• 血断

【血断】魔術師の弟子、龍園にキノコ探し

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/05/16 09:00
完成日
2019/05/26 17:31

このシナリオは4日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●リゼリオ
 ルゥルはリゼリオにお遣いにやってきた。そこで耳にしたのは、邪神の話題だった。邪神側の通告により今後どうすべきかということであり、「討伐すべき」「恭順したほうがいい」とか「封印できれば一番いい」とか議論するハンターの声や邪神についてや世界の在り方などである。
「死んじゃうのです? みんな死んじゃうのです?」
 パルムのポルムが頭を撫で、フェレットのフレオが頬をなめて必死になだめる。
「岳郎さんにも会えないのです? 違うのです、リアルブルーに行けなくてもいいのです。でも、でも……みぎゃああああああああ」
 ポルムとフレオがおろおろ始めた。ルゥルはリアルブルーで知り合い、その凍結の中にいるキノコに詳しい木野 岳郎を思うとつらかった。会えないことはいいとしても、互いに元気で幸せならいいと考える。
「どうかしたのですか?」
 青い人影がルゥルの前にかがむ。
「……みぎゃああああああ、あ。こんにちはなのです」
「……はい、こんにちは、えと……ルゥルさん」
 ラカ・ベルフはルゥルが泣いていたのにすぐに挨拶を返したことに切り替えに時間がかかった。
「どうしたのですか?」
「えっとですね、邪神の話を聞きましたか?」
 ラカのこめかみがピクリと動いたのでルゥルは悟った。質問するまでもなかったということを。
「歪虚は全部いなくていいと思います」
 その表情がやる気に満ちているものではなく、苦悩が見て取れた。
「しかし、戦ってどうにかできるのか、どうなのか……と言うことですわね。むろん、私も……ルゥルさん!?」
「そうなのです……怖いのです。いなくなるのは嫌なのです」
 ルゥルの目がウルウルしはじめたので、ラカはハンカチを出し、ルゥルに渡す。
「あ、持ってますです。ありがとうございます」
 ルゥルはポケットからハンカチを取り出し涙を拭いて、鼻水をかんだ。
「私はリアルブルーにまた行きたいのです。岳郎さんというキノコの人がいるのです」
「キノコの人?」
 ラカの目がパルムに行っている。
「あ、違うのです。キノコに詳しい人です」
「今は、こちらに?」
「凍結の中にいます。また、会ってキノコの話をしたり、キノコを見に行ったりしたいです。でも、一番重要なのは、岳郎さんが死なないことです」
「そうですわね……正直言って私はどうしていいのかわかりません」
「……そうなのです」
 二人とも邪神はいなくなってほしいと思う。ルゥルの場合、最低でも岳郎が生きて幸せになってくれることを願うし、もう一つ言えばリアルブルーに行ってもっとキノコが見たい。
「……色々考えると足がすくみます」
「なのです……」
「……一度、ループする世界を見ているのです」
 ラカはルゥルの肩にいるフレオを見るとそれを思い出す。
 フェレットに似た生き物たちが、文明を築き滅びと戦っていたのだ。それを繰り返している様を見てしまった。介入したことで変化が生じたが、結局はそれが正しいのかいけないことだったのか判断付かない。かかわった中、白ぽいフェレットは滅ぶ時の記憶を持っているようだったし、ラカ達に関わり希望を抱き、絶望も抱いた。
「恭順を選ぶことは簡単ですし、犠牲も出ません。ループするさまを見てしまうとつらいです」
 未来の自分はそんなことを知らないかもしれないし、偶然、死する前を知っている可能性もある。
「……ラカさん」
「私は……無力だと思います」
「ラカさんは頑張っているのです! ルゥルこそ、何も分かっていないのです」
 ルゥルはラカが頑張っているということはわかっている。
 ルゥルは今自分が何を出来るか考える。グラズヘイム王国でも傲慢王側との戦いが続いているし、どこか、どうなるのかわからない。
 今を頑張ればいいなら、もっと強く賢くなればいいともルゥルは思う。
「あ、そうなのです、ラカさん……キノコなのです」
「は?」
 目をキラキラさせて言うルゥルにラカの目は点になる。
「龍園にはキノコがあるのです?」
「なくはないですが……なぜですか?」
「どうなるかわからないならば、キノコを探しに行くのです」
「よく、わからない理論なのですが」
 ラカは動揺する。
「私にできることは、賢くなることと強くなることです。龍園に行ったことないですし、行くだけで賢くなります」
「……賢くはならないかと思いますわ……」
「百聞は一見に如かずなのです!」
 ラカはルゥルの勢いに押された。そして、後日、招く約束をしたのだった。

