• 不動

【不動】同盟軍怠惰包囲作戦・伏兵突入

マスター:村井朋靖

シナリオ形態
ショート
難易度
不明
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/02/28 19:00
完成日
2015/03/09 05:28

みんなの思い出

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オープニング


 ナナミ川を渡河する怠惰の軍を包囲し、それを殲滅する。同盟軍もその一翼を担うことになった。
 しかし正面から当たるには厳しい敵なので、今回は奇策を用いる。もしこれを為せれば、最高の戦果が得られるだろうが、逆の結果となる危険もあった。

 まず、同盟軍はCAMの故障機体を退避させるべく、輸送船の待つ東へ向け輸送を開始する。
 無論、これはフェイクだ。実際は、整備されたCAMに幌を被せてあるだけで、全機に特機隊の隊員が搭乗しており、時が来ればすぐに動ける状態になっている。
 輸送の護衛を装った海軍は、途中で敵の包囲を維持するために、進路を北西に転換。怠惰の軍の閉鎖という最重要任務に就く。なお、モデスト・サンテ海軍少将が指揮を執る。
 CAM輸送隊は時機を見て反転し、前線を守る海軍と合流した上で、包囲した敵を急襲。これを撃破する手筈だ。こちらの責任者はダニエル・コレッティ陸軍中佐、兼特機隊隊長が同行する。
 ハンターはCAM輸送隊が反転した後の随伴、海軍と連携して敵包囲陣を維持する一方で、包囲陣から少し離れた南東に位置する岩陰に潜伏。CAMが前線との合流を果たした後、伏兵として出現し、随伴歩兵として戦場を掻き乱すのが任務だ。
 作戦の性質上、包囲網が維持できずとも前線を援護することはできない。さらにCAMの到着が遅れても同様だ。決まっていることは、CAMが到着した際に包囲網の中へ突っ込んでいくことだけ。それがどんな状況でもあろうとも、だ。

 伏兵部隊が岩陰に潜伏する際、モデストが神妙な面持ちで言った。
「もし旗色が悪い場合は、諸君らに撤退の時間稼ぎを頼むことになる。その判断は突入と同時に伝えるから、絶対に聞き逃すな」
 それが伝えられる時は、きっと包囲陣は崩壊しているだろう。周囲に緊張が走る。
「とにかくCAMの到着を待つんだ。前線の苦戦を知っても、絶対にそこから出てくるんじゃないぞ」
 モデストはそう念を押し、包囲陣を敷くべくハンターや兵士を引き連れて歩き出す。その背に誰もが敬礼をし、全員がお互いの無事を祈った。

 とはいえ、戦闘準備を整えた上で延々と待機するのも大変だ。そのうち、戦闘の音も聞こえてくるだろう。
 海軍の小隊長はCAMの到着をいち早く察知するため、南東の方角に見張りの兵士を配置。また大軍が押し寄せたと演出するための小さな銅鑼も兵の足元に置かせる。
「よし、後は待機だ……」
 小隊長は声を潜めて喋っているのだろうが、それはまるで力なく語っているようにも聞こえた。兵士らも頷くが、どこか元気がないようにも見える。ただひたすら待つ、それはいつまで続くのだろうか。それは誰にもわからない。

 そんな沈黙を嫌ってか、小隊長は身を屈めながらハンターたちの下へとやってきた。
「先ほど少将がおっしゃったように、我々は本来の任務である伏兵として包囲網の中に入れるかどうかはわからない。撤退を促すための決死隊になる可能性もあるから、その時の行動も考えておいてほしい」
 彼は改めてそう告げ、岩陰を出る時点の状況について、細かい説明を始めた。
 まず、CAMとの合流が出撃の条件なので、特機隊が操縦する3機は戦力として数えられる。
 なお、特機隊の行動はパイロットの自由裁量となる手筈だ。
 CAMの搭乗者はジーナ・サルトリオ陸軍軍曹、ヴィットリオ・フェリーニ陸軍大尉、そして新加入のディアナ・クリティア・フェリックス海軍大尉の3名だ。いずれも操縦の腕に問題はなく、与えられた任務をこなしてくれるだろう。
 CAMは敵の包囲が完了するか、一定時間の経過で行動を開始。ハンターの援護を受けながら攻め上り、この岩陰付近での合流を目指す。無論、CAMに随伴するハンターらも戦力として数えることになるので、伏兵としては申し分のない数で突っ込むことになるが、問題は肝心の包囲網が維持できているかどうかだ。
「これに関しては、他方面の状況も関係してくる。我々だけでなんとかできるものでもないということを頭に入れておいてくれ」
 その上で、ハンターには万全の準備を頼みたい。小隊長はそう語った。
「ま、考える時間はまだある。もしそれが短ければ、俺たちは本来の目的を果たしているだろうけどな」
 CAMの早期到着は、少なくとも吉報だ。今はそれを祈り、考えることしかできないが……

