• 陶曲

【陶曲】嫉妬軍将の微笑み

マスター:大林さゆる

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2019/03/04 07:30
完成日
2019/03/12 01:24

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 自由都市同盟、魔術師協会広報室にて。
 魔術師スコットは、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)に『大地の裂け目』周辺の偵察を依頼することにした。
「ヴァリオスの街中でビエンナーレの祭りが行われているが、それに便乗して、大地の裂け目へと向かう者も少なからずいるようだ」
 スコットが危惧していたのは、『大地の裂け目』は危険地帯だと判明した後でも、危険を承知で向かう者がいると聞いたからだ。
「大地の裂け目には入らないようにと市民には伝達しているのだが、それでも、研究熱心な学者もいる。さすがに一般人は裂け目にはいかないだろうが、腕に覚えのあるハンターなら、観察するために大地の裂け目に向かう者もいる可能性がある」
 スコットがそこまで言うと、マクシミリアンは顔色を変えずに頷いた。
「大地の裂け目では、クラーレの配下だと思われる歪虚が出没したこともあるからな。念の為、本部にも依頼を出した方が良いだろう」
 マクシミリアンは、ハンターたちと共に『大地の裂け目』付近まで向かうことになった。



 荒れ果てた地。
 不毛の大地と呼ばれている場所は、先へ進めば進むほど、草木が枯れていき、次第に何も生えなくなってしまう。負のマテリアルの影響だろうか。
「……やられたか」
 マクシミリアンが発見したのは、重体で倒れている2人のハンターだった。意識不明であったが、辛うじて命拾いしていた。
 重体のハンターたちを抱えようとした時だった。
 鎧騎士の姿をした硝子のゴーレムが、マクシミリアンたちの前に立ち塞がった。
「一旦、退くぞ」
 まずは、重体のハンターたちを救わねばならない。
 後退することはできたが、重体のハンターたちを守りながらの移動では、すぐに敵に追いつかれてしまう恐れがあった。
 硝子のゴーレムは次第に数が増えていった。
 敵に囲まれてしまったら、重体のハンターたちが狙われる危険もあり、最悪の事態も考えられた。
 そう思った瞬間、想定は脅威へと変貌した。
「ようこそ、不毛の大地へ。せっかく来たのですから、私もお相手しますよぉ」
 立ち姿は綺麗な人形のようにも思えたが、その微笑みは邪悪に満ちていた。
 嫉妬軍将、クラーレ・クラーラ (kz0225)だ。
「やはり貴様か……クラーレ」
 睨み据えるマクシミリアンに対して、クラーレは楽しそうに微笑んでいた。
「あなたのような有能なハンターに、名を覚えられて光栄ですよ。マクシミリアン・ヴァイス」
「俺のことを知っているのか?」
 怪訝そうに眉を顰めるマクシミリアン。
 クラーレは、鈴を鳴らすような声で笑っていた。
「当然です。と、言いたいところですが、ここで終わりにしましょう。なにもかも」
 パラソルを軽々と回転させ、クラーレが硝子ゴーレムを従えてハンターたちに襲い掛かってきた。
 先手は、クラーレと硝子ゴーレムの集団だ。
 ハンターたちは、この苦境から脱することができるのか?

