【未来】理想を形に

マスター:奈華里

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/11/06 22:00
完成日
2019/11/19 00:08

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ギア
 ここは少し未来のフ・マーレ。この街では以前と変わる事無く職人が仕事に精を出している。
 そして、彼――過去に期待のルーキーと呼ばれたギア=ルキウスは今、お世話になっていた工房を離れ、とある人物と共同で工房を開いている。そう、その相方とは『あの男』だ。
「そろそろ飯にしようぜ。頭使うとすぐに腹が減っちまう」
 机に広げられた図面を余所にスペアが言う。
「はぁ、もうガス欠ですか? 相変わらず燃費が悪いですね」
 そう言うのは勿論ギアだ。
 相棒に視線を向けることなく、鉛筆片手に細かな部分を書いちゃ消し書いちゃ消しを繰り返している。
 そんな彼の態度に一瞬ムッとしかけたスペアだったが、この工房を初めて早三年だ。
 さすがに昔ほど噛みついていきはしない。
「あぁ~はいはい、ガス欠結構。俺はそんな無理するタイプじゃないもんで。それに無理しようがしまいがちゃんといいもん仕上げれば構わないだろ? あんたみたいに真面目過ぎるとすぐぶっ倒れるって」
 そう言っては手をパタパタさせながら昼食を求めて、馴染みのパン屋へと歩を進める。
(だいぶ構想は固まってきたか……いや、でもはたしてこれでいいものなのか?)
 そこでギアはスペアが出て行った後も集中して図面と睨めっこ。
 彼が書き上げ作り上げようとしているもの…それは新たな可能性。武防具なるもののの開発だった。

「僕と彼がですか?」
 彼らが共同の工房を持つきっかけとなった理由――それはそれぞれの工房長からの提案によるものだ。
 二人が組合の寄り合いが行われる場所に呼び出されて、提案されたのが事の始まりである。
「ギア、おまえの腕は確かなものだ。それは今までの仕事を見てきた私が保証する」
「こっちもだ、スペア。まあ、確かに途中でムフフに走った事もあったがアレはアレで男なら(多分)通る道だ。それにあのビキニアーマーだって、そりゃそんじょそこらの鎧よりは確かに頑丈でいい出来だったしな」
 それぞれの工房長が二人を称賛する。そして、こう付け加える。
『だから、二人が組めば更なるもんができると思う。いっちょ、やってみる気はないか?』
 と。平和になるにつれて武器や防具の需要は減っていた。ただ、それでもゼロにはならない。
 人同士のいざこざもあるし、娯楽としての武闘大会や野良雑魔の出現もない訳ではない。
 けれども、減っている事に変わりない。そこでフ・マーレの武器及び防具職人達は彼らに賭けようというのだ。
「何で一緒なんだよ。別に俺個人でもなんとか…」
「それは駄目だ。作って欲しいのは武器にも防具にもなる代物だからな」
「はあ? 正気かよ」
 スペアが思わず言葉する。
「それはつまり…一つで二度おいしいようなそんな万能アイテムを作れという事ですか?」
 それを聞いてギアが確認するようにそう尋ねる。
「まあ、簡単に言えばそうだな。ほら、だいぶ昔に君達二人は矛盾の逸話のような事件に巻き込まれただろう。あれを思い出してね。どっちが強いを決められないのなら、いっそのことどっちも強いものを作ればいいのではないかという事になった訳だ」
 ギアの工房長がいともあっさりと言ってのけるが、それはそんな簡単なものではない。
 武器にもなり防具にもなる、すなわち武防具という新しいジャンルのそれを彼らに生み出せと言っているのだ。
「そんなの、出来る訳…」
「いや、出来ないとは言い切れないかもしれない。現に棒や槍はある意味武防具ともいえるから」
「ぐっ…」
 無理だと言おうとしたスペアに対して、前向きに検討するギア。
 その態度を見て、彼の負けず嫌いの心に火を付けた。が頭にはまだ該当例がでていないらしい。少し言い淀む。
「そ…そう言われてみれば、そうだけども……その、あれだ。投げる盾とかあれば」
「そう、それもそうですね。だから、作れない訳ではないんだ…」
 苦し紛れに口を出た言葉にギアから同意を貰い、スペアは少しホッとする。
「なら、決まりだな。開発場所となる工房は組合側が用意する。新しいものではないが、二人で好きに使っていい。仕事もそっちで受けながら、開発に当たってくれ」
 今度はスペアの工房長がそう言い、早速その工房とやらに案内する。
「うひょー、工房付きってのは確かに魅力だな」
 スペアが浮かれる中、ギアはすでにスイッチが入ったようですでに考え始めているようだった。

