ポイズン・ポッド

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
3日
締切
2019/04/16 07:30
完成日
2019/04/22 02:01

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●洞窟の壺
 同盟のとある場所にある洞窟には以前から「行った者は帰って来ない」と言われている。何かがあるとは言われていたが、行けば帰ってこられない……十中八九死ぬので誰も調査に行けない。行かなきゃ良いだけの話だと思って長らく放置されていた。

 だって、その災禍も洞窟から出てこないのだから、放って置いたって構わないだろう?

 そう言うことで、周辺住民は皆一切近寄らなかったのだが、ある時自称トレジャーハンターの中年男がお宝を求めてその洞窟に入った。住民たちは当然制止したのだが、トレジャーハンターがそれくらいで止まるわけもない。自分の命をチップにした賭けに興じる人種だったのである。

 そう言う、死神とテーブルを挟みたがるギャンブラーの直感が生きたのだろうか。その男は死なずに帰って来た。その時だけは。
 呼吸不全でも起こしただろうか。喘鳴の合間に彼は発見者にこう言った。

「く、苦しい……壺……壺が、煙……助けて……」

 うわごとのようにそう言ったそうだ。命は取り留めたが、今も予断は許さない状態だ。医者の見立てでは、何らかの毒だろうとのことだ。今までその洞窟に入った者が誰も帰って来なかったところを見ると、かなり強力なものなのだろう。

 あの洞窟にあるものは……何らかの形で毒を放つものに違いない。壺と言っていた。毒を放つ壺がある。そしてそれは歪虚的な何かであることは想像が付いた。

●ハンターオフィスにて
「トレジャーハンターの嗅覚って凄いんですねぇ。専門家のカンとかってほんと侮れないなって思います。データとか経験あってのカンだとは思いますけど」
 平坂みことはそう言って首を横に振った。
「一般人なら一発アウトみたいな毒なのは間違いないです。ハンターでも、油断すると危ないかもしれませんねぇ。対策はして損はないと思います。お気を付けて」

リプレイ本文

●ギャンブル
「洞窟内部状況を確認したいです……内部の狭さ広さ、滑り易いかどうか……バイクがまともに使えると楽なのですが……」
 ルカ(ka0962)の希望により、一行は洞窟近くの村に立ち寄った。しかし、
「いや、行った奴は帰ってこねぇし、誰も近づかないから内部構造まではわからないんだよ」
 村人は困った様にそう言った。そこにトリプルJ(ka6653)が、
「生き証人ならいるだろ。逃げてきたトレジャーハンターって言うのは、どんな様子なんだ?」
「どうって、一応手当はしたが毒が抜けなくて予断を許さない状態だって聞いてる」
「でしたら、なおさら会わせてください」
 ルカが申し出る。
「治します」

 医者に事情を話すと、一も二もなく了承された。ヒーラーの手配は間に合っていなかったようである。ルカはすぐに、病室で息も絶え絶えの男にゴッドブレスによる祝福をもたらした。雑音の混じる喘鳴が、少し穏やかになる。
「こればかりの賭けは貴方達の負けでしたか……命あっての物種、というのが希望と見えるかそれとも」
 ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)が、ベッドサイドのスツールに腰掛けながら告げる。
「はは……賭けにゃ負けたが、全財産、は免れたよ……命は……残ったね……ありがとうな」
 そう言ってルカを見る。どうやら、毒が抜けて大分楽になったようだ。
「代わりに勝って、向こうの全財産を根こそぎ取り上げてきます、と言うのも違うかとは思いますが、その毒の壺を討伐します。洞窟の中の様子など、教えてもらえませんか?」
 ツィスカが尋ねる。
「ああ……そこの鞄にノートが入ってる。そこに……書いてあるから持って行ってくれ」
「バイクは使えそうですか?」
 ルカが尋ねた。
「いいや、バイクは勧めないな。割とデコボコしているから、引っかけてこけると危ないよ。暗いしな。あんたみたいなお嬢ちゃんが、膝に擦り傷作るもんじゃねぇ……」
 練度の高い聖導士なのだが、お嬢ちゃん呼ばわりされたルカは少々困った表情になる。
「毒の壺は、洞窟のどのあたりにあったものなのでしょうか?」
「一番奥だな……猿みたいなのもいっぱいいて……ようやく着いたと思ったら、ぱかっと蓋が開いてな……あとは毒の煙で死ぬかと思ったよ……危ないと思ってすぐに逃げてもこのザマさ……みんなあそこで死んだんだな……」
「有用な情報をありがとうございます。良い報告をお待ち下さい」
 ノートを持ったツィスカが礼を告げて、一行は病室を辞した。