リプレイ本文

「硝子ゴーレムは、弓を構えてるから注意しろ!」
 ジャック・エルギン(ka1522)の叫びに、フィロ(ka6966)が搭乗するコンフェッサーのディフェンダーが効果を発揮する。
「何故、こんな所に嫉妬軍将が…?! ですが、私のやるべきことは決まっております。重体のハンター様たちは、必ず守ります」
 後衛にいた硝子ゴーレムたちが、重体のハンターたちを狙って『貫徹の矢』を放ってきたが、ディフェンダーの効果でコンフェッサーが攻撃の対象となり、CAMシールドで敵の矢を受け流していく。
 Uisca Amhran(ka0754)に同行していたユキウサギが、護衛術を駆使して硝子ゴーレムが放った矢を獣杖「タブラウル」で受け払う。前衛にいた硝子ゴーレムたちは、剣を構えて全速力でハンターたちへと接近していく。おそらく、次の攻撃を狙っているのだろう。
「初手は守り切れましたね」
 だが、まだ油断はできない。
「不意打ちを受けるなんて、私の失点よ」
 ポロウのナム・フォウに騎乗していたカーミン・S・フィールズ(ka1559)が蒼機弓「サクラ」を構え、『カランコエ』を解き放った。射程範囲内にいた硝子ゴーレム一体に命中し、ダメージの代わりに敵は行動不能になった。
「無事に帰ったら奢るわね」
 カーミンが溜息交じりに言うと、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が応じた。
「カーミン、誰の責任でもない。奢るのは、俺だから気にするな」
 マクシミリアンの後方には、重体で倒れているハンターが二人いた。
「エルバはマクシミリアンに付いてろ」
 ゴースロン・トランプルに騎乗したジャックがユグディラのエルバと並び、重体のハンターたちを庇う位置に立った。
「有能なハンターだとさ。有名人は大変だな。クラーレの能力なら伏兵を操るのも簡単だ。気をつけてくれ」
 軽口を叩くジャックだが、マクシミリアンは動じることはなかった。
「お前たちも有能だろう。敵の先手を全て受け流したのだからな」
「割り込む隙がなかったが、上空は任せてくれ」
 レイア・アローネ(ka4082)はワイバーンのアウローラに騎乗……飛翔の翼で飛行し、レイアが『ガウスジェイル』の結界を張り巡らせた。
 タクティカルヘルメット「3Ws-Rush PM」を装備したマルカ・アニチキン(ka2542)は、ヒーリングポーションを飲み干し、オートソルジャーのカマスを連れて前方へと移動していく。
「間合いが取れる位置までいきましょうね」
 タクティカルヘルメットには通信機器が付いており、指定された範囲内ならば仲間と連絡を取り合うことができるのだ。報告、連絡、相談を大事にするマルカの心意気が窺える。
 カマスは、いつでもマルカを守れるように寄り添うように歩いていた。
 魔導バイク「マルモリー」に騎乗したUiscaは『ファーストエイド』の詠唱による『ゴッドブレス』を発動させ、バイクを走らせる。
「マルカさん、頼みますね」