●スペア
 さて一方あの後のスペアはパン屋備え付けのカフェスペースでサンドイッチを頬張り中だ。
(はー、やだやだ。確かにあいつは頭はいいし、斬新なアイデアは出してくるけど奇抜過ぎるんだよなぁ)
 大剣があるのだからと始めに言い出したのは幅広の剣というよりは肉切り包丁の方な剣盾の案だった。
 確かに剣の幅があれば盾代わりにはできるだろう。しかし頑丈にするには重量も必要で、それを片手あるいは両手で支えて振り回すのはなんだか滑稽すぎやしないか。それに腰に下げたら非常に歩きにくいので却下した。
 次に出たのは確か玉すだれ型だったか。自在に動かせるすだれなら攻撃と防御は確かにできる。金属で作って先を針のようにすれば敵を傷つける事は可能だし、意表もつける。悪くはなかった。だけど、マストではない。何せあのすだれだ。攻撃力が低過ぎる。
「あー…もう、やめやめ。食事の時は食事に集中しないと」
 齧りかけの卵サンドを口に放り込んで、もぐもぐと咀嚼する。
 行く人々は思い思いにお昼休みを楽しんでいた。そして、それはハンターらしい人々も同じだ。
「…とちょっと待てよ。どんだけ俺らが考えたって使うのはハンターだよな。だったら、俺らだけじゃなくて直接聞いて、何なら手伝って貰った方がいいんじゃないか?」
 二人で一から十まで作るのは一苦労だ。
 今は修理やメンテだからいいが、製作開始するなら人出は確実に足らない。
「よし、決めた。アイデア出しの為にもスタッフを募集しよう」
 スペアが残りのスープとコーラを飲み干し駆け出す。行く場所は勿論ハンターオフィスであった。

