宝石店の人質

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/03/22 09:00
完成日
2019/03/29 02:23

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●簡易作戦
 強盗事件が発生。ハンターを呼んだら人質を殺す、とは言われているが、そんなことで「はいそうですか」と放置しておくほど、クリムゾンウェストの住人達はポンコツではない。速やかに依頼が出された。まず集まったのは、先日までリアルブルーで軍人をやっていた、猟撃士のナンシー、機導師のマシュー、符術師のヴィクターだ。
「時間がねぇ。他のハンター集まるまで作戦だけ立てるぞ。最低あと三人は欲しいな」
 ヴィクターは通報者やその店舗の常連客から聞いて作成した見取り図を広げた。この中で一番階級が上なのは曹長のナンシーだが、最年長はヴィクターだ。内輪の仕切りは上手い。
「あたし狙撃で張ってようか」
 ナンシーが提案する。ヴィクターは顎に手を当てて頷いた。
「そうだな、今回のケースだと万が一逃げられた時に犯人を撃てた方が良い。マット、お前突入できるか?」
「はい。他の方がなんと仰るかにもよりますが、自分は先頭で突入できます」
「俺は裏口に地縛符を貼る。正面から行って、カバーしきれない奴はそこでひっかけよう。それでも逃がした奴をナンシー、頼む」
「了解」
「これ以上人が集まらなければ、俺は札だけ貼って表からマットと突入だ」
「ま、集まると思うけどね」
「作戦も、集まった他の連中の意見を聞いて練り直そう。ほら、おいでなすった」
 ヴィクターはやってきたハンターたちに手を振る。
「緊急だったから、簡単に作戦だけ立てた。お前さんたちの意見も聞きたい。どうだ?」

●柄にもないこと
 やあ、こんにちは。僕はハンターオフィスで受付と依頼の説明をしている職員さ。もしかしたら知ってる人もいるかな? 霧の森雑魔退治とか、重傷者搬送依頼とか出してたんだけど。
 僕だっていつもオフィスに缶詰めって訳じゃない。生活があるんだから買い物行ったりくらいはする。と言うか買い物しない人生ってなに?

 とは言え、出来心で宝石店なんて入ったのがまずかったんだけどさ。

 いや、別にミコにあげようとか誰か特別な人がいてプロポーズしようとかそう言うことじゃない。普段お世話になっている叔父さんにネクタイピンとかカフスボタンでもプレゼントしようかなと思って。良い歳だからあんまり安物あげても仕方ないかなって思って宝石店なんか入ったんだよね。叔父さんの柄じゃなくて僕の柄じゃなかったんだよ。普通にスーツ扱ってる店に行けば良かった。宝石付いてなくたっていいやついっぱいあるのに……。

「店中の宝石全部この袋に詰めろ!」
 乱入してきた強盗が、そう言って放り出したのは麻袋だった。麻袋ね。あんまり良い思い出がない。
 二階には高額商品取引用の応接室があるらしくて、魔導銃を持った一人が二人連れて上に行った。かなりやばい金額の宝石がそこにあるそうだ。多分、覚醒者はあいつ一人。下に残った三人も含めて、あとは一般人だ。いや、僕には一般人相手でもかなり強敵なんだけど。ナイフ持ってるし。

