おにくと星と

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/05/09 15:00
完成日
2019/05/15 22:49

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 要塞都市の門をくぐったクラーという少女は見慣れない鮮やかな風景に足を止めてしまう。
 荷物を運ぶ馬車の荷物の多さたるや、着ている服が自分が来ている者とは全く違っていた。
 周囲にはいろんな人や物があるから、急いで動かない事と言われていた少女はきょろきょろと周囲を見回し、人や物に当たらないように歩いていく。
 少女が向かうのは頼まれたお使いを遂行する事だ。
 目的の場所に行くのは二回目。
 前回は大きなドワーフ、イオタと一緒だった。
 本日で二回目の訪問となるのだが、クラーは一人で行くと言い張る。
 周囲の大人たちは反対したが、行くための道を暗唱したところ、しぶしぶ了承してくれた。
 この少女、クラーは元はとある辺境部族の生き残り。
 共に住んでいた老人と要塞都市に身を寄せている。
 今までは遺品をお下がりに着ていたが、今はきちんとした服をきている。
 当初膝まであった髪は前髪だけ切り、後ろ髪をリボンで結んでいた。なんでも、ハンターから貰った飴に飾られていたリボンらしい。
 ハンターの贈り物は部屋に大事に飾っている。
 覚醒者ではない少女だが、物覚えがよい。
 一度聴いたら憶える。
 ただし、手先は不器用であり、何度もやらないと早くできない。
 頭の回転と手先は別物だ。
 店のドアを開けると、引き締まった体躯の女性が驚いた顔をする。
「おやまぁ! クラーじゃないか。一人で?」
「うん、しっかりしないとだめだって、おじいが言ってた」
 頷くクラーは握りしめすぎてくしゃくしゃになった紙を女性に渡す。
 紙にはメモ書きがあり、目を通した女性は「わかったよ。お疲れ様」と、駄賃の飴を一つ渡してくれた。
「ありがとう」
 何かを貰った時、嬉しいと思った時は礼を言えとも言われている。
「さぁ、早くお帰り、皆が心配するよ」
「うん。ウルサの祖霊みたいにいなくなっちゃうから、帰るね」
 そう言ってクラーは戻っていった。

 クラーが戻っていったのはドワーフ工房。
 現在の彼女は部族なき部族の一員であるが、メンバーがドワーフ工房の宿舎に入っている為、彼女の住まいもそことなる。
 少しでも外の暮らしに慣れるようにと、外に出るようにしていた。
 盗賊団の大型捕り物があったことを知った要塞都市内で後ろ暗い者達が多くいる場所では少し大人しくなったという経緯もあり、ある程度ならクラーが自由に歩けるようにさせている。
 最近のクラーのお気に入りは誰かと眠る事。昼寝含む。
 今日の眠りの友はフォニケだ。
「そういえば、バタバタしてて聞けなかったんだけど、ウルサマヨルとウルサミノルは元は同じ祖霊なのよね?」
「うん」
「何か伝承とかなかった?」
「んとねー」
 クラーが昔キュノスから聞いた話をフォニケに始めた。

※※※

 あるところに白いこぐまがいました。
 どこからやって来たのかわからない白いこぐま。
 皆とすぐに仲良くなりました。
 日が沈むころ、白いこぐまは何も言わずにいなくなってしまいました。

 皆が悲しんでいた時、ひょっこりと三匹の白いこぐまがあらわれました。
 けいかいすることもなく、「あの子と同じ気がする」「おかえり」と、皆が優しく出迎えてくれたました。
 三匹の白いこぐまの一番目と二番目はとても聡明だったり、姫のように可愛かったりしたのですが、三番目の白いこぐまは身体が大きいだけでみそっかす。
 何をしてもどんくさく、しっぱいばかり。
 だけど、喜んでいるものがいたら、いっしょに喜び、悲しんでいるものがいたら、その悲しみを受け止め、なぐさめてくれました。
 姉ぐま達にもほかの皆にも愛される子でした。
 ある日、三番目のこぐまは姉たちと離れてしまいました。
 灰色の兎が連れて行ったとだれかが言ってました。
 その理由はわかりません。
 灰色の兎もいなくなったのですから。
 けど、三番目の白いこぐまはどこに行っても愛されるこぐまでした。

