ジューン・ブライドにしあわせを

マスター:あまねみゆ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~12人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
4日
締切
2014/06/30 07:30
完成日
2014/07/12 19:42

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「あの……」
「あ、ご依頼ですかー?」
 ハンターオフィスに現れた小柄な少女は肩までの紅い髪を揺らして不安そうに辺りを見回していた。職員が声をかけるとホッとしたように息をついて近寄ってきた彼女は、カウンターに手をおいて口を開いた。
「お願いします、姉を、姉を町へ連れ帰ってください。でないと結婚式が……結婚式が……」
 涙をぽろぽろ零してカウンターにもたれかかる少女に職員はハンカチを差し出して、落ち着いて事情を話して下さいねーとなだめたのだった。


 * * *


「……どうしようかしら」
 少女が去った後、職員の目の前には依頼書が二枚並べられていた。
 ひとつは先ほど少女から受けた依頼。依頼人の名はカトリン・バルリング。
 もう一つは少女がハンターオフィスを訪れる少し前に受理した依頼。依頼人の名はニコラ・バルリング。
「不可抗力よねー……だって名前を聞くまで二人が姉妹だなんてわからなかったんだもの!」
 そう、偶然にも時間差で姉妹の両方から依頼を受けてしまったのだ。だが幸いにも依頼の内容を、余計な情報をそぎ落として彼女達の希望だけを取り出して純粋に見れば、競合しない。ならば。
「どっちも一緒に解決してもらえばいいのよ。そうすれば報酬も多くなるし、一石二鳥?」
 職員は「問題は解決した」とばかりにウキウキと依頼を掲示しにかかるのだった。


 * * *


 妹・カトリンからの依頼は「町を出た姉を、結婚式までに町へ連れて帰る」こと。
 姉・ニコラからの依頼は「妹が幸せな花嫁になれるように取り計らって欲しい」という内容。
 ニコラとカトリンはとある小さな町の娘で、年の近い町長の一人息子を含めた町の子どもたちと兄弟姉妹のように育ったという。
 だがその関係が変わったのが数ヶ月前。町長から直々にバルリング家の娘のどちらかを息子の嫁として貰い受けたいとの申し出があったのだ。もちろん二人の両親は喜んだし、万が一望まない縁組だとしても町長の申し出を断るなんて出来ない。両親は相談した後、やはり姉から嫁いでいくのが自然な流れだろうということで、ニコラと町長の息子フォルカーを婚約させた。結婚式はリアルブルーで花嫁が幸せになれると言われている6月に行うことになったという。

 妹のカトリンによればニコラは結婚式が間近に迫った3日前、旅に出ますと書き置きを残して姿を消したのだという。両親は慌てて花嫁をニコラからカトリンに変更すると町長に申し入れ、それは受け入れられた。このままでは、カトリンがフォルカーの花嫁となることになる。
 ただしカトリンはそれを嫌がっているわけではない。彼女は小さい頃からフォルカーに想いを寄せていたからだ。姉に恋の相談に乗ってもらうことも多かった。だからこそ、姉はカトリンのことを思って幸せになれる機会を捨てて家を出てしまったのではないか、それでは姉に申し訳が立たない、そう思っているのだ。自分のことは気にせず、姉には次期町長夫人として幸せになってほしいと願っているのだという。

 姉のニコラによれば、婚約が決まってすぐに彼女は両親に自分ではなくカトリンを婚約者にするようにと訴えていたのだという。幼い頃からカトリンの想いを見てきたからこそ、自分が妹の幸せを壊してしまうなんて耐えられなかったのだ。けれども考え方の古い両親は年長者から嫁いでいくものだと耳を貸さなかった。
 影では泣いているのだろう妹が祝福の言葉を述べながら式の準備を手伝ってくれていることが苦しくて、何とか出来ないものかと考えた結果、ニコラは姿を消すことにした。式が近ければ、両親は探して連れ戻すより花嫁をカトリンに変更する方を選ぶだろうと考えたのだ。町長の望みは「バルリング家の娘」を嫁にすること。家と家との結びつきを考えてのことだから、町長にとっては花嫁はニコラでもカトリンでもどちらでもいいはずだ。
 だが、心優しいカトリンはそれをすんなりと受け入れないだろう。ニコラが犠牲になったと思い悩むかもしれない。けれども自分が下手に町に戻ったら花嫁にされるだけだろう。なんとか上手く、カトリンが笑顔で嫁げるように力を貸して欲しいという。


