ゲスト
(ka0000)
【王戦】黒蜥蜴の弟子達
マスター:馬車猪
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2019/04/19 15:00
- 完成日
- 2019/04/24 19:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
空飛ぶ竜を討つ。
ロッソ以前なら不可能を意味した言葉だ。
だが今は違う。
大精霊が出向けば、空中を歩けるようにされたハンターが囲んで叩いて討ち取れる。
ロッソが出れば圧倒的な射程と威力で焼き殺せる。
戦闘機を数機投入するだけでも空から叩き落とすことが可能だ。
既に竜は空の王者ではない。
「雲の上の話だな」
ワイバーンが雲を突き抜けた。
出迎えたのは果ての見えない青だ。
防寒装備があっても耐えがたい冷気に襲われながら、決死隊の1人がにやりと笑った。
「戦闘機1機飛ばすだけでも俺の生涯年収何回分もかかるんだ。援軍に来てくれるわけないよな」
軽口を叩きながら油断無く警戒する。
強烈な風にゴーグルを押され、きつく固定した鞍から引きはがされそうだ。
「いやがったぜ」
地平線近くを豆粒大の黒が飛んでいる。
遠すぎて気配は感じられない。だが多くの志願者の中からワイバーン乗りとして選ばれた彼の視力は優れている。
「ガルドブルムを発見した。このまま追跡に移る」
怒鳴るように魔導短伝話へ報告する。
2度に1度は繋がらないので念を入れて3回だ。僚騎も同じことをしているはずなので計6回だ。
槍の穂先じみた視線が黒い点から伸びてくる。
相棒ごと斜めに切り捨てられた錯覚を覚え、心臓が動くことを止めた。
「ふんっ」
無理矢理な心臓マッサージ。
肋骨が折れる感触があるが気にしている余裕など皆無だ。
「分かっているさ」
彼では勝てない。
一撃を浴びせることが出来ないのは当然。体力の消耗を強いることもできない。
「だがな、人間は群れで戦うんだぜ」
進路を変えて逃げる。
僚騎とは会話も交わしていないのに同じタイミングだ。
全力で逃げてもいずれ追いつかれるが、追いつかれるまでに騎士団詰め所や大規模聖堂の近くまでは行ける。
言うまでもなく危険は特大。
高速で飛び続けるだけでも危険であるし、ハンターほどの伸び代のない彼には黒竜が見逃す理由が全く存在しない。
「付いてこいよ。心配するな、俺の他にも物好きは大勢いるからよ」
ワイバーンが身じろぎした。
微かとはいえ速度が落ちる。それを承知の上で相棒に伝えねばならぬことがあった。
「援軍?」
地上からワイバーンが上がってくる。
平均的な体格の相棒よりも小柄な、薄汚れて治療も満足にされていない個体が6つ。
気付いた。血の気が引く。
「歪虚っ」
緊張と恐怖に耐えるため、最低限の警戒もできていなかった。
手綱から手を離す。
無骨な弓に2矢をつがえたときには、高度の面で劣勢に立たされていた。
「後2キロ」
久々に僚騎の声が聞こえた。
声が落ち着いているのを羨ましく思う。
「了解、敵ワイバーンを突破する」
矢を放つ。
歪虚ワイバーンが左右に分かれ高度を速度に変換する。
決死隊に選ばれなかった連中よりも、巧い。
「1体撃破」
2本当たるのは運が良く、脇腹と腰の鱗を貫通したのは当然の結果だった。
ハンターに及ばなくても訓練は欠かさず装備も強化している。
「っ」
瀕死の歪虚の目が死んでいない。
顎が外れそうなほど大きく口を開き、竜並の火力のブレスを解き放つ。
「盾」
相棒が訓練通りに動いてくれた。
他の5体の牽制で回避に失敗はしたが、小さくても分厚い盾でブレスを受け流す。
落ち行く1体は止めを刺すまでもなく消える。
彼はすれ違いざまに新たな2矢を叩き込んで、今度は頭部に1本を貫通させ見事仕留めてみせる。
僚騎の攻撃も凄まじい。
小さなワンドを鋭く振るい、ブレスに比べれば至近にしか届かない、しかし凶悪な威力を持つ火球を炸裂させる。
歪虚ワイバーンが2体砕ける。
残りの2体も翼を痛めて自由落下状態に陥った。
「まずっ」
僚騎を庇おうとするが間に合わない。
歪虚が鋭く体を捻り、尻尾の先端を通常ワイバーンの翼に絡める。
破れる音は呆気ないほど軽かった。
僚騎の人もワイバーンも呆然としたまま、死への一方通行の旅を強いられる。
「畜生っ」
彼は見捨てた。
同じ釜の飯を食った仲間を諦めた。
高度を速度に変え、相棒の翼を痛める鋭角な進路で味方の基地を目指す。
「威力の高いだけのブレスに当たるかよぉっ」
頭上20メートルを地獄の炎が貫いた。
ひたすらに速く鋭いそれは、地面に斜めに突き刺さり畑を煮立たせ岩盤まで達する。
いくつもの城館を主ごと焼いた、災厄の十三魔の炎であった。
「飛ばせ」
相棒が全力を振り絞る。
高速を維持したまま向きを変えるたびに、骨が軋んで筋が痛む。
2回目のブレスは来ない。
黒竜は高度を保ったまま、はるか遠くなのに見て分かる速さでこちらへ向かって来る。
それからの数分ことは記憶に残っていない。
我に返ったときの位置と時間から、相棒共々限界を超えた速度を出していたことが分かった。
「謝罪する。ハンターの他に強者がいるのを忘れていた」
太陽が陰る。
斜め上に、ワイバーンより少し大きいだけのドラゴンがいる。
数百年に渡り傍若無人で知られた歪虚とは思えない落ち着きがある。
嬲る気配はなく油断もない。
真摯な態度で殺しに来ていた。
「ならその場で死ねぇ!」
相棒がブレスを撃つ。
反撃にブレスに供えて自分の盾を構える。
そろそろ味方の射程内だ。ここで引きつければ手傷を負わすことくらいはできる。そう考えた。
「俺に仕掛ける前にハンターに相談すべきだったな」
黒竜が、滑らかに横へずれていく。
ギリースーツ装備の弓兵や狙撃銃持ちや魔導テクニカルの機関銃の弾が、歪虚を追い切れずに虚しく空を切る。
渾身の不意打ちが空振り人類の士気が下がる。
それ以上に、黒竜が屈辱を感じて瞳を曇らせる。
「これが俺の評価か」
彼を仕留めに来た人類は勇敢ではある。
だが弱い。戦い方も拙い。王国が本気になったらこの数倍の質と量で押し寄せたはずだ。
「一度だけ見せてやる。次はせめて国軍を連れて来い」
黒竜に重なるように、炎吐く大蛇が9匹鎌首をもたげた。
●本作戦前に
「ガルドブルムを倒す方法ですか?」
問われたオフィス職員は、キーボードを叩いて中間報告書を呼び出す。
「目標近くへ直接転移してもらう予定です」
10人程度じゃ無理ではという反論に、現時点で50人転移可能と答える。
「最低でも100人送り込むための準備を整える予定です。……その前に」
半死半生の貴族私兵と聖堂戦士を尻目に飛び去る黒竜を映し出す。
歪虚に墜ちたワイバーンが、絶望的な交戦を行う戦士を蹴り転がして肉を食いちぎっている。
「本作戦の成功率を少しでも大きくするため、金魚の糞を可能な限り減らしてください」
全員食われる前に騎士隊が助けに来たが、生存者は5割を切っていた。
ロッソ以前なら不可能を意味した言葉だ。
だが今は違う。
大精霊が出向けば、空中を歩けるようにされたハンターが囲んで叩いて討ち取れる。
ロッソが出れば圧倒的な射程と威力で焼き殺せる。
戦闘機を数機投入するだけでも空から叩き落とすことが可能だ。
既に竜は空の王者ではない。
「雲の上の話だな」
ワイバーンが雲を突き抜けた。
出迎えたのは果ての見えない青だ。
防寒装備があっても耐えがたい冷気に襲われながら、決死隊の1人がにやりと笑った。
「戦闘機1機飛ばすだけでも俺の生涯年収何回分もかかるんだ。援軍に来てくれるわけないよな」
軽口を叩きながら油断無く警戒する。
強烈な風にゴーグルを押され、きつく固定した鞍から引きはがされそうだ。
「いやがったぜ」
地平線近くを豆粒大の黒が飛んでいる。
遠すぎて気配は感じられない。だが多くの志願者の中からワイバーン乗りとして選ばれた彼の視力は優れている。
「ガルドブルムを発見した。このまま追跡に移る」
怒鳴るように魔導短伝話へ報告する。
2度に1度は繋がらないので念を入れて3回だ。僚騎も同じことをしているはずなので計6回だ。
槍の穂先じみた視線が黒い点から伸びてくる。
相棒ごと斜めに切り捨てられた錯覚を覚え、心臓が動くことを止めた。
「ふんっ」
無理矢理な心臓マッサージ。
肋骨が折れる感触があるが気にしている余裕など皆無だ。
「分かっているさ」
彼では勝てない。
一撃を浴びせることが出来ないのは当然。体力の消耗を強いることもできない。
「だがな、人間は群れで戦うんだぜ」
進路を変えて逃げる。
僚騎とは会話も交わしていないのに同じタイミングだ。
全力で逃げてもいずれ追いつかれるが、追いつかれるまでに騎士団詰め所や大規模聖堂の近くまでは行ける。
言うまでもなく危険は特大。
