【AN】3K無双大作戦

マスター:葉槻

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
6~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/05/27 09:00
完成日
2015/05/31 23:28

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●下水道掃討作戦
 ラテン語で下水道の意味を持つ【Aqua Nigura】の略称である【AN】はゾンネンシュトラール帝国においては定期的に実施されるある掃討作戦の通称だ。
 近代都市であるバルトアンデルスの地下を走る下水道の規模は全長1000km以上に及び、迷路のように張り巡らされている。
 だが、最新鋭の機導術を誇る代償としての魔導汚染に常に悩まされている帝国の、首都ともなれば下水道の汚染から雑魔が発生するレベルの汚染となるのは避けられない。
 そう、【AN】とは第一師団による定期的な掃討作戦行動の名称なのだ。

●先遣調査隊
 酷い悪臭が立ちこめた下水内。足下はぬかるみが強く、特殊ゴム製の膝下まである長靴でヘドロを踏みしめながらゆっくりと進む。
 足下にヘドロの塊が蠢いていてそれを踏みつぶすと、ぷちゅっ、という音と共に塵へと還る。……どうやらスライムらしい。
 また、首筋に冷たいものが当たり、上にライトを向けると、ぽたぽたと水滴が落ちてきていた。
 気にせず先に進もうとすると、その首筋にぴりりとした痛みが走った。パチン、と手の平で潰して見てみると、ミジンコのような外見の雑魔が塵へと還っていくところだった。
 チチチ、と鳴きながら、水路の端を丸々と太ったネズミ型の雑魔が駆け抜けていく。
 壁にはいつ付着したのかわからない黒いのり状になったヘドロ。その上をカサカサと黒い雑魔が行き来しているのが目の端に入った。そして、ブゥンと低い羽音がしたかと思うと、真後ろに居た女性隊員から甲高い悲鳴が上がった。
「どうした!?」
 見ると、先ほどの黒くて艶光りした雑魔が彼女の顔に貼り付いており、それにより彼女はパニックに陥っていた。
 つまみ上げて、そのまま壁に押しつけナイフで斬り殺す。塵へと還すと、彼女は涙声で「もう帰りたい……」と言い出した。
「まだ1時間とこの場に居ないでは無いか。もう少し奥まで……」
 その時、ぴしゃん、ぴしゃん、という音が聞こえた。まるで子どもが水遊びでもしているような、軽快な水音だった。
 隊員全員で息を殺して物音へとそろり、そろりと近付く。
 そこには水路いっぱいに広がり、スライムをぽろぽろと生み散らかしながら奥へと進んでいく巨大スライムの姿があった……

●某日ハンターオフィスにて
「……というわけで、今年も皆さんに下水道掃除をしていただきたいと依頼が来ております」
 ざっくりとした物言いに、話しを聞きに来たハンターの1人がげんなりとした顔をした。
「一応、先日有志の調査隊を先行させたのですが、今年は個体の数が多く、能力的には去年と変わらないか、多少強化されている様子とのことです」
 ……あー、虫とか菌とかも耐性付いてきたりするっていうしねー。という呟きがどこからか漏れた。
「皆さんには先遣討伐隊として、兎に角多くの敵を削ってきて下さい」
 しかし、下水道は狭く、少数精鋭で行くのが良いだろう、というのが依頼側の判断らしい。
「とりあえず今年確認された敵を纏めました」

 ・スライム(最弱。大きさまちまち。ひたすら数が多い。臭い)
 ・ミジンコ型雑魔(弱い。5cmぐらい。ひたすら数が多い。吸血してくる)
 ・ネズミ型雑魔(弱くは無い。体長20cmぐらい。すばしっこい。時々毒持ち)
 ・ゴキブリ型雑魔(強くは無い。体長10cmぐらい。飛んで来る。パニック注意)
 ・メガスライム(そこそこ強い。通路を塞ぐほど大きい。スライムを生み出す。酷く臭い)

 ……纏められた紙を見て、女性ハンターの目が死んだ魚のようになった。
「敵の能力の詳細が不明で申し訳ありません。その代わり、報酬は多めとなっておりますのでご容赦下さい。また、これ以外の敵が居ないとは言えませんが、恐らくどんな敵が出てきても皆さんでしたら即死亡とか一撃重症なんて事にはならないと思っています」
 むしろ、どんな敵を誰がどれだけ倒せたかの勝負が出来るくらいですね! と説明係の女性は拳を握り締めて力説する。
「しかし、あくまで敵を出来るだけ蹴散らして、生きて帰ってくる、というのが今回の依頼の全容となりますので、どうぞ無理はしても無茶はせずに行ってきて下さいね」
 女性はテーブルの上に地図を置くと深々と頭を下げた。