 まあ、ハンターが来ると思うんだよね。僕はその辺楽観はしていた。
 そう、彼女が泣くまでは……。 

●ハンター突入
 やがて、一人の女性が耐えきれずに泣き出した。彼氏らしき男がその肩を抱く。一階に残った三人の内、見張り役らしい一人が舌打ちをした。
「うるせぇぞ、女。静かにできねぇならてめぇの男から殺してやろうか」
「いや! やめて! ここから出してよ!」
「お、落ち着けよ」
「人質、一人くらい出してあげてもバチは当たらないと思うけど。彼女だけでも出してあげたらどうだ?」
 C.J.(kz0273)が腕を組んで進言する。強盗は舌打ちすると、彼の方に歩み寄る。
「余裕ぶってんじゃねぇぞ。ていうか、お前明らかにこの場にそぐわないから怪しいんだよなぁ……まさか俺たちに目を付けてた尾行なのか? サツの犬かなんかか? ハンターとこっそり連絡を取り合ってたりなんか……」
「そぐわないって失礼だな。できるわけないだろ覚醒者でもないのに。魔導スマホだって使えないんだぞ」
「どうだろうな。この女の喉かっさばいたら言う気になるか?」
「や、やめてくれ!」
 彼氏らしき男が泣く女性を抱きしめる。C.J.は胸を張って強盗を見返した。
「やってないことをやったとは言えない。それに彼女は関係ないだろ。そう言う理屈もわからない?」
 言ってから、余計な一言だったと後悔した。強盗になるくらいの短慮な男だ。これで暴力に訴えないわけがない。
「ほざいてろ! 何もできねぇんだったら出しゃばるんじゃねぇよ!」

 男はC.J.の胸ぐらを掴んでその顔を拳で殴打した。

 ハンターたちの突入はそれと同時だった。

リプレイ本文

●突入直前
「強盗か、厄介なのは人間も歪虚も同じだな……!」
 レイア・アローネ(ka4082)は顔をしかめた。
「では、私はナンシーさんと外で狙撃につきましょう」
 クオン・サガラ(ka0018)は作戦を聞くやそう告げた。他に集まったハンターたちも、先の三人が決めていた作戦に異を唱えることはなかった。ディーナ・フェルミ(ka5843)はどこか固い表情でメイスを握りしめている。
「私は一階に行くの。撃たれても即死じゃない限り平気だから。人目を引き付けるからその間に二階や裏口をお願いするの」
「わかりましたですー! 僕は二階引き受けるです」
「んじゃあ俺は裏で張ってよう」
 アルマ・A・エインズワース(ka4901)とヴィクターがそれに応じた。
「あんた、即死じゃない限り平気って。いくら覚醒者でも子どもがそんなこと言うもんじゃないよ」
 ナンシーがディーナを不安げな顔で見やる。
「防御は固めてあるの。大丈夫なの」
「気をつけるんだよ」
「では私も、ディーナやマシューと一緒に突入しよう。ディーナ、私はガウスジェイルで相手の銃口を引きつける。一人で引き受ける必要はない」
「自分も防御障壁がありますのでいざとなれば援護します。ですがミズ・フェルミ、ご無理はなさいませんよう」
「行こう、クオン。あんたたち、中は任せたよ」
 ナンシーがライフルを担ぎながら言った。
「それにしても、ハンターになって強盗なんてする?」
「まあ、覚醒者の中には力を得た勢いから力を過信し、この様に犯罪行為に手を染めることもありますからね」
 クオンがゆるゆると首を横に振った。
「VOIDと戦っていれば、自分達の無力が分かると思うのですが、本当に……平和ボケと末期思想は怖いですね」
 終末思想ではなく、末期思想。そこに含まれた棘にナンシーは噴き出した。