リプレイ本文

●自覚
「えーと…これはどういう訳ですかね?」
 突然のハンター来訪にギアが言葉を失う。その様子に依頼を受けてきたハンターも困り顔。
 というのもあの依頼はスペアの独断によるもので、ぶっちゃけるところ話がまだ通っていなかったようだ。
「おっはよー…っと来てるな。ギア、こちら見ての通りハンターの皆さんだ。制作に行き詰ってる感あったから刺激にと思って要請しておいたぜ」
 そんな彼らを余所にスペアは完全マイペース。さて、今日は何から取り掛かろうかと袖をまくり、修理依頼を受けている盾やら小手に視線を向けている。
「…スペアさん、こういう事はもっと早く言ってくれないと…」
 付き合いはそれなりに長くはあるが、どうもまだ互いの事を完全に理解はできていないらしい。
「で結局私達は何をすればいいのでしょうか?」
 フリフリの衣装で半ばお人形さんのような姿のルミ(ka3728)がかくりと首を傾げる。
「確か武防具の開発を手伝え…という事だった筈だけど、攻防一体型かぁ。さすがに難題だね」
 やってきたはいいものの、アイデアがそう簡単に出はしない。鬼塚 陸(ka0038)がそう言葉する。
「はぁ、またなんて安直な依頼を……不躾に失礼しました。まずはお話を聞かせて下さい」
 その事を聞いてギアは軽く頭を下げて、とりあえず彼らを二階の研究室兼資料部屋に促す。
「あの~私は作ってほしいメイスがあってきたんだけれど…」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)が少し遠慮がちに言う。
「ご依頼でしたら、それも後で承ります。ともかく発注表も上にありますので、まずはこちらへ」
「本当っ! やったやった、来てよかったの~♪」
 言い出し辛かった手前、希望に沿う返事を貰えてゆるふわな銀髪を揺らす彼女。
 三人がギアに連れられ上がる中、たった一人スペアに興味を示したのはレイア・アローネ(ka4082)だ。
「お前も職人なのだろう? 行かなくていいのか?」
 スペアの姿を見つめ問う。
「ん? いい、いい。俺は俺のやり方があるし、それに俺は防具職人だから…ってそれ、勿体ねえのな」
 手元から視線を彼女に移すや否や、スペアがぽつりと呟く。
「はあ? 何が勿体ないと言うのだ?」
 その意味が判らずレイアが聞き返す。するとスペアはすたすた彼女の傍に近付いて、見つめる先は彼女の身体。至近距離で男性の眼に晒されては流石のレイアとて落ち着かない。
「な、なんだ……それ以上近寄ってみろ、命の保証はできかね…」
「あぁ、悪い。…俺はただ、あんたのそのビキニアーマーを見てただけだから」
「はぁ? ビキニだと?」
 スペアの言葉にレイアの頭上に?が浮かぶ。どうやら彼女、自分の鎧がビキニアーマーである自覚がなかったらしい。だが改めて見ると、それはまさしくビキニアーマーそのもの。動きやすさを重視して着ていたのだが、自覚してしまうととにかく恥ずかしくなってくる。
「わ、私は今までなんてものを…」
 慌てて近くにあったマントを羽織る彼女。普段男勝りな分、乙女スイッチが入ると止められない。
(いや、でも待て…発売されているという事はつまり、これは一応鎧なんだからして、恥ずかしいなんて観点は捨てていい筈…でなければ、私は今まで、なんて姿を晒して!)
 レイアがその場で顔を赤らめおろおろする。そんな彼女に今度はスペアが首を傾げる番だ。
(俺なんか変な事言ったっけか?)
 職人の性なのか、その道以外の事にはめっぽう鈍い。
 そんな二人の元に救いの手――純粋に手伝いを目的に来たルミが下へと降りてくる。
「私はギアさんに有益なお話しで来そうもないので、こっちを手伝わして…って、あれ? どうしたん?」
 レイアの様子を見て、うっかりルミの素が零れる。
「俺にもわかんね。けど、鎧の話したらこうなって」
「鎧?……ってもしかして、その鎧のこと?」
 マントの隙間から見えるのはあのビキニアーマー。しかし、そうだったとしたらなぜ今頃という疑問が残る。
「もしかしたら不具合が出たのかも…ギアさん、直して差し上げたらどうですか?」
 ルミが気をきかせて提案する。
「え…ああ、それは構わねぇけど、見たところ不具合なんて」
「ある! 沢山あるから調整してくれ!」
 レイアが真っ赤な顔のまま言う。
(そうだ、こいつは防具職人。こいつに頼めばもっとまともな鎧に改造してくれるかもしれん)
 そう思い申し出た彼女であったが、こののちに更なる悲劇をもたらす事を彼女はまだ知らなかった。