 なんとか二人の希望を叶え、丸く収めて幸せな結婚式を迎えさせることは出来ないだろうか。

リプレイ本文

●姉の憂鬱
(今回は依頼人が若い男じゃないから気楽だわ)
 依頼人であるニコラが滞在しているという宿屋へ向かいながら、エリシャ・カンナヴィ(ka0140)は心の中で呟いた。前回世間知らずのお坊ちゃんを相手にした時は、それなりに手がかかったのだった。だが手がかかるのは今回も変わらないかもしれない。だって、どうせなら誰もが幸せになる結末にしてあげたいと思うのだから。
(女はすべからく幸せになる権利があるもの)
 エリシャの靴音が、宿屋への道すがらその意気込みを謳っているようだ。
(みんなしあわせになるといいな~)
 その後ろをひょこひょことついていくアンジェリカ フロリオ(ka0995)もやはり、皆の幸せを願っている。それはこの依頼を受けた者全員の総意なのかもしれない。
 二人がニコラの宿泊しているという宿屋を訪ねると、彼女はホッとしたように笑んで二人を出迎えてくれた。依頼を引き受けてくれるハンターがいて安心したのだろう。軽く自己紹介を終え、早速本題にはいる。
「ニコラさん。妹さんと、お話はされましたか……?」
「えっ……?」
 窺うようにそっと切り出したアンジェリカの言葉に、ニコラは驚いたように目を見開いた。
「実はあなたの妹からも依頼があったのよ」
 エリシャがカトリンの依頼に内容に、そして職員から聞いた、彼女がハンターオフィスに現れた時の様子を告げる。その上でエリシャ達ハンターの目的『両親に納得した上でカトリンとフォルカーが結婚する』という状態に持って行くことを告げると、ニコラは悲しげに瞳を伏せて弱々しく呟いた。
「そうなれば……いいのだけれど」
 エリシャ達の目的はニコラにとっては実現が到底難しく思えるものだろう。でなければ彼女は家を出たりはしない。
「実現させるためにも、ニコラに協力してほしいのよ。ご両親の説得がほぼ完了するまでは、あなたとご両親を接触させないから」
「一緒に来て欲しいのです。カトリンさんはニコラさんが大切だから、帰ってきてほしいのだと思うのです」
「……」
 二人の言葉にニコラは考えこむようにして口をつぐんだ。今、彼女の中には色々な思いが渦巻いているのだろう。だからエリシャもアンジェリカも急かすような事はせず、じっと彼女の言葉を待った。
「……わかったわ。あなた達は私達のこと、精一杯考えてくれているのよね。なら、従うわ。どのみちこのままではカトリンも、納得して嫁げないだろうし」
「ありがとうございます!」
 思わずアンジェリカはニコラの手をとってにぱっと明るい表情になる。エリシャもほっと安堵の息をついて。
「他にも幾つかお願いしたい事があるのだけれど」
「……こうなったら私にできることならなんでもするわ。言って?」
 じゃあ――エリシャが考えてきたお願いを、一つ一つ伝えていく。

●妹の憂鬱
 町は婚礼ムードに満ちていて、一歩入れば町人達から「旅の人かい? いい時に来たね」と声をかけられるほどだった。
「姉も妹も両親も結婚相手も……どいつもこいつも、もう少しどうにかならないかと思うが……」
 そんな町を上げての祝福ムードを見て、西東 続(ka0766)は小さくため息をついた。まあそれをどうにかするのが今回の依頼だということはわかっているのだが。
(姉妹なんだから、気使わないでばーんっしちゃえばいいのに……)
 自分も妹の立場である落葉松 日雀(ka0521)は姉である落葉松 鶲(ka0588)の後ろにくっついて隠れるようにしながら、心中で呟いた。自分だったら……と少し考える。
「みんなが納得して幸せになれる選択、というのは難しいですね……」
 風に流される金の髪を押さえながら、クリスティア・オルトワール(ka0131)が小さく零した。
「カトリンさんのお宅が分かりました。行きましょう」
 町人にバルリング宅を訪ねていた鶲が、日雀を連れて続とクリスティアの元に戻ってきた。
「いくか」
 続の言葉に頷いて、鶲の案内で歩き出す。