●念のため
 ラカは龍園のハンターオフィスで情報収集をする。
「この辺りでキノコ採れましたよね」
「季節を考えてください」
 オフィスの職員の素っ気いない返答はラカの耳に届いているか分からない。
「今、危険情報とかあります」
「それは出てます」
 ラカがびくっとなる。
「イエティが出たのです!」
 職員がペンを天に向けまじめな顔で言う。
「……いえてぃ?」
 ラカが首をかしげる。
「冗談です……えと……すみません」
 職員がうめいた。通じない冗談ほどつらいものはなかった。
「いえてぃ?」
「すみません、本当すみません」
「いえてぃ」
 説明しない限り撤回がなさそうなので説明した。
「で、冗談なです」
 職員に対し、ラカが冷たいとも何とも言えない目を向けた。
「ラカさんなら、問題なく討伐できると思いますけどね」
「討伐後、ルゥルさんとキノコ狩り……」
「日程はいつなのです?」
「……うっ」
「はい、いっそのこと、討伐隊について行ってください」
 職員はハンターの依頼書に「同行人」がいることや、この時期にないのにキノコを探そうとしている旨を記入したのだった。

リプレイ本文

●む
 龍園のオフィスを出た瞬間のルゥル(kz0210)の表情は様々な葛藤に彩られた。外の気温や湿度等でキノコは望みが薄いという悲しみと、誘ってくれたラカ・ベルフ(kz0240)の気持ち。
 マリィア・バルデス(ka5848)は皆と意見をすり合わせて、バーベキューの用意をこっそりしていた。
「そういえばこっちに来てからあんず茸食べたことがないわね……生えていないかしら。大好物だったんだけど」
 キノコの話題にラカが首を傾げ、ルゥルは悩む顔になる。
「針葉樹林に生えるのですが、季節的に無理だと思うのです」
 ルゥルがまじめに答えた。
 木綿花(ka6927)は雑魔目撃情報等を記したマッピングセットから顔を上げ、感心する。
「ルゥルちゃん、よく知っていますね。龍園ならではのキノコの植生や食べ方など……なら答えられます」
 木綿花の言葉にルゥルが興味を持った顔になる。
 星野 ハナ(ka5852)はハンターオフィスの職員を元に、ルゥルを慰めるためピクニックの用意をしていた。
「まず、クマ退治はきっちりしてぇ、それから探索なりなんなりしませかぁ?」
 ルカ(ka0962)は同意する。バーベキューや鍋の用意をしてきている。
「楽しいひとときにするにはそれは重要なことです」
 エステル・ソル(ka3983)は雑魔の情報を聞き首をかしげる。
「イエティ? 雪男? 目撃情報はずいぶんと錯綜しているみたいです?」
 すべての特徴が当てはまると雑魔などではなく歪虚のようである。
 ユメリア(ka7010)はうなずき、歌うように答える。
「人によって見え方が違うという教訓か、それとも色々いるのかもしれません?」
 一行は現地に出発した。

●雑魔捜索
 目撃情報があるあたりにやってきた。ラカはスカートの中からモーニングスターを取り出す。
「ど、どうやって入っているんです!」
 ルゥルが食いついたし、ラカの戦い方を知らないエステルは興味を持った。
 ラカの歪虚に対する勢いを知っている木綿花は念を押す。
「ラカ様、モニちゃんたちの安全配慮も必要です」
 木綿花の指摘にラカは動揺し、フェレットのモニを見つめる。
「モニさんやフレオさんは、雑魔討伐が終わるまで安全なバスケットさんに入っててくださいです」
 エステルが籠を示す。そこにフェレットたちは収まり顔をのぞかせる。
「籠は私が預かっておきましょうか? ポチとガードしておきます」
 木綿花は柴犬のポチを示した。
 この提案に反論もないため、ポチが籠を提げた。

