コイカツ☆

マスター:ラゑティティア

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/08/28 09:00
完成日
2019/09/04 06:23

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●『奥手の紳士淑女も今こそ立ち上がれ!!』

 アツい一文が書かれたビラから騒動は始まった。
「コイカツ……んご!?」
「そうです」
 辺境のとある町に泊まるべく寄ったハンター3人組。
 道端で配られていたビラを何気なくリーダーが受け取ったのだが、何の縁かその内容は、今夜この町で開かれる夏祭り兼街コンの知らせだった。
 そのせいか宿もほぼ満室。やっと借りることができた一室で、栗色おさげに桃色リボンがチャームポイントのリーダーは椅子で足を組み、目をまん丸にした黒髪おかっぱ娘を見下ろして続ける。
「私は27、クロミミは25、貴方はピーー。
 つまりそろそろ相手の1人や2人いても良い年齢ではないかと。
 このビラにも『辛いことが多い今こそ、乗り越えて新たな幸せを!!』とあります」
 気になる部分はいくつかあるが。
 一番ツッコミたいところは、その整った顔立ちが終始無表情で、かつ棒読みだったことだろうか。
「てぃ、ティナしゃまには、ミミぱんがいるんご!
 ティナしゃまファン第一号として、フィアが認めない人は認めないんご!!」
 必至に手をジタバタさせるフィア。あともう一歩で飛べそうだ。
 ティナとお揃いの桃色エプロンが、その姿をより愛らしく思わせる。
 120cmほどの背丈からすると10歳以下に見えるのだが、ティナの発言により実年齢は定かではない。
 ちょいちょい話に巻き込まれているクロミミは、黒い猫耳カチュと燕尾服が特徴的な青年だった。
 彼は静かに壁に背を預けて控えていたが、ティナは無表情のままその姿を一瞥。
「男同士はちょっと……」
「むぅむぅ!」
 不服だったのか、頬がフグのように膨らむフィア。
 クロミミは苦笑を浮かべつつ助け舟を出した。
「フィアちゃん、ティナさんは一緒に夏祭りに行きたいんじゃない?」
「んご!?」
 その解釈に、フィアの不満がぴたりとおさまる。
 いやむしろ様子がおかしくなる。
「ティナしゃまがフィアと夏祭りに……!?
 そんなそんな~~それならそうと素直に言ってくださればいいのに~~」
 照れているのか、かぼちゃパンツをふりふり。
 俺もいるんだけど……とクロミミは指摘したそうにしていたが、先に口を開いたのはティナだった。
「ごえもん、早く準備して」
「ごえもん!?」
 予期せぬあだ名で呼ばれたフィアは、一気に現実に引き戻された。
 時間が経つのは早く、すでに窓の外が夕暮れから夜の色に変化しつつある。
 クロミミは先頭を切って扉のノブに触れると、妖しく笑みを浮かべた。
「ティナさん、コイカツ中の俺のあだ名は黒耳軍司令官で」
 その要望を受け、ティナも不敵に口端を上げた。
「司令官の上司枠、野獣王ティーナ24世でよろしく」
「って! 2人ともやっぱりそれが目当てんご!?」
 密談に再びジタバタするフィア。続いてノブを持ったティナが扉を開けたまま待つ。
「ごえもん、あくしろよ」
「ティナしゃまっ、フィアはごえもんは拒否んご!」
「却下」
「ええ!?」
「閉めます」
「待ってんごぉぉ!!」
 結局ティナには勝てず、むくれていたフィアが慌てて追いかけるのだった。
 

●迷子のお知らせがあります……
 
 夏祭りが行われている広場はかなり盛り上がっていた。
 円を描くように様々な屋台が向かい合って並び、闇に映える提灯と太鼓の力強い音が、夏らしさを演出している。
 3人はいつも通りの服装で来てしまったが、出会いを兼ねているイベントなだけに着飾っている若者も多く、賑やかだけではないただならぬ雰囲気も漂っていた。
「お祭りラストにダンスがあるんごね~ティナしゃまと~ミミぱんと~♪」
 フィアがビラを抱えて妄想に浸るのをよそに、男性陣はさっそく物色を始めていた。
「ティナさん、あの花のかんざしつけてる2人組どう思う?」
「――闇が深そう」
「あっちの赤い浴衣の女性達は?」
「――厚化粧が草」
 気づいたフィアはぷぅぷぅとふくれっ面。
 前方からは、成立したカップルらしき集団がぞろぞろと自分達とすれ違っていく。

 ドン!