●帰らずの洞窟
「暗いね……」
 時音 ざくろ(ka1250)が洞窟を覗き込みながら言った。
「行った人が帰ってこない洞窟とか言われると、何があるか潜ってみたくなるよね、冒険家としてはトレジャーハンターさんの気持ちもよくわかる……」
 うんうんと彼は頷いた。
「でも、何よりそんな危険な雑魔が居ると知っては放ってなんておけないよ!」
「うん、その通りだ。それにしても、壺の雑魔とは、なかなか珍しいね。無機物の歪虚といえば人形が多い印象があるから中々興味深い。いやそんなこと言ってる場合じゃないと思うけど」
 鞍馬 真(ka5819)が首を傾げると、
「でもぉ、確かにこういう無機物が雑魔になるのか不思議なんですよねぇ。ヤドカリみたいに壺の中にインプみたいな何かでも棲み付いてるんでしょぉかぁ。それとも単純に付喪神的な嫉妬雑魔なんでしょぉかぁ」
 星野 ハナ(ka5852)も同じような疑問を持っていたらしい。
「どうなんだろう……」
「何はともあれ、これ以上の被害の拡大を防ぐために叩くのが先決。参りましょう」
 ツィスカが言う。ルカは入り口にライトを付けたバイクを置き、手前の光源を確保。灯火の水晶球や、ランタンを持参したハンターたちは各々周囲を照らしながら前進した。
「……やかましいな」
 トリプルJが眉を上げた。話に聞く猿だろう。
「数が多そうだね。道を塞がれるかもしれない」
 その時だった。灯りに照らされて、ぎらりと闇の中で目玉が光る。
「!?」
 ハンターたちは身構えた。猿の姿をした雑魔が、数えて、十。
「割と数が多いな」
「壺はあの奥ですかねぇ。私の所からじゃ見えないんですけどぉ、鞍馬さん見えますぅ?」
「ちょっと広くなってるね。でも私の所からも見えないなぁ……」
 暗い上に猿が邪魔だった。
「では……」
 ルカがヴァイザースタッフを掲げた。その杖から、白龍の息吹が噴き出した。三匹の猿が巻き込まれる。それを皮切りに、集団が警戒体勢に入った。それでもまだ射線の確保は難しい。
「邪魔をするというのなら……燃え尽きろ、拡散ヒートレイ!」
 味方が飛び出すより先にと、ざくろが拡散ヒートレイを放つ。熱線が扇状に広がって、猿を一部焼き払った。猿は叫び声を上げながら散っていく。ルカが巻き込んだ三匹の内、二匹が熱線に灼かれて塵になる。
「見えた!」
 真が踏み込んだ。なおも猿は邪魔になったが、攻撃に備えたスキルとしての踏込は、例え相手が固まっていようとも突破する脚力になる。彼は、そのまま三つの壺が鎮座している空間に飛び込んだ。
(気休めだけど……無いよりはマシかな……)
 金と銀の刺繍が施された白いストールを巻いての参戦だ。毒霧が広がっても、吸い込まなければどうにかならないだろうかと思っての持参である。
 そのまま、縦横無尽に切り回る。叩き割る、までは行かなかったが、かなり痛いダメージにはなっただろう。手応えを感じた。
「俺の真横は避けてくれよ!」
 トリプルJが魔法で幻影の腕を作り出す。
「了解!」
 ざくろが慌てて距離を取る。古代大剣・ウェンペ。霊闘士の全身にみなぎるマテリアル。ハンターとして……と言うか本能的に危険を感じるのも当然と言える。
「真横って言うかぁ、それってトリプルJさんの後ろもアウトですよねぇ!?」
 ハナも、剣撃の届かない範囲に跳び退った。ファントムハンドは壺をがっちり捕まえると、奥のスペースから引きずり出す。
「集中させてくれ!」
 マテリアルを全身に行き渡らせて大剣を振り回すのだ。高度な制御能力と集中力が要求される。
 怨念を想起させる、禍々しい剣が一閃した。プラチナバレッタでまとめたルカの金髪が、風の煽りを受けてふわりと浮く。
 壺は持ちこたえた。だが、見るからに損傷している。真の縦横無尽に加えて、このカーネージロアである。損傷部位から毒ガスが噴き出すようなこともない。
「猿を頼んだぜ!」
「任せてくださいぃ!」
 ウェンペの切っ先が、遠心力の支配から解放されかかったタイミングで、ハナが符を投げた。暗い洞窟で、陰陽府・天光が輝く様はよく見えた。さらに、その輝く符が五枚、結界を張るや更に光を放つのだから、その瞬間だけ洞窟の中は外のように……いや、外より明るくなったかもしれない。
「そのまま押さえて」
 ツィスカが眼鏡を軽く押さえながら機導砲を撃ち放った。レンズが、一瞬血の色に染まるのを、暗がりに戻った洞窟で誰か見ただろうか。ランタンの光が映ったと言うこともできた。一直線にマテリアルエネルギーが発射される。軽快な音を立てて、壺を貫通する。その後ろの猿にも直撃した。壺の破片が弾け飛ぶ。
「良いぜ!」
 それがトドメになった。壺は自壊しながら落ちて……そのまま毒をまき散らすことはなく、消えた。

