魔塔の住人

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/28 19:00
完成日
2014/07/01 05:29

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「……マテリアル観測装置、ですかぁ?」
「そうだ。帝国全域をカバー出来る程の探知網。話はどこまで進んでンだ?」
 帝都バルトアンデルスに聳えるこの世界には場違いなほどの高層建造物、ワルプルギス錬魔院。
 そこは帝国が擁する国属の科学者が集う研究機関である。錬金術師組合がこの世界全てへの奉仕を目的とするのに対し、この組織はあくまで帝国だけを栄えさせる為にある。
 錬魔院の院長はラプンツェルと呼ばれ、代々女性が任命されるものであった。その唯一の例外にして現院長であるナサニエル・カロッサ(kz0028)は、変わり者で有名な錬金術師であった。
 一年のほとんどを研究室に引きこもって過ごすナサニエルに話を持ちかけるには直接錬魔院に赴くしかない。
 オズワルド(kz0027)が彼を訪ねたのは前々から進められてきたある計画について相談する為であった。
 マテリアル観測装置――。ナサニエルが開発した新型の感知装置である。それはプラスの力もマイナスの力も測る事が出来る最新鋭の装備だ。帝国内に設置しておく事で、歪虚事件を早期解決に導く事が出来るかもしれないと騎士議会で注目を浴びていたのだが……。
「おまえ、あれから全く報告書も上げてこねェだろ。結局どうなったンだ?」
「あれですかぁ。まあ、出来てますけど……帝国内の彼方此方に設置するにはまだ数が足りませんし、実稼働データも取れてませんよぉ?」
「全く話進んでねェとはどういう了見だ?」
「だって、設置しに行くの面倒なんですよぉ。これ一基作るだけでもコストすごいんですよぉ?」
「なんでそんな過剰性能にしたんだよ……」
「作ってる間は面白かったんですよぉ。でも形になったらなんかもう飽きちゃって」
 深々と溜息を零すオズワルド。ナサニエルは両手を白衣のポケットに突っこんだままけらけらと子供のように笑っている。
「国内全域に監視網を設置するには時間も予算もかかりますよぉ。お金もらえるんですか?」
「予算についてはカッテかヴィルヘルミナにかけあうんだな。俺は知らん。……で、その装置なら探知出来るのか?」
「何をですかぁ?」
「――“四霊剣”だよ」
 苦々しくつぶやいたオズワルドとは正反対にナサニエルは目を爛々と輝かせる。
「当然じゃないですかぁ。あんなバカみたいに強い歪虚の反応、察知しないようにする方が難しいですよぉ。その辺のザコとはわけが違うんですからね」
「雑魔の反応をいちいち拾う事より、手に負えん連中を早期察知する事が主目的だからな」
「でしたらさほど量は必要ないと思いますよぉ。連中、マテリアルへの影響値が大きすぎて相当離れていても探知できるはずですからねぇ。でも……」
 ゆらゆらと肩を揺らしながらオズワルドに歩み寄るナサニエル。長い前髪の合間から覗く瞳を見開き、口元に笑みを浮かべる。
「出たんですかぁ? 四霊剣?」
「出てたらこんな呑気にしてねぇよ」
「前の“剣機”を倒してからもう結構経ってますからねぇ。そろそろ新しいのが来ても良さそうな感じなんですけどねぇ……ウフ、ウフフフ!」
 オズワルドに限らず帝国軍人なら誰しも頭を悩ませる問題だが、ナサニエルにとっては好奇心を満たしてくれる玩具と大差ないようだ。
「いいですねぇ。一回研究してみたいなぁ」
「前の剣機の残骸はどうした?」
「回収しましたけどぉ、自爆したじゃないですかぁ? それに本体は歪虚ですから、倒すと消えちゃうんですよねぇ……装備は殆ど僕らの知っている機導と変わらないものでしたから、あんまり役には立ちませんねぇ」
「手がかりなしか」
「歪虚に関してはわかってない事の方が多い……むしろそのほとんどが謎ですよぉ? どこから来て何の為に世界を蝕むのか……これでもう少し友好的ならジックリお友達になって観察、研究してみたいんですけどねぇ」
「暴食の歪虚にそんな甲斐性はねぇよ。こっちが皆殺しにされるか、奴らを完膚なきまでに叩きのめすか……二つに一つだ」
 取り出した葉巻を咥え火をつけようとマッチを取り出すオズワルド。ナサニエルは肩を竦め、無言でその葉巻を奪い取る。
「禁煙ですよぉ、ここ。色々な物が連鎖反応して爆発してもいいなら別ですけど」
「少しは片づけろボケ」
「これはこれで均衡が取れているんですよぉ。この空間において調和を乱す存在は……オズワルドさん、あなたの方ですよ?」
 舌打ちしマッチを収める。ナサニエルは葉巻を握り潰し、背後にある鋼鉄の屑籠に放り投げた。
「とにかく、試作品でもなんでもいい。設置してこい。場所は任せる」
「アバウトすぎですねぇ」
「それと、護衛はハンターを使え。簡単な仕事なら軍人よりもハンターに任せろとヴィルヘルミナのお達しだ」
「陛下、ハンター大好きですもんねぇ。でも丁度良かったです。僕も新しいハンターに興味があったんですよ。例の大規模転移でやってきたリアルブルー人と、彼らと接したクリムゾンウェスト人……観察してみたかったんです」
「こっちの世界の連中に変化なんかあるか?」
「間違いなくありますよぉ。大きな環境の変化は人を成長させ進化させる。二つの世界の化学反応がきっと愉快な結果をもたらしてくれる筈です。それをお確かめになられたいのでしょう、陛下も……ウフッ!」
 目を細め笑うナサニエル。オズワルドは頬を掻き、そそくさと踵を返す。
「ま、おまえの事だ。護衛なんぞ不要だろうが、しっかりやれよ」
「護衛は必要ですよぉ。荷物持ってもらわないと……僕、体力ありませんからぁ」
 ひらひらと手を振りながら無邪気に見送るナサニエル。オズワルドは一刻も早くこの胡散臭い施設から出て、葉巻に火をつけたかった。

