• 血断

【血断】窓口業務お願いします!

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/06/19 07:30
完成日
2019/06/25 03:19

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●すごい熱だ
 その日、オフィス職員クレート・ジョルダン……通称C.J.(kz0273)は妙にテンションが高かった。符術師のヴィクターは、その頬がうっすら紅潮していることに気付いて怪訝そうな顔になる。
「え? 光源が欲しい? はいはい。待っててね! 今ライト持ってきてあげるから!」
 ヴィクターたちとは別のハンターたちに告げながら、彼はカウンターからライトを持ってくるために出て来る。
「テンションたっけぇな、あいつ」
「ま、投票結果も出てやることは決まったし、張り切ってるんじゃない? あたしたちも負けてらんないよ」
 猟撃士のナンシーが肩を竦めた。
「あ、ナンシーとヴィクターじゃん。何か困りごととかない? 平気? 今ライト取りに行くから、ついでがあるなら持ってきてあげるけど!」
「いや、間に合ってるよ」
「そう? じゃあ何かあったら言ってよね!」
 そう言って彼はすたすたと歩いて行こうとし……その勢いで前に転倒した。その場にいた魔術師ヴィルジーリオが抱き留めたから良かったものの、そのまま倒れていれば顔面が床にめり込んでいたに違いない。
「……おや?」
 抱き留めた魔術師の眉間がわずかに動いた。C.J.が起き上がろうとしないからである。彼はぐったりとしたC.J.の額に掌を当てた。そして言った。

「すごい熱だ……」

●病院送り
 誰が触っても高熱である。低く見積もっても摂氏三十八度は出ているだろう。C.J.は顔を真っ赤にしながら、
「だ、大丈夫だよ。ちょっとだるいけど」
「大丈夫じゃねぇんだわ。それでテンション高かったんだな……」
 ヴィクターは納得してため息を吐いた。
「お前さん、今朝なんともなかったのか?」
「ちょっと頭痛かったかな?」
「今は?」
「まあまあ痛いよ……」
「曹長、俺、こいつを医者に診せてくる」
「そうして。依頼にはあたしとマシューで行ってくるよ」
 ナンシーが苦笑しながら頷くと、C.J.は慌てた。
「え、悪いよ。医者くらい一人で行ける」
「駄目だぞCJ、君、そう言って家で寝てるだけの気だろう」
 腕を組んで険しい顔をしたのはジョンだ。
「バレたか。僕のかかりつけ、煎じ薬がめちゃくちゃまずいんだもん。行きたくない」
「ガキみてぇなことを言うな」
 ヴィクターがぴしゃりと言いつけると、同じオフィス職員であり、叔父でもあるロベルト・ジョルダン……R.J.がやってくる。
「クレート、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫」
「なあ、RJ、俺こいつを医者に診せてきたいんだが、早退させて構わないか?」
「構わない。そう言うことでクレート、医者に行って早く治すように」
「でも」
「でも、じゃない。これで不調が長引いたらどうするんだ。これからどうなるかわからないのに」
「はぁい……」
 叔父から強く言われて、渋々という風に彼は頷いた。ヴィクターは魔導トラックを借り受けてC.J.を医者に連れて行った。

●窓口業務お願いします!
「……どうしたものか」
「もうやばいんですよぉ……C.J.さん、僕がやっとくから置いといてって皆の雑務引き受けてたんですけどぉ……すごいギリギリで仕事回してたみたいで……ほんと最近色んなことが起こりすぎてたじゃないですか……」
「疲れが出たな……ミコ、君、これできるかね?」
「できますけど、窓口が……」
 ヴィクターがC.J.を連れて出発すると、カウンターの中でR.J.と平坂みことがひそひそと相談し始めた。
「大丈夫……?」
 ナンシーが様子を窺うように声を掛けた。R.J.はちらり、とハンターたちの方を見ると、なにやら依頼書を書き始める。しばらくして書き終えると、彼はそれを他の依頼書と一緒に貼り出した。
「君たちにこんな仕事を頼むのは非常に恐縮なんだが、窓口職員が一人倒れた。今医者に行っている。彼がやっていた、オフィス職員じゃないとできない仕事を平坂と私でやるから、窓口が三人欠員する形になる。何人か手伝ってもらえないだろうか? もちろんボランティアじゃない。報酬は出す。検討してほしい」
 そう言うR.J.の顔も、どことなく疲労の色が見えているのであった。

