蠱惑のアミュレット

マスター:奈華里

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2019/02/17 07:30
完成日
2019/02/28 01:06

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●発狂?
 ここはフ・マーレの職人街。今日もあちらこちらの工房から作業する音が響いている。
 だが、ここ最近とある工房では異変が起きていた。
「おいおい、スペア…お前ホントどうしちまったんだい?」
 終始黙ったまま作業に没頭する彼を見て工房の仲間が彼に声をかける。
 だが、スペアは先輩相手でも態度を変えはしない。振り向きもせずに言葉だけを紡いで、
「別に…」
 と素っ気ない回答。熱心なのはいい事だが、正直彼を知る者は些か心配せずにはいられない。何故なら本来のスぺアは猪突猛進の熱血タイプだし、よく喋るこの工房のムードメーカー的存在だったからだ。
(あんな静かなスペアは初めてだ。何もないといいが…)
 作業する様子を横目で心配しつつ、仲間達は思う。
 しかし、残念ながらその後の彼はやはりどこか違う。
 それが判ったのは、これから三日後の事だ。
「フフ、クフフフフ…できた。出来たぜっ!」
 ばばーんと効果音がする位に掲げて見せて、彼の作り出した自信作はなんと超絶際どいビキニアーマー。
 従来のビキニアーマーでも充分際どいというのに、要所要所に透かしの意匠が施されていて大凡20%程装備面積が削減されていると推測される。
「ちょっ、スペア! おまえもそれなりの歳だから興味があるのは判るが、流石にまだ早いぞ!」
 工房長が彼を注意する。
「早いも遅いもないだろッ! それにこのアーマーなら回避率がぐんと上がっているし問題なんて」
 性能的には確かに問題はないと言えるかもしれない。しかしだ。日常装備して歩くにはそれ相応の勇気と覚悟と後…まぁ、色々必要となりそうだ。
「おい、本当にどうしたんだ! お前は防具でも一番盾が好きだって言ってただろう…何だってこんな」
 純粋だった筈のスペアのハレンチ防具に工房長が迫る。だが、彼はやはり変わらない。
「俺は悟ったんだ…盾なんて何の意味もない。受け流すより、始めから武器を振らせなきゃいいってな」
 何処か不気味な笑みを浮かべてスペアが言う。そんな彼の右手の薬指には怪しげな指輪が輝いていた。

●指輪
「……ん? んんっ?」
 スペアと並んで若き才能の持ち主であるギアが目を見開く。
 それは道具屋のショーウィンドウに飾られていた防具の作り手の名を見たからだ。
「まさか…まさかですよね」
 見間違いでなければスペアが作ったものだとあった。
 彼とは以前一悶着あった仲であるが、腕は認めており互いに頑張ろうと言っていたのだが、これは一体どういう事だろうか。気になって道具屋の主人に聞くと、間違いなく店先のそれはスペアの作で間違いないらしい。
「嘘でしょう。まさかあんな、その…ねぇ」
 口に言い出しにくくてギアが口籠る。が、主人はそれをやはり否定しない。
「まあ、でも出来はいいからねぇ。うちでも取り扱う事にはしたが…なんて言うからしくはないよな」
「……」
 らしくない。その言葉通りだ。職人同士であるから何となく判る。
 作ったものには作り手の趣味と言うか、癖のようなものがどうしてもどこかしらに出てくるものだ。
 だが、あのビキニアーマーにスペアの情熱のようなものはまるでない。ただただ極限を求めたように…しいていえば、相手を惑わす為だけに仕立て上げられた感じを覚える。

