戦場のアマリリス~森林の攻略戦

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/06/24 07:30
完成日
2019/07/08 02:08

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング

●前回までのあらすじとその後
 ポカラ駐屯地での歪虚監視業務及び林業振興地整備事業を推進していたアマリリス商会義勇隊。昨年は巨大蟻歪虚の出現などで戦闘を繰り返し飛行偵察などで警戒していた。
 先月、北にある森の奥から近付いて来た大型の人型歪虚【クリスタル】を発見。即座にハンターのユニット部隊を招集し迎撃に当たる。
 この戦闘で勝利を収めるが、【クリスタル】は樹木を伐採し道づくりをしていたことが判明。その道を進軍していた砲撃戦部隊の援護射撃で【クリスタル】は退却し、ハンターたちも予定外の敵の出現による戦線拡大と継戦疲弊を避けるべく撤収した。
 後日、駐屯地での監視業務を義勇隊に委託していた魔術師協会広報部から飛行偵察部隊が派遣される。それにより敵砲撃戦部隊は甲羅に大小の砲台を載せた、10メートル四方サイズの大型の陸亀型歪虚【タートル】を確認。同時に小砲台からの対空攻撃を受ける。即座に偵察隊は撤退するがその時に大砲台からの遠距離射撃を受け大被害を受けた。
 ただし、この偵察で【タートル】は一体から増えておらず、【クリスタル】の戦線不在を確認した。

 これにより、敵が先月の戦闘以降動きがないのは戦力再整備と判断。
 【タートル】討伐の作戦案が模索されることになる。


●フラ・キャンディ、出撃
「……問題は対空砲より、森の中ぁ?」
 ポカラに駐屯するアマリリス商会義勇隊副隊長のキアンが元ならず者らしく、ひねり上げるような声をあげた。
「うん。ボクが戦ってきた敵はよくそうやって派手なことしてはこそこそ戦力整備してたよ」
 キアンに睨まれた形のフラ・キャンディ(kz0121)だが、まったく臆することなく無邪気に笑顔を見せた。小さな少女に大人びた態度を取られたキアン、う、と短く唸って態度を改める。
「巨大蟻の侵攻の時なんかは事前に察知できるくらいの前兆はあったけど、もしもそうならそれ以下のサイズの敵かな?」
 義勇隊のモータル隊長が首をひねった。
「そりゃそうだろうが、それは俺ら……いや、もう足は洗ったがまさに盗賊の手口じゃねぇかよ。歪虚がそんなことするか?」
「その歪虚、元ラパーチェ・ラーロって盗賊の頭目だったんだって」
「マジか!? ラパーチェ・ラーロってったらルモーレだろ? 伝説の盗賊団じゃねぇか! もしかして、まだいるのか?」
「ううん。やっつけたよ」
 フラの言葉に愕然とするキアン。さらにやっつけたと聞いて言葉を失う。
 それを尻目にモータルが言葉を掛けた。
「森の中は確かに気になるけど……危険じゃないかな?」
「ボク一人で行ってくるよ。困ってるんでしょ?」
「え?!」
 驚く二人に背を向け歩き去ろうとするフラ。
「大丈夫。偵察だけにするし、森の中を移動するのは慣れてるから」
「でも、俺もキアンも覚醒者だけどここを空けるわけには……」
 出発を止めるモータルの言葉。
 フラ、足を止めて肩越しに振り返った。
「ひとりぼっちは……慣れてるから」
 あるいは百年目のエルフとして故郷を追放されたときに見せた笑顔か。
 寂しさが、宿る。