「まったくニコラときたら、親不孝者が。カトリンがいなかったら大変なことになっていたぞ」
「……」
 外での婚礼の準備から帰ってきた父親が吐き捨てて力任せに扉を閉める音が聞こえる。サイズ直しのためにドレスを試着し、針を打ってもらっていたカトリンは聞こえてきた声に瞳を伏せた。
 続けて聞こえてきたのは扉を叩く音。誰か来たのだろうか。針を打っていた母親が急いで玄関へと向かった。


「こんにちは。こちら、カトリンさんのお宅でしょうか? 私達、カトリンさんの知り合いなのですが、このたびご結婚なさると聞いてお祝いに来ました」
「あら、まあ……」
 花束を手にした鶲が告げると母親は驚いたものの嬉しそうに微笑んだ。
「急なことだったので間に合うか心配だったのですが……カトリンさんにお会いできますか?」
「え、ええ……支度の途中で少々見苦しいですが、こちらへどうぞ」
 花嫁を急遽すげ替えるという後ろめたさがあるのだろうか、母親は四人を家の中へと案内してくれた。先頭を行く鶲の後ろを、日雀は離れぬようについていく。
「カトリン、お友達がお祝いに来てくださったわよ」
「忙しいところ悪いが、邪魔をさせてもらう」
 女性たちよりも頭一つ分程度目線の高い続が告げると、カトリンが不思議そうな顔をしたのは一瞬だけだった。このタイミングで知らない人達が自分を訪ねて来るとしたら――理由ひとつしかないと彼女はわかったのだろう。
「わざわざ来てくださったのですね、ありがとうございます。どうぞ、中へ。あ、お母さん、私は彼らとゆっくり話したいから……」
「そうね。針は打ち終わっているし。あなたも休憩なさい」
 母親は優しい表情のまま、部屋を出て扉を閉めた。足音が遠ざかるのを確認してから一同は依頼を受けたハンターであることを告げ、そして自己紹介をしていく。
「私達はニコラ様からも依頼を受けています」
「えっ……」
 クリスティアの言葉にカトリンは一瞬固まって。そして。
「姉は、姉はどこにっ……!」
「しぃっ……」
 ドレスのまま慌てて腰を上げたカトリンに静かにするようにと口の前に人差し指を立てて鶲は彼女を座らせる。
「安心してください。今、仲間がお姉さんを説得しているところです」
「そうですか……」
「ニコラさんは、貴女の幸せを祈っています。それだけは揺らぐことのない事実です」
 鶲の言葉に続けて、クリスティアがニコラの依頼内容について告げると、カトリンは瞳に涙を滲ませて唇を噛み締めた。姉さん、零れた呟きと同時に雫も落ちる。ドレッサーの上に置かれている綺麗に折りたたまれたハンカチを見つけた日雀は、おずおずとそれを差し出した。
「ありがとう……」
 カトリンが涙を拭いて落ち着くのを待って、鶲は続ける。椅子に座っているカトリンの前に膝をつき、下から彼女の瞳を見つめながら。
「カトリンさんはフォルカーさんと結婚したくはないのです?」
「そんなっ……! 私、小さい頃から、フォルカーのお嫁さんになることが夢だったんです……でも、こんな形で……」
「その想い、フォルカーさんに伝えてはどうですか?」
「でも、そんなことしたらフォルカーが気を使ってしまいます。姉が戻ってきたら、姉と結婚するのに……」
 ニコラの思いを知っている日雀はカトリンの言葉に小さくため息をついた。もどかしく見えて仕方がない。対する鶲は優しい声色でカトリンに話しかける。
「ニコラさんはもうずっと前からカトリンさんの想いを知っていたようですよ」
「えっ」
「姉は案外察しが良いものなんですよ。想いを伝えて貴方達が幸せになるのであれば、姉であるニコラさんもなんの蟠りもなく祝福できると思うのです。私達はできればそのお手伝いをしたいのです」
「でも、両親が認めてくれません。姉が帰ってきたら、姉が嫁がされます」
「そこは、俺達が説得してみよう」
 部屋の壁に寄りかかってやり取りを聞いていた続は、クリスティアと視線を合わせて頷いた。
「だから、カトリン様はフォルカー様に想いを伝えることを約束してください」
 ふんわり笑んだクリスティアの言葉に、カトリンは力強く頷いてみせた。