●突入
「こちらスギハラ。配置についた。クオンも大丈夫みたい。いつでもどうぞ」
 狙撃班からの連絡で、マシューは三人を振り返った。
「了解。突入します」
 そう返事をするや、彼は覚醒して玄関をぶち破った。
「ハンターだ! 全員動くな!」
 レイアは瞬脚で飛び込む。その瞬間、彼女の耳には人の顔を殴る音が入った。
「ほざいてろ! 何もできねぇんだったら出しゃばるんじゃねぇよ!」
「痛っ!」
「CJ……!?」
 ハンターオフィス受付職員C.J.が、強盗の一人に殴られているのが見えた。彼はレイアと目が合うや、ぱっと顔を明るくして、
「何もできなくなるのはお前の方だ!」
 強盗は慌てて振り返った。レイアはガウスジェイルを張りながら顔をしかめる。
「お前という奴は……!」
 その間に、ディーナも飛び込んだ。彼女は目に付いた強盗に近寄ると、そのままセイクリッドフラッシュを発動する。
「ぐわっ!?」
 突然放たれた光の波動に、強盗がひっくり返った。レイアは自分の近くにいた方に、心の刃による威圧を試みる。
「今だ! マシュー、人質を連れ出せ!」
「了解です! 皆さん、こっちです出て下さい!」
「外は安全だ! 狙撃犯が張ってる! 動ける奴は全員出ろ!」
 様子を見に来たヴィクターもマシューとともに人質の誘導についた。三々五々、人質たちが外に出て行く。レイアはC.J.の方を向いた。
「CJ、お前もだ!」
「わふぅ。こんにちはですー」
 その時、アルマがふらりと入った。まるでいつものバーに入るかのようである。
「あ、受付さんですーっ」
 C.J.を見付けると、耳を揺らしてへらりと笑う。それから、頬の赤みに気付いたようだ。
「お怪我してるです? どーぞですっ」
 そう言って、アンチボディを施した。腫れが引いて、C.J.は息を吐く。
「ありがと……ところで、君、まさか……」
「ここはお任せするですよ。僕らを呼ぶってわかってるなら、念の為強いのを用意しとくのがセオリーです」
 アルマはにっこり笑うと、靴音高く二階に上がって行った。報告書でアルマの火力を知っているC.J.はそれを見て青くなる。自分が殴られた時より怯えているように見えた。
「アルマ! ステイ! ちょ、ちょっと待って! 誰かあいつ止めて! 二階が血の海になる!」
「お? 何だ何だ。あの好青年がそんな凶悪なのか? そうは見えないけどな。話し合いでどうにかするんじゃねぇの?」
 ヴィクターが後を追った。

●一階の鎮圧
 レイアの前にいる強盗が逃走を試みた。彼女はできるだけ殺さないような箇所を狙って斬りつける。本当は武器を持った手を狙いたかったが、相手が動きすぎた。
「ギャッ!」
 脚を斬られてうずくまると、流石にC.J.もそれ以上罵倒しようとはしなかった。
「CJ、あとはあなただけです。さあ、出ましょう」
 マシューが戻って来た。その時、三人目が雄叫びを上げてディーナに向かって行く。マシューが銃を構えたが、ディーナは慌てなかった。レイアのガウスジェイルが、その切っ先を自分に引き寄せたのだ。魔導剣で軽く捌く。
「そんな危ないもの振り回すなんて言語道断なのー!」
 セイクリッドフラッシュが放たれた。マシューが目を逸らす。眩しさと波動の衝撃で、強盗は吹き飛んだ。

●ウルフハウンド
「わっふー。やっぱりいましたね!」
 階下の騒ぎを聞きつけた男たちが、上がって来たアルマとヴィクターを見て身構えた。しかし、品の良い格好のアルマと、比較的年長で攻撃的に見えないヴィクターの姿に、やや安心した顔になる。
「けっ、ハンターオフィスも人手不足とみた。ガキとおっさんとはな」
 魔導銃を持った男……恐らく猟撃士だろう……が鼻で笑った。ヴィクターが首を振る。
「俺はともかくこいつはベテランだぞ」
「お兄さんたち、運が悪いです? ちょうど退屈してた僕が近くにいちゃったですので」
 その声に秘められた狂気に気付いたのはヴィクターだけだっただろう。何しろ、C.J.が止めてくれと言っているのを聞いていたから。
「アルマ?」
 光る三角形が現れた。一人につき一発。
「あえ?」
 何が起こったか、具体的に述べることは控えよう。C.J.の予想通りのことが起きた。一般人二人は、恐らく二度と強盗なんて行えなくなるだろう。猟撃士はすんでのところで回避した。
“Oh my gosh……”
 ヴィクターが呻いた。
「そしたら悪い子、僕と遊びましょー」
「ストップ! ストップ!」
 ヴィクターが止めに入る。アルマはちょっと困った様に、
「なんで止めるです? 僕、いけないこと、してるですか?」
「いけなくはねぇが物には限度ってもんが……お前も銃を下ろせ! 五体満足でいたいなら無駄な抵抗するんじゃねぇ! 人質がお前の心配してんだよ!」
 なおも抵抗の素振りを見せる猟撃士にヴィクターが一喝した。しかし、それでは止まらない。
「この野郎……!」
 アルマに向けて発砲した。ヴィクターを掠めて飛んだ弾丸は、クウランムールに弾き飛ばされる。
「……あはっ! だめですよー、ヒトを外見で判断したら。あ、申し遅れましたです。僕、魔王の卵ですっ」
 ヴィクターはアルマの説得を諦めた。猟撃士から見えるところで十字を切る。R.I.P.……安らかに眠れ。
「お兄さんも僕と『お揃い』になります? 大丈夫です、悪くても再起不能くらいでやめといたげますっ」
 差し出した腕の、手袋と袖の間に覗く手首……人によっては「絶対領域」と呼ぶそこは義手の関節で、青い炎が噴き出している。今度は彼の前に青い光の三角形が現れた。ありゃ駄目だな。食らったら死ぬわ。ヴィクターは目を閉じて両手を組んだ。祈りを捧げるポーズである。
「アローネだ! 一階は鎮圧成功。人質も全員無事だ。そちらはどうだ?」
 レイアからの通信が入った。アルマはそれを聞いて、満足そうに頷く。
「あとはあなただけです。失敗してしまったら、ごめんですよ? ……その方が幸せかもですけど」
 狂気すら滲む赤い目が細められた。失敗。何を? 手加減のことだ。この場でのアルマの「失敗」とは、生け捕りにするべき相手の死を意味する。
「うわああああああああッ!」
 猟撃士は叫ぶとそのまま窓ガラスを突き破って外に飛び出した。ヴィクターはトランシーバーを取り出して怒鳴る。
「二階から一人出た! 撃て!」
「了解!」
 ナンシーが発砲した。

