蠍の魔手

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/04/12 12:00
完成日
2015/04/13 15:16

みんなの思い出

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オープニング

●とある海水浴場近辺にて
 日差しと風が暖かくなり始め、流石に海水浴にはまだ早いものの、浜辺を散歩するのも気持ちのいい季節となってきた。
 コバルトブルーの海を眺めながら春の気配を感じて散歩に興ずる海辺の町の人たち。
 そんなのどかな光景が一拍の間の後恐怖劇へと変わる。
 砂漠でもないのに現れた巨大な蠍の群れが人々へと近づき始めたことによって。
 砂の上を音もなく移動する蠍たちに人々は恐慌状態に陥りながらその場から逃れようと砂浜を駆け抜けたのだった。

「蠍っていうと砂漠のイメージなんだけどね。……雑魔だから何処にでもわくのかな。というわけで今回は大蠍退治のお願いだよ。
 数は十体位、海水浴ができる砂浜の砂に潜伏してる。音をほとんど立てずに近づいてくるのが厄介だね。
 それから、蠍の定番というか、尾に毒を持っている可能性が高いようだよ。逃げ遅れたペットが尾に刺されて死亡してる。
 この二つと、あとは物量が厄介な敵になるだろうね。
 それぞれが個々に目標を定めて迫ってくる習性があるみたいだ。それから、外見からの想像だけど結構殻が硬そうだってさ。
 砂場は柔らかい分足が取られやすいし、敵は砂の中を移動してくるからね。うっかり刺されないよう注意して欲しい。
 獲物の気配を感じるとどこからともなく現れてきてはくれるみたいだけどね」