リプレイ本文

「……よし、これなら多少の重量ならば壊れる事はないでしょう」
 帝国領北部にある町まで移動した後、ハンター達が真っ先に行ったのは荷車作りであった。
 ナサニエルの協力もあり比較的頑丈な素材で作った荷車に藁を敷き詰め、その上に観測装置を乗せる。猫実 慧(ka0393)はその出来栄えに満足そうに頷いた。
「適当にやっても出来るものだね。まあ、荷車なんて頑丈な板に車輪がついていればいいだけなんだけど……問題が一つ」
 ゆっくりと振り返る南條 真水(ka2377)。その視線の先には街中に並ぶ幾つかの荷車の姿があった。
「完成品が売っているのに、何故あえてイチから作らせたんだい?」
 荷車の前に腰を下ろし満足そうな様子のナサニエル。買えば済んだ物をわざわざ作れと言うのはこの男の指示であった。
「皆さん、作る準備もしてきたじゃないですかぁ。それに既製品なんて面白味も何もないですからねぇ」
「未知を探求するという趣旨なら共感を覚えない事もないけど、これはただの単純作業だからね……」
 正直、めんどくさかっただけである。肩を竦める真水とは対照的に楽しげに笑い、ナサニエルは小型端末を取り出す。
「何でも他人の力をアテにする人を僕は信用しないんですよ。さぁ、出発しましょうか……ウフフ♪」
 フラフラと歩くナサニエルの後に続くハンター達。エルム(ka0121)はその背中に疑問を投げかける。
「ナサニエルさんって、院長さんなんですよね? エライ方なんですよね?」
「一番エライですよぉ」
「自ら観測装置を設置しに行くなんて……現場好きなのか、それほど重要な任務なのか、どっちかですよね?」
「どっちも違いますよぉ。今回はなんとなくですぅ」
 全く理由になっていない。しかし本人はそれ以上話す気がないようで、エルムも深く突っ込む事はしなかった。
「シュネー、運べそうですか?」
「……大丈夫です、カグラ兄さん。この荷車は頑丈だし、重い物を運ぶのは軍人時代もそうだったから」
「しかし、昔と違ってこちらの世界には有効な移動手段がありませんからね。疲れたらきちんと言うんですよ」
 カグラ・シュヴァルツ(ka0105)とシュネー・シュヴァルツ(ka0352)はいとこの関係にある既知の仲だ。シュネーは黙々と荷車を牽き、カグラはその周囲の様子を警戒している。
「あの二人……リアルブルーの人間にしては鍛えられているようだね」
 二人のシュヴァルツは共に元軍人だ。普通に考えれば女性が黙々と重荷を運ぶのには違和感があるものだが、二人ともそれを当たり前のようにこなしている。シルヴェイラ(ka0726)もこれは意外だったのか、興味深そうな様子だ。
「それにしても、錬魔院の院長とはね。珍しい存在が出て来たものだ」
「仕事の行程は面倒ですが、そうそうお目にかかれない相手ですからね。上手くやれば得難いものが手に入る……帝国にも、俺にも」
 シルヴェイラの言葉に慧は眼鏡のブリッジを押し上げながら笑う。こうして一行は観測装置設置の旅に出た。