 いずれ、ここにも鬨の声が聞こえてくるだろう。
 岩陰に潜む彼らの戦いは、いったいいつ始まるのだろうか。

リプレイ本文


 喧騒の中でも、伏兵は沈黙を守った。
 ロイド・ブラック(ka0408)は目を瞑り、静かに仮眠している。
「今我らが行うべき事はない。……ならば、それまで……力を溜めておくべきだろう」
 隣に座る蘇芳 和馬(ka0462)もそれに同調し、軽く目を瞑って体力を温存する。一部の兵士もそれに倣った。
 その最中、月影 夕姫(ka0102)は身を隠しつつ、激しい戦闘が続く防衛線を観察。兵士から借りた双眼鏡を使い、戦況を分析している。

 そんな緊迫した空気の中、花厳 刹那(ka3984)が海軍の兵士へ挨拶に出向く。
「花厳刹那と申します、よろしくお願いします」
 これを聞いた小隊長が「若いのに大したもんだ」と感服した。
「こういう戦場には慣れてないか?」
「うん、正直怖いね。でも何かを護る為に戦わないといけない時があるのは分かってる」
 相手はそれを聞き、何度か頷いて「なら大丈夫」と呟く。
「戦場では、自分が信じたことを貫き通せばいい」
 刹那はふと蒼界にいる両親の顔を思い出し、そっと胸に手を置く。そして「よし!」と気合を入れた。これを見ていた小隊長は、部下に「お前らもしっかり気合入れてけよ」と鼓舞する。

 ここに潜伏してから、どれくらいの時間が経っただろうか。
 夕姫とは逆の方角を監視していた兵士が、眼下の者たちに声をかけた。
「南東の方角に土煙! CAMの援軍と思われます!」
 しかし、その声にはまだ緊張感が帯びる。CAMの到着は、いわば規定路線。今の状況を判断する要素としては弱い。それを証拠に、ロイドも和馬もすっと立ち上がるだけ。兵士たちも冷静に武器や銅鑼を持つに留めた。
 小隊長は「双眼鏡を外し、目視でCAMを確認でき次第、ここを出る」と宣言し、ハンターらに入念な準備を指示する。


 後方からやってきたのは、やはり特機隊のCAMだった。
 その脇に魔導トラックが止まり、ジャック・エルギン(ka1522)も愛馬の上から声をかける。
「お届けモンだ、ハンコはいらねぇ」
 荷台から続々とハンターが降りてくるのを見ると、反転攻勢は成功と見てよさそうだ。
 一方、CAMのスピーカーを使い、ディアナ大尉が着任の挨拶をした後、今の状況を整理する。
『作戦経過から約1時間半といったところよ』
 それを聞いた沢城 葵(ka3114)は「どっちになるかしらねぇ」と小首を傾げるが、夕姫が「防衛線の崩壊は見られません」と言い切った。
「ただ、左翼が敵に押し込まれているようなので、ここへの支援は外せないです」
 小隊長は「わかった」と頷き、ひとまずは中央に陣取っているモデスト・サンテ海軍少将の判断を仰ぐべく、銅鑼を鳴らしながら進軍することにした。