 そこでギアは道具屋の帰りにスペアの元を訪れハッとした。
「工房長さん…あの指輪はいつから?」
 かなり細いものだが、一瞬光ったのが見えてギアが尋ねる。
「ん…んー、さぁなあ。しかし、何でまたあんな…」
「もしかするとあれのせいかもしれませんよ」
 直感的に嫌な感覚を覚えて、彼が言う。
「いや、しかし作業時は危ないもんも扱うからな…そう言う時の為に魔除けや呪い避けのアミュレットを…ってああっ!!」
 一通りスペアの姿を見て、工房長が声を荒らげる。
「スペアのやつ、うっかりつけ間違えたようだな…曰くつきのアミュレットと」
「という事はあれは?」
「多分うちにきた何らかの効果が付加された指輪だな。たまに変なやつも混じってる事があってなぁ…どうして間違えたかな」
 工房長が頭を抱える。
「でも、という事はアレを外せば元に戻る筈ですし…スペアさん、それ外して下さい」
 善は急げと早速スペアの元へ進み、はずすよう指示を出す。だが、
「あぁ? 何でだよ。これで俺はいい感じなんだ…おまえの言う事なんか聞くかよっ」
 スペアはぎゅっと指輪のある手を隠し後退る。
「いいから外せ。でないと他にどんな変な事が起こるか判らんし」
「い、嫌だ! これがあれば、もっともっと魅力的で最強のアーマーが作れる気がするんだよ。だから、取る訳にはいかない!」
 スペアが工房長の言葉さえも拒絶し逃走し始める。思いの外速い足に二人はついていけない。
 だが、このままでは工房長が言う様に他の何らかの効果が発動して、スペア自身に危険が及ぶかもしれない。そうなっては、このフ・マーレの貴重な財産がひとつ消えてしまう事にもなりかねない。
「急いで追いましょう。そう遠くには行っていない筈です」
 ギアが言う。そんな彼らを見つけて、ハンター達もスペアの捕獲に乗り出すのであった。

リプレイ本文

●偏見
 ビキニアーマーとは、世の殿方にとっての夢と希望が詰った究極の防具である。
 だが、その素晴らしさを理解する女性ハンターは少ない。けれど、決していない訳ではない。
「こ、このビキニアーマー……とても素晴らしいです」
 道具屋の前ではサクラ・エルフリード(ka2598)がスペアの最新アーマーを前に目を輝かせる。
 胸元の装飾の細かさと腰回りを固定する金具の秀逸さ。極限まで削ぎ落されたフォルムだが、それでも大事なところは決して露呈しておらず、肝心要の金具は丁寧に作られており、この分だとポロリの心配もない。
(これは買わねばっ)
 ビキニアーマー騎士団長の称号を持つ彼女が早速お財布の中身を確かめる。
 だが、残念な事に今の手持ちでは提示額に届かない。
「ハァ…困りました」
 ぜひとも手に入れたい一品であるが、先立つものがなければ仕方がない。
 とその時、彼女の横を猛ダッシュですり抜けていく青年がいて、
(……何か、あったのでしょうか?)
 見つめる先で赤毛の青年の指先がキラリと光る。
(指輪、でしょうか?)
 男性の指輪とは珍しい。けれど、この時は気にも留めていなかった。

