広大な地下神殿に眠るのは

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2015/07/02 19:00
完成日
2015/07/02 23:22

みんなの思い出

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オープニング

●地下に眠るのは
 足手纏いにならないよう気を付けるから同行させて欲しい。
 そう願った結果、自分が人質となったせいで歪虚の企みは一歩、向こうに都合のいい展開を確保したまま進んでしまったことを小夜子は気に病んでいた。
 彼女がリアルブルーにいたころ舞を習った帰り道に参拝していて、一緒に転移してきた祠はもうリアルブルーにも、クリムゾンウェストにもない。
 ご神体が穢され、歪虚となった際の戦いで祠は倒壊し、その後ご神体を破壊した時に生じた地震によって祠の痕跡は跡形もなく消え失せた。
 代わりに現れたのは地下へと続く階段。
 共にご神体との戦いに臨んだハンターたちが帰った後、地上から見える範囲で小夜子は階段が何の意図を持って掘られたものなのか調査していた。
(傷のこともあるし、一人で突出して迷惑をかけた過去もある、だが……)
 常時この場にいられる覚醒者は自分だけだ。それならば定時連絡の時に一つでも多くの情報を、と思うのは欲張りなのだろうか、と小夜子は思う。
「……壁画?」
 朝日に晒された地下への階段を、光が届く範囲まで降りて脇に目を転じると宗教的な壁画が描かれていることに気づく。
「地下神殿、だろうか……。しかし、いつ、だれが何のために……」
 そして、何を祀った神殿なのか。
 同時に思い出した、べアルファレスと初めて邂逅した戦いの時に仲間が漏らしたセリフ。
「……大きな、力の流れ……」
 ご神体を破壊させようと小夜子を人質に取ったべアルファレスは、後悔によって絶望する姿が見たい。そのようなことを言っては、いなかったか。
 まだパズルのピースは揃わない。
 しかし、第三幕はその先だ、と示された言葉と大きな力の流れ、そしてご神体を破壊することによって生まれる後悔。
「……此処に祠が転移したのは偶然だったはずだ。だが……」
 その結果、強い正のマテリアルを持つご神体と祠が【何か】を封じていたとしたら。
 【何か】は恐らく力の強い、祀られていたもの。それを呼び覚ます為にはご神体が邪魔だったとしたら。
「後悔する、ということは……我等にとって歓迎する類のものではなく……歪虚が利用するに値する手のものを祀っていた、という事か?」
 その封印を解くことにハンターの手を使ったという筋書きは、二度ほど邂逅し、そのたびに人の絶望を愉悦としていた様子の蛙型の兜を被った歪虚が好みそうな手法に思える。
「……推測だらけだが、報告する事案ではある、か」
 いつまでもあの歪虚の掌の上で踊らされるわけにはいかない。
 気落ちして覇気のなかった小夜子に、いつもの凛とした、彼女の携える太刀のように鋭くも涼やかな気配が戻った瞬間だった。
「借りばかりが増えていくな……一連の騒動に片が付いたら、何か報いられるといいのだが」
 颯爽とした足取りで階段を上りきると、小夜子はソサエティに向かって足を進め始めた。
 ぽっかりと開いた地下への入り口となる階段は、陽光の下でも全容を掴ませない闇に包まれているのだった。


 小夜子が立ち入らなかった、光の届かない神殿内部に、薄らとした光が満ちる。
 ぼう、ぼう、と揺らめき、強弱のあるその光の発生源は神殿の最奥部だろうか。
 よく見れば祭壇の上に何か捧げられているように見えなくもない。
 天上は高く、神殿がかなり広いものだとその光量の安定しない謎の光が教えてくれる。
 そしてその壁面に、おそらく血で描かれたものと思われる赤錆色の宗教的な壁画の存在にも、目を凝らせば気づくことができるだろう。
 さまざまな供物とともに、生贄にされた人間が描かれたその壁画は、画力は稚拙だったが人々の恐れ慄く表情だけはやけにリアルに描かれていた。
 祭壇を中心に六芒星を描くように配置された棺が、不意にがたがたと動き始める。
「目覚メダ……目覚メダ……神ノ、目覚メダ……」
 歌うように、祈るように、現れたのは巨大な影が六つ。
 明らかに人間のものではない。
「人間に……復讐ヲ……今コソ、我ラが立チ上がる時ガキタ……」
 祭壇の光の一部がかつての死者を加護するように影たちに取り込まれていく。
「偉大ナルものよ……我ら二再ビ、更ナル力を与エ給エ……」
 ひしゃげたような声が六方から響き渡る。地下神殿を揺るがすような大きな声だが生者の物とは思えない声でもあった。
「我等契約者二、再びノ力を与え給エ。全テハ我ラヲ追いヤッタ、人間へ復讐するため二……ソノ力ヲ持ッテ、再ビ恐怖を感染サセルタメ二」
 契約者を名乗った六体は、微かに棺の残り香を漂わせながら自身たちの進攻する【神】に向かって祈りをささげ始めた。
 ぼう、ぼう、と祭壇から発する光はそれにこたえるように徐々に強くなっていく。
 べアルファレスの仕組んだショーの三幕が、開演しようとしていた。

