを防寒具として羽織ったルリ・エンフィールド(ka1680)は今回の敵に多少呆れの入り混じった感想を漏らす。
「食虫植物……は、あんまり詳しくないんですが……。まぁ、これもいい勉強でしょうか。
……食虫というより食人ということでしたが……そんな物騒な植物の生態を勉強して役に立つかは分かりませんが、滅多に出くわせるものでもない気はしますし……」
クリムゾンウェストに転移してからとある貴族に拾われ、彼らのマナーハウスの庭師として修業中の〆垣 師人(ka2709)はバレルとは違った意味で食人植物に興味を持っているようだ。
リアルブルーでは庭師の家系として過ごしてきたが扱ってきたのが和の庭だったためクリムゾンウェストの庭に関してはまだ分からないことも多い、ということがあるのか、それとも庭師としての生い立ちがそうさせるのか自然と植物には興味を惹かれるらしい。
「服だけでなく、皮膚や肉すら溶かしそうですわね。
食人、ということは動物で言う胃液のようなものを分泌して、なおかつそれを飛ばしてくるということでしょうか。
そんな植物は危ないので殲滅してしまいましょう。
……これが海にあったら、汚染がマッハでピンチですわ!?」
海が好きで、リアルブルーではよく素潜りや海女さんの真似事をしていた 刻崎 藤乃(ka3829)は体を震わせつつ、出現場所が大好きな海でなく山だったことに少し安堵した。
このような雑魔が出ること自体が問題なのだが好きな場所を荒らされたくない、というのは誰にとってもある思いだろう。
友人でありバル爺様と愛称で呼んでいるバルバロスが熱心に薪拾いをしているのを確認しながら、ストレッチをして素早く動いても問題ないよう準備しておく。
気温が下がると体が強張りがちだ。もし潜伏している攻撃班の方に奇襲があった場合、体が強張っていては思うように動くことができず厄介なことになるかもしれない。
他のメンバーもそれを憂慮したらしく藤乃に習って軽く体をほぐし始める。
「人を食う植物は一体どんな味がするんだろうな」
趣味が食事と読書である飴餅 真朱也(ka3863)は体を伸ばしながらそんなことを呟いた。
食べられるなら今日の晩御飯に持って帰りたい、と思っていたミノア以外の六人が、その発想はなかった、という顔で真朱也を半ば呆然と眺める。
「……なんか変なこと言ったか? ……お、おいでなすったみたいだぜ」
六人分の視線を集めた真朱也が不思議そうに首を傾げた弾みで動いた視界の先、バルバロスにゆっくりと接近する毒々しい緑色の植物。
「うわっ、こんなでけぇ植物が動き出すのかよ……冗談はよしてほしいぜ……」
成人男性を悠々と一人は飲み込めそうな巨大な植物がふよふよと浮遊しながらバルバロスに近づくのを見てルリが顔をしかめる。
「五体全て出てきたようですね。近くに別働隊が潜伏して、という事態は避けられたようですし、攻撃に移りましょうか」
師人が仲間に声をかけ、一斉にバルバロスと、彼と対峙している食人植物のもとへ駆け寄る。
囮という立場上、一番食人植物に近い位置にいたバルバロスが体内にマテリアルを満たすことで一時的に攻撃の威力を増加させ、祖霊の力を武器に込めて戦闘用の両手斧を大きく振りぬく。
切れ味が鋭く、斧の重量を利用した威力の高い一撃を出合い頭に叩き込まれた食人植物は怯むように動きを止めた。
視覚どこにあるのか分からないが視覚によって危機を察知したのか、それとも仲間同士で特殊な伝達方法でもあるのか。
先制攻撃を食らった一体が怯むと同時に他の四体も動きを鈍らせる。
どうやらこの獲物は楽々と狩らせてはくれないようだ、とでも思案するように。
なんにせよこの隙は覚醒者たちにとっては願ってもないチャンスだった。
バルバロスに向かって真朱也がプロテクションをかける。
光がバルバロスの全身を覆い、彼の防御力が強化された。
「礼を言うぞ。これで囮役を少しでも長く果たせるというもの。
自分から指名はしたがおなごに任せるには溶解液という厄介なシロモノがおまけでついてくるからな」
白ヒゲに覆われた口端を軽く上げ、振り返らないまま礼を言うとバルバロスは敵が怯んでいる隙に、と再び斧を振りかざす。
