知った声には御用心

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
3日
締切
2019/02/13 07:30
完成日
2019/02/18 22:06

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ハンターオフィスにて
 あなたたちは、森に現れる雑魔の討伐を依頼されたハンターです。
 その森には、知った人の声で惑わしてくる幽霊が出ると言うのです。知人だと思ってそちらに行ってしまった人たちは、謎の小さな影に囲まれてしまい、衰弱して発見される、と言うのが通報内容でした。

「割と狡猾な雑魔でね、複数で入ったところを狙ってるんだ。仲間の声を真似てそちらに誘い出すって言う。一人で入ったのに知り合いの声がしたら流石に警戒するでしょ? 知能犯だよね」
 と、説明をするのはオフィス職員のC.J.です。
「害獣を駆除したり、間伐のために入ったりすると出くわすみたいだね。あっちで作業してる仲間が呼んでるって感じかな。最近までは気のせいとか、暑さとか寒さとか空腹のせいだと思われてたんだけど」
 彼はそこまで言うと、通報内容の紙を見て少し悲しそうな顔をします。
「ただ、最近霧が出ちゃってて。それで害獣駆除で事故が起きたんだ」
 呼び寄せられた先で、仲間の矢が飛んできて当たってしまったのだそうです。これはいよいよおかしい、と言うことになりました。今まで幻覚だと思われていたことも、歪虚の仕業なのではないかと。ハンターオフィスに通報が入ったのでした。
「まあ、君たちは大丈夫だと思うけど、くれぐれも気をつけてね」
 そう言って彼はあなたたちを送り出しました。

●霧の森
 あなたたちは現場の森に到着しました。聞いたとおり、霧が出ており、少し離れるとかなり見えづらくなります。
 あなたたちは準備をしてから森に入りました。しかし、木の陰や鳥の声、枝の音、動物の足音に気を取られている内に……あなたたちはバラバラにはぐれてしまいました。
 見えるものは、自分の手、ぼんやりと浮かぶ木の黒い影だけです。
 頭上で鳥が羽ばたきました。あなたたちの内、もし気の小さい人がいれば、その音に驚いて肩を振わせたかもしれません。

 その時でした。

「ああ、そんなところにいたんだ。心配したよ、さあ、皆こっちにいるから、一緒に行きましょう」

 と、言うような意味の声が聞こえました。それは同行者の一人の声です。
 あなたはそれに安心したかもしれません。
 もしくは、おかしいと思ったかもしれません。

 霧の中で、戦いが始まろうとしていました。

リプレイ本文

●恥ずかしい個人情報
「こっちの世界に来て良かったなあって思ったのはぁ、不思議現象はほとんど雑魔でちょこっと精霊さま、脳筋に薙ぎ払って解決できることですぅ。こうゆう時ハンター最高ッ! って思いますねぇ」
 星野 ハナ(ka5852)は満面の笑みで言い放った。
「ヴィルジーリオみたいなこと言ってる……」
 雑魔くらいだったら、ファイアーボールで早めに片がつきますよ、と言った知り合いの魔術師を思い出しながらC.J.は呟いた。そういえばハナとあいつ交流あったよな……類は友を呼ぶんだなぁ……とかなんとか、妙齢の女性であるハナに対して大変失礼なことを考えているのだが、知らぬが仏、言わぬが花。クレート・ジョルダン三十二歳。そろそろ言って(都合の)良いことと悪いことの区別くらいはつく。
「正気を失う訳ではないのだろう?」
 と、顎に手を当てながら尋ねるのはレイア・アローネ(ka4082)だ。
「うん。一緒に入って別行動かはぐれた仲間だと思ってついついそっちに行っちゃうみたい。正気を失うって言う話は聞いてないな」
「霧だけでも落ちたりぶつかったり、危ないのに」
 そう言って首を横に振ったのはソナ(ka1352)だった。
「歪虚の方だけでも何とかいたしましょう」
「そうだね、お願いだよ。自然現象はどうにもできないけど、歪虚はハンターならどうにかできるし、どうにかできるものは排除したいからね」
「これ奇声をあげたり個人の恥ずかしい事叫べば充分差別化が図れそうな気がしますぅ。トランシーバーだと方角分かりませんしぃ」
「は、恥ずかしい事……」
 ハナのアイデアに、自分の恥ずかしい個人情報でも思い浮かべているのだろうか。レイアがやや引き気味に呟く。
「個人の事情はともかくとして、名前は言わない方が良さそうですね」
 ソナが言った。
「多分、知らないでしょうし、こちらの名前を答えられるかで試すのも良いかもしれません」
「そこまでの情報はないけど、知る手段はないと思う。森の近くについたら名前は出さない方が良いかもしれないね」
 ところで、この三人の恥ずかしい事ってなんだろう。今回来ているハンターたちについては、かっこいい報告書しか読んでいないのでC.J.には想像がつかない。
「僕も行こうかなぁ……恥ずかしい個人情報、超気になるんだけど」
「それは勧めないぞ……色んな意味で」
 レイアが片眉を上げた。C.J.は肩を竦める。
「わかってるよ。気をつけて行ってきてね!」

