春のあたたかな日

マスター:星群彩佳

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2015/05/09 12:00
完成日
2015/05/17 23:43

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国には今、春の陽気によってのんびりした雰囲気が満ちています。
 春の優しい陽射しが地上を照らし、流れる風もふわっと肌を撫でるほどに柔らかく、色とりどりの春の植物からは爽やかな香りがしてきます。
 いつもは依頼で忙しい『あなた』だけど、珍しく休みが取れました。
 ならばと、せっかくのお出かけ日和、仲間達と共に外へ遊びに行くことにします。
 目的地は平坦な山で、芝桜や菜の花、チューリップなど春の花が咲き誇る場所です。広い草原もありまして、お昼寝をするのにピッタリですし、斜面では木の板で草滑りをするのも楽しそうです。
 そして広い川が流れていまして、川遊びができますし、二人乗り用の木のボートを使うことができます。また川にはアユやマスなどの川魚がいまして、釣りもできます。
 手作りのお弁当やお菓子などを持っていくのもいいですし、山の実や果実をつまんで食べるのも良いでしょう。
 慌ただしい日々の中で得た春の休日を、『あなた』はどんなふうに過ごしますか?

リプレイ本文

○イトコ同志の春の休日の過ごし方
「ああ、今日は良き春の日ですね。家の中にいるのが勿体無いと思えるほどに」
「ちゃんと兄さんの言う通りに家を出たんですから、ピリッとしたセリフは止めてくださいよ」
 カグラ・シュヴァルツ(ka0105)とシュネー・シュヴァルツ(ka0352)は、訪れた山で大きく深呼吸をして春の空気を胸いっぱいに吸い込む。
「ですがシュネーは予定がない休日だと、家にこもりがちになるじゃないですか。冬はともかく、春のように暖かい季節には外に出ないと体に悪いですよ」
「はいはい」
 カグラに誘われて共に山に来たシュネーの片手は、カグラの服の腕の部分を掴んでいる。ここに来る途中も手を繋ぐことはなく歩いて来たのだが、シュネーの嬉しそうな顔を見ると何も言えなくなるカグラだった。
「……おや? あちらに見える波打つ金色の髪と、エメラルドのような美しい瞳の女性に見覚えがありますね」
 シュネーは数十メートル離れた所からでも目立つ容姿の美女の姿を発見して、立ち止まる。そして声をかけながら手を振ると、美女も気付いて手を振り返してにっこり微笑む。
 しかしカグラは美女の後ろにいる青年の姿を見て、シュネーの肩を指で突っつく。
「シュネー、彼女にはご同行している男性がいるようですよ」
「えっ? あっ、本当ですね。あんまり引き止めてはいけませんね」
 手を下したシュネーとカグラは軽く頭を下げて、美女と青年に背を向ける。
「ご同行している男性は、恋人でしょうか? 彼女と一緒にいられるなんて、幸せ者ですね」
「どんな関係であれ、親しき人と同じ時間を共に過ごせるのならば幸福ですよ。……そういえばこんな風にシュネーと散歩をすること、最近では減っていましたね。まあ住む世界が変わってしまったのですから、そういう気になれなかったというのもありますが」
「そうですね。でもまだまだこれからがあります。時間はたっぷりあるんですから、いろんな所に共に出かけましょう」


 しばらく歩いていた二人は、草原で昼食を食べることにした。
「わあ! カグラ兄さんのお弁当、色とりどりでとても美味しそうです!」
「突然『一緒に山に行きましょう』と言われたので、簡単なお弁当しかできませんでしたよ。シュネーのお料理は……黒曜石のようで美しいですね」
「……兄さん、素直に『焦げている』って言ってくれた方がいいです」
 カグラに外に出るように言われたシュネーは、弁当を作って共に山に行くのなら良いと条件を出したのだ。
「今度時間ができましたら、家事を教えますよ。私がいつまでも全ての家事をやれるわけではありませんからね」
「お手柔らかにお願いします。……ううっ、苦いっ!」
「自己責任で食べるところは成長したと認めましょう。ご褒美に、私もその火を通し過ぎた肉野菜炒めをいただきます」


