• 不動

【不動】ブリりんオタク化計画☆

マスター:朝臣あむ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/02/20 22:00
完成日
2015/02/28 01:38

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●錬魔院
「ワカメー! ワカメがいるカーッ!!」
 凄まじい勢いで扉を蹴破り、問答無用で錬魔院の最高責任者の部屋に侵入してきたのはブリジッタ・ビットマンだ。彼女は机の上でマーブルチョコを色分けしているナサニエル・カロッサ(kz0028)に歩み寄ると、眩しすぎる程にキラキラする目を向けて言った。
「これを見るのよさー! あたしはこう云うのを作りたいのよッ!」
 バンッ☆ と机に叩き付けられたのはリアルブルー発のアニメ雑誌だ。SFロボットアニメ「CATCH THE SKY」と書かれた題名の下には、今までアニメで活用された機械らしき物が描かれている。
「それとこれも作りたいのよ! すんごいのよさ! バーンのボーンでどがーんっとおっきいのが悪いのをやっつけるのよッ!!」
「私には、貴女の今の状態の方が凄いと思うのですけどぉ……そもそも研究したいならすれば良いじゃないですかぁ。私の部屋のドアまで壊して酷いですよぉ……」
「文句言いながら素でマーブルチョコを分けるの止めるのよ! そ・れ・よ・り・もっ! アンタだってあの時協力してくれたじゃないのよさ。ってことは、あたしの研究に興味があるってことなのよ! そうなのよっ!!」
 ブリジッタの言う『あの時』とはCAMが歪虚に奪われた時の事だ。確かにあの時のナサニエルは全てにおいて協力的だった。けれどあれは単純にお互いの理念が一致していただけであって、全面的に魔導アーマーの開発に協力すると言う物ではない。
「まあ、私としては面白そうな研究があれば乗りますけどぉ~」
 チラッと見た感じ構想自体は面白そうだ。けれど協力するにはアイデアが雑過ぎる。
「今は無理ですねぇ」
「なっ!? あ、あんた、あたしを裏切るのよさっ!?!?」
「裏切るって失礼な……そもそもそんな仲じゃないでしょう」
 ヒラリと振られた手にブリジッタの顔が驚愕に歪むと、ナサニエルはそんな彼女の口にマーブルチョコを放り込んで言った。
「そっちの雑誌ですけどぉ、リーゼなら興味を示すかもしれませんよぉ? 確か錬金術師組合でそれっぽい研究をしてたはずですからぁ~」
「ボインが?」
「そうですよぉ~、リーゼならきっと協力してくれますよぉ~、良かったですねぇ~♪」
 ナサニエルはそう言うと、胡散臭い笑顔をブリジッタに向けたのだった。

●錬金術師組合
『そうなのよ、あの子ったら思い立ったら即行動しちゃう猪突猛進型じゃない? お蔭でさっきもナサニエル院長に直談判して大変だったのよ』
「ナサ君に直談判って……凄いですね」
 自室のデスクに腰を下ろしながら、リーゼロッテ・クリューガー(kz0037)は伝話機から聞こえるヤン・ビットマンの声に苦笑を浮かべた。
 CAM奪還作戦以降、リーゼロッテとヤンは個人的に付き合いを続けている。それは錬金術師組合の人間としてではなく、旧友としての付き合いなのだが、たまにこうして愚痴を聞く形で錬魔院内の話を聞かされていた。
「ヤンさん。ブリちゃんの育児に困っているのはわかりますが、あまり内部事情を話すのは如何かと思いますよ」
『あら、良いのよ。そもそもあの子と院長の話じゃ内部事情にもならないもの』
「それはそうかもしれませんが……」
 そう零すリーゼロッテの脳裏に今朝方、組合の中で昇った話題が頭を過った。