高速で飛び続けるだけでも危険であるし、ハンターほどの伸び代のない彼には黒竜が見逃す理由が全く存在しない。
「付いてこいよ。心配するな、俺の他にも物好きは大勢いるからよ」
ワイバーンが身じろぎした。
微かとはいえ速度が落ちる。それを承知の上で相棒に伝えねばならぬことがあった。
「援軍?」
地上からワイバーンが上がってくる。
平均的な体格の相棒よりも小柄な、薄汚れて治療も満足にされていない個体が6つ。
気付いた。血の気が引く。
「歪虚っ」
緊張と恐怖に耐えるため、最低限の警戒もできていなかった。
手綱から手を離す。
無骨な弓に2矢をつがえたときには、高度の面で劣勢に立たされていた。
「後2キロ」
久々に僚騎の声が聞こえた。
声が落ち着いているのを羨ましく思う。
「了解、敵ワイバーンを突破する」
矢を放つ。
歪虚ワイバーンが左右に分かれ高度を速度に変換する。
決死隊に選ばれなかった連中よりも、巧い。
「1体撃破」
2本当たるのは運が良く、脇腹と腰の鱗を貫通したのは当然の結果だった。
ハンターに及ばなくても訓練は欠かさず装備も強化している。
「っ」
瀕死の歪虚の目が死んでいない。
顎が外れそうなほど大きく口を開き、竜並の火力のブレスを解き放つ。
「盾」
相棒が訓練通りに動いてくれた。
他の5体の牽制で回避に失敗はしたが、小さくても分厚い盾でブレスを受け流す。
落ち行く1体は止めを刺すまでもなく消える。
彼はすれ違いざまに新たな2矢を叩き込んで、今度は頭部に1本を貫通させ見事仕留めてみせる。
僚騎の攻撃も凄まじい。
小さなワンドを鋭く振るい、ブレスに比べれば至近にしか届かない、しかし凶悪な威力を持つ火球を炸裂させる。
歪虚ワイバーンが2体砕ける。
残りの2体も翼を痛めて自由落下状態に陥った。
「まずっ」
僚騎を庇おうとするが間に合わない。
歪虚が鋭く体を捻り、尻尾の先端を通常ワイバーンの翼に絡める。
破れる音は呆気ないほど軽かった。
僚騎の人もワイバーンも呆然としたまま、死への一方通行の旅を強いられる。
「畜生っ」
彼は見捨てた。
同じ釜の飯を食った仲間を諦めた。
高度を速度に変え、相棒の翼を痛める鋭角な進路で味方の基地を目指す。
「威力の高いだけのブレスに当たるかよぉっ」
頭上20メートルを地獄の炎が貫いた。
ひたすらに速く鋭いそれは、地面に斜めに突き刺さり畑を煮立たせ岩盤まで達する。
いくつもの城館を主ごと焼いた、災厄の十三魔の炎であった。
「飛ばせ」
相棒が全力を振り絞る。
高速を維持したまま向きを変えるたびに、骨が軋んで筋が痛む。
2回目のブレスは来ない。
黒竜は高度を保ったまま、はるか遠くなのに見て分かる速さでこちらへ向かって来る。
それからの数分ことは記憶に残っていない。
我に返ったときの位置と時間から、相棒共々限界を超えた速度を出していたことが分かった。
「謝罪する。ハンターの他に強者がいるのを忘れていた」
太陽が陰る。
斜め上に、ワイバーンより少し大きいだけのドラゴンがいる。
数百年に渡り傍若無人で知られた歪虚とは思えない落ち着きがある。
嬲る気配はなく油断もない。
真摯な態度で殺しに来ていた。
「ならその場で死ねぇ!」
相棒がブレスを撃つ。
反撃にブレスに供えて自分の盾を構える。
そろそろ味方の射程内だ。ここで引きつければ手傷を負わすことくらいはできる。そう考えた。
「俺に仕掛ける前にハンターに相談すべきだったな」
黒竜が、滑らかに横へずれていく。
ギリースーツ装備の弓兵や狙撃銃持ちや魔導テクニカルの機関銃の弾が、歪虚を追い切れずに虚しく空を切る。
渾身の不意打ちが空振り人類の士気が下がる。
それ以上に、黒竜が屈辱を感じて瞳を曇らせる。
「これが俺の評価か」
彼を仕留めに来た人類は勇敢ではある。
だが弱い。戦い方も拙い。王国が本気になったらこの数倍の質と量で押し寄せたはずだ。
「一度だけ見せてやる。次はせめて国軍を連れて来い」
黒竜に重なるように、炎吐く大蛇が9匹鎌首をもたげた。
●本作戦前に
「ガルドブルムを倒す方法ですか?」
問われたオフィス職員は、キーボードを叩いて中間報告書を呼び出す。
「目標近くへ直接転移してもらう予定です」
10人程度じゃ無理ではという反論に、現時点で50人転移可能と答える。
「最低でも100人送り込むための準備を整える予定です。……その前に」
半死半生の貴族私兵と聖堂戦士を尻目に飛び去る黒竜を映し出す。
歪虚に墜ちたワイバーンが、絶望的な交戦を行う戦士を蹴り転がして肉を食いちぎっている。
「本作戦の成功率を少しでも大きくするため、金魚の糞を可能な限り減らしてください」
全員食われる前に騎士隊が助けに来たが、生存者は5割を切っていた。
リプレイ本文
「転移成功しました」
強烈な気配が10消えると転移装置の間が広く感じられる。
「先輩」
一仕事終え安堵した新人職員が小声で問いかけた。
「過剰戦力ではないでしょうか」
転移したのは守護者を含むハンター10人に強力なユニットが10だ。
20体のワイバーンなら1人と1ユニットで十分と思えた。
「逆よ」
お疲れパルムに愛想良くお菓子を配りながら、先輩職員が淡々と答える。
「上級歪虚の目を盗んで空中戦で片付けるのよ? ハンターの安全を考えると2倍は欲しかった」
そんな余裕は、人類のどこにも存在しない。
●
「では諸君。健闘を祈る」
白銀の騎士が色気のある敬礼を送り、そのまま真っ直ぐ地上へ落ちていった。
地上から10~60メートルの場所へ放り出されたのだから仕方がない。
なお、久我・御言(ka4137)は丁度60メートルであり、普通なら墜落死コースであった。
「オフィスの余裕が無い様だね」
時代錯誤なマントか風を孕んで機体の向きを不規則に変えている。
五感では無く機体のセンサから風と小精霊を感じ取り、重力を蹴飛ばす様に福音の風を発動させた。
「助けはいるか」
いち早く着地したルベーノ・バルバライン(ka6752)が地表から合図を送っている。
「気持ちだけ受け取っておくよ」
飛行適正の高いスペクルムタイプなのに御言機は高度を上げない。
脚部に負担をかけない滑らかな着地を行い、そのまま速度を落とさず南南東へと走る。
「接触まで何分かかるかね」
完全な整備をされたセンサが、青空の隅にある黒い染みを捉えている。
歪虚がいない環境ならもう少しはっきり映っていたかもしれないが、今は凝視しても時折見失うほど小さい。
「気にする必要はなかろう」
傲慢そのものの口調でルベーノが答える。
「あれほど尖った気を発しているのだ。奴が逃げる様命じても最期までやるだろうよ」
「そんなものかね」
傲慢さでは御言も負けてはいない。
表面が穏やかな分たちが悪いとすらいえる。
「そうとも。遅れるなよ」
わずかではあるがルベーノ機の方が早い。
空飛ぶ歪虚ワイバーンに近づくほど、2人の機体の距離が少しずつ離れていく。
「気付いたか」
鱗の形まで分かる様になった6体が、周囲を警戒する隊形を止めた。
恐ろしく素早く隊形を組み直して高度を上げる。
高度の差を最大限に活かす構えだ。
「良い覚悟だ」
刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」から冷気じみた殺意が放たれる。
空の歪虚からは、危険を理解した上で高速戦闘に挑む気合いを感じる。
おそらく歪虚ワイバーンとしては最上に近い能力の持ち主達だ。
ルベーノは豪快に笑いながら全身にマテリアルを巡らせる。
全高約8メートルの巨体が地面から浮上。見えない足場があるかのように安定し、急降下中のワイバーンから撃ち出される収束ブレスを掠らせもしない。
「強化ワイバーン6体をねじ伏せるなら、いくら前のめりになっても足りんことはない、そういうことだ」
機体内の中小精霊が五月蠅く警報を発するのを宥める。
ルベーノの生命力を機体にまわして能力を引き上げようとしているのだ。
長く続ければ生命力に溢れたルベーノでも再起不能になりかねないので精霊側の心配も当然だ。
「行くぞ精霊」
ブレスの間合いが外された。
白の騎士の移動力も敏捷性が目に見えて上昇。
ブレスが狙いを外され緑濃い草地を無意味に焼く。
波動掌「バグローヴィ」が強烈な負荷に喘いだ。凶悪な魔法紋でルクシュヴァリエの全長を越える刃を引き出され、さらに注がれる力により刃が砕けてマテリアルを取り込み新たな兵器として確立する。
「ルクシュヴァリエは決戦兵器。その片鱗をここで見せてやろうではないか」
マントが翻り緋色の鉤爪が大気を切り裂く。
特殊鋼製の装甲板並みに硬く粘っこい鱗の守りが、予め切れ目が入れられていたかのように綺麗に裂かれて止まらない。
筋肉と希望の層が4体分外気に晒され、2秒後れて血と負マテリアルが後ろに向かって噴き出した。
「2体もこれを躱すか。やるではないか」
3体が立て直しに失敗して地面で砕ける。