リプレイ本文


 先頭を行く榊 兵庫(ka0010)が、入って早々に飛び掛かって来たネズミ型雑魔を日本刀で叩き落とす。
 後衛に位置していたクオン・サガラ(ka0018)が、ナックルで貼り付いてきたスライムを毟って引き剥がし、壁に叩き付ける。
「この世界ですとゴーレムとかで規格化された下水道を自動で掃除しているモノかと思ってましたけど……」
 そんなことは無かったですねぇと、クオンはマスクの下で独りごちる。
「……文字通りの汚れ仕事だな。だが、誰かが行わなくてはならない仕事だ。ならば、誰かに負わせるのでなく、進んですべき仕事という事だな」
 兵庫の冷静な言葉に、後ろに位置する久延毘 大二郎(ka1771)も深く頷く。
「確かに、この仕事は雑魔との戦いと言うよりも下水道掃除と呼ぶに相応しい。労苦の度合いはどちらも同じ様であるがね」
 その大二郎の右隣の壁をゴキブリ型雑魔がカサカサと歩いて行くのを、指し棒型の杖で払い落とし、踏みつけて消滅させる。
 流石に飛んで来るのは勘弁願いたいが、学生時代、一人暮らしをしていた時に見かけていたのもあって、姿を見た程度なら冷静に対応出来ようというものだ。
「うー……臭い、来るんじゃなかった……と言いたいところだけど、結局誰かがやらなきゃいけないことだしね。イヤーな仕事だけど、頑張りましょう」
 ティス・フュラー(ka3006)はぬかるみに足を取られないよう慎重に歩を進める。
「やれやれ、想像以上に酷い臭いだ。早く終わらせて帰りたいねまったく」
 悪臭や水滴避けの対策をせずに来た碓氷 蒼(ka3643)はうんざりとした口調で溜息を吐く。
「そうじゃ、おんしが参加しておるとは意外じゃ」
 一緒に頑張ろうぞ、と兵庫と共に先頭を歩く虹心・アンクリッチ(ka4948)が蒼に笑いかけた。
「たまにはこういうのもいいだろうと思ってね」
 ……だが、今かなり後悔して来ている感は否めない。
「まぁ、私の足を引っ張らないようにがんばってくれたまえ」
 蒼の尊大な物言いにも虹心は全く意に介した様子も無く「おぅ、任せておれ」と胸を叩いた。
「これも精神修行と思って引き受けたけどぉ……想像以上に3Kってやつね……」
 ルキハ・ラスティネイル(ka2633)が天井からぶら下がる良くわからない蔦状の物をしゃがんで避ける。
 辟易して帰りたくもなるが、それでも新しいスーツを仕立てるという目標が、ルキハを奮い立たせる。
「聖職者はこういう仕事こそ率先して行うものです。私の神々しさで暗い下水を照らし、雑魔を払いのけましょう」
 光り輝く笑顔をエルディン(ka4144)は振りまいた。
 ……だが、マスクの下ではその効果は発揮されない。
「ここ低くなってるから、みんな気をつけろよ」
 兵庫の忠告に男性陣一同が頷く。
 ……今回この依頼で顔を合わせた男性5名、全員が身長180cm越えという高身長っぷりである。
 しかしながら、普段なら有利に働くことも多いこの体格の良さが、全員にハンディとなって襲いかかっていた。
「……狭くて、異臭漂う場所というのはやはり閉口する。満足に刃を振るえるか些か心許ない、しな」
 得意の槍を置いて日本刀を持ってきた兵庫だが、振るう度に壁や、仲間に当たらないかと気を払わならず、いつも以上に神経を使いそうだと小さく嘆息した。
「いやぁーーー!! 今! 顔、顔に、ぺちょってー!!!」
「落ち着いて下さい、ルキハさん! 大丈夫です、ただの水です!」
 後ろの騒ぎにがっくりと肩を落とした兵庫の後ろから、大二郎がぽりぽりと頭を掻いて天井を仰ぐ。
「……まだ入口だぞ? 大丈夫か?」
「……だと信じたい」
「皆元気があって良いことじゃ」
 カラカラと明るく笑い飛ばす虹心を見て、女子の方がしっかりしてる、なんて感想を抱いた兵庫なのだった。