●サムライ、出陣
 ここは同盟領農業振興地「ジェオルジ」の片田舎、「タスカービレ」。
「闇の密売人?」
 青竜紅刃流道場でグラスを傾けていたイ寺鑑(kz0175)は面を改めた。
「まあ、鑑さんもここにおるんじゃからそろそろ話してもええころかの、と」
 対面に座る高齢の男性が、特産のチクワをつつきながら返した。
 タスカービレの領主、セコ・フィオーリである。横には妻のハスミン・フィオーリもいる。
「何を密売するんです?」
「……密造酒の売買。密売人の名前は『ベンド商会』。わしらは余剰の酒が売れて、ベンドさんとこは安く仕入れてそれなりの価格で売る。ベンドさんが手続きしておるはずじゃから脱税酒ではないはずじゃがの」
 ふふふ、と領主。
「ここ、若者が流出して行き詰ってたはずですよね?」
「じゃからベンド商会からも見捨てられておったんじゃが、鑑さんが新たな商売始めたじゃろ?」
「ああ。……青竜紅刃流」
 鑑たちが立ち上げた村を外敵から守るための銃剣流派は、今では用心棒としての依頼も受けていた。
「歪虚と戦っているところがあるそうで、応援を頼まれた。これを断ると今後困った時に本当に見捨てられる。行ってくれんか?」


●フラの偵察
 イ寺鑑たち青竜紅刃流部隊の増援がポカラに到着するころ、森に一人で入ったフラは敵の砲撃部隊に最接近していた。
「はっ!」
 フラ、低木の茂みに咄嗟に隠れた。
 先ほどまで視線を巡らせていた場所に、丸太の胴体に蔦の絡んだ人型の兵隊が歩いて行く。
「ふうん。やっぱり派手な見掛けで注意を引いといてこっそり戦力を展開してるよね~」
 人型の兵隊のさらに向こうには、【タートル】の姿が見える。
「道づくりと同時に伐採した丸太を使って兵力を増やしてるって寸法だね」
 あったあったこういうの、という感じで感心するフラ。
 とにかくボク一人じゃどうにもできないから、と一時撤収するのだった。 

リプレイ本文


「実はね、敵の配置とか正確な数とかは把握してないんだ」
 ほら、ボク一人だからしっかり情報を持ち帰らなくちゃならないし、とフラ・キャンディ(kz0121)が言い訳していた。
 ここはポカラ駐屯地。義勇隊宿舎前。
「ま、大丈夫じゃない? でっかい亀一匹と護衛の丸太兵たくさんを倒せばいいんでしょ?」
 固まってりゃ話は早いし、そうでなければそれなりに戦うわよ、とキーリ(ka4642)。
「うーん、そうだね。先ずはあまり目立たずに隠れながら、森の中を進入していって、敵状視察って流れかな」
 霧雨 悠月(ka4130)、落ち着いた対応。
「そうなるかな? それより私も愛用武器のひとつに打撃武器はあるわよー」
 カーミン・S・フィールズ(ka1559)がフラの打撃戦用テニスラケットを見てそんな会話を振ったり。
「わ、見てみたいな♪」
「さすがに今回持って来てないかな~」
 きゃいきゃいそんな会話をしているが、その隣ではある人がやや深刻そうにしている。
「うー……」
 何度か迷った挙句、ついにその人、口を開く。
「うー、フラさん」
「え? なにかな、小太さん」
 その人こと弓月・小太(ka4679)に振り向くフラ。返事をしたもののばつが悪そうに視線をそらしている。
 小太、そんなフラの腕を取ってこっちを向かせて言葉を続けた。
「あまり無茶はダメですよぉ? 大丈夫か不安になっちゃいますからぁっ」
「う、うん。……その、ごめんね」
 そんな二人の手前で。
「鑑さーん! 久しぶりなの!」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)がイ寺鑑(kz0175)を見つけてだだだと駆け寄りフライングボディアタック。
「珍しいな、鑑。タスカービレの引きこもりは廃業かぁ?」
 ディーナが鑑の左腕を抱え込んだところでトリプルJ(ka6653)がやって来てハイタッチ。
「青竜紅刃流で結構出張してるよ。今日は一人だけど」
「ふーん。まあいいや、今日はよろしくな、鑑」
 後ろから肩組み背中をバンバン叩くJ。鑑はゲホゲホ。ディーナは見上げて「?」な表情だったり。
「おっと、そりゃそうと作戦は?」
 J、気を取り直して皆に聞く。
「とにかく現地に行ってみて、丸太兵の配置を見てからの対応になるんじゃないかな?」
 悠月、情報不足の状況から臨機応変の対応……あ、誰か腰掛けていた人が立ち上がったぞ?
 鞍馬 真(ka5819)だ。
「森に隠れながら最短距離で接近して奇襲」
 それが一番手っ取り早い、とばかりに魔導剣「カオスウィース」の柄に手を掛けている。
 つまり、正面からの直線一気!
(相変わらずね~)
 この様子に、カーミンが密かにニコニコ。
「楽しそうです!!」
 でもって、このシンプルな作戦に諸手を上げて大賛成な人が。
「奇襲戦法はニンジャにお任せなんだからっ!」
 ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)である。
 とにかく出発だ。