1体は着地には成功するが翼を動かすこともできず、しかし戦意を増した瞳でブレスを速射する。
「無駄とはいわぬ」
氷上を滑るが如く宙を滑る。
激しくはためくマントが人類の存在と戦意を高らかに謡う。
「だが温い」
人機一体を使う必要もない。
軽くジャンプして最期のブレスを跳び越え、打ち下ろした爪で止めを刺した。
生き残りのワイバーンが距離をとる。
逃げではない。
人型の巨体が長時間飛ぶのは不可能と直感的に判断し、空中での持久戦に持ち込み戦況を有利にするつもりだ。
「ふむ。門前の小僧という奴かね」
御言の呟きを聞き取った訳ではないが、微かな正マテリアルの気配に気付いて回避を優先した飛び方に切り替える。
それでも完全には間に合わず、紫の光が手前のワイバーンの右翼を貫く。
火縄銃似たマテリアル砲が狙いを微修正して次の攻撃に備えた。
「主の背中から悪い癖も学んでしまったようだね」
ガルドブルムなら逃げて機会を伺う。
逃げ足も武力のうちと考え、逃げ隠れすら堂々としてこちらを追い詰めにかかるだろう。
だが、目の前のワイバーンはただ戦意があるだけだ。
「少々動きが良くても、それではね」
ワイバーンが加速する。
小型火器2門装備の御言機が接近戦に弱いと判断し、至近距離から刺し違え覚悟の収束ブレスを放つつもりだ。
「きたまえ」
歪虚は威力も速度も一回り成長していた。
左右からの連携も絶妙な時間差も素晴らしく、負マテリアルを大量消費と引き替えにしたブレスは実体じみた固さと強烈な熱を持つ。
御言の意識が宿った機体が体が淡く光る。
機体の隅々まで行き渡ったマテリアルの余剰が背後に薔薇の幻影を見せ、本来の体当然に動く腕部がポレモスSGSを盾として振るう。
左のブレスが足下4メートルを通過。
直撃コースの右ブレスが盾に防がれ威力を半分も発揮できないまま霧散した。
歪虚がルベーノを無視してもルベーノは無視しない。
死角から迫って容赦の無い斬撃を叩き込む。
ワイバーンらしい機敏さで回避はしたが後が続かない。
速度を上げようにもここまで近づかれると翼の動きが邪魔され速度維持が精一杯だ。
「リソースの配分にしくじったか」
歪虚に対する言葉であると同時に、自身に対する言葉でもある。
ルクシュヴァリエはルベーノから見ても歪虚から見ても予想以上に強い。
「時間制限を考えると妥当な戦い方だと思うよ?」
御言機が弾幕を張る。
反撃はことごとく躱しているとはいえ、範囲攻撃でも連続攻撃でもないため命中率は5割を切っている。
不利なサイコロの目が出続けても勝てはする。
しかし、飛行用にスキルを半分以上消費してしまいそうだ。
ワイバーンの胴に着弾。
これまでと同じように体勢を立て直そうとして、力が入らずそのまま頭から落下。衝撃に耐えきれずに頭蓋込みでぐしゃりと潰れた。
地上から十数メートルで飛行能力が停止したのにスキルを継続せず、ルベーノ機が失速して落ちていく。
スキルが残っているのに何故とは聞かない。
温存する必要があるので機体への微量ダメージと引き替えに着地した。
「6体程度に殺られるイメージは正直浮かばんかったがな。どうする久我」
「時間をかけて良いなら残り全てを仕留める自身はあるがね」
東の負の気配に背を向ける。
数十キロ離れているのにはっきり分かる剥き出しの気配だ。
「残りのスキルでは足りんな。よし、万一追って来たときに供えて合流するぞ」
引き際も、精鋭ハンターらしい鮮やかさだった。
●
「終幕前とばかりにやる気だしてくれちゃってさぁ……こっちはまだシェイクダウンだっての!」
整備担当者が聞いたらえっと驚くような言葉を口にしながら、ルクシュヴァリエ・ElphEnoch(エルフェノク)を駆けさせるウーナ(ka1439)。
非覚醒者から見れば性能を10割引き出しているように見えても、高度な知覚力と超人的な体力、何よりCAMや刻騎ゴーレム用に誂えたかのようなセンスを持つ彼女から見ると慣らし運転が始まったばかりだ。
なお、飛行特化機ではあっても飛行用スキルに限りがあるので移動手段は足だ。
一足早くルクシュヴァリエ・ルッ君が地上から飛び立つ。
後ろに流れるマントは激しくはためいてもルッ君の手足を邪魔しない。
まるで精霊に祝福されている様だ。
それに気付いているが乗り手のゾファル・G・初火(ka4407)は気にしない。
敵は歪虚ワイバーン6体。
足を止めての戦いであれば、ウーナかゾファルのどちらか1人でも倒せる相手だ。
だが敵は飛んでいる。長期戦に持ち込まれたら、ハンターを殺る気の黒竜まで乱入してくるだろう。
「首筋にびりびりくるじゃーん」
ワイバーンはこの場の戦力だけでやる気だ。
雑魔のような彼我の実力を読めぬ獣ではなく、磨いた心技体で敵の命を狙う戦士達がゾファル達の命を狙っている。
「トゥースッ」
加速する。
ワイバーンはこれ以上速度は上がらないが避けようともせず爪で突っ込む構えだ。
距離が瞬く間に0へ。
攻撃に成功してもルッ君ごと落ちるだろうワイバーンが、ただのワイバーンとは思えぬ速度で爪を振り抜いた。
感触が酷く軽い。
飛び散ったのは血でも装甲片でもなく、引き千切れたマントの端だ。
負マテリアル纏う爪にも、刺繍がわずかに残った青い布が残っていた。
「おとなしく俺様ちゃんたちに狩られちマイナー」
歪虚の首の真後ろに焼け付く様な正の気配が。
本能に従い訓練通りに前のめりに。
首筋を削られながらパイルバンカーをぎりぎりで躱す。
「やるぅ!」
歪虚ワイバーンの後ろに回り込んだルッ君に対し、残りの5体のうち4体が背後から狙う。
生き物とは思えぬ急旋回に恐怖を抱いていても動きは鈍らない。
鈍っていないのはルッ君も同じだ。
鋭角の軌道を繰り返して最初のワイバーンの頭上をとり、再装填の間に合わぬパイルバンカーではなく斬艦刀を突き込む。
ぎりぎり知覚はできても反応など不可能で、頭蓋を脳と魂ごと叩き割られてワイバーンが1つ霧散した。
「ゾファル、引き際間違うんじゃないわよ!」
「えー、今日はガルドちゃんも狩っちゃうじゃーん」
「本格的な後だっての!」
剣も盾も持たないエルフェノクが飛翔する。
防御が弱いと判断したワイバーンが収束ブレスを速射。
その悉くが装甲に触れすらしないことに気付いて焦りだす。
「ただのワイバーンには見えないけど」
ポレモスSGSを銃形態に戻す。
撃てば当たる状態でも引き金を引かず、プラズマライフルの射程にもなった瞬間にダブルファイアを発動。
異なる銃器の2連撃により、驚くほど身の軽いワイバーンが深い穴を穿たれ失速した。
中小精霊が残弾と残マテリアルをカウントする。
消耗はほとんどなく射撃戦闘なら長時間戦えそうだ。
「そんにゃー」
肩を落としながら高速飛行歪虚を追うという、極めて器用なことをするゾファルとルッ君。
最初は距離が縮まっていたが、ワイバーンが逃げに徹することにした後は距離がほとんど変わらない。
時間が経過し中小精霊が機体内部で騒ぎ出す。
機体内の飛行用マテリアルはとうに底をつき、マテリアルを肩代わりにしていたゾファルも残量が残りわずか。
逃げてもいいんじゃないかなー、という気弱な意思を、ゾファルは獰猛な笑みを浮かべて一蹴した。
「勘がいいのも善し悪しじゃーん」
ワイバーンが安堵している。
空対地上ならルッ君に対抗出来るとでも考えているのだろう。
微かに動きが乱れ、隙ともいえぬ微かな速度低下が発生した。
斬艦刀「天翼」を魔法紋に包み込まれ、紋が砕けて倍ほどに巨大化する。
ルッ君がゾファルそのもののマテリアルを放ち、天翼を己の一部として構えて振り抜く。
「やべっ。小型武器だと威力が足りないかにゃぁ」
格闘武器の威力が上乗せされた光は、ゾファルの予想よりも威力が弱い。
しかしワイバーンを落とすには十分だ。翼のみならず胴までえぐり取られ、歪虚ワイバーンが空中で絶命した。
●
「お、見つけられちゃったかなー?」
今回唯一のCAM乗りであるリチェルカ・ディーオ(ka1760)に、転移から1分もたたずに冷や汗が浮かんだ。
見られている。
空は正と負のマテリアルが入り乱れ遠くまで見通せないはずなのに、何度も浴びた経験のある視線をオファニム越しに感じる。
「どうするリチェルカ」
「うん、ガルドさん特殊能力とかないから今から全力でこっちに来ても間に合わないよ」
「分かった。計画通りだな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)の声がいきなり聞こえなくなる。
通信の限界まで100メートルほどあったので、おそらく負マテリアルによる通信障害だ。
「おねがいー」
一応声に出しつつタオルで顔を拭く。
HMDを外して拭く余裕は当然皆無だ。
ワイバーンにしてはかなり高速と言える個体2つが、こちらに気付いて高度を上げていた。
「うわー、絶対あれガルドさんが仕込んでるよ」
