知追う者、結婚式の準備する

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2019/06/18 07:30
完成日
2019/06/25 22:24

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●結婚式
 大江 紅葉は各地情勢等を見た後、外に目を移した。雨が降り、庭に生えた新緑を濡らしている。
 歪虚支配地域から脱し、負のマテリアルの汚染から抜けてきたという実感がわく。
 新たな生命の息吹に未来を見た気がしていた。
「とはいえ……エトファリカだけでなく……この世界のこと、リアルブルーのこと……さまざま関わっているのですよね」
 以前からわかっていることではあった。自分の生活を考えると、まず、国のこと、かかわりのある国のことということで意識は止まる。
「……戦いが続くとはいえ、日常を止めることはできません」
 戦いも必要だし、自分たちを守ることも必要だ。
 だからこそ、将来を考え観光も重要と位置づける。考えることは必要とは言え、後回しでいい。
 日常として必要なのは食料を得ることと子どもたちの教育だ。
「……学校は大爺やたちに丸投げで良いのです」
 ハンターの助言もあり、里の中に学校はとりあえず作った。最低限を教えるだけならば、大江家の隠居家臣たちがやれる。
「光頼殿たちのおかげで警備はしやすくなりました」
 武家の松永 光頼とその家族を含む一門が拠点として選んでくれたことは助かっている。
 大江家がいくら武力を持っていたとしても、組織化されていたのは紅葉が小さい頃の話である。そのときの手順や必要だったことなどは天ノ都での避難生活中に失われている。規模が小さくなったのだから致し方がない。
 自衛の力を得るには、現在も武力を持ち知識があるところがいるのは助かっていた。
「……はあ……やることはたくさん、そして、人手不足……猫の手を借りたい……」
 虎猫の一匹がやってくる。そして、紅葉の近くでぽてっと口に咥えていたものを見せてくれた。
「……え、偉いですね! そうです、その意気です! あなたが働いているということは理解したので、食べていいですよ」
 虎猫を褒めに褒め、ネズミを持って帰るように指示したのだった。

●悩みどころ
 大江家の家臣の一人である杉 雪江は非常に悩んでいた。祖父母も父母も悩んでいた。
「結婚はこっそりするわけにはいきませんよね……」
「……式をあげないという雪江の判断はいいとしても……」
 雪江は都にいるときから付き合いがある男性・良太と世帯を持つことにしたのだった。
 そこまではいいけれども、宗主が結婚できていない現状に一族は悩んでいた。
「紅葉さま、松永 光頼さまと結婚してくれるといいのですが」
 それは家臣一同が気づいているけれどもどうしようもないことだった。
 光頼と仲良くなる前ならば、次男三男の公家なり武家なり、適度に見つけてきてお見合いもあり得た。いい人ならそれで良いということで。
 しかし、光頼と仲良くなったことで、紅葉の男性を見る目は確実に変わっているはずである、というのが家臣一同の見方だった。
 実際、二人が仲がいいというのは、大江家以外に紅葉の師匠一家やその家臣、里に住む人も気づいている。
 光頼の弟の光月は何かにつけて、紅葉との間と取り持つかのような動きを見せているのだが、ことごとく失敗しているし進展がない。
 光月の失敗は、噂によると、話の切り出し方の失敗で、光頼は弟が紅葉を愛していると勘違いしたということだった。
「里に住む人の印象は?」
「それが、とっとと結婚すればみたいな……」
 ざっくばらんに杉一家は考える。しかし、答えは出ない。
 よさそうな案が出ていればすでに誰かが始めている。
「とりあえず、雪江と良太君については宗主に言っておこう」
 家族会議は終了した。