リプレイ本文

●倒壊した祠の下に眠るのは
 かつて御影 小夜子(kz0118)が家族同然の狐の精霊と長い時間を過ごしていた山は、ラキエルと名乗る歪虚の侵略を経て一時は落ち着いたように見えた。
 しかし、今再び山は荒廃の風が吹き始めている。
 米本 剛(ka0320)は前回までの戦いの様子や、演出家を気取るラキエルの後任の歪虚、べアルファレスについての経緯を道すがら聞きながら大きな手で頬を撫でた。
「異教の地下神殿ですか……冒険心よりまずは……鬼が出るか蛇が出るか、という気分ですね」
 鳥居をくぐった先にある祠は前回歪虚に仕立て上げられたご神体との戦いで崩壊、その下に作られていた地下神殿にそれぞれが思いを馳せる中、自身が人質となってしまったことが理由でべアルファレスの思惑通りにことを進める結果になったことを悔いる小夜子に、天竜寺 舞(ka0377)が声をかける。
「小夜子さんが悪いわけじゃないんだからあんまり気にやまない方が良いよ。
 全部悪いのはあの蛙頭なんだから!」
「今度こそ奴の思惑から外れるために俺たちも協力する。小夜子のことも当てにしてるぜ」
 ヴァイス(ka0364)の台詞にリシャール・ヴィザージュ(ka1591)も頷く。
「鳥居と、祠と一緒に転移してきたのにはもしかすると理由があるかも知れない。
 だとすれば、べアルファレスの目論みを挫くにあたって鍵になるのは小夜子さんだと思うんだ」
「私にできることがあるなら、全力を尽くす所存だ。いたわりの言葉、痛み入る。
 ……しかし宗教的な壁画には縁がなかったため今の段階で読み解けることはあまりないな……」
 それぞれが持ち込んだ光源で入り口となる階段からずっと続いている赤錆色の壁画を眺めながら小夜子が眉を寄せる。
「封印されたモノが神霊樹に司書が居ない原因かね?」
「それはあるかもしれない。ヴィザージュ殿から賜ったパルムなのだが、祠が倒壊してからはどうも怯えているというか落ち着かない素振りを見せることが多い」
 以前司書のいない神霊樹の若木の司書の候補に、と託されたパルムの怯えるさまを見て事件が収束を見せるまではとソサエティで待機している斡旋を主に担当する青年に預けておくことになった、と小夜子がリシャールの問いに答える。
「しばらくこちらに来れなかったけど、また癪に障る感じの歪虚が現れたのね。どんな奴かはしらないけれど話を聞く限りろくなイメージがわかないわ」
 アイビス・グラス(ka2477)が件の歪虚、べアルファレスの乱入を警戒しながら一歩ずつ階段を降りていく。
 随分長い階段は段数を数えるのをやめたころようやく終わり、壁画に彩られた隧道が続いているようだ。
「どう考えても、罠ですが、放置もできませんね。最善策を取るためにも、今回の調査で何かわかるといいのですが……」
 ミオレスカ(ka3496)が最後に階段を降り切り、一同は改めて地下神殿を光源で照らしてみる。
 生贄になっていると思われる側と捧げる側の体格差をみてミューレ(ka4567)が少し思案した後口を開いた。
「祀る側を誇張して、生贄を卑小なものとして描いたのでなければ……祀っていたのはジャイアントで生贄は人間かな。
 塗料に使われているのはずいぶん古いけれど血のように見えるね」
「パルムが怯えを見せ始めたのは祠が壊された後……砕けてしまったがご神体が封じの一端を担っていたのだろうか」
 歪虚化したのを破壊した御神刀を、それでも何か役に立つかもしれないと回収して持ってきていたのはレオン・フォイアロート(ka0829)、包んでいた布から砕けた刃を露出させてみるが刀の方にも神殿の方にも見たところ変化は現れない。
「長い時を経た器物は命を宿す、とリアルブルーの日本では考えられていましたし、その日本で祀られていた刀ですからな。
 ご神体として力を持っていてもおかしくはないかもしれません」
 剛が興味深げに壁画からご神体に視線を転じる。
「……静かに。……奥に何かいるぞ」
 巨大な扉の向こうから何者かの気配を感じ取ってヴァイスが立ち止る。
 布陣を整えた後、体格のいいヴァイスと剛が力を合わせて観音開きの扉をゆっくり押していく。
