ボラ族、ファッションデザイナー

マスター:DoLLer

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
2日
締切
2019/06/24 12:00
完成日
2019/07/07 13:54

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング


「今日からお前たちの担当は内務課メルツェーデスから引き継ぎ私となった」
 魔導列車づくりにいそしむボラ族の元にやってきたのは帝国第一師団所属のギュントという男だった。冷徹な目つきと初対面にもかかわらずにこりともしない顔つきからして、友好的な態度はひとつもない。
 そんな態度だからして、いかに元辺境の豪放磊落な移民一族であるボラ族と言えども、近づきにくいという印象を持った。
「ギュント。ダメよ。これから仲良くするんだから」
「いいえ、姫様も前任のメルツェーデスも甘すぎるのです。こいつらに合わせる必要があるのですか」
 冷たい一瞥。
 さすがにどうしても好意的に取れないその仕草に、真っ先に立ち上がったのはボラ族一の巨漢ゾールだ。2mの筋骨隆々とした巨体、そして日焼けした禿頭。存在感だけでも十分に威圧感がある。
「なんだ。言いたい事、はっきり言え」
「そうか、馬鹿には馬鹿と伝える必要があるか」
 ギュントはそんなゾールを見上げながらも眉一つ動かさないどころか、万年筆でゾールの顎をくいと突き上げる。
「貴様たちがボラ族だろうが、今は北荻となった場所から来た悲運の一族だろうが、族長が非業の死を遂げたのだろうが知ったことではない。ここは帝国で、お前たちはここに住むことを決めて自分たちの足で庇護を求め、帝国は了承した。それが前任者の言う事も聞いたり聞かなかったり、言葉の訛りも一向に直らない。服装も辺境となんら変わらず、自由気ままな生き方。帝国に住んでいるというだけでやっていることは辺境の民の精神そのまま。ふざけるなと言いたいくらいだ。お前たちは客じゃない。帝国民だ」
 猛烈な言葉の勢いに顔をのけぞらせるゾール。その勢いで顎を突き上げていた万年筆はそのまま顎を滑り、そのまま鼻の下に挿しあてられる。
「クリムゾンウェストを見ろ。世界各国は力を合わせ、異世界や星の意志ともつながり、各地にのさばっていた歪虚王を討伐し、邪神との戦いにあちら側の勢力である黙示騎士にも協力できないかと考えているという状況だぞ。それだけ世界が変わっているのに、お前たちはなんだ。帝国の特産物を作れと言ったら自分たちの民芸品を売り出して『これ辺境の品物じゃないんですか』と問われる始末。結局道を変えるといいながら精神は何一つ変えていない証拠だ。帝国はお前たちを甘やかすために受け入れたんじゃない。国民として力を合わせることを望んでいることになぜ気づかない」
 どんどんずり上がる万年筆は、とうとう鼻の穴の中に埋もれていく。
 それを言葉と共にねじり込んでいく姿はさすがに異様で、どうなるかと見ていたボラ族に仕事を任しているクリームヒルトがさすがに止めに入ったくらいだ。
「ぎ、ギュント。生き方を急に変えるのは難しいじゃない? 少しずつ……」
「5年待ちました。メルツェーデスも貴様たちにどれだけ粉骨砕身したか、ここにいる人間は全員知っているはずです。なのにこの男は虎の毛皮のパンツ一丁で過ごしている。自由のはき違えもいいところだ」
 万年筆が半分ほど鼻の中に埋まったところでゾールはそのまま後ろに倒れ込んだ。完全ノックアウトである。
 ギュントはその鼻水たっぷりの万年筆を軽く振って、次に食いついてくるであろうボラ族の女傑レイアを先んじて睨み付けた。レイアの方はと言えば完全に戦闘モードで覚醒しているのか、風が轟々と渦巻いているのがわかる。一触即発というのはまさにこのことだ。
 その危機的状況に割って入ったのはクリームヒルトでもゾールでもレイアでもなく、5才の子供ウルだった。
「確かにその通りです。お兄さんは僕達を帝国民とするため何を求めていますか。僕達の力をどう使うつもりですか」
 5才の子供、といってもその一言でボラ族達が全員喧嘩一色の色合いをひそめさせた。彼がこの一族のリーダーであることは十分に理解させた。
「邪神と戦うために全国民が心を一つにする。そんな広大無辺な命題に対して時間は短すぎるので手っ取り早い方法を試させてもらう」
 ひと呼吸おいて、ギュントは言った。
「服を脱げ」
 今度はギュントがクリームヒルトに叩きのめされる番だった。