格としては雑魔よりほんの少し上であり、足を止めての勝負であれば弓と5本の矢だけで仕留める自信がある。
だが時間制限があり戦場が広大なら面倒な敵だ。
正面から仕掛けても、直接砲火を浴びせる前に逃げられてしまうはずだ。
「えーっと、確か鎚と鉄床戦術だったっけ」
フライトシステムを起動する。
走行時も早かったがあらゆる障害物を無視できる飛行は別格で、回り込みながらワイバーン2体との距離を縮めていく。
素の移動力はワイバーンとそう変わらないのだが、全力移動に向いた機体とプログラムにより実質の速度は一回り違う。
「攻撃はレイオスさん便りだねー」
銃声は聞こえずブレスの光も見えない。
けれどもう、精神と削りあうような戦いが始まっていた。
「責任重大だな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)がつぶやき、グリフォン・セルが気配だけで同意する。
進行方向の歪虚は弱い。
取り柄は少しの速さと経験だけだ。
だが今はその2つが脅威だ。歪虚はこの場の2体だけではないのだから。
「ワイバーン狩り――いや、ハイエナ狩りといこうか」
意図してふてぶてしい笑みを浮かべる。
普段も本質も善人ではあるが、戦いに役立つ演技なら当然のようにできる。
「戦わずに逃げるか」
騎士に相応しい自信に満ちた、準貴族ともいえる騎士の地位らしい傲慢な目線で語りかける。
「強欲王が居なけりゃガルドブルムの取り巻きでもこんなもんかよ」
目が、声が、気配が、全てが黒竜とその一頭を軽視している。
ワイバーン2体の動きが微かに乱れた。
殺意が瞳に表れ、全身に必要分より少しだけ過多な力がかかっていた。
「頼むぜ」
レイオスは口の中だけでつぶやきリチェルカの動きを待った。
「失敗できないからねー」
まず、状態異常強度の弱いレイターコールドショットを選択肢から外した。
己のマテリアルで機体を満たす。
飛行適性のない機体なので低下している命中と回避をさらに下げ、代わりに命中精度を爆発的に底上げしてワイバーンに連射を浴びせる。
歪虚はオファニムを過小評価していた。
予想外の精度の銃弾を躱しきれずに胴に浴び、見る間に高度を落としその割には速度が出ない。
「セル、防御を考えるな。手前の歪虚に近づくことだけを考えろ」
グリフォンはレイオスを信頼している。
犬死にを強いられることなどあり得ない。
己の力を限界まで引き出した上で勝利を掴むと確信している。
レイオスがガウスジェイルを準備。
ワイバーンはそれを予測していたかのように距離をとる。
「見えた」
闘旋剣デイブレイカーを鞘から引き抜く。
限界まで鍛え抜かれた刃は凶器であると同時に霊的な存在で、レイオスのマテリアルに等しい山吹色の光を放つ。
「ここは王国の空。歪虚は問答無用で撃墜あるのみだ!」
ワイバーンの努力も思いも肌で感じる。
それを正面から踏み越えて、極限まで練り上げたマテリアルを刃を通して伸ばしていく。
光が竜翼の端を貫く。
皮膜が大きく揺れるが平衡までは崩れず、歯を食いしばったワイバーンが主の元へ飛ぼうとする。
レイオスが手首を捻りセルが体を傾ける。
薄れゆく青龍翔咬波が改めてワイバーンを捉え、今度は肩から反対腰まで貫き途中にある心臓を消滅させた。
「ふー完了、って訳にはいかないね」
小さな炎が墜落途中のワイバーンを焼く。
自らの小ブレスで傷口を焼き固め、地面激突寸前に体勢を立て直してリチェルカから逃走を試みる。
「育てばガルドさん2代目になるかもしれないけど」
戦い方が異様なほど似ている。
格と体型も血のつながりを感じない。
様々な動きの癖と勝利への執念は、弟子というよりコピーに近い。
「いかせないよー?」
スキルを惜しまず砲火を浴びせる。
死角からの攻撃で回避成功率が5割を切っているのに2連続で躱してリチェルカ機の攻撃圏から抜けた。
つまり、待ち構えていたレイオスとセルの元へ追い込まれた。
決死のブレスがレイオスへ向かう。
命を燃やした炎は、届きさえすれば守護者に傷をつけることもできた。
が、澄み渡る夏空のような紺碧が炎に破壊の役割を持たせない。
完全に詰んだ。それでもワイバーンは0に等しい成功を掴むため速度を上げてレイオスを通過しようとする。
「部下でこれか」
レイオスは一瞬だけ渋い表情を浮かべ、油断無く首をはねて止めを刺した。
●
戦いのはずなのに命のとりあいに見えない。
飛び抜けて速いワイバーン3体による、誇りをかけた競争であった。
速度で勝っているのは精悍な雄の個体だ。
鮮やかな青の鱗は傷はあっても丁寧に手入れされていて、主との良好な関係がそれだけで分かる。
対するのは雄雌2体の歪虚ワイバーン。
追われながらも交互に牽制を行い、どちらも追わねばならないワイバーンから逃れ続けている。
3体とも余裕はない。
風向きの読み取りを一瞬でも失敗すれば即失速から墜落する高速を出し続け、体力だけで無く精神力も疲弊している。
最初に風を捉え損なったのは雌の歪虚だった。
雄歪虚が仕掛けるふりをするがワイバーンは引っかからず、数秒後の速度低下を引き起こす進路で攻撃を仕掛ける。
「思うように」
ユウ(ka6891)の言葉に背を押され、鍛え上げたマテリアルで加速し分厚くも鋭い刃で追い越し様に斬りつける。
鱗が火花も散らさず切断され、濃い体液と負マテリアルが宙に飛び散った。
歪虚は、反撃しない。
知性と野生を両立した動きで2体が離れ、近づき、ワイバーン・クウが攻撃に費やした速度と高度の分距離を離す。
「手強い」
ユウが漏らした言葉に気配だけでうなずき、クウは油断も焦りもなく全力を出して黒竜の部下を追う。
「ふふーん」
暴れ回る歪虚ワイバーンと歪虚CAMにより無人と化した村に、ほとんど逃げ散ったはずの小精霊が集合していた。
壊れた屋根を己に立てかけただけの急造の偽装なのに、大気に溶け込んだ小精霊により異様な程目立たない。
「残り、10、9……」
もっとも精霊の助けがなくても歪虚には気付かれなかったはずだ。
己の生死だけでなく少なくとも1地方の命運をかけた追いかけっこは、勢子のクウだけでなく追われる歪虚を激しく消耗させている。この状態では余程派手に動かない限り見つからない。
「5、4……」
それでもチャンスは一度だけだ。
ここで逃せば、高速だけの歪虚ワイバーンが高位竜と護衛2匹に化ける。
「2!」
ひゃっはー! としか表現しようのない気配が爆発する。
8メートルの巨体が重力から解き放たれ、元村長屋敷の残骸を吹き飛ばして宙へ舞い上がる。
「そろそろここで会ったが100年目ですぅ。ワックスたっぷりのお肉なんて全廃棄してやりますよぅ!」
太陽の位置、大気の偏り、渦巻く正負のマテリアル。
捉えるには五感では足りない情報を片手間で処理しながら、星野 ハナ(ka5852)そのものと化したルクシュヴァリエ・ルクちゃんがユニット用カードを引き抜き推力の方向を制御する。
歪虚ワイバーンの反応が遅れた。
傷ついた雌を先に行かして雄がクウとルクちゃんに対する盾となる。
男女の情愛も含まれているかもしれいないがメインではない。
主のため、情報を送り届ける事を最優先にしている。
ルクシュヴァリエの頭部センサーが淡くも禍々しい光を放つ。
元龍種のワイバーンよりもはるかに不吉で、そして美しかった。
「爪、牙、皮、命」
符が内圧に耐えられずにマテリアルと化し飛散する。
先行する雌だけでなく、雄の鼻先を巻き込み雷の嵐が吹き荒れる。
「全部使ってやるから置いてけですぅ!」
妖艶な美女の背景で、全身で威嚇する無数の中小精霊が見えた気がした。
雄はパーツごとの原型も止めず焼き尽くされ、消えゆく灰が風に乗る。
まるで連れ合いを援護するかのように広がり、しかしリアルブルーの美女も龍園の主従も躊躇いなどしない。
「クウ!」
意思疎通は声が発せられる前に完了している。
全長2メートルに達する幅広の刀身が2度振るわれ、灰に混じっていた尖った骨を押し潰す。
空色のワイバーンの筋肉が怒張する。
消耗した体力をかき集めて加速を行い、決死の覚悟で飛ぶ歪虚の斜め後ろに到達する。
若きドラグーンは練度の高さに寒気を覚え、微かな敬意すら抱く。
反射的あるいは恨みに任せて反撃するのが当然なのだ。
これがこのまま強くなればどれほどの脅威になるか考えると、余力を使い果たしてでもこの場で仕留めるしかないという結論になる。
クウが歯を食いしばる。
向かい風を処理する翼に痛みが走る。
再度の接近で刃を繰り出し、しかし風を上手に捉えた歪虚によって躱された。
「ナイスアシストですよぅ」
マントがルクちゃんを包み込むように広がり、銃声と閃光が連続してマントの端が千切れる。
ハンターの思惑通りに誘導された歪虚ワイバーンが、連続する銃弾に巻き込まれ胸や腹を被弾しその度に血を吐いた。
目を見開く。
もう人格を維持出来ないほどマテリアルが減っている。