※※※

 おとぎ話を聞いたフォニケは「白いこぐま……ねぇ」と呟く。
「おとぎばなしとかは、どこかでいろいろとかわるって、おじいが言ってた」
「つまり、私達はきょうだいと別れた末っ子を始祖とし、ウルサ族が出来て二つの部族に分かれた……ってことかしら」
 フォニケが思案すると、クラーが「うーん?」と唸る。
「私も、三番目みたいに連れ去られたけど、カシオペア族の皆に大事にされてきたから、その流れを持っているのかもね」
「じゃぁ、三番目のこぐまはお肉が好きってこと?」
「どういうことよっ。くすぐってやる」
「きゃはははは! ね、ね! ハンターのみんなとおとまりしたい!」
 急な提案をするクラーにフォニケはくすぐる手を止める。
「お泊りねぇ。明日、カペラちゃんと相談してみましょ」
「うんっ!」
 満足そうに返事をしたクラーはそのまま眠る。

 翌日、フォニケがカペラに尋ねると、彼女は予定表を捲りつつ、げっそりとした表情となった。
「気持ちはわからないでもないけど、今まで、タットルの対応で遅れが出てるのよ」
「狙われていたしね」
 盗賊団『タットル』はドワーフ工房に属しているフォニケを連れ戻す手段として、ドワーフ工房【ド・ウェルク】の技術者や造った物も狙っていた。
「でも、根詰めた仕事は良くないしね。テトちゃんも外に出たがってたし、終わったら外でバーベキューとかもいいわね」
「きゃー! カペラちゃん、大好き!」
 はしゃいで抱きつくフォニケに絆されるようにカペラは「はいはい」と背を叩く。
 妹のような姉のようなフォニケにカペラは甘いのだ。
「ヘナさん、来れるかしら……」
 ぽつりと呟くフォニケにカペラが唸る。
 ヘナとはタットルの首領の愛人だった女性の名だ。部族を滅ぼされ、誘拐されて首領の愛人として捕らわれていた。
 現在はドワーフ工房に縁がある診療所に身を寄せているが、数年間の監禁は精神的に追い詰められていたという。
「落ち着いてきたけど、どうかな……」
「声はかけておくわ」
 そう言ってフォニケはハンターオフィスへと向かった。

リプレイ本文

 ハンター達の顔合わせの際、集まったメンバーの殆どが顔見知り。
 要塞都市のある一角にドワーフ工房がある。
 入口を通って中の建物へと入っていくと、ドワーフ工房の中では仕事の真っ最中。
 アルカ・ブラックウェル(ka0790)がクレムトの工房を覗くと、イオタが気づく。
「よぉ、来たのか」
「うん!」
「姫さん達はエテルナの方にいるぜ。下準備が必要ならシェダルを連れていけ」
 話の早いイオタはシェダルを好きに使えと放り出す。

 ハンターは夕方までそれぞれの時間を過ごすことにした。
 要塞都市商業地区の裏通りの地図を手に歩いているのはボルディア・コンフラムス(ka0796)。
 ある地点で彼女が足を止めて顔をあげた。目的地は診療所。ここにエーノス族の生き残りが身を寄せている。
 目的の人物ボルディアを覚えていた。
「よう、俺の事は覚えてるか? 俺はボルディアってんだ」
「憶えてますとも。助けて頂いて本当にありがとうございました」
 ヘナは帝国風の長袖の服を着ていた。袖が捲れないようにリボンで手首を編んだデザインは刺青を見たくないからだろう。
「礼なんかいいぜ。それより、少しは元気になったか?」
「前よりは楽になりました」
 ヘナの様子は落ち着いており、診療所で穏やかに過ごしていることが伝わってくる。
「そりゃよかったぜ」
 にまっと笑うボルディアはそのまましゃがみ込み、ヘナを見上げた。
「なぁ、今日はドワーフ工房で肉食うんだけど、来ねぇか?」
 誘いにヘナが困ったような顔をした。
「騒々しいところに行くのがまだ怖くて……」
「ドワーフ工房に記憶の連中はいねぇよ。騒々しいだろうけど、過去の嫌なこと全部忘れちまうくらい楽しい事をするのはできるぜ?」
 過去の恐ろしい騒々しさに心が支配され、楽しい騒々しさを塗りつぶされることはとても寂しいことだ。
「そうですね」
 笑顔のボルディアにつられるようにヘナが少しだけ笑った。

