すなおになれなくて

マスター:明乃茂人

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2014/06/16 15:00
完成日
2014/06/25 22:45

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


●ほーる
 賑やかな喧騒が響くホール。
 暖かな照明が一同の顔を照らし、柔らかいソファが座る者を心地よく包み込む。
 そう、君たちハンターが日頃僚友と詰めている、ハンターズオフィスの受付だ。
 軽く見回してみるだけで、様々な顔が窺える。
 顰めっつらで依頼を請ける者がいれば、ホッとした顔で任務を終えた者もいる。
 常ならば喧騒が途絶える筈のないその部屋に、一際大きな音が響き渡った。
「――」
 しん、とした一同が、音の方向――入り口の扉を見ると、
「……ら、を……」
 ボロボロの装備を纏った少女が、今まさに崩れ落ちるところだった。

●むらからのかえりみち
「う、くっ……!」
 身の丈を優に超える草木の中を、少女は踏み入ってゆく。
 辺りには高くそびえる木々が並び、傾斜がキツいせいか、歩くだけで消耗する。
 足元をよく見てみれば、うっすらと道のようなものも見える。しかし、それが見えたところで、少女の非力さでは一苦労というものだった。
 少しだけ足を止め、背後へ視線をやる。
 ――まだ、遠い。先ほど確認した目印からは、然程距離が稼げていなかった。これでは、目的地までもう少し掛かってしまいそうなところである。
 乱れた呼吸を整えると、濃い草の匂いが胸一杯に広がった。
「お爺のやつ、あんなこと言って……ボクにだって、やれるはず……っ!」
 歩きながら、少女は先ほどまでのやり取りを反芻する。

●こきょうのむらにて
「やはり、無理なんじゃあないかのぅ……」
 久々の帰郷だった。だというのに唯一の肉親が言うことは、尽くが自分を否定するようなものだったのだ。
 思わずむっとして、
「なんだい、その言い草。久しぶりに帰ってきた孫へ向かって、酷いんじゃないか、そういうの」
「……可愛い孫娘に会えると、楽しみに待っておれば……なんじゃ、その格好。キラキラのごてごてで、昔とは大違いじゃあないか」
 祖父の少しふくれた顔を見て、少女は自分の格好を見なおしてみる。
「そう、言われてもなぁ」
 確かに、祖父の言い分もわかる。昨年まで故郷に居た時の少女は、それなりに祖父の好むような格好――ふわっふわでひらひらとした、如何にも少女然とした服装――で過ごしていたからだ。けれど、
「仕方ないじゃあないか。実際、修行に出てみたらこっちの方が便利なんだもの」
 言い終えて、くるりと祖父の前で回ってみせる。
 手はごてごてとした金属――鉱物性のマテリアルを弄る時に役立つ素材――が縫い込まれたグローブで覆われ、
 肩や手にも、水色に輝く水晶――の、ような素材である。これも補助に役立ってくれているのだ――がくっついている。
 成る程、確かに“ごてごて”で“きらきら”である。
 少女も納得ものであった。が、その後に祖父が付け加えた言い分が気に食わない。
「修行はわかる。そりゃあ、昔からお前さんは村に出入りする機導師と仲が良かった」
 そうして少し言葉を溜め、祖父はこう言ったのだ。
「けどのぅ、……お前さん、まだ小さすぎるんじゃないか、やっぱし」
 