残っているのはつがいと共に飛んだ、北の空の幻影だけだ。
「次があるなら……」
ユウは一瞬だけ龍園の祈りを捧げ、目を閉じず、真っ直ぐに相手を見て、魔剣で刺し貫き介錯する。
歪虚変化してから長い時間がたっているため爪の先すら残らない。
ただ、元はつがいだったマテリアルの残滓が重なり、微かな暖かさを残してこの世から消えたのだった。
ルクちゃんが揺れる。
風の影響ではない。
黒竜の視線が物理的な影響を持ち、内部の中小精霊を怯えさせている。
「一昨日来やがれですよぅ」
台詞は蓮っ葉でも仕草は優雅なものだ。
ハナは全速で西へ飛び、黒い影が見えなくなった瞬間これまでで最大のマテリアルを機体に叩き込む。
一瞬で展開された法術結界が、遙か彼方から飛来した小ブレスを無力化。毒々しい炎の華が咲き装甲を照らす。
「今のは」
動揺するクウを宥める。
邪神翼級の因果を狂わせる超常の技ではなく、ブレスを磨き上げただけの通常攻撃であった。
「単体攻撃。虚仮威しの挑発ですねぇ」
一瞥をくれてから、ハンナはドラグーン主従を促し安全地帯へ帰還した。
●
良く整備された農道を、長身の男女が歩いている。
どちらも垢抜けているので逢瀬にも見える。
「うんまあ意図は分かった。もうワイバーンは食うなとは言わない。だが場所を考えろ」
歪虚ワイバーン対ハンターの戦いはとっくの昔に始まっている。
メンカル(ka5338)と黒の夢(ka0187)がどうしてのんびりしているのかというと……。
「あっ、雲の影からダーリンの尻尾が」
黒の夢がはしゃぎ、十字傷のあるワイバーンが困ったように尻尾を振り、メンカルが自分の額に寄った皺を伸ばす。
ごま粒ほどにしか見えない距離なのに、鍛え抜かれた覚醒者の感覚が濃密な殺意を感じ取る。
これまでも殺意はあったが質が違った。
「お前はよく俺に生きろと言うが」
この場で出すべき話題ではないのかもしれない。
それでも、今を逃せば話す機会自体がなくなる恐れがあると直感して敢えて言う。
「それならまずお前が生き延びる努力をしろ。でなければ欠片も説得力がないな?」
ポロウを含んだ4つの足音が、悲しいほど平和に聞こえる。
「まぁ、よく考えればお前が先に死んだ後の世界にさしたる興味もないことに気付いたんでな」
黒の夢は微笑んだまま応えない。
上空を粗雑な警戒をする歪虚ワイバーンを見上げて目を細め、ため息を吐くかのように言葉を口にする。
「“いい考え”ね、とっても。人間らしい」
悪意の響きはない。
距離は近くても性質が違い過ぎ、どう言えば通じるのか考えている。
「星が祈る誰かの願いばかりを叶えてきたとして、星自身が闇に呑まれて潰されたいと願うのは罪なのだろうか」
メンカルは反論しかけるが何も言えない。
説得なら何時間でも続けられるが、今手元にある言葉では通じないことが分かってしまった。
ポロウか羽ばたき風を送る。
ワイバーンが翼を広げて力を込める。
いつの間にか、空の歪虚ワイバーンが近くにまで迫っていた。
「行くのな」
黒い女と龍が飛び出し、体格の良い歪虚4体へ真横から奇襲した。
「突撃! 汝が今日の我輩のごはん! 我輩今日は腹ペコの気分なのな」
朗らかに微笑んでいるのに、負に傾いたマテリアルが全身を影の如く染め上げ金の瞳だけが禍々しい光を放つ。
僅かに零れたマテリアルが、巨大な竜の涎のようも見えた。
歪虚達が巧みに進退する。
被害を無にはできなくても火球の爆発や直線上の雷にまとめて巻き込まれないための、実戦的で素早い動きだ。
艶やかな唇が闇に染まった息を吐く。
巻き込まれた歪虚ワイバーンは半分の2体のみ。
だがその2体が狂乱し手当たり次第にブレスを放った結果、健在な2体が行動を妨害され進むも退くもできなくなる。
「ん」
吐息に込めるマテリアルを変える。
漆黒のブレスが舞い狂う蝶に変わり、混乱し近づく過ぎた2体を空間ごと焼き焦がす。
片方が炭の塊と化し、しかしもう一方は右半身と右翼で頭部を庇って即死を免れた。
「今の動き、ダーリンの?」
この異様なしぶとさには見覚えがあった。
黒の夢の機嫌が益々よくなり、歪虚ワイバーン達は少しでも時間を稼ぐため3方に分かれる。
速度を落とさないままの複雑な軌道は非常に目立つ。数キロしか離れていないガルドブルムがいつ気付いてもおかしくない。
唐突に、地上すれすれを飛んでいたワイバーンが悲鳴をあげた。
ブレスを放とうとしても喉元の傷口から息が漏れるばかりで、再び飛び立つことも差し違えのブレスを放つこともできずに息絶える。
「まだ出るなよ。奴が本気を出すなら仕掛けてくるはずだ」
再度気配を消して地上を走るメンカル。
空渡が使えるとはいえ決して速くはない。
取り得る手段はナイトカーテンを使った奇襲であり、いつ奇襲されるか分からないという状況が歪虚ワイバーンに焦りをもたらす。
「やれ、惜しむな」
メンカルの指示にポロウが応える。
伏せたまま認識阻害結界を展開
最初の結界の効果が切れ再展開した半秒後にブレスの光弾が突き刺さる。
突き刺さったのは光だけだ。
邪神翼の対惑星攻撃すら防いだ結界は歪虚軍将程度の歪虚ではびくともしない。
威力を発揮できないまま解れて薄れて消えていく。
「時間がない。一撃を加えて離脱する」
マテリアルによる足場で跳躍。
マテリアル由来の毒を穂先に纏わせ全身を使って振り下ろす。
強烈な手応えがあった。
連なる鱗が砕け、分厚い筋肉が裂け、最後の砦である負マテリアルを刺し貫いて内臓複数を切り裂く。
歪虚ワイバーンの目には、何故という疑問が浮かんでいた。
「ハンター相手の戦闘経験がないようだな。貴様達が食らって兵士と違って、俺達は対歪虚の専門家だ」
息もできず鼓動すらできなくなったワイバーンが、急角度で地面に落下し砕け散った。
「残念なのな」
面での攻撃は最後の歪虚ワイバーンを焼き潰す。
目当ての男がこちらに向かってきているが、最寄りのハンターズソサエティー支部に駆け込む方が速い。
そして、駆け込むことができれば転移してきた3桁のハンターにより黒竜の敗北が決まる。
「竜が滅びれば魔女も滅びる──我輩は好きよ、そういうの」
囁く声なのに遠くまではっきりと聞こえる。
「強欲なら、人間から我輩を攫ってくれてもいいのにね」
ポロウで追いかけてくる男も、追撃を止め身を翻す男も、声に出しては反応しなかった。
強烈な気配が10消えると転移装置の間が広く感じられる。
「先輩」
一仕事終え安堵した新人職員が小声で問いかけた。
「過剰戦力ではないでしょうか」
転移したのは守護者を含むハンター10人に強力なユニットが10だ。
20体のワイバーンなら1人と1ユニットで十分と思えた。
「逆よ」
お疲れパルムに愛想良くお菓子を配りながら、先輩職員が淡々と答える。
「上級歪虚の目を盗んで空中戦で片付けるのよ? ハンターの安全を考えると2倍は欲しかった」
そんな余裕は、人類のどこにも存在しない。
●
「では諸君。健闘を祈る」
白銀の騎士が色気のある敬礼を送り、そのまま真っ直ぐ地上へ落ちていった。
地上から10~60メートルの場所へ放り出されたのだから仕方がない。
なお、久我・御言(ka4137)は丁度60メートルであり、普通なら墜落死コースであった。
「オフィスの余裕が無い様だね」
時代錯誤なマントか風を孕んで機体の向きを不規則に変えている。
五感では無く機体のセンサから風と小精霊を感じ取り、重力を蹴飛ばす様に福音の風を発動させた。
「助けはいるか」
いち早く着地したルベーノ・バルバライン(ka6752)が地表から合図を送っている。
「気持ちだけ受け取っておくよ」
飛行適正の高いスペクルムタイプなのに御言機は高度を上げない。
脚部に負担をかけない滑らかな着地を行い、そのまま速度を落とさず南南東へと走る。
「接触まで何分かかるかね」
完全な整備をされたセンサが、青空の隅にある黒い染みを捉えている。
歪虚がいない環境ならもう少しはっきり映っていたかもしれないが、今は凝視しても時折見失うほど小さい。
「気にする必要はなかろう」
傲慢そのものの口調でルベーノが答える。
「あれほど尖った気を発しているのだ。奴が逃げる様命じても最期までやるだろうよ」
「そんなものかね」
傲慢さでは御言も負けてはいない。
表面が穏やかな分たちが悪いとすらいえる。
「そうとも。遅れるなよ」
わずかではあるがルベーノ機の方が早い。
空飛ぶ歪虚ワイバーンに近づくほど、2人の機体の距離が少しずつ離れていく。
「気付いたか」
鱗の形まで分かる様になった6体が、周囲を警戒する隊形を止めた。
恐ろしく素早く隊形を組み直して高度を上げる。
高度の差を最大限に活かす構えだ。
「良い覚悟だ」
刻騎ゴーレム「ルクシュヴァリエ」から冷気じみた殺意が放たれる。
空の歪虚からは、危険を理解した上で高速戦闘に挑む気合いを感じる。