●どんな依頼が来てるの?
「とりあえず、この三件の依頼だ。まずは依頼人や目撃者から話を聞いて要約してくれ」
 R.J.は集まったハンターたちに、三枚の依頼書を見せた。
「まず一つ目。川に出たでかいサワガニ雑魔の討伐だ。三人から四人募集する。えらく取り乱した依頼人だ。とりあえず喋らせて、そこからとっかかりを掴んでくれ」
 もう一枚。
「二つ目。フマーレ近郊に出たシェオル型歪虚の討伐。幸いにも出たのは一体らしいが、私たち一般人には一体でも脅威だからね。フマーレは歪虚襲撃で火事も起きたことがある。その注意喚起も頼む。これは四人から八人募集だ。まあ、当然だがこちらも取り乱しているな……」
 その依頼書もテーブルに載せる。
「三つ目。これは戦闘じゃない。ぎっくり腰になってしまったおばあさんの畑仕事を手伝って欲しいという依頼だ。三人から四人募集する。青菜を育てる為に耕したいんだそうだ。お孫さんが豚の貯金箱を持ってきている」
 R.J.はハンターたちを見回した。
「ハンターだから見えてくる疑問点や注意点もあるだろう。よろしく頼むよ」
 それから、彼はちらりとオフィスに置いてある魔導伝話を見た。ヴィクターから連絡はない。
「……まあ、心配するほどのことでもない……」

リプレイ本文


「わぅぅ。お風邪ひいちゃったら仕方ないです。C.Jさんにはゆっくり休んでほしいです……」
 アルマ・A・エインズワース(ka4901)はヴィクターに引きずられて行くC.J.にそう声を掛けて見送った。
「……倒れる時に具合が悪かったと気づくタイプかもな」
 と、肩を竦めるのはレオーネ・ティラトーレ(ka7249)だ。彼はR.J.に向き直ると、
「じゃあ、聞こうか。どんな依頼があるんだ?」
「とりあえずこの3つについてだ」
 R.J.が今急ぎで説明しないといけない依頼について説明し終えると、時音 ざくろ(ka1250)は、
「そしたら、ざくろたちも制服とかに着替えた方が良いのかな?」
「必要はないが、制服着た方が引き締まるなら用意させよう。ミコ、予備の制服あったかね?」
「多分あると思うんで持ってきますねぇ……」
 平坂もなかなかに疲れているらしい。なみなみコーヒーを注いだマグカップを置くと、バックヤードの方に立ち去った。
「まあ、とりあえずこんな依頼があるらしいと言うことでハンターも集まっている」
 R.J.はハンターたちの後ろを指した。
「ナンシーとマシューはサワガニの話に興味があるようだ」
「でしたら、その説明は私がしても良いでしょうか」
 穂積 智里(ka6819)が挙手する。ナンシーも、智里が受付の内側にいるのを見てにこにこしながら手を振っている。
「ああ、構わない。制服が必要なければもう行ってきてくれ。待たせない方が良い」
「わかりました。お茶はありますか?」
「バックヤードにあるよ。ミコに聞くと良い」
「じゃあ、ちょっとお邪魔しますね」
 智里も裏に向かって行く。
「さて、次はシェオル討伐だが……殺意が高いハンターが多いな。ヴィルジーリオ、潤、エド、他に5人だ」
「……でしたらファイアエンチャントで攻撃力上げましょうか。私も、杖が鈍器になりますから殴りに行けます」
「貫徹の矢でも使えば防御力ちょっと下げられるわねぇ。刺突でぶっ刺しても構わないけど。ていうか、びるさん、魔術師ってなんだったかしらって気分になるんだけど」
「俺は首取れれば何でも良いかな~」
 漏れ聞こえる会話がかなり不穏である。
「わう! でしたら僕、その依頼ご説明しますです!」
「俺もそちらに回って構わないか? 参加者も多いことだし」
 アルマとレオーネが立候補した。
「じゃあ、ざくろはおばあさんの畑仕事だね」
「畑仕事には君が助けたアルトゥーロや、この前ゴーレム討伐で同行したハンクも来る。良い塩梅じゃないかね? ではよろしく頼む」
「お待たせしましたぁ……ざくろさんこちらをどうぞぉ」
 そこに、平坂が戻ってきて畳まれた制服を差し出した。
「わ、ありがとうね。……ふぇ? これって女性職員用じゃ」
 肩の出た服はどう見ても女性用である。
「ああ、でも依頼人さんもハンターも来てるし、今から変えて貰う時間無いよ」
「ざくろさんなら何着ても似合いますからぁ……だいじょーぶだいじょーぶ」
 目に映る光量が減っている平坂であった。


