変態ヒュドラ(もどき)退治

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/01/20 22:00
完成日
2015/01/22 01:26

みんなの思い出

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オープニング

●冬にも変態は出ます、時と場合と場所を選ばないのが彼らです
 帝国の森の中。池の近くに村がある。時折やってくる鳥を狩ろうと若者が数名、冬の森を進んでいた。
「お、何羽かいるな。逃げられないうちに少しでも多く仕留められるといいんだが」
 冬の村は食料に乏しいことが多い。若者たちの住む村も例外ではなく、また、風邪が流行っているため栄養のある物を家族に取らせたいと思って狩りにやってきたのだった。
 幸い年が明けてからは降雪も穏やかで足場はそう危なくない。
 鳥が目的だから大型の獣に襲われれば危険だが冬眠しているから大丈夫だろう。
「たくさん鳥を取ってくるから、待っててくれ」
 そう言った手前多少の戦果はあげないと帰りにくいというのが若者たちの共通認識だった。
 戦果はあったらあったで嬉しいが若者たちが怪我をせずに帰ってくればそれでいい、という家族や年配の者たちの心配が届いていないのは生きた年の差だろうか。
 弓を構えた若者たちが射かける前に鳥たちがバサバサと飛び立つ。
 まさか、気付かれた?
 慌てて飛び立つ鳥をせめて追撃で射落とせないかと池に近づくと水面が不穏に揺らめいていた。
 現れたのは九つの首を持つヒュドラに酷似した雑魔。
 命の危険を感じて逃げ出そうとした若者たちをヒュドラは複数ある首で絡め取った。
 ――このまま絞め殺される!?
 ぞっとしたのもつかの間、若者たちは別の恐怖にその直後陥れられることになる。
 巨大な咢を開いてヒュドラがチロチロと舌で顔を舐めまわしてくるではないか!
 しかも唇を狙われている気がするのは気のせいだろうか。きっと気のせいだ、気のせいに違いない。
 いろんな意味で恐怖を感じた若者たちは火事場の馬鹿力でヒュドラを振りきり、一目散に逃げ出したのだった。

「なーんか、新年早々変な依頼ばっかり舞い込んでくるんだよね。まぁ仕事だからやるけどさ」
 ルカ・シュバルツエンド(kz0073)はため息を吐きつつ変態ヒュドラもどきの雑魔の退治依頼を口に出した。
「男性が好きらしいね。首を使って巻き付けて顔を舐めてくる。姿かたちがヒュドラに似てるだけで多分無尽蔵に首が再生されることはないと思うんだけど……男性は愛でるという意味で積極的に狙われるみたいだよ。
 逆に女性の方は愛を育む邪魔者、とでも認識されるのか容赦なく攻撃を仕掛けてくるみたいだ。
 九つの首、それぞれを使った噛みつきに尻尾での薙ぎ払い、氷状のブレス攻撃だね。
 まぁ、尊い犠牲という名の囮役というか引き付け役がいれば首のいくつかはそっちに夢中になってくれるかもね」
 雑魔だし、女性が近づいたら物理的に、男性が近づいたら精神的にやばいから何とかしてきてよ。
 非常に投げやりだったのはオフィスの職員になってからこのかた、変態雑魔の紹介が多数を占めていてハンターに変態斡旋者、と認識されているのではないかと気にしているからかもしれないし単純に自分が嫌なだけかもしれないが、そういってルカは言葉を締めくくったのだった。