 森の中は瑞々しい新緑の香りにあふれ、木々と陽光が織り成す光と陰が鮮やかだった。
 そんな中、フラを先頭に道なき道を進んでいる。
「全身鎧で静かに歩くのは難しいの~……」
「私はニンジャだから隠密行動はお手の物です!」
 音を出さないよう変な格好で歩くディーナの横で、ルンルンが軽やかに草をかき分け進んでいる。
「そうだね、可動部分の接合面に布を少しかましてみようか。ディーナ、万歳してみて?」
「鑑さん、ありがとなの~」
 鑑に万歳するディーナの隣で、悠月は前を行くキーリを見ていた。
「キーリさんは……まさかそうくるとは思わなかったな」
 キーリ、マジックフライトで浮かんでいた。
「浮いて移動したら楽ちんよ~。ゆっきーもそうすれいいのに」
「僕は霊闘士だから無理だね」
 ここでフラが振り返った。
「見えた。あそこだよ」
 指差した先には蔦の絡まった丸太が並んで立てかけてあった。人里離れた森の奥ではありえない光景だ。
「フォウ、ほかにもいそうかしら?」
 カーミンはNo.4(ポロウ)(ka1559unit004)に確認。
 するとフォウ、大きな瞳で右から左へと巡らせた。警戒した様子は解かない。
「ふうん、見えないところにぐるっといるってわけだ」
「たぶん、あいつらもそのポロウと同じでマテリアル感知してるんじゃねぇか?」
 カーミンが相棒の動きを理解したところでJがにやりと推測を口にする。
「だ……だとしたら感付かれてるかもですよぅ」
「見つけた」
 小太が慌てたところで真が視線を遠くにしたまま前のめりになった。
「ホントだ。前はもう少し離れていたけど……あれが陸亀だよ」
 フラが改めて指差したずうっと先。
 木々の間にちらとだけ、大きな亀の甲羅が見えた。
「どうする? この人数だが……」
「砲撃されないように早急に距離を詰める」
 聞いた鑑を置き去りにするように真が出た。お供のシトロン(ユグディラ)(ka5819unit004)もぴょんと前に飛び出して複合楽器「バンドリオン」を演奏。明るく整然とした曲で皆を励ます。
 敵の丸太兵も気付き見る見る人型に変形。
 開戦だ。