 智里はお茶を淹れると、まだうろたえている依頼人にそれを差し出した。既に、浄化関連のスキルを使用して鎮静と回復を図っているが、スキルの効果というよりも、自分の為に女の子が時間を使って親身になってくれた、という事実の方が効いているようである。
「御依頼ありがとうございます。お怪我もなさって大変でしたね。すみませんが、もう少しお話を伺っても宜しいですか」
「お、おうよ。何が聞きたい?」
 出されたお茶を飲みながらふんぞり返る依頼人。智里は立ち上がり、
「川の深さがこの位」
 膝の辺りを指し、次に足の付け根の部分を指した。
「そこから見えていた雑魔の甲羅の高さがこの位、と言うことでよろしいですか」
「んー、まあそんな感じかね」
「貴方は川の中にいましたか? 川で何をしていましたか」
「釣に行こうと思って丁度行ったところだったから、川の中にはいなかったよ。岸かな」
「貴方が棒で殴ったのは当たった、ですね?」
「おうよ。ボコッと、こうぶん殴ってやったのさ」
 再現するように、依頼人は腕を振り回して見せる。
「雑魔が殴り返してきた時、両方の鋏で殴られましたか?」
「いや、片方だったね」
 依頼人は思い出すように天井を見上げながら言った。
「水を掛けられて足が滑ったりしませんでしたか? 近づいてきたのは3匹、でも殴る時に3匹に囲まれることはなかったですか」
「幸いにも滑らなかったけどな。俺はな。あんまり激しく動くと、石を踏んでこけるかもしれねぇなぁ。1匹と俺が殴り合ってる間に残りの2匹が出てきたって感じだったな」
「どうもありがとうございました。ハンターを派遣してきちんと退治しますのでご安心ください」


 依頼人の傍から離れると、ナンシーたちを手招きする。
「ナンシーさん、マシューさん。今日はお二方と一緒に行けなくて残念です」
 その時、智里は背後から怨念のようなものを感じた。ちらりと振り返ると、げっそりしたR.J.が「行きたいとか言ってくれるなよ。言うなよ。言わないよな」と目で訴えている。この辺がC.J.との血縁を感じる。智里は頷いて見せると、またナンシーたちに向き直った。
「その分一生懸命聞き取りしましたから」
「うん。ありがとう。あたしたち、サワガニが出たってことしか聞いてないんだけど、どんなもんなの?」
「はい。川の中を横歩きで近づいてくる蟹型雑魔、最低3体以上の討伐です。もしかしたら、依頼人さんが逃げたあとにもっと出てきたかもしれません」
「なるほどね。わかった。増えてても驚かないし、3体しかいなくてもちょっと警戒しとく」
「そうしてください」
 智里は頷くと、詳細な説明に入った。
「体高1メートル程度、移動はそこそこ早いですが、水から上がるのに多少の忌避感があるようです」
 依頼人を追い掛けてこなかったことからそう類推した。
「岸で戦うのが良さそうですね」
「そうかもしれません」
「わかった。あたし遠射使おうかな」
「水を吹くので川に入らずとも足場に注意が必要かもしれません。殴打攻撃は一般人が打撲で済むレベルですが、素早さもあって避けにくいかもしれません」
 マシューが腕を組む。
「そうすると……ますます遠距離攻撃の方が良いかもしれませんね」
「だね。遠距離から撃ち合いになるかな」
「防性強化、防御障壁あたりはあった方は良いでしょうか」
「かもしれません。早めに決着がつけばそれに越したことはないと思うんですけど……」
「了解しました。ではスキル調整後、行って参ります」
「それでは皆様、ご武運を」
 智里はそう言って一礼するのであった。


