• 血断
  • 初心

【血断】赤き荒野へ苗木を植えに【初心】

マスター:鮎川 渓

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
3~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/03/18 15:00
完成日
2019/04/01 06:14

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 ――急募 駆け出しハンター!――
 ブランクがある方も大歓迎☆
 荒野で植樹作業者を護衛する
 簡単なお仕事です♪

 各地で激しい戦いが繰り広げられているこのご時世に、バイトの募集かよとツッコみたくなるような依頼書がひっそりと貼り出された。
 そのあんまりなテンションに絶句しているハンターの許へ、辺境オフィス手伝いの聖導士・香藤 玲(kz0220)が寄ってくる。
「その依頼気になっちゃいますー? ソサエティが行ってる駆け出しハンターさん育成計画の一環で、比較的安全な依頼をトクベツ報酬付きでご紹介してる案件なんですよぉ。ちょーお得ですよー」
 ショップの店員かよとツッコみたくなるワザとらしい喋りと愛想笑いに、ハンターは嫌な予感がして踵を返そうとしたものの、気付けば説明会場の部屋に放り込まれていた。


「じゃあ始めに、現在の状況を簡単に説明していくねー」
 そんなワケで、玲によるガイダンスが始まった。
 魔導モニターにやっすい作りのムービーが流れだす。真っ暗だった画面にこの星(クリムゾンウェスト)の模型が映しだされた。映像の進行に合わせ玲が口を挟む。
「今この星は邪神にごりごり攻められてるワケなんだけど、星を包む『世界結界』で何とか邪神の侵入を防いでるんだ」
 星の模型が網目状のネットで包まれた。そのネットが世界結界を示しているというわけだ。
 そこへ背中に『邪神』と書かれたへちゃむくれたパペット登場。網の目をむりぐり広げ、そこから侵入を試みる。が、何せ邪神は巨大なのでとても入れない。残念。
 だがめげない邪神パペット、今度は『自分が入れないなら手下を送ればいいじゃない』とばかりに、歪虚に見立てたクラゲ人形をぐいぐい押し込んだ。侵入した歪虚人形はびょんびょん跳ねまわり、内側から結界ネットを傷めつけていく。
「邪神はこうやって結界に穴を開けて、強い歪虚を送り込んできてる。これを防がないとどうなるかっていうと……」
 邪神パペットはぼこぼこ穴をあけていく。ガンガンねじ込まれる歪虚人形、暴れてネットを傷つける……と繰り返す内に、結界ネットはちぎれ飛んでしまった。高笑いした邪神パペットが丸裸になった星へ体当たりしようとしたところで、画面は暗転した。
「結界がなくなっちゃうと邪神のダイレクトアタック不可避だから、それを防ごうぜーってソサエティ一丸となって取り組んでるのが【血断】作戦っていうんだけど、今回の依頼はその一環なんだよ」

 ひとりのハンターが手を挙げた。
 え? 簡単な依頼なんだよね? 『強い歪虚』って言わなかった?

「あ、気付いちゃった? 先に結界の穴をどうやって塞ぐかってトコまで話しちゃうね。
 まず、結界の穴がどこに空けられたか察知することはできなくて、歪虚がどーんと来て初めて『あ、そこにあったんだ』って分かるんだ。だから敵が来る前に塞いだり、待ち構えて迎撃! とかはできないんだよね。だから穴を塞ぐには、大きく分けてふたつの作業が必要なんだ。
 1つ目は、侵入した歪虚を倒すこと。
 2つ目は、世界結界の媒体である『神霊樹』を植えること。今回の依頼で担当してもらうのはこの2つ目の方。
 神霊樹を植えると穴を塞ぐだけじゃなくて、結界の強化にもなるんだって。神霊樹を植えられるのは神霊樹の使いっ走り……もとい精霊のパルムにしかできないから、植樹作業にあたるパルムを護衛するのが今回の依頼ってワケ。ね、安心でしょ?」

 じゃあ誰がその強い歪虚と戦うの?

「もう現地へ友軍が向かってるよ」

 『向かってる』?