「真さん、早すぎじゃない?」
 味方をも不意縁にするようなタイミングだったが、悠月がしっかり反応し真の右横についた。
「こういうのが好きそうなのがきみと……もう一人いたような気がしてね」
 やっぱりついて来たか、と悠月の方を見もせずに言う真。
「もう一人は……」
 悠月、Jさんかなと感じてちらと振り返ると……。
「あんまり俺に近づくなよ、巻き込まれるぞ」
 そのJ、左翼に開いていた。
 そちらサイドの丸太兵の足止めをするつもりだ。ソウルトーチでしっかり敵を引き付けてから、厚い重ねの長大な剣を構えた。
 古代大剣「ウェンペ」である。
 そこへ、丸太兵殺到。
「……まずは一発目ぇ!」
 一歩踏み出し助走とすると、迫る敵に向かって薙ぎ払いつつド派手にラウンドスイング!
 そこからさらに水平回転斬り、カーネージロアにつなげた。ガツン、カツンと蔦を斬り丸太を吹っ飛ばす。
 ――ガツッ!
 しかし、ここは森の中。大樹の幹に当たって回転が止まった。
 この隙に敵は斬れた蔦を伸ばしJの腕に絡めた。
「お、何だ?!」
「一人であまり無理をしないよう」
 びし、と絡められた腕を引っ張り蔦を伸ばしたところ、鑑がカットインしてそれを斬った!
「何だ、鑑。彼女の方はいいのか?」
「ディーナの方に行かせないよう、ここで体を張るんでしょ?」
「鑑さ~ん。この前ね、ブライダルフェアの試食会に行って、美味しかったけど試食だから1人前しか出して貰えなくて、すっごくお腹が減ったの。だからとっても食べ放題がしたいの! 食べ放題しようなの、鑑さん!」
 にやりと視線を交わしたJと鑑。その向こうをディーナが手を振りつつするすると前線へ上がっていった。
「ああ、しよう。だから頑張って」
「食べ放題はいいが、ぼんやりしてると俺の斬り放題に巻き込まれるぜ?!」
「そりゃ大変。退散するよ」
 再びラウンドスイングに入ったJ。鑑は前転し離脱。起き上がり際に銃を抜き敵を撃つその背後で、Jがまたもカーネージロアにつなげ敵を巻き込んでいた。

 一方、悠月。
「じゃあ僕はこっちへ」
 Jとは反対の右へ。
 こちらも丸太兵が迫っている。
 斬魔刀「祢々切丸」を構えて……おっと。
「君の歌に少し合わせようかな?」
 後にした真の方を振り返り、旅人たちの練習曲を奏でていたユグディラのシトロンを見て微笑した。
 そして、明るい演奏に合わせて歌をうたった。
 ファセット・ソングだ。
 突然演奏に歌がついてびっくりするシトロン。
「良かったな」
 シトロンは真が微笑して振り返ったのを見て、満足して主の後を追った。
 さて、悠月。
 丸太兵に突撃せず歌をうたったため後手に回っていた。
 すでに腕を振り上げ敵が突っ込んできているぞ!
 ――ピッ・シャーン……。
「ちょっとゆっきー、何ぼーっとしてるわけ?」
 横からキーリがライトニングボルトで一直線に敵を撃ち抜いた。左手に聖書「クルディウス」を開いて持ち右手で指差す様子はまるで高位の司祭がありがたい神託を……いや、高位の司祭がこんな肌色率高い外観なわけないような。
「私がいなかったらどうなってたことか……」
「……こうなってたんじゃないかな?」
 くす、とキーリに微笑し祢々切丸を構える悠月。黒い刀身に白銀の波紋が浮かんだ時にはすでに一歩目を素早く踏み込んでいた。
 その時、敵の一体はキーリからの雷撃から態勢を立て直し蔦を伸ばして切れた関節接合部を再構築。腕を振り上げ迎撃態勢だ!
 ――ずばっ、どしっ!
 敵の腕、遅い。
 疾風のように剣を走らせた悠月はすでにその次の敵に流れるような動きで向かっていた。腕は悠月のいた空間で空振りしていたずらに大地を耕すだけ。
「連れてこれなかった相棒の分も戦わないとね」
 それに、数を減らしてタートルの方へ行く人達が少しでも楽になれば、と次の敵も素早いステップで斬って一撃離脱のおいてけぼりだ。立襟ゴシックYシャツの飾り袖を踊るようになびかせ、颯爽と駆け抜ける。