●下準備
「本当に霧が濃いな」
 森の入り口で、レイアが目を細めた。言われているように……いや、言われているより霧が深い。
「もしはぐれてしまったら、バイオリンを弾きますね。位置の目安にしてください」
 ソナが黒い楽器を見せて言う。
「お願いしますぅ。ソナさんの声がしたら参考にさせていただきますぅ。私は大声で歌いますねぇ」
「さて……霧も厄介だが、その、どうにか騙されないようにはできないだろうか」
「レジスト、試してみますか?」
 ソナがバイオリンを軽く持ち上げた。
「ああ、頼みたい」
 レイアがそう言って頭を軽く下げると、ソナはバイオリンを奏で、祝福するようにその上から術を掛けた。光がレイアの頭から全身を覆う。これで、混乱させられるのを多少は防げるかもしれない。
 ハナの方は呪詛返しで迎え撃つつもり満々だ。陰陽符と呪符を揃えている。トランシーバーと魔導スマートフォンを取り出すと、
「じゃあチャンネル合わせましょうかぁ。はぐれないに越したことはないですけどぉ、念のため」
 ハンターたちは、トランシーバーのチャンネルとスマートフォンの番号を交換する。
(これってぇ、万が一はぐれちゃっても、トランシーバーでずっとわめき続けたら相手の声シャットアウトできないんですかねぇ)
 ハナがそう思ったのは内緒である。

●知った声には御用心
 さて、三人は霧の深い森に入った。視界が悪い分聴力、触覚、嗅覚などで周りの状況を把握するしかない。雑魔探しに専念していたせいか、いつの間にか三人ともバラバラになってしまった。
「困りましたね」
 枝を手折ったり、草を結んだりして道しるべを残していたソナではあったが、出口がわかっても仲間の位置がわからないのは少々困る。
(と、言うことは、呼ばれてしまうのでしょうか)
 彼女は少し考えると、マッピングセットを片付けてバイオリンを弾き始めた。それと同時に、自分にもレジストを施す。遠くでハナが大声で歌っているのが聞こえるが、探しに行くには少々遠い。
「ああ、そんなところにいたのか。ついて来ないから驚いたぞ」
 不意に、レイアの声が霧の向こうからした。
「皆、あなたがいなくなったから心配していた。さ、足下に気をつけて。こちらに来られるか?」
 ソナはひときわ高くバイオリンの弦を震わせた。霧が揺らぐかと思うような、高く、深みのあるビブラートが、森の奥に漂っていく。
 直感的に、ソナはそれがレイアでないと判断した。
「いいえ、どうぞこちらに。ここからなら、まだ出口に戻る道しるべが見えますので。いくら私たちがハンターであっても、霧の中で出口がわからないのは少々危険です。全員が合流できるまでここにいた方がよろしいのではないでしょうか?」
 バイオリンは弾き続けている。相手がどう出るか。
 少しずつ、気配がこちらに近づいて来る。本当にレイアならそれで良いが、そうでないなら。
 その時だった。
「今誰か私を呼んだか?」
 レイアの声。それに間髪入れずにハナからの返事が入った。
「星野ハナは今皆さんを呼んでません~! 私の呼び声が聞こえたら雑魔ですのでぇ、遠慮なくブッコロしちゃって下さいぃ!」
 このやりとりの最中も、ソナを呼ぶ声が聞こえる方から声はしない。間違いなく偽物であると、彼女は確信した。
「どうされましたか? どうぞこちらへ」
「ふふふ」
 子どもの声がする。ソナは身構えた。黒いもやのようなものが、こちらにめがけて飛んでくる。
 反射的に軸足で回ると、それには追い掛けるほどの器用さはなかったらしい。先ほどまでいたところをふわりと通り過ぎていく。
「ふふっ」
 やがて、向こうから近づいて来た。六歳くらいだろうか。少女の姿をしているが、全身が灰色だ。髪も、手も、歯も、眼球も、何もかもが灰色だ。
 ソナは一度演奏を止め、通信機を取り出した。
「ソナです。こちらも雑魔と遭遇しました。バイオリンの演奏を続行します」
「こちらもブッコロ次第すぐ駆けつけますぅ!」
 ハナの頼もしい返事が勢いよく飛び出した。