「はぁ、ビキニだと? 断言してもいい。あんなもんで回避は上がらん」
 胸元全開の服のルベーノ・バルバライン(ka6752)が話を聞いてそう言い放つ。
「いや、でもたまにならうまくいく場合もあるでやがりますよ」
 そう言うのは修道女のシレークス(ka0752)だ。
 彼女もまた割と胸元が露出しているが、自称・不良修道女らしいからそれもありなのだろう。
「確かに上手くいく場合もある。それは認める。だがな、それは本人の回避力頼りだろうが」
 相手の目を引き付けて、その間にこちらが動く。
 そう言われれば、本人頼りという事になるのかもしれない。
「そう言う事になるでやがりますかねぇ。難しい事はよく判らないでやがります」
 別にそれでも結果的に回避が上がっているのだからいいのではと思う彼女であるが、ここで話をこじらせてもと思い、そこで話を切り替える。
「で、この辺の地図はないでやがりますか? 後、行きそうな場所も教えやがれです」
 闇雲に歩き回った所で地の利はスペアにある。となれば、こちらは情報で攻めるのみだ。
「そういえばよくこのパン屋を利用していたっけか…」
「あ、そこで僕も会った事がありますね」
「後、ここは素材の卸問屋だ。馴染みだから匿って貰っている可能性もあるぞ」
 工房長を始め職人らの言葉で次々と目ぼしい場所がピックアップされていく。
「おい、あんたらが見失った場所は何処だ?」
 そんな中、ルベーノには別の考えがあるようで…唐突に見失った場所を二人に尋ねる。
「えーと、ここら辺りですが」
「だったら、俺は先に行ってるぜ」
 彼は逸早く町に出る。そして彼は捻りなしの大胆行動。
「おーい、ビキニ鎧作りのスペア、スペアはどこだ~!」
 大通りのど真ん中を大声量でルベーノが呼びかける。
「おい、スペアってあのスペアか?」
「まさか、だってあの子はまだ十代でしょ?」
 その言葉に街人の反応はそんなもの。しかし、本人にとってはどうだろうか。
「誰だよ、アイツ…工房長の回し者か?」
 こそりと裏路地に身を潜めて、ルベーノの行動に少しの苛立ち。ハレンチ防具とて作った本人からすれば宣伝されるのはまあいい。言い方が気に食わないようだが、それよりも捕まえられる方が問題のようだ。
(何で外す必要があるんだ? 折角いいイメージが沸いてきているってーのに)
 薬指の指輪がきらりと光る。
 紫色の石の他には金属部分に蔦のような細工が施されていて見る者を魅了する。
(きっとあいつら妬んでるんだ)
 外せといったギアの顔が思い出される。けれど、言いなりになるつもりはない。
「あ、あの…ビキニ鎧作りの方がこの辺にいるんですか?」
 と大通りではサクラがルベーノにそう声をかけていた。
「ああ、今探している所だぜ。年は18位で職人エプロンをしていて、奇妙な指輪をしているらしい」
「奇妙な指輪、と言うと?」
「うむ。詳しくはここからすぐのギアと言う奴に聞くといい」
 ルベーノがそう言い出てきた工房を指差す。
「あの、あなたはその職人さんを見つけてどうするおつもりですか?」
「まあ、見つけろって事だが、その指輪が呪われてるらしいからな。とりあえず俺専用のビキニ鎧を作らせて体力でも奪ったのち抜いてみるさ」
 彼女の問いににやりと口元をつり上げ彼が言う。
「おや、お久し振りです。サクラさん」
 そこへシレークスとギアが現れて、二人共彼女とは初見ではないと見える。
「ビキニアーマー…私も探します」
 探すのはあくまでスペアであるが――事情を聞いてサクラが決意する。
「お、その様子…これは何だか面白くなって来やがりました」
 にやにやとシレークスが微笑する。
「で、その職人さんの特徴は…」
「あぁ、そうでやがりますね。まずはこのギアと同じ位で…赤毛の熱血。そして指輪を…」
「赤毛で…ゆび、わっーーー!!…」
 思わず大声を上げるサクラ。そう指輪の青年と言えばさっき見た青年に間違いなかった。

●職人魂
「くそー…折角のイメージがぁ~」
 路地裏に潜んでからかれこれ数時間。太陽ももう傾き始めている。
「そういえば昼飯食べ逃したんだっけ…あのパン屋、まだやってっかな?」
 この時間なら少し割引しているかもしれない。小銭しか持ち合わせていないが、一つ位なら買えるかも。スペアが闇から移動する。が、勿論そこは既に張られている訳で。
「なっ、ぐあぁ」
「ほれ、大人しくするでやがります」
 自分より小さい相手に強烈なハグをくらい、スペアが悲鳴を上げる。
「あなたがあのビキニアーマーの制作者なのですね。私はサクラと申します。あれはとても素晴らしい。私とゆっくりお話させて頂けませんか?」
 とそんな中サクラは平然と自分に話しかけてくるものだからスペアは驚くばかりだ。
「え、別に…イイ、けど…このままじゃ」
「シレークスさん、放してあげて下さい」
 彼女の言葉にシレークスが拘束を緩める。そこでこっそりスペアの指輪を確認。
(話には右手の薬指だと聞いてやがりますが…ん? これは…まさか)
「ちょっ、いい加減放せよ。怪力ちびっ」
 そこで現実に戻されて、スペアの失礼な発言にカチンとくる彼女。
「誰が怪力ちびでやがりますか? これでもお姉さんなんですよ、わたくしは」
 元来ドワーフは身長が低い。彼女もそうなのだから仕方がないのだが、怒りに任せてスペアには制裁のスリーパーホールドをお見舞いする。
「ちょ…胸があたって…ぐっ、ロープロープ~」
 彼が顔を赤くしたり青くしたりしながら助けを求める。だが、これはもう自業自得だろう。