 こちら、真。
 先頭を走るがこれを止めるべく数体の丸太兵が壁のように立ちはだかる!
「とにかく突破だ!」
 真、魔導剣「カオスウィース」と禍炎剣「レーヴァテイン」を抜き放ち、右に左に斬って道を開けた!
「行く手、邪魔しないでくださいよぉ。邪魔な木人は全部、撃ち貫きますぅっ」
 一列後ろからは、小太。
 蒼機弓「サクラ」から放たれた桜色の弓が前進しようとする丸太兵を貫きそれを押しとどめる。横ではお供の雪(ユキウサギ)(ka4679unit001)が兎杵「望月」を掲げて雪水晶。主人の小太の守りを固める。
 この隙間をフラとディーナが駆け抜けた!
 しかし、敵はその奥にさらにいた。
 フラとディーナ、敵の縦深陣にはまり四体に包囲される形になってしまった。
 その時!
「奇襲戦法はニンジャにお任せなんだからっ!」
 なんと、ルンルンが二人の後ろに影のように続いていた。
 カードバインダーから牡丹灯籠の呪符をドローし頭上に投げあげた!
「ジュゲームリリカル…ルンルン忍法戌三全集陣! 出でよ漂流者達、ババンババンバンと攻撃です!!」
 リリカルな光とともに符が稲妻となり敵に落雷する。
「さらにジュゲームリリカル、ルンルン忍法土蜘蛛の術!」
 ルンルン、絶好調。この隙に地縛符設置である。
「私も負けないのリリカルなの~」
 あ。
 ディーナが負けじと意味なくリリカル付けた!
 とにかくセイクリッドフラッシュの輝きで敵に止めを刺す。
「よし、もう少しだ」
 ここで真が再び先頭に上がった。
 木々の間から大艦巨砲主義的巨砲歪虚【タートル】の巨体がぬっそりと大きく現れた。
 敵との位置関係、正面!
 タートルは首を伸ばしてこちらを見たぞ?!
「シトロン!」
 真、右に軸線をずらしつつユグディラの名を呼んだ。すぐさま森の宴の狂詩曲が響いて来る。
「じゃ、ボクは左だね」
「フラさん、すぐに援護しますよおっ! 柔らかそうな所を狙ってみるのですぅ」
 二列目のフラ、左に軸線をずらした。その後ろから小太が高加速射撃で陸亀の顔を狙う!
 ――どすッ!
「手加減はしない!」
 真の全霊のマテリアルを切っ先に集めた刺突が敵の左頬を深々と抉った!
 ――ぴしっ、ドゴォ…。
「やったですよぉ!」
 敵右頬には小太の矢が刺さり、フラの打撃が入る。
『GGGG……!』
 タートル、いきなりの大打撃に……とんでもない行動をとった!



 ――ドゴッ、タカカカカカ……。
 何と、甲羅の上にある主砲と対空砲を照準もつけずに水平発射したのだ。
 真やフラたちはその高さより下にいるので直撃はないのだが、樹木に命中して炸裂。対空砲も枝に当たり木っ端を激しくまき散らした。
 これには全員が結構なダメージとともに守備体勢を取らざるを得なくなった。
 いや。
 一人無事なのがいたッ!
「背後は死角だと思ったわ」
 カーミンとフォウだ!
 ポロウのフォウの性質を最大限活用してタートルの背後にひそかに回り込んでいたのだ。
 その分、背後を護る敵も多かったが先手を取ることで手裏剣の弾幕を張り、素早い動きで駆け抜ける戦術で丸太兵を倒しつつここまで来ていた。
 しかし、その表情は厳しい。
「近接と遠隔、織り交ぜての戦いなら私も長いけど……」
 タートルへ攻撃できるのは、現在自分だけである。
「やるしかないか」
 対丸太兵戦に専念するつもりだったが、敵陣形を見抜いてこの場所でオンシジューム、オンシジューム・メイフェアといったオリジナルの移動攻撃で戦果を挙げつつ戦略的優位性すら保っていた位置が対タートル戦を担当する要因となってしまった。
 戦術的ミスマッチはあるが……。
「尻尾を狙えば問題ないでしょ」
 銃で射撃し、切り落とすべく尻尾を狙った。
 刹那、尻尾が引っ込んだ。
 いや、四肢も首もひっこめた。
 直後、前方に一斉砲撃。
「あ……」
 踏ん張ってないのは、射撃の反動で後方に体当たりするのが目的だった。
 カーミンとフォウ、ここで大ダメージを受ける。

