スタンピード・モンキー

マスター:ラムレーズン

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/06 19:00
完成日
2015/06/11 23:08

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ある少年が家の庭先で1匹の猿を見つけた。少年の住む村はそれなりの田舎で、村に野生動物が紛れ込むこと年に2、3回程度あるのだが、少年の短い人生経験においては初めて生で見る猿だった。
「……」
 つぶらな瞳は少年が手に持つ今日のおやつを見つめており、それに気付いた少年はおやつを分けてやろうと猿を手招きする。
「よーし、今分けてやるからな……」
 分けたおやつを地面に置いてやると、猿はそれを手に取り匂いを嗅ぎ、特に問題ないと判断したのかそのまま口に運ぶ。
「お~……。食べてる食べてる」
 おやつを食べる猿と、それを興味深そうに見る少年。一見ほのぼのとした自然との触れ合いであるが、これが数年後の悪夢に繋がろうなど、少年は露ほどにも思っていなかった。

「今回の依頼を端的に申し上げますと、害獣退治です」
 依頼主は猿による農作物への被害が深刻化しているという村で、今までは狩人を中心とした村人で対応していたものの、今年は新しいボス猿が難敵で苦労しているという。
「かなり狂暴化しているようで、村の狩人にも負傷者が出ています」
 更に悪いことに、数年の攻防で猿達も慣れてきたのか、罠が効き難くなっている。
「村の方によると、もう落とし穴や毒入りのエサ程度ではやるだけ無駄……とのでした」
 結果、武力による反撃が最も効果的という状況に至り、専門家であるハンターに話が来ることとなる。襲われる最大の要因は、猿に『村人は自分達より弱い』と思われていることのため、一度徹底的に打ち負かして人間の怖さを思い知らせてやろうというわけだ。
「猿達は基本的に、早朝辺りの時間に数十匹の群れで畑を荒らしていくそうです」
 猿達は狙った畑1つに全戦力を投入してくるため戦力を分ける必要はない。また、村側は狙われた畑の野菜は必要経費と覚悟を決めており、武器を振るう際に傷付いたらなど気負うことなく猿を叩きのめしてほしいとのことだ。
「敵のスペックですが……普通に猿です。組み付いて噛み付いたり引っ掻いたりで攻撃してきます」
 1体1体はハンターが普段戦う雑魔とは比べるまでも無いが数だけは多く、30匹はいると見た方がいいだろう。複数体に組み付かれれば中々に面倒な相手だ。
「後は、もし逃げ出すなら追撃は不要とのことです。恐らく生態系を考えてのことでしょう」
 村人からすれば、棲み分けができればそれでいいのだ。
「村長によると、誰かがエサを与えたのが切っ掛けではと言われているそうです。野生動物への接し方というものを考えさせられますね……」
 犯人探しに意味は無くするべきでもないが、教訓は学ぶ必要がある。
「ただ、対立した以上はヒトの側に立つのが我々です。任務のほど、よろしくお願い致します」
 受付嬢の言葉に強く頷いたハンター達は、準備を整え転移門へと向かうのだった。