 Uiscaは、マルカが魔法詠唱するためのフォローとして、ゴッドブレスをUisca、マルカ、カマスに施していた。ユキウサギは重体のハンターたちを守るため『煙水晶』の結界を作り、青白い魔法の煙を出現させる。
「私は戦線を押し上げます、後は頼みます」
 フィロが搭乗したコンフェッサーが、前衛の硝子ゴーレム目掛けて駆けていった。
「この賭け、どう出るかしら?」
 カーミンが騎乗したポロウの先手を打つホーが決まり、ハンターたちは先手を取ることができた。
 羽衣「パノプリア」を装備したポロウが『惑わすホー』の結界を展開させる。
 そして、マルカが魔杖「ヴールレイン」を掲げ『エクステンドキャスト』からの『魔法鬱陶死煩雑乱射』を解き放った。
「マルカ・ライフル・キルゼムオール!」
 頭上に3つ生み出した巨大で青い炎が分散し、ライフル形状となると、発射された青い炎の弾が硝子ゴーレム三体を巻き込み、多大なダメージを与えていた。
「おっし、マルカに続け!」
 ゴースロン・トランプルに騎乗したジャックが『チャージング』を駆使した『薙ぎ払い』でバスタードソード「アニマ・リベラ」を振り回し、硝子ゴーレム三体を薙ぎ倒していく。先にマルカの魔法攻撃を喰らっていたこともあり、ジャックの攻撃が決まると硝子ゴーレム三体が粉々に散り、消滅していった。
 ユグディラのエルバはキョロキョロしながらも、マクシミリアンの側に残り、弱者の本能で周囲を警戒していた。エルバをマクシミリアンに付かせたジャックの指示は的確だ。スクエアの共有が発生して、敵の射線や移動を妨害することができるようになるからだ。
 Uiscaのユキウサギが獣杖「タブラウル」を構え『紅水晶』を張り巡らせ、重体のハンターたちの護衛に徹していた。エルバ、マクシミリアンがいたこともあり、紅水晶の結界術は敵の視線と射線を遮断していた。
「仲間を誰一人、倒れさせはしませんっ」
 Uiscaが法術縛鎖「アルタ・レグル」による【龍獄】黒龍擁く煉獄の檻を発動させ、無数の闇色の龍牙や龍爪を生み出して、範囲内に居た硝子ゴーレムを串刺しにしていく。空間に縫い付けられたようになった硝子ゴーレムは、身動きが取れなくなっていた。
「間合いは良し……いきます」
 フィロが搭乗するコンフェッサーがスキルトレースLv15で再現した『金剛』を発動……『鎧徹し』を繰り出し、硝子ゴーレム一体に強烈な一撃を叩き込んだ。その衝撃で砕け散り、マテリアルネットが発動する前に、硝子ゴーレムは消滅していた。
 サイドワインダーで奇襲体勢となったワイバーンに騎乗したレイアは、魔導剣「カオスウィース」に『ソウルエッジ』を纏わせ、硝子ゴーレムへと接近していく。
「今のところ、クラーレの動きはないようだな」
 上空にいるレイアには、後方にいるクラーレの姿も見えたが、変わった様子がないことが、かえって不気味に感じた。
 後衛にいた硝子ゴーレムは、飛行するワイバーンに狙いを定めて弓を構え、矢を放ってきた。
