子供たちを守れ!

マスター:神崎結衣

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/03 15:00
完成日
2014/07/08 23:03

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●裏山の雑魔
「そう、あれは歪虚だって話なのよ」
「あら怖いわ……早く退治してもらわなきゃ」
 村の親たちの最近の井戸端会議の話題は専ら裏山に出現した雑魔のことだった。
 どうやら、人型の雑魔が三体ほど裏山に住み着いているらしいのだ。
 当初は山菜を取りに行った村人が幽霊を見たという話で広まったものの、その幽霊がまとう雰囲気が悪い物に感じるというので村長らが詳しく調べた結果、歪虚らしいという結論に達したという。
「ええ、もう依頼はしているそうよ。まだ確定はしていないけど、早ければ明後日にでもハンターの方が来てくださるって」

●幽霊の話
「なあお前ら、裏山の幽霊の話、知ってるか?」
 仲良し四人グループのリーダーを気取る少年、トウワが言い出すと、同い年の少年であるヨアンが目を輝かせた。
「知ってる知ってる! 何か出たらしいじゃん! すごい美少女の幽霊らしいぜ」
 その隣で本を読んでいた紅一点のノアは、少し幼い顔立ちながらも大人ぶった呆れ顔で少年を一瞥する。
「あんた馬っ鹿じゃないの? 幽霊が美少女とかいうのはデマでしょ。ただ何となく人影みたいなのが見えたって話だし、そもそも単なる見間違いっぽくない?」
「いや、出たってのはマジって話だ。俺は複数の人影って聞いたが、今度ハンターに頼んで退治してもらうとか」
 トウワが幽霊の話を最初に聞いたのはしばらく前のことだった。そのときは大した興味もわかなかったのだが、昨日、わざわざ退治を依頼するらしいと小耳にはさんで俄然気になり始めたのだ。
 もしかしたら雑魔なのかもしれない――と思ったものの、それこそが気になる理由でもある。歪虚の類は話には聞くが、今まで一度も見たことがないのだ。危険だと何度言われていても、実際に目の当たりにしたことがない危険など実感がわかず、ただ好奇心だけが先行する。
 この世界を緩やかに殺していく存在を、この目で見てみたい。それだけだった。
「退治!? え、その前に見に行かね? 顔をはっきり見た奴がいねえならマジで美少女かもしれねえし!」
 ヨアンはこういう話が大好きだ。雑魔ではないかとは多分夢にも思っていないし、きっと話せば見に行こうと言い出すと思っていた。
「ちょっと。本当にいたとして、襲われたりしたらどうするつもり?」
「無い無い。こんな何も無い田舎に悪い幽霊なんか出ねーって」
「はあ……ほんっと単純馬鹿」
 ノアも今は澄ました顔で本に視線を落としているが、なんだかんだでついてくるだろう。ノアだって、きっと本気で雑魔だと思っているわけではない。この平和な村に住む子供たちにとって、歪虚はそれほど遠い存在なのだ。
 とすると問題はもう一人。トウワが視線を移した先で、その話を聞いていた最年少のルイスが顔を曇らせた。
「お母さんが、裏山にはしばらく行っちゃだめだって……」
「なんだよルイス、見てみたくないのか? 見てみたいよな? 親の言いなりになるなんてナンセンスだ! 自分の気持ちを大事にしていこうぜ!」
 完全に見に行く気満々のヨアンがルイスの頭をばしばし叩く。
「……ちょっとは見てみたいけど、お母さんに怒られるのはやだよ……」
「心配するな、ばれなきゃ大丈夫だ! なートウワ!」
「もちろんばれないように行くさ。それにもしばれたら、俺が無理やり連れて行ったと言っていい」
「さっすがトウワかっこいい!」
 トウワが言うと、ルイスは少し考える素振りを見せてから頷いた。
「うん……じゃあ、ぼくも行く」