怯んでいるうえに元々の移動能力が低い食人植物に向かってあかりが、地上を高速で移動する動物霊の力を借りることで素早く駆け寄り、仄かに赤みがかった刀身を持つ小太刀を大きく振りぬく。
火を操る魔物の爪から作られたと伝えられるその小太刀は火の属性を有し、ハンターたちの推測通り植物にとっては忌避するべき属性だったのか食人植物はさらに距離を取ろうとした。
一番距離が開いていた最後尾の食人植物が触手を伸ばしながらバルバロスに向かって溶解液を吹きかける。
反撃しなければ逃げる前に始末される、そう理解しての行動だったのかどうかは分からない。
その攻撃に後押しされるように他の食人植物たちも各々の触手を伸ばしたり近場にいるハンターに溶解液を吹きかけたりと反旗をあげた。
溶解液が届かない距離で離れたところから近接戦を挑む仲間たちを援護するように、バレルが魔導銃「サラマンダー」で射撃攻撃を行う。
銃の側面にファイアパターンが刻まれた、赤銅色の銃身を持つ魔導銃は、その名の通り火の精霊の加護を受けていて火属性を持つ。
放たれた弾丸は炎のような光を纏いながら植物の本体と思しき部分に命中し、貫通痕を残した。
溶解液の貯蔵庫にもなっているらしい部分に貫通痕を受けたその一体は、ぼたぼたと雪の上に溶解液をたらしてひくひくと痙攣する。
じゅ、と嫌な音を立てて雪が微かに煙をあげながら蒸発し、露出した土がわずかに融解して小さな穴をいくつも作った。
溶解液に注意するという意味でいつも使っている大剣ではなく間合いが取れる槍で今回の依頼に赴いたミノアは、雪に足を取られないよう気をつけながら雑魔の背後と思しき場所から、長い柄に左右対称の柳葉型の鋭い穂先がついたシンプルな形状の槍を突き刺す。
貯蔵部分と思われる部分を突き刺して溶解液が飛び散っても事だと思ったのか、膨らんだ部分より少し上を貫いた槍を引き抜くと、先ほどの銃撃ほどではないがやはり多少は溶解液がしたたり落ちた。
「うーん……夕飯に持って帰ろうかと思ったけど……この溶解液の処理にかかる手間に報いてくれる美味しさは持ってるのかな、こいつら。
なんか触手の先とか含めて全体的に毒々しい色合いなんだけど溶解液以外に毒とか持ってて、食べた後季節外れの食中毒になるのもなぁ……」
倒した後のことを考えるミノアだが戦闘にはしっかり集中していて、反撃だとばかりに伸ばされた触手を槍を器用に捌いて切り落とした。
ルリは射撃に適した距離を保ちつつ、一番近い食人植物にリアルブルーで作られた黒色のオートマチック拳銃を向ける。
シンプルながらも扱いやすく、通常の拳銃より全体的に性能が高められているその銃で触手の付け根の辺りを狙って弾丸を撃ち込んだ。
触手の一本がぼたりと落ち、粘液がぼたぼたと垂れる。
粘液はどうも溶解液と同様の性質を持つらしく周囲一帯の雪が融解していった。
「うわー……距離詰めたくないって思いが増す光景だわ。毛皮のマントだけじゃなく体の内側まで火傷みたいな症状でそう」
近接戦になった時のために、刀身が人の身長ほどもある巨大な両手剣を用意してきてはいるができるだけ近づきたくない相手であることは確かだろう。
師人は届く距離にいた食人植物に対してランアウトで接近、その素早い動きについていけなかった食人植物が回避のタイミングを逃している隙に、握り手のついた左右に巨大な刃を備えたハサミを向ける。
握り手を握る込むことにより師人のマテリアルに反応して魔導機械の刃は素早く開閉して触手を切り落とした。
回避を優先しつつ、手数は少なくとも確実に当てる戦法を取る師人に動きの遅い食人植物の一体が溶解液をぶちまけながら地面に落下、その後はピクリとも動かなくなる。
「……面倒くさい最期を迎えてくれますね。弱った個体は遠距離から攻撃して止めを刺していただいた方がいいでしょうか」
鼬の最後っ屁的な溶解液のぶちまけっぷりに、辛うじて回避した師人が思わずといった様子で息を吐く。