 レイアが騎乗するワイバーンは、『バレルロール』を駆使して身体を回転させ、敵の放つ矢を回避していきながら飛行していく。
「アウローラ、敵の魔法攻撃には気を付けろ」
 前衛の硝子ゴーレムは、地上にいるハンターを狙って『衝撃波』を放ったが、惑わすホーの効果が継続していこともあり、幻影の結界内にいたマルカ、カマスには敵の攻撃が当たらなかった。
「次も先手を狙うわよ」
 カーミンの予告通り、ポロウの先手を打つホーが決まる。
 蒼機弓「サクラ」に矢を番えたカーミンが、『藤袴』の高加速射撃を放つと、後衛にいた硝子ゴーレム一体に命中し、ダメージを与えていた。
 マルカが『エクステンドキャスト』を発動させ、魔杖「ヴールレイン」を用いた『魔法鬱陶死煩雑乱射』を解き放った。硝子ゴーレム三体が魔術による弾丸の雨に巻き込まれ、多大なダメージを喰らっていた。
「ジャックさん、あの三機、お願いします」
「任せとけ! 片っ端から叩き壊してやらあ!」
 ジャックはゴースロン・トランプルに騎乗して『チャージング』を転化し、バスタードソード「アニマ・リベラ」による『薙ぎ払い』を繰り出した。硝子ゴーレム三体が木端微塵に砕け散り、消滅していった。
「後方の硝子ゴーレムも、要注意です」
 Uiscaは魔導バイク「マルモリー」を走らせ、後衛の硝子ゴーレムに狙いを定めると法術縛鎖「アルタ・レグル」による【龍獄】黒龍擁く煉獄の檻を解き放った。無数の闇色の龍牙や龍爪が硝子ゴーレムを串刺しにすると、二体のゴーレムが空間に縫い付けられたかのように移動不能になった。
「嫉妬軍将まで、もう少し……」
 フィロのコンフェッサーが『マテリアルバルーン』で疑似機体を2体、出現させ、クラーレ目掛けて駆けていく。
「援護する」
 飛行したワイバーンに騎乗したレイアは、硝子ゴーレムに接近……魔導剣「カオスウィース」と星神器「天羽羽斬」の『二刀流』を繰り出し、その連撃で硝子ゴーレム一体が砕け散り、消え去っていった。
 移動不能になっていた硝子ゴーレムが、マルカを狙って魔法を発動させようとするが、『魔法洗浄』によって白光が出現し、高速回転しながら粒子となった雷の嵐が消滅していった。
 だが、敵の攻撃はさらに続く。弓を構えた硝子ゴーレムが、またもやマルカを狙う。オートソルジャーのカマスが素早く駆け寄り『マスターガード』でマルカを庇うことに成功。
 ユキウサギと言えば『ガッツキュア』を使い、ホワタァッと気合を入れて拳を握りしめていた。
 残りの硝子ゴーレムたちは剣を構えて、近くにいたフィロのコンフェッサーとUiscaを狙って『衝撃波』を放った。Uiscaは紙一重で回避できたが、コンフェッサーはダメージを受けてしまった。疑似機体は破裂して消え去っていく。
 だが、マテリアルバルーンのおかげで、ユキウサギとユグディラのエルバたちは、重体のハンターたちを守ることに専念することができた。もし、マテリアルバルーンの疑似機体がなかったら、ユキウサギたちは多大なダメージを受けていた可能性もあった。それを未然に防いだのが、フィロのコンフェッサーだ。



