【AP】せっ●●しないと出られない部屋

マスター:鮎川 渓

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~8人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2019/04/05 22:00
完成日
2019/06/05 20:46

このシナリオは5日間納期が延長されています。

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オープニング


 ふと気がつくと、香藤 玲(kz0220)は見知らぬ白い部屋にいた。
 それなりの広さがある部屋は、壁も天井も床もまっさら白く伽藍堂。家具などはなく窓もない。重々しい鋼鉄の扉がただひとつあるきりだ。
「……よく分かんないけど、ココから出なきゃ」
 戸惑いつつ扉に寄ると、扉にかけられているプレートに気付きぎょっとなる。

 『 "せ っ ● ●" し な い と 出 ら れ ま せ ん 』

「こっ、これはぁッ!?」
 玲の背後にベタフラが奔る。リアルブルー出身者である玲には覚えがあった。
「まさか一時SNSとか薄い本とか何とかで流行ったっていうアレ……!? 何でクリムゾンウェストにぃ!?」
 そういったネタでは提示されたお題をこなさないと絶対に開かないお約束だったが、念の為ドアノブを捻ってみる。が、当然のように開かない。
「ねぇちょっと、どっきりなんでしょー!? ハイハイ、僕ちょーびっくりしたよー大成功だよーもうネタバラシしに来ていいよー!」
 しーん。
 無情な沈黙が返る。
「……やだこれマジなワケ? "せっ●●"しないと出られないっつったって僕ひとりじゃんよ、詰んでんじゃん。どうしろっつーの……よ、」
 念の為部屋の中を振り返った玲の目に、ちんまりとした何かが映った。
 ひとりきりだと思っていた部屋の中に、それは確かに"居た"のである。
 キノコ――否、ペットであるパルムのパー子が。
 パー子は玲の視線に気付くと、『よっ』とばかりに右手を挙げた。

「~~~~あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!」

 玲は気も狂わんばかりの勢いで鉄の扉をどんどこ叩く。
「ねえバカなの?! バカだろ!! あのちびっこキノコとナニをDoしろっつーのさ、倫理的にも物理的にも色々ムリすぎんでしょ!? いかに思春期の僕の僕だって1ミリも頑張れる気がしないんですけどむしろ相手がキノコなんですけどキノコな相手に頑張ってもらえってコトかなぁキノコだけにって下ネタかよぶっ飛ばすぞッつかそもそも僕未成年だし本気でアウトだからお願いします出してくださああぁいっっ!!」
 しかし泣こうが喚こうが扉は開かない。手が痛くなってきて今度はがつんと蹴飛ばした。やっぱり痛い。そして開かない。
「うう、斧でもあればなぁ」
 手を擦りつつぼやくと、突如足許にごろんっと斧が現れた。
「? もしかして謎部屋の謎効果で、欲しいものが出てきたりするのかな……ともかくラッキー! 早速コレで」
 がつんっと斧を扉へ叩きつける。しかし扉は傷ひとつつかない。
「じゃあ魔導ドリル!」
 どりどりどりっとドリルで削ろうとしても、やっぱり扉は壊れない。
「火炎放射器!」
 ごぉっと炎を吹きつけてみても、鉄の扉は赤くなるばかりでやっぱり開かない。

 パー子は錯乱状態の主とプレートの文字とを交互に見つめ、しばらくじっと考えたあと、巻き込まれないよう部屋の隅に下がった。
 そうして謎部屋の謎効果へむにゃむにゃ念じ、プラカード数点、極太ペン1本、それに何やらにょろんと長いブツを召喚すると、せっせとプラカードに何かを書き始めたのだった。


「……やっぱダメかぁ」
 思いつく限りの破壊工作を尽くしてなお微動だにしない扉を前に、玲はがくりと膝を折る。
「ここはセオリー通りお題をこなさなきゃ出られないのか……いやでもパー子ちゃん相手にそんなこと……」
 膝抱えぶつぶつ病み散らかしていると、突然背後からぴしぃっと鋭い風切り音が響いた。驚き振り向くと、そこには黒革の鞭を振り回すパー子の姿が!
「パー子ちゃん、僕そういうプレイはちょっと……痛ぁっ」
 ほざく主をびしぃっと鞭打つと、パー子はすかさず先程したためたプラカードの内の1枚を掲げた。
『部屋をきちんと片付けなさい』
「……は?」
 玲がきょとんとしている間にもパー子はびしばし鞭打ちながら次々にプラカードを掲げていく。
『脱いだ靴下は表に返すこと』
『甘い物を食べたら要ハミガキ』
『いつまでもウダウダへこむの禁止』
『寝癖つけたままオフィスに行くな』
「いたっ、ちょ、イキナリ何なの!?」
 次々に見舞われるダメ出しと鞭打ちの嵐に、玲がすっかり心折られた頃。パー子は鞭を下ろし、最後のプラカードを掲げた。