リプレイ本文

●ヒュドラ(もどき)は変態(確定)です
 男性……主に唇を狙って求愛行動をしてくる雑魔が発生、男性陣が囮になれば少しは倒すのが楽になるかもしれない、という情報を受けて、討伐依頼に参加した男性陣は死んだ魚のような目つきをしていた。
「雑魔に好かれても嬉しくない……が、囮になる以上覚悟しないとな。しかし、何故男ばかり狙うんだろうか?」
 ヴァイス(ka0364)が精悍な顔を嫌悪と諦めと疑問に彩らせた、複雑な表情で呟く。
 仮面やフェイスガードで顔を隠している者も多い中、あえて彼はノーガードだ。
「……神の与え給うた試練にしても、これはいささか厳しすぎないか?」
 ロニ・カルディス(ka0551)は懸命に神への祈りを捧げている。
 だが多分神の与えた試練というより雑魔が与えた求愛行動というはた迷惑な試練だろう。
 フェイスガードとヘルムが緩まないことを確認するのに余念がないロニ。
「なんつーか、とんでもないヤツが現れたっすね。
 これは虎丸陽一、最大の戦いになりそうな悪寒――もとい、予感っす!」
 自身の身体を抱いてがたがたと震えるのを抑えようとする虎丸 陽一(ka1971)の言い間違いもおそらく広義的に取れば間違っていないだろう。
 なにせヒュドラもどきが巻き付きながら自分の唇を狙ってくるのだから。
「男性好きのヒュドラ、ですか……。ふむ」
 周りを見回しながらレイ・T・ベッドフォード(ka2398)が男性、よし、と確認するように言葉を発する。
「一体どなたが好みなのでしょうね。ヒュドラ受けする人間とは、一体……。
 しかし……愛情表現でしたら、無碍にもできませんね……?」
 多分無碍にしても人からは非難の声は上がらないと思うのだがレイは至って真面目な様子だ。
「……シュバルツエンド様は以前もこのような雑魔の依頼を斡旋していたわよね?
 わざとなのかしら、と疑いたくもなるわね。
 男性を求める雑魔……今回は純粋な男性もいる分多少はやりやすいかしらね?」
 揚羽・ノワール(ka3235)は以前男性ばかりを狙う大ダコの雑魔を退治する依頼を受けた時のことを思い出していた。
 女性が七人、男の娘である自分が一人という非常に偏った依頼だったが、大ダコが狙ったのは男装した女性ではなく女性の姿のままの自分だったことはまだ覚えている。
「足手まといにならないよう、気合入れて頑張るッス!」
 フレン・ガーランド(ka3847)は『精神的にやばい』と聞いて精神汚染の攻撃でも仕掛けてくるのかと想像し不安を募らせていた。
 精神汚染というより唇を狙われた時のショック的に『精神的にやばい』のだがフレンにとっては顔を舐められるのは犬みたいで面白い、の一言で片付く問題らしい。
 求愛行動の唇狙いが犬がじゃれた時に顔を舐めてくるのと同じ感覚と思っている彼は、ある意味大物なのかもしれない。
「殿方の唇を狙う蛇……で、ございますか?」
 困惑した様子で首を傾げるのはレオン・イスルギ(ka3168)だ。
「青の世界の妖怪とやらには、悲運の女性などがそうした化生となった事例もあるそうですが……もしや、その雑魔もそうなのでしょうか?」
 真面目に考察しているがおそらくこの雑魔は単純に変態な歪虚あたりが生み出した変態を引き継いでしまった雑魔だろう。
 男性陣たちが出現地帯の池の近くに悲壮な顔つきで歩みを進めていく。
 しばらく様子を見ていると九つの首を持ったヒュドラのような雑魔が現れた。
 自分を見ても逃げないハンターたちに目が何となく嬉しそうに輝いているように見える。
「あのようなものに顔を舐められるなんて、わたしなら耐えられません。
 ましてや、求愛の意味合いが込められているとなれば……」
 女性でよかった、と安堵してしまい、同行した男性陣に申し訳なく思うメトロノーム・ソングライト(ka1267)の心の懺悔も届くことなくヒュドラは囮組に向かって首を伸ばしていく。
「……かくなる上は、尊い犠牲を出さないよう、全霊を込めて頑張ります」
 男性陣が池に向かう直前、回避の低い男性を優先してウィングガストをかけて、風の加護と無事を祈るメトロノーム。
 囮に釣られて姿を現したヒュドラもどきに攻撃。
 その頭を叩き潰すくらいの気合を込めて、石つぶてを飛ばして衝撃によるダメージを与えた。
「女だからと、後ろで待つのは心苦しいのですが……」
 男性陣が首との取っ組み合い(唇をかけた攻防)を始めたのを見届けた後、普段通り剣を抜いて前衛に加わるレオン。
 中距離以上の距離を保ってアースバレットを放つ揚羽にも首は迫っていた。