「まあ、とりあえず水でも飲んで」
 レオーネはそう言ってミネラルウォーターを差し出した。
「ああ、ありがとう!」
 依頼人は、水を飲んで落ち着いたらしい。
「わふ、わふ。落ち着いてご説明お願いしますですっ」
 もう一度、起こった出来事を話してもらう。メモを取るのはレオーネ、ふんふんと親身になって聞くのはアルマだ。
(気になるのは工場だな)
 レオーネは聞いたことをまとめながら、ペンを顎先に付けた。笑みを見せて、
「火を使う工場……人が出入りしているの見たことある? 忙しそう?」
「人はあんまり見たことはないけどぉー……しょっちゅうもくもくしてるから忙しいんじゃないかしら?」
「近くを歩いてて何か音や匂いとか感じたことは? ずっと昔からある工場なのかい?」
「私、最近引っ越してきたのよ。元々はヴァリオスの方に住んでたの。フマーレが工業都市だって言うのは知ってたけど、ほんと、絵に描いた様な工場街ね。でも、結構サビが浮いてるから古いんじゃないかしら。別にすごく異臭がするわけじゃないわ」
「金属工業か何かかな……薬品は使ってなさそうだな」
「そう言えば、お怪我したハンターさん、どんな感じのお怪我でしたか?」
「えっ……ど、どんな感じ……どうかしら……吹き飛ばされてぐったりしてたけど……生きてはいるはず。生きてるのよね?」
「亡くなったとは聞いてないから安心してくれ」
(R.J.さんに質問した方が良さそうですー?)
(そうだな。もしやばい怪我なら聞かせない方が良いだろう)
 アルマはそっと席を立った。平坂と一緒にうなりながらC.J.の仕事をしているR.J.の肩をちょんちょんと突く。
「どうしたかね? エドと行きたいとか言ってくれるなよ? 思ったよりこっちの仕事が多くてね。今日はもう受付に立てそうにない」
「わうー……我慢しますです。あのですね、シェオル討伐で、ハンターさんが大怪我したって聞いてたんですけど、そのハンターさん、重体です?」
「ああ。交戦中に戦闘不能、そのまま戻って病院に担ぎ込んだら重体と判断された。死ぬほどではないがね。他に何か必要かな?」
「だいじょーぶですっ! ありがとうございますー!」
 アルマはぺこんと頭を下げると、元の席に戻った。
「ハンターさん、お怪我は酷いみたいですけどまだ生きてるですっ! 安心して下さい」
「良かった! ところで、次は何人で倒しに行ってくれるの?」
「8人だ」
 レオーネはハンターたちを振り返る。
「……まあ、爆殺は避けた方が良さそうだけどな」


「エドさんですー! おしごとですー?」
 アルマはエドを見付けるとむぎゅ! と抱きしめた。頭を撫でくり回す。
「そうだよ! アルマも一緒?」
「わぅっ、今日の僕は戦いじゃなくて受付さんです! がんばるです!」
「えっ、受付やんの!? 接客業とか俺絶対無理。あ、でもそうだよな~モンスターカスタマーとかデルタレイで一発だもんな」
 自分のやりたいことに置き換えるな。
「……わぅぅ、いっそ僕も行きたいです……。皆さん、ちゃんとご無事で帰ってくるですよ!」
「はーい!」

「さてさて、お仕事内容の説明です。シェオル型の討伐。1名大きく負傷した者が出ているので注意して対応に当たる事。孤立はお勧めしない、です」
「うーん、なら、衝撃波の方が良いかしら。刺突でぶっ刺してやろうと思ってたんだけど」
「複数対象より範囲攻撃の方が良いかもしれないです! 2メートルを超える大型である可能性が高いので」
「そしたらファイアーボ」
「フマーレでは歪虚襲撃で火事も起きた経緯から住民感情も考慮して火気厳禁」
 ヴィルジーリオの言葉をぴしゃりと封殺したのはレオーネだった。
「です」
 アルマも頷いている。
「それから付近に火を使う工場があり、かつそちらにシェオル型を向かわせてしまった場合被害が拡大する恐れあり、戦場の位置取りに留意して戦闘を行ってくださいです」
「至近距離で撃って敵に当てれば問題ないという話ではないから注意して欲しい」
「何で私を見るんですか!?」
「エーヴィオダケノコトジャナイサー」
「棒読みだ! ぐぬぬ……では、ブリザードと収束魔にして味方の位置取りに応じて使い分けましょう。行動阻害も狙えますからね」
「それとですね、敵さんの攻撃なんですけど、殴打による2スクエアノックバック攻撃、鋭い爪と牙での引っ掻きと噛みつきがあるみたいです。薙ぎ払い系統等、まだ判明していない攻撃方法がある可能性があるので注意する事! です!」
「オッケー!」
 エドが両手を挙げた。
「アルマからのレクチャーだから勝てると思う!」
「頑張ってくださいですー!」
「首取ってくるから!」