『解:"せっ●●"=折檻(せっかん)』

 どこからか"ピンポーン"と朗らかな音がしたかと思うと、あれだけびくともしなかった扉がするっと開いた。呆然とする玲をよそにパー子はとっとこ外へ出ていく。
「……は? 何? "せっ●●"って伏せ字じゃなくて……大喜利かよおおおぉぉ!?」
 ともかく扉は開かれた。
 無事貞操は守られた玲だったが、大事な何かを失くしたような喪失感を味わいつつ、とぼとぼ部屋を後にした。

リプレイ本文

 紅界出れない部屋ファンの皆、こーんにちはー! 私、部屋の精☆
 今回は何と8組の捕獲に成功したよ♪ どんな痴態……ノン、ときめき展開が待ってるのかな? 皆も一緒にれっつデバガメ★


 香藤 玲(kz0220)は現状を惟る。扉には例の文言。これはさっきと変わりない。
 けれど壁は花で飾られ、卓上には春香るフルーツティー。趣向を凝らしたケーキもあったが、ほぼ玲とパー子とでたいらげた。極めつけは身も心もダメにするクッション。何という寛ぎ空間!
(それは良いけど)
 頭を預けているのはドレスに包まれた膝。HIZA。どきまきしているとエステル・クレティエ(ka3783)が小首を傾げる。
「喉の調子どうですか?」
「だだじょぶっ」
 どもる玲に彼女は優しく微笑む。何でこうなったんだっけと玲は記憶を手繰った。

 突如舞い戻った謎部屋。先にいた彼女は慄く玲を宥めると、室内を花で満たし、特製の紅茶と持参したケーキでお茶会を催してくれたのだ。
「取引とか下心は無くて。せっ●●=『接待』でどうかなと」
 それでご馳走になり寛いで、気付けばいつしか膝の上。恐るべし膝枕の魔力。

 考え込んでいると彼女が目を伏せた。
「……以前ご一緒した時に、玲さんの心の柔らかい部分に知らず触れてしまって……ごめんなさい」
「あれは僕がビビりだったからで! 皆に悪い事しちゃった」
「また落ち着いたら……歌の練習、しましょう ね? ……やっぱり下心ですね」
 夢でも良いから伝えたかったと告げる顔がいじらしく、玲は言葉に詰まる。と、彼女が身を乗り出した。
「夢の中なら、上手く歌えるかもしれませんよ? 腹式呼吸のおさらいをしてみても……あら、頬が真っ赤です。お熱でも?」
 間近で顔を覗き込まれ、女性免疫ゼロの玲はもうパニック。
「おおなかに手を当ててすーはー!」
「? あ、おなか動いてますね♪」

 開いた扉に気付かぬままレッスンは続く。玲と共に春の歌を口遊みつつ、エステルはドレスの裾を握った。裏地の文字を祈るように指でなぞる。
(また――今度何時か)


「せっ、せせ、せっ●●しないと出られないなんて、そんな暫く前に流行った!?」
 時音 ざくろ(ka1250)は絶叫した。傍らでは妻・八劒 颯(ka1804)がプレートを覗き込んでいる。
(そりゃあ夫婦だし、そういう事しても別に何もおかしくないけど……!)
 少女と見紛う可愛さでも、ざくろは立派な男子。想像は愛の絶頂夫婦の営み情愛極まれる所までノンストップ! 上気した頬を見られぬよう扉へ飛びついた。
「ざくろは扉を調べるから、颯は壁を調べて」
 颯は何か言いかけたが、壁伝いに歩き出す。ざくろ、ちょっぴりホッ。妙に意識してしまっているなんて、好きな子には絶対気取られたくないのが男心。けれど颯と距離をとっても鼓動は早いままで。
(集中集中、颯のためにも絶対出なきゃ! ……ああ、でも全然開きそうにない。どうする? こうなったらいっそ……いやいや)