●やまのなかば
「ったく……いい加減にして欲しいよ、ああいうの」
 若干むくれた顔で、少女は独りごちる。
 こんぷれっくす直撃のことを言われて、少々トサカにきていたのだ。
 そりゃあ、確かに背は小さい。街で見る同年代の子どもと比べても小さいし、同僚の大人たちとは比較にすらならないだろう。
 けど、けれどもだ。
 わざわざ故郷の村から出て山を降り、街の機導師ギルドへ修行に出た我が身。
 今更背の小ささなど、些細なことではないか。
 それを今になってやれ少女らしくないだの小さいだの、何をかいわんや、だ。
 言われたことに腹が立ち、よし、ならば帰りの道中にある洞穴へ赴き、貴重な鉱物資源を掘り出してから帰ってやろう。狭い場所も存分にある洞窟の中、小さい背丈を存分に活かしてやろうではないか。などと、思ったのが間違いであった。
 なにせ、暑い。そして着ている服が地味に重い。
 よく考えてみれば、故郷へ戻るのに機導師の格好をする必要はなかった。晴れ姿、だのと考えて、一式揃えて帰ったのが、そもそもの間違いであったのかもしれない。
 自分の見栄と、それが生み出したあれそれへ考えを向けていれば、もうすぐ目当ての洞穴に着こうとするところだった。
 そう、あの小さな崖を超えれば、馴染みの洞穴までまっすぐに見渡せる――
「……ん、あれ、は、」
 ――はず、だった。少女は、気づいてしまったのだ。
 ツンと鼻を突く獣臭。踏み折られた草木、変色した崖の土。
 洞窟周辺から隠しようもなく伺える、『ある気配』に。
「ッ……!」
 動悸が治まらない胸を抑え、少女はそっと風向きを確かめる。こちらは風下、今はまだ、見つかる恐れはない。
 とは言え、油断は禁物だ。深入りは危険であり、おまけに自分は唯一人。何ができようものでもない。
 じっと息を整え、少女はゆっくりと中が伺える方の入り口へと向かって行く。
 もう一つの入り口へは、姿勢を低くして移動してもすぐに着いた。
 少し待つと、入り口から小型の亜人の姿が見えた。そう、コボルトだ。
(ここから伺える様子では、まだそれ程の数は揃っていない。なら、自分が一人先行して更に情報を得るべきか?)
 ここでちら、と洞窟に視線をやり、
(いや、ソレも危険だろう。慣れ親しんだ場所とはいえ、足元には採掘で出た小石が散らばっているし、中はよく音が響く。もし石でも蹴飛ばしたら、一巻の終わり。なら――)
 一瞬だけ、少女の頭の中を様々な情報が駆け巡る。
 しかしすぐに振り返り、そっと音を立てないようにして山を下っていく。
 向かうところは、決まっている。自分が修行に出ていた場所、街にあるハンターズオフィスへ――

●ほーる
 少女は介抱され、喋れるようになるとすぐに立ち上がろうとした。
 しかし、自分の身体すら支えられずに、椅子の上へ崩折れてしまう。
 周囲に支えられ、ようやく座り直せる自分の身体を少女は見下ろし、強く唇を噛みしめて、
「……ッ!」
 何かを決意した顔で、君たちの方をじっと見据えた。
 走り通した脚は震え、幾度も転んだのだろう、両掌にも血が滲んでいる。
 けれど少女は君たちに向け、まっすぐな瞳でこう告げた。
「おっ、お願いです……村をっ、お爺を……!」