「はや?!」
 カップル集団はお互いに夢中らしく、他のことが目に映らない。
 それゆえに、背の低いフィアに大きめの荷物が当たり、強引にその流れに引きずり込んでしまったことにも気づけなかった。
 とっさに異変に気づいたティナが手を伸ばすが、フィアがちっこいことが災いして指先が届かない。
「はややぁ~~てぃにゃさまぁ~~みぃみぃぱん~~~」
 フィアも戻ろうと必死にもがくものの、人の流れに押される形で結局流されるしかなく。
 クロミミも振り向くが、時すでに遅し。
「フィアちゃん!?」
「なんでごえもんの手握ってないの」
 何故かクロミミのせいにされる。
「ティナさんこそ、随分フィアちゃんの異変に気づくのが早かったみたいだけど?」
 クロミミも負けじと言い返すが、ティナの反応がなくとも当然といったようにそのまま静かに口を閉じる。
 相棒はもうすでに、フィアの捜索方法に頭を働かせているのだ。
「美しいお嬢さん!」
 よりによってこんなときに……。
 感情を表に出していなかったティナも、筋肉をさらして強引に目の前に割り込んできた男どもには、さすがに細い眉がピクリと動いた。
 彼らの反応は間違ってはいない。
 もともと女性にも見えてしまう顔立ちをしているティナが、どういう意図があるのか女性物の衣装や飾りをつけているのだ。さらに言ってしまうと美女の類に入る。
 そのままうろついていれば、いつ男に絡まれてもおかしくはない。
「猫男はやめて僕達と一緒に回りましょう!!」
 筋肉男達は今まで屋台に並んでいたのか、チョコバナナ的な食べ物をティナに差し出してきた。
「唐突な下ネタはNG」
「なななっ、そ、そんなつもりではっ!
 ただお嬢さんとチョコバナナでっ……!」
 言い訳が進むたびにおかしな感じになり、クロミミが横を向いて肩を震わせる。
 客の対応に手間取りそうだと判断したらしいティナは、黒い猫背に狙いを定め……。
「死刑」
「どわっ!?」
 捜してこいと言わんばかりに、クロミミは真逆の流れの中へ蹴り飛ばされた。
 この流れの先にフィアがいる。
 ティナの目に「よろしく」と告げられた気がして、クロミミは改めて頷き返した。

 だが。

「やだぁ! 黒耳チョー可愛い!」
「草食系執事ってカンジー!」
 背後から黄色い声がする。
 危険を察知してすぐにでも目の前の人ごみに身をねじ込もうとした。
 だがどうにも人が多すぎてうまくいかず。
 強引に腕をつかまれてしまったのでしぶしぶ振り向くと、黄色い声の正体は日焼け女子集団だった。
 ……ざっとみて1人80kg以上はありそうな頼もしい肉付き。
「見てたよ! ブス女から捨てられたんでしょ?!」
「あんなのやめて一緒に回ろうよー!!」
 問答無用で引っ張られ、骨折しないか心配になりそうな光景である。
 どうやらこちらも、ティナと同じ展開になってしまいそうだ……。

リプレイ本文

●フィアとクロミミの救出

「邪神戦争が終了した解放感ってヤツか……」
 軍人時代を耐え抜いてきた小麦色筋肉質を惜しみなくさらし、今宵はコイカツという名の夏祭りへと足を踏み入れたトリプルJ(ka6653)。
「そこそこ屋台もあって人も出て。祭りって気がするよなあ」
 大きな戦いは終わったばかりだが、少しずつ日常が戻ってきている実感がある。

 んご~んご~!