リプレイ本文

●春の海辺に
 一時期急に冷えたりはするものの、基本的には日ごとに温かくなっていく春の陽気。
 浜辺で海水浴には流石にまだ早いが海を眺めながら散歩するにはいいシーズンだ。
 しかし、時期も場所も外した大蠍型の雑魔が出て以来、夏場は海水浴に、春と秋は海辺での散歩に、冬はごく一部の人に黄昏る格好の場所として愛されている砂浜に人影はない。
 夏を迎えて本格的な海水浴のシーズンとなる前に雑魔の討伐を。
 地元住民からハンターオフィスに依頼が入り、八人のハンターが大蠍討伐にやってきた。
 榊 兵庫(ka0010)がやれやれ、とあきれたように砂浜を見下ろす。
「……砂漠と砂浜の違いも理解できないとは、雑魔というものは俺の常識を軽く上回ってくれる。
 まあ、どんなに非常識であろうが雑魔は雑魔だ。きちんと退治しよう。
 ……時期外れである意味助かった、と思うべきだな。
 これが夏だったならばどれほどの被害が出たのか、想像もしたくない」
「確かに夏じゃなくてよかった。海水浴だとはだしの人も多そうだし。
 それにしてもこのどこかにいる、それが分からないっていうだけで随分と厄介な砂浜に見えるな。
 さーて、全部引きずり出して仕留めるとするか。
 頼むぜ、シーザー!」
 岩井崎 旭(ka0234)はゴースロン種の愛馬、シーザーの首を軽くたたいて声をかけた。
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)は大蠍、と聞いて思わず顔をしかめた。
「うえ、デッケェ蠍とかやめてくれよ、今度からエビフライが食べられなくなる。
 ……いや、あんま関係ねぇか?」
 嫌がった理由は甲殻虫が嫌だとか毒が厄介だとか砂に隠れているのを引っ張り出すのが手間だ、といった理由ではなく見た目的にエビフライが食べられなくなりそうだから、だったらしいがエビフライと大蠍では形状がだいぶ違うことに気づいたのかあまり関係ないか、と思い直したようだ。
 その横でジュン・トウガ(ka2966)もまた微妙な顔つきをしていた。
「サソリか、昔兄貴がカニ料理とか偽って私に食べさせようとしたアレか、嫌なものを思い出したな……兄貴には絶対会いたくないな。
 ちょいと此処でトラウマをブレイクさせてもらうか、せっかくの海水浴場だ。さっさと元に戻して、夏が来たら万全の状態で客を迎え入れてそいつらが泳ぐのを楽しめるようにしないとな」
 どうやら食べさせられたことがあるらしいが味覚的に合わなかったのかカニだと思って食べたら蠍だったというショックが大きかったのか兄妹としての記憶にも蠍料理にもいい思い出はないようだ。
 そんなジュンとは真逆の思考回路をしていたハンターが二人いた。
「蠍か……素揚げすれば食えるやろ」
「サソリはなかなかの珍味と聞くが……。
 雑魔化したての生き物も物によっては毒を有するらしいが普通の物より美味くなる場合もあるとか……修行の一環としてぜひ食してみたいものだ」
 真顔でそんなことを言うレイ=フォルゲノフ(ka0183)とそれに相槌を打つゼン・ラー(ka4138)を仲間たちは、特に蠍料理にトラウマのあるジュンはマジかコイツら、と言いたげな顔で見やったが突っ込む者はいない。
 どんな料理を好むかは人それぞれであり、無理に進めてこない限り自分たちに害はない。
 自然消滅しなかった場合死骸の片付けも仕事の一環と考えるなら食べるために引き取ってもらった方が楽といえば楽ではある。
「海遊びには早いが……夏までのさばられると厄介だな……。
 ここで潰す……一匹たりとも残さない……」
 衝撃を受けなかったのか立ち直りが早いのか、それとも切り替えの早さか、動揺を欠片も見せずに呟くのはNo.0(ka4640)だ。
「住民の皆さんのために悪い蠍をやっつけるです~。
 頑張りますよ~。
 大蠍がどのくらい大きいのか、楽しみです~♪」
 エーディット・ブラウン(ka3751)がおっとりとした口調で意気込みを語り、囮役たちがそれぞれの方法で大蠍を誘き出そうと砂浜に近づいていく。
 エーディットは足場用の木ゾリを近くまで馬に引っ張ってもらったあとは自分で引きずっていき、臆病な性質の馬は安全なところに繋いでおく。
 囮役のメンバーから少し離れて誘き出した蠍を狙い撃つのが彼女の役割だ。
 ボルディアも待ち伏せ班として弓を構えて蠍の出現を待っている。
「正直弓は苦手なんだけどな、銃よりこっちの方が射程が長いから、まぁしゃあねえか」
 当たったかどうか分かりにくいし自分には近づいてボコボコに殴り飛ばす方が性に合ってる、といいながらも浜辺を見る目つきは真剣そのものだ。
 兵庫は砂に潜っている蠍を誘き出す手段として砂浜へある程度幅のある廃材の投擲を行っていた。
「これで誘き出されればよし、誘き出されなくとも安全な足場ができる。どちらにしても損はないから、な」
 足場にした廃材の直下からの攻撃は確実に減少するしあったとしても振動などの予兆で簡単に探知できるので少なくとも無駄にはならない。
 レイは布団にロープを括り付けたものを投げ込みザリガニ釣りの要領で手元に引き寄せてみる。
 それを色々な場所で試してみるが重みに引きつけられるわけではないのか蠍はなかなか罠にかからない。
 シーザーに騎乗した旭がおもりをロープで結わえ、シーザーに弾かせながら広い範囲を駆けると匂いと音、それに砂の振動に反応するのかわらわらと大蠍が姿を現し始めた。
「おぉ、大量」
 攻撃されにくくするために緩急をつけながら振り返れば事前情報にあった十数体は確実に姿を現している。
「頑丈な甲殻? んなもん、かんけーねーなッ!!」
 旭がクラッシュブロウを発動し、巨大な斧で大蠍を叩き潰すように攻撃する。