リプレイ本文

●迎撃戦のその前に
 転移門を抜け、依頼を出した村に到着したハンター達は、村長に挨拶を済ませると主要な村人と共に作戦会議に入る。
「罠は難しいということでしたが、進路の誘導などに畑周辺に障害物を設置するのはどうでしょうか? 何か置ければ良いので廃材でもあれば協力をお願いしたいのですが……」
「無論、設置は自分達も手伝わせてもらう」
 まず、一度に攻め来る数の調整になればとフィーネル・アナステシス(ka0009)やアバルト・ジンツァー(ka0895)が提案するが、村長は申し訳ありませんがと首を振る。
「確かに素人目からも戦いやすくなるとは思うのですが、流石に全ての畑で備えるとなると……」
 襲われる畑は1つだが、襲われるかもしれない畑は収穫期を迎えた全て。時間もだが廃材以外に設置物をを集めても量が足りない。
「私は罠ではなく倒した猿を捕まえておくための網を作っておきたいのですが~。檻なんかも準備したいですね~」
「後は、捕まえた猿はどうすればいいかも確認させてくれ。仕込めば芸くらい覚えるかもしれないぜ?」
 網は持参したロープで作る以外にも借りられればというエーディット・ブラウン(ka3751)に続き、ミカ・コバライネン(ka0340)が質問をする。軽口はリアルブルーの都会出身者ならではの、動物は基本愛でるものという考えからくる罪悪感の裏返しだ。
「網や檻なら猟師仲間に頼めば用意できると思います。捕らえた猿は……処分するしかないでしょうね」
 次に答えたのは同席した村の猟師。そこまで怪我をした野生動物が自然界で生きられるまで回復できるかもそうだが、手当てをして逃がすとなると『人間の恐怖』を覚えさせ難くなってしまう。
「猿のサーカス創設には興味なし、ね……。共存共栄とは行かないもんだな」
「害獣化した以上それは難しいだろう。そして現状を放っておくわけにもいかぬからな。全力で当たる他はない」
 アバルトの言葉に分かっているさと返すミカ。彼とて状況を理解していないわけではないのだ。
「うむ。どのような形であれ、それが敵である以上は決死の覚悟で臨む。油断や情けは切り捨てねばな」
「猿など幾らいようと……と言いたいところですが、数の力は侮れませんからね」
 例え野生動物でもというユルゲンス・クリューガー(ka2335)やストゥール(ka3669)の言葉には、村人達からプロに頼んで正解だったという安堵の声が漏れる。
(中途半端な優しさを振りまいておいて、自分の手に負えなくなったら駆除かよ……。ちっ、胸糞悪い)
 一方で、龍華 狼(ka4940)はやりきれない気持ちを抱えていた。村人全てが悪いわけではないが、発端が村側にあったこともまた事実だ。
「後は実際に畑を見せていただけますか? 既に荒らされた畑や収穫間近の畑を把握しておきたいですし……」
「分かりました。案内させましょう」
 音羽 ラグロス(ka3182)の提案で、作戦会議後に村の畑を一通り確認するハンター達。既に被害を受けた畑は次に向け手入れがされていたが、土だけしか見えない姿は、他の野菜が実る畑との対比から一層物悲しく見えた。

●猿の来襲
 一晩休んで翌日早朝。ハンター達は村の居住エリア外周……畑に近い場所で待機し、猿達が来るのを待ち構える。
 そして、待機してしばらく経った頃、遠くに小さな点の群れが現れた。
「来たか……。進軍するぞ」
 ユルゲンスの言葉に頷くと、2人ずつ4組のペアを作るハンター達。個人で囲まれ難いようにペア内で援護し合うという作戦だ。各組は猿達に合わせ移動すると、猿達と同時に畑へ辿り着く。
「キーーーッ!」
「キャーーーッ!」
 猿達もハンター達に気付いたのか、威嚇の鳴き声を上げ一行を取り囲む。その数はパッと見で総数が分かるような状態ではなく、とりあえず数を減らさなければ始まらないだろう。

「やれやれ……楽な仕事じゃなさそうだ」
 煙草をくわえたミカが拳銃の引き金を引くと、畑に入ろうとした猿が胸に赤い染みを広げて倒れ込む。
「さあ、狙うならこちらですよ!」
 その前では、守りを固めたラグロスが猿の攻撃を盾で弾き、他の猿達から受けた傷を癒している。

「一匹一匹の戦力はそれほどでもない。足並みを乱せれば勝機も上がるはずだ」
 そう言うとアバルトはライフルを構え、射程に入った猿達を撃ち抜いていく。
「囮とかは得意ですから任せて下さい」
 ペア相手の狼は、狙撃を抜けた猿を引き受けるため前に出ると、わざとへっぴり腰で震えて見せる。相手が野生動物なら弱そうに見える相手から襲うのではと考えての演技だが、見た目も含め上手くいったようで一斉に3体が寄ってくる。
「……はっ!」
 そしてその内の1体を迷いなく切り落とすと、次の猿へと構えを取る。例え思うところがあろうとも依頼は果たす。彼もまたプロなのだ。

