二重底の聖堂

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/04/06 09:00
完成日
2019/04/13 01:16

みんなの思い出

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オープニング

●美貌の司祭
 やあ、こんにちは。僕は駆け出し聖導士のジョン・パタースンだ。知ってる人、いるだろうか。去年リアルブルーでファウンドフッテージホラーみたいな目に遭って以来、かなりハンターのお世話になっている。転移してハンターになってからも、聖堂で蜘蛛に囲まれたりしてるんだけど。

 今、僕は山奥のエクラ聖堂に来ている。オフィス職員C.J.(kz0273)が徳を積む付き添いだ。どうも、彼は巻き込まれ体質らしくて、徳を積もうとしてもその前に事件になってしまうと言う。どう言うことだと思って報告書を読んで納得した。可哀想に。
 僕も信仰を力にする聖導士の端くれだ。信心深いC.J.が悩んでいるのに放って置くわけにもいかない。そう思って、彼の山ごもりに付き添ったんだけど……。

「雑魔の襲撃です!」
 ここの司祭、聖導士のグスターヴォはびっくりするほどの美青年だった。美青年に夜中起こされると言うと、男の僕でも艶っぽいものを感じてしまうが、事態はそんなに色気のあるものではない。僕たちの他にも、たまたま訪れていた彼の師だと言うメダルド司祭と言う老人が宿泊していた。彼も一般人だ。僕とC.J.は二人部屋だが、彼は一人部屋の筈だ。
「C.J.よく聞いてくれ。僕はグスターヴォ司祭の手助けに行く。絶対に部屋を出るな」
 屋内から聞こえる破壊音は、雑魔が中にも入り込んでいることを示している。C.J.は硬い表情で頷いた。
「わかった。でも気をつけてね。僕の付き添いで怪我したなんて嫌だよ」
「何言ってるんだ。僕は君の護衛だ。君の付き添いで怪我するなら本望だよ」
「もう! そんなこと言って! 君はまだ子どもなんだからね! 無茶しちゃいけません!」
「無事を祈っててくれ」
「任せて。祈るだけなら得意」

 僕はグスターヴォ司祭に合流した。彼はプルガトリオで雑魔を床に縫い付ける。僕はホーリーライトを放った。
「ああ、ジョンくん」
 彼は燭台を持ってこちらを振り返った。蝋燭の灯りだけで、薄暗い中浮かぶその顔は、幻想的な美しさすら感じる。知人のアルトゥーロ司祭も結構な美形だと僕は思っているが、なんと言うかグスターヴォ司祭は度を越している。垂れた金色の前髪が、顔に影を落としていて、その陰影すら美しい。
「メダルド司祭は」
「さっき見に行った時は無事でした。君、戦えますか」
「まだそこまで練度は高くありませんが、助太刀します」
 雑魔討伐そのものはすぐに済んだ。だが、問題はここからだった。

 メダルド司祭は、胸を裂かれていた。すぐに搬送が手配され、彼は病院へ運び込まれた。

●知りすぎた男
 そういうわけで、ハンターオフィスに通報が入ってハンターが呼ばれた。僕は彼らに事情を説明してから、礼拝堂をうろうろしている。落ち着かないからいても良いかと訪ねたところ、グスターヴォ司祭は快諾してくれた。
 だが、礼拝堂に入ると余計に落ち着かなかった。なんだろう。この礼拝堂……雰囲気が重い。完全にただの気分とかカンの問題だとは思うが、僕はうろうろと聖堂を歩き回って……。
「ん?」
 長椅子に赤いものがついているのに気付いた。正確には赤黒い。
「え? 血か?」
 しかも、そこまで時間は経っていないように見える。つい五分前、と言うほど最近ではないが、数時間以内だろう。
 嫌な予感がして、僕は注意深く床や他の椅子を調べた。その血は所々だが続いていて……やがて、演壇に辿り着く。演壇には大きめの引き出しが付いていた。説法の資料などを入れておくのだろう。
 僕は……その引き出しを開けた。血の匂いが鼻を突く。