 入って20分ほど経っただろうか。
 今の所、敵の強さも大したことなく、皆通常攻撃だけで戦っていた。
 この調子ならば『スキルを使い切るまで。または行動不能者が3名以上となったら撤退』という条件を満たすギリギリまで戦い続けることが出来そうだった。
 歩を進める度に何かしら雑魔を叩き潰し切り伏せながら一同は黙々と奥へ奥へと入っていく。
 主だった下水路には、先遣調査隊か去年の調査時に取り付けたと思われるライトが点々と置かれていたが、そのいくつかは壊れ、配線が切れており使い物にならなかった。
「LEDライトの使用時間って確か3時間だったはずよね? じゃぁあと1時間ぐらいしたら撤退を考えた方がいいかもね」
 ティスが帰路の灯りを心配して提言する。
「そうですね……恐らく帰りの方が早く移動できるであろうとはいえ、状態によっては撤退を考えた方がいいかもしれませんね」
 小さな下水路の分岐に当たり、エルディンがチョークで矢印を入れながら答える。
 クオンがコンパスと地図を照らし合わせて、エルディン同様に矢印を入れる。
「……しかし、恐ろしい程に複雑怪奇だな。巨大迷路と言って差し支えない気がする」
 大二郎が壁と分岐を見ながら、「こっちの方が新しい」などと呟いた。
 そんな白衣姿の見るからにリアルブルーの学者風とした大二郎を見て、クオンは首を傾げた。
「……大二郎さんは何でこれに参加したんですか?」
「ま、一種の職業体験学習と言う奴だな。履歴がまっさらな此方の世界でこそ私は考古学者を名乗れているが、リアルブルーに帰還しようものなら私は唯の元大学生、その先に待っているのは就活だ」
 リアルブルーに帰還する。その言葉を口の中で反芻する。
「そんな時の為にも……って、自分で言ってなんだが、あまり考えたくない話だな、全く」
 大二郎は両手を掲げてお手上げ、としてみせるが、クオンはそれを見ると無しに見ていた。
 ……果たして自分はリアルブルーに帰れる日が来たとして、帰る道を選ぶだろうか。
「おい、あれは何だ?」
 ライトを掲げ、目を凝らして蒼が見つめる先。
「……ホントね。キラキラっていうか……何か、反射してる感じ?」
 蒼より頭一つ大きいルキハも同じように、通路の先を見つめる。
 そうしていると、足下にぴしゃ、ぴしゃ、とスライム達がドンドンと流れ込んでくる。
「いやーーーー! スライムーーーーッ!!」
 ルキハが悲鳴を上げて足下のスライムを蹴り飛ばしながら後ろへと走り逃げる。
「メガスライムかっ!」
 ブヨブヨとしたヘドロ状のスライムが、細い通路にみっしりと隙間無く埋まり、その体中からぼとぼとと小さなスライムを撒き散らしながら、ゆっくりとこちら側へ近付いて来ていた。
 虹心はバトルアックスの斧刃の根元を持って接近戦をメガスライムへ仕掛ける。勢いよく斧の刃で斬りつけたが、硬めのゼリーに刃を入れたような、なんとも手応えの無い感触に眉を顰めた。
 そんな虹心のこめかみギリギリを弾丸が掠めた。
「あ、危ないじゃろうがっー!!」
「おっとすまないね。でも、射線上に入ってきた虹心も悪いぞ。次から気をつけてくれたまえよ」
 悪びれた様子も無く、蒼は手早くリロードを済ませて前を見る。
 なお、味方への誤射に関してはしっかり注意を払っている蒼である。
 知人である虹心だからこその、この対応であるとも言えなくも無い。
「ここじゃ狭すぎるわ。前の合流区画まで下がりましょう」
 魔法を打ち込もうにもこれでは味方を巻き込んでしまう可能性にティスが提案し、一同は攻撃を与えながら後退していく。
「おお、聖なる杖で穢れきったバケモノを殴らねばならぬとは。神よ、私をお許しください……」
 エルディンが杖で蠅叩きならぬ、ゴキ叩きをしながら後退する一同の道を再び掃除していく。
 クオンも拳銃で走り寄るネズミを狙い撃つ。
 2人の活躍により、他の6人は前から来るスライム達をメインに攻撃しつつ、目的の4つの下水が合流する区画まで移動することが出来た。
「はい、みんな離れてねー!」
 ティスがファイアーボールをまだ合流区画にまで到達出来ていないメガスライムに向かって叩き込む。
 爆風が一瞬視界を奪うが味方を巻き込むことは無く、周囲のスライム達が一瞬にして蒸発していく。
 しかし、メガスライムからはぼたぼたとスライムがまた生まれる。
「キリが無いな……しかし、敵を蹴散らすのが私の役目だ」
 大二郎が続けてファイアーボールを打ち込む。
 その一方で、別の通路側から来るネズミの群れを見つけて、蒼が銃を構え照準を定める。
「随分いるじゃないか、これ位いたほうが遣り甲斐がある。死にたい奴から来るといい」
「ひぃぃぃ、こ、こんな凄い所だとは想像にも及びませんでしたよー!」
 悲鳴を上げたエルディンの視線の先、反対側の通路からもメガスライムがみっしりと通路を封鎖しながらこちらへと近付いている。
 それを見たルキハは、野太い悲鳴を上げると全力を込めて土の壁を展開した。
「これで、ちょっとは時間稼げるはずよ……!」
 通路の中央に出現した2m四方の壁は隙間からスライムの侵入は防げないものの、メガスライムを通路内に堰き止める役割を果たしていた。
「凄いのぅ、凄いのぅ!」
 それを見た虹心が手放しで感心しながら、メガスライムを削ぎ落とす。
「……こんなのに通路で挟み撃ちとかホント勘弁だわ……」
 ティスがげんなり、という表情で言いながら再びファイアーボールを放つ。
 その爆煙を吹き飛ばすように、兵庫が刀を突き出し、刺し貫く。
 ついに合流区画に到達したメガスライムが、ぶよん、と身を震わせる。
「虹心さん、兵庫さん、行きます!」
 クオンが銃にマテリアルを集中させると、扇状にエネルギーを噴射させる。
 クオンの声に後方へ飛び避けた虹心が蒼を見て、はっと顔色を変える。
「おんしも後方注意じゃ!」
 虹心が蒼へ走り寄ると、斧を叩き付ける。
「っ!?」
 思わず自分を攻撃しに来たかと思った蒼は身構えたが、斧刃は蒼の真後ろまで迫っていたゴキブリを両断して塵へと還していた。
「ふむ、敵がな、おんしの後ろにおったのじゃ。背後も気をつけねばならんぞ?」
「……余計な世話だ」
 ふふん、と澄まし顔で告げる虹心に、蒼は礼の代わりに憎まれ口を叩く。
 一方、1人前衛に置かれた兵衛は冷静に敵を引き付けると白狼を一閃して、周囲を薙ぎ払う。
 ついにメガスライムがヘドロを周囲にぶちまけた後、黒い煙となって消える。
「……でもヘドロは残るんだ……」
 ティスが顔に飛んできたヘドロを華麗に避けた後、うんざりしたように貼り付いてきたスライムを引き剥がしてダガーで切り刻む。
「顔に泥がかかっても輝くスマイルでほら……綺麗になりませんよねー」
 ティスの冷ややかな目線にしょぼーんと項垂れるエルディン。
「壁が崩れるわ!」
 ルキハが悲鳴を上げて杖を構えると、ルキハが作り出した土の壁が音を立てて崩れた。
「さっきのより、大きく見えるのぅ」
 虹心がほほーと関心を寄せると、大二郎もふむ、と頷き指し棒を向けて雷撃を打ち込む。
「……確かに、先ほどのよりも耐久度もありそうだな」
 それを聞いて、イヤァーーーー!! とルキハが絶叫する。
「ちょっとぉぉ! もう、近寄らないでって言ってるでしょ!」
 鋭い風をブルーアイの先に纏わせ放つと、メガスライムを切り刻む。
 蒼もマテリアルを集中させ、強弾を放つ。
「神よ、私にこのような試練を与えるとは。どんだけドSなのでしょうか」
 新たに生み出されるスライムを杖で殴り飛ばしながら、エルディンが天井を仰ぐ。
 ……そこにはいつのまにかミジンコ型雑魔が群れを成して蠢いている。
「いやーっ!?」
 流石のティスもその光景に悲鳴を上げると、最後のファイアーボールを放つ。
 爆煙と共に敵は一掃される物の、思わず煙を吸い込んだ何人かがゲホゲホと咳き込んだ。
「落ち着いて! まずはあのメガスライムから倒しましょう」
 クオンが呼びかけると、一同は一丸となってメガスライムへと標的を定めた。