●計画
 幽霊が出たというのは、裏山の中腹あたり。
 裏山の地図――とは言っても正確な地図ではなく、山菜取りルートを記しただけの簡単な地図なのだが――を四人で囲み、幽霊出現地点に赤い印をつけた
 裏山には山菜を取りに行くために踏み慣らされた道があるのだが、幽霊が出没するのはその道から少し外れたところらしい。目撃者の情報を総合すると、誰もが道から遠くに人影を見ただけで、実際に近づいたことは無いようだった。
「ということで、俺たちは幽霊に接触を試みようと思う」
「よっしゃ! 燃えるぜ!」
「え、あの草とか生えっぱなしの中に入るわけ? 虫多そうで嫌なんだけど……」
「虫よけのハーブ塗っていこうよ」
 それぞれがあれこれ言いつつも、持ち物の分担などを決めていく。
 地図とコンパス。草が生い茂り、木の根っこが張り出していたり折れた枝が横たわっていたりと足場が悪いから、万が一転んだりして怪我をしたときのための水、消毒液やガーゼ。あとはノアの言う通りに虫が多そうなので、虫よけ。当然、飲み物とおやつ。
 武器は持たなかった。雑魔だったとしてもどうせ倒せるはずはないのだし、そんなものを用意して、ただの幽霊を見に行こうとしている三人を不安にさせたくもなかった。もし万が一のことがあったら逃げればいいのだ。
 足場が悪い中、ただの子供の足でも雑魔から逃げ切れるという希望的観測に基づいたトウワの思考に注意を投げかける者はいない。
「まあこんなところか。すぐ用意できるな」
「出発日決めようぜ! ちなみに退治はいつなわけ?」
「正確にはわからないんだ。ハンターの方の都合もあるだろうから、日にちは今ちょうど話し合ってるくらいじゃないか」
 実際、トウワは依頼についての詳しい内容を知らない。この件に関して、大人たちは子供たちの前で話題にすることを避けているようだった。何か聞いてもはぐらかされてしまうので、むしろ子供たちの興味を掻きたてている部分もあるのだが。
「じゃあなるべく早く行く方がいいかもね。……私は明後日なら行けるけど」

●依頼当日
「ハンターさん!」
 ひどく慌てた様子の女性が、裏山に入ろうとしているハンターたちに駆け寄ってきた。
「すみません、実は子供が今、裏山にいるみたいなんです! もうしばらく前に家を出ていて、だいぶ山の中に進んでしまっているかもしれません。どうか急いで行って雑魔に襲われる前に助けていただけませんか……!?」

リプレイ本文

●作戦
「わかりました。子供たちの特徴と隠れたりしそうな場所を教えてください。……猶予はありませんが、闇雲に探すよりも詳しいお話を伺ったほうがよいでしょう」
 白神 霧華(ka0915)がその母親に告げると、母親は取り乱し言葉を詰まらせながらも説明を始めた。
 裏山にいるのは彼女の九歳の息子であるルイス。そしてその友人でいつも行動を共にしている十一歳のトウワとヨアン、十歳のノアもおそらく一緒とのことだ。
「手分けして探せるよう、二人ずつ分かれるわよ。連絡を取り合いたいけれど、私の他に誰か魔導短伝話は持っているかしら?」
 母親の話を聞きながらエルティア・ホープナー(ka0727)が仲間を見回した。
「あるよ」
 伊勢 渚(ka2038)がそれに応じて荷物から三台の伝話を取り出し、セリス・アルマーズ(ka1079)とティーナ・エル・クルーリエン(ka1353)にそれぞれ放る。
「準備がいいわね!」
「ありがとうございます」
「ただし距離が離れすぎると繋がらないから注意して。オレは馬で先に行って子供たちや雑魔の痕跡を探そうと思うから、オレとはしばらく繋がらないかも」
「渚、その馬は俺も乗れる?」
 渚が引き連れていた馬を鳥丸 翼(ka2426)が見やった。
「多分大丈夫だよ」
 その馬は基本的には一人乗りである。よって二人で乗れば多少速度は落ちるかもしれないが、それでも人間が走るよりは遥かに速いだろう。
 程なくして母親の話を聞き終わった霧華が状況をまとめて伝達した。子供達はいつもトウワを中心に行動しており、裏山にも何度も入ったことがあるとのこと。こっそり作戦を立てた痕跡を見るに、雑魔がいる場所へ向かっているようだという。手渡された地図では、雑魔は道から大きく外れた場所に出現するとされていた。

●先行
 出発から三十分程経過した頃、馬に乗った渚と翼は細い道を進んでいた。馬もやや走りにくそうではあるが、それなりの速度を出せている。
「……ここに来るまでに見つかれば良かったんだが」
「ああ。もう雑魔がいる場所に近いし……間に合ってればいいけど」
 聞いたところでは、そろそろ雑魔の出現地点に近い。しかしここまで子供に出会わなかったということは、既に先を行って雑魔に接触しているか、道を外れていたため追い越したかのどちらかだ。
 二人は馬から降りて手近な木に繋ぎ、雑魔がいる方へと走りだした。