「先のCAMの一件もありますし、錬魔院の監視強化を強めるべきです。魔導アーマーやスペルランチャーのような危険な兵器をこれ以上作らせない為にも早急に対策を!」

 組合員の言い分も分る。
 このまま錬魔院を放っておいて、大規模なマテリアル汚染でも起きたら如何するのか。もしそんな事が起きたら大参事なのは間違いない。
 だからこそ、それを未然に防ぐ為にも錬魔院の監視を強化するのは必要なのだ。
 けれどリーゼロッテには踏み切れない理由があった。
「ヤンさん。暫く伝話を控えて頂けませんか? ブリちゃんにもこちらには来ないように伝えて下さい」
 そう、彼女が踏み切れないのはブリジッタの存在があるから。
 今錬魔院の監視強化をするにあたり、手っ取り早く内部情報を知る事が出来るのはブリジッタを使うの事なのだ。
 幸いな事に彼女は錬魔院で魔導アーマーの研究に携わっている上に、リーゼロッテと繋がりがある。つまり彼女を上手く使えば錬魔院の情報を簡単に得ることが出来ると言う訳だ。
 けれどリーゼロッテはその考えを良しと思っていない。
「ブリちゃんには真っ直ぐな気持ちで研究と向き合っていて欲しいんです。あの子には才能があって、それを摘んで良い資格は誰にもありませんから」
 お願いします。そう言葉を切った彼女に、ヤンは暫く考えた後に口を開いた。
『それは無理よ。あの子、さっきそっちに行ったもの。それに、リーゼちゃん。あの子は純粋に力のない人へ力を授けたいと思っているのよ。それは貴女と同じ。なら協力しても良いんじゃないかしら』
「ヤンさん、でも……」
『気にしなくて良いのよ。それにそっちの考えはだいたいわかってるわ。その上であたしはあの子を止めなかったの。リーゼちゃんにはリーゼちゃんの立場があるもの、気にしないでちょうだい。それにね、あの子の情熱は大人の汚い考えに潰されるほど冷めちゃいないわ』
 ヤンはそう言うと、楽しそうな笑い声を零した。

――一時間後。
「ボイン、ボインッ!」
 頬を紅潮させてリーゼロッテの自室に乗り込んで来たブリジッタは、彼女の前に雑誌を置くと目を輝かせて口を開いた。
「ボインがこれを作ってるって聞いたのよッ! 今直ぐその研究を見せてあたしに協力するのよさ!!」
「ぶ、ブリちゃん、何でここに!?」
「あの人が入れてくれたのよ♪」
 言われて見た入り口には、今朝方話をしていた組合員の姿がある。それを目にした瞬間、リーゼロッテは痛む頭を押さえるように額に手を添えた。
「それでそれで、この『渡り鳥の騎士』なんだけどー、あたしとしては変形機構を搭載してバーンって感じにしたいのよ♪」
「『渡り鳥の騎士』? 変形機構?」
 思わず目を落とした先には、CAMに似た機体に加え、全身に纏う機械のような物も描かれている。
「ワカメが、ボインが似たような研究をしてるーって言ってたのよ。本当なのよさ?」
「なっ」
 確かに錬金術師組合では義手や義足、或いは身体の不自由な人の為のアシスト装備を開発している。だがまだ公には出ていない非公式の内容だ。
「何処から漏れてるの……」
 再び額を抑えたリーゼロッテにブリジッタは言う。
「と・り・あ・え・ず、もっと詳しい話を知るためにハンターに依頼するのよ! 題して『ブリりんオタク化計画☆』なのっ♪」
 きゃるんっ♪ とポーズを決めたブリジッタに遠い目をするリーゼロッテ。はたして何処までリアルブルーのアニメや漫画に染まったのか、とりあえず彼女の好きにさせてみよう。そう思うリーゼロッテであった。