●スナイパーアルケミスト
 クオンは魔導アーマー・ダイダロスで、ナンシーから死角になりそうなところに上がっていた。魔導スマートフォンを持っている仲間に対して適宜情報共有をしようと思っていたが、どうも中は修羅場らしい。繋がったが良いが、通話がままならない。
 彼の位置からはナンシーが見えた。簡単なジェスチャーでクオンに合図を送る。トランシーバーで中とやりとりをしている彼女が伝えたのは、「待機」だった。
 赤いゆがけ……弓を引く際に用いるグローブは力強い一撃を放つことができると言ううたい文句の一品だ。更に、練度の高いクオンが弓から放たれる矢の威力は、生半可なものではない。窓ガラスだって粉々になる。そもそも、一般人が引いたって窓ガラスくらいは割れるし人が死ぬのである。外から制圧するのは、一般人にも被害が出る。と言うことで、彼もまたナンシーと同じく、強盗が逃げ出したところを狙うつもりであった。
(とはいっても、一般人なら一撃で再起不能、覚醒者といえども軽装だと無事で済まない火力なんで……)
 再起不能というか死ぬ公算の方が高い。武器を狙えるなら武器だけ狙いたいし、そうでなければ制圧射撃で動きを止めたい。乗り物ならエンジンやタイヤを吹き飛ばさないと大惨事になる。二メートルはある大弓は、射程が狙撃銃と同等かそれ以上だ。
 やがて、突入が実行に移される。屋内で乱闘の音がした。やがて、人質が飛び出して来る。
「アルマ! ステイ! ちょ、ちょっと待って! 誰かあいつ止めて! 二階が血の海になる!」
 中から男性の声が聞こえた。この声に聞き覚えがある。先日、廃屋で雑魔に囲まれた新人ハンターを救出する時に、概要を説明したオフィスの職員だ。どうやら買い物に来ていたらしい。ヴィクターが慌てた様子で中に入っていく。
 それから、マシューが拘束した男を、数人連れ出した。意識があって悪態を吐いている者もあれば、のびている者もいる。
 その時だった。
「うわああああああああッ!」
 窓ガラスを突き破って、一人が飛び出した。魔導銃を持っている。あれは恐らく覚醒者だろう。
「二階から一人出た! 撃て!」
「了解!」
 ヴィクターとナンシーの声が、クオンのところまで届いた。ナンシーがクオンに合図して、発砲する。威嚇射撃だ。クオンはそれを見て、制圧射撃を加えた。それが止んだところで、マシューが猛ダッシュで追い掛ける。制圧射撃で動けないところに、更にエレクトリックショックで追撃した。
「確保!」
 クオンのヘッドセットが鳴った。アルマからだった。
「もしもし? クオンさんです? アルマですー! 今飛び出した人で最後ですー! 鎮圧成功です!」
「お疲れ様でした。では、降りるとしましょう」
 弓を担いで、彼は待機場所から降りて行った。
「色んな意味でギリギリでした。狙撃型機導師としてまだまだ修行が足りませんね」
 謙虚な彼は肩を竦める。