おそらく歪虚ワイバーンとしては最上に近い能力の持ち主達だ。
ルベーノは豪快に笑いながら全身にマテリアルを巡らせる。
全高約8メートルの巨体が地面から浮上。見えない足場があるかのように安定し、急降下中のワイバーンから撃ち出される収束ブレスを掠らせもしない。
「強化ワイバーン6体をねじ伏せるなら、いくら前のめりになっても足りんことはない、そういうことだ」
機体内の中小精霊が五月蠅く警報を発するのを宥める。
ルベーノの生命力を機体にまわして能力を引き上げようとしているのだ。
長く続ければ生命力に溢れたルベーノでも再起不能になりかねないので精霊側の心配も当然だ。
「行くぞ精霊」
ブレスの間合いが外された。
白の騎士の移動力も敏捷性が目に見えて上昇。
ブレスが狙いを外され緑濃い草地を無意味に焼く。
波動掌「バグローヴィ」が強烈な負荷に喘いだ。凶悪な魔法紋でルクシュヴァリエの全長を越える刃を引き出され、さらに注がれる力により刃が砕けてマテリアルを取り込み新たな兵器として確立する。
「ルクシュヴァリエは決戦兵器。その片鱗をここで見せてやろうではないか」
マントが翻り緋色の鉤爪が大気を切り裂く。
特殊鋼製の装甲板並みに硬く粘っこい鱗の守りが、予め切れ目が入れられていたかのように綺麗に裂かれて止まらない。
筋肉と希望の層が4体分外気に晒され、2秒後れて血と負マテリアルが後ろに向かって噴き出した。
「2体もこれを躱すか。やるではないか」
3体が立て直しに失敗して地面で砕ける。
1体は着地には成功するが翼を動かすこともできず、しかし戦意を増した瞳でブレスを速射する。
「無駄とはいわぬ」
氷上を滑るが如く宙を滑る。
激しくはためくマントが人類の存在と戦意を高らかに謡う。
「だが温い」
人機一体を使う必要もない。
軽くジャンプして最期のブレスを跳び越え、打ち下ろした爪で止めを刺した。
生き残りのワイバーンが距離をとる。
逃げではない。
人型の巨体が長時間飛ぶのは不可能と直感的に判断し、空中での持久戦に持ち込み戦況を有利にするつもりだ。
「ふむ。門前の小僧という奴かね」
御言の呟きを聞き取った訳ではないが、微かな正マテリアルの気配に気付いて回避を優先した飛び方に切り替える。
それでも完全には間に合わず、紫の光が手前のワイバーンの右翼を貫く。
火縄銃似たマテリアル砲が狙いを微修正して次の攻撃に備えた。
「主の背中から悪い癖も学んでしまったようだね」
ガルドブルムなら逃げて機会を伺う。
逃げ足も武力のうちと考え、逃げ隠れすら堂々としてこちらを追い詰めにかかるだろう。
だが、目の前のワイバーンはただ戦意があるだけだ。
「少々動きが良くても、それではね」
ワイバーンが加速する。
小型火器2門装備の御言機が接近戦に弱いと判断し、至近距離から刺し違え覚悟の収束ブレスを放つつもりだ。
「きたまえ」
歪虚は威力も速度も一回り成長していた。
左右からの連携も絶妙な時間差も素晴らしく、負マテリアルを大量消費と引き替えにしたブレスは実体じみた固さと強烈な熱を持つ。
御言の意識が宿った機体が体が淡く光る。
機体の隅々まで行き渡ったマテリアルの余剰が背後に薔薇の幻影を見せ、本来の体当然に動く腕部がポレモスSGSを盾として振るう。
左のブレスが足下4メートルを通過。
直撃コースの右ブレスが盾に防がれ威力を半分も発揮できないまま霧散した。
歪虚がルベーノを無視してもルベーノは無視しない。
死角から迫って容赦の無い斬撃を叩き込む。
ワイバーンらしい機敏さで回避はしたが後が続かない。
速度を上げようにもここまで近づかれると翼の動きが邪魔され速度維持が精一杯だ。
「リソースの配分にしくじったか」
歪虚に対する言葉であると同時に、自身に対する言葉でもある。
ルクシュヴァリエはルベーノから見ても歪虚から見ても予想以上に強い。
「時間制限を考えると妥当な戦い方だと思うよ?」
御言機が弾幕を張る。
反撃はことごとく躱しているとはいえ、範囲攻撃でも連続攻撃でもないため命中率は5割を切っている。
不利なサイコロの目が出続けても勝てはする。
しかし、飛行用にスキルを半分以上消費してしまいそうだ。
ワイバーンの胴に着弾。
これまでと同じように体勢を立て直そうとして、力が入らずそのまま頭から落下。衝撃に耐えきれずに頭蓋込みでぐしゃりと潰れた。
地上から十数メートルで飛行能力が停止したのにスキルを継続せず、ルベーノ機が失速して落ちていく。
スキルが残っているのに何故とは聞かない。
温存する必要があるので機体への微量ダメージと引き替えに着地した。
「6体程度に殺られるイメージは正直浮かばんかったがな。どうする久我」
「時間をかけて良いなら残り全てを仕留める自身はあるがね」
東の負の気配に背を向ける。
数十キロ離れているのにはっきり分かる剥き出しの気配だ。
「残りのスキルでは足りんな。よし、万一追って来たときに供えて合流するぞ」
引き際も、精鋭ハンターらしい鮮やかさだった。
●
「終幕前とばかりにやる気だしてくれちゃってさぁ……こっちはまだシェイクダウンだっての!」
整備担当者が聞いたらえっと驚くような言葉を口にしながら、ルクシュヴァリエ・ElphEnoch(エルフェノク)を駆けさせるウーナ(ka1439)。
非覚醒者から見れば性能を10割引き出しているように見えても、高度な知覚力と超人的な体力、何よりCAMや刻騎ゴーレム用に誂えたかのようなセンスを持つ彼女から見ると慣らし運転が始まったばかりだ。
なお、飛行特化機ではあっても飛行用スキルに限りがあるので移動手段は足だ。
一足早くルクシュヴァリエ・ルッ君が地上から飛び立つ。
後ろに流れるマントは激しくはためいてもルッ君の手足を邪魔しない。
まるで精霊に祝福されている様だ。
それに気付いているが乗り手のゾファル・G・初火(ka4407)は気にしない。
敵は歪虚ワイバーン6体。
足を止めての戦いであれば、ウーナかゾファルのどちらか1人でも倒せる相手だ。
だが敵は飛んでいる。長期戦に持ち込まれたら、ハンターを殺る気の黒竜まで乱入してくるだろう。
「首筋にびりびりくるじゃーん」
ワイバーンはこの場の戦力だけでやる気だ。
雑魔のような彼我の実力を読めぬ獣ではなく、磨いた心技体で敵の命を狙う戦士達がゾファル達の命を狙っている。
「トゥースッ」
加速する。
ワイバーンはこれ以上速度は上がらないが避けようともせず爪で突っ込む構えだ。
距離が瞬く間に0へ。
攻撃に成功してもルッ君ごと落ちるだろうワイバーンが、ただのワイバーンとは思えぬ速度で爪を振り抜いた。
感触が酷く軽い。
飛び散ったのは血でも装甲片でもなく、引き千切れたマントの端だ。
負マテリアル纏う爪にも、刺繍がわずかに残った青い布が残っていた。
「おとなしく俺様ちゃんたちに狩られちマイナー」
歪虚の首の真後ろに焼け付く様な正の気配が。
本能に従い訓練通りに前のめりに。
首筋を削られながらパイルバンカーをぎりぎりで躱す。
「やるぅ!」
歪虚ワイバーンの後ろに回り込んだルッ君に対し、残りの5体のうち4体が背後から狙う。
生き物とは思えぬ急旋回に恐怖を抱いていても動きは鈍らない。
鈍っていないのはルッ君も同じだ。
鋭角の軌道を繰り返して最初のワイバーンの頭上をとり、再装填の間に合わぬパイルバンカーではなく斬艦刀を突き込む。
ぎりぎり知覚はできても反応など不可能で、頭蓋を脳と魂ごと叩き割られてワイバーンが1つ霧散した。
「ゾファル、引き際間違うんじゃないわよ!」
「えー、今日はガルドちゃんも狩っちゃうじゃーん」
「本格的な後だっての!」
剣も盾も持たないエルフェノクが飛翔する。
防御が弱いと判断したワイバーンが収束ブレスを速射。
その悉くが装甲に触れすらしないことに気付いて焦りだす。
「ただのワイバーンには見えないけど」
ポレモスSGSを銃形態に戻す。
撃てば当たる状態でも引き金を引かず、プラズマライフルの射程にもなった瞬間にダブルファイアを発動。
異なる銃器の2連撃により、驚くほど身の軽いワイバーンが深い穴を穿たれ失速した。
中小精霊が残弾と残マテリアルをカウントする。
消耗はほとんどなく射撃戦闘なら長時間戦えそうだ。
「そんにゃー」
肩を落としながら高速飛行歪虚を追うという、極めて器用なことをするゾファルとルッ君。
最初は距離が縮まっていたが、ワイバーンが逃げに徹することにした後は距離がほとんど変わらない。
時間が経過し中小精霊が機体内部で騒ぎ出す。
機体内の飛行用マテリアルはとうに底をつき、マテリアルを肩代わりにしていたゾファルも残量が残りわずか。
逃げてもいいんじゃないかなー、という気弱な意思を、ゾファルは獰猛な笑みを浮かべて一蹴した。
「勘がいいのも善し悪しじゃーん」
ワイバーンが安堵している。
空対地上ならルッ君に対抗出来るとでも考えているのだろう。
微かに動きが乱れ、隙ともいえぬ微かな速度低下が発生した。