 扉が開くに従って漂ってくる腐臭に全員が微かに眉をひそめた。
「神聖ナル祈りノ場二踏ミ入るノハ何者ダ」
 低く、轟くような声がハンターたちに問いを投げかけた。
「あの巨体、ジャイアントか。しかし、あの爛れ具合にこの腐臭……ゾンビ化しているようだな」
 扉の先に広がっていたのは六芒星を描くように置かれた六つの巨大な棺。
 そしてその中から現れたと思われる六体のジャイアントのゾンビだった。
「ここに偉大な力の持ち主が眠ってるって聞いてね。出来ればその眷属になりたいな~、なんて」
 舞が祀られている存在に探りを入れるためにそう答えるとジャイアントたちは猛り狂うように雄たけびを上げた。
「我ラを追放スルに飽キ足ラズ我ラの神ヲ奪ウつもりカ!」
「簒奪者メ! 我ラが神ノ贄とシテクレル!」
「略奪するつもりはない。何を祀り、どんな目的を持っているのか答えてくれないか」
 レオンが雄たけびに負けないよう声を張り上げて問いかけるとジャイアントたちは僅かに落ち着いたようだ。
「コレハ、復讐ダ」
「復讐? 誰に対する?」
 アイビスが注意深く問いを重ねる。
「我ラの住処を焼キ払イ、我ガ物顔で土地を略奪シタ人間タチへの、復讐ダ! 人間ハ全テ我ラが神ノ贄とナレバ良イノダ! 贄ガ多イ程大イナル存在ノ加護ハ強クナリ、我ラの時代ガ訪レルダロウ!」
「……皆、気付かれないように注意して奥に視線を向けてみて。
 祭壇のようなものがある」
 ミューレがそっと仲間たちに囁く。
 神殿の内部には彼らが持ち込んだ光源とは別の光が薄らと満ちていた。
「あれが、彼らの祀る神、でしょうか……」
 ミオレスカが前回のように背後をべアルファレスにとられないよう、後方にも注意をしながら囁き返す。
「そのようだ。……小夜子さん、荒ぶる神を鎮めるような舞を習ったりは、しなかっただろうか」
「神前に奉納する舞ならば、稽古の一環で習ったことはあるが……それに祖霊の力を籠めれば或いは……」
「では、これを。舞の助けになるならば使ってくれ」
 リシャールが神楽鈴を小夜子に手渡し、舞を促す。
「祭壇から、特に強く、負のマテリアルの波動を感じます。波があって、捉えにくいですが……」
「まだ完全には目覚めていないってこと? ジャイアントのゾンビを倒すことで封印が解ける、とかじゃないでしょうね……」
「べアルファレスのやり口としてはあり得るのが嫌なところだな。打ち合わせ通り、棺に閉じ込めることで封印できないかやってみるだけやってみよう」
 ミオレスカの感じ取った波動の持ち主であるジャイアントたちの神の目覚めがべアルファレスの目的だろう、と検討を付けたハンターたちはあまり警戒させないように抑え役と小夜子を守る態勢を整える。
「大いなる存在っていうのは何か、教えてもらえないかな。
 いつ眠りについたかは分からないけど、結構時間がたって世界も変わってると思うんだ。もしかすると争わずに済むかも……」
 舞が距離を測りながら問いを投げかけるとジャイアントたちは残忍に笑った。
「人間ガ歪虚ヲ信仰スル日がクルとは思エンな」
「契約を持ッテ、我ラが神二復活ノ糧トナル贄ヲ!」
「ゾンビにしちゃ言語機能が劣化してないと思ったらこいつら契約者か……!」
「そういうこと。今回は彼らと対面してみて欲しかったのさ。舞台は楽しんでもらえているかな?」
 仄暗い笑みを含んだ声が祭壇にかけられた布の陰から投げかけられる。
「この蛙頭! やっぱり出てきた!」
「歪虚を祀るジャイアントと歪虚を狩るハンター、そして別の歪虚。さて、ジャイアントたちが仲間に迎えるとしたらどちらでしょう?」
「虚偽の同胞を解放し、手を組むのが目的でしたか」
 レオンが切りつけるようにべアルファレスに言い放てば、クツクツと陽気さと暗鬱さが同居した独特の、そしていつもの笑みが返ってくる。
「ボクはこの周囲一帯にある舞台装置を使って、最高に楽しいショーを生み出したい。
 彼らは昔自分を迫害した人間たちを追いやって自分たちの楽園を作りたい。
 虚偽の同胞なんかじゃないよ、彼らの祀る神なくしてボクの舞台は整わなかった。いわばスポンサーさ」