「……おや」
 活気のある人ごみの中から奇声が聞こえた。
 その背丈188cmの視線で見つけたのは、どんぶらこどんぶらこと流れてくる桃……色のエプロン少女、フィア。
 気づいたのはトリプルJだけではない。
「あら? あらら?」
 フィアに近い場所を歩いていたレオナ(ka6158)の細い両手が、先にそっと伸びた。
 無事にキャッチできたのとほぼ同時に、トリプルJも助っ人に参上する。
「もしかして親か連れとはぐれたクチか? 手助けは要るか?」 
「こんばんは、私も賑やかそうなのでお食事序でと寄ったのですが。
 まさか女の子が流されてくるとは思いませんでした」
 それには同感の表情になってしまうトリプルJ。
「ここではゆっくり話ができないから、屋台裏の芝生に一旦脱出しましょう」
「よし、お嬢ちゃんを運ぶのは任せてくれ。
 俺はハンターのトリプルJだ。
 見かけはまぁ……自覚はあるが、怖くはないぜ」
 確かにトリプルJは、いかつい半裸族にも見えてしまうものの、フィアを怖がらせないようにある程度距離を取り、多少身を屈めて話しかけている。
 その姿勢に好感が持てたのかどうなのか、レオナもダックスフンドのアニーと共に、静かに見守ってくれていた。
「迷子ならちゃんと仲間を見つけてやるから、俺の右肩に乗ってくれ」
 見かけは子供だがレディである。
 首を跨がせるのは嫌がるだろうと思い、右肩に乗せるのを提案してみる。
「ありがとんごぉ~」
 うるうると涙を浮かべて喜んだフィアは、よじよじとトリプルJにのぼるが……ずれ落ちて。
 結局、本人の許可を得て、トリプルJがサッと持ち上げていた。
「きっと心細かったのね」
 状況をなんとなく察しつつ、レオナが人の流れを見極めながら屋台裏までのタイミングを見計らい、トリプルJを誘導した。
 彼が肩車をしていなければ、ひと夏の熱気あふれるこの流れの中を移動するのはフィアには少々辛かっただろう。
 なんとか落ちつけたところで一度肩から降ろし、3人はゆっくりと向かい合った。
「改めてお名前は?
 1人で来たの? 逸れたの?」
「フィアって言うんご。ティナしゃまはごえもんって呼ぶんごぉ」
 レオナに名乗りながらお口が尖る。
「ごえもんって本当のお名前?」
「いや、本名はそっちじゃない気がするぜ……」
 思わず口を挟んでしまったトリプルJに、なるほどとポンと手を合わせ。
「なら、私とアニーも。私は『柊』で、アニーは『ヒース』ね」
 にこりとノリノリなレオナに、フィアはこくこくと頷く。
「それで、今の話からすると、ティナさんという方と逸れたのかしら?」
「ミミぱ……クロミミもいるんご」
「つまり2人か」
 トリプルJにもこくこくと頷く。
 この場が不安や焦りに支配されてしまう前に、レオナが切り出した。
「大丈夫よ、一緒に捜しましょう」
 トリプルJにも異論はないようで、首を縦に振る。
「また俺の肩に乗せるから、仲間がどこに居るか見つけて教えてくれ。
 見つかりゃそこまで飛んで行きゃあいいからな。
 人ごみだろうが行きたい方に送ってやれるぜ」
 2人の頼もしい言葉に、フィアも嬉しそうに目を輝かせていた。
「迷子案内所まで連れていってもいいが……どうする?」
 次に向かうべきは、ティナ捜索か、クロミミ捜索か、迷子案内所の3択。
 そこでレオナはふと思い立った。
「占術で、現在の居場所とトラブル状況を先に占ってから出発するのはどうでしょう」
 どこから行くのが良いか分かれば効率もいい。
「村ではよく当たると言われていたので、お役に立てるかもしれません」
「じゃあよろしく頼むぜ」
 あてがあるわけでもなかったのでトリプルJも頷き、レオナはさっそく花占符を用意した。
 スキル【Bas-ogham】を使い、札にマテリアルを込めて占いの成功率を上げる。