 道順は単純だ。草原から入り、荒野までは荷車で移動しつつ設置。最後に渓谷へ向かい、ここは荷車が使えないので手による運搬、そして設置で終了である。
「お、重い……」
 汗を流しながら荷車を牽くシュネー、そして後ろから押すエルム。さっさと設置を済ませて総重量を減らした所だ。
「荷車がなかったらと思うと、流石にぞっとしますね……」
「精密機械かもしれないし、なるべく衝撃を与えないように注意して運ばないと……」
 とはいえ整備された街道ではないので揺れに揺れる。今だけはさんさんと降り注ぐ太陽の日差しが恨めしかった。
「ふう……。早く済ませて部屋に戻りたいわ……」
「二人とも女性だというのに大した物ですねぇ。僕だったら速攻ギブアップしてますよぉ。そもそも太陽の光が苦手なものでぇ」
 シュネーの言葉に神妙な面持ちのナサニエル。ここでシルヴェイラと慧が運搬をバトンタッチする。
「頑張って運びたまえよ。南条さんが応援だけはしてあげよう」
「応援だけでなく、出来れば真水も手を貸してくれると嬉しいんですが……」
「それは構わないけれど、南条さんは速攻でダウンする自信があるよ」
「ウッフ! 僕と同じですねぇ!」
 何故か意気投合しガッチリと握手を交わす真水とナサニエル。その様子に慧はがくりを肩を落とした。


 一つ目の設置ポイントに到着したのは二時間後の事だ。既に疲れてきたハンターを余所にナサニエルは手早く設置を終える。
「ふむ……こんな雨ざらしの所にデリケートな装置を置き去りにしていいのかい?」
「あんまりよくないですねぇ~」
「対策なしか? ただの欠陥品じゃないか」
「でも、歪虚には狙われ辛い工夫がしてあるんですよぉ」
「ほう。どんな原理で動いてるんだい?」
「企業秘密ですぅ」
 やはり気が合う様子のナサニエルと真水。エルムは汗を拭いながら思いついたように手を叩いた。
「雨と言えば……ナサニエルさん。この装置って、改造して天気予報のためのデータ収集とかにも使えたりしないんですか?」
「うーん。天気とマテリアルの関係性がどのようなものなのかという事についての議論から始めないといけませんねぇ。僕が思うに天気とは……」
「話の腰を折って申し訳ないのですが、ここに留まっては歪虚の襲撃を受ける可能性が高まります。そろそろ次の地点へ移動しましょう」
 カグラの言葉にピタリと停止するナサニエル。指摘に納得したのか、無言で歩き出した。
「ところで、この近辺の歪虚についてカロッサさんはどうお考えですか?」
「どこにでもいる雑魚ですねぇ。全然面白くないですぅ」
「……具体的に、どのような能力の……」
「僕、弱い歪虚には興味ないんですよねぇ」
 情報の提供に全く乗ってこないナサニエルにカグラは小さくため息を零した。最初から自分で警戒するつもりだったのだから、問題ないと言えばそれまでだ。
 幾らか軽くなった荷車を押し次は荒野を目指す。徐々に草木が少なくなっていく景色を前にエルムは故郷に想いを馳せていた。
「で、四霊剣ってのはなんなんだい?」
 真水の言葉にナサニエルが嬉しそうに振り返った。それはつまり……。
「……強力な歪虚、なんですね?」
 シュネーの言葉に頷き、ナサニエルは目を輝かせる。
「四霊剣は帝国を脅かす暴食の眷属の中でも特に危険な四体の歪虚を指す言葉です。“剣豪”、“剣妃”、“剣魔”、そして“剣機”。僕が調べているのはこの中でも剣機と呼ばれるタイプなんですねぇ」
「暴食の四天王、みたいなものでしょうか?」
「ええ。最強の個体は別にいるので、こいつらはその直属の配下ですねぇ。死ぬほど強いので、多分今の皆さんじゃ死んじゃうでしょうねぇ」
 慧の言葉に笑うナサニエル。エルムは懐かしむような目から一変、思いつめたように目を細めた。
「歪虚……」
 過去にその恐ろしさを実感したエルムにとっては途方もない話だ。だがいつかは全ての歪虚を殲滅してみせる。例え相手がどれだけ強力でも……。