●制限
 直感のスペアに対して、知識の応用で攻めるギア。彼の頭の中には一通りの武器についての情報は入っている。だが、陸の持つそれは知りうるどれにも当てはまらないモノであったから興味津々。全長120cmもある黒白の機械剣は彼の装備している聖鎧機とよく合っている。
「もしかして、その剣はオーダーメイドですか?」
 ギアが尋ねる。
「ああ、よく判ったね。聖機剣『マグダレーネ・メテオール』――失われた技術を再現して作った品だ。この聖鎧機と合わせて、聖機シリーズと呼ばれている。見た目は剣だけど、スライドすると攻撃魔法を増幅する機導兵器にもなる。もっぱら僕は機導モードでスキル増幅に使ってる事の方が多かったけどね。それに加えて、この剣は覚醒の状態によって色合いも変わる。試しに持ってみるかい?」
 陸はそう言い、ギアにその剣を手渡す。実際のところを言えばギアは覚醒者ではなく、色を見る事はできない。しかし、そんな彼でも触れるだけで何かしらの不思議な流れが伝わってくるような感覚を覚える。
「この剣、すごいの~。いろんな力を感じるの」
 ディーナもそれを傍で感じて、そんな感想を漏らす。
「長きにわたり僕を支え、この剣が邪神にトドメを刺した。その歴史が剣にも刻まれ、残っているのかもしれない。そして、この剣は紛れもなくヒトが創り出した神殺しの剣だ。最強とは言わないけれど、ギア君の求めるもののヒントになるかもしれない」
 失われた技術を再現してできたものだ。武器職人であれば飛びつかない筈がない。
「結構堅いし重さもある。素晴らしい出来ですが、誰でも扱えるものではないですね」
 彼の率直な感想。いいものではあるが、彼らが作るべきものはある程度の汎用性が必要だ。
「まあ、武器とは破壊するものだからね。だけど、その破壊は何の為か? これを君に聞くのは愚問かな?」
 傍で見ていたディーナに向けて陸が問う。
「それはもちろん人を守る為なの。私は治癒師に憧れて旅を始め、メイスを握った。壊すのはあまり得意じゃないけど、聖導士は壁だから…私がいれば後ろにいる人を守れるの。その為なら全然怖くないの」
 おっとりしていようが、彼女もまた戦場を潜り抜けてきた一人に違いない。
 戦う意味は人それぞれ違うだろうが、彼と彼女にはどこか似通った部分がある。
「メテオとは流れ星の事ですよね。それはつまり願い星ということでしょうか?」
 銘の由来をギアが尋ねる。
「そうだね。絶望を、不可能を打ち破り新しい未来を切り開く為。それを果たせなかった者達の祈りも宿して、叶える流れ星になろうとこの剣を握り続けてきた。結果はさっき言った通りだ。僕だけじゃない。この剣が邪神に届いたのはきっとそんな数多の思いがあったからだと思う」
 道具というのは作り手の手を離れてからが全ての始まりだと言える。
 それを持ち揮う人の想いも背負って、何十何百という敵を倒し、仕上がっていくものなのだと痛感する。
「有難う御座いました。とても参考になりました」
 ギアが彼にその剣を返す。
 もういいのかと問いかけた陸だったが、すでにギアの中では何か閃くものがあったらしい。
 ぶつぶつ何かを口走りつつ、ペンを走らせ始める。
「あの~、私の方は?」
「もう少し待って。イメージがあるのであれば、そちらの紙にまとめておいて下さい」
 顔を向けることなく彼が言う。
「ふふっ、だったらとびきりかっこいいのを考えるの~」
 それを聞きディーナはディーナでイメージ画を描き起こしてゆく。
「ルクシュヴァリエにだから武骨なのも捨てがたいの~」
 童心に返ったように彼女はご機嫌。しかし、今聞こえた言葉に陸が僅かに反応する。
(ん? ルクシュヴァリエといえば刻騎ゴーレムだろう? 果たしてこの工房で作れるのだろうか?)
 彼女の希望を知って――けれど、今ギアに声をかけても無駄そうだ。
 彼は仕方なく、その疑問は保留にして戸棚にある武器や防具の資料に目を通し始める。
(おや、これなんか盾機能増設のヒントになるかもしれないな)
 そうして彼は彼で何気にこの時間を有意義に過ごすのであった。

●発想
 ハンターらが訪れてから数週間。依頼として受けた彼らは通常の作業も手伝う事となる。
 メンテにやってきたハンターの武器や防具を受け取り、程度の度合いを分け二人に回す。時に打ち直しのものが出たりすると、それを手伝って窯の前に立つ事もあった。そうして少しずつ作業を覚え、その合間に本人達の希望に沿うものを作ったり、武防具のアイデアを話したりと大変だ。
「ちょっと動いちゃダメなんよ」
 すっかり打ち解け素が平常運転になったルミがレイアを注意する。
「いや、だってここまで細かく測るものか? 昨日も測っていただろう」
 レイアの抗議の声。毎日採寸されればそうなるか。しかし、それにもちゃんと理由はある。
「文句言うなって。女の体って変化しやすいから平均値が判らないとジャストサイズが作れないんだよ」
 とこれがスペアの言い分。ちなみにレイアの鎧に関してはすでに八割方完成。
 ここからの微調整がこの後のフィット感に関わるとか。
「そういう訳ですから我慢なんよー」
 ルミがメジャー片手にレイアを宥める。すっかり女を意識してレイアはアレからずっとつなぎの作業着だ。
(本当にこれでいいのができなかったら承知しないからな)
 心の中でそう愚痴りつつ、おとなしく採寸される彼女。その様子を横目にニヤついていたスペアだったが、ふと彼の目に留まったのはシールドダガー。それはレイアが武防具として提案してきたものだ。その横にはディーナの考える武防具としてパリィグローブやバイキングシールド、スパイクシールドなんかの厳つい系防具も揃っている。
(待てよ…盾と剣の融合は無理でも剣のような盾は作る事が出来るかも…)
 彼は考える。となると問題はやはり強度か。いや、硬さが全てではない。
「わりぃ、後頼むぜ。おい、ギア。ちょっと顔貸せ!」
 彼が何か思いついたらしくギアの元へと駆けていく。
 その頃ギアもギアで考えはだいぶまとまってはきていて…。
「スペアさん、いい所に来ました。剣を可動させましょう。その部分は僕が何とかしますから、この部分の強化を任せても?」
 図面を広げて彼が言う。
「へっ、誰に言ってんだよ。ここを動かすなら三枚だ! でないと強度を保てねぇぜ」
 それに応えてスペアがさらにアイデアを乗せてゆく。
「これは…そっとしておこうか」
 同席していた陸がディーナに言う。
「そうですね…私のも早くして欲しいけど、やっぱり本命優先なの~」
 彼女もそれに同意して、静かにその場を後にする。この日から数週間、彼らは武防具に集中した。
 従って簡単な修理はハンターらに一任。それ以上のものに関しては別の職人に当たって貰うなどして、やりくりをする事で工房は維持され、そしてついにそれは完成する。