 そして鬱蒼と茂る山の中を進んで十五分。
「く、進んでやってるとは言え手間のかかる作業だ、早く煙草が吸いたいぜ……」
「確かに足跡も見えないし、手当たり次第に探すしかない感じだよなあ」
 足元には草が生い茂っているせいで、人が通った痕跡を殆ど見分けることが出来ない。捜索は手探り状態となっていた。
 しかしその時遠くにゆらりと動く影が渚の視界に映り、素早く翼に合図して身を隠した。
「雑魔だ」
「二人で戦ってる間に子供たちが現れたら厄介だし、様子を見ながら先に子供たちを見つけよう」
 三体の雑魔はある程度の距離を取ってばらばらに徘徊していた。子供がまだここにたどり着いていないことを祈りながら、二人は慎重に雑魔の監視と捜索に移った。

●後行
「遺跡探索や森での生活で慣れてるもの。早く行きましょう」
「そうですね。間に合わなければ元も子もありません」
 エルティアとティーナは霧華とセリスより先を走りながら子供たちを探していた。しばらく道なりに進んでいるが、子供たちの気配は感じられない。
「なかなか全速力とはいきませんね」
「そうね、全力は出しているけれど!」
 そのやや後ろを走る二人も、少々走りにくいながらも可能な限りの速度で走り続けていた。こちらも声が聞こえたりしないか気を配っていたが、どうもまだ近くにはいないようだ。
 四人とも既に数十分間も走っており、程度の差はあれ多少の疲れが生まれてきていた。

 途中まで進んだ結果子供たちに出会わなかったため、既に追い越している可能性も考慮し、四人は二手に分かれて捜索を始めることになった。
「大人に見つからないように計画していたと言っていましたし、隠れているのかもしれませんね。馬の蹄の音も響いたでしょうし」
 大きな木の根元を覗き込みながら霧華が言った。セリスも前にいる二人との距離を確認しながら木の陰に目を走らせる。
「あり得るわね。でも雑魔の所に向かっているのなら、このまま進めば見落とすことは無いはずよ」
 二人で子供が隠れそうな場所を重点的に調べながら、着実に雑魔の元へ近付いていく。

 ティーナの伝話に通信が入ったのは、分かれて捜索を始めてからしばらくしてからだった。
「はい。……わかりました。こちらももうすぐ着くと思います。もし先に倒せそうならそうしましょう」
「先に行った二人から?」
 短い通話を終えたところでエルティアに頷く。
「はい。雑魔を見つけたそうです。あちらも子供たちは見つかっていないそうなので、まだ攻撃を仕掛けてはいないとのことです」
 先に行った二人も見つけていないとなると、子供たちはどこにいるのだろうか。
 もちろん子供たちが現れる前に雑魔を倒せるなら、それが最も良いのだが。
「幽霊だ!」
 皆がそう考えていた矢先に、前方で唐突に少年の声が響いた。

●雑魔との遭遇
 少年の声は渚と翼にも聞こえていた。声の方を見るとまず子供たち、その後ろから子供たちを追うティーナ、エルティア、セリス、霧華が見える。
 そして意思が無いようにばらばらに徘徊していた雑魔が、走って来る子供を見るや俄にその方向へと動き出した。
「そっちはとりあえず子供を捕まえてくれ!」
 伝話でセリスとティーナに伝えた渚は身を潜めていた木の影から飛び出し、左手の甲の紋章を紅炎のように輝かせた翼も続く。

 人型をしている雑魔の一体が地面から石を拾い上げ、先頭にいたヨアンの方へと投げた。
 四人の中で唯一、それが幽霊ではないことを予期していたトウワの行動は早く、突然のことに動きを止めたヨアンの腕を引っ張って石を避けさせた。
 ノアもルイスも呆然と人の形をしたそれを見ている。遠目に見れば幽霊に見えただろうそれは、対面すれば明らかな邪気を放っていて、このまま近付いてはいけないと本能的に察知するには十分だった。
「逃げろ!」
 人ではあり得ない動きで近付いてくる雑魔を前にトウワが言って、トウワ自身は足元にあった石を目の前にいる雑魔に投げた。それはトウワなりに雑魔の注意を逸らそうとした行動だが、無謀でしかない。
 そのトウワの前に割り込んだのは霧華とセリスだった。
「そちらは任せました。お願いします」
 霧華が太刀を構えながら一歩前へ進む。
「わかったわ! 貴方、仲間を守りたいなら、今からでも他の子達がパニックにならないように抑えて頂戴! 大丈夫、私達が絶対に貴方たちを守るから!」
 セリスは戸惑うトウワの肩に手を置いて言った。