 二つ目のポイントへの設置も運よく雑魔に出くわさずに済んだ。三つめのポイントは距離的に近い。一行は荷車を置き渓谷へ向かった。
 手で持つのでは重すぎる為ロープを駆使し二人で担ぐような形だ。これなら移動速度はさほど落ちない。しかし一行の前に雑魔が立ちはだかる。
「おっと、ここで来ましたか」
「包囲されると厄介です。先に殺れる敵は殺っておきましょう」
 装置を担いでいる慧とシュネー。足場も悪い事もあり一度下ろすべきか迷ったが、カグラが素早く猟銃を構える。
 行く手を阻むのはスライムが二体。まだ距離があるうちに先手を仕掛ける。幸い全員が遠距離攻撃持ちだ。
「出たわね、雑魔ども。私が請け負ったからには、この依頼の邪魔はさせないわよ」
「ファンタジーの定番が出たよ。うーん……アレには鉛弾よりこっちかな」
 エルムと真水はそれぞれが杖に光を宿し、同時に矢として解き放った。カグラはシルヴェイラから攻姓強化を受け、スライムのど真ん中を打ち抜いた。
 近づこうとするスライムだが努力もむなしくあっさりと蒸発する。と、その時背後で待機していたシュネーが声を上げた。
「兄さん、後ろからも敵です」
 猛然と駆け寄ってくるのはゾンビ犬が四体。慧は暫し思案した後、装置を一人で担ぎ上げる。
「この場で戦うのは得策ではありませんね。ナサニエル、設置地点は?」
「もう少し先ですねぇ。開けている場所がありますよ」
「覚醒中なら俺一人で運べます。シュネーは護衛をお願いします!」
 崖際の狭い道で戦いが長引けば事故も予想される。慧とナサニエルは先を急ぎ、シュネーはその背後を守る様に同行。残りのハンターは接近する犬を迎撃に入る。
「歪虚はバラバラにしてやるわ!」
 マジックアローを放つエルム。だが犬は素早く身をかわす。
「早い……!」
「うえー、なんて可愛げのない犬なんだ。ゾンビか犬かのどっちかにしてくれよ、もう」
 リボルバーで狙いを定める真水。その銃弾をかわし、犬が勢いよく飛びかかる。カグラは一歩前に出るとその牙を剣で受け止めた。すかさずシルヴェイラが機導砲を打ち込み吹き飛ばした。
「一人一人狙ってたら駄目だね。逃げ場を予想して連携して仕掛けよう。足さえ止めればこっちの物さ」
 真水の指示に従い立て続けに攻撃を放つ四人。すると犬に一撃命中した途端、次々に銃弾や閃光が集中し腐った身体を屠った。だが残りの犬がハンター達へ飛びかかる。
 再び剣で受け止めたカグラの隣でエルムが腕に噛みつかれ押し倒されてしまう。そして更に一匹、迎撃を抜けて奥へと向かった。
「抜かれてしまったか……!」
 振り返るシルヴェイラ。犬は走る慧の背を追うが、その間にシュネーが立ち塞がる。
 猛然と駆ける犬。カグラは剣で自分を襲う個体を押し返し、振り返ると片膝をつき狙撃の構えを取る。背を向けシュネーへ向かう犬、その足を素早く撃ち抜いた。
「兄さん、流石です」
 転倒する犬へ駆け寄り、低い姿勢からダガーを滑らせるシュネー。首を深く切り付けると犬はもがき、ぱたりと動かなくなった。
「全く、本当に可愛げがないな!」
 エルムを襲う犬へ銃口を突きつけ引き金を引く真水。怯んだところでエルムは押し返し、零距離で光の矢を撃ち込んだ。
「これで最後です」
 従妹を援護していたカグラへ飛びかかろうとしていた犬を機導砲でシルヴェイラが撃ち抜く。雑魔が全て蒸発したのを確認し、四人は先を急いだ。