少量でも予想以上の溶解能力を誇る溶解液を大量に、しかも頭からかぶったら色々な意味で悲惨だということはその飛び散り具合をみた全員が思ったらしく、止めは後衛が、そして止めを刺せそうな個体には前衛組は巻き添えを食らわないように近づかないように、という意見で一致した。
藤乃はまだ元気そうな個体に、黒い柄に七色に輝く刃を取りつけたグレイブでより精度の高い、確実な一撃を叩き込む。
「溶解液をまき散らしてお亡くなりになるだなんて、最後まで迷惑な方々ですこと!」
溶解液の貯まっている本体部分はあまり深く斬らないように気を付け、触手を切り落とすことで相手を消耗させながら藤乃が思わずといった調子で憤慨する。
彼女によってもう一撃で致命傷になりそうになった個体から距離を取るように仲間に声をかけた上で、真朱也が輝く光の弾を対象に向かって飛ばし、衝撃によってダメージを与える。
先ほどの一体と同様、周囲に溶解液をまき散らしながらぼたりと地に落下した食人植物はどうやら倒すことができたらしく動く気配はない。
バルバロスが相手取っていた一体をバレルがサラマンダーで射抜いて止めを刺し、残りは二体。
ヒットアンドウェイを繰り返していたあかりが溶解液を受けたのを見て、被った量は少ないにしろ体の内側にどれだけ被害が出ているか分からないということで真朱也がヒールで怪我の治療をする。
ミノアがフラメアで突き刺すことで動きを封じている隙にルリが拳銃で打ち抜いて二体の内一体を無力化。
残りの一体も近接組が弱らせ、後衛による一斉攻撃で程なく撃沈し、周囲は飛散した溶解液で荒れてはいるが雪山に静寂と平穏が戻った。
「……雑魔化したての物は珍味として食される方もいらっしゃる……ということでしたが……大部分が飛散したことが予測されるとはいえ中々侮れない威力の溶解液を有していますし、食されるのでしたら医者を手配したうえでの方が安全では?」
どんな味がするのか、夕飯の材料に、と発言していた真朱也とミノアに対して師人が冷静に意見するとそこまでして食べたいと思えるほど食欲をそそる外見でなかったこともあり、残骸を動物が食べて溶解液の犠牲になるのも問題だから、ということで、その場がちょうど拓けていたこともあって焼却して処理することで話がまとまった。
「では、後は依頼主の方が拾い損ねた薪を集めてお届けしてからオフィスに報告に戻りましょうか。
バル爺様、最初から最後まで囮役、お疲れ様でした」
「おう、そうだの。相手が思った以上に動きが鈍かったお陰で助かった。
溶解液が武器や防具についた奴は必要ならウィスキーを貸すぞ。
古来より、溶解液はアルコールで洗い流すもの」
バルバロスが笑いながらウィスキーの瓶を差し出し、その好意に甘えることにした者たちが武器と防具を洗い流した後、改めて多めに薪を拾って一行は雪山を後にしたのだった。
何とも時期外れなことに雪山に人を食らう植物が五体現れた、と報告が入り、八人のハンターは討伐と、ついでに依頼主の男性が集めそこなった薪を代わりに集めてこようかと目撃された地点へと向かったのだった。
「植物雑魔か……なんとも季節はずれよな。存在していても邪魔なだけだ、さっさと処理するか」
バルバロス(ka2119)は囮役として薪になりそうな枝を拾いながら呟きを漏らした。
仲間を信じ、周囲を警戒することなく薪集めに集中するバルバロスを少し離れた場所に隠れた仲間たちが見守っている。
「人を食べちゃうのはいけないこと! そんな悪い植物は私が退治しちゃう!」
敵が現れるまでバルバロスを見守る側の攻撃班の一人、桜庭 あかり(ka0326)は待機している間雪だるまを作るふりをしながら辺りを警戒したり、仲間に雪玉を投げるふりをしながら警戒をしたりしている。
警戒している相手の前には姿を現さないという事前情報からの行動なのだが、もしかすると雪にはしゃぎたいという思いもあるのかもしれない。
「植物系なら火に弱そうなものだが……さて、どんなものか。
雪山で、姿の見えぬ敵……まるでホラーだ」
そんなあかりのはしゃぎっぷりを見るともなしに見ながら、バレル・ブラウリィ(ka1228)はこれから対峙することになる食人植物の弱点や特性について思いを馳せる。