「簡単に言うと、服をデザインしてほしいっていうことなの」
「服で人々の心が一つになりますか」
 ウルの素朴な質問に、説明をしたクリームヒルトは静かにうなずいた。
「特別な儀式の時には、特別な衣装を着るでしょ? 歌とか祈りはもっと心を一つに高められるけど時間は非常に短いし、遠くまで届けるには工夫もたくさん必要よ。でも衣装なら見ているだけで同じ気持ちにさせてあげられるし、その人がたくさんの街や村を移動すれば、それだけたくさんの人に服を通して、メッセージを伝播できるんじゃないかと思って。そんな服を作ることで、貴方達にも帝国民の気持ちを考えてもらえたら、気持ちは一つになると思うの」
 貴方達ボラ族なら辺境と帝国の架け橋にもなれる独特のデザインができるんじゃないかとも思っているのよ。
 と、ウィンクするクリームヒルトに、ウルはこくりと頷き返した。
「わかりました。帝国民全員が着られる服を考えるんですね」
「ううん、今ね、ファッションモデルになるハンターさんを雇ったから、その人達に合う服を作ってあげて。そして貴方達も、帝国民として着られる服。みんなが素敵ねって言ってくれる服」
「服のデザインってどうすればいいですか? どんな服だとみんな喜んでくれますか」
「それもハンターさんに聞けばいいと思うし、わたしも手伝うから」

リプレイ本文

●Take1
「服をデザインしたんだって?」
「ええ、そうよ。帝国の衣装に辺境のモチーフを取り入れて新しいデザインに仕上げたの。子供服にも挑戦したの」
 そしてシグルドの為にデザインした服もあるのよ。と興奮気味に語るのは高瀬 未悠(ka3199)。
 2人が歩く目の前は人だかりの壁。そこに何か面白いものがあるのかともちろん子供たちの姿もそこそこの数がおり、それに対して穏やか視線を向けるシグルドの心情を察して未悠は微笑みを浮かべた。
「これが新しい服よっ」
 未悠が盛大な声と共に、人垣の中心に向かって手を差し伸べる。
 そこには……。
 革のノースリーブジャケットにジーンズを身にまとったギュントが万年筆で猛攻を仕掛けていた。
「ほあたたたたたたたたたたた!!!!!」
 対するは素肌の上に、胸を守る円形の鉄板とそれをつなぐ革のベルトを身にまとうゾールの姿。
「お前はもう……帝国民だ」
「てこべぁっ!!」
 そこはもう世紀末。愛で空が落ちてくる世界観。
 劇画タッチのギュントとゾールの姿をしばらくシグルドはじーっと見た後、未悠の顔をまじまじと見た。
「ち、違うの! 今のはなし! 幻影よ、そう、まーぼーろーしー」
 必死に言い訳する未悠の後ろでGacrux(ka2726)がドスの利いた声でレイアに詰め寄る。
「貴方達は帝国にどんなイメージを持っているんですか。反骨精神を見せるポイントが違うと思いますがね」
「これは彼女が最新のファッションだと言っていたわ」
 こっそり逃げようとしていたアーシュラ・クリオール(ka0226)はその言葉に体を震わせて止まった。
「い、いや、外に出すのは止めようってあたし言ったし! Gucruxだって昆布を全身に巻きつけた、生足魅惑の妖精ファッションだから、帝国ってそういう」
 絶火刃がアーシュラの横をかすめて地面に突き刺さる。絶対言い訳許されないモードだ。
 お遊びがどうにも大炎上しかかっているのは、アーシュラ的、ついでにボラ族もギュントも、何事かと見に来た帝国民だって割と楽しそうにしているのだしOKだと思うのだが。しかし勿体ない気持ちがどうしても消せないアーシュラはにっこりと笑って言い返した。
「でも、ほら、人の視線を集めるのには成功したでしょ?」
 確かにそう言われれば、注目はこれ以上ないくらいに集まっている。
「はいはーい、それじゃ本番のtake2いってみましょー♪」
 夢路 まよい(ka1328)はさささーっと世紀末感を出している2人を広場から小径へと追い払うと、大きな青い瞳でウィンクを飛ばすと同時に、仮設用のテント生地で衆目の視線を覆い隠した。