 防衛陣に銅鑼の音が響き渡る。これを耳にした指揮官のモデスト・サンテ海軍少将は、味方に檄を飛ばす。
「よーし、お待ちかねの援軍だ! 覚醒者は反転攻勢に出られるように準備しろ! 傷ついた者は援軍と交代し、後ろへ下がれ!」
 今まで防衛線を維持する味方の無事を祈っていたヴァルナ=エリゴス(ka2651)が小隊長と共にモデストの元に駆け寄り、現況と今後の展開を確認する。
「少将、お疲れ様です! この後はいかがなさいますか?」
「殲滅戦に移行する! 諸君らの鬱憤、ここで存分に晴らしてくれ!」
 そう笑顔で話すモデストの顔を見て、ヴァルナは胸を撫で下ろす。どうやら上手く戦ったらしく、被害も最小限で済んだようだ。
 これを聞いた浅黄 小夜(ka3062)はすぐさま覚醒し、トランシーバーでジーナらCAMパイロットに声をかけた。
「……特機隊の……皆はんに……負けへんよぉに……小夜も頑張るから……皆はんも……怪我には気ぃつけて……皆で、一緒に戦って……一緒に、帰りましょう……」
 これを聞いたジーナが「うん!」と答え、ヴィオも「了解した」と頷く。
 そこへコリーヌ・エヴァンズ(ka0828)が小夜のトランシーバーを借り、伏兵部隊の作戦を手短に伝える。
「私たちは一塊で敵陣に切り込んで、その後は2班で対応するんだよ。A班は反転して前に突出した敵の撃破、B班は後方に控える怠惰の撃破を目指すんだぬ」
 それを聞いたディアナが、特機隊の割り振りを提案した。
『了解よ。ジーナ軍曹は突入時の露払いの後にB班の援護、ヴィオ大尉はA班の援護。私はここに残って敵を狙い撃つわ』
『異論はない。クロハネの眼は、後ろにある方が安心だ』
 CAMに追従した移動部隊は、文字通り足を傷を負って転がっている怠惰の兵の始末を依頼された。歪虚は完全に倒してしまうと消滅してしまうが、工夫をすればその巨体をバリケードとして使える。防衛線はこういう知恵も総動員して、苦境を何とか耐え凌いだ。
「よし、奥は任せた! 前衛は、手負いの指揮官を倒すことに専念する!」
 モデストはそこまで語ると、大声で「行けぇー!」と槍斧を振り上げた。


 伏兵部隊は目前に迫る雑魔を倒しながら、まずは一団となって中央を目指す。
 ここでは星垂(ka1344)の身のこなしが特に目立った。
「やっとボク達の出番だね♪」
 小柄な体躯を活かした軽業のような動きで敵を翻弄し、すれ違い様にダガー「ドゥダール」で肌を裂いていく。
「グギッ!」
 武器もまた戦術に合わせてあり、雑魔ごときでは見切ることなど不可能。
「ブギャッ!」
「でも、キミ達……ボクばかり見てると、足元掬われるよ?」
 注目を浴びるような動きに徹する星垂と連携し、アウレール・V・ブラオラント(ka2531)もまた背後から忍び寄り、両刃でその身を切る。
「人類の力を思い知れッ!」
 ここで足止めされては堪らないとばかりに、若き闘狩人は無心に剣を振るった。
 その道標となるべく、先頭を駆けるのはヴァルナ。黄金の燐光を放ちながら、グレートソード「テンペスト」を振りかざし、今日も振り抜きの感触を存分に楽しむ。
「招かれざる客人が多すぎますね……!」
 雑魔の数は決して多くはないが、今は敵陣を駆け抜けているため、海軍の一斉射撃などで対応してもらえないのが厄介だ。
 それでも彼女は攻めの構えを活性化させ、雑魔に挑む。ホブゴブリンに一刀両断の振りかぶりを見舞った後、返す刀で迫る猿型歪虚をまとめて横に薙ぐ。その反動を利する形で身を翻し、突っ込んでくる猪には逆袈裟で退けた。
「今です!」
 開けた場所を再度塞ごうとする猿型に向かって、ロイドはデリンジャー「デッドリーキッス」を撃ち鳴らし、眉間を射抜く。
「一度得た好機を手放すほど、俺は楽天家じゃない」
 とどめは和馬が瞬脚とランアウトを駆使し、敵に消滅さえ感じさせぬうちに消し飛ばす。
「……その隙、頂くぞ」
 小太刀二刀が閃けば、また道が開かれる。そこへ覚醒者で構成される海軍の一団と共に行動する夕姫が現れた。
「雑魔の数も少なくなったので、ここを基点にしてA班は反転します。接近する雑魔の殲滅をお願いします」
 今も響く銅鑼の音を聞きながら、海軍は奮闘。ここにジャックらも加われば、もはや鬼に金棒か。それほどまでに中央への進軍は容易であった。