 葛藤する事しばし。気配を感じ振り向くと、颯が熱っぽい眼差しでざくろを見つめていた。そのまましなだれかかってきて――
「颯、だっ、駄目だよ、いくら夫婦でも……そういう事は2人の時にじっくりっ」
 言葉は柔らかな感触に阻まれた。思いがけぬ深い口付け。舌先を吸われ思わず肩が跳ねる。
「か、監視カメラで誰かに見られてるかもしれないしっ」
「むしろ見せつけないと反応してくれないのでは?」
 抗議は蠱惑的な微笑と再びのキスに奪われて。
 ざくろの唇を思う存分味わってから、颯は濡れた唇もそのままに宙を見据え言い放つ。
「接吻ですが何か?」

 がちゃん。

 解錠音が響いた。颯は脱力した夫を支え扉を開ける。ざくろは少し拗ねた顔で、颯の耳許でぼそりと。
「はぅ……帰ったら寝かさない」
「当然です、お時ちゃんが想像した事は二人きりのベッドで……ですよ?」
 好戦的に笑む颯。ざくろの頬が一層赤くなった。


 パフェに大福、餡蜜etc……卓上に聳えるは甘味の山。その麓、スイーツホリック・高瀬 未悠(ka3199)はぐっとショコラを噛みしめる。
(食べても食べても減らないなんて!)
 こっそりおなかを擦ると、ユメリア(ka7010)がお茶を淹れてくれた。
「ユメリアのお茶と応援があれば百人力ね」
 笑って見せたものの胃袋はとうに限界。それでも次の甘味へ手を伸ばす。ちらりとユメリアを見た。彼女の世俗離れした清楚な佇まいに、思わず吐息が零れた。

 せっ●●なる文言を見た時、未悠の頭を占めたのは金髪の彼と桃色のヴィジョン。伏せ字だと察した瞬間それは羞恥に取って代わり、
「紛らわしいわね!」
 照れ隠しにぷんすかするもユメリアはきょとん。好きな人が居るのだから当たり前と割り切るも、気恥ずかしさはあって。
「こうなったら『摂取』で脱出よ!」
 勢い甘味の山を召喚し今に至るのだった。

(負ける訳に行かないわ。諦めたらユメリアを出してあげられないもの!)
 果敢に餡蜜を頬張る。友のため奮闘する未悠の横顔には、生気に溢れた美しさがあった。ユメリアは見惚れながら新たな皿にケーキを装い、苺の部分を取り分ける。
「はい、あーん♪」
「あーん♪」
 すると苦しい『摂取』が親友との『折半』に早変わり。半ば味覚が麻痺していた口内に爽やかな酸味が広がる。
「ふふっ、ありがとう。おいし♪」
「良かった。考えていたのです、二人でいる意味を」
 未悠も蜜を掬い彼女の口許へ。途端、解錠音が響いた。
「美味しいものは仲良く半分こって事ね♪」
 ふたりは甘味をシェアし続ける。
「他にも試してみたかったですね。あなたの心を頂戴します(窃盗)とか」
「流石詩人ね! 私はユメリアに『接待』したかったわ。明日、家に遊びに来ない?」
 尽きせぬ甘味をお供に、お喋りも尽きる事なく続いた。


「ふわぁっ」
 ベッドへ組み敷かれたはずみで、リブの眼鏡がずり落ちた。マリナ アルフェウス(ka6934)はそれを優しく直してから首筋へキスを降らせていく。が、胸に手を伸ばしかけて気付いた。
「当方もリブも女性。これでは不可能」
「何が!?」
 ナニがとは答えず、マリナはデータベースの再検索を開始した。

 最初マリナは扉の破壊を試みたが、即不可能と見切りをつけた。
 そこで『接戦』でどうかと試したのは模擬戦。が、実力に差があり、マリナが手心を加えなければならず接戦とはいかなかった。
 ならばナニでドウかと押し倒したが、遺憾ながら如何ともシがたかった次第。

 検索を終えたマリナが次の案を告げると、リブは耳まで真っ赤になる。
「それってき、キ、」
「順序は逆になってしまったが……いいだろうか」
 リブのうぶな反応に、秘めた感情が煽られる。恋人に対する罪悪感に胸灼かれつつも、友人の枠に収まりきれない想いが言葉になって溢れ出ようとする。
 それを押し止めるよう、リブの指が唇に触れた。
「私、マリナさんだいすき、です。でもあの方も大事なお友達だから……めっ、です」
 熱暴走しかけた回路がふっと冷える感覚がした。それがリブにも伝わったのか、ふたりは緊張の解けた身体を寄せくすくす笑いあう。
「では、これならどうだ?」
 マリナはリブに抱きつくと、平らな胸に顔を埋める。
「これなら、他言無用で構わないだろう? ……ふふ、こう言うのを『摂取』すると言うようだな?」
「成程! 甘えたさんなマリナさんかーわいい♪」
 そうして甘え甘えられ、温もりや充足感をたっぷり摂取したあと。今度こそ開いた扉から、マリナはリブを姫抱きにし颯爽とさらって行った。