 一悶着を終えて、逃げないようにテラス席の机の脚に文字通りロープで繋がれたスペアである。
 けれど、とりあえず食事を済ませ一息つくと普通に二人と対峙する。
「なあ、何でこんな事すんだよ…鎧の話はどうなったんだ?」
 食後の珈琲を喉に流し込みつつ、彼が問う。
「そうです、アーマーでした。あのアーマーは完璧に近い。乙女心を判って尚ビキニアーマーの魅力もしっかりと引き出されている一品だと思います」
 店頭で見つけた時の感動を思い出しながらサクラが言う。
「だろ。やっぱ判る人が見れば判るんだって…工房長は石頭だからな。でも、判る奴がいて嬉しいぜ」
 その言葉をスペアは素直に喜ぶ。なんだかんだ言って彼にとって自信作に代わりはないのだ。
「ですが、アレはもっとよくなる筈です」
「えっ…」
 サクラからの続いた思わぬ言葉に彼がカップを置く。
「おい、お前。今度は俺のビキニ鎧作ってみぬか?」
 とそこへやって来たのはルベーノだった。街を大方一周し戻ってきたようだ。
「げっ、てめーは街中を大声で歩き回ってた大男」
 スペアが彼を見取り言う。
「ルベーノだ。お前が真の職人なら漢(おとこ)の為のビキニ鎧とて作れる筈だろう…それとも何か。女物しか作れないHENTAIなのか、貴様!?」
 テラス席で再びの大声量。変態呼ばわりされては黙ってはいられない。
「誰が変態だよ! 俺は本気でアレを作ったんだよッ。なのに、その言いよう…アンタみたいなおっさんのだろうと、頼まれた以上は俺だって作ってみせらぁ! 見てろっ、ド肝抜かせてやるからなっ!!」
 右手の拳をぐっと握りしめ、スペアが瞳の奥に炎を燃やす。
「ハーッハッハッ。その意気たるや良しっ! ならばさっそく採寸よぉ!」
 ルベーノがそう言い、スペアを小脇に抱え歩き出す。
 するとスペアに繋いでいたロープによりテーブルもその後を引き摺られる訳で。
「ちょっ、ルベーノ。待ってって!」
「テーブルテーブル!」
 そんなルベーノに呆気にとられながら二人は彼の後を追いかけるのであった。

●漢のビキニ
 そこからスペアの漢用ビキニアーマーの制作が始まる。
 ビキニと言って女性の水着を連想する者が多いが、最近では男性用のビキニもあるとか。だが、ハッキリ言ってそれ程見たいものではないだろう。どんなにイケメンであっても裸体に近いその姿を晒すのには勇気がいるし、見せられる方も目のやり場に困ってしまうのが現状である。だが、その羞恥心をも凌駕して着てやろうというルベーノには正直頭が下がる。
「なぁーに、我々格闘士は熟練すれば全裸アクセサリーでも充分戦闘に耐えうるからな、心配はいらん」
 そう言って、完全に受け入れ態勢。時に発想の手助けとしてマッスルポーズなんかも交えて日夜スペアの元を訪れている。
「ほ、本当に大丈夫でしょうか…」
 ギア他圧倒的多数の職人達がこの二人の今後を心配する。
 が、スペアの方もあれだけ言われて完全に火がついてしまっているらしく、以前のように精力的にデザインから素材の加工までの工程をこなしている。
「妥協なんかしねぇ…絶対にぎゃふんと言わせてやるぜっ!」
 鉄を叩く腕に力が入る。燃え盛る炉の前で加工する彼の姿に皆が注目する。
 そうして、十数日でスペアはルベーノ用のそれを完成させる。
「おおっ、これが…」
「漢用、ビキニアーマー…」
 やはり女性もの同様上下セットらしいが、果たして男性ものに胸当ては必要あったのか。一部では大胸筋サポーターだと話題になった事があったが、この胸当ては体幹を正位置で支える背筋矯正の意味を担っているとか。肌の露出が多いこの鎧にあって、縮こまりやすい背筋を矯正し保つ大事な働きがあるらしい。
「ほほぅ、これはなかなかいいではないか」
 着用して早々ルベーノが感想を漏らす。
「へっ、俺にかかればこんなのちょろいって……三日、三晩…徹夜したけど…こんなの、マジ…らくしょー」
 ばたりっ
 言い終わらぬうちにスペアがその場に倒れ込む。
「す、スペアさん!?」
 慌ててサクラが駆け寄るも彼は寝息を立てていて、ただ単に眠気に勝てなかったらしい。
「よしよし、じょあこれで指輪を取れば一件落ちゃ…く」
『ええっーーーーーーーー!!!!』
 スペアの指に注目した者達から声が上がる。
「フッフッフ、皆が驚くのも無理はないでやがります」
 そんな中シレークス一人だけは普通に笑みを浮かべている。
「それはどういう…」
 そう問う仲間達を前に彼女は悪戯に微笑み、スペアはただ小さく寝言を呟く。
「ははっ…やっぱ、俺って、天才…だぜ…」