「さっき言ったように、敵が来て初めて分かるからさー。依頼書に『急募』って書いてあったでしょ? そゆこと。じゃ、打ち合わせたら早速出発するからヨロシクね♪」



 そんなこんなでやって来たのは、荒涼とした大地が広がるグラウンド・ゼロ。今回はサポーターとして玲と、植樹を担当する玲のパルム・パー子が同行している。
 一行が植樹地点へ到着した時には、四方に散開した龍騎士達が『シェオル型』と呼ばれる強敵を引きつけ交戦中だった。玲は通信機で龍騎士へ呼びかける。
「隊長さんお疲れ様ー、状況はどう?」
『玲君達もお疲れ様です。とにかくそちらへシェオル型を通さないことを第一に動いていますので、小型の狂気歪虚はそちらにお任せしますね』
「だってさ」
 言っている間に龍騎士達を掻い潜り、クラゲや虫のような見目をしたものや、人型をした不気味な者共がこちらを目指しやってくる。空を浮遊する者、地を這いずる者など様々だ。
「あの目玉から撃ってくるビームに当たると、『狂気感染』しちゃうから気をつけてね」
 迎え撃つべくそれぞれ得物を構えるハンター達。
 その足元で、桜色のワンピースを着たパルムのパー子は、緊張した顔で神霊樹の苗をきゅっと抱きしめた。

リプレイ本文


 血の色の空。干乾びた大地は細かなヒビで覆われている。生物の気配は何もない。グラウンド・ゼロはそんな場所だった。
 こんな場所で植樹とはと首捻りたくなるが、神霊樹は一種の幻影なため痩せた土地でも平気らしい。乾いた風に黒髪を遊ばせる御法 莉乃(ka6796)は、唇に笑みを刻んだまま小首を傾げる。
「あらまあ……穴に敵に、木を植えて……不思議な事が起きているのですわねえ……。わたくしにお役にたてるかしら?」
 駆け出し故の謙遜か不安か、そんな言葉が零れた。同様の思いを抱いていた八重 春亜(ka7018)は、御守刀の柄をきゅっと握りしめる。
「ハンターとして経験は浅い私ですが、刀を振るうならばひとかどの思いはございます」
 莉乃も槍の継ぎ目を確認するように軽く振って握り直すと、春亜と目線を交わし頷きあった。ハンターとして戦地へ参じた以上は、経験や経歴などにかかわらず最善を尽くすのみ。そう確認し合うように。
 パー子は苗木を抱き、玲の足許で震えていた。それに気付いた今回最年長の楸(ka7070)が柔らかく声をかける。
「パー子さんは……怖がっているのかな? それとも緊張かな」
 通信機の周波数合わせを終えたセシア・クローバー(ka7248)、汚れるのも構わず膝をつき、パー子と視線の高さを近づけた。
「怖い思いに遭うことなく、役目を終えられるよう力を尽くす。大丈夫だ」
「ああ。お互い頑張ろうね」
 頼もしいセシアの眼差し、そして「頑張れ」ではなく「頑張ろう」と寄り添ってくれる楸の言葉。パー子の震えが止まった。しっかり頷くと、より植樹に適した場をピンポイントで割り出し苗木を置いた。いよいよ植樹作業が始まるのだ。それを見た玲が言う。
「僕はパー子ちゃんの傍につきながら、皆のサポートしていくからヨロシクね」
 シール・ナイン(ka6945)は油断なくぐるりを見渡す。遠くにはこちらを囲うように交戦中の友軍が見て取れる。その隙間を掻い潜り、揃わぬ足並みで向かってくる様々な狂気歪虚どもの姿も。
「んー……1番最初にやって来そうなのは、西の人型虫型各1体。次に、北の虫型2体とクラゲ型1体、といった所でしょうか」
 紅玉の目を眇めおっとりした口調で分析する。猟撃士であり鋭敏視覚を持つ彼女は、距離感をより良く掴むことができた。今回は身を隠す場所がない上、敵は足許を除く全方位から続々とやってくる。視界は良いので敵の接近を見逃すことはなさそうだが、距離を詰めてきた個体からどんどん倒していかなければならない。
 そこでシールは、フォローが届く程度に分散しての戦い方を提案。セシアは玲へ後方支援の他、パー子の状況を確認し情報共有をと頼んだ。
「では……参りましょう。皆さんご武運を」
 舞刀士の春亜はまず、大きな人型を止めるべく西側へ駆け出した。シールはホルスターから青緑色のリボルバーを引き抜き、
「なら私は北へ。何体だろうと近付けさせませんよっ」
 より個体数の多い北へ走り出す。銃の射程を活かすべくいくらか前へ打って出るのが彼女の作戦だ。
 こうして荒野の一角で、防衛戦が幕を開けた。