 エステル・ソル(ka3983)とキヅカ・リク(ka0038)は飾り終わったクラーと一緒にルックスやキュノス、テトとドワーフ工房の一角でお茶をしていた。
「テトちゃん、かなりの怪我だったけど、大丈夫?」
 身体を庇うように動くテトを見つつ、リクが顔を曇らせた。
「怪我は治ってますにゃ」
「刺されていただけと思ってたけど……まさか、切られていただなんて」
 そう呟くリクの顔は当時の状態を思い出し、しかめている。
 当時、テトはアケルナルに短剣で胸を突かれた。しかし、実際はテトの胸から腹くらいまで短剣を突き刺したまま割いていた事が判明。
 ハンター達の治癒スキルで怪我は塞がったが、身体の衝撃や疲労があって上手く動かせない。
「まぁ、にゃかまを殺した奴に一矢報いたのでオッケーですにゃ」
 テトは嬉しそうにこっと笑う。
 その横ではエステルがお土産のクローバーのイヤリングをクラーに渡していた。
「これは、幸福を呼ぶ葉なのです」
「そうなんだ。ありがとう」
 キラキラを目を輝かせるクラーはとても気に入った模様。思い出したように傍らに置いていた花飾りをエステルに渡す。
「フォニケがさんぷるって言ってたから、つけて大丈夫。おねえちゃんに似合うと思うよ!」
 手渡された飾りは白と青の花が連なったヘッドドレスで、真ん中に青い小鳥が座っていた。大小のビーズが夜空の星のようだ。
「エステルちゃんの星鳥のようだね」
 朗らかなリクの感想に「それです」と思い当った。

 アルカはシェダルとイオタを連れて先に下準備を始めていた。
 肉だけでは飽きてしまうので、野菜のスープや煮込み料理のサイドメニューを仕込んでいる。
「何か手伝う?」
 高瀬 未悠(ka3199)が尋ねると、アルカは「大丈夫」と必死そうに固辞した。
「それに、旦那様の種族もあるから、工房の皆の好みには合うと思うんだ」
 えへへと照れるアルカに未悠はふふっと笑う。
「お惚気ご馳走様……私も漸く好きな人と結ばれたの」
「そうだったの! おめでとう。よかったね」
 驚くアルカは嬉しさで一杯になり、祝いの言葉を告げる。
「こうしちゃいられない。フォニケー! 恋が実った幸せな乙女がいるよー!」
 アルカが中庭から絶叫すると、フォニケが一大事と言わんばかりに未悠を連れ去った。
「いいのか? 友達だろ?」
 イオタが心配そうに尋ねるが彼女は大丈夫と手を振る。
「きっと、恋人さんがここに無い事を悔しがるほど綺麗にするよ。それに……」
 言葉を一度切るアルカにシェダルが視線を向ける。
「お肉を黒焦げにしたらフォニケ、この世の終わりみたいに嘆くでしょ」
 二人は視線を外して頷く。
 仕込みが終わった頃に未悠が現れた。
 黒いプリンセスラインのワンピースを着ており、胸やウェストラインに白や紫の花飾りがあしらっている。
 夜風に身体を冷やさないために淡い緑のストールを羽織っていた。
「ミユ! とっても似合うよ!」
「ありがとう。まさか、こんなことになるなんて……」
 怒涛の着替えに疲れたのか未悠が俯くと、横髪に留められた鈴蘭の髪飾りが揺れる。
「ウチの技師が悪かったな。で、犯人は買い出しか?」
「ええ、お肉の買い出しに逃亡したわ」
 シェダルの謝罪を受け入れつつ、未悠は所在を伝えた。

 未悠とアルカ達のいう犯人ことディーナ・フェルミ(ka5843)とフォニケは買い出しに市場へ繰り出していた。
 肉はあるのだが、少し変わり種の肉を買おうと吟味中。
「見て! 大きなお肉よ!」
「一番大きい奴ください!!」
 大きな枝肉での加工の為、些か金額が張るが、二人は一番おおきいのを注文する。
 サービスしてもらったベーコンをつまみながら二人は市場を駆け巡る。
「燻製といえば、シェダルが作った燻製肉があるの。出してもらいましょ」
「いっぱいおねだりしましょー!」
 両手を広げてディーナが喜ぶ。 

 日が沈みかけた頃、ボルディアがヘナを連れて工房に現れた。
「ヘナ姉!」
 驚いたようにルックスが駆け寄る。
「お誘いしてもらったの」
「そっか、ボルディアさん、ありがとう!」
「メシは皆で食うと楽しいからな」
 煮込み料理のいい匂いに気づいたボルディアが「早く行こうぜ」とハンター達を促した。
 中庭では作業終了したドワーフ達が集まってきている。
「あ、もう始まってる感じ?」
 買い物を終えたフォニケ達が帰ってきた。
「ディーナ、フォニケ、口元に食べかすが付いてるよ」
 あきれた口調のアルカからツッコミを受けた二人は「味見しないでお勧めできないでしょ」と言い訳をしている。
「シェダル! あの燻製肉出してよ!」
「人の保存食だぞ」
 フォニケとシェダルの会話にエステルが聞きつけた。
「燻製肉は保存できるお肉ですよね?」
「ええ、シェダルは燻製用のチップをブレンドしてて、美味しいのよ。味見してみる?」
 フォニケが言えば、エステルはいいのだろうかと困惑していた。そのお肉はフォニケのものでないからだ。
「美味しいものを食べて元気になってほしいと思う方がいて……」
 ぽそっと零すエステルの表情が少し翳る。
 じっとフォニケがシェダルを見やると、彼は諦めたようにため息を吐く。
「配合教えてやる。ついでに作る」
「ありがとうございます」
 顔を明るくさせたエステルはシェダルと一緒に燻製肉を作る。
 未だ目覚めぬあの人が起きた時に喜んでもらう為。
「おにく、たべよー!」
 はしゃぐクラーの言葉を皮切りに肉が焼かれ始めた。

