海からの呼び声

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/05/24 19:00
完成日
2015/05/26 14:57

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●朽ちた船でセイレーンは歌う
 沖合に船の残骸が漂っている。板の腐食が始まっていて、沈没してから長いことが経っていることが予測されるありさまだ。
 船員は救助されていない。
 もちろん、救助隊は組まれたのだがその船も救助される側の船と同じ末路を辿り、二重遭難三重遭難と被害が続いて死体の回収は諦められた。
 雑魔は喋るほどの知性がない。しかしこの沖合に住み着いたセイレーンに似た雑魔は歌に似た鳴き声で持って船を次々と沈没させていく。
 何が目的なのかも分からないまま、被害は五艘の船と多くの船乗り、そしてうっかり海辺で鳴き声を聞いてふらふらと海に分け入り、入水自殺した状態になった数人、とかなり大規模な事件となったのだった。
 そしてセイレーンは一人でなく少なくとも三人が確認されており、鳴き声を合唱のようにすることでより遠くまで声を届けるという厄介な性質も持っているのだった。

「前にセイレーン退治をお願いしたことがあったよね、確か。あれとは別の沖合で、今度は三体のセイレーンが確認されてる。
 確認されたのが三体だけで、実はもっと多いかもしれないけどね」
 ルカ・シュバルツエンド(kz0073)が資料をめくりながら話し始めた。
「基本的に歌声に似た鳴き声、水流を操る攻撃。あと仲間が傷ついた時の回復。これも鳴き声だね。
 前回は岩場があったとおもうけど、今回は足掛かりになるような場所が殆どないんだ。
 浮いてる船の残骸位かな。
 セイレーンと言えば歌声と水流で船を沈める魔物、みたいなポジションだしそれに似た雑魔なのに足掛かりがないのは大変だと思う。
 でも被害が相当出てるからね。なんとか工夫を凝らして退治して欲しい」
 役に立つかどうかわからないけれど、僕も協力するよ。野放しにするにはおいたが過ぎたからね。
 ルカはそういって珍しく厳しい表情で死者のリストを眺めたのだった。