リプレイ本文

「やっぱりいいわ、CTS最高よ! そうは思わない?」
「そうですね。少し前の作品ですが今見ても飽きのこない内容、実に見事です。ちなみに俺は士魂とかスフィーダにディアブロが好きでした」
 Jyu=Bee(ka1681)ことジュウベエの声に頷きを返す雪ノ下正太郎(ka0539)は神妙な面持ちでモニターを見たままだ。
 今はアニメのエンディングが流れているのだが、そこも見逃せないのはファン心理故だろうか。そしてその画面を同じように食い入るように見詰めるのはリーゼロッテ・クリューガー(kz0037)とイーリス・クルクベウ(ka0481)、ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)だ。
「これがブリちゃんの言っていたリアルブルーの……」
「ふむ……今のが『渡り鳥の騎士』。どうやら正式名称はAU-KVと言うようじゃな。しかし、どこの世界でも似たような事を考える者はおるものじゃのう」
 そう零すイーリスだったが、考え出された機械は魔導アーマーのそれとはまるで違う精巧な物だ。
 思えばCAMだってそうだ。魔導アーマーと構想は似ていてもまるで違う性能の乗り物。そんなものを作る世界ならこのような乗り物を考え付いても仕方がないのだろう。
「悔しいのう」
 とは言え、悔しいから何もしない訳ではない。
「組合長、これは飽くまでわしの構想なのじゃが……魔導型CAMの技術を応用出来んかの? って、組合長どうしたんじゃ?」
 悔しさと共に湧き上がる構想を投げ掛けようとしたイーリスの首が傾げられた。
「完全に固まっているな」
 未だ画面に食い入るリーゼロッテの前で手を振るウルヴァン・ダイーヴァ(ka0992)にルナリリルが銀糸を揺らしながら顔を覗き込む。
「アニメが面白かった……と言う訳ではなさそうだな」
 大丈夫か? そう声を掛けるルナリリルにリーゼロッテが頷く。それを見て顔を上げたルナリリルは、興奮気味に次回予告を見るブリジッタ・ビットマンに声を掛けた。
「ところでこれ乗り物と鎧の変形を予定しているのか?」
 武器に変形するとかでも良さそうな気もするけど。と呟く彼女は、趣味で豊富な知識を持つ。今回の依頼を聞いた時も可変型を考えていると聞いて実現の難易度を心配したが止める気はない。
「そーなのよー、バイクからアーマーに切り替わるのをやりたいのよー!」
「やはり可動、可変鎧の作成が目的か」
 目を輝かせて理想を語り出すブリジッタを見ていた君島 防人(ka0181)が思案気にリーゼロッテを見る。
 たぶんリーゼロッテと防人の考えは近い。
「原理は創作物があるから問題ない。だがそれ故に突き付けられる現実もある」
 今のクリムゾンウェストには技術体系からしてAU-KVのような物を設計・造形なりして根本から作り出すのは難しい。リーゼロッテはそれがわかったからこそ頭を悩ませているのだろう。
 だがブリジッタは違った。
「ぜーったい作れるのよ! この世に不可能はないのよさっ!」
「凄い自信だね」
 クスリ。そう笑った八島 陽(ka1442)に防人の目が向かう。
「異世界でCTSファンが増えて嬉しかったけど、良く考えたらあのアニメの内容って工学の道に入る、ある意味原点なんだよね」
「原点か。確かに参考になる部分は多い」
 ふむ。と視線を落とした彼に笑みを返し、陽はラザラス・フォースター(ka0108)とジュウベエとCTSの話を始めているブリジッタに目を向けた。
「不可能はない、か。まだ何もしてないしね」
 自身の信条と被る彼女の発言に再び笑みを零し、3人の元へ向かう。そこで聞こえて来た声に彼は目を瞬いた。
「オタクじゃない軍人なんていねえぜ! いつかこういうの作ってやるぜって思ってたんだよなー♪ つーわけで、分り易いようにこんなのを持って来たぜ。ちょーっとアチコチ折れてっけど見て驚け、フィギアコレクションッ!」
「ふっふっふー。さあ、これを見てファンの星を目指すのよっ!!」
 広げられたフィギアと資料の数々にブリジッタの目が際限なく輝いた。
「ふぉおお! すごいのよーッ!!」
「さあ、行くぜ! 大気圏内の飛行能力は浪漫だ!」
「おー!!」
 異様な空気で一致団結した一部。それを見詰める他の面々に若干の不安が襲ったのは――ナイショだ。