 合流区画の中央で、各々既に汚水など気にならないかのようにしゃがみ込んでいた。
「……酷い目に遭った……」
 ぐったりとしながら兵庫が体内マテリアルを活性させようと試みるが、集中力が乱れて上手く活性化出来ない。
 それでも「他の者の回復を優先してやってくれ」という兵庫の言葉にエルディンは頷いて、すっかり息の上がっている蒼と虹心から順にダメージの多い者を回復していく。
 ――あの後。
 2体目のメガスライムを集中攻撃で蹴散らす事に成功し、誰もが胸を撫で下ろした直後に、更にもう一体のメガスライムが出現し、ゴキブリの群れが飛んで現れ、ネズミが方々から駆け寄っては身体を囓っていくという、ホラー映画も真っ青な展開へと発展。
 幸いにして範囲攻撃を多く持ってきていたことと、そもそもメガスライム以外の敵はそのほとんどが普通に殴れば消える程度だったので、単体スキルはメガスライムへと集中し、それ以外の敵はなるべく範囲攻撃に巻き込めるように各自が立ち回り、スキルが切れた者から通常攻撃でとにかく数を減らすという、無限ループにも思える作業に没頭した結果、何とか駆逐に成功したのだった。
「……トラウマになりそう」
 エルディンの回復を受けてたティスが、力なく呟く。
「どうしてこうなるまで放って置いたんだ……」
 クオンが遠い目をしながら、ヒーリングを試み続ける。
「とりあえず、もう地上に帰りましょう……? これ、帰り道でまた出てきたらそれこそ笑えないわ」
 ルキハが叫びすぎてガラガラになった声で提案する。
 一同は撤退を始めたのだった。