リプレイ本文

●海の魔物退治
 海辺に船の残骸が波によって運ばれてくる。
 中には大きな板などもあり、巨大な船も座礁して沈没した様子が見受けられた。
 そして、その中に混じる色ざめ始めた人の衣類の切れ端と思われる布。
 セイレーンに酷似した雑魔が出没して以来、この浜辺を含む一帯は幾艘もの船が座礁し、徒歩で移動していた者も運が悪ければその歌声を耳にして、惹かれるままに入水自殺の形を取って命を落とす。
 そんな死の海と化していたのだった。
「もうこれ以上被害を増やさないために頑張る!」
 リンカ・エルネージュ(ka1840)は多くの犠牲者が出ていることに心を痛めていた。
 隣ではHollow(ka4450)も雑魔討伐への決意を新たにしている。
「……すでに死者が出ているのです。
 これ以上の被害を食い止めるためにも速やかに退治しなくては。
 私も全力で当たらせて頂きます」
 敬虔なエクラ教の信者である彼女はエクラ教の聖印を象ったペンダントを、指の色が抜けるほど強く握りしめた。
「随分小さな船だがワシが乗って転覆しないか?」
「先ほど潜水の訓練と船の具合を確かめるために少し動かしてみましたが見た目の割に丈夫なようですよ。
 軽くできているため高波でひっくり返りそうになったときは、乗っているメンバーが体重移動でどうにかしてくれ、とオフィスの方が仰っていました」
 大柄なだけでなく筋骨隆々とした立派な体格を持つバルバロス(ka2119)が、用意された小さな船を見て疑問の声を漏らすと、性能を調べた後らしい屋外(ka3530)が大丈夫だろう、と返事をした。
「クックックック……海産物! 貴様らは全て食べてみないと気が済まんのだよ!!」
 前回の依頼で食べたウミヘビの雑魔の味が忘れられないらしく久木 満(ka3968)にはまだ見ぬセイレーンを含め雑魔は食材にしか見えなくなってきたようだ。
「あの日以来、飯にありつけなかったオレの胃袋は空っぽだと嘶き叫んでいる! 貴様を食らえと轟き叫ぶ!」
 合間に腹の虫が鳴いているのが何ともリアルに食欲を提示していて、死者へ哀悼の念を向けていたリンカとHollowが呆気にとられたように満を見やる。
「……海産物って……食べるんですか?」
「無論だ!! いわゆる珍味だが雑魔は美味い!」
 確認のためにもう一度言っておくと今回の敵はセイレーンに酷似した雑魔である。
 いろいろオプションはついているが上半身は女性の姿を取っている。
「……雑魔とはいえカニバリズムに見えそうなのは気のせいか。
 ……それにしても何ともはた迷惑な歌を歌う連中だな……どうせ人を魅了するならコンサートにでも参加して、その後は静かに帰ってくれればいいものを。
 それじゃ……潰すか」
 No.0(ka4640)がリンカたちの心の内を代弁した後船に乗り込む。
 前衛用と後衛用に各一艘、戦いで船が破壊された時の予備兼いざという時の足場用に一艘と合計三艘が用意されており、七人は乗り込むと沖合へ向かって櫓をこぎ始めた。
「ハンターとしての初めての依頼か……難儀なことになりそうだ。
 散発した攻撃では逃げられる可能性がある、一斉に攻撃することを提案する」
 山本 一郎(ka4957)が長距離攻撃組に提案し、同意と承諾を得るという場面の最中も船は今は穏やかな水面を切って進んでいく。
 船が沖合へと進むにつれて船の残骸や元は衣類だったと思われる漂流物が増えていく。
「そろそろ雑魔の出現地域だな……」
 一郎が呟き、全員が目を凝らして船の進む先を見るとまだ容姿を見るには距離が遠いがセイレーンと思われる影が三体。
「今のうちにウォーターウォークをかけておくね。
 高波にはあんまり対応してないみたいだから波の高さには気を付けて」
 リンカが舟を寄せて近接攻撃を担当するメンバーの中で、真正面からセイレーンに挑むバルバロスに水の精霊力を纏わせ、水上でも地上と同じように移動できるようにする。
「俺も今のうちにかけておくか」
 No.0が攻性強化をかけるとHollowも前衛で戦う相手を中心に防性強化を施した。
「……転ばぬ先の杖です。これで少しは敵の歌声に抵抗できるはずです」
 櫓をこぐ音に気付いたのかセイレーンたちが海へ船を沈めようと歌声に酷似した鳴き声を上げ始めると同時に戦闘の火ぶたが切って落とされた。
「撃てっ!」
 一郎の掛け声にあわせて遠距離攻撃を可能としているメンバーが一斉に一番近い場所にいた雑魔に攻撃を浴びせる。
 理想としては歌を歌おうとしたら弾丸や魔法が飛んでいくというタイミングの取り方。
 No.0が周囲に気を配りながら次の一斉放火のタイミングを見極め、合図として機導砲を打ち出す。
「……リアルブルーにあるという、もぐらたたきゲームみたいなものだな」
 歌いだそうとするセイレーンを頭を出したモグラに、一斉攻撃をハンマーでたたくという行為に置き換えた連想をしながら、それでも隙は作らずに相手を見据えるNo.0。
「……これだけ火線を集中させれば、敵も防戦一方となるはず!」
 銃の射程範囲内まで船の残骸を足場にして近づいたHollowが集中攻撃を受けて傷ついた一体が、自らの傷を癒そうと歌うタイミングに合わせて引き金を引く。
「うおおおおおおおおっ!! 飯!! 飯ぃいっ!!」
 バタフライをしながらハリセンを使い水を叩きまくって前進する満の鬼気迫る様子に怯えた雑魔が海中へ逃げようとするのをバルバロスの体重を乗せた一撃が防いだ。
「喰うッ……! 喰うッ……!」
 近づかなければ食えないと全力で接敵した満がまだ生きているセイレーンの鱗に覆われた、人でいえば足に当たる部分に歯を立てる。
 必死で振り切ろうとするセイレーンは気づかなかった。
 バルバロスと満以外にも自分に接敵している相手がいたということに。
 期せず自分の狙い通り雑魔の目を盗むことに成功した屋外は、満にかじられているセイレーンを死角から強襲。
 遠距離からの一斉攻撃とバルバロスの正面からの攻撃、そして満が注意を引きつけている間に受けた屋外の攻撃、と立て続けにダメージを受け、回復しようとすればそれを狙って攻撃が集中する状態で長く戦えるはずがない。