 その頃別のペアの前では、数体の猿がその場に倒れ込んでいた。
「幽世の門の入り口へと眠り落ちなさい」
 フィーネルが魔法を唱えると、猿達を青白い雲が包み込み倒れる猿を追加する。
「これで大分足止めできましたね~」
 ペアを組んだエーディットも同じくスリープクラウドの使い手であり、猿達の足並みを大きく崩していた。

 また別の場所では、ユルゲンスとストゥールのペアが押し寄せる猿達と相対していた。
「私が前に出る。届かない猿を頼めるか?」
「お任せください、ユルゲンス殿」
 ユルゲンスは鎧に防御を任せる一撃必殺の構えから猿を切り伏せ続け、ストゥールはスキルでの防御固めや、畑に入ろうとする猿へ鉛玉を撃ち込んでいく。

●猿の長、現る
 数を減らされ、徐々に畑の外周へと追いやられた猿達は、ハンター達の手強さを感じ取ったのか遠巻きに威嚇をする個体が増えてくる。
 しかし、このまま逃げ帰るかと思い始めたその時、辺りに一際大きな鳴き声が響き渡った。
「ッキャーーーアッ!」
 現れたのは恐らくボスであろう一回り大きな猿。ボスの一喝に反応して同様に鳴き声を張り上げると、猿達は再びハンター達へ殺到し始める。

 フィーネルとエーディットの元へは、寝かせていた分を含め多めの猿が押し寄せていた。
「魔術師だからといって接近戦ができないというわけではありませんよ」
「水恐怖症にしてあげるですよ~」
 近い相手にも攻撃手段はあるが、防御力の低さは如何ともしがたく引っ掻き傷が増えていく。
 だが、ここで2人を囲む猿の1体が彼女達以外の手によって吹き飛ばされる。
「お2人に向かう数が多いようなので応援に来ました」
 猿を吹き飛ばしたのは、2人が囲まれた様子を見て駆け付けたラグロスだ。
「手際良いな、害獣駆除でも食っていけそうだ」
「それはどうも。さあ、もうひと踏ん張りですよ」
 4人で陣形を整え直したハンター達は改めて猿の群れへ向き直る。

 今日何度目かになる残光を残し、狼の刀が猿を切り捨てる。
「お前達が悪いわけじゃないけど……ごめんな」
 子供の猿がいれば生かそうと考えていた狼だったが、襲撃に来たのは大人の猿ばかり。下手に手負いで残すわけにもいかず、気持ちとは裏腹に全てにトドメを刺す。また、猿もそんなことには構わず、邪魔をする相手に背後から容赦なく飛びかかる。
「ホント、ごめんな……」
 気配でそれを見切った狼が身をかわそうとしたその時、飛びかかって来た猿をアバルトのライフルが撃ち抜いた。
「援護は任せろ……と言いたかったが、気付いていたようだな」
「……いえ、ありがとうございます」
 短く言葉を交わすと、2人は油断なくライフルと刀を構え直す。

 満を持して登場したボス猿が向かったのは、全身鎧に身を固めるユルゲンス。明らかな強敵へと向かうのはボスの矜持だろうか。
 ボス猿はユルゲンスへ組み付くと、鎧の隙間に手を入れ爪を立て、体勢を崩させて反撃の剣をかわす。
「くっ……そこをどけっ!」
 援護に向かおうと自らに纏わり付く猿を機導剣で振り払うストゥールだったが、その目に入って来たのは剣を構え直すユルゲンスの姿。
「なかなかどうして、猿といえどもやるものだ……。だが!」
 構え、踏込、剣の振りと、強力無比な一撃が繰り出され、ボス猿を左右対称に斬り分けた。
「キーーーッ!」
「キキャーーーッ!」
 そして、それを見た猿達は群れの長を失い混乱しながら逃走し始める。1分とかからぬ内に周囲から猿の姿は消えていた。