「……最近、この辺りで獲物が取れないと思ったら、食人植物のせいだったのね」
野宿しながら生活しているミノア・エデン(ka1540)は、この付近でも山や川で狩猟したり、今は季節的にあまりないかもしれないが山菜を取ったりして日々の食事を調達しているらしい。
食人植物を倒す理由が一つ増えた、と小さく呟いた彼女の言葉を、攻撃班のメンバーは深く突っ込まずにおくことにした。
どんな理由にしろ討伐対象に対して討伐の意欲を高めることはメンバーにとってもいいことだろう、多分きっとおそらくは。
「動物は冬眠の時期だってのに動き回ってまで食いもん探すなんて、食い意地が張った植物もいたもんだなあ。恐れ入るぜ」
毛皮のマントを防寒具として羽織ったルリ・エンフィールド(ka1680)は今回の敵に多少呆れの入り混じった感想を漏らす。
「食虫植物……は、あんまり詳しくないんですが……。まぁ、これもいい勉強でしょうか。
……食虫というより食人ということでしたが……そんな物騒な植物の生態を勉強して役に立つかは分かりませんが、滅多に出くわせるものでもない気はしますし……」
クリムゾンウェストに転移してからとある貴族に拾われ、彼らのマナーハウスの庭師として修業中の〆垣 師人(ka2709)はバレルとは違った意味で食人植物に興味を持っているようだ。
リアルブルーでは庭師の家系として過ごしてきたが扱ってきたのが和の庭だったためクリムゾンウェストの庭に関してはまだ分からないことも多い、ということがあるのか、それとも庭師としての生い立ちがそうさせるのか自然と植物には興味を惹かれるらしい。
「服だけでなく、皮膚や肉すら溶かしそうですわね。
食人、ということは動物で言う胃液のようなものを分泌して、なおかつそれを飛ばしてくるということでしょうか。
そんな植物は危ないので殲滅してしまいましょう。
……これが海にあったら、汚染がマッハでピンチですわ!?」
海が好きで、リアルブルーではよく素潜りや海女さんの真似事をしていた 刻崎 藤乃(ka3829)は体を震わせつつ、出現場所が大好きな海でなく山だったことに少し安堵した。
このような雑魔が出ること自体が問題なのだが好きな場所を荒らされたくない、というのは誰にとってもある思いだろう。
友人でありバル爺様と愛称で呼んでいるバルバロスが熱心に薪拾いをしているのを確認しながら、ストレッチをして素早く動いても問題ないよう準備しておく。
気温が下がると体が強張りがちだ。もし潜伏している攻撃班の方に奇襲があった場合、体が強張っていては思うように動くことができず厄介なことになるかもしれない。
他のメンバーもそれを憂慮したらしく藤乃に習って軽く体をほぐし始める。
「人を食う植物は一体どんな味がするんだろうな」
趣味が食事と読書である飴餅 真朱也(ka3863)は体を伸ばしながらそんなことを呟いた。
食べられるなら今日の晩御飯に持って帰りたい、と思っていたミノア以外の六人が、その発想はなかった、という顔で真朱也を半ば呆然と眺める。
「……なんか変なこと言ったか? ……お、おいでなすったみたいだぜ」
六人分の視線を集めた真朱也が不思議そうに首を傾げた弾みで動いた視界の先、バルバロスにゆっくりと接近する毒々しい緑色の植物。
「うわっ、こんなでけぇ植物が動き出すのかよ……冗談はよしてほしいぜ……」
成人男性を悠々と一人は飲み込めそうな巨大な植物がふよふよと浮遊しながらバルバロスに近づくのを見てルリが顔をしかめる。
「五体全て出てきたようですね。近くに別働隊が潜伏して、という事態は避けられたようですし、攻撃に移りましょうか」
師人が仲間に声をかけ、一斉にバルバロスと、彼と対峙している食人植物のもとへ駆け寄る。
囮という立場上、一番食人植物に近い位置にいたバルバロスが体内にマテリアルを満たすことで一時的に攻撃の威力を増加させ、祖霊の力を武器に込めて戦闘用の両手斧を大きく振りぬく。
切れ味が鋭く、斧の重量を利用した威力の高い一撃を出合い頭に叩き込まれた食人植物は怯むように動きを止めた。