リプレイ本文

●ハンターズオフィス内
「おっ、お願いです……村をっ、お爺を……!」
 まっすぐに見つめる少女の言が途切れる前に、響く声があった。
「この依頼、現時刻をもって正式にハンターズオフィスからの依頼とします。詳細は――」
 受付からのアナウンスが出ると、すぐさまハンター達が行動を開始した。
 リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は自分でもらしくない、と思いながらも、
「よく、頑張ったな……」と少女に一声告げて、早速右腕の調子を確認し、
「ぇ、あっ……」
「俺様よりちいせぇのに、いい根性だ。……大まかな設備と、敵の数は」
 矮躯のドワーフ、アクアレギア(ka0459)は聞き込みを始めた。
 場所は山で、地形は洞窟。採掘場なため、火は使わないで欲しい――などと、ひと通りの説明が終わると、
「へっ、中々上出来だぜ、ホットガール……その頑張りは、無駄にはしねぇ」
 蒼界(リアルブルー)からやってきた霊闘士、キー=フェイス(ka0791)がぎちりと拳を握りしめた。
「ふむ……つまり、入り口が二つ、奥は行き止まり……ということでしょうか……」
 Luegner(ka1934)が少女に確認を取り、そのままオフィスへ追加の質問に行くと、
「その地形、場所となれば早めに討伐しなければなりませんね……責任、重大です」
 紅界(クリムゾン・ウェスト)出身ライエル・ブラック(ka1450)が、手に持ったメモを握りしめる。
 が、少しして、少女の方に顔を向けると、
「絶対に、村の危険は取り除くからね。大丈夫、ここにはリアルブルーのハンターさんも沢山いるんですから!」
 少しおどけるように、――少女を、元気づけるように、辺りを見回してみせる。
 ひと通り聞くことも尽き、すわ出発かとなって一つ問題が出た。
 この地形ならば挟撃がベターだろうが、それには少し数が足りないのだ。
「まぁ、できなくもないだろうが……もう少し頭数があれば手間は少ないだろうな」
 省エネ主義の西東 続(ka0766)がそう呟くと、近くに座っていた男が立ち上がった。
「……村の近くにコボルドが住み着いたら、危険だろう。ならば、俺も尽力させて貰おうか」
 背は高く、弓矢を携えた猟撃士の男――アバルト・ジンツァー(ka0895)は、そう言って一同に加わった。
 出口へ向かっていく一同の背中に、少しだけ不安げな視線をやった少女へ、
「……チッ。依頼は受けた。後は安心して任せな、ガキンチョ」
 そっとひと声かけて、黒髪黒目の疾影士、阿鳥 宗平(ka1958)はすぐさま依頼の処理を終え、先に行った一同へと合流していった。

●洞窟付近にて
 ハンターズオフィスから移動して、およそ夕刻のことだった。
「では、そろそろ細かいところを詰めておくとしようか」
「そう……ですね。陣形と……こちらが、大まかな内部の地図になります」
 アバルトが切り出したところに、Luegnerが先ほど書いた見取り図を出して応じる。
「奇襲か陽動、か。なら、オレは陽動側だ。細かいことは、おまえらに任せる」
 地図を覗きこんだ阿鳥がそう言うと、一同も各々の希望を出してゆく。
 それぞれが希望を出し終えて、大まかに配置が決まった辺りで、
「おっと、お前らに忠告だ。ここは鉱山設備、コボルドの野郎が武装してるかも知れねぇ」
 ドワーフのレギアが、一応といった様子で告げた。
「……言っとくがな、コボルドが使ってるからって設備を壊すんじゃねぇ。道具や環境に、罪はねぇんだからな」
「……念のため、コボルドたちが利用するかもしれない地点を挙げておきます。
 ここ、……次は、ここ、あとは――」
 Luegnerが、順に地図を差していく。それを見ながらも、リカルドは内心、
(コボルドねえ、ファンタジーでしか見たこと無いが)
 などと思いつつ、右腕のバッテリーを確認していた。

●第一の入り口
「それでは……手筈通りに」
「まずは、隠密行動……だろう? 了解だ」
 右腕をきしませながら、Luegnerにリカルドが応じると、
「なら、意識するのは風向と足音、だな」
「へっ、始まったら最後、俺は走り抜けるだけだ……邪魔するやつは、轢き殺す」
「……見つかるまではしっかり頼む。その後は、まぁ任せるが」
 落ち着いている続が、血気に逸るキーを諌める。
 全員が一度目配せをすると、奇襲班はもう一つの入り口へと向かっていった。