「近くで見るとなかなかの大きさですね」
 真近に迫った人型を見上げ、春亜はつと目を細める。
 触手が撚り合わさったような見てくれは何とも奇妙で、とても生物とは思えず心などは一切窺えない。それが五体を持ち人の形を模していることに、言い表し難い不快感を抱く。
 春亜は思わず携えた刀に目を落とした。敬愛してやまない養父が、わざわざ打ち直して持たせてくれた大事な一振り。鍔には大事な人を想起させる桜吹雪と朧月、その中で舞う鶴が美しく彫られている。刀の姿をしていても、この一振りには確かに人の心が、想いが籠もっている。
「今は義父も振るえぬ刀、未来を切り開くならばそれほど良いこともないでしょう。――いざ」
 鯉口を切ると、澄んだ金属音と共に桜色の美しい刃が現れる。随伴していた虫型はまだ遠い。ならばと力強く踏み込み、水平に構えた刃で斬りつける! ぶっつりと嫌な音がし、人型の右腕を構成する触手が束のまま千切れ落ちた。
 人型は残った左腕の触手をぞろりと伸ばすと、無造作に身体を回転させ周囲を薙ぎ払う。
「くっ」
 回避困難な範囲攻撃。すかさず刀で受けたものの、弾いた触手が脚を打つ。けれど怯まずもう一度踏み込もうとした時だ。人型の後方、追いついてきた虫型が身を弛めているのに気付く。
(突進の構え……?)
 桜花爛漫の範囲に巻き込むにはあと一歩遠い。どうするか――逡巡した春亜の視界に、鮮やかな桜の羽織「桜花絢爛」を纏う背が飛び込んできた。
「こちらはお任せを」
 遊撃役を担う莉乃だ。震撃の踏み込み、そして蛇節槍のリーチを活かし、奥の虫型へ速攻をしかける! 虚を突かれた虫型は構えを崩したものの、見るからに堅そうな外殻に阻まれ屠るには至らない。
 無数の脚を蠢かせ、節のある長い身体で這う百足のような姿を見、莉乃は微笑を浮かべたまままたかくりと首を傾げる。その仕草は無邪気なようで、不敵なようで。
「あら、おかしな事……」
 狂気歪虚どもはどうして揃いも揃って、敵であるはずの生物の姿を真似るのだろう。同じ複数の節を持っていても、莉乃の手にある青い蛇節槍はこんなにも機能美に富んでいるのに。彼奴らにはそういったものが全くなくおぞましいばかりだ。先程の一撃で甲殻に入れたヒビに狙いをつけ、マテリアルを練り上げる。
「虫はだいたい硬いものでしょう……想定内ですわ。それなら、」
 莉乃の腕に手に収束するマテリアルを警戒した虫型は、再度身を弛め頭から突っ込んできた。それをひらりと躱しざま、ヒビの入った胴部に渾身の一撃を叩き込む! 鎧通し――打ち込まれたマテリアルは外殻の内へ伝わり、長い身体がちぎれ飛んだ。
 一方の春亜、単身巨躯の人型を向こうに回し、それ以上一歩も苗木へ近付けぬよう奮闘していた。そこへ玲のヒールと共に、セシアの声が届く。
「援護する。巻き込まれないよう注意してくれ!」
「!」
 春亜、人型の強烈な突きを受け流し、素早く身を翻す。それを確認したセシアは、虚空に出現させた火球を一息に放つ! 炎球はたちまち巨躯を飲み、一層激しく燃え盛る。苦しげに身を捩る人型を見、セシアは幻影の美しい馬の尾をゆさりと振った。
「ご自慢の大きさがアダになったな」
 身体(サイズ)が大きければ大きいほど、範囲攻撃をもろに喰らう事になる。効果はテキメンだ。全身を灼かれてなお立ち続ける人型に、春亜の冴えた一刀が振り下ろされる。
「『花は桜木、人は武士』と申しましょう。散り際は弁えなければなりませんよ」
 今度こそとどめを刺された人型は、地に伏す前に灰となって散った。