視覚どこにあるのか分からないが視覚によって危機を察知したのか、それとも仲間同士で特殊な伝達方法でもあるのか。
先制攻撃を食らった一体が怯むと同時に他の四体も動きを鈍らせる。
どうやらこの獲物は楽々と狩らせてはくれないようだ、とでも思案するように。
なんにせよこの隙は覚醒者たちにとっては願ってもないチャンスだった。
バルバロスに向かって真朱也がプロテクションをかける。
光がバルバロスの全身を覆い、彼の防御力が強化された。
「礼を言うぞ。これで囮役を少しでも長く果たせるというもの。
自分から指名はしたがおなごに任せるには溶解液という厄介なシロモノがおまけでついてくるからな」
白ヒゲに覆われた口端を軽く上げ、振り返らないまま礼を言うとバルバロスは敵が怯んでいる隙に、と再び斧を振りかざす。
怯んでいるうえに元々の移動能力が低い食人植物に向かってあかりが、地上を高速で移動する動物霊の力を借りることで素早く駆け寄り、仄かに赤みがかった刀身を持つ小太刀を大きく振りぬく。
火を操る魔物の爪から作られたと伝えられるその小太刀は火の属性を有し、ハンターたちの推測通り植物にとっては忌避するべき属性だったのか食人植物はさらに距離を取ろうとした。
一番距離が開いていた最後尾の食人植物が触手を伸ばしながらバルバロスに向かって溶解液を吹きかける。
反撃しなければ逃げる前に始末される、そう理解しての行動だったのかどうかは分からない。
その攻撃に後押しされるように他の食人植物たちも各々の触手を伸ばしたり近場にいるハンターに溶解液を吹きかけたりと反旗をあげた。
溶解液が届かない距離で離れたところから近接戦を挑む仲間たちを援護するように、バレルが魔導銃「サラマンダー」で射撃攻撃を行う。
銃の側面にファイアパターンが刻まれた、赤銅色の銃身を持つ魔導銃は、その名の通り火の精霊の加護を受けていて火属性を持つ。
放たれた弾丸は炎のような光を纏いながら植物の本体と思しき部分に命中し、貫通痕を残した。
溶解液の貯蔵庫にもなっているらしい部分に貫通痕を受けたその一体は、ぼたぼたと雪の上に溶解液をたらしてひくひくと痙攣する。
じゅ、と嫌な音を立てて雪が微かに煙をあげながら蒸発し、露出した土がわずかに融解して小さな穴をいくつも作った。
溶解液に注意するという意味でいつも使っている大剣ではなく間合いが取れる槍で今回の依頼に赴いたミノアは、雪に足を取られないよう気をつけながら雑魔の背後と思しき場所から、長い柄に左右対称の柳葉型の鋭い穂先がついたシンプルな形状の槍を突き刺す。
貯蔵部分と思われる部分を突き刺して溶解液が飛び散っても事だと思ったのか、膨らんだ部分より少し上を貫いた槍を引き抜くと、先ほどの銃撃ほどではないがやはり多少は溶解液がしたたり落ちた。
「うーん……夕飯に持って帰ろうかと思ったけど……この溶解液の処理にかかる手間に報いてくれる美味しさは持ってるのかな、こいつら。
なんか触手の先とか含めて全体的に毒々しい色合いなんだけど溶解液以外に毒とか持ってて、食べた後季節外れの食中毒になるのもなぁ……」
倒した後のことを考えるミノアだが戦闘にはしっかり集中していて、反撃だとばかりに伸ばされた触手を槍を器用に捌いて切り落とした。
ルリは射撃に適した距離を保ちつつ、一番近い食人植物にリアルブルーで作られた黒色のオートマチック拳銃を向ける。
シンプルながらも扱いやすく、通常の拳銃より全体的に性能が高められているその銃で触手の付け根の辺りを狙って弾丸を撃ち込んだ。
触手の一本がぼたりと落ち、粘液がぼたぼたと垂れる。
粘液はどうも溶解液と同様の性質を持つらしく周囲一帯の雪が融解していった。
「うわー……距離詰めたくないって思いが増す光景だわ。毛皮のマントだけじゃなく体の内側まで火傷みたいな症状でそう」
近接戦になった時のために、刀身が人の身長ほどもある巨大な両手剣を用意してきてはいるができるだけ近づきたくない相手であることは確かだろう。
師人は届く距離にいた食人植物に対してランアウトで接近、その素早い動きについていけなかった食人植物が回避のタイミングを逃している隙に、握り手のついた左右に巨大な刃を備えたハサミを向ける。