 食後、二人は腹ごなしに森を散歩することにした。
 そこでシュネーは赤い木の実を見つけて、指をさしながらカグラに尋ねる。
「ねぇ、兄さん。この赤い実って食べられるのかしら?」
「ふむ……、どうでしょうね。こちらの世界の植物は不思議な物が多いですから、とりあえず食べない方がいいですよ」
「そうですね。先程見かけた彼女達ならば、知っているかもしれません。後で聞いてみましょう」
 カグラはシュネーの友人らしき女性を思い浮かべて、ふと呟く。
「……友人ができただけでも、マシになったのかもしれませんね」
「はい? 何か言いました?」
「美味しそうな木の実なので、ちょっと勿体無いかと」
「ふふっ、兄さんったら意外に食いしん坊なのね」
 柔らかな笑みを浮かべて口調も砕けたものになったシュネーを見ると、心から楽しんでいることが分かる。しかし不意に無表情になり、その顔には陰りが差す。
「……でもね、カグラ兄さん。私、こんなにのんびり過ごして良いのかしら? 軍人としてしか役に立たない私だから、こんなに暖かい気持ちになると悪い気がしてくるのよ」
「シュネー……。確かにあなたは軍人ですが、それ以前に人間の女性です。軍人だからと言って、戦うことが全てではないでしょう? そんな寂しい人生は、年上の従兄として、可愛い年下の従妹には送らせたくないですね」
 カグラはシュネーと正面から向き合うと、白い頬を軽くムニッとつまんだ。
「どう生きるかは、あなた自身が決めて良いことなんですよ。とりあえず、楽しかったら笑うことを覚えなさい。私のような地味な人間にならない為にもね」
 シュネーは軽くため息を吐くと、カグラの両手首を掴んで頬から離した。
「そんなに簡単に生き方は決められないけど……。とりあえず私は、兄さんの笑顔は好きみたい。だから私を笑顔にさせたかったら、兄さんも笑ってね」
「じゃあ今度、一緒に喜劇の舞台でも見に行きましょうか」
「うん、楽しみにしているわ」