 帰りの道中は小さな雑魔には遭遇したが、幸いにしてメガスライムには遭遇せずに出口へと到着。
 置き土産として追ってきたネズミの群れに最後のファイアスローワーをぶちかまして、クオンが扉を閉めた。
 外の清浄な空気を胸一杯に吸い込み、各自漸く人心地付いた。
「やっと終わったか。早く帰って一杯やりたいねぇ」
「……臭いが染みついてしまったか。このままじゃ酒を飲みにも行けないな。まずは臭い落としか」
「そうじゃな、まずは暖かい風呂に入ろうな、その後美味しい物を食べれば良いのじゃ」
 大きく伸びをして深呼吸をした蒼に続いて、兵庫が自分の全身を見ながら苦笑すると、虹心もそれに賛同する。
「……幾ら慣れていて動きやすいとはいえ、コレを着ていくべきでは無かったかもな。帰ったら念入りに洗濯をしなければならん」
 大二郎はほぼ白いところが見当たらない程にヘドロと泥を吸ってしまった白衣を脱いでネクタイを緩めた。

 8人が限界まで雑魔退治をした事により、この後突入した一般の掃除部隊が比較的安全に下水掃除を完遂出来た、との報告が各自へ渡ったのは、およそ一週間後のこと。
 報告を受けた8人は各々安堵し、喜んだ。が、暫くは下水に行きたくない、と周囲に漏らしたとか漏らさなかったとか。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 6
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫ka0010
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎ka1771
  • 真実を包み護る腕
    ルキハ・ラスティネイルka2633

重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師
  • 真実を包み護る腕
    ルキハ・ラスティネイル(ka2633
    人間(紅)|25才|男性|魔術師
  • ツナサンドの高みへ
    ティス・フュラー(ka3006
    エルフ|13才|女性|魔術師

  • 碓氷 蒼(ka3643
    人間(蒼)|15才|女性|猟撃士
  • はぷにんぐ神父
    エルディン(ka4144
    人間(紅)|28才|男性|聖導士
  • その心育てるLeo
    虹心・アンクリッチ(ka4948
    人間(蒼)|14才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 真・下水道無双(相談卓)
久延毘 大二郎(ka1771
人間(リアルブルー)|22才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/05/27 00:12:50
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/25 08:10:21