「行かせませんよ!」
 虫とクラゲの混合群の行く手へ立ち塞がったシール、右手に構えた「サンダラー」の銃身へマテリアルを込め、全弾景気よくぶっ放す! 弾丸の雨に、クラゲ型はぐちゅりと湿った音を立てて四散し、その体液もろとも被った虫型の1体は、脚を数本弾き飛ばされ歩みを止めた。
 脚の欠いた虫型は、いやに大きく無機質な眼でシールを観察する。そしてシールがリロードする素振りを見せた途端、好機とばかりに目玉からレーザーを放つ!
「おっとっと」
 シールは寸でのところで回避した次の瞬間、再び発砲音を轟かせた。まだ「サンダラー」のリロードはできていないはずなのに。見れば、彼女が今構えているのは緑青色の「サンダラー」ではなかった。銃身の先端に短剣を装着した自動拳銃「DAGGER」――そう、彼女は2挺の拳銃を所持していたのだ。
「チャンスだと思いましたか? お生憎です」
 左手の銃剣を掲げにっこり笑うシール。被弾した虫型は今度こそ崩れ去った。
 と、被弾を免れていた虫型の眼が怪しく光る。ビームが来るかと身構えたシールだったが、その脇を何かがすり抜けていった。清らな燐光を纏う胡蝶だ。蝶はムカデめく虫型の頭部に接触すると、その身もろとも不気味な目玉を弾けさせた。
「若い子ばかりだからと気後れしてはいけないね。僕もしっかり皆についていかないと」
 シールの後方、苗木の傍に陣取る楸が放った胡蝶符だった。先程までの柔和な雰囲気から一変、醸す空気を鋭く変化させた楸は、糸目をうっすら開き虫型の動向を見やる。
「目からレーザーを撃つのなら、目を潰されたら撃てなくなるかなと思ったんだが。……どうかな?」
 一度はレーザーの構えを見せた虫型が次にとった行動は、レーザーではなく直接シールへ突進することだった。
「どうやら読みは当たりみたいですね」
 しかしシールは接触を許さず威嚇射撃で動きを封じる。
「それは良かった。命中率が悪くならないなら、狙ってみても良さそうだ」
 間髪入れず楸が放った火炎符に焦がされ、虫型は消滅した。この情報は北側の面々へも直ちに伝えられた。折返しセシアと春亜の声が飛んでくる。
「南西から虫型2体、南から人型が接近中だ!」
「人型の更に向こう、クラゲ型が3体確認できます」
 眼前の一群を撃破しても息つく暇もない。
「パー子ちゃんの作業は順調だよ。回復が必要な人は今のうちに声かけてねっ」
 玲の声に何人かが振り返る。パー子は苗木の前で、何やら祈るような仕草をしていた。植樹作業にしては不思議な行動だが、神霊樹自体が普通の木ではないしなと思うと、こういうものかと納得せざるを得ない。
 ともあれ、5人は新たな敵を迎撃すべく再び散開した。


 戦闘開始から5分経過する頃には、総討伐数は20を越えた。
 拳銃の射程を十全に活かし、敵を離れた位置で足止めし動きを阻害するシール。
 時に後衛の仲間へ突進する虫型の前へ飛び出し、身を挺して庇いつつ戦線を維持する春亜。
 火炎と吹雪、ふたつの範囲攻撃を用い、更には巧みな射程調節で危なげなく立ち回るセシア。
 よく敵の動きを観察し、レーザー封じの目玉破壊を試みつつ着実に敵を屠っていく楸。
 長柄武器のリーチと踏み込みを駆使し、所狭しと遊撃に駆け回りサポートする莉乃。
 前衛・後衛・遊撃とうまく役割が機能し、それぞれの射程の違いを補い合い敵を蹴散らしていく。その様は駆け出しのハンター達とは思えぬほど見事なもので、このまま何事もなく植樹作業が終えられるかに思われた。
 しかし体力豊富な人型が3体同時に場に現れた時、それは起こった。