 ティーナとエルティアが、逃げる途中で転んだノアを背に立ち尽くしているヨアンに追いついた。その目の前には雑魔が迫っている。
「目標発見。行くわ」
 エルティアがその二者の間に立ちはだかった。
「護る気概は結構ね。でも邪魔よ、死にたいの?」
 そう言うエルティアの周囲では古代文字が魔法陣のような文様を形成しながら舞い踊り、澄んだ音楽が響き出した。いつの間にか利き腕には、あたかも雑魔を鋭く睨みつけているかのような黒蛇の幻影が見えていた。
「あなたたちを助けに来ました。指示に従ってください」
 その後ろではティーナがノアの手を取り立ち上がらせ、抑揚の小さな声で二人の子供たちに告げた。

 一方、闇雲に逃げ出したルイスは一人で雑魔と相対していた。
「行かせねぇ!」
 近付いてくる雑魔に足を震わせているルイスの視界に、翼が飛び込んでくる。
「子供も守れねぇで……英雄になれるかってんだよ!!」
 翼が鋭く斬り込んでいくと同時に乾いた銃声が響き、ルイスが振り向くと渚がリボルバーを手にしていた。
「坊や、ちょっと我慢してな。直ぐに終わらせてやる。オレも煙草が吸いたいんでな!」
 そして動けずにいる小さな身体を抱え上げた。

●戦闘
「後ろには行かせない。貴方には私の好奇心の相手をしてもらうわ」
 エルティアがまずは牽制に移動しながら放った矢は雑魔の腕を直撃した。雑魔はそれに怯む様子も無く再度石を投げて来たが、背後の子供たちを狙ったつもりなのか、石は大きく逸れて地面へ落下した。

「ここでまとめて守りましょう」
「そうね。下手に逃げると危ないわ」
「坊やたち、動くなよ!」
 その間、ノアとヨアンを連れたティーナは、トウワを連れたセリス、ルイスを連れた渚と合流し、三人で子供たちを背に守るように立った。
「今から全員ここにしゃがんで絶対に動かない。いいな?」
 考えの甘さを思い知ったトウワは三人に指示を出した。ヨアンとノアは黙って頷いたが、ルイスは恐怖で泣きじゃくっている。
「……セリスさん、抱きしめてあげてください。私よりもあなたの方が適任そうです」
「ええ、……大丈夫よ。絶対に守ってみせるから」
 ティーナに促されたセリスはルイスを抱きしめた。

 多少の知能は持ち合わせているのか、より弱者である子供たちの方へ接近しようとする雑魔を食い止めるべく、霧華は放り投げられた石を避けながら素早く雑魔に近接した。
「最初から全力で行かせていただきます!」
 一方踏み込み、黒漆太刀で力強く雑魔の胴体を斬り裂く。雑魔はその攻撃を避けることが出来ず、ぱっくりと裂傷が生じた。しかしまだ動く力は残っているようだ。

 背後で響く子供の泣き声を聞きながら、翼がクレイモアを掲げる。
「怖ぇよな……けど、信じてくれ! 『紅蓮の剣』を、俺の剣を!!」
 木々に遮られる射線を意識しながら移動しつつ渚が撃った弾が雑魔の回避を牽制し、力強く振り下ろされたクレイモアの切っ先は雑魔の頭に重い一撃を与えた。その上辺だけの形状が奇怪に歪み、それが人ならざるものであることを感じさせる。

 続いてエルティアはダガーに持ち替え、それに応じて木の枝を拾い上げて殴りかかってくるのを懐に踏み込んで避けた。
「雑魔も急所は同じなのかしら?」
 関節部分を斬り上げようとしたが、雑魔も人ではあり得ない動きでそれを避けた。どうやらこの雑魔の実態は何か不定形のモノらしい。
 執拗に子供を狙うらしい雑魔が逆の手に持っていた大きな石を投げたが、狙いが定まらず子供たちに当たることはなかった。
「エルティアさん、撃ちます!」
 背後の子供たちの様子を見ながらもティーナはワンドを構え、軌道を調整しながらマジックアローを放った。矢は雑魔の胴体に直撃してぽっかりと穴が開いたが、まだ倒れない。
 一歩引いていたエルティアが雑魔の攻撃を避けながら頭に更なる打撃を加えると、力が尽きた雑魔は何も無かったかのように消滅した。