握り手を握る込むことにより師人のマテリアルに反応して魔導機械の刃は素早く開閉して触手を切り落とした。
回避を優先しつつ、手数は少なくとも確実に当てる戦法を取る師人に動きの遅い食人植物の一体が溶解液をぶちまけながら地面に落下、その後はピクリとも動かなくなる。
「……面倒くさい最期を迎えてくれますね。弱った個体は遠距離から攻撃して止めを刺していただいた方がいいでしょうか」
鼬の最後っ屁的な溶解液のぶちまけっぷりに、辛うじて回避した師人が思わずといった様子で息を吐く。
少量でも予想以上の溶解能力を誇る溶解液を大量に、しかも頭からかぶったら色々な意味で悲惨だということはその飛び散り具合をみた全員が思ったらしく、止めは後衛が、そして止めを刺せそうな個体には前衛組は巻き添えを食らわないように近づかないように、という意見で一致した。
藤乃はまだ元気そうな個体に、黒い柄に七色に輝く刃を取りつけたグレイブでより精度の高い、確実な一撃を叩き込む。
「溶解液をまき散らしてお亡くなりになるだなんて、最後まで迷惑な方々ですこと!」
溶解液の貯まっている本体部分はあまり深く斬らないように気を付け、触手を切り落とすことで相手を消耗させながら藤乃が思わずといった調子で憤慨する。
彼女によってもう一撃で致命傷になりそうになった個体から距離を取るように仲間に声をかけた上で、真朱也が輝く光の弾を対象に向かって飛ばし、衝撃によってダメージを与える。
先ほどの一体と同様、周囲に溶解液をまき散らしながらぼたりと地に落下した食人植物はどうやら倒すことができたらしく動く気配はない。
バルバロスが相手取っていた一体をバレルがサラマンダーで射抜いて止めを刺し、残りは二体。
ヒットアンドウェイを繰り返していたあかりが溶解液を受けたのを見て、被った量は少ないにしろ体の内側にどれだけ被害が出ているか分からないということで真朱也がヒールで怪我の治療をする。
ミノアがフラメアで突き刺すことで動きを封じている隙にルリが拳銃で打ち抜いて二体の内一体を無力化。
残りの一体も近接組が弱らせ、後衛による一斉攻撃で程なく撃沈し、周囲は飛散した溶解液で荒れてはいるが雪山に静寂と平穏が戻った。
「……雑魔化したての物は珍味として食される方もいらっしゃる……ということでしたが……大部分が飛散したことが予測されるとはいえ中々侮れない威力の溶解液を有していますし、食されるのでしたら医者を手配したうえでの方が安全では?」
どんな味がするのか、夕飯の材料に、と発言していた真朱也とミノアに対して師人が冷静に意見するとそこまでして食べたいと思えるほど食欲をそそる外見でなかったこともあり、残骸を動物が食べて溶解液の犠牲になるのも問題だから、ということで、その場がちょうど拓けていたこともあって焼却して処理することで話がまとまった。
「では、後は依頼主の方が拾い損ねた薪を集めてお届けしてからオフィスに報告に戻りましょうか。
バル爺様、最初から最後まで囮役、お疲れ様でした」
「おう、そうだの。相手が思った以上に動きが鈍かったお陰で助かった。
溶解液が武器や防具についた奴は必要ならウィスキーを貸すぞ。
古来より、溶解液はアルコールで洗い流すもの」
バルバロスが笑いながらウィスキーの瓶を差し出し、その好意に甘えることにした者たちが武器と防具を洗い流した後、改めて多めに薪を拾って一行は雪山を後にしたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 5人 |
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依頼相談卓 バレル・ブラウリィ(ka1228) 人間(リアルブルー)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/01/13 15:27:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/09 18:55:27 |