○春の青空に響き渡る歌声
 春の花々が咲き誇る中、ケイ・R・シュトルツェ(ka0242)とユキヤ・S・ディールス(ka0382)は微笑み合いながら草原に腰を下ろす。
「ユキヤ、今日はお誘いを受けてくれてありがとう……。素敵な春を、満喫しましょうね」
「こちらこそ、誘っていただいてありがとうございます。晴れて良かったですね」
「ええ。……あっ、今日はあたしの愛猫も一緒なのよ」
 ケイは持ってきたバスケットカゴの蓋を開けると、中から白い猫が顔を出す。
「リヒトというのよ。仲良くしてあげてね」
「ふふっ、可愛いですね。ケイさんの大切な猫さんなんですね。今日はよろしくです」
 ユキヤが指先で喉元をかくと、リヒトは気持ち良さそうに喉を鳴らす。
「……あっ、そうそう。お弁当を作ってきたのよ。なるべくリアルブルーの料理に近いものを――と思って、春野菜のキッシュを作ってきたの。ユキヤのお口に合うと良いんだけど……」
「わあっ、嬉しいです! えへへ、何だかピクニックみたいで楽しいですね」
 美味しそうにキッシュを頬張るユキヤを、ケイは優しい眼差しで見つめていた。ところがいきなり影に覆われて、顔を上げたケイの眼に白い雲が映る。太陽が雲に隠れたのは一瞬のことで、すぐに晴れた。
「……そういえば、ユキヤは空が好きなのよね。前からその理由を聞きたかったんだけど、尋ねてもいいこと?」
「別に構いませんが……。空が好きな理由……ですか」
 キッシュをゴクッと飲み込んだ後、ユキヤは思案顔で腕を組む。
 その間にケイは、再び青空を見上げる。
「夜空の色は、ユキヤの瞳と同じ透き通った美しい色をしているわ……。けれど空は、ずっと同じじゃない。優しく、穏やかな時もあれば、激しかったり、切なかったりもするわ。いろんな面があるけれど、ユキヤはどういうところに惹かれたの?」
「今まで深く考えたことはなかったですけど……やっぱり『無限に限りなく近い存在』だから、でしょうか? どこでも空は見れますし、どこまでも続いているように見えますよね? 手が届きそうで、でも絶対に届かない存在――だからでしょうか? ……疑問形が多くて、答えになっていないかもしれませんが」
 ユキヤは少し自信なさげに、頬を人差し指でポリポリとかいた。
 だがケイはゆっくりと眼を閉じて、ユキヤの言葉を思い返す。
「……そう。ユキヤは本当は寂しがり屋さんなのかしら?」
「そんなこと、はじめて言われましたよ。ではケイさんは歌を歌っていらっしゃいますが、お好きなんですか?」
「そうねぇ……」
 尋ねられたケイは頬に手のひらを当てて、首を傾げて考え込む。
「歌や音楽は……その人の魂が見えるわね。あたしや他の音楽家達の『真実』の姿が見える気がするのよ。ユキヤはいつか、あたしの前で歌ってくれる……?」
「またいろいろな意味で、難しいことを仰るんですね。歌姫と名高いケイさんに聞かせるほど、僕の歌も真実も良いものではありませんよ」
「秘密……ってことね。ユキヤらしいわ」
 二人は駆け引きを一時中断して、まったりと昼食を楽しむことにした。
 しばらくは普通の会話をしていたが、膝の上で寝ているリヒトの頭を優しく撫でているケイの姿を見ていたユキヤは、ふとある疑問を口に出す。
「僕はケイさんのことを完璧に近い存在だと思っていますけど、苦手なものってあるんですか?」
「苦手なもの……、そうねぇ。あたしは『自分自身を愛せない自分が苦手』かしら。ユキヤはどう? 博愛主義者のように見えるけど、苦手に感じるものはあるの?」
「ふふっ、そう見えますか? でも僕にも苦手なものはありますよ。実は空が苦手なんです。見上げればいつも空はあって、決してなくなりはしません。……空を見ていると、一種の無限の罰のように思う時があるんですよ。それほど『無限』という存在は僕にとって、恐ろしくもありながらも焦がれる存在なんです」
 どこか自嘲気味に笑った後、ユキヤは背伸びをした。
「ん~っ。お腹がいっぱになりましたし、良い天気の下でお昼寝をしたら気持ち良さそうですね」
「アラ、それじゃああたしの膝にどうぞ。優しい子守唄を歌いながら、夢の世界へ誘ってあげるわ」
 熟睡しているリヒトをそっと草原に下ろすと、ケイは自分を膝をポンポンと叩く。
「リヒトにはちょっと悪いですけど、お言葉に甘えさせてもらいます。こんなに魅力的なお誘いを断るほど、野暮なではありませんので」
 そう言いつつユキヤはケイの膝の上に、自分の頭をゆっくりとのせた。
「……ケイさんの透き通るような歌声は、どこか空に似ていますね」
「あたしの歌声が空のよう……。そうね、ユキヤにとっての『空』になれるのならば、こんなに嬉しいことはないわ」
 二人は微笑み合った後、ユキヤは眼を閉じて、ケイはゆっくりと静かに歌を歌い始めた。


○赤いチューリップの花言葉
「先程手を振った女性とは、知り合いなのか?」
「シュネーさんのこと? ええ、仲良くしているわ。あのコと一緒にいた男性が、噂の従兄さんね。二人とも、どこか似ていたわ」
 腕を組んでいるレイス(ka1541)とエイル・メヌエット(ka2807)は、穏やかな表情で春の山を歩いている。
「レイスさんにデートに誘われて、本当に嬉しいわ。最近こんなふうに、ゆっくりと二人っきりで過ごす時間がなかったし……」
 不安と寂しさを抱いていたエイルは、空いているもう片方の手でギュッとレイスの手を握り締めた。
「……いろいろと心配をかけて、悪かったな。今日みたいな穏やかな時間を、もっとエイルと過ごしたいと俺も思っているんだが……。まあせっかくこうしていられるんだ。今日はたっぷり甘えてくれ」
「それじゃあ遠慮なく、たっぷりと甘えさせてもらうわね」