「じゃーん。これぞ武防具第一号! スラッシュシールドだぜ!」
 ハンター達の見守る中、スペアがそれを掲げて見せる。
 その最新作の見た目ははっきり言って柄の短い偃月刀だった。
 全長80cm程度のそれは横から見ると剣の厚みは包丁よりも薄い。だが、その刃は三枚重ねになっており、剣を強く振る事でスライドするらしい。
「スライド部分は陸さんのそれを参考にしました。機導師以外でも使えるよう遠心力を利用して可動します。そして、驚くなかれ。この刃幅でありながらこの軽さ…スペアさんの軽量化技術の賜物です」
 試しに陸がそれを手にしてみる。するとなんと軽い事か。偃月刀と言えば刃の部分だけでも十数キロと言われるが、これは体感それの半分にも満たない。
「これは…凄いね。けど、これではすぐ折れてしまわないかな?」
 軽量化するという事は強度が落ちるという事だ。だかしかし、その問題は三枚刃という仕組みが解決する。
「握りこむ事で刃は重なり、強度を増します。ゆえにそう簡単には折れません。そして、刃を扇子のように開けるようにした事で受け流す盾の代わりになるよう柔軟を持たせています。少し扱いに練習が必要ですが、捌くように扱えば十分相手の攻撃を回避・阻害する事が出来ます」
「成程ぉ~、そうする事で重さの課題をクリアしたんだね」
 硬くする事は簡単だが、それ即ち重さに直結する。そこで彼らは発想を逆転させたようだ。
「しかし、よくあんなぺらぺらの剣ができたな。どういう仕組みだ?」
 レイアが気になって尋ねる。
「それはまぁ、企業秘密ってやつだ。しいていえばあんたの鎧の応用なんだぜ」
 仕上がった鎧を持ってきてスペアが言う。
「な、ななな…おい、これはどういう事だ! 以前とあまり変わらないではないか!」
 仕上がってきた鎧を見て彼女の言葉。ぱっと見、さらに削られているようにさえ思える。
「はあ、よく見てみろよ。動きやすいようにこっちも地道に軽量化したんだぜ? 強度が落ちないギリギリのラインまで削ぎ落して、それに加えてこのデザイン。只の線に見えるかもだが、これが強度を増してだな」
「破廉恥過ぎだ! 元に戻せ!」
 微細な彫刻を一言で両断し、レイアご立腹。
「そういえばディーナさんのもできていたんでした。こちらが注文の品になります」
 スペアがレイアに叩かれる中、ギアもディーナに仕上がった法術メイスを披露する。
「え……これは一体?」
 前に運ばれてきたのは鉄球と思しき玉と何本かに分けられた棘と柄のパーツの数々。さすがに目が点になる。
「ご注文のメイスですが、サイズがサイズだけに組み立て式になってしまいました。後はご自分で組み立てて頂ければと思います。もし、組み立て後溶接するのであれば、それはユニット専用の工房に発注して下さい。ここでは規模的に無理なので」
 にこやかにそう言い、組立て方の説明書きを彼女に渡す。
「ちなみに代金は?」
「説明書込み、オーダーメイド代も含んで30万になります」
「ほえぇぇ~」
 その代金を聞いてルミは顔を青くした。ユニットものとはいえ、自分には簡単に払える額ではない。
「まあ、これで一段落か。お疲れ様だね、二人共」
 陸が労うようにそう言い、お茶を準備する。
 これにてハンター達の手伝い期間は終了となるが、更なるいいものを作る為に。
 職人達の開発の日々はこれからも続くのであった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師

  • ルミ(ka3728
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言