 やけ食いと意気込み拵えた大量の料理が、瞬く間にダルマ(kz0251)の口へ消えていく。彼好みの肉料理を揃えたとはいえあまりの勢いに、木綿花(ka6927)は見ているだけで胃がもたれそう。
 彼を見かけ声をかけた次の瞬間、ふたりしてこの部屋にいた。到底現実ではないだろう。夢ならばこそ話せる事もあるかと前向きに捉え、料理と食事に誘い今に至る。
「どれも旨ェな!」
「お口に合って何より」
「こりゃァいい嫁さんになるぜェ」
 いつもの彼の軽口が胸を刺す。ちらっと彼を見た。少女と楽しげに踊っていた姿や、噂で聞いた亡き婚約者の陰が重なって、やけ食いに至った理由を改めて思い目を伏せた。

 龍騎士だった時より自由の利くハンターだが、ままならない事もあった。龍園や彼に何かあったらしいと聞いても、依頼を介さなければ助力も叶わない。
「……次があっても、このやるせなさをどこへ?」
「ん?」
 遠い地で悪戯に気を揉み、報告書で顛末を知る淋しさ、もどかしさ。こんな想い、彼は知らない。
 それでも。
「私、ダルマ様には幸せになって戴きたいのです。そのお手伝いができればと」
「俺ァ幸せよ? 別嬪女将の激ウマ手料理!」
「またそのような」
 呆れかけたが、
「本心さ」
 彼はふと真顔で呟く。短命種な上に龍騎士などしていると、彼岸へ見送った友は手足の指で足りないと。
「だからお前さんが元気な顔見せてくれると心底ホッとすンだ。またいつでも遊びにきてくれや」
 しんみりしかけた木綿花だったが、彼の髭がソースまみれなのに気付き、苦笑して手拭いを渡した。

 全ての皿が空になるまで、木綿花は彼に色々な話を聞いた。隊の近況や、彼が実は天パを気にしている事だとか。胸の内を語らい料理を分け合えば『摂取』と『折半』、扉は会話を妨げぬよう静かに開いた。


 クラン・クィールス(ka6605)の喉が鳴る。氷雨 柊(ka6302)の瞳がプレートの不埒な文言を辿っている。
「『せっ●●』? せっ、で続く言葉を考えるのかしらー?」
(せっ……というのは……。いや、流石にそんな事は無い……だろう。いやそうでなくては困るというか)
 大事に想いを育んでいるふたりに、大人の階段何段飛ばしで駆け上がれと言うのか。他の出口や隠し通路がない事は確認済だ。
(柊、気付くか? というか知っているのか? そういう事……、)
 と、突然柊がぼふっと頬を赤らめた。もじもじと上目遣いに見上げてくる。
「思いつきはしましたがー……えぇ、これはちょっと恥ずかしいようなー……でも他に思いつきませんし、……誰もいませんし。……いませんよねぇ?」
(気付いた、だと?)
 その上、
「あの、」
 いじらしく服を引っ張ってくる。その可憐さの破壊力たるや。
(その上やる気だと……!? 色々と想定外、だが……だが。そうなるのなら、男の俺が渋る訳にもいくまい!)
 覚悟を決め乞われるまま屈み込む。背伸びした柊は、触れるだけの可愛らしい口付けをくれた。ここから先は自分がと、彼が背に腕を回しかけた時。柊は上気した顔を扉へ向けた。
「答えはせ、接吻、でどうでしょうか……っ」
「は?」
 朗らかに鳴る解錠音。柊はぴょんこぴょんこ。
「にゃあっ、開きましたー!」
(接吻……、あっ)
 真実を知りクラン脱力。何も知らない柊は無邪気に手を伸べてくる。
「良かったぁ、思い付かなかったらどうしようかと思いましたー。あ、でも……開かなかったらずっと2人きり? それはそれでアリ、だったのかしら……」
「!」
 覚悟を解いた所へこの追い打ち。恐るべし天然kawaii砲。不思議そうに首を傾げる柊の手をしっかり握ると、クランは足早に部屋を後にした。