●ポイズン・ポッド
 真は、自分と一緒に奥のスペースに残った壺の片方が、ぱかりと蓋を開けるのを見た。
「──!」
 なんとも言えない、いやな臭いのするガスが噴き出す。ストールで口を覆ったが、残念なことに毒が強力過ぎた。傍らで飛んでいる、水晶の兎が異様なほど眩しく感じる。自律神経が誤作動を起こしているような気分だ。全身から嫌な汗が噴き出して、手が震えそうになる。
「鞍馬さん!」
 ルカの声がした。
 動悸がして、胃が意味も無く反転しそうだ。猿たちが動き始める。囲まれるか?
 しかし、そうはならなかった。ルカが混乱させた一体が、身内に飛びかかったのだ。岩肌に頭をぶつけた猿は怒り狂いながら相手をはね除ける。集団に動揺が走った。一部は真の方に逃げてきて、そこにいた彼に向かって飛びかかった。
「く……!」
 吐き気と頭痛が始まっていたが、体の動きが鈍るようなことはなかった。真は目を細めて回避に専念する。その時……残っていたもう片方の壺が、すーっと仲間たちの方に向かうのを見て、彼は声を張り上げた。
「壺……! もう一つ行った! 気をつけて……! うっ……」
 消化器が、口に押し戻そうとする蠕動運動を始めている。
「鞍馬! 大丈夫か!」
 飛びかかってくる猿を、ディスターブでいなしながらトリプルJが声を張る。
「大丈夫じゃなさそうだね……! おっと、超機導パワーオン、弾け跳べっ!」
 ざくろが、自分に飛びかかってきた猿を攻性防壁で弾き飛ばす。壺にぶつけて遠ざけることも考えたが、ノックバックが効いたのは猿だけだった。
「こっち来ますぅ!」
「星野! 符術でどうにかならねぇか!?」
「私とトリプルJさんが同時に範囲に入れば、呪詛返しお裾分けできますぅ! その代わり駄目だったら頑張ってくださいぃ!」
 トリプルJ自身、吼え狂いしものを使えば解毒が可能だ。ただし、その後スキルの使用が不可となる。
 一方、ハナが呪詛返しを使えば、何もない状態で四割を切る抵抗が五割五分まで跳ね上がる。そして、彼女が毒に耐えれば、トリプルJに対しての毒も無効化されるのだ。問題は、ハナとトリプルJが同時に毒霧の範囲にいないといけないことだが、試す価値はある。ハナはカードを五枚抜いて身構えた。
「やれるもんならやってみろですぅ!」
 しかし、壺はのろのろと移動しただけだった。その間に猿たちも暴れ回っていたが、はじき返されたり回避されたりではっきり言って無駄骨である。
「毒、治療します」
 ルカが前に出た。ゴッドブレスを使うためだ。後衛にいてはわずかに届かない。高純度のマテリアル鉱石がはめ込まれた杖を掲げて、祈りを捧げた。
 吐き気と頭痛がおさまって、真はほっと息を吐き出す。随分と楽になった。同時に、先ほどまでがいかに不調かと言うことを思い知る。もう、水晶でできた兎の光も優しく思えた。
「ルカさんありがとう! 良くなったよ!」
 真は謝意を述べながら剣を持ち直す。青い炎の様なマテリアルを纏った剣を振るう。二刀流、そして、蒼葬。奥歯を噛んで、魔法剣の青いオーラを一気に解放した。
 青い炎に灼かれて、壺が砕け散る。
 真の方に寄ってきていた猿に向かって、ざくろとツィスカからデルタレイが飛んできた。これで奥のスペースにいる敵は殲滅。あとは通路側にいる分だけだ。
「このぉ!」
 ハナが壺と猿を巻き込む範囲に五色光符陣を放つ。残りはわずかだ。
「トリプルJさん、やっちゃってくださぁい!」
 トリプルJは残りを巻き込める位置に飛び込むと、大剣を握り直して振り回した。
 三つ目の壺も、あっけなく粉砕される。やはり、崩壊する際に毒を放つことはなかった。