 雑魔が殴りかかってくるのを避けた霧華が、今度は鋭く腕を斬り落とした。腕はぼとりとその場に落ちて消えたが、雑魔はそれで動きを止めることはない。
 そのときセリスは霧華を支援するべくフェアリーワンドを構え、攻撃が入る位置を探していた。
「う……うわあああぁ!」
 しかし大人しくなったかと思ったルイスが突然泣き出し、セリスは即座に振り返った。走り出していたルイスに走り寄ると、その手を掴む。
「危ないわ! 動かないで頂戴!」
「……あ、ひとが、ひとが……」
 まだ九歳のルイスは、人の形をしている雑魔を前に混乱したらしい。セリスは再びルイスを抱きしめ、その視界を遮った。
「大丈夫よ、あれは人じゃない。落ち着いて。すぐ終わるわ」
 そしてルイスに優しく語りかける。余力があれば攻撃を、と思ったが、幼い子供には雑魔との戦いは多少刺激が強かったようだ。
「ええ、次で終わりです!」
 子供たちをセリスに任せた霧華は続けて雑魔との交戦に集中し、次に足を斬ると雑魔は動く力を失った。

 翼と相対する雑魔は手にした大きな石を振り下ろして来たが、翼はそれを機敏に回避した。
「行くぜ!」
 続けて再び振り下ろした強力な一撃で、剣が胴体の半分ほども食い込む。
 それにも怯まずに間髪入れずに放り投げられた石は軌道が逸れて木にぶつかり、子供たちまで届くことはなかった。
「オレも撃つぜ!」
 援護を続けていた渚が、移動しながらリボルバーにマテリアルを込めて強力な銃弾を放った。弾は再び雑魔の頭に命中し、雑魔は力を失ってその場で跡形もなく姿を消した。

●大人の教え
「坊やたち、よく我慢したな! だが……面白いことがあるからって人気の無い所へいくとこう……怪物が出るぞ!」
 煙草を取り出しながら渚が言ったが、その明るい調子に反して四人の子供たちは項垂れていた。
「……ごめんなさい。幽霊を……もしかしたら歪虚かもしれないとは思ったんですけど、ただ一目見てみたくて……」
 トウワが俯いたまま謝った。動機はただの好奇心だけで、深く考えていなかったことは明らかだった。
「もういいわ。その程度なら……やっぱり家で本を読んでれば良かった」
 エルティアがため息をつく。
「ごめんなさい……。俺のせいで、お前らもごめん」
「トウワのせいじゃねえよ。そもそも見に行こうって言ったの俺だもん」
「そうだよ。私も止めなかったし……ルイスが正解だったね。ごめん」
 傍らで未だに泣いているルイスの頭をノアが撫でた。
「貴方たちは好奇心で命を落としてご両親を悲しませるところだった……けれど、その探究心は褒めてあげるわ」
 反省はしている様子を見て、エルティアが声をかけた。
「好奇心が赴くままに行動して失敗する、というのは往々にしてよくある事です。自省して成長してください」
「そう、これが現実ってことをわかればいいわよ。歪虚には近付かないこと!」
 ティーナとセリスも子供たちをフォローしてやる。
「もう二度とこんな無茶はしないと約束できる?」
 霧華の言葉に四人が無言で頷く。
「反省すればよし! ただしここで反省しても、帰ったらケツ百回叩きの刑が待ってっから、覚悟しとけよ」
 最後に渚が笑いながら言った。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 物語の終章も、隣に
    エルティア・ホープナー(ka0727
    エルフ|21才|女性|闘狩人
  • 不屈の鬼神
    白神 霧華(ka0915
    人間(蒼)|17才|女性|闘狩人
  • 歪虚滅ぶべし
    セリス・アルマーズ(ka1079
    人間(紅)|20才|女性|聖導士

  • ティーナ・エル・クルーリエン(ka1353
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 白煙の狙撃手
    伊勢 渚(ka2038
    人間(紅)|25才|男性|猟撃士

  • 鳥丸 翼(ka2426
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 救出作戦相談所
エルティア・ホープナー(ka0727
エルフ|21才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/07/03 12:29:37
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/30 23:53:54