●依頼
 紅葉は杉一家の話を聞いて「結婚式はするべきです」と言い切った。そのため、先陣切って準備を始める。
 紅葉の言い分としては社会情勢がどうあれ、未来がどうなるかわからないなら、今を大事にするべきだし、祝い事をすることで少しでも楽しくなろうというのだった。
 紅葉自身が「料理作ります」とウキウキしているという。結果、家臣たちは遠回しに包丁を取り上げる為、虎猫と柴犬の頭数数えを頼んだ。結婚式の当日に。
 その護衛を光頼に頼むという流れがあったが、皆で食べる食べ物を狩る方がいいだろうという提案を断り切れなかった。
 まさにその通りだったので。
「ということでな……人手を少し借りたいんだ」
 天ノ都のハンターオフィスで紅葉の師匠である吉備 灯世が職員に言う。
「まあ、私も戻るんだけど……手伝いといっても、大したことはないが……できれば、あの二人の状況をどうにかしてほしい」
「はい?」
 結婚式の手伝いを頼まれると思っていたため、職員は素っ頓狂な声を出した。
「紅葉と光頼殿のあの、つかず離れない何ともいえない間柄をどうにかしたいんだ……。互いにあきらめるにしても何にしても、話が進まない」
「つまり、ハンターには間を取り持てと」
「うーん、まあ、明確にはっぱかけるか、互いの気持ちを明確に聞き出して伝えるとかだな」
 職員は灯世を見つめ、口に出さないが「自分でやればいいんじゃないかな」と思った。
 ただ、紅葉とのかかわりがある灯世が口を出すと、角が立つ可能性があると気づいた。
(公家武家がもめてた時だと、武家を一個つぶす気かとか、公家を乗っ取る気かとかになりそうだよね)
 現在はそこまでないとしても、跡取り息子と宗主という厄介な立場は存在している。その上、灯世の立場は紅葉の師匠である。
「分かりました……まあ、ハンターには頼んでみますが……」
「かたじけない」
 職員は依頼を記載した。
 杉家の結婚式の準備が表の依頼で裏は紅葉と光頼の間の進展を促す依頼を。
「すっごく、簡単なのに、面倒くさい感じの依頼ですね……」
 職員の感想に灯世は苦笑して同意したのだった。

リプレイ本文

●問題はどれだ
 シレークス(ka0752)はお祝いモードのはずなのに、どこかどんよりとした影が漂う新婦一家を見て理由を問う。仕えている大江 紅葉(kz0163)の結婚話が進まない中の式に若干迷いがあるという。別に気にすることはないと言うのが、それでもどこか忠義を考えると遠慮が生まれるのだった。
「やれやれ、世話が焼けるとは、このことでやがりますねぇ。誰も望まぬ展開は、大精霊とて見過ごしてはくれませんですよ?」
 シレークスは煮え切らない二人に対し決意が固まる。
「やれることはやってやるぜです」
 シレークスとしては紅葉も松永 光頼も、本当のところはどうであれ、このままでは自分に嘘をついて生きている状況になっていく。そうなることは見過ごすことはできなかった。
 サクラ・エルフリード(ka2598)は料理の手伝いをしようと思い、張り切って台所に向かおうとしていたが、友人のシレークスに全力で止められる。
「ここで手伝えることだってあるはずです! それに、色々教わることができるかもしれません」
 止められているところに、紅葉が柴犬と虎猫の好物と筆記用具を持ってやってくる。
「人間、許されることと許さないことがあるのです」
 訳知り顔で紅葉が言う。
「そ、それは、料理ということですか」
 サクラは包丁を握ると包丁が空を舞うという特技を持っていた
「世の中は不条理に満ちているのです」
「私は調理道具さえ使わなければ問題なく料理できるのですが……」
「私だって刃物や火の危険さくらい理解しているのですが……」
 サクラと紅葉は溜息を漏らした。
「そうですね……しょうがないですね……」
 サクラはあきらめる。
 理由はともあれ、やろうとしたことを止められることは悲しいという紅葉の気持ちは分かる。
 サクラは狩りに出かけるメンバーに合流した。

 レイア・アローネ(ka4082)は友人のブリジット(ka4843)とリラ(ka5679)とともにやってきた。
 レイアは紅葉たちを知っているため、応援できればという気持ちだった。
 リラはレイアと一緒の紅葉の護衛につく。話に聞く紅葉と光頼の仲も気になる。
「ちょっと露骨なくらいに発破をかけてみます。立場を考えると難しいのでしょうが、それはそれです」
 拳を握る。
「ご結婚はとてもおめでたい話です。料理の手伝いをしてまいりますね」
 ブリジットは二人と別行動をとる。刀の修行でエトファリカには来ていたため、料理に対しても知識はある。
「味付けはある程度まねることはできると思います」
 ブリジットは台所に向かう。
「じゃ、紅葉と合流するか」
 レイアとリラは通り過ぎる紅葉に声をかけた。