「はい、これで全箇所設置完了です。お疲れ様でしたぁ」
 他にも雑魔と接触するかと警戒を続けたハンター達だがそれは杞憂に終わった。最後の装置を設置したナサニエルを連れ、一行は渓谷から離脱する。
「結局一人で全部設置してしまいましたね。私も何かお手伝い出来ればよかったんですが……」
「荷物、持ってくれたじゃないですかぁ。そういう依頼ですよ、これ♪」
 苦笑を浮かべるエルム。傷も自力で癒せる程度、既に痕も残っていない。
「しかし歩くだけでもくたくたです。早く帰りたいですねぇ」
「その気持ち……わかります」
 こくこくと頷いて同意するシュネー。カグラは腕を組み溜息を零す。
「……引きこもりたいのはわかりますが、自室で猫とじゃれ合ってばかりというのも考え物です」
「でも、今日は凄く歩いたし、力仕事もしたから……休息は必要です。ねっ?」
 カグラは何も言わずに頷いた。確かに今日は良く働いたのだ。少しくらい時間を忘れて猫と遊んでもいいだろう。
「いや実際、かなりの疲労だろうね。荷運びしてない南条さんが言うんだから間違いない」
「……リアルブルーの人間か。きみ達は面白いね」
 口元に手をやり微笑むシルヴェイラ。慧はこほんと溜息を一つ、ナサニエルに声をかけた。
「ナサニエルはCAMってご存じですかね?」
「ええ、勿論ですぅ。非常ぅ~に興味深いですねぇ」
「そう言ってくれると思っていましたよ。CAMは俺達の平気ではヴォイドに対抗する強力な兵器でした。その力があれば四霊剣とやらにも対抗できるかもしれません」
「でも動かないんでしょう? 燃料がないとかでぇ」
「問題はそこなんです。実機はこちらの世界に既にあるわけですから、動力さえ確保すれば……」
「できますよぉ、動力くらい」
 あんまりにもあっさりと答えたので、慧も目を丸くしてしまう。
「ほ、本当ですか?」
「ええ。だけどあれ、僕に触らせてくれないんですよねぇ。錬魔院は帝国の為だけにその力を使う組織です。僕がCAMを扱う事はどの国の人もよしとしないでしょう。そうでなければ今すぐにでも研究したいんですけどねぇ……」
 本当に残念そうにがっくりと肩を落とす。自分なら動かせる……それが事実なのか己への過信なのかは不明だが、慧は可能性を感じていた。
「今のCAMではなくとも、この世界により適した形状があると俺は考えています。その設計にはこちらの世界の技術者の意見が不可欠でしょう」
 ナサニエルは急にくいっと顔を上げ、極端に慧に顔を近づける。それから不気味にニヤリと笑ってみせた。
「あなた、結構面白い人ですねぇ。その野望に満ちた目……未踏の未来を語る舌。僕好みですぅ。あなたとだったら、お友達になってもいいですよぉ」
 ひょいっと身を離し代わりに手を差し出すナサニエル。慧はその手を握り返す。
「アキラと言いましたか。いいですねぇ。あなたの野望、僕にもっと聞かせてくれますかぁ?」
 こうして無事に依頼は完了された。
 尤も、この装置が本当に効果を発揮するのかどうか、ハンター達の知識では判断の仕様もない事だったが。
「あ。壊れたらまた設置をお願いしますねぇ」
 そんな不吉な言葉を疲れた背中で聞き流しつつ、一行は帰路へ着いた……。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 7
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧


  • カグラ・シュヴァルツka0105

重体一覧

参加者一覧


  • カグラ・シュヴァルツ(ka0105
    人間(蒼)|23才|男性|猟撃士
  • 魔弾の射手
    エルム(ka0121
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 求道者
    猫実 慧(ka0393
    人間(蒼)|23才|男性|機導師
  • 時の手綱、離さず
    シルヴェイラ(ka0726
    エルフ|21才|男性|機導師
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼相談スレッド
猫実 慧(ka0393
人間(リアルブルー)|23才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/06/28 18:34:23
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/25 01:00:05