●姉の心
「手紙、書けたわ。こっちがカトリンに、こっちが両親に」
「預かるわ」
「でも……カトリンはともかく両親が手紙一通で納得してくれるかしら」
 手紙をエリシャに預けたニコラは不安そうだ。ベッドに腰掛けて紙束に目を走らせているアンジェリカは、大丈夫ですよぅ、と視線を上げて。
「言葉にしないと伝わらない思いもあるかもしれませんよ?」
「そう、ね」
「だから、きっと伝わりますよ!」
 アンジェリカの笑顔に引きずられるように、ニコラも笑顔になる。その様子を見たエリシャは手紙をしまい、二人に向き直った。
「次はプレゼントね。プレゼントなら言葉で伝わらない気持ちも伝わるかもしれないでしょ?」
「どんなデザインがいいですかね! こっちもいいし、こっちも素敵です!」
 アンジェリカが繰っている紙束は、ニコラが今まで書きためていたという刺繍の図案だ。なにか花嫁衣装に似合うプレゼントを作って欲しい、そう頼まれたニコラは、ヴェールに手ずから刺繍することに決めたのだった。
「ヴェール用の生地は安物というわけにはいかないし刺繍糸もたくさん必要だわ。一人で探しまわっていたら時間が足りない……」
 ピックアップされた図案を見てニコラが顔を曇らせる。人に頼るのが下手なのね、ニコラの性質を見抜きエリシャはポン、と彼女の肩を叩いた。
「人手が必要なら言うと良いわ、手伝ってあげる」
「お手伝いならどーんとおまかせです!」
「でも……」
 手伝いを申し出たエリシャとアンジェリカを交互に見るニコラ。甘えては悪いと思っているのだろう。だから。
「若いうちは大人に甘えれる時は甘えておきなさい」
「えっと……若いうちは大人に甘えれる時は甘えておきなさいなのです」
 エリシャは自分の人より長い耳をピンと弾く。アンジェリカがその真似をすると、ニコラは堪え切れずに笑みを零した。

●親の心
「突然訪ねてしまい、申し訳ありませんでした」
「いえ、祝ってくれる人を迷惑だなんて思いませんとも」
 カトリンの部屋を出ると、クリスティアと続が向かったのはダイニングと思しき場所だ。母親がお茶の用意をしている傍ら父親は椅子に座ったまま二人に軽く会釈する。
「私達はお祝いを述べる他に目的があってきました」
「俺は西東という。こっちはクリスティア。これでもハンターだ。今日はある依頼のためにここに来た」
「依頼……?」
 父親がピクッと顔をひきつらせる。クリスティアはそれ以上父親を刺激せぬように言葉を選ぶ。
「お姉様を結婚式までに町に連れ帰ってほしいというカトリン様の依頼です」
「カトリンが……? それでニコラはどこだ!?」
バンッ、机に両手を打ち付けて父親が立ち上がる。表情は険しい。それでも続は冷静に言葉を紡ぐ。
「依頼はもうひとつある。依頼の内容は『妹が幸せな花嫁になれるように取り計らって欲しい』。そう、ニコラからの依頼だ」
「……!」
 母親の表情が変わったのを続もクリスティアも見逃さなかった。気づかなかったのは父親くらいだろう。
「ニコラめ! そこまでして嫁ぐのが嫌か! 長女のくせにその役目を妹に押し付けるとは!」
 激昂しだした父親、なんとか父親をなだめようとしている母親。その様子を暫く見つめるハンター二人。そして、続が口を開いた。
「なあ、一つ教えて欲しいんだが……あんたらの考えは、本当に貫くべきことなのか?」
「当たり前だろう! やはり年の順に嫁いでいかねば家の中の秩序というものが……」
 素朴な疑問。帰ってきた答えも予想通り。だから。
「ご両親のお二方にも言い分はあるかと思います。ですがそれが通じるのはご息女が生きている間だけですよ?」
 クリスティアの静かな声が場を引き取る。
「今の時勢、歪虚の脅威のみならず盗賊など人の命を脅かす存在が跋扈してしまっています。それのみならず突然の病や災害に見舞われる事もあります。いつ何が起きて命の危機に晒されるか分からない……だからこそ、出来うる限りニコラ様達の望むようにさせてあげて下さいませんか?」
「フォルカーに特別な感情を抱いているのはカトリンだ。それはあんた達も知っているだろう? それなのに歳が上だからと言う理由でニコラを結婚させようとした。もし無理にでもそれを貫けば、妹は陰で泣くだろう。姉はそんな妹に気づき心を痛めるだろう」
 それが逆であれば、妹は幸せになり、姉はそれを喜べる――クリスティアと続の言葉が両親に降り注ぐ。
「時間を、ください」
 口を開いたのは母親だった。父親を庇うようにして二人を見つめる。
「翌朝までに、話し合いますから……」