 引き出しの中には、血まみれの鉄爪が布にくるんで入れられていた。

「こ、これは……」
「おや、悪い子ですね?」
 不意に後ろから声を掛けられて、僕は咄嗟に振り返ろうとした。しかし。その前に襟首を掴まれて演壇に胸から上を叩きつけられる。
「ぐっ……!」
「礼儀正しい子だから大丈夫かなとは思ったけど、甘かったな。ジョンくん、申し訳ないんだけど、これで君を無事に帰してあげることはできなくなりました。これもエクラのお導きです」
 グスターヴォ司祭の明るい声が降ってきた。明るいが、その声は確かに物騒な色を含んでいる。身の危険を感じるには充分だった。
「信仰を犯罪の言い訳にしないでください。地獄に落ちますよ」
「あの悪徳司祭と私の罪、どちらが重いでしょうかね? 人一人の悪しき欲望に満ちた一生を終わらせるのと、人に罪を負わせて苦しめるの。ねえ、君どう思いますか?」
「顔が良いからと言って信用するのも考え物だと思いました」
「ははは。こればっかりは生まれつきですから……では君はオフィスから呼び出しが掛かって帰ったと、他の人には伝えておきましょう。始末はあとで付けます」
 首筋に衝撃を受けて、僕の意識はそこで途絶えた。

●ハンドアウト
 あなたたちは、山奥の聖堂で起きた歪虚事件のために呼ばれたハンターです。
 雑魔の襲撃があり、聖堂の司祭とたまたま居合わせたハンター・ジョンによってひとまず撃退されました。残党がいるかも知れないと言うことで呼ばれました。
 グスターヴォ司祭、ジョン、C.J.に怪我はありませんでしたが、グスターヴォ司祭の師であるメダルド司祭は、歪虚の爪で胸を裂かれて意識不明の重体です。すぐに病院に運び込まれました。現在治療中です。高齢であり、回復するかは微妙なところですが、病院で手を尽くしているとのことです。
「ねえ、ジョン見なかった?」
 残党狩りを終えて戻ってくると、C.J.があなたたちにそんな相談を持ちかけます。それを聞きつけたグスターヴォ司祭は、
「ああ、彼ならオフィスから連絡が入って帰りましたよ。皆さんによろしくと仰っていました」
「そうなの? だったら僕に話してくれると思うけど……そんな暇もないくらい急ぎの用件ってなんだろう。聞いてる?」
 あなたたちは首を横に振ります。
「えー……? ほんとに?」
 去って行くグスターヴォ司祭の後ろ姿を見て、C.J.は怪訝そうに呟くのでした。

リプレイ本文

●疑念
「もしかしたら、礼拝堂にいるのかな。彼聖導士だし、信心深いところがあるから。ちょっと僕見てくる」
 C.J.がそう言うと、グスターヴォは残念そうに首を横に振った。
「ああ、申し訳ない、ジョルダンさん。今礼拝堂の鍵が見当たらなくてね」
「えっ、大変じゃないですか?」
「ですが、すぐには使いませんので。あとでゆっくり探しますよ。それに、ジョンくんは礼拝堂の方には行ってませんよ」
(司祭さん、言ってる事変です?)
 アルマ・A・エインズワース(ka4901)は内心で首を傾げた。聖職者が、礼拝堂の鍵をなくして平然としているものだろうか?
 また、ジョンとは知らない間柄ではない。彼が同行者を置いて帰る筈がないのだ。だが、そんなことはおくびにも出さない。一部の者から「駄犬」と評される、明るい振る舞いで司祭には接していた。
 眉間に皺を寄せているC.J.をちらと見る。彼の傍には鞍馬 真(ka5819)が付いていた。
 真は司祭が去って行くのを見るや、オフィス職員へ低い声で囁く。
「会ったばかりの司祭よりも、ジョン君への『勝手に帰る筈が無い』という認識の方が信頼に足ると思う」
「やっぱり君もそう思う? それに、君やアルマ、レオナだって親しいんだろ? なおさら何も言わずに帰る筈がない」
 C.J.はいつになく真剣な顔で頷いた。レオナ(ka6158)も、
「呼び出す理由も思い当たりませんし、前から逗留のジョンさんが、ご同行のCJさんを置いて帰るのもおかしいです」
 先日の任務でジョンと交流を持った彼女としても、腑に落ちないことがあるようだ。
「ただ、グスターヴォが嘘吐く理由、ある?」
「もし司祭が嘘を吐いているなら、相応の理由があるということだね」
「メダルド負傷の犯人、とかね」
 C.J.が言うと、真は少し考え、
「発見の時に、メダルド司祭の部屋のドアが閉まってたって言うのも引っかかるよね。雑魔がわざわざ閉まってる部屋のドアを開けて、人を襲ってからお行儀良くドアを閉めるかな?」
「ううん、なんだか不穏な感じなのかしらね」
 イリアス(ka0789)がきょろきょろと周りを見回しながら言った。
「なんだか私よく司祭さんとは縁がある気がするけど、みんないい人だったわね。司祭さんはみんないい人だったから、あんまり疑ってかかりたくはないけれど……ちょっとお話きいてこようかしら」
「何もなきゃそれで良いんだけど……でもイリアスさん、気をつけてね。普通じゃないことが起こってるのは確かだし」
「ええ、ありがとう」
「わふー、僕、そしたら念のため礼拝堂を見てくるです!」
「ねえ、ちょっと待って、マリィアどこ行った?」
 さっきまで一緒にいたマリィア・バルデス(ka5848)の姿が見えない。
「マリィアさんだったら、さっき司祭さんを追い掛けて行ったけど……」
 イリアスが言う。C.J.は眉間に皺を寄せて、司祭が去った方面に向かって行った。