 木製ジョッキを大樽から汲んだり、酒が飲めない人はお茶や甘いハーブコーディアルの炭酸割で乾杯をする。
 最初に焼ける肉は奪い合いとなり、ディーナとリクとボルディアが争奪戦に参加していた。
「フォニケさんは参加しなかったのです?」
 首を傾げるエステルにフォニケは頷く。
 肉食女子を明言するフォニケが争奪戦に参加しないのは意外だった模様。
「お肉はたんまりあるし」
 基本的に焼くのはアルカとシェダルとイオタである。
「エステルちゃん、後で燻製肉焼くから、食べてね」
「はいですっ」
 下ごしらえ中にエステルはシェダルより燻製肉用のチップのブレンド配合について教わっていて、保存したものと作ってすぐのものと食べ比べをさせてもらう事になっていた。
「フォニケさーん! ゲット出来ましたー!」
 流石おにくの精霊なのです! とディーナが勝利のお肉を頬張る。
 リクは二回戦目に挑戦する方向だ。
「そういえば、キヅカ先生はよくこんな食べ物を食べていると聞きました」
 思い出したようにエステルが指で長方形を作る。
「リアルブルーの食べ物?」
「携帯食料よ。栄養素が詰まっているの」
 後ろで肉を焼いているのは未悠だ。
 焼いている網の下は赤く焼けた炭、完全に強火。
「お姫様は座ってて!」
 フォニケはトングを未悠より奪って彼女を座らせた。皿に肉を乗せ、表面をチェック。
 焦げ寸前危機一髪。
 そこから炭を調節、表面を気にしてさっと焼き、皿に上げて休ませること数回。
 焼き上がった肉に二回戦目も敗退したリクが慄く。
 固いけど、きちんと食べられる。
「まじか……食べられる」
「お、よかったじゃん。食べられて」
 ボルディアはアルカが焼いた肉を食べる事に成功していた。
 獣の臭みを香草の薫りで消しており、肉を噛むと香草の香りが鼻に抜ける。
「やっぱり、フォニケさんはお肉の精霊なの!」
 切り分けられた肉の一切れを頬張り、ディーナが唸る。
「キヅカ先生、ちゃんとスープも飲んでください。野菜のうまみと栄養が入ってるのです」
「はーい」
 エステルの助言を受けたリクはスープを貰いにアルカの方へと向かう。
 手助けがあったが、肉が上手く焼けてご機嫌な未悠は酒を飲んで微酔いに。
「リク、座って」
「は?」
 目が座っているのは未悠ではと思うリクだが、黙って話を聞く。
「女はね、いつでも大切にされたいの」
 唐突に始まった女心講座に女性達が集まってきた。
「好きな人が出来たら、その人だけ見てその人にだけ特別な優しさをあげるのよ」
 未悠の大切な言葉をリクは静かに聞いているが、どうにも姉に説教されている弟にしか見えない。
「ねぇ、リク君彼女いないの?」
 嘘でしょう? と言いたげなドワーフ工房の女性陣にハンター達は顔を見合わせる。
「いい感じになった子とかいないの!?」
「えええ」
 お姉様達に詰め寄られるリクは困った様子を見せていた。
 一方、ドワーフ達では飲み比べが始まり、そこにいるのはボルディア。彼女の飲みっぷりは酒好きドワーフ達の感嘆させるほどによかった。
「よぉ! 姉ちゃん、いい飲みっぷりだな!」
「大樽が空になってきたぞ! 一気に飲み干してやるぜ!」
 ボルディアの視線は空になる酒樽だ。持ち上げて一気飲みを始めようとしていた。
 それに気づいた未悠が立ち上がる。
「無理な酒飲み ダメ、ゼッタイ! リク、止めるわよ!」
「え、シェダルの肉が!」
 ご指名を受けたリクの皿にシェダルが焼いた美味しそうなミディアムレアのお肉が乗っていたが、ディーナが手に取って送り出す。
「ボルちゃん飲み過ぎーー!」
「まだこれからだろーー!」
 リクと未悠にタックルされて止められたボルディアが抗議するが、飲み比べは退場。