 ここから本題。
「雑魔もですが、クマもいる可能性があるということですね? 気を付けたほうがいいですね」
 木綿花は言う。
「穴持たずが雑魔化したのかなぁって思いましたけどぉ、洞窟は確認したほうが良いのかなぁとも思いましてぇ。隠れ家にしているかもしれませんしぃ、そこを確認してから森の中も見に行きませんかぁ」
「穴持たず?」
「冬眠しそこなって冬眠期間中に目が覚めて餌を求めてさまようクマのこと、穴持たずっていったりするんですぅ。今回、そういうクマが雑魔になったのかもしれませんよぉ」
 ルゥルの疑問にハナは答えた。
 木綿花が洞窟を見ることに同意する。目星をつけて探す必要もある。
「洞窟にいる可能性も否定できません。ただのクマがいる可能性もありますが」
 木綿花は「クマは危険ですよ」とルゥルに説明をした。
「そういえば、クマの手珍味らしいですね。歪虚はさすがにまずいでしょうか」
 ユメリアがふとつぶやいた。
 ラカが基本何も残らないことや新鮮な雑魔だと、相当まれに何かが残ることもあると告げる。
「新鮮な雑魔とは何でしょう?」
 ユメリアの質問にラカは首を横に振った。
「雑魔探しは魔導短伝話を使ってみるというのはどうでしょうか?」
 ルカの提案にラカが首を傾げた。
「負のマテリアルがあれば乱れるということですか? でも、それほど強い負のマテリアルがあれば、非常に問題が大きくなりますわ」
 ラカが表情を引き締めた。
「では私は空から見てみますね」
 木綿花は【ジェットブーツ】から【アルケミックフライト】を用い、周囲を見渡すことにした。広範囲なため範囲は絞りたい。
 木綿花が上空にいる間、地上に手がかりがないか探す。
 ルカとエステルは足跡がないか、草木に不自然な点がないかを見ている。ユメリアは草木の状況を意識した。
 ルゥルは杖を持ち、ちらちらとポチと籠の中のモニを見ていた。
 マリィアは連れてきたゴールデンレトリバーに警戒を頼む。
 戻ってきた木綿花は洞窟の位置を告げ、マッピングセットに書き加えた。

 一つ目の洞窟に向かう。
 クマの行う縄張りの主張の痕が見えた。
 ハナは連れてきたイヌイット・ハスキーにクマの付けた目印の匂いを嗅がせる。
「これを追うのですぅ」
 イヌイット・ハスキーは走り出す。
「普通のクマに遭遇しちゃったら大笑いですけどぉ。そうなったらそうなったでクマ鍋の材料ですぅ」
 犬が何かを見つけ止まってしまった。
「……新たな手掛かりですぅ?」
 犬はたぶんと言うように指さす。
「それは、生きているクマがいるのではないでしょうか?」
 ルカが指摘をする。
 念のため洞窟を見ると何もいなかった。

 次の洞窟に向かう時も用心は怠らない。
 洞窟の近くは植物は枯れていないが元気はない。
「ルゥルさん、気を付けるのです。それと、これまで学んだことの復習です」
 エステルが告げるとルゥルが神妙にうなずいた。
「敵が一体の時はどういうスキルがいいのでしょうか?」
「ファイアーボールなのです」
「……ファイアーボールもいいですが、状況は見ないと駄目なのです」
「なのです」
「で、ルゥルさんは、オリジナルのスキルを頑張っていましたがどうなりました?」
 エステルの問われるとルゥルは胸を張る。
「完成したのです、どっかーんなのです」
「それはすごいのです。名前は決めたのです?」
「だから【どっかーん】なのです」
 エステルはまさかの名前に驚く。
「それはそれで威力ありそうね」
 マリィアは苦笑し、ルゥルの頭を撫でた。
「さて、そろそろ戦闘用意ね。ルゥルはエステルの側にいるのよ? ラカは気を付けるのよ」
 雑魔に後れを取るとは思っていないが、念は押した。

 しばらく、用心しつつ進むと、クマ雑魔と遭遇する。
 案の定ラカは走り始めが、接敵するまで時間はある。
 マリィアが【リトリビューション】を放つ。ハナの【五色光符陣】が光る。ルカは後衛を守るように盾を持ち立ち、【プルガトリオ】を放った。
 木綿花は【デルタレイ】を放とうとしたが、ルゥルの【どっかーん】が出たときには雑魔はすでに塵に返っているのを見て止めた。
 塵と化した雑魔の前で膝をついたラカがいる。
「あらあら……」
「ラカさん……」
 ユメリアとエステルはつぶやいた。
「それじゃ、ルゥルのキノコ探しに行きましょうか。もちろんラカに目星はあるのよね?」
 マリィアの問いかけにラカはうなずいた。
 ラカのやる気を見守りつつ、キノコについての説明をするか否か、タイミングが計られた。