 出発直前、レオーネはヴィルジーリオの肘を引いた。
「なんです? ちゃんと炎魔法は置いて行ってますよ」
「そうじゃない。窓口代理の仕事は一旦休憩して友達として一言。ヴィオ、大怪我しないで帰って来いよ」
「はい、もちろん」
「大怪我したら髪という髪を全て三つ編みにしてゆるふわヘア司祭にしてやる」
「なんですって?」


「じゃあ、もう一回ざくろにお話聞かせてくれるかな?」
「うん。おねえちゃんが来てくれるの?」
「えっと、ざくろは受付で別の人が行くけど……って、ざくろ男だからね」
「そうなのー?」
 豚の貯金箱を膝に置いた少女は首を傾げた。後ろでは平坂が「ざくろさん目線下さい!」とか叫んでR.J.に連れ戻されている。
 少女はもう一度、順を追って説明した。
「あと、おばあちゃんは人にすぐお茶だそうとする」
「気遣い屋さんなんだね」
「そうなの」
「畑仕事の注意点とかあるかな?」
「ミミズがいっぱい出る……」
 渋面を作る。これについては、現地で聞いた方が早そうだ。ざくろはくすりと笑うと、少女の頭を撫でた。
「じゃあ、ハンターさんに説明してくるね。ちょっと待っててくれるかな?」

「いらっしゃい、畑仕事受けてくれるんですね、ありがとうござ……」
「ざくろさん……? えっと、その格好は……?」
 ハンクは女性職員の制服を着ているのが、この前ゴーレム退治に同行したざくろだと気付いて目を瞬かせた。アルトゥーロも、自分が死にかけた時に駆けつけてくれたハンターだと気付いて目を瞬かせている。
「いや、この格好は依頼とは関係ないし、気にしちゃダメ」
 顔を真っ赤にする。
「と、とにかく説明するね! ぎっくり腰になったおばあさんの畑仕事。1アールで青菜を植えるために耕して欲しい、肥料の仕込みまでやって欲しいって言う依頼だよ」
「それなら僕でもできそうです」
 ハンクがほっと胸をなで下ろす。
「他に畑へのこだわりとかあるかもしれないから、それは現地でおばあちゃんに聞いて貰えたら。あと人が来るとお茶を出したがる世話焼きさんみたいだけど、腰痛めてるらしいから無茶させないようにも気を付けてて貰えると……」
「ご老人にはよくあることですよね。気を付けておきます」
「他にも、ぎっくり腰に良く効く何かとか、楽な姿勢教えてあげられても喜ばれるんじゃないかな」
「ぎっくり腰って何が効くんだろう……ちょっと調べても良いですか?」
「うん。調べてから出発しようか」
「ざくろさん、ありがとうございました。お孫さんと出発で良いですか?」
「そうだね。待ってるから行ってあげて」
「わかりました。行ってきます」
 ざくろは四人を見送った。ふう、と一息つくと、目の前に人影が現れる。
「ほえ?」
「あらぁ、お姉さん可愛いわね。わたし、これからシェオルをぶちのめしてくるんだけど、戻って来たらごはんでもどぉ?」
 藤色の袴を穿いた闘狩人だった。
「藤代さん、何してんですか」
「お友達がほしいのよぉ。わたし、根無し草だからあんまりお友達がいなくって」
「いやざくろ男、男だからっ!」

 ハプニングは(主にざくろに)降りかかったものの、ひとまずハンターたちは窓口業務を遂行した。一日が終わり、R.J.が裏から出てくる。
「いや、助かった。おかげでこちらの仕事も一段落しそうだよ。また忙しくなったらお願いしたい。その時はよろしく頼む。今日はありがとう」
 出発したハンターも、三々五々帰ってくる。ひとまず、無事で済んだようだった。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • セシアの隣で、華を
    レオーネ・ティラトーレ(ka7249
    人間(蒼)|29才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
レオーネ・ティラトーレ(ka7249
人間(リアルブルー)|29才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2019/06/18 21:54:10
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/06/14 19:49:01