●届いた想い
 両親の心を固めていた枠を取り外したのは、エリシャとアンジェリカのもたらしたニコラの手紙だった。その手紙を読んで涙を流した両親は、同じくニコラからの手紙を読んでいたカトリンに、気持ちを初めて問うた。
「カトリン、お前はフォルカーと結婚したいのか?」
「……はい!」
 姉の心を知った妹は、躊躇わずに両親にその心を告げた。降りる沈黙。それを破ったのは続だ。
「もう一度聞く。あんたらの考えは、実の娘二人を不幸にしてまで貫くべきことなのか?」
 両親が力なく床に座り込んだのは、自分達の考えが娘たちを苦しめていることに気がついたからか。
「カトリン、幸せにおなり」
 その言葉を彼らの意志として聞き取ったアンジェリカは、急いで町外れで待っているニコラを迎えにかけ出した。

●幸せというもの
 姉とエリシャとアンジェリカの手による刺繍の入ったヴェールを被ったカトリンは、ウエディングドレスを纏って聖堂に立っている。裁縫が得意なニコラの刺繍と比べるとさすがに二人の縫った箇所は目立ったが、言葉にできぬ気持ちと愛が籠められているのだ。六人のハンターも、列席を求められて式を見守っていた。ニコラが心から晴れやかな顔をしてカトリンを見ている。
「フォルカー」
「ん?」
 視線を合わせたカトリンは、頬を赤く染めて紅をひいた唇を開く。
「これは政略結婚じゃないんですよ。だって私、子供の頃からずっと、フォルカーのお嫁さんになりたかったんたですから」
 その笑顔は傍から見ている者にも輝かしく映るほどで。フォルカーの頬も赤く染まった。
(いつかは日雀も嫁に行くのかな)
 その時は唯唯幸せであるといい、そう願って鶲は隣の妹に視線を移す。フードの下の日雀の視線は新郎新婦を映していた。
(お母様達も、私の結婚式があれば見たかったのでしょうか……)
 遠くへ思いを馳せながら、クリスティアは花嫁を眩しそうに見つめる。親は子の幸せを願うもの。だとしたら、きっと……。

 大勢からの、そして一番祝福して欲しかった人からの祝福を受け、この日新たな夫婦が生まれた。

依頼結果

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MVP一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィka0140

重体一覧

参加者一覧

  • 古塔の守り手
    クリスティア・オルトワール(ka0131
    人間(紅)|22才|女性|魔術師
  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士
  • 励ましの歌唄い
    落葉松 日雀(ka0521
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 温かき姉
    落葉松 鶲(ka0588
    人間(蒼)|20才|女性|闘狩人

  • 西東 続(ka0766
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士

  • アンジェリカ フロリオ(ka0995
    エルフ|18才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/28 01:45:06
アイコン 相談卓
エリシャ・カンナヴィ(ka0140
エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/06/29 23:59:56