●もぐもぐ
 キノコが生えることがある場所を念のために見るが、見つからない。
「キノコの季節って普通夏以降な気が――」
 ハナが現状を言おうとしたところ、ルゥルが「なのです」と連呼して何かを訴えた。
 さすがにラカは問題に気づいたらしくおろおろし始める。
「予習ってことでもなんでも、おなかを落ち着けてから考えたらいいんじゃないかしら?」
「賛成です」
 マリィアとルカが言う。ルゥルが同意したため、昼ご飯の準備に入る。
 マリィアはバーベキュー、ハナは鉄板系の料理、ルカは鍋で汁物を作る準備を始める。
「調味料、よろしければ使ってください。パンもあります」
「キノコたっぷりサンドイッチとカップケーキです」
 木綿花とエステルも持ってきた物を勧める。
「干しシイタケを買ってみたのです」
 ユメリアがすっと取り出した。
「え?」
 数人が硬直した。
「これをすってアイス……ああ、アイスはさすがに持ってこられませんね」
「……ユ、ユメリアさん……」
「どうかしたのですか?」
 ルゥルが首を横に振っている。
「干しシイタケは水で戻さないと調理できません」
「あら? 乾した果物みたいに食べられないのですか?」
 ユメリアが困ったという顔をした。
「こちらに回していただければ、行けます」
「何が起こるかわからないのはキノコも同じ」
 ユメリアの干しシイタケは刻まれてルカの鍋に投入されていく。
「ルゥルさん、キノコのことは種類だけでなくいろいろ知っているんですね」
「キノコのことは良く知っているのです」
 木綿花に褒められると照れる。
「それに引き換えわたくしは……」
 ラカがしおれていく。
「知らないことは知ることにつながるのです!」
「ルゥルさんだって今回のことで龍園の空気を知りました。知らないことは知ることです」
 木綿花が告げるとルゥルが激しくうなずく。
「伺った、ループする世界のことも……」
 邪神の使いが提示した条件から生じた話。今の未来をどうするかである。
「私はどうしても良いのかわかりませんが、どうせならやってしまおうと! 私はループの世界を作らない方が良いと思います」
 木綿花も依頼を受けてループする世界を見た。
「私が見たループする世界には、世界の終わりに死力を尽くしても護れなかった無念、彼らに希望を与え続けようと繰り返し犠牲を払った龍がいました。与えられた希望に人は生き生きとしてはいましたが、進展はなく、同じ結末の生を繰り返していました。私も空虚な感覚を覚えたのです」
 木綿花は視線を落とした。
 頑張りたいし、どうにかしたい。
 ラカが木綿花に大きくうなずいた。

「はいはーい、できましたよぉ」
 ハナが作ったバター焼きやキノコオムレツが皿に盛られている。香ばしい匂いに、バターの香り。
 ルゥルがお皿に取ったオムレツを口に頬張った。
「こっちもよ」
 マリィアが作った串焼きはキノコが目立つ。
「キノコオンリーでお願いします。お野菜はあってもいいですが、お肉は少な目でお願いします」
「あら? 肉嫌い?」
「……大きくなるために食べますけど」
 マリィアの作った串焼きをルゥルはとるともぐもぐ食べた。肉も特に問題なく食べきった。
「肉の何が嫌いなのかしら?」
「固くて、歯に挟まるのです。シチューでほぐれているのは好きです」
 マリィアは「そういう考えもあるわね」とほほ笑む。
「肉とキノコ、野菜が組み合わさった方がおいしいわよね?」
 ルゥルは渋々うなずいた。肉の味と野菜やキノコは合うのだ。
 マリィアはルゥル用の串に刺す肉は一口大にし、包丁で軽く筋を入れておいた。