 用意した殆どの肉を食べつくした後、ざっくり片付けをして二次会へと向かう。
 リクはカペラを誘おうとしたが、ドワーフ達に見つかり、大勢で行く。
 ついでにヘナを送り届けて。彼女も沢山楽しめたようで、ボルディアに感謝を述べていた。
 二次会は飲食店ルクバトへと入る。
「フォニケちゃん、本当にアケルナルの前だけ怯えてたんだね」
 今日会ったフォニケは笑顔しか見てない。
 どうしてもリクの脳裏にフォニケの怯えた様子がこびりついている。
 視線の向こうにいるフォニケはアルカ達と笑顔で肉を頬張っていた。まだ食うのかと呆れつつリクは見つめていた。
「夜、魘されて眠れてない時もあったけどね。でも、落ち着いてきたわ」
 にこりと笑うカペラにリクはほっとする。
「フォニケちゃん、これからどうするんだ……」
「ウチの大事な技師よ」
「アッハイ」
 容赦なく言葉を切るカペラの言葉にリクは頷くしかない。

 ハンター達は二次会で切り上げ、ドワーフ工房の宿舎で一泊。
「飲みすぎた人は朝にお風呂だよ」
 アルカの提案に風呂があるのかと驚くのは未悠。
「泊りがけの仕事もあるし、お父さんに言って作ってもらったの」
 十人くらいなら一度に入れる広さだとカペラが補足説明を加える。
 風呂嫌いでも作るのはいいのかと未悠は意外そうに頷く。
「カペラのご両親って、どんな感じなの?」
 そう尋ねる未悠にカペラは「押しかけ女房って感じ」と答えた。
「お母さんがお父さんにべった惚れで、お父さんが好き放題してもお風呂に入らなくても気にしてなくて。まぁ、幸せだからいいけどね」
 肩を竦めるカペラに未悠はくすくす笑う。
「でも、どんな愛の形でも幸せになりたいわよね。まぁ、アルカちゃんは言わずもがなだけど」
 急に話を振られたアルカは照れながら「幸せだよ」と返す。
「というか、未悠だって恋人できたじゃないか」
 照れ返しにアルカが話を切り替えると、未悠が顔を赤くする。
「そ、そうなんだけど……なんというか……女性からキスをするのってありかしら?」
「ありでしょ?」
「いかないの?」
 ズバリと言ってきたのは女性技師達。男どもと仕事をする姐さん達はかなり積極的な面子が多い。
「ボルディアちゃん、どうしたの?」
 輪の外にいるボルディアにフォニケが声をかける。
「あんま、こういう話の面白さがわからなくてよ」
 いつも気合の入っている彼女に元気の色がない。疲れているわけではない。
「人それぞれよね」
「好きな奴って言われても、キヅカの事は好きだけどアレはなんか、戦友とかダチってのだし」
 よくわかんねぇよと続けてボルディアが肩を落とす。
「大丈夫にゃ」
「そこにいるのが類似品だから」
 テトとカペラが指を差したのはフォニケ。
「どういう意味!」
 ツッコミを入れるフォニケの膝にディーナが甘える。
「じゃぁ、ボルディアさんの好きなお肉はなんですかー?」
「どんな肉も好きだぞ」
 それでも答えようとボルディアがうーんと考えていると、ドアが開く。
「クラーちゃんの歯磨き完了です!」
 可愛らしく敬礼するエステルはクラーと仲良く手を繋いでいる。一緒に歯磨きをしていた模様。
「ボルちゃーん!」
 きゃっきゃとクラーがボルディアに抱きつく。
「おう、今日は楽しかったか?」
「うん!」
「こぐまちゃんのぬいぐるみです」
「ありがとーー!」
 ディーナからの贈り物のこぐまを嬉しそうに抱きしめるクラーとエステルを交え、女性陣の夜は更けていく。

 寝る間際、アルカが部屋に戻ろうとするフォニケとカペラに抱きついた。
「二人も、シェダルもイオタも兄弟みたいに思ってるからね」
 彼女の言葉に二人は「知ってる」と笑う。

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  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 陽光の愛し子
    アルカ・ブラックウェル(ka0790
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • 部族なき部族
    エステル・ソル(ka3983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

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依頼相談掲示板
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鬼塚 陸(ka0038
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2019/05/07 09:47:05
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/05/07 09:35:10