 どうやら以前の大ダコと同じように性別を探知する機能が備わっているらしい。
 多分このような性癖の雑魔以外にとっては無用の長物過ぎる機能だが、男性陣は漏れなくロックオンされている。
 前衛の男性陣が首を抑えている間に魔術師四人によるアースバレットが炸裂する。
 陽一と揚羽は首に狙われながらだったため逃げて距離を取りながらのアースバレットとなったが当てる対象が大きかったことが幸いし、全員分の石つぶてが絶え間なく着弾していく。
「イケメンには目がないみたいですわね、未成年は……こうやって大人の階段を上っていくのかしら。あまり上りたくないタイプの階段であることは否定しないけれど」
 四人による一斉攻撃が弱点属性だったこともあり一体が池の中に倒れこみ動かなくなる。
 どうやら致命傷を与えられたようだ、と安堵した揚羽に再び迫りくる首。
 前衛に出ていたレオンにも「よくも殿方との愛の時間を邪魔してくださいましたわね」と言わんばかりに目を怒りの炎で燃やしているように見えるヒュドラが迫ってくる。
 ヴァイスは攻撃は控えて回避に専念しつつ、それぞれの好みの囮全員を狙っていることに気づいて仲間たちに声をかけ、ヒュドラを囲むように展開することで首同士の主権の奪い合いを誘ってみる。
 首がいきたい方向と逆の方向に狙われている男性が向かうことによって少しでも被害を少なくするつもりだったが、ハンターたち、とくに囮役にとっては嬉しい誤算があった。
 首たちが急いで目当ての男性に向かおうとした結果絡み合ってヒュドラの動きに制限が出たのだ。
 その間に魔術師組のアースバレットが再び炸裂し、一体が撃沈。
 しかしその衝撃でほつれが解けてしまったらしく今度は絡み合わないように気をつけながらそれぞれの好みのタイプに向かって首を伸ばすヒュドラもどき。
「悪いが、体を好きにされても心までは奪えない……ぜ」
 ヴァイスを狙ったヒュドラがそれにときめいたのかどうかは分からない。だが一瞬だけ動きが止まった。
 その隙を逃がさず、強く踏み込んで次の打撃の威力を上昇させ、守りを捨て攻撃を重視した構えから、命中を気にせず上段から振り下ろす渾身の一撃を叩き込むヴァイス。
 めげないヒュドラはマゾ根性にでも目覚めたのか結構なダメージを食らったはずなのに、守りを捨てたヴァイスに絡みついて無防備にさらされた顔、特に唇に舌を伸ばす。
 体全身に巻き付かれているため動きが取れず、口を開けば更なる悪夢が待ち受けていそうなので変態雑魔の愛に頑張って耐えるヴァイス。
 女性陣を威嚇している一頭は魔術師たちの渾身のアースバレットで沈んだ。
 今一番危機に陥っているヴァイスを助けようとロニが援護に向かう。
「絶対に倒れるなよ。倒れた瞬間に奪われるぞ」
 何が、とは言わなかったが大切なものが奪われることは想像に難くない。
 他の首が男性陣を狙うことを一時諦めて邪魔をしてきたので、ロニは影が固まったかのような黒い塊を対象に向かって飛ばし、衝撃によるダメージを与えながら首の群れをかいくぐっていく。
 首がふがいないのを補うように尻尾が薙ぎ払い攻撃を仕掛けてきたり、複数の首から氷のブレス攻撃が吹きつけられたりするが精神的なダメージが一番大きいのはやはり絡みつかれての攻撃だろう。
 物理的な攻撃は回復で癒すことができるが精神に刻まれた傷は如何ともしがたい。
 ブレス攻撃を盾で防いだメトロノームは絡みつかれているメンバーを救い出すためにアースバレットを放つ。
「どうぞお気を確かに……今お助けしますので!」
 囚われていた陽一は力のない自分が振りほどくのは難しいと判断、無駄な体力は使わず集中することに専念する。
 傍から見るとグッタリ気絶しているように見えるかもしれないがそれも相手を油断させる策の内だ。
(恋は盲目。アバンチュールで火傷しなってことで)
 ヒュドラに唇を奪われた瞬間、全力でファイアアローを相手の口腔で爆発させる。
 衝撃に驚いたヒュドラの拘束が緩んだのを好機とばかりに逃げ出して相手を指さし、一言。
「燃えただろ?」
「……意外と余裕、ですか?」
「カッコつけでもしないと……素だとショック死しそうだからっすよ!」
 メトロノームの問いかけに半泣きになりつつ攻撃に戻る陽一。
 ファーストキスは美少女と、と決めている彼にとっては雑魔が相手の先ほどのキスはノーカウント、らしい。
「よぉーしよしよし、よぉーし!!」
 甘噛みも締め付けも鎧で受け止めてハグと撫での構えを動かざるもの使用の上で行っていたのはレイ。