「ではっ……行きます!」
 奇襲班の姿が見えなくなってから、遂にライエルはその一歩を踏み出した。
 ずんずんと洞窟の入り口へ近づき、右手に持つ石を握りしめる。
「いるのはわかってんだ、とっとと出て来いコボルド共が!」
 背後からレギアの声が聞こえてくると、奥の方から複数の気配。そちらへ狙いを定め、
「えいっ!」
 力いっぱい、右手に持った石を投げつけた。するとなにやらぶつかった音、と、
「――えっ」
 ライエルの足元に突き立つ、洞窟内で使われていた採掘工具の姿。
 ゆっくりと視線を上げる。
 そこには、怒りに顔を歪めて頭を押さえたコボルドと、背後に並ぶその仲間たち。
「わっ、わぁぁ!」
 先ほどまでの勇ましさとは一転、すぐさまライエルは入り口の方へと取って返す。
 すわ、ライエルに凶刃迫る――となった辺りで、
「ガァァァ……ガッ!?」
「――問題ない」
 直近のコボルドへ、アバルトの弓矢が突き立った。次いで、その背後の個体にも。
 唸りを上げて次々と、矢弾が飛来し、コボルドたちを穿ってゆく。
「陽動を……開始、します。では……ライエルさんも……」
 次に飛び込んできたLuegnerが、促すように頷いた。
「……ッ!」
 何かを察したライエルの、全身に力が漲った。
 背後へ一瞬だけ戦乙女の姿が浮かび、消えると同時、全身には神々しい光が纏われる。
 ――覚醒者の秘めた力を解き放つ、『覚醒』だ。
「へっ……中々派手じゃねぇか」
 呟くと、阿鳥もまた、『覚醒者』に潜む異能を意識する。
 一瞬だけ、両目を瞑り、深く呼吸を整えた。
「じゃ……オレも行くぜェ!」
 眼は炯々と光を湛え、拳は紅い光芒を引く。巡る力を意識しながら、阿鳥は眼前の敵へと跳躍した。

●第二の入り口。
「おっぱじめやがったか……」
 最後に、と右腕の調子を確かめていたリカルドが、空を見上げて呟いた。
 響く喧騒は剣戟と野獣の叫びをはらみ、陽動班の活躍を感じさせる。
「……繰り返すが、初めは隠密。いいな?」
「あぁ。潜むところは潜んで、後は走り抜ける、だろ? じゃ、行くか」
 奇襲班の一行は、足音を潜め、要所でだけLEDライトを使い、慎重に進んでいく。

 踏み込んでから少し、キーが一同の脚を止めた。
 怪訝な顔をする二人に、無言で目前の曲がり角を指し示す。
 よくよく気配を探ってみると、先からなにやら物音が。キーとリカルドはそっと目配せ、そのまま壁に張り付いた。続が先を伺うと、二体のコボルドが、今まさに曲がってくるところ、で――
「――!?」
 一瞬の、早業だった。
 一方は『踏込』からの『強打』。
 リカルドは背後からコボルドへ接近、すぐさま後頭部へメリケンの一撃を叩き込んだ。
(ッ、コレはッ――!)
 一瞬の手応えで人間との違いを感じつつも、すぐさま腎臓へトンファーでの刺突。コボルドは声一つ上げることなく絶命した。
 他方では、『闘心高揚』での一撃。
 一瞬で総身に力を漲らせると、キーはコボルド咄嗟の一撃をダガーでいなし、そのまま急所へ一閃。こちらも無音のままに決着した。
 続が周囲を確認。安全を静かに確かめる。
「てめぇ……個性的(ユニーク)じゃねぇか。前からこんなことばっかしてた、ってわけか?」
「……今は、ただのコックだ」
 一瞬の戦闘が終わり、少しだけ軽口を叩く二人に、続の声が届く。
「二人共、そろそろ……だ」
 一行は再び気を引き締め、先へ進んでいった。そうして、遂に陽動班が戦うすぐ近くまで辿り着いたのだ。
 