●死は平等にして鷹揚である
 一段落付くと、レイアはC.J.に歩み寄った。アンチボディで治ってはいるが、まだ頬に違和感があるのかさすっている彼を見て、頭に血が上る。
「何をやっているんだお前は! 少しは自身の身も案じろ大馬鹿者!」
「わっ!」
 C.J.は身を竦める。その姿を見て、レイアは両手を軽く挙げた。
「……いや、他の客を守ろうとしたのだな……怒鳴って済まなかった」
「C.J.」
 そこにディーナが進み出た。彼女は真剣な眼差しでオフィス職員を見る。
「CJは自分が私のほぼ二倍の年齢だって知ってた?」
「知ってるとも。たまに君が十代だって忘れるけどね」
「私でさえ死ねば泣く人が居るの。二倍生きてるCJは私の二倍人と縁を結んでる筈なの。CJに何かあったら泣く人は私の二倍いるの。それをもう少し、真剣に考えて貰ってもいいかな」
「悪かった。正直何も考えてなかった。馬鹿に我慢がならなかっただけ……別に客を守ろうとしたわけでもない。僕にそんな胆力はない」
 彼は目をつぶって押しとどめるような仕草を見せた。レイアは顔をしかめて、
「……だがそれでお前に何かあっては元も子もない。お前を心配する者もいるのだぞ? 実家に母親がいるんじゃなかったのか?」
「君たちの言うとおりだ。今回は僕が悪い。しかし段々腹立ってきた。仕返しで殴りたい。あいつどこ行った?」
 マシューに連行されているのである。
「今回は我慢してくれ。下手すると手を傷める」
「そうする……」
「死の前に男女の差はないの。子どもは大人が庇うべき存在だと思うけど。死への受け流し方は考えた方が良いと思うの」
 ディーナはあくまで静かな調子で言った。
「そうだね……いや、僕だって死にたいわけじゃないぞ……ちょっとイラッとしただけで……」
「無事かい?」
 そこへ、ナンシーがやって来て笑顔で尋ねる。
「ご覧の通り無事さ」
「わふ! 受付さん、無事で良かったですー!」
 耳をぱたぱた揺らすアルマが降りてきた。後ろからは、仏像みたいな表情のヴィクターが続く。二階は身動きできない二人の強盗がいるので医者待ちだ。
「ありゃハスキーの皮かぶったボルゾイだぞ」
「ボルゾイだって可愛いじゃないの」
 ナンシーが口を尖らせる。
「馬鹿言え、ボルゾイは狼狩りの犬だ」
「わふふ。僕、上手にできましたです?」
「よーしよしよし。よくわかんないけど偉いぞ!」
 ナンシーが破顔して頭を撫でる。ヴィクターは両手を広げて肩を竦めたのであった。
 アルマはふと、呆然とした女性の肩を抱いて慰めている男を見かけた。ふらりとその男の近くに寄る。
「あ、ハンターさん……助けて下さってありがとうございました」
「どういたしましてですー!」
 会釈をするように見せて、アルマは男の耳に囁いた。
「彼女さんです? ちゃんと守ってあげてください、です」
 アルマ自身、最近特別な女性ができた。その出来事を通して、その存在の大きさを実感している身としては、そう告げずにはいられなかった。男は少しきょとんとしていたが、こっくりと頷いた。
 ディーナはC.J.がひとまず納得したのを見ると、落ち着かない人質たちの元に歩み寄って、聖歌を聞かせた。パニックになりかかっていた人質たちの雰囲気が、少しずつ落ち着いていく。C.J.もその内の一人だ。

 こうして、宝石店の強盗事件は幕を閉じたのであった。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 突入準備
レイア・アローネ(ka4082
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/03/22 02:55:27
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/03/19 20:55:57