 ハンターたちの連携が取れた攻撃により、硝子ゴーレムの集団は全て消え去った。
 ユグディラのエルバはリュート「水霊の囁き」で『森の午睡の前奏曲』を奏で、ユキウサギとマクシミリアンの傷を癒していた。
「クラーレ……何をするか分からんからな。アウローラ、戻るぞ」
 レイアの騎乗したワイバーンが、飛行しながら一気にマクシミリアンたちの元へと移動していく。
 地上は、ユキウサギとユグディラのエルバが互いに隣接して防衛を固めていたが、上空が手薄になっていたのだ。
 ワイバーンのアウローラは、重体のハンターたちを守るように上空を飛行していた。
 一方、クラーレ・クラーラ (kz0225)と対峙していたのは、飛行したポロウに騎乗したカーミンであった。
「ハァイ、ミスタ。硝子ゴーレムの造形や細工とか綺麗よね?」
「おやおや、私の子たちを破壊しておいて、何を聞くのかと思えば、そんなことですかぁ?」
 クラーレが愛用のパラソルを右手に持ち、くるりと回転させた。
 カーミンは警戒しつつも、笑みを絶やさなかった。
「軍将ともなれば、硝子一つにしても、何かこだわりがあるのかしら?」
 四本の腕を持つクラーレは、下の右腕を腰に当てていた。パラソルを持つ手は上の右腕だ。
「んー、そうですねぇ。ヴァリオスの硝子細工職人が作ったモノが気に入っていたのですけど、気が変わりましたぁ」
 クラーレは微笑んだかと思うと、直ぐに怒りを顕にした。
「気にいりませんねぇ。このクラーレが作った硝子ゴーレムたちを破壊するとは」
 素早く斬り込むクラーレの狙いは、カーミンだった。
「やだ、怒ったの?」
 回避を試みるカーミン……それは奇跡であった。運命の賽は、ほんのわずかの差でカーミンに味方し、クラーレの攻撃を回避することができた。このようなチャンスは、滅多にない。
「あら、ホントに回避できたの?」
 カーミン自身も、驚くほどだ。
「カーミン様!」
 フィロのコンフェッサーがクラーレに接近すると『マテリアルフィスト』を繰り出し、機爪「ディアヴォロス」がクラーレの胴部に叩き込まれた。
「少し罅が入りましたが、まあ、良いでしょう」
 何事もなかったかのように、クラーレは立ち尽くしていた。
「ジャックさんなら、きっとクラーレに接近することができるはずです!」
 Uiscaが祈りを込め『アンチボディ』をジャックに施し、衝撃緩和を付与した。
「傘がお留守になってるぜ!」
 ジャックがクラーレの持つパラソルをバスタードソード「アニマ・リベラ」で叩き込むと、クラーレの表情はさらに険しくなった。
「触れてはならないものに、触れましたねぇ」
 パラソルを開くと衝撃波が迸り、傘の先がジャックの胴部を貫いていく。その衝撃で血が飛び散るが、Uiscaが施したアンチボディにより、ジャックはクラーレの攻撃に耐えることができた。
「クラーレ! てめえら嫉妬の歪虚どもに、同盟で好きなようにゃさせねえ! おらぁ、お返しだぜっ!!」
 ジャックの『カウンターアタック』が炸裂し、傘を持っていたクラーレの腕が切り裂かれ、地面へと転がっていった。
「な、……さすがは、ジャック・エルギン……といったところでしょうかぁ。カッツォが手こずるのも仕方がありませんねぇ」
 クラーレは一瞬、驚いた表情をしたが、すぐに落ち着きを取り戻し、左指を鳴らした。地面に落ちた腕は、クラーレの元へと飛び、見る見るうちに機械が融合するように肩と繋がっていた。元に戻ったようにも見えたが、よく観察すれば、そうでもない部位もあった。
「待ちなさい、クラーレ!」
 カーミンが『百日紅』を発動……蒼機弓「サクラ」を構え、赦矢「光よ、憐れみたまえ」を番えると『ネモフィラ』を解き放ち、クラーレの顔を狙う。だが、放った矢は、クラーレに当たらず回避されてしまう。
「遊びにしては、分が悪くなってきましたから、帰りますよぉ」
 クラーレが立ち去ろうとした時、歌が聴こえてきた。
 Uiscaが『ナナちゃん(kz0081)の歌』を歌っていたのだ。
「その歌、知りませんねぇ。このクラーレを見送るために歌っているのですかぁ?」
 クラーレは溜息をつき、Uiscaが思うような反応はなかった。
「そろそろ、戻りますかねぇ」
 少し経つと、黒い歪みの穴が出現した。
「それでは、カーミンお嬢さんと仲間の皆さん、ごきげんよう」
 小さく笑いながら、クラーレは黒い歪みの穴に飛び込むと、一瞬にして消えていった。