 二人は草原で昼食を食べることを決めて、レイスはエイルの代わりに持っていた大きなバスケットカゴをゆっくりと地面に置く。
「しかし随分と作ってきたんだな。大変だったんじゃないか?」
「レイスさんに食べてもらうことを考えたら、ついいろいろと作っちゃったのよ。それにしても気持ちの良い草原ね。靴を履いているのが勿体ないわ」
 そう言いながら、エイルは靴を脱いでしまう。
 レイスも続いて靴を脱ぎ、二人は向かい合ってバスケットカゴの蓋を開けた。
「今日はサンドイッチを作ってきたの。ちゃんとパンから作ったのよ」
「本格的だな。お礼に次に出掛ける時には、俺が弁当を作ろう」
「楽しみにしているわ。さて、レイスさんはどれから食べたい?」
「どれも美味しそうで悩むが……、ツナサンドが良いな」
「分かったわ」
 エイルはツナサンドを手にすると、レイスの口元へ運ぶ。
「はい、あーんして」
「『あーん』って……。恥ずかしいが、今日はエイルを甘やかすと決めたしな」
 レイスはため息を一つすると、観念して口を開ける。
「あー……んっ、美味いな。さて、次は俺の番だ。エイルはどれが食べたい?」
「そうねぇ……」
 こうして互いに食べさせあいをしながらお弁当を食べ終えた後、エイルは紅茶を飲みながら、レイスが軽く欠伸をするのを見た。
「食後のお昼寝でもする? 今なら私の膝の上、空いているわよ」
「んっ……。それじゃあ甘えさせてもらおう」
 うとうとしながらも、レイスはエイルの膝の上に頭をのせる。そんなレイスの頭を優しくエイルが撫でると、寝惚けたような本音の言葉がレイスの口から出た。
「エイルの膝枕で昼寝ができるなんて……、俺は世界一幸せ者なのかもしれない。こうしていると心から安らぐ……」
「それは良かったわ」
 エイルが声をかけた頃には、レイスは寝息を立てながら眠ってしまった。
 レイスの前髪を指でかき分けたエイルは、現れた額にそっと口づける。
「……こんな穏やかな時間を、あなたと過ごせることを私も幸せに思うわ。あなたがいつの日も無事であるように、私は祈っているからね」


「んっ……。ああ、すっかり寝てしまったな」
「おはよう。可愛い寝顔だったわ」
 クスクスと笑うエイルに、レイスは気まずげな顔をしながら上半身を起こす。すると足首に違和感を覚えた。
「何だ、コレは?」
「お守りのアンクレットよ。私の祈りも願いもたくさん込めてあるから、効き目は保障するわ」
「エイル……。それじゃあ今度は俺から何か贈るよ。貰いっぱなしじゃ悪いしな」
「楽しみにしているわ。それじゃあそろそろ山を下りましょう。風が少し、肌寒くなってきたし」
「おっと、そうだな」
 二人は慌ててその場を片付けると、再び腕を組んで歩き出した。
 その途中で赤いチューリップ畑を発見して、少し寄ることにする。
「赤いチューリップ畑って綺麗ね。レイスさんは何色のチューリップが好き?」
「おっ俺は……」
 レイスはエイルから視線をそらして、口をモゴモゴと動かす。しかし意を決したように、突然エイルの両肩を掴んで正面から向かい合う。
「エイル! こんな俺とずっと一緒にいて、いつも助けてくれてありがとう。それから……いつも心配をかけてすまない。でもこれからもずっと俺の傍にいてほしいと思っているし、君を離したくないとも思っている。エイルは俺にとって大切な人であり、愛おしい女性だから……」
「レイスさん……」
「とっ突然こんなことを言って、すまない。その……上手く気持ちを伝えきれないが、これだけは言える。エイル・メヌエット、俺は君を愛している!」
 言い切った後、レイスはエイルの唇に自分の唇を重ね合わせて、細い体をギュッと抱きしめた。
「嬉しい……!レイスさん、ありがとう。私もずっとあなたと一緒にいたい。大好き、愛しているわ」
「……ああっ、今この瞬間、時が止まればいいのに……!」
 熱い抱擁をする二人を囲む、赤いチューリップの花言葉は『愛の告白』――。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧


  • カグラ・シュヴァルツ(ka0105
    人間(蒼)|23才|男性|猟撃士
  • 夢を魅せる歌姫
    ケイ・R・シュトルツェ(ka0242
    人間(蒼)|21才|女性|猟撃士
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • 愛しい女性と共に
    レイス(ka1541
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/07 00:20:25
アイコン ひとときの休息【雑談卓】
エイル・メヌエット(ka2807
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/05/05 22:34:14