●挑発
「失礼、グスターヴォ司祭」
 マリィアは、どこかへ行こうとするグスターヴォを呼び止めた。
「マリィアさん、でしたね。どうされましたか?」
「何のために普段から我々が通信手段に気を使うか分かりますか、司祭? 通信障害も通信制限も受けていない場所で他の仲間にもCJにも連絡せずたかが一兵卒が消える? リアルブルーの戦闘プロトコルはクリムゾンウェストとは違うのですよ」
「私に兵役経験はありませんので……仰ることがわかりかねます」
 マリィアは憐憫の表情を浮かべた。
「貴方はリアルブルーの軍人を良くお知りでないようだ。我々は部隊行動中に、上官に何も言わずに転進することを許されるような教育は受けていないのですよ、MIAやKIAにでもならない限りは。尤もその知識を貴方が次に使えるとは思いませんがね」
「ジョンくんは軍人さんだったんですか?」
 グスターヴォが怪訝そうにC.J.を見た。その時、同行者たちはC.J.が一瞬だけ悪い顔をするのを見た。
「ああ、そう言えば、僕は彼の正確な素性をお話ししていませんでしたね! 僕の護衛にして付き添い。信心深い聖導士としか。ええ、ハンターとしての練度は低いですが、彼は立派な戦闘員です。この前も、エバーグリーンの暴走自動兵器と渡り合ったと聞いています。ね? レオナ」
 どうやら、ジョンを学生だとは紹介していなかったらしい。
「ええ。支援として私も同行いたしました」
 レオナはにっこりと微笑む。
「わふー! ジョンさんは真面目な方です!」
 アルマも、長い耳をぱたぱたと揺らしながら断言した。
「私は内憂に優しくする趣味はない」
 マリィアはきっぱりと言い放つ。
「逃げても良いですよ、司祭? それなら大手を振ってマンハントできる」
「逃げるような理由はありませんよ。あなたは何か誤解されているようですね」
「そうでしょうか? まあ良いでしょう。では私はこれで」
 マリィアはそう言って踵を返すと、C.J.の肩を軽く叩いた。
「行くわよ」
「おう。行くぞ、真」
「うん、行こうか」

●伝話
「彼女は何か誤解されているようですね……」
 グスターヴォは苦笑した。レオナはさりげなく、
「消えたジョンさんも心配ですが……メダルド司祭様にお見舞い申し上げます」
「ありがとうございます、レオナさん」
 グスターヴォは長いまつげを伏せて見せた。心から嘆いている、ように見えた。
「あまりお力落としをなさいませんよう……ところで、通信機を貸して頂けないでしょうか? オフィスに戻りの連絡を入れないとなりません」
「食堂に魔導伝話がありますのでご自由にお使い下さい」
(オフィスに連絡されて困る、と言うわけではないのでしょうか?)
「ありがとうございます」
「私、帰るまでの間に、司祭さんのお話を聞かせて頂きたいんですが」
 イリアスが司祭の袖をちょんと引いた。
「私の話、ですか」
「いいところ、好きなところ、景色がきれいな所があれば教えてもらいたいわ」
「ええ、構いませんよ。参りましょうか。レオナさん、伝話の場所は……」
「わかります。では私はこれで」
 レオナは微笑んで二人を見送ると、そのまま食堂に向かった。伝話は食堂の隅に鎮座している。
『はい、ハンターオフィスでございます』
「ハンターのレオナと申します」
 そこで、レオナはもう少しで戻れることを告げた上で、ジョンに戻る様に伝話した者がいるかどうかを尋ねる。職員は周囲にそれを確認し、
『今いる職員は誰もかけてないそうです。離席している者もいるので絶対とは言い切れないんですが……』
「いえ、結構です。ありがとうございます」
 急ぎで戻るような用件なら、オフィスの中で共有されている筈だ。それがなかったと言うことは……やはり嘘か。レオナはスマートフォンで仲間と連絡を取った。
「レオナです。やはりオフィスはジョンさんの呼び戻しに心当たりがないようですね。嘘だと判じて良いと思います」
『やっぱりね……了解したわ。こちらも捜索を続行する。司祭はイリアスが?』
「はい。外に連れ出してくださいました」
『私と真、C.J.で司祭の私室を家捜し中よ。真が今占ってくれてるけど……』
「私も占いましょうか。また何かあったら連絡します」
 マリィアとの通話を終えると、今度はアルマから着信があった。
『もしもし、アルマですー! 今レオナさん一人ですか?』
「ええ。司祭はイリアスさんが」
『ジョンさんいました、やっぱり司祭さん変です!』