 しかし、この二度目の砲撃は甘かった。
 後方への体当たりを主目的にしていた分、前方の照準は付けておらず一発目のように至近の樹木に着弾しなかったのだ。
 結果、前方友軍に被害はほぼない。
 しかも距離が空いた。
 敵は再び首と足を出し、砲塔を動かす。
 三発目、発射するつもりだ!
「させないのっ!」
 これを見たウーナ、星神器「ウコンバサラ」を担いで前線に上がり……。
「ウコンバサラの封印を解放……真の姿である雷神の力を解放して……」
 助走の勢いのまま振り下ろしてぶちかましたッ!
「トールハンマーなの!」
 命中すると同時に甲羅全体が揺らぎ、次弾は発射されず。大ダメージとともに敵の動きが鈍った。以後、後手を踏むようになる。
 そしてまたも敵は首や足をひっこめようとしていた。
「逃がさん!」
 真、再び渾身の刺突!
 ひっこめた場所に切っ先を突っ込んだ。
 威力も高く敵は足を出し苦し紛れに激しく身体を揺すり振り払った。剣が刺さったままの真、この勢いで吹っ飛ばされる。
「ボク一人ででもあそこを狙うよ!」
 フラは甲羅を上り主砲に攻撃。
「フラさん? 大きいの一発行きますぅ。ちょっと貯めてる間、守りは雪に任せますよぉ…!」
 ヤバいと感じた小太。急いで恋人のため最大攻撃を準備。ユキウサギの雪がふんすと鼻息を荒くし武器を手に主人の前に立ちはだかり言い付けを守る。
 ――ガキッ……タタタタ……。
「わあっ!」
 フラ、対空砲に狙われ転落。主砲への攻撃は入ったが頑丈で部分破壊はできない。ダメージは全体に分散されたようだ。
「それ以上フラさんに酷いことはさせませんよぉ」
 時間を掛けてマテリアルを収束した一撃、サジタリウスが真の突き刺した位置を正確に射抜き貫通した。
 ――ズズゥン……。
 タートル、力を失い倒れるとびくともしなかった。



「あら、終わったの?」
 ブリザードを放っていたキーリ、タートルの戦局を見て意外そうな顔をした。
「もうちょっとかかるかと思ったけど、急ぎ仕事になっちゃたわねー」
 だからこれ使うのも仕方ないわよね、と足止めした敵にファイアーボール炸裂。
「やっぱりこれが手っ取り早いじゃないの」
 キーリ、やや不服そうに豊かな胸をつんと反らしたり。