「何、元々呪われてなかっただと?」
「多分そうでやがるです。わたくしが見た時にはすでにひびが入っていて、あっさりと抜けやがりましたから」
 シレークスの言う見た時とはパン屋で捕獲した時の事だ。
「この石って確かアメジストですよね? という事はパワーストーン、というやつでしょうか?」
 サクラが石を見つめて問う。ちなみにアメジストの効果には精神安定の他に集中力アップが有名か。
「けど、たかが石だろ? 呪われてないならなんであんなに変わったんだ?」
 スペアの先輩の一人が疑問を口にする。
「えー…と、非常に申し上げにくい事ですが、もしかしたら、本当に覚醒したのかも」
「覚醒、と言うと?」
「極たまになんですが、僕も素晴らしいものを目にするとピカッとインスピレーションされる事があって…彼はもしかしたら、その指輪の意匠に刺激され今まで以上にやる気になったのでは?」
 ギアが遠慮がちに言う。
 しかし、言われてみれば何となく装飾部が指輪のそれによく似ていた気もする。
 つまりは、この指輪に刺激されただけだったのかもしれない。
「まあ、確かに呪いのそれならもっとおかしくなるのが普通だよなぁ」
 宙を見て苦笑いを浮かべながら工房長が言う。
「さては工房長。あの後、確認していませんでしたね?」
 その言葉にびくりとする彼。急ぎの事態であり、ギア共々咎めるのも忍びない。
「つー事は普通にスペアは集中していたと」
「多分…ですが」
 いつもがいつもだけに真剣モードに入ったスペアのそれが異質に見えても仕方がなかった。
 ならば、なぜ彼の鎧から情熱が消えていたのかと言えば、それも簡単な事だ。
「影響を受けたモノに近付けようとした。今回の場合、繊細で巧みな細工で美しさを求め突き詰めた結果、スペア本来の情熱が消えたと?」
「ハー、お騒がせもほどほどにしやがれです」
 シレークスが面白がりながらも大きな息を吐く。
「でも、という事はですよ。スペアさんは今回の事でビキニアーマーの素晴らしさを知った訳ですよね。という事はまだまだ新しいビキニアーマーが作り出されるかもしれないってことですよね」
 喜々とした様子でサクラが問う。
「ま、まあ…そうなるかもだが」
「フフッ、それはとても楽しみです♪」
 ビキニアーマー騎士団長として更なる応援を誓う彼女。同志募集にも今後力を入れねばとも思う。
「ハーハッハッハッ。まあ、どうでもいいではないか! これで俺の覇道にもまた一つ、新しいページが刻まれ、あのスペアにもいい箔がついたのだからなっ!」
 ルベーノが豪快に笑う。この後、確かに漢のビキニアーマー制作者としてスペアの名は広まる事になるのだが、さすがにそれを求める者の数は少なく恥ずかしい思いをするに留まって、行きついた先は。
「そうだぜ。何も肌を見せなくても魅了する方法はまだあるじゃん!」
 ペンを取りデザインするのはやはり盾か。事細かな彫刻を施しつつも、透かしを入れての軽量化。その彫刻の美しさで敵を魅了し、回避アップしつつ強度も確保したものを目指すとか。
 一方、究極の漢ビキニアーマーを手にしたルベーノであったが、道行く人々が彼を見るなり逃げ出していくから困ったものだ。
「ふむ…確かに回避率は上がっているのかもしれんが、これでは宿にも泊まれんな」
 漢のビキニアーマー…ある意味で究極にして最強、いや最恐か。
 その事を知るいい機会となった事に間違いないだろう。

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参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/02/15 15:26:18
アイコン 迷える職人を救え!
エメラルド・シルフィユ(ka4678
人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2019/02/17 06:02:29
アイコン 質問卓
エメラルド・シルフィユ(ka4678
人間(クリムゾンウェスト)|22才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2019/02/15 13:30:46