●解錠
「それにしても二人ともすごいハッタリだったね」
 ある程度司祭から離れると、真はこっそりと二人に言った。
「嘘は一つも言ってないぞ。マリィアは一回も主語をジョンにはしてない。たかが一兵卒とは言ったけどそれがジョンだとは言ってない。僕だって戦闘員とは言ったけど兵士だとは言ってない。渡り合ったとは言ったけど一騎当千でなぎ倒したとは言ってない」
 C.J.はとぼけた顔で肩を竦める。
「ところでマリィア、MIAとかKIAって何だよ? 呪文かと思った」
「Missing in actionとKilled in action。戦闘中行方不明と戦死のことよ。グスターヴォは知らないでしょうけどね。ひとまず、司祭の部屋から探しましょう。二人とも、見張ってて」
「うん」
 C.J.は腰に手を当てて周囲を見回した。真もさりげない風を装って廊下を少し歩いたりしてみる。マリィアはシーブスツールを取り出すと、遠慮無く鍵穴に突っ込んだ。すぐに解錠がされた。
「闇雲に探しても見つからない。ちょっと占ってみる」
 そこに、丁度レオナから入電があった。マリィアが応対する。真は札を並べて……。
「……何かやたらと二枚くっついてくるな」
「ジョンの命が掛かってるから緊張してるんじゃないの?」
「心配はしてるけど手汗とかは……」
 そこで、真は手を止めた。
「二重なんだ」
「どう言うこと?」
「床か引き出しが二重になってて、多分その間に何かある」
「引き出しを全部開けるか。あとベッドひっくり返して……」
「レオナからよ。やっぱりオフィスはジョンを呼び戻していない」
「いよいよ怪しいな」
 その後、この三人の元にもアルマからジョン発見の報が届いた。

●発見
 アルマは礼拝堂のピッキングに挑戦した。司祭はイリアスが釘付けにしていてくれる筈なので、安心して集中できる。やがて扉は難なく開いた。
「お邪魔しますです」
 念のため、内側からかけ直す。うっかり司祭が様子を見に来ても良い様に。
 ステンドグラスから差す光が、穏やかに礼拝堂を照らしていた。アルマはきょろきょろと辺りを見回して……。
「血、です?」
 日が高く、礼拝堂の中は明るい。小さな点だったが、難なく見付けられた。赤黒い液体が乾いた物。ハンターなら少なからず見ている。彼はその跡をたどり、演壇に辿り着いて……。
「!」
 気絶したジョンを発見した。目立った外傷はないようだ。しかし意識を失うほどのことをされている。ひとまずアンチボディを施して、揺さぶった。
「う、ううーん……」
 ジョンはぱちりと目を開け、しばらく呆けたようにアルマの顔を見ていたが、やがて相手が誰だかはっきり理解したらしい。
「……あっ! アルマさん! 聞いて! グスターヴォが犯人です! この引き出しに凶器が!」
 そして彼は自分の身に起こったことを説明した。
「ただ、証拠はこの凶器しかなくて、僕が居眠りしたんだろうとか言われるとなんとも……」
「あ、全面的に信じますです」
「ありがとうございます……C.J.は?」
「無事ですー! 今真さんとマリィアさんがついてくれてるです」
「それなら安心」
 ジョンはそこでようやく、強ばらせていた顔を和らげた。アルマはスマートフォンを取り出すと、仲間たちに連絡を入れるのであった。