●遺品
 毒の脅威さえなければ、ハンターたちにはそう難しい戦いではなかった。殲滅を終えると、ハナは浄龍樹陣を張って浄化に入る。
「無機物が歪虚になるほど負のマテリアルに汚染されてる場所ならぁ、戦闘後は浄化した方が良いかなぁって思いますぅ」
「そうですね……精霊を祀るのも一つの手でしょうか?」
 ルカも顎に手を当てて考える。
「熊などの野生動物ならまだしも、たまーにゴブリンとかコボルトとかの亜人が住み着くケースもありますし……ある種歪虚より厄介ですから」
「そうですね。元の木阿弥、というのは一番まずいでしょう」
 ツィスカも頷いた。

 トリプルJは、何かトレジャーハンターへの土産になるようなものがないかと洞窟内を探している。ざくろも一緒だ。
「帰らずの洞窟って、冒険家としてはロマンに満ちているしね。何か持って帰ってあげたら喜ばれるかも」
「ああ。せっかく生きて帰って来たんだ。ご褒美くらいあったって良いだろ」
 とは言え、元々何か宝があったような洞窟ではない。行ったら帰ってこない、と言うことで、何かしらを守るためのトラップではないかと思い、件のトレジャーハンターは入り込んだのである。
「どちらかと言うと……遺品の方が見つかるんじゃないかな」
 白骨化した遺体に引っかかっていた懐中時計を拾い上げて、真は目を伏せた。

●医院にて
「と、言うことでお宝らしいものはなかったぜ」
「ああ……まあそうなんだろうな」
 村に戻ると、男の所に行ってトリプルJは告げた。トレジャーハンターの男は苦笑する。毒が抜けて、快方に向かっているようだ。
「何か土産に持って帰ってきてやりたかったんだがな」
「お気持ちだけでってやつさ……」
 遺品と遺骨は村で弔ってくれるそうだ。男はツィスカを見る。
「代わりに勝ってきてくれてありがとうよ……」
 彼女は微笑んで首を横に振った。村役場にはルカとハナが、精霊を祀ることについて提案しに行っている。真とざくろは弔いの手伝いだ。
「今回のことで懲りたからな……次に死の噂があるところに行くときは、ハンターの護衛でも依頼しようかね。そしたら、あんたたち、一緒に来るか?」
 二人は顔を見合わせると、くすくすと笑った。男もくくく、と笑う。

 穏やかな日差しの入る病室に、長閑な笑い声が広がった。

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重体一覧

参加者一覧


  • ルカ(ka0962
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • アウレールの太陽
    ツィスカ・V・A=ブラオラント(ka5835
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/04/15 13:06:54
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/04/15 12:51:23