 黄緑の若葉の幽かな幻影が軌跡を描く。
「さあフィアちゃん……いえ、ごえもん、だったかしら?
 2人の事を思い浮かべながら花占符から何枚か引いてね」
 フィアが言われた通りに引くと、ふわりと花の香りが漂った。
 占いの結果は……。
「ティナさんには良い事が訪れる兆しがあります。
 クロミミさんはさらなるトラブルに見舞われそうですが、私たちが向かえば回避できるかと。
 このまま迷子案内所へ向かうのは、あまりよい結果にならないようです」
「急を要するクロミミ。それを放置して迷子案内所に行くのはまずいってことか」
「おそらく……」
 そうと決まれば。
「さっそく行くぜお嬢ちゃん」
 トリプルJが再び小さな体をひょいと肩に乗せ、レオナはアニーの綱をしっかり握り、一行はぎゅうぎゅうした人の流れへと戻る。
 エルフハイムの小さな村で豊かな森に囲まれ、ほぼ自給自足の生活していたレオナは、手先が器用で手芸も得意。
 そんな家庭的なにおいを嗅ぎつけたのか、男性陣からすれ違いにアプローチを受ける様子も多く見られた。
 しかし絡まれても、のらりくらりとうまく躱すため、彼らは次々に撃沈。
 一方、トリプルJも筋肉質好みの女性達の視線が集まっていたが、肩車の姿で子持ちと勘違いされることも……。
 そんな移動中も雑談を楽しみ、たまにナンパ達から捧げられる屋台の貢物もいただいてしまいつつ、捜索に励んでいた。
 そしてついに。
「――ミミぱん!」
 目を丸くしてフィアが指をさす方向には黒い猫耳。むちむち女子集団の餌食になっている。
 思わず苦笑を浮かべる2人。
「あれだな、確かに急を要する事態だぜ。ちょっと飛ぶから掴れよ?」
 スキル【天駆けるもの】を使うようだ。
 レオナも人の隙間を順調に進むアニーを気遣う。
「あともう一息でクロミミさんと合流よ」
 その声に、アニーは元気に返事をしていた。
 トリプルJが人々の頭上を飛行する姿はとても目立ち、周囲の目が一斉にそそがれる。
 人の流れが一瞬止まっていたその隙に、レオナもアニーと目的地を目指してダッシュ。
「迎えにきたぜ!」
 クロミミのすぐ傍で着地したトリプルJに、むちむち女子集団の黄色い声が上がり――。
 レオナも少し遅れてなんとか到着できたが、自身にもしつこく追ってきた男性陣の姿があった。
「お願いね」
 アニーに頼んで男性陣を一喝してもらう。
 同時にそれは女子集団にも影響をもたらした。
 急に吠えたアニーに驚いたのだ。
 女子集団は犬が襲ってきたと勘違いし、前の人をそのむちむちボディで弾き飛ばしながら、声を上げてどこかへと逃げて行ってしまった。
 占いに基づき、周囲も警戒するが、さっきの一喝でトラブルになりそうな人間もほぼ散ってしまった。
 さらなる災いを寄せつけずに済んだようだ。
「助かったよ。一応女性だったし手荒な真似ができなくて」
 疲れ果ててしまって、しょぼんぬするその背を、トリプルJが彼らしい一言で叩く。
「まぁそういう時もあるさ。気軽に行こうぜぃ?」
「残るはティナさんかしら。
 どこかのお店に留まるのも良さそうね」
「俺はお嬢ちゃんとこのまま捜索を続けてもいいぜ?」
「そうね。手分けして捜したら早く見つかりそう。
 なら、私はクロミミさんと……」
「よろしくお願いします」
 言い終わる前に颯爽とレオナの隣へ。
「捜索が一区切りしたら、芝生で晩御飯も良いかもね」
「それなら、すぐそこに美味しそうな焼きそばの屋台があったけどどう?」
 レオナは気になるので了承し、ティナさんを見つけたら呼ぶわねと2人に言い残す。
「クロミミ、嬉しそうんご」
「見た目の雰囲気は、お嬢様とその執事って感じだったけどな……。こっちも出発するか」
 んご。と頷くのを見て、トリプルJ達も最後の1人を目指して歩き出すのだった。