●悪巧み?
 星野 ハナ(ka5852)と穂積 智里(ka6819)は紅葉を台所から引き離す相談をしていた。紅葉が通りかかったことで行動開始となる。
「紅葉さん、紅葉さんのおうちの方のおめでたい話です」
「おめでたい話ですぅ。存分に腕を振るいますよぅ」
 智里とハナは無難に会話を切り出した。
「それはそうと桜鯛の季節は過ぎましたけどぉ、やっぱりお祝いには鯛だと思いますぅ。紅葉さんー、鯛あるだけ買ってきてくれませんかぁ? 大きい鯛は塩釜でぇ、小さい鯛は石焼鍋や鯛飯にしたいですぅ。他の海鮮も買い占めてくださいぃ」
「一緒に買い出しに行きませんか」
 紅葉はきょとんとすると、後ろからついてくるエルバッハ・リオン(ka2434)を見た。
 エルバッハは見られても困るところだし、智里とハナが妙にアイコンタクトをとってくるので何かがあるのは感じる。
「私はあくまで護衛です。紅葉さんの行動は紅葉さんが決めてください。ただし、危ないので遠出は控えてくださいね」
 紅葉はうなずく。
「では、虎猫と柴犬を数えるという非常に無意味なことを片付けたら、船を出している人のとこに行ってきましょう」
「隣の村とかはないでしょうか?」
「ないです」
 智里の確認に紅葉はきっぱりと言う。
 智里は二秒ほど考え「では、行きましょう」と紅葉を連れ出した。目的が狂うが出かけないともっと問題だ。
 ハナは紅葉が離れたのを見て、出かけ間際の松永 光月を手招きした。
「光月さんー、ちょっと悪巧みにのりませんかぁ」
「……え?」
 光月は一歩後ろに下がった。
「紅葉さんと光頼さんの間が進展しないということについてですぅ」
 光月はなんとも言えない顔になる。
「それですぅ『兄上がさっさと紅葉さんと結婚してくれればぁ、僕もあの人と結婚できるのに』ってぇ、光頼さんに聞こえるようにぽそっとつぶやいてほしいんですぅ」
「う、うーん」
「本当にお好きな方がいれば堂々とその方の名前を挙げればいいですしぃ、いないなら『兄上の祝言が済んで僕が当主になるまで言えない相手』だって言いきっちゃえばぁ、光頼さんなら突っ込まないと思いますぅ……あ、当主になるのお嫌じゃないんですよねぇ?」
 ハナは畳みかけ、悩む光月の背中を押したのだった。

●一応、仕事
 ブリジットは台所にいる人たちにあいさつをする。
「ブリジットと言います、よろしくお願いしますね」
 それから手伝いに入る。
「お料理の味付けはどういった感じか教えてくれますか?」
 なるべく風習にあうもので作ろうと考えていたため、聞いた方が早い。エトファリカに来ていたとしてもここに来るのは初めてなのだから。
 そのあたりは必要に応じて指示や助言が飛んでくる。
 ハナは台所に入ると、すでに食材があることに気づく。
「こ、これは。まあ、狩りに行くのは行くとして、そうですよねぇ」
 あまりハナがすることに影響はなかったので、屋敷の者たちに確認してから作業を開始する。
「この魚は使ってしまっていいのですぅ?」
 ハナが作りたいものを説明した後、それで構わないということになった。
 鯛の下ごしらえ、そのあとは、焼く、汁物、鯛飯などを順番に作っていくことになる。
「肉類は後なのですぅ」
 そのための手順は重要だし、余裕は必要なのだ。