●終結
 初め、戦闘はある意味で膠着していた。
「オラオラァ! ンなもんで終いかァ、てめぇらァ!」
 前線を駆け巡り、確実に敵を沈めていく阿鳥。
「阿鳥さん……突出し過ぎです。……もう少し、慎重に」
 隙を補う堅実な立ち回りで、壁を作り上げるLuegner。
「Luegnerさん、回復します! レギアさん!」
 前衛の二人を回復し、全体を見渡すライエルと、
「こいつをっ、喰らえ……!」
 距離を取り、遠間から機導砲の一撃を叩き込んでいくレギア。
「……!」
 そして、静かにフォローを重ねるアバルトの活躍により、確かに陽動班は、入り口に敵を引き付けていたのだ。
 ――加えて、
 「どうしたァ、獣臭ぇ××野郎!!」
 突貫してきた奇襲班の合流により、およその敵を討つこと成功していた、とも言える。
 が、しかし。こうした時にこそ、不慮の事態というのは起きる。
 
 初めに気づいたのは、適度に力を温存し、広い視界を保っていた続だった。
 戦っていた自分たちの背後、もう一つの入り口から、先程は外に出ていたコボルドが迫っていたのだ。
 次に気づいたのは、前線で敵と殴り合っていたはずの阿鳥だった。
 外部に出向いていたコボルドの一団が、陽動班の後衛へと迫っていた。
「――ッ!」
 気づいているのは二人だけ、対応する時間は少し。
 対応を誤れば、即座に前線が崩壊することもあるこの状況。
 挟撃のはずが一転ピンチに陥った、その上で――
「で、それがどうした?」
 ――続は、一切迷わなかった。
 即座にスキルを全開駆動、『ランアウト』を発動し超人染みた体捌きで敵へ迫ると、『スラッシュエッジ』で的確にコボルドの急所を抉っていく。
 そのまま複数の敵にも怯まず、着実にトドメを刺していき、手痛いダメージは『マテリアルヒーリング』で回復していった。

 阿鳥の方はと言えば、
「へっ……少しは盛り上がって来たかァ!?」
 『立体感覚』で得た情報を利用し、最短の経路を導き出すと、そのまま『ランアウト』でコボルドへ肉薄。
 『スラッシュエッジ』で全身に巡らせたマテリアルを駆使し、両拳を複数の敵へと撃ち込んだ。
 敵方の増援をほぼ一瞬で叩きのめすも、その中のわずか一体だけ討ち漏らしていた。
「チッ……!」
 阿鳥が体制を崩したその瞬間に、コボルドが振りかぶるも――
「やらせない……!」
 コボルドの手首を、『強弾』で強化された矢が貫いた。
「阿鳥ッ!」
 続けざまに弓矢を放ち、コボルドを追い詰めるアバルトへ、
「……へっ……」
 阿鳥は一瞬だけ笑みを向け、すぐさま最後の増援へと突進した。

 続、阿鳥と戦力が立て続けに抜けた両班も、挟んだ敵はあと少し、というところだった。
「こいつも仕事だ、悪く思うな……!」
 リカルドは流れるようにコボルドへ接近、右腕を前に出したジークンドーの構えから右拳を撃ちだした。
「ギ、ギィ……!」
 呻くコボルドの腕を取り、そのまま回転させたトンファーを左の側頭部へ打ち込む。即座に右のボディ、アッパーのワンハンドコンビーネーションを叩き込んだ。
 右腕の軋みを全身で感じつつ、リカルドは倒れ伏していくコボルドを見下ろしていた。
 想像上の産物だと思っていた動物が、目の前で倒れている。考えると奇妙な状況だが、まだ戦いは終わっていない――