●ティナの救出

 ざわざわ。
 カップル多き人の波が、何かを目撃してざわつく。
「やられましたぁ……この謳い文句なら絶対参加してそうだと思ったのにぃ……」
 人々の視線の先にいたのは、星野 ハナ(ka5852)だった。
 この会場にお目当ての異性の姿は無かったらしく、失意の体前屈を披露してしまっていたのである。
 ガッツリ注目を集めていたが、ハナは今それどころではない。
 頭の中は、あの青い瞳の若き龍騎士の姿でいっぱいなのだ。
 他の男が寄ってきても彼女の目には映っていない。
「奥手の紳士って言われたら絶対そう思うじゃないですかぁ……私は悪くないですぅ」
 ぐすぐす。
 鼻を鳴らしつつも、やっと立ち上がると、ハナは再びふらふらと流れに乗って歩き始めた。
 まるで失恋した乙女のように自棄食いしつつ……。
 だが、いつまでも自棄食いしているわけにもいかない。
 自分に言い聞かせながら少しずつ周囲が視界に映るようになると、気づいたことがあった。
 前方に迫りつつある筋肉男達の壁。
 どうやら誰かを誘っている様子。しかし誘われているほうは表情からして明らかに乗り気ではない。
(んんん? あれはもしかして、嫌がる美女を無理矢理どうこうしようとしてる図ですぅ?)
 美人を虐める男は万死に値する!
 一瞬で目が半眼になったハナは怒りをぶつけるべく、両者に近づいた。
「そこのむっさい筋肉達磨」
 衝撃的な一言に貫かれ、彼らの動きが即座に止まる。
 さらにハナの姿を見つけたとたん恐怖の色がにじみ、顔が引きつった。
 ハナの髪は海中に居るかのごとくゆらゆらと広がり、ただならぬ不機嫌オーラを全開させていたのだ。
「お祭りなんて人目の多い場所で迷惑がってる美人さんに絡むとかどーいうことですぅ? いっぺん軽く死んどきますぅ?」
「なななな」
 早くも言葉になっていない筋肉男達。
 ハナが睨むたびに体が震えていたが、さらに半眼のまま容赦なき本気の威圧。
「いますぐ消えるなら見逃してあげますよぅ……どうしますぅ?」
 相手が消えればそれで良し。
 この様子では、すでに勝負はあったようなものだ。
 全員さっさと逃げ帰るだろう……と思いきや。
 その場に残った勇者が2人。
 武士のように眉を吊り上げて、剣のかわりにチョコバナナを構えてくる。
 ハナのこめかみの血管がまた1つ増えた。
「このチョコバナナ的美女と野獣の恋路は誰にも邪魔はさせん!」
 もはや言ってることが意味不明である。
 ハナはうっかり頭の中で、お目当ての竜騎士と筋肉男を比べてしまったが……。
 どう解釈しても月とすっぽん。
 思わずうんざりした表情になってしまうハナに、彼らが威勢よく襲ってくるものの。

 ザッ!