斬艦刀「天翼」を魔法紋に包み込まれ、紋が砕けて倍ほどに巨大化する。
ルッ君がゾファルそのもののマテリアルを放ち、天翼を己の一部として構えて振り抜く。
「やべっ。小型武器だと威力が足りないかにゃぁ」
格闘武器の威力が上乗せされた光は、ゾファルの予想よりも威力が弱い。
しかしワイバーンを落とすには十分だ。翼のみならず胴までえぐり取られ、歪虚ワイバーンが空中で絶命した。
●
「お、見つけられちゃったかなー?」
今回唯一のCAM乗りであるリチェルカ・ディーオ(ka1760)に、転移から1分もたたずに冷や汗が浮かんだ。
見られている。
空は正と負のマテリアルが入り乱れ遠くまで見通せないはずなのに、何度も浴びた経験のある視線をオファニム越しに感じる。
「どうするリチェルカ」
「うん、ガルドさん特殊能力とかないから今から全力でこっちに来ても間に合わないよ」
「分かった。計画通りだな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)の声がいきなり聞こえなくなる。
通信の限界まで100メートルほどあったので、おそらく負マテリアルによる通信障害だ。
「おねがいー」
一応声に出しつつタオルで顔を拭く。
HMDを外して拭く余裕は当然皆無だ。
ワイバーンにしてはかなり高速と言える個体2つが、こちらに気付いて高度を上げていた。
「うわー、絶対あれガルドさんが仕込んでるよ」
格としては雑魔よりほんの少し上であり、足を止めての勝負であれば弓と5本の矢だけで仕留める自信がある。
だが時間制限があり戦場が広大なら面倒な敵だ。
正面から仕掛けても、直接砲火を浴びせる前に逃げられてしまうはずだ。
「えーっと、確か鎚と鉄床戦術だったっけ」
フライトシステムを起動する。
走行時も早かったがあらゆる障害物を無視できる飛行は別格で、回り込みながらワイバーン2体との距離を縮めていく。
素の移動力はワイバーンとそう変わらないのだが、全力移動に向いた機体とプログラムにより実質の速度は一回り違う。
「攻撃はレイオスさん便りだねー」
銃声は聞こえずブレスの光も見えない。
けれどもう、精神と削りあうような戦いが始まっていた。
「責任重大だな」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)がつぶやき、グリフォン・セルが気配だけで同意する。
進行方向の歪虚は弱い。
取り柄は少しの速さと経験だけだ。
だが今はその2つが脅威だ。歪虚はこの場の2体だけではないのだから。
「ワイバーン狩り――いや、ハイエナ狩りといこうか」
意図してふてぶてしい笑みを浮かべる。
普段も本質も善人ではあるが、戦いに役立つ演技なら当然のようにできる。
「戦わずに逃げるか」
騎士に相応しい自信に満ちた、準貴族ともいえる騎士の地位らしい傲慢な目線で語りかける。
「強欲王が居なけりゃガルドブルムの取り巻きでもこんなもんかよ」
目が、声が、気配が、全てが黒竜とその一頭を軽視している。
ワイバーン2体の動きが微かに乱れた。
殺意が瞳に表れ、全身に必要分より少しだけ過多な力がかかっていた。
「頼むぜ」
レイオスは口の中だけでつぶやきリチェルカの動きを待った。
「失敗できないからねー」
まず、状態異常強度の弱いレイターコールドショットを選択肢から外した。
己のマテリアルで機体を満たす。
飛行適性のない機体なので低下している命中と回避をさらに下げ、代わりに命中精度を爆発的に底上げしてワイバーンに連射を浴びせる。
歪虚はオファニムを過小評価していた。
予想外の精度の銃弾を躱しきれずに胴に浴び、見る間に高度を落としその割には速度が出ない。
「セル、防御を考えるな。手前の歪虚に近づくことだけを考えろ」
グリフォンはレイオスを信頼している。
犬死にを強いられることなどあり得ない。
己の力を限界まで引き出した上で勝利を掴むと確信している。
レイオスがガウスジェイルを準備。
ワイバーンはそれを予測していたかのように距離をとる。
「見えた」
闘旋剣デイブレイカーを鞘から引き抜く。
限界まで鍛え抜かれた刃は凶器であると同時に霊的な存在で、レイオスのマテリアルに等しい山吹色の光を放つ。
「ここは王国の空。歪虚は問答無用で撃墜あるのみだ!」
ワイバーンの努力も思いも肌で感じる。
それを正面から踏み越えて、極限まで練り上げたマテリアルを刃を通して伸ばしていく。
光が竜翼の端を貫く。
皮膜が大きく揺れるが平衡までは崩れず、歯を食いしばったワイバーンが主の元へ飛ぼうとする。
レイオスが手首を捻りセルが体を傾ける。
薄れゆく青龍翔咬波が改めてワイバーンを捉え、今度は肩から反対腰まで貫き途中にある心臓を消滅させた。
「ふー完了、って訳にはいかないね」
小さな炎が墜落途中のワイバーンを焼く。
自らの小ブレスで傷口を焼き固め、地面激突寸前に体勢を立て直してリチェルカから逃走を試みる。
「育てばガルドさん2代目になるかもしれないけど」
戦い方が異様なほど似ている。
格と体型も血のつながりを感じない。
様々な動きの癖と勝利への執念は、弟子というよりコピーに近い。
「いかせないよー?」
スキルを惜しまず砲火を浴びせる。
死角からの攻撃で回避成功率が5割を切っているのに2連続で躱してリチェルカ機の攻撃圏から抜けた。
つまり、待ち構えていたレイオスとセルの元へ追い込まれた。
決死のブレスがレイオスへ向かう。
命を燃やした炎は、届きさえすれば守護者に傷をつけることもできた。
が、澄み渡る夏空のような紺碧が炎に破壊の役割を持たせない。
完全に詰んだ。それでもワイバーンは0に等しい成功を掴むため速度を上げてレイオスを通過しようとする。
「部下でこれか」
レイオスは一瞬だけ渋い表情を浮かべ、油断無く首をはねて止めを刺した。
●
戦いのはずなのに命のとりあいに見えない。
飛び抜けて速いワイバーン3体による、誇りをかけた競争であった。
速度で勝っているのは精悍な雄の個体だ。
鮮やかな青の鱗は傷はあっても丁寧に手入れされていて、主との良好な関係がそれだけで分かる。
対するのは雄雌2体の歪虚ワイバーン。
追われながらも交互に牽制を行い、どちらも追わねばならないワイバーンから逃れ続けている。
3体とも余裕はない。
風向きの読み取りを一瞬でも失敗すれば即失速から墜落する高速を出し続け、体力だけで無く精神力も疲弊している。
最初に風を捉え損なったのは雌の歪虚だった。
雄歪虚が仕掛けるふりをするがワイバーンは引っかからず、数秒後の速度低下を引き起こす進路で攻撃を仕掛ける。
「思うように」
ユウ(ka6891)の言葉に背を押され、鍛え上げたマテリアルで加速し分厚くも鋭い刃で追い越し様に斬りつける。
鱗が火花も散らさず切断され、濃い体液と負マテリアルが宙に飛び散った。
歪虚は、反撃しない。
知性と野生を両立した動きで2体が離れ、近づき、ワイバーン・クウが攻撃に費やした速度と高度の分距離を離す。
「手強い」
ユウが漏らした言葉に気配だけでうなずき、クウは油断も焦りもなく全力を出して黒竜の部下を追う。
「ふふーん」
暴れ回る歪虚ワイバーンと歪虚CAMにより無人と化した村に、ほとんど逃げ散ったはずの小精霊が集合していた。
壊れた屋根を己に立てかけただけの急造の偽装なのに、大気に溶け込んだ小精霊により異様な程目立たない。
「残り、10、9……」
もっとも精霊の助けがなくても歪虚には気付かれなかったはずだ。
己の生死だけでなく少なくとも1地方の命運をかけた追いかけっこは、勢子のクウだけでなく追われる歪虚を激しく消耗させている。この状態では余程派手に動かない限り見つからない。
「5、4……」
それでもチャンスは一度だけだ。
ここで逃せば、高速だけの歪虚ワイバーンが高位竜と護衛2匹に化ける。
「2!」
ひゃっはー! としか表現しようのない気配が爆発する。
8メートルの巨体が重力から解き放たれ、元村長屋敷の残骸を吹き飛ばして宙へ舞い上がる。
「そろそろここで会ったが100年目ですぅ。ワックスたっぷりのお肉なんて全廃棄してやりますよぅ!」
太陽の位置、大気の偏り、渦巻く正負のマテリアル。
捉えるには五感では足りない情報を片手間で処理しながら、星野 ハナ(ka5852)そのものと化したルクシュヴァリエ・ルクちゃんがユニット用カードを引き抜き推力の方向を制御する。
歪虚ワイバーンの反応が遅れた。
傷ついた雌を先に行かして雄がクウとルクちゃんに対する盾となる。
男女の情愛も含まれているかもしれいないがメインではない。
主のため、情報を送り届ける事を最優先にしている。
ルクシュヴァリエの頭部センサーが淡くも禍々しい光を放つ。
元龍種のワイバーンよりもはるかに不吉で、そして美しかった。
「爪、牙、皮、命」