 怠惰の兵との決着をつけるべく、伏兵部隊はそれぞれに巨大な敵と相対した。

 まずはA班。防衛線を築くモデストらとの挟撃という形となり、その中央に手負いの敵指揮官を捉えている。敵も退路を断たれたこと、さらに防衛線がバリケード代わりにしていた巨人にとどめを刺しながら前進しているのを知り、大いに浮き足立つ。
 初手、アウレールと刹那が前進し、2匹の歩兵を狙う。
「少数精鋭による強襲殲滅、これぞ我が本懐よ!」
「花厳刹那……参ります!!」
 アウレールは両刃を構え、身の丈が3倍はあろうかという敵と対峙する。ちょっかいを出す雑魔には、葵からアースバレットが飛んだ。
「可愛い子には旅をさせないとねぇ~。ってあたし、なんだか場違いなトコにいる気分ねぇ」
 頬に手をやり「はぁ、困ったわ」という表情で嘆息しつつも、彼は優雅に戦場というステージを歩く。それをエスコートするように、ヴィオ搭乗のCAMが控えた。
『そうだ、しっかりと我々が見守ってやらねば』
 こうして送り出された金髪の貴公子は、めざましい活躍を続けた。狙いは一貫して、足の指や腱。踏込や渾身撃などを駆使して容赦なく攻め立てる。すでに手負いであるため、ここは思い切って攻めに転じ、撃破ではなく無力化を目指して動いた。
 しかし歩兵は人類側の戦力削減を狙っての行動に出る。凄まじい風圧を帯びた棍棒で足元を狙ったりと、アウレールと似て非なる攻撃を繰り出して応戦。小人は何とか股を抜けながら回避していたが、何度か避け損ねてダメージを受けた。
「あのデカブツ、斬れる?」
『望むところだ』
 葵の指示でヴィオ機が加勢に入ると、歩兵が思わず唸る。それは自分よりも大きさに勝る機動兵器の前に怯んだからか。
『それは野生の勘か? なら当たっている』
 ヴィオがカタナを抜き、猛然と前へ。挨拶代わりの袈裟切りを見舞うと、敵は大声で叫んだ。
 そこへアウレールが頑固なまでに足攻めを継続。それに続き、葵は顔に向けてファイアアローを浴びせる。
「目つき悪いわよぉ、目つきが」
 上下で的を絞らせない攻撃を繰り返すことで、敵はすっかり混乱してしまった。ヴィオ機は敵の腕を狙い、手に持った棍棒を叩き落す。
『少年、任せた』
「任せろ! 怠惰よ、地に伏せよ!」
 アウレールが両脚の腱を切り飛ばし、ついで葵のアースバレットで目を潰すことで、無力化に成功した。

 一方、こちらは刹那。海軍と行動を共にする夕姫らと連携して動く。
 可憐な少女は体格差こそあれども、得意とする居合の間合いを取り、太刀「國近」で敵の首を狙う。瞬脚を活性化させ、事を為さんと尽力する。
「姿形は違えども、敵は敵。見方を変えて迷うくらいなら、自分の間合いで戦うよ」
 潜伏中に聞いた小隊長の言葉が脳裏をよぎったか。刹那は信念を持って戦うことで、徐々に柔軟な思考を得た。そのまま斬ったのでは、巨人の首に届かない。ならば、その膝を足場にして切りかかればいい。疾影士ならではの発想も駆使し、彼女は難局に立ち向かう。とはいえ、タダでチャレンジさせてもらえるわけもなく、何度も敵の攻撃を受けて得た思考だ。
 そんな姿を見続けていた海軍の連中も、少女のための援護に励む。夕姫の指示で一糸乱れぬ牽制射撃を行い、的を絞らせないように尽力する。
 その隙に夕姫は巨人に接近し、機杖「ピュアホワイト」を振るって必殺のエレクトリックショックを打ち込む。
「ムゴガガガッ!」
「海軍の皆さん、敵が痺れました。頭を狙っての一斉射撃をお願いします」
 手にしたトランシーバーで合図を送れば、海軍はすぐさま一斉射撃を敢行。視界を塞がれた敵に対し、夕姫も至近距離から機杖から機導砲を放った。
「刹那、任せたわよ」
 それを受け、制服姿の少女は息を吐き、ゆっくりと目を閉じる。その身を包む周囲の喧騒を静め、しばし集中の時を紡ぐ。それから数秒もしないうちに目を開き、改めて敵の姿を捉えた。
「見えた!」
 刹那は鞘に収めた刀を振り抜く瞬間に飛燕を駆使し、文字通りの居合を披露。ただ、敵がそれを味わったかはわからない。彼女の一閃で頭と胴が分かれ、すぐさま黒い霧となって消えた。