●Take2 レッツ、ファッションショー!
「世の中に正解なんて道があると思う? これだって思った道こそが正しいの。服も同じよ。いつまでも同じ服が正解だとは限らないじゃない。世の中に服は何着あると思う?」
 集まった観客の前に背中を向けたまよいが言葉を紡ぐと、テント生地で覆い隠していた部分をばっと払いのけると同時に振り返った。
「35億着(根拠なし)」
「またそういう科学的根拠のない、ノリだけで数字を言う……」
 Gucruxの溜め息もなんのその。まよいの衣装に大きな歓声が上がる。
 いつものハットはつばを広くして、縁取りからレースを下ろして市女笠のようにもみえる。タイはボラ族のシンボルである三つ巴を飾り紐で表現したワンピース。袖は大きく広がりつつも、その袖元は幾重ものフリルで飾られ、まよいの手も合わせて、大きな芍薬が袖から顔を出しているような華やかさ。スカートは前は大胆に太ももが見えるミニスカートのながら、後ろは踵までしっかり隠す長さ。
 市女姿の着物を洋服化してフリルで豪勢にしたような感じだ。
「可愛い!」
「綺麗ね~」
「ボラ族のシンボルは三つ巴っていうこの飾りらしいんだけどさ。生と死と輪廻。そんな難しいことはともかく、クリムゾンウェスト、リアルブルー、エバーグリーン。色んなものが今一つになろうっていう象徴だよ。それを一つにまとめるキーワードは『可愛い』よ」
 まよいが軽くジャンプすると同時にフリルも合わせて跳ねて踊り、和服が持つしとやかさに躍動感と華やかさが感じられる。
「さーさー、この服、今なら限定無料で配布中っすよー」
 まよいに最高に注目が集まるのを見計らって、テント生地を本来の使い方に戻した神楽(ka2032)が、その下で机に衣装を並べて、べべんっとハリセンで音を出して注目を引き取る。
「え、着れるの」
「もちろんす!」
 にこにこ笑顔の神楽の元に、観客であった女性陣大殺到。子供服も用意していた未悠の配慮はずばり大正解で若い女性から、子供に可愛い服を着せてあげたいと願うお母さん陣で埋め尽くされる。
「あー、すみませんっす。売り切れちゃいました」
 元々ボラ族の手縫いなのだから、こんな手間のかかる衣装が何着も用意できるわけがない。
 あっという間に、売り切れるのは、ハナから予想済みのことだ。
「予約券替わりにこのTシャツを販売してるっす。しかも今なら、この服を着るだけで、なんと邪神と戦うハンターを応援できちゃうっす!」
 「残念」と思わせたところで、販売スタッフと化していた神楽がテントから抜け出した。
 まよいのような派手さはまったくなく、神楽が着こんでいるのはTシャツだ。シャツの前面には大きな円が書かれて、その円周に、帝国、王国、同盟、辺境、東方、龍園、地球統一連合の紋がデザインされている。そしてその円の下に飾り文字で『運命の介抱者』という言葉が……。
「介抱してどうするんですかっ。確かにこれからやろうとしていることは、ご飯はまだかと繰り返す痴呆老人を正気に戻すような介護作業に等しいかもしれません。わざとですよね、わざとやってますよね」
 楽屋裏ならぬテント裏でGucruxの強烈なツッコミを入れられたゾールが、慌ててちゃんとしたデザインの服を持ってくるが、さすがに今注目の的になっている神楽に生着替えをさせるわけにもいかない。という声が響いてきて、神楽、内心冷や汗だくだく。
「あたしに任せて」
 そこで登場したのはアミィ。予定より小さくてへそ出しの胸ぱっつんぱっつんだろうが、ついでに紋様が胸に引っ張られてデザイン崩れようが気にしない。大切な『運命の解放者』という訂正済みの部分だけがかえって目立つ着込み方。
「さっすがアミィ。ラインが出てる姿エロいっす、最高っす!この服着たらどんな良い事起こるか言っちゃうっす!」
「へーい、武勇伝説、救星伝説、聞かせてやんよ!」
「アミィ、惚れ直したっす!」
 あ。しまった。
 一瞬、気まずそうな顔をするのをアミィは艶然とした横目で微笑むと、神楽に引かれるままにその手を取って人形使いらしい口上を上げ始めた。