 やはりハナのほうが何枚も上手だった。
 足払いをきめて転がしたあと、すかさずスキル【御霊符】にて式神を召喚。
 周囲はまたもやなんだなんだとコイカツどころではない騒ぎである。
「限界までダッシュしてぇ、捨てちゃってくださいぃ」
 怒りの笑顔で命じられた従順な式神は、筋肉勇者2人を拾い、せっせと運ぶ。
 限界に達した式神が消えると、自慢のチョコバナナもろとも地面に放り出され、彼らは尾てい骨を打って悶絶していた。
「ありがとうございます。素敵な戦闘術と威圧感をお持ちで」
 一件落着し、助けられたティナが独特な口調で礼を言う。
 嫌味には感じず、ハナはそのままふぅっと息を吐いた。
「お姉さんも災難でしたねぇ。私も今日は残念だったんですよぉ」
「というと、運命的な出会いを求めていたのでしょうか」
「そうなんですぅ~てっきり参加しているかと思ってぇ。
 肌と髪の色が白くてぇ、青い瞳の竜騎士のぉ~、見なかったですぅ?」
「いえ……見ませんでしたね」
 予測はできていたものの、ハナはさらに深いため息。
「そうですよねぇ。私も会場一周しちゃいましたぁ。
 お姉さんもお連れ様がいればああいうのに絡まれなくてす、む……んんんっ?」
 話している最中にハナはティナの喉仏に目が留まり、さらに素早くその全身に目を走らせる。
 しばし沈黙が流れたあと、ハナはぴしゃりと自分の顔を手で打ち、
「ごめんなさいぃ、ここがハッテン場だって気が付かなくてぇ。
 お邪魔して申し訳ありませんでしたぁ」
 何を想像したのか、一礼して逃走。
 目と鼻の先の屋台に並んでいたレオナ達を通り過ぎ、さらに。
「うお!?」
 トリプルJ達の脇をも駆け抜けて行った。


●合流

 ハナが走り去ることによって、人の流れの中にティナまでの細い道が生まれた。
 クロミミがその姿に気づき、裂け目が無くなってしまう前に素早く手招きをする。
 レオナもまだ声が届く範囲にいたトリプルJ達を呼ぶと、真っ先にフィアが気づいてくれた。
「ティナしゃま~!」
「こいつがお前の最後のツレか?
 ……ほい、お届けもんだ。次はちゃんと手を繋いでいてやれよ?」
 トリプルJが、ぱたぱたしているフィアをティナに引き渡す。
「お世話になりました。
 まさかごえもんが、ちゃっかり彼氏まで連れて戻るとは」
「おいおい、変なもん教えるなって。年は知らねぇがまだ早いだろ」
 まあ冗談ですがとティナは言いつつ、妙な間を置き、
「ごえもんは私と同じ年齢ですよ」
 ――ふぁ!?
 トリプルJは衝撃的な事実に、思わずティナとフィアを交互に見てしまった。
 とにもかくにも、これで迷子騒動は無事に解決。
「柊さん、トリプルJさん、ありがとんごぉ!」
「お約束してたでしょ?」
 嬉しそうなフィアを見て、つられてレオナも笑顔になった。
 祭り自体はすっかり時間が経ってしまったらしく、中央の広場では太鼓の音が聞こえなくなっている。
 そのかわりに、なにやらリズムの良い曲が流れていた。
「楽しそうな音楽ね」
 さっきまでとはまた違う賑やかさが気になり、レオナを先頭に一同でチラ見。
 並んだ男女がリズムに合わせてワンツーステップ。
 ペアの踊りのようだ。
「ごえもんと一緒に晩御飯を食べながら、美女とかわいい猫さんのダンスを楽しませてもらおうかしら?」

「「え」」

 レオナに「お似合いね?」とリクエストされたお2人はぎこちなく顔を見合わせてしまう。
 フィアと微笑むレオナとアニー、その背後で、最後まで祭りを堪能しようと意気込むトリプルJ。
 さらに会場のどこかでは、お目当ての人の名前を呼び続けるハナの声が、名残惜しく終わりつつある夏祭りの夜空へと響いていた――。

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重体一覧

参加者一覧

  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 遊演の銀指
    レオナ(ka6158
    エルフ|20才|女性|符術師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

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アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/08/27 07:19:54