 最後に残ったコボルド――その前で、キーはLuegnerと共闘していた。
「××野郎、いい加減くたばりやがれ!」
 言いながら斬撃を繰り出すも、このコボルドは中々しぶとく凌いでいた。
「窮鼠猫を噛む……といったところでしょうか。中々……厄介です」
 コボルドが繰り出す攻撃をラウンドシールドでいなしつつ、背後へ一瞬目をやった。
 後方で構えていたレギアとライエルは、その視線を捉えてか各々が面持ちを固くした。
 『メイスファイティング』により強化された握力で、ライエルのロッドが軋む。
「ギァッ!」
「ぐっ……こんの×××がァ!」
 気勢を放ちつつキーの横をすり抜けたコボルドが、Luegnerの死角をついて逃れようとした、その時だった。
「やらせません!」
 咄嗟にロッドを捨て、懐からダーツを手に取った。すぐさま狙いをつけると、コボルドに向かい投げ放つ。
「ギッ……!」
 見事足に命中し、動きが止まったコボルドへ、
「コイツで、止めだ……ッ!」
 レギアの構えていた、最後の機導砲が直撃した……

●それぞれの思い
 戦いが一段落した後は、洞窟内を全員で見回っていた。
 松明は使えないがLEDライトは使えるため、持っている人間がそれぞれ灯り役を担いつつ回っていたのだ。
 警戒は怠らなかったが、結果としてその警戒も杞憂に終わった。
 一行が戦ったコボルドが、この洞窟に住み着こうとしていた集団の全てだったのだろう。

 捜索を終えた一行は、少女の村へ報告してから依頼人の元へ戻るつもりだった。
 が、そこで祖父から少女とのいざこざを聞き、各々が思うところあったようである。
 例えば、レギア、キー、Luegnerなどは祖父へ向かってこう言った。
「爺さんよ……今回の依頼、アンタの孫は、ガキならできねぇことをした。
 そこは、認めてやってもいいんじゃねぇか。
 どんな格好だろうが、どんな道を目指そうが、そいつはそいつだ。
 あ? 小さい? ……俺様はドワーフだ。多種族から見りゃぁ、小さくて当たり前だろ」
「あぁ、礼? ……チッ、礼はてめえの孫に言いな。必死に走ったお嬢ちゃんがいたから、間に合ったんだ」
「お爺さん……お孫さんを心配する気持ち、よくわかります……。
 ですが……正しい判断を下し、肉親を心配できるお孫さんのことを……
 どうか、信じてあげてください……」
 加えて、依頼人の少女の方にも、
「あー……一先ず、余計な見栄はるのはやめておけ。
 それで損したら、目も当てられん。
 だけどな、冷静に自分のできることを見極めて行動したのは凄い。
 そうやって行動していけば、いつかは爺さんも認めてくれるさ」
「もう安心ですよ。コボルド達は……掃討しました」
「次は、肩並べられるように強くなれよ、ガキンチョ」
 などと、続、ライエル、阿鳥が結果報告をしたようである。
 少女は、安心したような顔でほっと一息をついた後、まだ何か言いたげだったLuegnerに問いただしてみた。
 すると、ひと通り任務の報告をした後に、
「そう、ですね……やはり、お爺さんの気持ちも……
 理解してあげてもらいたい、と思います……。
 お爺さんは……子供が自分の敷いたレールから外れると心配なものなのですよ……
 たとえ……私みたいな大きな子供だとしても……」
 と言い、少し遠い目になって、こう続けたのだ。
「それに……肉親を心配する気持ち、は……よくわかったのではないですか……?」
 そう言われて、少女はなんだか納得できる気がした。
 自分も、お爺も、結局は同じ思いだったのだ、と。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 7
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーン(ka0356
    人間(蒼)|32才|男性|闘狩人
  • オキュロフィリア
    アクアレギア(ka0459
    ドワーフ|18才|男性|機導師

  • 西東 続(ka0766
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士

  • キー=フェイス(ka0791
    人間(蒼)|25才|男性|霊闘士
  • 孤高の射撃手
    アバルト・ジンツァー(ka0895
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 仁愛の士
    ライエル・ブラック(ka1450
    人間(紅)|15才|男性|聖導士
  • 私の話を聞きなさい
    Luegner(ka1934
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人

  • 阿鳥 宗平(ka1958
    人間(蒼)|27才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談用スレッド
Luegner(ka1934
人間(リアルブルー)|18才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/06/15 20:26:41
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/13 12:18:39