 コホンッ。と咳払いをしたのはウルヴァンだ。
「ブリジッタは『これを作りたい』と言っていたようだが、その『これ』を明確にしようか」
 トンッと指したのは持ち寄られたCTSの資料だ。
「もっと明確に言うなら、文字通りこの設定通りの物を作りたいのか、それともこの設定の中にある発想・運用を再現したいのか」
 確かにブリジッタの作りたい物と言う物は明確に示されていない。
「魔導鎧自体が研究段階なのに変形機構とは、という意見はハンターの中でも出たが、それでも『完全変形するもの』を作りたいのならばそこから逃げるのは美しくない。だが『複数の用途に応じて特化した状態を持つもの』ならば、技術的に壁の多い完全変形にこだわる事もない。それは手段と目的を間違える行為だ」
「変形機構については……難しいのう。そもそもじゃ、組合として魔導鎧の研究はどこまで進んでおるんじゃ?」
 突如イーリスから話を振られたリーゼロッテの目が瞬かれる。
「パワーアシスト装備でしたら試作段階に入っています。とは言え、かなりの重量な上に大きさも一般の方が扱える物ではないので、改良に改良を重ね一歩ずつ、と言うのが現状ですね」
 パワーアシスト装備の原型になる物は存在しているのだが、燃料装置や装備の大きさ自体の問題で難航しているのが現状だ。
「つまり鉱物性マテリアルを燃料とした小型魔導エンジンを肩や背、脚部に配置すれば軽量化も測れ実現は可能になるかもしれない、と言う事じゃな」
 そこまで口にした所で、ブリジッタの声が届いた。
「変形機構は不可能ではないのよさ。そりゃーまだ明確な方法は出来てないけど、できないはずはないのよ!」
 脳裏を過るCAM奪還作戦。そこで運用した覚醒者を燃料とするスペルランチャーが頭を過る。と、新たな声が響く。
「ブリジッタ。このAU-KVをいう装備は、原作では装備者の思考をAIを媒体に読み取って行動している。これには装備者の動作を読み取るよりも利点があるのだが、何だかわかるか?」
「反応速度、なの?」
 そうだ、と頷くのは防人だ。
「動作から最適な可動角を演算するより、脳が肉体に動けと命じる信号を読み取る方が、より正確かつ迅速な可動を実現出来る。実現しているシステムに心当たりはあるか?」
 ブリジッタの専門は魔導機械。その彼女が脳に関する知識を理解できるかはわからないが、似たような物なら知ってるはずだ。
「頭はCAMなのよ。でもあのシステムはフォローシステムとして稼働しているだけだから、充分な能力は望めないのよ」
 以前、ナサニエルに教えて貰った事がある。確か脳波感知装置はAU-KVの様に何かを操作するまでの機能は無かったはずだ。
「まるきり同じ能力は無理でも……うーぅ?」
 プスプスと頭を稼働させるブリジッタ。そんな彼女――ではなく、フィギアを弄りながらラザラスが呟く。
「で、結局ブリジッタは何を作りたいんだ? AU-KVそのものか? それとも」
「それに似た物、なのよ」
 全く同じよりはクリムゾンウェスト独自の形に仕上げたい。そう語る彼女にジュウベエがパラパラと資料を捲る。
「AU-KVは巨大なKVでは入れなかった敵基地内部強襲のため産まれたの。厚い装甲とパワーアシストによる戦闘力向上。さらに二輪車に変形する事で馬を超えた機動力と、生身の小回りの良さを両立させた画期的な兵器だったわ」
 言って大きさを比較出来る図を開く。
「ポイントは人間が入るために外骨格で作る必要があるって事と、変形込みだと重量の問題でパワーアシスト機能が必須。あとは制御機能としてマスタースレイブ方式はこっちでも使えるってのと、バイクはオフロード仕様で多少のダメージでも走るように、かな?」
「んー、可変型にするのは良いけどさ、現実問題どうなの? もしダメなら『渡り鳥の騎士』の研究と、変形機構の研究を並行するとかして別々に進めないと、どっちも中途半端になっちゃうんじゃない?」
 いつの間に持ち込まれたのか、お茶を啜りながら呟くルナリリルに陽が「そうだね」と零す。
「はじめから変形出来れば越した事は無いけど、後から可変を可能に出来るなら色々な可能性が出るんじゃないかな」
「わしも先ずは魔導鎧を完成させ、技術の確立を目指すのが本道じゃと考える。それと並行して下辺機能も研究し、最後に設計段階から下辺機構を組み込んだ魔導鎧を新規開発するのが良いと思うんじゃが……」
 如何じゃろう? そう視線を流すイーリスにルナリリルが湯呑を置いた。
「そうと決まれば鎧の研究だな。あ、そうだ。さっき防人が言っていたようにCAMの脳波センサー技術をロッソに供与要請してみた方が良い。直接的なAI機能は無理でも動作のタイムラグを減らす事は出来るかもしれないからな」
 防人が危惧するように何処までリアルブルー側が情報を提供してくれるかわからない。それでも何もしないよりはマシだ。
「それならたぶん、ワカメが知ってるのよさ」
「ワカメ? 海産物がそのような物を知っているのですか?」
 真顔で返す正太郎に、この後何故かリーゼロッテが解説をする事になる。