●トランシーバー
「はぐれてしまった、か」
 レイアは、すぐ見える所にいない二人に気付いて顔をしかめた。話の通りなら、森の中で一人になれば敵からの接触があるはずだ。レイアは剣を抜いて、慎重にあたりを警戒する。
「あっ、やだぁ、そんなところにいたんですかぁ~」
 背後からハナの声がした。しかし、それがハナでないことはすぐにわかる。何故なら、ハナは大声で季節外れのクリスマスソングを歌っており、それが明らかに違う方向から聞こえるからだ。
「もぅ、突然いなくなったりしないでくださいよぉ。みんなこっちにいますからぁ、行きましょ?」
「今誰か私を呼んだか?」
 レイアはトランシーバーで二人に通信を入れた。ハナの声が間髪入れずにトランシーバーと、歌がしていた方向から聞こえる。
「星野ハナは今皆さんを呼んでません~! 私の呼び声が聞こえたら雑魔ですのでぇ、遠慮なくブッコロしちゃって下さいぃ!」
「良いだろう!」
「うふふ」
 気付かれたことを察したのだろう。相手の方から近寄ってきた。年齢は八歳程度だろうか。全身灰色で、ショートヘアの少女、と言った風体だ。両手を前に差し出すと、そこから黒いもやが、レイアに向かって伸ばされる。
「っ!」
 彼女はそれを回避した。
「ソナです。こちらも雑魔と遭遇しました。バイオリンの演奏を続行します」
「こちらもブッコロ次第すぐ駆けつけますぅ!」
 レイアはカオスウィースにソウルエッジをかけた。そのまま、天羽羽斬も抜いて二刀流を仕掛ける。
 一撃目は回避された。しかし、間髪入れずに振るわれた二撃目が、少女を一刀のもとに斬り伏せる。
「きゃーっ」
 少女の姿はそのまま霧の奥へ消えていく。確かな手応えはあった。恐らく、霧の中で消滅しているだろう。
 しかし、まだ気配は消えない。レイアは油断なく辺りに注意を巡らせた。

●季節外れのメリークリスマス
「あるぇ~、みなさん一斉に迷子ですぅ? それとも私だけ迷子ですぅ?」
 ハナはきょろきょろと辺りを見渡しながら森を歩く。気が付けば、ソナもレイアも見当たらない。彼女は少し考え込むと、大声でクリスマスソングを歌い始めた。他に賑やかな曲が思いつかなかったのである。
「あら……そんなところで迷われていたんですね」
 ソナの声がする。ハナは振り返るが、構わずに歌い続ける。
「あなたが迷子になるから、心配していたんですよ。さあ、一緒に行きましょう。皆待っています」
 別人である、とハナは看破した。呪詛返しを使うまでもない。マテリアルに揺られて、ふわりと髪が浮く。青くなった瞳を細めて、彼女は言った。
「ねぇ、あなた、バイオリンはどうしたんですかぁ?」
 相手は答えない。やはり偽物だ。ハナが確信したその瞬間だった。
「今誰か私を呼んだか?」
 レイアからの通信が入った。ハナはすぐにトランシーバーを掴むと、送話ボタンを親指でガッと押し込んで、怒鳴る。
「星野ハナは今皆さんを呼んでません~! 私の呼び声が聞こえたら雑魔ですのでぇ、遠慮なくブッコロしちゃって下さいぃ!」
「ソナです。こちらも雑魔と遭遇しました。バイオリンの演奏を続行します」
「こちらもブッコロ次第すぐ駆けつけますぅ!」
 ハナは牡丹灯籠を扇子のようにザッと開いた。五色光符陣のまばゆい光が、相手を封じて焼き尽くす。光の中に、二人分の影が浮かび上がったのを彼女は見た。
 入れ違うように、黒いもやが彼女に襲いかかった。身構えたが、おそらくは使用者が倒れたのだろう。彼女に降りかかる前に霧散する。
「今向かいますぅ! お二人音を立てていてくださぁい!」
「迎えに行く!」
 レイアが応じた。ハナは再びクリスマスソングを大声で歌う。レイアも大声で呼びかけた。それで、お互いの位置を少しずつすり合わせている内に、二人は霧の中で出会い……。
「危ない!」
 相手の後ろから追い掛けて来ている雑魔に気付いた。レイアは、ただの斬撃では届かないと踏んで、カオスウィースに満ちていたオーラを解放する。ハナは再び五枚の牡丹灯籠を投げつけた。