 ラティナ・スランザール(ka3839)には言いたい事が沢山あった。めっさあった。だが一番は、
「何で、一緒なのが嫁さんじゃなくて小舅なんですかね!?!?」
 部屋の精もびっくり☆ ご一緒様は妻の兄。修羅場の予感★
 案の定カフカ・ブラックウェル(ka0794)は口を歪める。
「こっちが聞きたいよ……君が仕掛けたんじゃないだろうね?」
「俺がこんな事するかっての。仮に俺がするなら一緒に閉じ込めるのは嫁さ、」
「妹が何だって?」
 カフカは冷たい微笑とともに笛を唇に当てた。
「待って、その構えやめて!? それより出る方法をだなっ」
「よし、『接戦』なんてどう?」
 言うが早いか、旋律に乗せ放たれる吹雪!
「しもやけになるだろ! っつか待て、それって合法的に俺をぶん殴れるからとかじゃ、」
「僕の術、全部ぶち込んであげるよ」
 即座に炎の矢を見舞う義兄さん! すかさず太刀で弾く婿殿! ともかく手合わせが始まった。怒れる義兄さん、その心境や如何に?
(優しい頼れる良い奴……なのは昔から知ってる。事実、妹は嫁いでから更に綺麗になった)
「……だからこそ、ムカつくんだよ!」
「はいぃ!?」
 ふたりは幼馴染、互いの手の内は知っている。交戦防戦平行線、試合は長丁場となった。

 終わりの見えない戦いの末、カフカが仕掛けた。一気に間合いを詰める。身構えたラティナだったが襟を掴まれ、こりゃ一発ぶん殴られるかと歯を食いしばった――次の瞬間、見舞われたのは濃厚キッス☆
 婿殿ぽかん。義兄さんにっこり。
「このやり方の方が、妹は悦ぶよ?」
「悦ぶ!? 喜ぶじゃなくて!?」
 混乱極める婿殿を煙に巻き、義兄は扉が開くやとっとと部屋を後にした。残された婿殿、虚空を仰ぎ叫ぶ。
「オチは接吻とかアリかぁ?!」


 紅界出れない部屋愛好家の皆様、ご堪能いただけてるぅ? 部屋の精はもう動悸がやばみ★
 さあ最後の1組! 最後はおひとり様、白衣のお兄さんだよ。白衣、それはエロス――ノン、インテリイケメンは正義だね☆

 天央 観智(ka0896)は一見不埒な文言が書かれたプレートにも動じず、淡々と現状把握に徹している。
「……ふむ」
 茶の瞳が扉と壁の接続部をなぞる。外の気配を探りつつ、コンソールらしき物がないか広く観察していく。同時に彼の思考に呼応して、様々な物が出現し始めた。工具に梯子、魔導機械に水槽いっぱいの水……ちょ、お兄さん何する気!?
 観察を終えた彼は道具達を見回す。
「これだけあれば、色々と試す事ができそうですね。――せっ●●。……接近・設定・説得・設計・説法・せっかち・斥候に、折檻・接待・接戦……個人的に試せそうなのは……、」
 せっ●●ってそんなにあるの!?
「どれから試しましょうか」
 呟く彼の表情はどこか愉しげにも見えて。
「先ずは、」
 言うなり彼は踏み出した。扉へ肉薄した彼は、悪戯っぽく首を傾げる。
「『接近』で、どうでしょうか」
 なっ、何ィー!? 扉に近づいただけで開くワケ……あっ開いた! 扉氏イィ!?
「あ。自動ドアに準じるもの、だったのでしょうか? 色々と試す手間が省けました」
 くすっと笑い、白衣を翻し悠々去っていく。

 何たる無様! 萌え製造部屋の精たる私が一方的に萌えさせられるなんて!
 でも白衣イケメンスマイル食らっちゃったもの……我が精生に一片の悔い無しッ!

「?」
 振り返った観智は、今出てきた部屋が消え行くのを見た。何故なのか彼にはわからなかったが、彼の機転と白衣とが、部屋の悪夢に終止符を打ったのだった。

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参加者一覧

  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 光森の絆
    ラティナ・スランザール(ka3839
    ドワーフ|19才|男性|闘狩人
  • 一握の未来へ
    氷雨 柊(ka6302
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 虹彩の奏者
    木綿花(ka6927
    ドラグーン|21才|女性|機導師
  • 青き翼
    マリナ アルフェウス(ka6934
    オートマトン|17才|女性|猟撃士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/04/02 17:53:31