「動物型から鎧への変形なんてどうかな?」
「確かにバイクもいいですが、四足獣型や人に近いゴリラやオランウータン型とかの方が悪路でも便利かもとか思います」
 陽の言葉を受けて同意を示した正太郎。そんな彼に続いてルナリリルも口にする。
「砲撃形状に変形するとかどうかね? って、ん? アニメで敵がバイクから砲台になるメカを出していた様な……」
 そう零してから「まぁいいか」と括り、
「格闘武器に変形するのはサイズ的に別の強化服を着込まないと振り回せそうにないから、射撃型かねぇ。あるいは鎧時に一部のパーツを分離させて手持ち武器にするとか、火器を内蔵するとか」
「良いですね。AU-KVはバイドロスのデザインが好きでしたよ。変形すると爪が付いてる徒手格闘っぽいですし」
 そう語るのは正太郎だ。
「殴る、蹴る、投げる、絞める、関節極めると近接格闘が出来て、近接格闘特化型とか使ってみたいですね」
 興奮気味に拳を握り締める彼の言葉を書き止めるのはリーゼロッテだ。彼女はブリジッタの代わりに変形に関する意見を纏めているのだが、その表情は複雑そうだ。
 そしてブリジッタはと言えば、彼女は皆の意見を元に『渡り鳥の騎士』の設計図を書き始めており、その隣にはリーゼロッテから奪った――基、借りたパワーアシスト装備の設計図もある。
「やはり魔導鎧をベースにして付加したい形態に応じたオプション装備を付ける方がはるかに楽だな」
 ウルヴァンはそう言いながら着々と書き進められる設計図を見る。
 ブリジッタが設計図を書き始める直前、イーリスがある提案をした。それは『魔導型CAMの技術を応用すること』。
 初めの方でチラッと言っていたが、要はパワーアシスト装備のネックであった燃料装置の軽量化を魔導エンジンで行おう言うのだ。そしてその考えは不可能ではなく『覚醒者のパワーアシスト装備』としての実現性を持っていた。
「思考操作とかできない限り生身を超えた速度で鎧を動かすには、内部の生身の動きを角度増幅するのが良いと思うのよね、最初は動かすのが大変だと思うけど」
「それに関してはたぶん大丈夫なのよー、要は生身を越えた動きができれば良いしー、みんなが言ってたみたいにボインの研究を転用すれば問題ないのよさ」
 ジュウベエの言葉に一瞬だけ手を止めたブリジッタを感心したように見る防人は、彼女が鎧に組み込んだ装置に目を置く。
「1つ確認しておく。この装置は覚醒者から直接マテリアルを取り入れる方式なのか? もしそうであれば危険も高い」
「うー、覚醒者から直接ってーのとは違うのよ。これは魔導エンジンを媒体に覚醒者が使うのよさ」
 本来ならば燃料を覚醒者自身で補えれば楽だが、それは防人の言うように危険だ。ならば確実なのは魔導型CAMの魔導エンジンと覚醒者のハイブリットとやらをそのまま運用するのが一番となる。
「ここまでワカメの案が使えるのはシャクなのよー、でもイーリスが言わなかったら気付かなかったしー、いろいろ複雑ぅー」
「あのさ、今更なんだけど……この『渡り鳥の騎士』を、CAMのアシストとしても運用出来るように出来ないかな?」
「う?」
 突然の提案にブリジッタの手が止まる。
「前の奪還作戦でCAMを追った時にさ、疾影士以外は追うのも困難だったんだ。そう言うのには理由があって、CAMは脚部の攻撃に弱いから、それを阻止する存在がいた方が良いかなって。馬は臆病だから追従するには向いてないだろ」
 だから『渡り鳥の騎士』がそれを担えるなら。と語る陽にラザラスの目が輝く。
「それなら背中に背負ったブースターで飛べるってのはどうだ? 便利だし捗る――って、まあ、燃料とか強度とか解決しなきゃなんない物は山積みなんですけどね」
 とほほ。と一気に落ち込む彼にルナリリルも同じ事を考えていたのか「ううむ」と眉を寄せる。