 ルカはキノコ鍋の味を見ながらルゥルに話しかける。
「ルゥルさんは気になっているんですよね……邪神のこと」
「はいなのです。岳郎さんのことを考えると複雑なのです」
 ルゥルはリアルブルーにいる知り合いの木野 岳郎について語った。
「私個人は……恭順も封印も……大精霊クリムゾンウェストへの裏切りかなと……。恭順は……私一人の命なら差し上げられても、すべての人がとなると論外ですし……何よりも大精霊への裏切りです。封印は……先送り策がすべての精霊への負荷の押し付けなら……それはまた裏切りかなと」
 ルカはリアルブルーからここに転移し、ハンターとなっている。大精霊クリムゾンウェストがあってこそ、今ここにいるのだ。
「邪神が歪虚であるかぎり、おそらくいかなる希望も絶望に変わる……どれだけ願ってもゆがむがゆえに。……邪神が正の存在になる……戻れるののならば話は変わってくるのでしょうが……」
「歪虚は死んでいるのです……だから、戻れないのです」
 ルゥルは知り合いのことを思い出した。家族が歪虚となった人のことである。
 ルカはルゥルがしおれているのを見てはっとする。せっかく楽しんでもらいたいのだから、深刻になりすぎてはいけないと慌てる。
「そろそろキノコ汁できますよ!」
 実際にいい匂いになってきていた。
 ルゥルがじっと鍋を見つつ、皿の上のバター焼きやサンドイッチを食べて待つ。
「キノコと邪神の関係。この世界がキノコで、生まれては摘まれ……? ふふっ、哲学的ですね」
 ユメリアがつぶやくとルゥルは驚いた。
「それは怖いのです?」
「でも、生きることは死の積み重ねでもあります」
「なのですー」
 ルゥルは理解する。理解できるから怖いのだ。
「ループする世界は、未来を変えればループから逃れられるかもしれないと思ったのでしょうか」
「そうでしょうね……生き延びられる未来が来るという期待でしょう」
 ラカは目を細め、モニを撫でようとして指をかじられている。
「ところで、私たちの命とはどういうものでしょうね。マテリアルと共に流れ、また再構成される物でしょうか? とすると、記憶のあるなしの違いで、同じことを私たちは繰り返しているのかもしれませんね」
 ユメリアの言葉にラカはきょとんとなる。
「では、私たちに大切なのは、周りの環境ではなくて『私がどう思う、どう記憶するか』ですね」
 ユメリアの言葉に、解答はないし、実際、ループに身を置かないと分からないことであり、置いてしまえば答えがわかっても抜けられないのだろう。
「うまうまなのです」
 エステルはハナからオムレツを受け取り食べて笑顔だ。会話は耳に届いているし、ルゥルやラカもいろいろ思うところがあるということは感じ取っている。
「世界の行方は色々な答えがあると思います。きっと正解は一つではなくて、もしかしたら正解自体がないのかもしれません」
 哲学と同じ。
「それでもわたくしは、未来を笑って過ごせるような世界にしたいです。だから、そのために、今が大変でも一所懸命頑張りたいなって思います」
 エステルは微笑んだ。そして、今、目の前の料理に戻っていった。

●お開き
 木綿花が見ているとポチはモニとフレオにあしらわれているように見えた。サイズゆえに、モニとフレオが取っ組み合いを始めても、ポチはは入れない。
「ああ、モニ、駄目です、そんなに乱暴なことをしては」
「……仲良くなってほしいんですけど……」
 おろおろするラカと、寂しそうに見ている木綿花にルゥルが目を瞬く。
「皆仲良しなのです」
 ルゥルは二人に解説をした。
「動物の愛情表現、なかなか一筋縄ではいきません」
 ユメリアはペットたちのドタバタと飼い主たちのやり取りを見てつぶやいた。
「次回の穴場を教えてもらったと思うですぅ。結構、ルゥルちゃん、食べましたねぇ」
 ハナは後片付けをしながら、状況を思い出す。
「キノコ汁はこのまま置く方が出汁が出てより一層……バーベキューもいただきつつ……」
 前者は持ち帰り、後者は残っているのを食べてしまうつもりだった。
「そろそろお街に戻りましょうか?」
 マリィアは残念だとは思いながら、声を掛けた。

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MVP一覧

  • 部族なき部族
    エステル・ソルka3983
  • 虹彩の奏者
    木綿花ka6927

重体一覧

参加者一覧


  • ルカ(ka0962
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • 部族なき部族
    エステル・ソル(ka3983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 虹彩の奏者
    木綿花(ka6927
    ドラグーン|21才|女性|機導師
  • 重なる道に輝きを
    ユメリア(ka7010
    エルフ|20才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/05/12 08:08:01
アイコン よくあるスパイス本業化(笑)?
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2019/05/12 18:49:50