「なんかあっち賑やかだな」
 あげくの果てにはボラ族と揃って踊りながらTシャツを売りさばく混沌とした会場を横目にリュー・グランフェスト(ka2419)はぼやいた。
「賑やかなのは好きよ。元気がある証拠だもの」
「まあ暴走しなけりゃ、だけどな」
 心底あの世紀末な衣装を着る羽目にならなくて良かったと思うリューは苦笑いを浮かべながら、クリームヒルトの衣装を眺めた。
 袖のないワンピースドレスは上はさっぱりとしていながらも、スカートには薄手の生地を重ね、ところどころに金糸の刺繍が光り、街中に溶け込みながらも隠し切れない気品のようなものを感じさせる。
「大丈夫よ。その衣装とっても素敵だもの。ところで、どんな意味があるのかしら?」
 飾り紐で作られたネクタイを軽く直しながら、リューが着こむ黒のジャケットに胸元にAをデザインした刺繍を目をつけて訊ねてきた。
「ん、ああ。大切な思い出ってところかな。全ての始まりでも……ある」
「ふふふ、なんだか吟遊詩人が唄う伝説の物語みたい。そっか、それでAなのね」
 少し違うけれど、いや、違わないか。
 屈託なく笑うクリームヒルトは自分の胸元を飾るボラ族のボタンをじっと見た。
「じゃあこれはZかしら」
 なんとか文字に当て込もうとしているクリームヒルトの手を取り、リューは微笑んだ。
「いや、Fかな。ちょっと昔話でもしようか、俺の親父の話なんだけどさ……」
 AからFへ。そして0へ。
 楽士がそうするように。リューは泉の縁に座って笛を吹き鳴らして見せた。
 それと同時に、未悠の高らかな声が響く。
「♪あなたの存在がもう眩しすぎて 少し夢に出てくる夜もある」
 リューとクリームヒルトが振り返れば、ヒマティオン(ギリシャ風衣装)に軍服についているサッシュや飾緒を組み合わせた未悠と、シグルドの二人がいた。いつもは軍服の二人が、辺境に近い衣装になると神話に出てきそうな勢いすら感じさせる。
「ふふ、ごめんね。驚かせちゃった?」
 でも依頼だから、もう少し王子様とお姫様してみない?
「でもクリームヒルトはいつも見られる立場だからな。こんな時くらい少し休ませてやりたいかな」
「ありがとう。でもそうね。『見られる』ことは多いけど、『見せつける』のは数が少ないと思うわ」
 クリームヒルトの言葉に、シグルドはくすりと笑った。
「ご一緒してくれる? 私のナイト様?」
「ええ、場違いじゃねぇかな…でもまあ、依頼じゃあ仕方ないな」