●自然との境界線
 ハンター達が無事に猿の群れを追い返し、倒された猿の死骸の片付けをと村人が集まりだした時だった。
「少し待っていただけますか?」
 狼は村人を集めると、猿達の死骸を前に村人へ自分の想いを語り始める。これが安易な優しさで野生動物へ手を差し伸べた結果であり、責任の取れない優しさはエゴであると。それに狂わされた猿に同情し、同じ過ちを繰り返さぬようこの光景を目に焼き付けてほしいと……。狼はそういうことをしやすい子供にもと願い出たが、流石にこれは断られる。
「子供にこの光景は酷というものです。我々も仰られることは重々承知しておりますので……」
 改めて頭を下げる村長。ただ、村長を始め年配の者は自分達大人がちゃんとしていればと反省しているようだが、若者達の中には自分が直接悪いわけでも無いのに面と向かって正論を言われたのが気に入らない者達もいるようだ。まあ、これが正論と分かるなら同じ過ちを犯すことは無いだろう。子供については村長達大人を信じるしかない。
「村の方々もこう言っているのだ。アフターケアの精神は大切だが、そのくらいでいいだろう?」
「それに、猿達もこのままじゃ……」
 アバルトやラグロスの取り成しもあり、まずは埋葬をという流れになる。
「で、この猿達はやっぱり~……」
「仕方のないことです。お気持ちがとのことでしたら私が引き受けますが……」
 捕獲した猿の処理は元々村人に任せようと決めていたエーディットは、この猟師に後を任せると作業中の仲間達の元に戻っていく。
 しばらくして埋葬を終えると、掘り返され色の変わった地面へ向かいながらフィーネルは一人呟く。
「野生動物との共存は、一歩間違えばこうなってしまうから難しいですね……。森のみんなは元気にしているでしょうか~……」
 思い浮かべるのは以前森で暮らしていた頃に一緒だった動物達。全てがそうはいかないのかもしれないが、可能な限り平穏な共存が続けばと思う。
「……では、そろそろ帰還の時間ですね」
 ストゥールが空を見上げると、太陽が最も高くなるまでもう少しという位置まで来ていた。
「では、我々はこれで失礼する。もう大丈夫だとは思うが、念のため数日は警戒を続けた方がいいだろう」
「もし猿を見かけたらコイツを使ってみてくれ」
 ユルゲンスの助言に続き、ミカが村長に手渡したのは1箱の煙草。猿達と戦っている間も吸っていたものだ。
「この匂いにビビるくらいのことはしたはずだ。この近辺に限るなら、効果は保障するぜ」
「そういうことでしたか……。では、こちらはありがたく使わせていただきます」
 最後に挨拶をかわすと、任務を終えたハンター達は村人達に見送られ村を後にする。自然との境界線が、二度と破られぬよう願いながら……。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 断罪の炎
    フィーネル・アナステシス(ka0009
    人間(紅)|18才|女性|魔術師

  • ミカ・コバライネン(ka0340
    人間(蒼)|31才|男性|機導師
  • 孤高の射撃手
    アバルト・ジンツァー(ka0895
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • ケンプファー
    ユルゲンス・クリューガー(ka2335
    人間(紅)|40才|男性|闘狩人

  • 音羽 ラグロス(ka3182
    人間(紅)|14才|女性|闘狩人
  • 毅然たる令嬢
    ストゥール(ka3669
    人間(紅)|18才|女性|機導師
  • もふもふ分補充完了
    エーディット・ブラウン(ka3751
    エルフ|20才|女性|魔術師
  • 清冽なれ、栄達なれ
    龍華 狼(ka4940
    人間(紅)|11才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アバルト・ジンツァー(ka0895
人間(リアルブルー)|28才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/06/06 17:55:38
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/05 21:59:37