 セイレーンは最期に無念そうに叫び声をあげると掻き消えていった。
「おのれ! 食らおうと思ったのに何故消える! 俺の腹は満たされていないぞ!!」
 満は腹を空かせた猛獣のように獰猛に唸ると次こそは胃袋に収める、と二体残っているセイレーンの内の一体に狙いを定め飛びかかった。
「海の中に潜られると厄介だ、一斉射撃で足止めするぞ!」
 軍隊時代培った張りのある声で全員に一郎が伝達、No.0の機導砲を合図に後衛陣が一斉射撃に移る。
「水辺での戦いは、それほど得意ではないのだがな。仕方あるまい。味方の援護もある事だしさっさと片付けるとしよう」
 ウォーターウォークの効果と、短時間なら足場になる船の残骸を利用してセイレーンに近づいたバルバロスは祖霊の力を武器に込め、大きく振りぬいた。
 屈強なドワーフの渾身の一撃にセイレーンが吹き飛ばされる。
「たくさんの命を奪ってる以上、見逃すわけにはいかない!」
 リンカが歌を封じるためにウィンドスラッシュで喉を狙って攻撃するのにタイミングを合わせ、屋外が死角から、吹き飛んでいる間に距離を詰め直したバルバロスが正面から攻撃を仕掛ける。
 No.0がホーリーパニッシャーを振り回すと二体目のセイレーンが粉砕されるように消えていった。
 二体目も胃袋に収めることに失敗した満が最後の一体こそはと飛びかかる。
 その隙にHollowと一郎の銃弾が喉を潰し、被弾させやすい胴体を撃ち抜く。
 リンカのファイアーボールと近接組の即席ながらも息の合った死角と正面、両方からの攻撃、No.0の機導砲と猛攻に継ぐ猛攻をうけて三体目も無念そうに美しい顔に両手の爪を立てながら消えていった。
 結局今回は珍味にありつけなかった満が不満げになにか獲物はないかと辺りを見回す中、Hollowが遺留品を可能な限り集めて弔意を示したい、と申し出る。
 特に反対する理由もなかったので手分けして海面を漂う遺留品を集め、簡単ながらもHollowがエクラ教の教義に則った儀式をとりおこなう。
「水死体は損傷が激しいが……雑魔の危機が去った以上回収班も頼めば出ることだろう。
 遺留品のリストを作ってオフィス経由で遺族に引き渡せればいいが」
 戦時中は遺品の受け渡しすら満足にできない戦場も多かったことを思い出し、自然と一郎の唇からそんなセリフが漏れる。
「今回は多大な犠牲が出てしまいましたが……これ以上この海域で今回の敵による被害が出ないということで良しとするしかありませんか。
 たとえ後手でも、私たちは雑魔と戦い、滅ぼす力があるのですから、守るために使いたいものです」
 屋外がしんみりとした口調で相槌を打ち、No.0が一郎にこの場にふさわしい軍歌を、とリクエストする。
 朗々とした軍歌が響き渡る海を、方向転換させた船が海辺へと向かって進む。
 人々に死をもたらす災いの歌は、もう響かない。
 力強く、けれどどこかもの悲しさも持った軍歌は遠くまで響き渡り、やがて余韻を残して消えていく。
「……やはり、聞くなら害のない歌がいいな。見事だった」
 仲間たちの拍手を受け、一郎は一度沖合へ向き直ると犠牲者に向けて最敬礼を取ったのだった。
 セイレーンの危機が去った以上、迂闊に沖合へ出れない、という非常事態宣言は撤回され、死者たちの捜索と船の残骸や積み荷の回収が早ければ明日にでも始まるだろう。
 どうか一刻も早く、一人でも多くの人の身元が判明して家族のもとへと帰れるように、とリンカとHollowは祈りを捧げる。
 海辺へとたどり着いてから二人は海岸に生えていた灌木の花と茎の長い花を使って花冠を作り、弔花の意味を込めて海へと投げた。
「すぐ戻ってきてしまいますが……こういうものは気持ちが大事、ということでいいのでしょうか」
「それでいいと思うよ。何もしないよりは、ずっといい。……きっと、そうだよ」
 波に乗って戻ってきてしまった花輪を見てHollowが呟くとリンカがその考えを静かに肯定した。
 その後ろでは雑魔を食し損ね怨嗟の声を上げる満をバルバロスがバシバシと背中を叩いて宥め、屋外は愛する者へと思いを馳せながら顔を合わせたらなんと声をかけよう、と青春の呈を示し、No.0と一郎は無言でこの海に散った犠牲者へ弔意を示していたのだった。
 季節は折しも夏へと移り変わる時期。
 今は悲しみをたたえたこの海も、いずれ海水浴や海辺の散歩を楽しむ人でにぎわうだろう。
 そうなる事を願って七人のハンターはその場を後にした。

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重体一覧

参加者一覧

  • 青炎と銀氷の魔術師
    リンカ・エルネージュ(ka1840
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 狂戦士
    バルバロス(ka2119
    ドワーフ|75才|男性|霊闘士
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 心を守りし者
    屋外(ka3530
    人間(蒼)|25才|男性|疾影士
  • 食撃のヒッサキーマン
    久木 満(ka3968
    人間(蒼)|32才|男性|霊闘士
  • 復興の一歩をもたらした者
    Hollow(ka4450
    人間(紅)|17才|女性|機導師
  • 兜の奥の、青い光
    No.0(ka4640
    人間(蒼)|20才|男性|機導師

  • 山本 一郎(ka4957
    人間(蒼)|50才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談の場
No.0(ka4640
人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/05/24 17:29:57
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/23 14:07:36