●弦の響き
 ソナはバイオリンを弾いてステップを踏みながら、相手の間合いに入ってセイクリッドフラッシュを放った。
「きゃっ」
 悲鳴は上がるが、感情がこもっていないように思える。
「……ふふ」
 今ので倒すには至らなかったようだ。それでも手応えはある。ソナは相手の攻撃を警戒する。再び、黒いもやが襲いかかってきた。彼女の予想通りの方向から、予想通りのタイミングで伸びてきたそれを、再びひらりと回避する。
「星野ですぅ! ソナさん大丈夫ですかぁ!」
 トランシーバーと、遠くからハナの大声が聞こえた。ソナは、無事であることを知らせるために、ひときわ高くバイオリンを鳴らす。
「あっちだ!」
 レイアの声が同じ方向から聞こえる。あまり敵に接近しても帰り道を見失うだろう。バイオリンの演奏がサビに差し掛かったその時だった。
「歪虚死すべし慈悲はないッ!」
「動くな!」
 ハナの五色光符陣と、レイアの二刀流が炸裂した。
「きゃあーっ」
 あの、感情のこもらない悲鳴が、二人分、霧の向こうに高く伸びていく。それでもまだ一人残っていた。ソナは再びセイクリッドフラッシュを放った。その一人も、長い悲鳴を上げて消滅。辺りには、三人の息づかいと、バイオリンの音だけがしている。物騒な気配はもうしない。
「ソナさぁん! 大丈夫ですかぁ!?」
「おかげ様で無事でした」
 演奏の手を止めたソナは穏やかに微笑む。
「ずっと弾いててくれたからすぐわかった。よく動かないでいられたな」
「ええ、道しるべを作っていましたから。そこから離れては、皆さんも帰れまいと思って……もう少し様子を見てから帰りましょうか」

●報告
 しばらく様子を見ていたが、それ以上現れる気配はない。全部で八体だったのだろう。ハンター数名には怖い相手ではなかったが、この雑魔が八体いるところに、今まで一般人が入っていたのかと思うと空恐ろしいものがある。
「うーん、良かった良かった。ところで、恥ずかしい個人情報、出た?」
 報告を受けたC.J.は伸びをしてにこにこしながら尋ねる。三人は顔を見合わせた。
「出すまでもなかったですぅ」
 ハナが肩を竦めた。
「そうだな。本当に良かったと思っている」
 レイアが頷く。
「ふふ、そうですね。皆さん、ずっとハンターの顔をされていらっしゃいましたから。個人情報が出る余地はなかったかと」
「なーんだ。まあ、雑魔討伐ある都度、個人情報晒してたら仕事にならないもんね。まあそれはその内ご飯の席で聞くから面白い話は僕のためにとっておいて」
 彼はまだにこにこしている。三人は顔を見合わせた。
「なあ、そんなに私たちの恥ずかしい個人情報が気になるのか?」
 いつになく楽しみにしているC.J.に、レイアが恐る恐る聞く。
「気になる!」
「好奇心は猫を殺しますよぅ」
「さりげなく怖いこと言うなよ。まあいいや。とにかく今日はお疲れ様。視界の悪い中で動き回って疲れただろうし、ゆっくり休んでね」

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参加者一覧

  • エルフ式療法士
    ソナ(ka1352
    エルフ|19才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 命、くれない?
    オルタニア(ka6436
    人間(紅)|21才|女性|霊闘士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/02/10 20:50:06
アイコン 雑魔の呼び声?
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2019/02/12 20:23:32