●告発
「何もない山の中ですが、私はこの景色を愛していますよ」
「ええ、そうだと思います。とても素敵な景色だもの。メダルド司祭も、この景色が好きだったのかしら?」
「あの方は……そうですね、景色などにはあまり頓着されず。人との関わりを大事にしていましたね」
 風が二人の髪を揺らした。新緑には少し遠いかも知れないが、春も盛り。青い枝が陽光を反射して眩しく光っている。空気が澄んでいた。
(もし本当に何かあったんだとしたら……これ以上なにかあることは止めないといけないわね)
 事実、ジョンがいなくなっている。C.J.や、顔見知りのレオナたちが、勝手に帰るわけがないと断じるジョンが。
(誰しも正しい心をもっているから、正しい事しかしないとは限らないもの)
 イリアスとて、一人のハンターだ。戦闘があるから、と銃の持参もある。いざとなれば妨害射撃に威嚇射撃で牽制するつもりだった。怪我人は出したくない。誰であっても。
「どんな方だったんですか?」
「そうですね……人との交わりを大事にしている方でした。よく集まりなども開かれていましたよ」
「どんな集まりだったのかな? 私も興味があるな」
 そこに声が飛んだ。グスターヴォがそちらを見る。真が何やら冊子のような物を持って立っていた。後から、マリィア、アルマ、レオナ、C.J.と続く。そして……。
「見付けましたか」
 ジョンを見て、司祭は口角を上げた。
「それは帳簿を、かしら? それともジョンを?」
 マリィアが目を細める。
「ジョンくんのことです。その帳簿まで探し当てるとは想定外でした」
「わぅー。貴方がした事って、断罪でも何でもなくただの保身では?」
 アルマがまっすぐに司祭を見た。
「裏帳簿って証拠があるなら、然るべき所に提出すればいいです」
「ええ、私もそう思います。でも、メダルド司祭を襲ったのは断罪とは別の理由があるでしょう」
 レオナが言う。彼女は一枚の木片を見せる。司祭間にどんな感情があったのかを占ったものだ。
「憧憬が献身になり、尽くした分だけ彼の感情が欲しかったのでしょう。だが彼は身代わりのように信徒を寄越すだけだったのではありませんか?」
「ええ、元々、信徒にはあまり困りませんでしたから。こんなに慕っていたのに、私にはあまり優しくありませんでしたね。告発すればお前も同罪だと。そうです、アルマさん。あなたの仰るとおり、保身と、憂さ晴らしです」
「メダルドは、金が欲しいだけだったのね。集まりというのはお金の掛かるパーティか何かでしょう。感情を重んじたあなたとは合わなかったんだわ」
 マリィアがまた憐れむように言う。
「鬱陶しかったでしょうねぇ。これもエクラのお導き、でしょうか」
 グスターヴォは微笑んだまま首を横に振った。
「でも元凶を始末して目撃者も消そうとしたです? 手の汚し方間違ってるですー。そんな風に神様を都合よく使ったらだめです。僕も半分は聖導士です。それはそうと」
 アルマはちょいちょいと手招きをした。怪訝そうにしながら、グスターヴォは歩み寄る。アルマもつかつかと歩み出て……その横っ面に平手を食らわせた。バシッと小気味良い音が聞こえる。覚醒者同士では大したダメージでもないだろう。
「……わふん。すっきりしましたです。術でどっかんしないのは温情ですよ?」
 魔王の卵は微笑む。
「大事な子を殺されかけたら、怒るのは当然ですよね?」

 グスターヴォを連行し、無事ハンターオフィスに帰投した一行は、ほっと一息吐いた。オフィスによれば、メダルドはひとまず一命を取り留めたらしい。
「それにしても、ジョンさんも無事再会できて良かった」
 レオナはぐったりしているジョンを見て微笑んだ。
「皆がいてくれて良かった。僕だけだったら見付けられなかったよ」
 C.J.もうんうんと頷く。
「ところで、CJさんはあの教会でどう徳を積もうと?」
「掃除したり礼拝したりそう言う感じ。僕も一応エクラ教徒だからね。真面目に信徒合宿すれば多少は運も向くかなって」
「信仰って合宿で良いものなのかしら……?」
 イリアスが首を傾げた。

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参加者一覧

  • 金糸篇読了
    イリアス(ka0789
    エルフ|19才|女性|猟撃士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 遊演の銀指
    レオナ(ka6158
    エルフ|20才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/04/05 16:17:03
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/04/03 07:05:45