 浅瀬で地面に斧を叩きつけることで、音と振動により蠍を叩きだそうとしていたジュンが近づいてきた大蠍の尻尾を斧で断ち切ってから体に斧を振り下ろす。
「勘で探るモグラたたきより実物を見て反射神経に物言わせて叩き潰す方が楽だし効果的だよな。
 呼吸とかで泡も出ないし面倒になってきたところだから出てきてくれて助かった」
 分厚い全身タイツに似た着ぐるみで蒸した自分の香りをつけたタンバリンで音と振動、人の体臭を餌に釣り気分で大蠍を待ち構えていたゼンの方にも何匹か蠍が引っかかった。
「いやしかし……なかなか楽しいものだ……!
 雑魔とはいえ野生とのバトル! 血沸き肉躍るというものよ!」
 近い敵から順番に銃で打ち抜きながら悦に浸るゼン。高笑いでもはじめそうなテンションの高さだった。
 No.0は撒き餌で釣りをする仲間たちによって引きつけられた蠍が確実に食いつくように自分を餌としてマントを敷き詰めた砂浜を移動していたが、大蠍の出現に攻撃力を高めた後、仲間が確実に仕留められるようにと自分が仕留められなかった大蠍が砂の中に潜るのを防ぐようにハサミを抱え込み、体にしがみついて蠍を押さえつけた。
「傷を負うのは痛い……死ぬのは怖い……だが……歪虚を斬り、刻み、潰し、砕き、壊し……戦い、誰かを守りきる喜びは痛みも恐怖も凌駕する。
 ……俺は……戦うモノだ」
 そう呟きつつ大蠍が暴れださないように全力で押さえつけている間にエーディットがマジックアローでとどめを刺した。
 大蠍が近づいてきたことで嫌いだという弓矢での遠距離支援から得意とする近距離戦に移ったボルディアが蠍の毒尾が当たらない程度の距離を保って槍を使って一気に突き刺す。
「やっぱこのくらいの距離の近さが俺にはあってるぜ」
 体液を飛散させながら動かなくなる蠍から槍を引き抜きボルディアは勇ましく笑う。
「流石に真横に素早く移動はでけへんやろ。こっちの土俵に上がってもらうで~」
 レイも蠍の尾の攻撃に十分注意しつつ、できるだけ正面に立たないようにしてハサミの攻撃を片側に限定するように立ち回り、攻撃は節関節を狙うことで防御力の高さを誇る敵の弱点を突く。
 自分が投擲した廃材を足場としてレイと同様関節部分を狙いながら渾身撃をのせて一体一体を確実に仕留めていく兵庫。
「足場があるとやはり楽だな。個人での釣りは失敗だったかもしれんが全体を見れば誘き出すことにも討伐にもこちらが優勢。折角砂中から音もなく忍び寄る事が出来てもその後の行動に知能が伴わなかったのがそちらの致命傷だ」
 激しい攻防の中、必死で砂の中に逃げようとする一体を旭は見逃さず、ノックバックで砂ごと吹き飛ばして空中へと巻き上げた。
「残念だったな、丸見えだぜ!」
 巻き上げられた蠍にすかさずエーディットがマジックアローを撃ちこみ、地に落ちた瞬間ボルディアが槍で串刺しにする。
 砂浜から脱出しようとする個体はゼンが狙い撃つことで仕留め、毒の尾の効果を見せつける前に大蠍の群れは全滅した。
 No.0が荒らされていない砂浜を中心に用心深い蠍が潜んでいないか少し間をおいてから歩き回ってみるが新手が出てくる気配はない。
「……討伐終了だ」
 剣についた蠍の体液を拭いながらぼそりと呟く。
 自分を犠牲にするような体を張った戦い方の上、回復支援を自分より仲間を優先してくれるようにと頼んでいたためNo.0は誰よりも傷だらけだったが表情はどこか満足げだ。
 それはきっと大きな犠牲なく、彼の信条である「誰かを守りきる」という目標を達成できたからだろう。
 戦いも終わったことだし、とゼンからNo.0が治療を受けている間にレイは食べられそうな部分を解体して持ち帰る準備をし、ボルディアは成人している仲間に「仕事の後の酒は格別だ、おい、お前も飲むか?」とウィスキーを進め、エーディットは砂浜の砂で城を作り、ジュンはつま先で砂を蹴りあげる。
「こういう時に武術の知識が役にたつとは、糞親父の指導も今にして思えば悪くないな」
「素材はもらっとくで~♪ 蠍やったら食えるやろ。持って帰っていろいろ実験してみよっかいなぁ♪ 普通にいけば素揚げでどないにでもなるやろしな~♪」
「拙僧も食してみたく……!」
「お、ノリいいやないか。ほな一緒に珍味に舌鼓を打ちましょか」
 No.0の治療を終えたゼンがいそいそとレイに近づいていき、旭が安全になった浜辺を心ゆくまで走っていくのを見て兵庫は仕事を終えた途端フリーダムになる仲間たちの様子に苦笑するのだった。
 あたたかい日差しと、それに対してほんの少し冷たい風。
 春の海辺に平和が戻った瞬間だった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 優しさと懐かしさの揺籠
    レイ=フォルゲノフ(ka0183
    エルフ|30才|男性|疾影士
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士

  • ジュン・トウガ(ka2966
    人間(蒼)|13才|女性|霊闘士
  • もふもふ分補充完了
    エーディット・ブラウン(ka3751
    エルフ|20才|女性|魔術師

  • ゼン・ラー(ka4138
    ドワーフ|28才|男性|聖導士
  • 兜の奥の、青い光
    No.0(ka4640
    人間(蒼)|20才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談
岩井崎 旭(ka0234
人間(リアルブルー)|20才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/04/11 22:35:35
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/09 21:23:57