(動物を引き寄せるには、周りの動物がうらやむくらいの勢いで可愛がり、施しを与えればよい、と言っていましたね……)
 姉の言葉を思い出し、猫かわいがりを実行に移しながら銃口を口の中から頭蓋骨に向けて銃弾を撃つ。
「罪悪感に苛まされます、が。……貞操の危機でした、から……」
 すみません、と謝った相手は援護攻撃を受けていたこともあって既に虫の息。
「今終わらせて差し上げますね……」
眉間に狙いを定め、銃声が響いた。
「安らかにお眠りください……来世では、良きご縁に恵まれますように」
 他の一体も虫の息だったためレオンがそんな祈りの言葉を口にしながら首を切り落とす。
 残る首は後四体。男性陣の抵抗やアースバレットなどでそれなりに負傷していためか、初めのころほど活発には動かない。
 フレンは愛想よくすれば注意を引けるだろう、と手招きしてみたり呼びかけてみたりしてみる。
「こっちッスよ~僕の方に来るッスよ!」
 残された四体は今までそうやって近づいた五体が無残に撃沈していったのを横目に見ていたらしく「どうする?」「どうする?」と言わんばかりにお互いの目で意思疎通をしているようだ。
 どうやら警戒心が生まれてしまっているようだ。
「まぁ、これくらい数が減れば無理に囮になる必要もないッスかね~」
 戦闘意欲を上げ、攻撃力を上昇させたうえでまだ目と目で会話しているヒュドラたちの一体に向かって仲間の攻撃魔法の合図で他のメンバーと一緒に一斉攻撃に映る。
 ヒュドラたちは迫っていってもやられる、相談していてもやられる、いったいどうすればいいのよ!? と思ったかもしれないが雑魔退治にきてるハンター相手に愛を育む方が無理がある。
「どんな風に舐めてくるのかはちょっと興味があるけれど……雑魔に好かれる趣味はないのよ。ごめんなさいね」
 揚羽が艶やかに微笑んで「どうせ倒されるならせめてその前に天国を目指す!」とばかりに突っ込んできた一体にアースバレットを撃ちこむ。
 脳震盪を起して倒れた雑魔をレオンが眉間に剣を突き立てることで止めを刺した。
 残りの二体も数が減ってきたことによりだいぶ優勢になったハンターたちに屠られ、雑魔はすべての首が倒されると跡形もなく消えた。
「……後始末をしなくてよかったですけれど……皆さん、精神的ダメージの方は大丈夫ですか……」
 聞かないでくれ、というオーラを放っている男性陣に、メトロノームはせめて物理的にだけでも早く綺麗に洗い流せるようにと、用意してきたミネラルウォーターを差し出す。
 死んだ魚のような目のまま戦闘を始め、終わらせた男性陣の目に僅かに光が戻り、綺麗に洗い流した後、メトロノームに礼をいう。
「……その牙。その尾が人を傷つけるのであれば、貴方は私たちの敵……そういうこと、なのでしょうね」
 身勝手ではありますが、と呟きながらヒュドラの好意と自身の行為に詫びつつ、ヒュドラがいたあたりに九本の花を供えるレイ。
 こうして男性陣にトラウマを植え付けたもののヒュドラもどきの雑魔の退治は何とか無事に終わったのだった。

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参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師

  • 虎丸 陽一(ka1971
    人間(蒼)|17才|男性|魔術師
  • SKMコンサルタント
    レイ・T・ベッドフォード(ka2398
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 命を刃に
    レオン・イスルギ(ka3168
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • ゴスロリ美少女?
    揚羽・ノワール(ka3235
    人間(紅)|18才|男性|魔術師

  • フレン・ガーランド(ka3847
    人間(紅)|14才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談の卓
メトロノーム・ソングライト(ka1267
エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/01/20 17:15:09
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/17 23:05:20