「マクシミリアン、重体のハンターたちは無事か?」
 怪我をしているジャックを見て、マクシミリアンが言った。
「おまえも怪我をしているな。クラーレに手酷くやられたか」
「ウィスカのおかげで、命拾いしたぜ」
 ジャックの言葉を聞いて、カーミンが彼の背中を軽く叩く。
「もう、命は一つじゃないのよ。相変わらず、無茶ばっかりして」
 イテテと零すジャック。実際、クラーレに貫かれた胴部からは血が滲んでいた。
「俺よりも、まずは重体のハンターたちを助けてやってくれ。できれば、聞きたいこともあるからな」
 ジャックは、自分のことより、重体になっているハンターたちのことを気にしていた。
 ユグディラのエルバが、心配そうな表情でジャックの傍まで駆け寄り、『げんきににゃ~れ!』を主人に施す。
「エルバ、サンキューな」
 ジャックに頭を撫でられて、エルバはうれしそうにスキップしながら踊っていた。
 Uiscaが、【龍魂】白龍纏歌を唱えると、重体になっていたハンターのうち一人が戦闘不能から解除され、自分で起き上がれるようになった。だが、怪我が完全に回復するには時間がかかるようだ。
「もう一人のハンターさんは、かなり容態が酷いようです」
 【龍魂】白龍纏歌を施しても、意識不明の重体であった。
「嫉妬軍将が撤退したとしても、重体のハンター様たちを守るのが今回の務めです」
 フィロが搭乗するコンフェッサーは、不測の事態に備えて『マテリアルバルーン』による疑似機体を出現させ、周囲の防衛に徹していた。
 マルカは魔導拳銃「レイジオブマルス」を構え、ドールアックス「カラミラス」を装備したオートソルジャーのカマスを連れて、他にも敵がいないかと警戒していた。
(魔法は強力ですが、使い処を間違えば、仲間も巻き込んでしまう……魔術に頼ってばかりではなく、自分なりの戦術、そこから少しづつ進歩しなければ周りの足を引っ張ってしまう……)
 自問自答するマルカ。魔術師だからこそ、魔術に関しては客観的視点で把握し、少しでも皆の役に立ちたいと願うマルカであった。
 レイアは、飛行するワイバーンのアウローラに騎乗して、上空から偵察をすることにした。
「伏兵は見当たらないが、まだ重体のハンターたちがいるから、気を付けねばな」
「どうか、この方の御霊をお守りください」
 地上では、Uiscaとユキウサギが、意識不明で重体のハンターを見守っていた。
 マクシミリアンが魔導スマートフォンで、魔術師スコットと連絡を取り合っていた。
「……そうか。ここで待っている」
 そう言って、マクシミリアンが通信を切り、ジャックたちに話しかけた。
「スコットが、魔導トラックで迎えに来るそうだ」
「それは助かるぜ。スコットが来るまで、少し話したいことがある。あんた、名前は?」
 ジャックの問いに、意識を取り戻したハンターがゆっくりと答えた。
「名は……ホーク」
 意識を取り戻したとは言え、ホークは重体だったこともあり、ジャックは用件だけ聞き出すことにした。
「大地の裂け目が、同盟内にあるってことはリゼリオからも近いよな?」
「ああ、噂で……聞いて、本当か嘘か確かめるために、ここに……」
 ホークは、息も絶え絶えであった。
「無理言って、すまねぇな。もう少しで迎えが来るから、安心してくれ」
 ジャックが微笑む。
「言われてみれば、大地の裂け目は四大都市の真ん中辺りにあるのよね?」
 カーミンの問いに、ジャックが頷く。
「リゼリオから近い位置にあるのが、気になってな。俺がそう思うなら、リゼリオにいるハンターたちが心配するのも分かる気がするぜ」
 確信までは至らなかったが、ジャックが危惧することが事実かどうか確かめようと、不毛の大地に足を運ぶハンターたちがいても不思議ではなかった。
 しばらくすると、魔術師スコットが運転する魔導トラックが到着した。
「重体のハンターたちは、そっと運んでくれ」
 運転席から、スコットが顔を出した。マクシミリアンが意識不明のハンターを抱えて、後ろの席に寝かせ、ジャックがホークの肩を支えて、助手席へと乗せた。
「君の名を……聞いてなかったな」
 ホークが、ジャックに告げた。
「俺はジャック・エルギンだ。今度会う時は、一緒に酒でも飲もうぜ」
 茶目っ気のある笑みを浮かべるジャック。
「ジャック、皆さん、ありがとう。あなたたちが助けにきてくれなかったら、俺たちはどうなっていたことか……本当にありがとう」
 何度も礼を告げるホーク。
「ホークたちの容態が心配だから、出発するぞ」
 スコットが運転する魔導トラックは、ヴァリオスへと向かっていた。
 Uiscaはトラックを見送りながら、思った。
 自分の力だけでは、どうすることもできない現実があることを。
 慈愛とは、何か……ふと、想いを巡らしていた。

依頼結果

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MVP一覧

  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギンka1522
  • ルル大学防諜部門長
    フィロka6966

重体一覧

参加者一覧

  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ユキウサギ
    ユキウサギ(ka0754unit006
    ユニット|幻獣
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    エルバ
    エルバ(ka1522unit003
    ユニット|幻獣
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    ナム・フォウ
    No.4(ka1559unit004
    ユニット|幻獣
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    カマス
    カマス(ka2542unit002
    ユニット|自動兵器
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    アウローラ
    アウローラ(ka4082unit001
    ユニット|幻獣
  • ルル大学防諜部門長
    フィロ(ka6966
    オートマトン|24才|女性|格闘士
  • ユニットアイコン
    コンフェッサー
    コンフェッサー(ka6966unit004
    ユニット|CAM

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/03/03 23:59:43
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/03/01 18:04:32