 その頃、悠月は新曲発表会を展開していた。

ハートのビートはステップステップ・ジャンプ
ひらしかわして投げキッス・ウィンク
気付いているよ君の秘密、ホントの気持ちどこにあるのか

 歌詞に合わせて丸太兵の攻撃をかわして関節を斬る。敵の本体である蔦狙いだ。ファセット・ソングで踊るように戦い続ける。

「おい、鑑。亀の後ろで誰か戦ってなかったか?」
 Jは離れた場所の戦闘の音を聞き分けていた。
「分かった。ここは受け持つ。……が、反対側だぞ?」
 鑑、Jのいた場所に入ると剣を構え敵を威圧。そして背中越しに心配した。
「それならルンルン忍法にお任せ!」
 神出鬼没に戦っていたルンルンが現れた。さっきまでいろんなところに地縛符を設置していたのだが……。
「いや、忍法ってよぉ……」
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル、ルンルン忍法最大奥義……」
 大丈夫か、なJに構わずルンルンが呪符をドロー。いつものリリカルに加えてクルクルしてるぞ?
 一体何をする気か!
「白色星団転位殺法!! ニンジャの奇襲は空間だった超えるんだからっ」
 ぱあっ、と八卦灯篭流し発動。
「お? おお!」
 J、これによりタートル背後の戦場に移動完了。
 そこには体勢を立て直したカーミンがいた。
「よお、大丈夫か?」
「大体ね。たしかカンさんと戦ってたわよね。代わりに真似てみようかしら?」
「どっちでもいいがね」
 無事と理解したJ、ニヤリ。カーミンと共闘してやや多い丸太兵と戦う。
 なお、転移する前の場所では。
「ルンルン忍法五星花☆舞って解き放て星の花弁達!!」
「……銃に切り替えててよかった」
 ルンルンの五色光符陣が舞い散る様子を、離れた場所で戦う鑑が見ていたり。



 こうして、森の中の脅威は取り除かれた。
 ポカラ駐屯地に戻った一行はとりあえず、義勇隊のモータルに報告した。
「クリスタルは来なかったね」
 悠月は一番警戒していたことを口にした。
「ま、いいんじゃないの。次に来たとこで倒せば」
 キーリがお気軽に言って真の方を見る。
 その真が何をしていたかというと。
「すまんな。最近戦いに出してばかりで」
 長椅子に腰掛けシトロンを膝の上に丸くならせると、いっぱいいっぱいなでなでしてあげていた。ご褒美である。シトロン、うっとりした目つきで……あ、キーリの視線に気付いた。目を細めて幸せいっぱいな様子を見せつける。
「……ユグディラとかユキウサギとか可愛らしいじゃない。そんな見た目でバリバリ戦闘できるのねー。
ちまっこい動物が揃って楽器鳴らしてたりすると童話チックで素敵。私も連れて行きたくなっちゃうわ」
「あら、ポロウもいいわよ?」
 カーミンがこの独り言を聞きつけ会話に加わる。彼女の手はフォウの毛並みをなでなでしているが。
「ゴーレムちゃんとかもロマンにあふれちゃってます!」
 ここでルンルンが両手を拳にして口元に当てて主張。
「そーよねー。ロマン。ついでに空飛ぶのとか、ちっちゃいのとか、そういうゴーレムも造って欲しいわよね」
 そんなロマン談義の横では。
「鑑さん大丈夫? 誰も大きな怪我はしてない?」
「ああ。ディーナも大丈夫だった?」
 ディーナと鑑が心配し合ってたり。
「……また女を増やしたのか、鑑」
 J、そんな鑑をからかう。
「Jみたいに女たらしじゃないですよ」
「いつ俺が女たらしなことしたよ?」
 とかなんとか盛り上がってるところ、ある気配に気付いた。
 小太がフラの手を取って正面を向かせていたのだ。
「あ、あの、僕はずっとフラさんと一緒に居ますからっ。一生一緒に居ますから……ひとりぼっちとか言わないでくださいっ」
 フラ、最初小太が何を言ってるか分からなかった。まさか一人で偵察に出た時「一人ぼっちには慣れてる」と言ったことだとはわかってない。
 だものでフラ、ぽっと頬を染めた。
「うん……。ボクも一生、小太さんについて行くね」
「あ……えぇ?」
 しばらくの沈黙ののち、拍手がわいたことで小太は気付いた。
 告白……みたいだったかも、と。
 ちら、と下を見ると雪が微妙に呆れて見ていたり。
「とにかく食べ放題行ってお土産買って帰りましょうなの、鑑さん」
「……お持ち帰りか」
「えぇぇ!」
 ディーナの言葉に触発されたJの呟きに、小太はさらに真っ赤になっていた。

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    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
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    キーリ(ka4642
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    ユニット|幻獣
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2019/06/19 22:23:58