「どうやって、虎猫や柴犬のを数えるんですか?」
 リラの言葉の直後、紅葉は猫の好物を手にした。
「トラたちー、都のお土産、美味しいカリカリですよー。あと、王国から仕入れた猫缶もありますー」
 紅葉は缶をたたいて大きな声を上げた。
「猫の好物だな」
 レイアは苦笑する。
「匂いしないと来ない気もします……缶開けてませんよね」
 智里は首を傾げた。
「なぜ、シーチキンはシーチキンの缶詰、猫が入っていないのに猫缶……」
 不意に、紅葉がつぶやいた。
「く、紅葉さん!? それは中身か、食べるものかによるのだと思います」
 智里の声が裏返ったが、一考えた。
「来ましたね……」
 エルバッハは軍用双眼鏡を目から離した。
 猫たちは紅葉たちの回りに集まる。ついでに柴犬も集まっていた。
「いいですか、順番を守らないとあげませんからね!」
「守ってくれるのか?」
 レイアの疑問はすぐに解決される。並んではくれないけれども、おとなしく待ってはいる。
 そのおかげで数え終えるのは早かった。
 智里はそれでも結構時間がかかっているため、魚は手に入らないと考えると溜息が漏れた。
「さて、行きましょうか?」
 紅葉は荷物もなくなり軽くなった足取りで、歩き始めた。
「里の店で買い物が限度でしょうか」
「そうですね。で、何が欲しいですか?」
「あれ? 魚とかは?」
 智里の言葉で紅葉は理解したらしい。
「材料はさすがにありますが、追加で用意するということは別に悪いことではありません」
「いえ、行きましょう! 何か贈り物とかあるかもしれませんし」
 智里は台所から紅葉を遠ざける為、手を取り、出かけるのだった。

 狩りに関わったのは光頼と光月、それと有志の数人だった。
 里の外れ、砦が近いところの草地にやってきた。枯れ草だけでなく、新しい物も見られる。
「大物が仕留められるといいですけれどもね……せっかくのお祝いの席ですし」
 サクラは呟く。
 歪虚支配地域の名残があるのか、あまり、活気は薄い。それでも、生命力の強い竹や植物が見える。
「大物は難しいかもしれないが、祝いの席に少しでも華があるように取れればいい」
 光頼は告げる。この辺りでどういうものがいるか言った。
 獲物はシレークスとサクラの連携を中心に、見つけ、獲る。
「その命、残さず糧にさせていただきますです」
 シレークスはとどめを刺した。

●当たって砕けろ
 無事、獲物も獲れたところで、里に戻ろうとする。
「光月、どうかしたのか? 浮かない顔をしているが」
 光頼の声をかけられ光月は「兄上は鋭いのに鈍い」と嘆息する。
 ハナの指令をどこで実行しようか悩んでいたのだが、そんなこと言えない。悩みは恋愛だと言ってしまえばいいのだが、兄をだますことになると考えると心苦しい。
「てめぇと紅葉の話は聞いてやがるです」
「……!?」
 シレークスがズバッと切り出した。光頼が何のことかと言う顔になり、光月が任務から解放されたとほっとした。
「てめぇはこのままでいいのかです。気持ちも確認せず、身を引くとなると自分自身に一生消えない枷をはめることになるですよ!」
「シレークスさん……直球……でもまあ、自分の思いを隠し続けるのも辛いですよ……?」
 シレークスにサクラが肯定する。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、何のことか」
 光頼は慌てる。その顔は何のことを言われているかはわかっているようだった。
「てめぇが一番わかっていやがるです」
「あ、いや、誰にも言ったことがないのになぜ」
 光月が状況証拠を告げる。上司たちや自分のところ家臣たち、大江の家臣たちの話から、光頼が紅葉に思いを持っていることがバレバレだという。
「いや、それは!」
「おめーは今、逃げようとしているだけでやがります」
「それぞれの立場が」
「そんなことは後からでも考えればいいことでやがるです。何も告げないまま終わらせられる方に不誠実極まりない行為でやがります」
「紅葉殿に迷惑を……」
「そんなこと知らねーです! 紅葉は紅葉、テメェはテメェです。男ならうじうじせず、もっと正面から気持ちを伝えてみせろです! それで砕け散ったとしても、その方がまだあとくされもねーです!」
 シレークスの啖呵に光頼は言葉を詰まらせた。
「駄目だと思っても、シレークさんの言うように言うだけ言ってみるべきだと思います」
 サクラがやんわりと押す。
「自分のことだけを守ろうとしているんじゃねぇぞゴラァ!」
 シレークスは言葉を残し、先に戻り始めた。
「シレークスさん!」
 サクラは追いかけた。
「兄上……考えすぎです。紅葉様のことをもっと信用してあげてください」
 光月は帰るため兄を促した。