 編みこんだ髪の未悠が華麗にダンスを踊れば、その御相手役としてシグルドが手を引き、または彼女を大きく抱きかかえて回してみたり、その横では髪をオールバックにしたリューがくるくる回るクリームヒルトをその胸に抱き留めて、そしてまた解き放つ。気分はちょっとばかりの路上舞踏会。
 その二組を割るようにして真打ちが登場。
 そう、彩る演奏はGucruxの指導によるゾールのずんどこずんどこ鳴る太鼓。そして刃に太陽の輝きを照り返すGucrux本人は、ふさふさの毛皮とピンクと黄色のまだらなシャツに身を包み、顔を真っ赤に塗りたくった部族メイクで高らかに叫ぶ。
「ぁーーーーーーーーぃゃーーーーーーーーー!」
 がっくん、もはや自分がツッコミ対象。
「ボンゴレボンゴレ。ヴォラー!!!」
 一緒になって踊り狂うゾールの太鼓の音色に合わせた声でようやく我に返る。
「ボンゴレは貝です。そして私はなぜ獅子王やってるんですか!!! テーマ違いもいいところですよっ」
「他に楽器、ない」
「声があればできます。私がテーマにしたのは太陽です。決してミュージカルではありません。さっきの二組見てましたか。その後で、この衣装と音楽が受けると思いましたか? だいたいこのピンクと黄色ってどんな色彩感覚しているんですか。ピエロよりたちが悪いですよ。ねぇジョージィ。っていうピエロでももう少しマシな色選びますよ」
「あたしがカバーするっ」
 飛び出したアーシュラは軽く跳躍して広場に飛び立ち、黒いワンピースをはためかせた。ワンピースのが華麗にはためき白いサルエルズボンとのトーンが雷鳥を思わせるのは、きっとアーシュラの二つ名のせいもあるかもしれない。その中央で華麗にターンするとワンピースとサルエルパンツをつなぎとめるバックルに手を当てて、軽くポーズ。
「大きなバックルは蜘蛛の目模様。風に乗ってやってくる幸せを離さない。ってね」
「蜘蛛の目の放射状の経糸はまた曙光に等しいともみられます」
 その間にようやく夕焼け色に染められたカットソーに袖を通し、牙のピアスをしゃなりと付けたGucruxが追加の解説を入れる。先程の野生丸出しスタイルから、ワイルド味溢れるリゾート衣装と、Gucruxがもつクールな色気が引き立つ。そのギャップに目を奪われる人、多数。
「帝国と言えども人は様々」
「同化と同一は違うってね」
 Gucruxとアーシュラがゾールの激しい太鼓を合図に、ぐっと視線を合わせ、まるで練習し合ったかのように、キレのあるダンスを披露する。時に肉体のしなやかさを思わせる動きも、メカニカルなロボットダンスも。どんな動きにも、2人の服装は悪目立ちをさせない。
 その姿に観客からも大きなため息やら喝采やらが飛んでくるし、気が付けば神楽が売り出していたTシャツ姿の人間も増えている。Tシャツが衣装の買い物予約券替わり。このTシャツを着ることは、未来の2組になれるような。または同じ舞台に自分たちもたっているものだと幻想させる。
「ねっ。気になるものは即販売。着たいという気持ちは大切にしなきゃ♪」
 まよいの発案は大当たり。まよいと神楽、ついでにアミィがぐっと親指を立て合って笑った。
「アミィもさんきゅっす。美人とデートとか死ぬ前にいい思い出が出来たっす。いや、死ぬつもりなんてないすけど」
 未来なんてわからない。自分みたいな人間なら特に。告白して迷惑かけるくらいなら、へたれた方がいくらか……。
「へたれってのは生き残ることに鼻が利くってことでしょ? そんな神楽っちが死ぬときは、あたしも生き残ってないだろうから安心してよ」
 嗤った目つきの隙間に見えたアミィの感情を見た瞬間には、神楽は気づいたら手を取っていた。心臓が爆発しそうになる。
「この前の花束に隠された一輪の薔薇のお礼もまだできてないけど? あたしにどんなけ貸し作る気?」
 その一言に凍り付いて、神楽は手を引いた。
 だがそれよりも早く、アミィはその胸に神楽を抱きしめて、つぶやいた。
「……あの後どんなけ悩んでも、結局今日まで言えなかったあたしは、神楽っち以上の、へたれなの」

●Close
「どう、参考になった?」
 まよいは参考にと渡していた自分の服を片付けながらボラ族に尋ねた。
「私達の着るものよりずっと複雑で難しいわ。これ1着で私達の服なら10着は作れると思う。でも私達の意匠が活かせることも教えてくれた。できることはいっぱいあるのね。たくさんのことを教えてもらったわ」
 ありがとうと握手するレイアも、まよいに似せたフリル付きの衣装を身にまとっていた。少し東方風に似せると知り合いに似ているなぁとアーシュラはぼんやりとその姿を眺めるばかり。
「ギュントって嫌みな奴だけど、そういう手腕はあるんだよねー。適材適所に配置する感じの」
「同化はしないけれど、歩みは合わせていく。言いたい事はわかったし」
 くすくすとレイアは笑ったのを、最初のお遊びで作った世紀末風衣装のことだと理解し、彼女もまたくつくつ笑った。
「扱い方はわかったわ。ありがとう、アーシュラ」
 視線を外にやれば、Tシャツを着こむ人の姿が目立つ。
 想いを一つにしていく願いは叶いそうだ。そして何よりもレイアの顔が久々に晴れやかなのを見て、アーシュラも嬉しそうにした。
「服は世界をつなぐってね」
 姉妹みたいな2人の服が自分の服の知識と技術がベースになっている。自分の可愛いが誰かに良い物になってくれたという自信がまよいをうきうきとさせた。

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MVP一覧

  • ボラの戦士
    アーシュラ・クリオールka0226
  • 大悪党
    神楽ka2032

重体一覧

参加者一覧

  • ボラの戦士
    アーシュラ・クリオール(ka0226
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【相談】帝国に新たな流行を
未悠(ka3199
人間(リアルブルー)|21才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2019/06/24 11:35:53
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/06/24 10:13:40