 その隙を突いて、コリーヌはさらに奥へ進む。そして一番厄介な相手と目される弓兵に対し、水中用アサルトライフルでケンカを売った。
「私はひとりじゃないんだぬ! 素敵なおねーさんもいるんだよ」
 少女の狙いは脚だが、魔術師のおねーさんの狙いは頭。葵が「どーもぉ」とご挨拶しながら、またファイアアローで顔を焼かんと動く。そこへCAMがやってくるのだから、弓兵にしてみれば堪ったものではない。接近前に潰せとばかりに、弓をしならせて矢を放つが、機動力が武器のCAMに当てるのは至難の技。あっという間に接近を許してしまう。
「ライフル持っても、立派にアタッカーするぬ!」
 コリーヌは自慢げに胸を張れば、葵も負けじと隣でエッヘンと胸を張る。
「というわけでぇ、ヴィオ大尉、見せ場よ」
『心得た』
 ブシドー隊員のCAM剣技が決まれば、もはや敵なし。コリーヌの脚攻めが功を奏し、難敵の撃破も容易に済ませた。
 後は指揮官へのとどめ……と思っていたら、防衛線の方から数度の射撃音が鳴り響く。ディアナ機がスナイパーライフルで指揮官の頭を撃ち抜き、そのまま無に返した。
『部下が逝ったのよ、貴方も逝きなさい』
 これを聞いたヴィオが「全くだ」とコクピットで頷いた。


 自陣に背を向けて攻め上るB班の相手は、投射歩兵と弓兵がそれぞれ2匹ずつ。手前に投射歩兵、奥に弓兵の布陣だ。
 小夜はジーナ機にウィンドガストを施すと、ジーナは「任せて!」の声と同時に前へ進む。彼女はコンバットナイフを持ち、敵の懐を目指す。
 これに追随する形で、星垂が走った。小夜から「ジーナのおねえはんは射撃が苦手」と聞いていたので、先程と同様に囮となるためだ。しかし、今回は雑魔ではなく怠惰の兵、一筋縄では行かない。
 脇からヴァルナを行かせる際、スリングから放たれた小岩で全身を打った。
「……ッ! さすがは怠惰だね。ボクも、負けてられないね」
 息が荒れるほどの強烈なダメージを受けたが、彼女は落ち着いて自己治癒を行い、さらに地を駆けるものを駆使してちょこまかと動き回る。和馬が通り抜ける際、「……星垂、気をつけろ」と激励を受けた。
 B班の後衛である小夜とロイドは、星垂のサポートに回る。小夜は二度の被弾は見たくないとばかりに、星垂にウィンドガストを付与。ロイドは自分と星垂に防性強化を施し、じりじりと攻め上っていく。
 結局のところ、B班の障害は「いかに接近戦へ持ち込めるか」だけだった。ヴァルナと和馬は同じ目標に向かって躊躇なく駆ける。そこへジーナ機が迫り、わざと上からナイフを振り下ろす。
『せりゃあっ!』
 CAMの腕を掴むことで攻撃を防いだ投射歩兵だが、両足に負荷が掛かるのを見計らって、ヴァルナは右脚に渾身撃を乗せた両断を見舞う。
「ゴギュアッ!」
「力押しだけでは勝てないのです!」
 それに合わせる形で、和馬も左脚に向けて小太刀を振るい、腱を存分に傷つける。
「……状況は変わった。果たして、同じ攻撃に耐えられるか」
 両足の踏ん張りが利かなくなったところへ、またCAMのナイフが迫る。それが避けられないことは、敵が一番よく知っていたようで、悲鳴は断末魔となって響き渡った。
 敵が消え去ると同時に、反対側にいた投射歩兵がスリングで和馬を攻撃して命中させるも、状況をひっくり返すには至らない。B班の後衛は目前まで迫っており、ロイドがデリンジャー「デッドリーキッス」で片目を潰したことで、この敵の運命も決まった。
「皆の助けになる為に……頑張ります……」
 小夜がスタッフ「ドライアド」からファイアアローを放ち、これも顔面へ。視界不良と火傷で顔を手で覆うという悪手を誘い、後はヴァルナと和馬が同じように両脚を料理。敵は巨体を揺らしながら、無残な姿で地に伏す。
 ここへ、先ほど重い一撃を食らった星垂がスキルを駆使して近づいた。
「さっきのお返しだよ、覚悟するんだね」
 闇に染まる手裏剣「朧月」で肩口を切り、覆う手が離れたの見てから、星垂は静かにダガーを脳天に突き刺す。
「もう苦しむこともないね」
 少女がそう言いながらダガーを抜くと、そこから敵は霧散した。