「航空戦力はあると戦術の幅が広がってかなり便利だと思うのだが……飛行型の鎧でも、飛行メカから鎧でもいいので検討してくれるとありがたい」
「飛行能力なのよ? うー……今だとブースターを付けて加速ぐらいが限界なのよさ」
 こんな感じ。そう言って設計図にブースターらしき物を書き加える。と、それを目にして再びラザラスの目が輝いた。
「そうだ! 2本足と車輪の変形とかどうだ? 車輪はいい道ならスピードが出せるし、ブースター付けるなら一気に加速可能なんじゃないか?」
「足と車輪、変形……ほわっちゃぁ! ピッカーンッと来たのよさー!!!」
 ガガガガガッと突如加速した筆に全員の目が瞬かれる。そして一気に書き上げた設計図を見て、リーゼロッテの眉間に皺が寄せられた。
「ブリちゃんこれって……」
「想像力から、それを裏付け、検証し、実現していくのが科学という面もある、か……面白い」
 作り物の世界をヒントに書きあげられた設計図。それを見詰めながら呟くウルヴァンの横で、ジュウベエは頬を紅潮させて身を乗り出した。
「すてき、良い形だわ! ブリりん。貴方は今、長い道のりの一歩を踏み出したの。さぁ、これは貸してあげるから、貴方こそがCTSファンの星になるの!!」
 ギュッと手を握り締めるジュウベエ。そんな彼女に神妙な面持ちで頷くブリジッタを見た後、イーリスは持ち寄られたCTSの資料に目を落とした。
「だいぶ見た目は違うがどうなるかのう……楽しみじゃ」

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MVP一覧

  • ユーディトの孫ポジション
    ラザラス・フォースターka0108
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽ka1442
  • Beeの一族
    Jyu=Beeka1681

重体一覧

参加者一覧

  • ユーディトの孫ポジション
    ラザラス・フォースター(ka0108
    人間(蒼)|12才|男性|機導師
  • 歴戦の教官
    君島 防人(ka0181
    人間(蒼)|25才|男性|猟撃士
  • ユレイテルの愛妻
    イーリス・エルフハイム(ka0481
    エルフ|24才|女性|機導師
  • 人と鬼の共存を見る者
    雪ノ下正太郎(ka0539
    人間(蒼)|16才|男性|霊闘士
  • 戦場の美学
    ウルヴァン・ダイーヴァ(ka0992
    人間(蒼)|28才|男性|機導師
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽(ka1442
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • Beeの一族
    Jyu=Bee(ka1681
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 竜潰
    ルナリリル・フェルフューズ(ka4108
    エルフ|16才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【相談】天才少女と可変魔導鎧
君島 防人(ka0181
人間(リアルブルー)|25才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/02/19 03:08:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/02/18 23:51:24