「もう少し下がってくださいな」
 莉乃が強烈な一撃で人型を弾き飛ばすと、すかさずその懐へ飛び込んだ春亜が別の1体も巻き込み桜華爛漫を繰り出す。吹き荒れる桜吹雪に翻弄される者どもを、縦横無尽で思う様切り刻む。
 その脇を虫型が突進の勢いでもってすり抜けてきたが、
「やれやれ。敵は連携しているとは言い難いが、こうも間断なく来られると、ね……」
 楸が冷静に焼き払って対処した。
 残る人型へはシールとセシアが当たっていた。シールの威嚇射撃を振り切って動き出した人型を、すぐさまセシアの炎球が絡め取る。突き出そうとした触手を焼かれ棒立ちになった人型へ、リロードを終えたシールの「サンダラー」が再び火を吹き弾丸を降らす。連続での範囲攻撃を一身に浴び、体力の多い人型も為す術なく霧散する。
「よしっ。このまま殲滅速度を維持していこう」
 セシアの瞳はもう、左手から這い寄る虫型を捉えていた。
「ふぅ、まるでシューティングゲームみたいですね」
 娘のような年頃のシールの言葉に、楸は世代の差を感じ思わず目頭を揉む。
「ゲームかぁ。感性にも若さを感じるなぁ」
 その時だ。空より一条の閃光が、苗木をめがけ奔った。しかしパー子は気付かない。
「危ない!」
 すかさず楸が身体を割り込ませ、グローブに発現させた障壁で受ける。レーザーは障壁を貫き彼の腕へ達した。突然の事に飛び上がり、祈りを中断し楸の脚へ取り縋るパー子。楸は痛みを顔に出さず言い聞かす。
「僕なら大丈夫。なぁに、香藤さんがすぐ回復してくれるさ。さあ、パー子さんはパー子さんのお務めを」
 すぐに回復術に取り掛かる玲。また震えだしたパー子を見、セシアは奥歯を噛んだ。
「このォ!」
 レーザーを放ったクラゲ型へ吹雪を浴びせ、即座に撃墜せしめる。
 各々眼前の敵を倒し終えると、敵の侵攻に空白ができた。植樹作業が中断した事を受け、一旦全員が苗木の許へ集まった。

 遮蔽物のない開けた場所で、身動きが取れぬものを護衛する場合、気を払いたいのは遠距離攻撃。その手段であるレーザーを持つ虫型・クラゲ型――更に言えば、一定の高度を維持されてしまえば全員が対処できるわけではない浮遊クラゲ型への対策がやや薄く、討伐に手数がかかる体力豊富な人型に注力した隙を突かれた形だった。
 しかし同じ轍を踏む面々ではない。莉乃は得物の柄を握りしめる。
「あのどこかで見たことのある方々……空からの敵にも、届きそうならもっと積極的に手を出していきましょう」
「苗木や後衛への攻撃を、もっと手前で引き受けられるよう試みます。香藤さんには回復をお願いする事が増えるかもしれませんが……」
 と春亜。彼女はここへ至るまでにも、後衛への攻撃を身を挺して防いでいたのだが、決意を新たに背筋を正す。シールも装填完了した2艇の拳銃を掲げ、
「もっとスマートに出来るよう、精進しないとですね」
 それからパー子と視線を合わせ微笑む。
「敵を倒し終えたら、私にお手伝いできそうなこと、しますからね。それまで頑張っていてください」
 膝を折ったセシアもすまなさそうに口を開く。
「怖い思いに遭うことなく、と言ったのに……すまない。けれど2度はない。戦いが終わったら、そうだな……一緒に苺チョコでも食べよう」
 ふたりの思わぬ申し出に、パー子目をぱちくり。落ち着いたのだろう、再び苗木の前で祈り始めた。
 玲の通信機に友軍からの通信が入る。見れば、複数の歪虚どもがまたぞろ友軍の合間より這い出して来ていた。5人は気持ちを切り替え構え直す。再び戦いの幕が上がった。


 そうして更に十数分後。
 歪虚の気配が消えた荒野に、1本の神霊樹が凛と立っていた。
 荒れた大地に緑葉をつけた木が佇む光景は、どこか不思議で神々しくもあり。この眺めを実現させたのは、柔軟にリカバリを果たした5人が最後まで護衛の任を勤め上げたからに他ならない。これでこの場の結界の穴も塞がるだろう。
 あれ以降危険にさらされる事もなく大役を終えられたパー子は、苺チョコ頬張りご満悦。5人が負った傷は玲の回復術で完治する範囲内で済み、全員怪我もなく無事帰還を果たしたのだった。


依頼結果

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MVP一覧

  • 開眼せし智者
    ka7070
  • レオーネの隣で、星に
    セシア・クローバーka7248

重体一覧

参加者一覧

  • セーラー服と蛇節槍
    御法 莉乃(ka6796
    人間(蒼)|16才|女性|格闘士
  • Dual wield
    シール・ナイン(ka6945
    オートマトン|18才|女性|猟撃士
  • 舞鶴の献身
    八重 春亜(ka7018
    オートマトン|18才|女性|舞刀士
  • 開眼せし智者
    楸(ka7070
    人間(蒼)|40才|男性|符術師
  • レオーネの隣で、星に
    セシア・クローバー(ka7248
    人間(紅)|19才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/03/16 21:04:49
アイコン 相談卓
楸(ka7070
人間(リアルブルー)|40才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2019/03/17 21:22:18