 B班が弓兵への対応を行おうとした時、A班に随伴していた2機のCAMが小夜とロイドの元へ駆けつけた。
『こちらディアナ。A班の目処が立ったので、B班に合流する』
 そこへ小夜のトランシーバーに、夕姫から連絡が入った。A班が受け持った怠惰の兵は、防衛線を担ったハンターや海軍に任せても大丈夫という圧倒的に有利な状況で、今にA班も反転攻勢に移るとのこと。これはもはや、大勢を決したと言えよう。
 CAM3機の勢揃いを見た弓兵は、無傷に近い状態であったこともあり、人類軍ではなくナナミ川の方を向いて一目散に駆け出した。まさかの敵前逃亡に、さすがのロイドもあっけに取られる。
「これは想定外だ。まさか背中を押すほどの風とは、な」
 ハンターが一斉に動き出すと同時に、CAMも動き出す。ディアナ機は膝をつき、ジーナに近い左側の弓兵の腕を狙って射撃。惜しくも命中はしなかったが、敵は慌てて弓を落とした。そこへジーナが背中にナイフを突き立てる。
『このおっ、都合よく逃げるなっ!』
 誰もが口にしたかった言葉を代弁しながら丸腰の敵を相手にしていると、突如ナナミ川の対岸あたりの天候が崩れ始める。それはすさまじい嵐となり、あっという間に川は増水による氾濫を起こした。行きは浅瀬で通れた箇所も、これでは安全に渡れる保証がない。
 弓兵も困惑して立ち止まったせいで、後を追っていたヴィオ機の接近を許した。
『シコン1、敵を捕捉。このまま排除する』
 完全に腰の引けた兵を討つほど簡単なものはない。念のため和馬とヴァルナも加勢したが、ほぼCAMの独壇場で終わった。


 こうして、同盟軍が押し留めた怠惰の兵は1匹残らず討たれた。
 まさに「殲滅戦」の名に恥じぬ成果を挙げた戦いといえよう。ハンターと同盟軍は、共に勝ち鬨をあげた。

依頼結果

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MVP一覧

  • エアロダンサー
    月影 夕姫ka0102
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラントka2531
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜ka3062

重体一覧

参加者一覧

  • エアロダンサー
    月影 夕姫(ka0102
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • フェイスアウト・ブラック
    ロイド・ブラック(ka0408
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 蘇芳神影流師範代
    蘇芳 和馬(ka0462
    人間(蒼)|18才|男性|疾影士
  • 蝶のように舞う
    コリーヌ・エヴァンズ(ka0828
    エルフ|17才|女性|霊闘士
  • 静かな闘志
    星垂(ka1344
    エルフ|12才|女性|霊闘士
  • ツィスカの星
    アウレール・V・ブラオラント(ka2531
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜(ka3062
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師
  • 面倒見のいいお兄さん
    沢城 葵(ka3114
    人間(蒼)|28才|男性|魔術師
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那(ka3984
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談所
浅黄 小夜(ka3062
人間(リアルブルー)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/02/28 17:57:05
アイコン 質問卓
コリーヌ・エヴァンズ(ka0828
エルフ|17才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/02/27 05:39:43
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/02/25 00:52:03