 里探検隊となってる紅葉たち。祝言という話題もあり、活気がより一層あるように見える。
「ぶしつけな質問とは思いますが、紅葉さん自身は結婚については考えられているのですか?」
 エルバッハの質問に智里がうなずき、紅葉は口を一文字に結んだ。
「宗家という立場であれば、このまま独身というわけにはいかないと思いますが」
「考えてますよ」
 紅葉は自分に納得させるようにうなずきながら言う。
「となると、結婚相手をどうするのですかですが、光頼さんはどうでしょうか?」
「はいっ!?」
「あの方はいい人だと思います。彼が紅葉さんのことをどのように思われているのかわかりませんが、お見合いをしてみたらどうででしょうか?」
 遠回しに勧めるが、先ほど紅葉が声を裏返したということは想定しているけれどもずばり言われるのは想定外ということだろうか。
 エルバッハはこれ以上言わない。
「そうでうですよ。身近で一緒にいていい人が一番です」
 リラがすかさず押し込む。
「紅葉さん、実は私は……したけれど、相手にそれを忘れられちゃったんです」
 智里の告白に紅葉は驚く。智里たちのことを知っているから。
「呪いのようなものだと思いますけど……」
 智里の淡々と告げる姿が痛々しいのか紅葉が肩を抱く。
「だから、もし、紅葉さんも好きな方がいるなら、悔いがないようにしたほうがいいと思います……」
 紅葉は黙っている。何を考えているのかは表情からもわからない。
「紅葉さんが好き、っていう人がいるなら言うべきです。お互いの立場が難しいというのもあるのかもしれませんが、それはそれです。まずは、当人同士の気持ちが重要ですよ」
 リラが押した。
「そうだな」
 レイアはうなずく。
 紅葉は苦笑して、一同を見渡した。

●穏やかな時
 持ち帰った獲物は手早く解体される。
「これからの料理のお手伝いは私も……」
「解体と違う流血はいらねーですよ」
 サクラはシレークスに止められる。
「駄目ですか……ちょっとだけでも」
「駄目だぜーですよ」
「ちょっとだけでも……ぶー」
「おとなしくしやがれ、です」
 何か危険を察知して、サクラは黙った。
「あの二人はどうなるんでしょうか」
「さあ? これ以上はわたくしたちには何もできねーです」
 空を見上げる。きれいな月が浮かんでいた。

 智里は料理を作っているハナに声をかける。いろいろなにおいが重なり、大変なごちそうだということを感じさせる。
「なんだか、紅葉さんに察知されて、連れまわされただけだったみたいです」
「材料はありましたので、大体想像はつきましたぁ」
 紅葉は勘が鋭いというのはわかっていたことであるが、自分の恋愛となると話は別だったのがよくわかる。
「紅葉さんには結婚の話をそれとなくはしてみましたよ」
「あとは、光月さんですねぇ。だますのは下手そうな感じですぅ」
「どうなるかはわかりません……こればかりは」
 智里とハナは料理の残りの手伝いに入る。

 料理の途中でブリジットはレイアとリラと話し、守備を聞く。
「無事終わったのですか?」
「まあな」
 レイアは何があったかを告げた。
「焚きつけたけど……紅葉さんは気付いているみたいでしたけどね」
 リラの言葉にレイアはうなずいた。
「結局はどうなるかなんて当人同士ですよね」
 ブリジットが台所での作業の話をする。
 時間は穏やかに過ぎていく。

 エルバッハは紅葉と光頼がいるのを見かけた。
「今日でなくともいいですが、状況が進むといいですね……皆、注目はしているのですから」
 鈍い二人には世話が焼ける。
 立場も追い打ちをかけていたのはわかる。
「かといって立ち聞きをするのも……」
 エルバッハは手伝いが必要そうなところに向かった。

 光頼と紅葉は縁側にいる。
「あ……」
「えっと」
 話しかけようとして互いに譲り合う状況になる。意を決したように互いに口を開いた。
「結婚して、私を支えてくれませんか」
「私は、これまで家のことやあなたのことを考え……え?」
 光頼は紅葉の言葉が聞こえ、口をつぐんだ。紅葉が震えているのに気づくと、光頼は自分が情けないと感じる。
 光頼は紅葉を抱きしめ、答えた。いつもの香がふわりと舞った。

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MVP一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークスka0752
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオンka2434

重体一覧

参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 咲き初めし白花
    ブリジット(ka4843
    人間(紅)|16才|女性|舞刀士
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

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マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/06/17 03:14:56
アイコン 相談
サクラ・エルフリード(ka2598
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2019/06/17 07:35:31