符が内圧に耐えられずにマテリアルと化し飛散する。
先行する雌だけでなく、雄の鼻先を巻き込み雷の嵐が吹き荒れる。
「全部使ってやるから置いてけですぅ!」
妖艶な美女の背景で、全身で威嚇する無数の中小精霊が見えた気がした。
雄はパーツごとの原型も止めず焼き尽くされ、消えゆく灰が風に乗る。
まるで連れ合いを援護するかのように広がり、しかしリアルブルーの美女も龍園の主従も躊躇いなどしない。
「クウ!」
意思疎通は声が発せられる前に完了している。
全長2メートルに達する幅広の刀身が2度振るわれ、灰に混じっていた尖った骨を押し潰す。
空色のワイバーンの筋肉が怒張する。
消耗した体力をかき集めて加速を行い、決死の覚悟で飛ぶ歪虚の斜め後ろに到達する。
若きドラグーンは練度の高さに寒気を覚え、微かな敬意すら抱く。
反射的あるいは恨みに任せて反撃するのが当然なのだ。
これがこのまま強くなればどれほどの脅威になるか考えると、余力を使い果たしてでもこの場で仕留めるしかないという結論になる。
クウが歯を食いしばる。
向かい風を処理する翼に痛みが走る。
再度の接近で刃を繰り出し、しかし風を上手に捉えた歪虚によって躱された。
「ナイスアシストですよぅ」
マントがルクちゃんを包み込むように広がり、銃声と閃光が連続してマントの端が千切れる。
ハンターの思惑通りに誘導された歪虚ワイバーンが、連続する銃弾に巻き込まれ胸や腹を被弾しその度に血を吐いた。
目を見開く。
もう人格を維持出来ないほどマテリアルが減っている。
残っているのはつがいと共に飛んだ、北の空の幻影だけだ。
「次があるなら……」
ユウは一瞬だけ龍園の祈りを捧げ、目を閉じず、真っ直ぐに相手を見て、魔剣で刺し貫き介錯する。
歪虚変化してから長い時間がたっているため爪の先すら残らない。
ただ、元はつがいだったマテリアルの残滓が重なり、微かな暖かさを残してこの世から消えたのだった。
ルクちゃんが揺れる。
風の影響ではない。
黒竜の視線が物理的な影響を持ち、内部の中小精霊を怯えさせている。
「一昨日来やがれですよぅ」
台詞は蓮っ葉でも仕草は優雅なものだ。
ハナは全速で西へ飛び、黒い影が見えなくなった瞬間これまでで最大のマテリアルを機体に叩き込む。
一瞬で展開された法術結界が、遙か彼方から飛来した小ブレスを無力化。毒々しい炎の華が咲き装甲を照らす。
「今のは」
動揺するクウを宥める。
邪神翼級の因果を狂わせる超常の技ではなく、ブレスを磨き上げただけの通常攻撃であった。
「単体攻撃。虚仮威しの挑発ですねぇ」
一瞥をくれてから、ハンナはドラグーン主従を促し安全地帯へ帰還した。
●
良く整備された農道を、長身の男女が歩いている。
どちらも垢抜けているので逢瀬にも見える。
「うんまあ意図は分かった。もうワイバーンは食うなとは言わない。だが場所を考えろ」
歪虚ワイバーン対ハンターの戦いはとっくの昔に始まっている。
メンカル(ka5338)と黒の夢(ka0187)がどうしてのんびりしているのかというと……。
「あっ、雲の影からダーリンの尻尾が」
黒の夢がはしゃぎ、十字傷のあるワイバーンが困ったように尻尾を振り、メンカルが自分の額に寄った皺を伸ばす。
ごま粒ほどにしか見えない距離なのに、鍛え抜かれた覚醒者の感覚が濃密な殺意を感じ取る。
これまでも殺意はあったが質が違った。
「お前はよく俺に生きろと言うが」
この場で出すべき話題ではないのかもしれない。
それでも、今を逃せば話す機会自体がなくなる恐れがあると直感して敢えて言う。
「それならまずお前が生き延びる努力をしろ。でなければ欠片も説得力がないな?」
ポロウを含んだ4つの足音が、悲しいほど平和に聞こえる。
「まぁ、よく考えればお前が先に死んだ後の世界にさしたる興味もないことに気付いたんでな」
黒の夢は微笑んだまま応えない。
上空を粗雑な警戒をする歪虚ワイバーンを見上げて目を細め、ため息を吐くかのように言葉を口にする。
「“いい考え”ね、とっても。人間らしい」
悪意の響きはない。
距離は近くても性質が違い過ぎ、どう言えば通じるのか考えている。
「星が祈る誰かの願いばかりを叶えてきたとして、星自身が闇に呑まれて潰されたいと願うのは罪なのだろうか」
メンカルは反論しかけるが何も言えない。
説得なら何時間でも続けられるが、今手元にある言葉では通じないことが分かってしまった。
ポロウか羽ばたき風を送る。
ワイバーンが翼を広げて力を込める。
いつの間にか、空の歪虚ワイバーンが近くにまで迫っていた。
「行くのな」
黒い女と龍が飛び出し、体格の良い歪虚4体へ真横から奇襲した。
「突撃! 汝が今日の我輩のごはん! 我輩今日は腹ペコの気分なのな」
朗らかに微笑んでいるのに、負に傾いたマテリアルが全身を影の如く染め上げ金の瞳だけが禍々しい光を放つ。
僅かに零れたマテリアルが、巨大な竜の涎のようも見えた。
歪虚達が巧みに進退する。
被害を無にはできなくても火球の爆発や直線上の雷にまとめて巻き込まれないための、実戦的で素早い動きだ。
艶やかな唇が闇に染まった息を吐く。
巻き込まれた歪虚ワイバーンは半分の2体のみ。
だがその2体が狂乱し手当たり次第にブレスを放った結果、健在な2体が行動を妨害され進むも退くもできなくなる。
「ん」
吐息に込めるマテリアルを変える。
漆黒のブレスが舞い狂う蝶に変わり、混乱し近づく過ぎた2体を空間ごと焼き焦がす。
片方が炭の塊と化し、しかしもう一方は右半身と右翼で頭部を庇って即死を免れた。
「今の動き、ダーリンの?」
この異様なしぶとさには見覚えがあった。
黒の夢の機嫌が益々よくなり、歪虚ワイバーン達は少しでも時間を稼ぐため3方に分かれる。
速度を落とさないままの複雑な軌道は非常に目立つ。数キロしか離れていないガルドブルムがいつ気付いてもおかしくない。
唐突に、地上すれすれを飛んでいたワイバーンが悲鳴をあげた。
ブレスを放とうとしても喉元の傷口から息が漏れるばかりで、再び飛び立つことも差し違えのブレスを放つこともできずに息絶える。
「まだ出るなよ。奴が本気を出すなら仕掛けてくるはずだ」
再度気配を消して地上を走るメンカル。
空渡が使えるとはいえ決して速くはない。
取り得る手段はナイトカーテンを使った奇襲であり、いつ奇襲されるか分からないという状況が歪虚ワイバーンに焦りをもたらす。
「やれ、惜しむな」
メンカルの指示にポロウが応える。
伏せたまま認識阻害結界を展開
最初の結界の効果が切れ再展開した半秒後にブレスの光弾が突き刺さる。
突き刺さったのは光だけだ。
邪神翼の対惑星攻撃すら防いだ結界は歪虚軍将程度の歪虚ではびくともしない。
威力を発揮できないまま解れて薄れて消えていく。
「時間がない。一撃を加えて離脱する」
マテリアルによる足場で跳躍。
マテリアル由来の毒を穂先に纏わせ全身を使って振り下ろす。
強烈な手応えがあった。
連なる鱗が砕け、分厚い筋肉が裂け、最後の砦である負マテリアルを刺し貫いて内臓複数を切り裂く。
歪虚ワイバーンの目には、何故という疑問が浮かんでいた。
「ハンター相手の戦闘経験がないようだな。貴様達が食らって兵士と違って、俺達は対歪虚の専門家だ」
息もできず鼓動すらできなくなったワイバーンが、急角度で地面に落下し砕け散った。
「残念なのな」
面での攻撃は最後の歪虚ワイバーンを焼き潰す。
目当ての男がこちらに向かってきているが、最寄りのハンターズソサエティー支部に駆け込む方が速い。
そして、駆け込むことができれば転移してきた3桁のハンターにより黒竜の敗北が決まる。
「竜が滅びれば魔女も滅びる──我輩は好きよ、そういうの」
囁く声なのに遠くまではっきりと聞こえる。
「強欲なら、人間から我輩を攫ってくれてもいいのにね」
ポロウで追いかけてくる男も、追撃を止め身を翻す男も、声に出しては反応しなかった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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【質問卓】 黒の夢(ka0187) エルフ|26才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/04/12 20:45:30 |
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【相談卓】堕竜を蹴散らせ 黒の夢(ka0187) エルフ|26才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/04/19 07:59:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/13 21:52:50 |