 特徴的な頭部を持つ全身鎧が姿を現し、同時に彼の周囲を刃物の姿を取った雑魔が浮遊し始める。
「さて、小夜子。キミにこの歪虚を鎮められるかな。やってみるといいよ。楽しい舞台にはハプニングというスパイスが必要だ。
 ボクはそれすら楽しもうじゃないか」
「……全霊を込めて舞って鎮められるかどうか分からない相手だ。
 ジャイアントやべアルファレスに注意を向ける余裕は、おそらくないと思う」
「べアルファレスの飛び道具はオレが弾こう。奴がデュラハンなら、核がある筈。
 木を隠すなら森の中、というようにもしかすると雑魔に紛らせているのかもしれないから、その辺も探ってみたい」
 小夜子の言葉にリシャールが低く応える。
「話には聞いてたけど予想以上の下衆ね。あまり人を甘く見ない方が良いんじゃない?」
 アイビスがジャイアントが契約によって引き出した氷の矢を続けざまに射かける中、注意を引きつけるために前に出る。
「心外だな。キミたちを見込んで舞台の不確定要素を兼ねた観客になってもらっているのに心が通じないのは悲しいね」
「お前と通じ合うような心を、生憎こっちは持ち合わせていないのさ」
 皮肉には皮肉を、といった調子でヴァイスが応じながらジャイアントを棺に押し戻そうと相手取る。
 近距離戦と共に、歪虚の力を借りたゾンビたちの魔法とべアルファレスの使役する雑魔が飛び交う。
 神楽鈴の音を伴奏に舞う小夜子に対する攻撃は剛とリシャールが防ぎ、ミューレは祀られている歪虚を鎮める手掛かりを見つけ出すことはできないかと攻撃をかいくぐりながら壁画やジャイアントたちの行動から規則性を見出そうとしていた。
「いやはや、攻撃が飛び交っていて動く壁のやりがいがありますな。
 歪虚とはいえ神を祀る場所でこんなに派手にやりあっていいのかという疑問も生まれますが」
「それに、ここは地下です、あまり派手に暴れると、生き埋めになるかもしれません」
「それは遠慮したいですなぁ」
「とりあえず棺に押し込めば寝なおしてくれないかっていう期待をしつつできるだけ壁にダメージ与えないように応戦するしかないね」
 剛とミオレスカのやり取りに舞が言葉を重ね、抑え役のメンバーと一緒にジャイアントの攻撃を捌きながら棺へ倒れ込ませられる位置へ誘導に励む。
(全身鎧だと表情や呼吸から核に危機が及んだか反射で反応してるところを見れないのが面倒なところだな……鎧の中か、外か)
 小夜子への攻撃はアームズダンシングを用いて庇いつつ、チャクラムを操ってリシャールがべアルファレスの生み出した雑魔を打ち落す。
 小夜子の舞が続けられるうちに、ジャイアントたちの動きが鈍り始めた。
「これなら、封印できるかも!」
 アイビスが相手の大振りな攻撃を避け様、カウンターを入れて一体を棺に押し戻す。
 ほぼ同時にヴァイスも相手取っていた一体を棺へ閉じ込めることに成功した。
 舞は徐々に効果を見せ始め、手の空いた二人が他のジャイアントを封印しなおす手助けに入ったこともあって契約者のなれの果てのゾンビたちは劣勢の呈を見せ始める。
「へぇ、中々やるねぇ、小夜子。このままじゃジャイアントたちは封印されちゃうかな」
 あまり困ったような様子も見せずにべアルファレスが次々と雑魔を生み出していく。
「何が目的なわけ!?」
「ボクの目的はいつだって舞台を楽しむことさ。キミたち生物は眠らないといけないし、食物を摂らないといけない。
 その隙をついてジャイアントたちと、彼らが崇める歪虚を呼び覚ますのはボクにとってはたやすいことだからね。
 戦いの荒ぶる闘気は目覚めの呼び水になるし、ずっと小夜子に舞を舞わせ続けるわけにもいかないだろう?
 仲間思いの君たちは、そんな無茶を強いたりはしないよねぇ?」
「あぁ、もう。本当一々腹の立つ奴ね……」
 アイビスが顔をしかめて吐き捨てるとべアルファレスは愉快そうに笑った。
「ボクは苛められるより苛める方が好きだからねぇ。苦悩と絶望に歪むヒトの姿を見るのはいつも、とても楽しいよ」
「反吐が出そうな趣味だな」
「最高の褒め言葉だね」
 巨大な力を舞によって鎮めようとするのは体に負担がかかるのか、小夜子の爪が割れ血がにじむ。
「ジャイアントは全部封印しなおせたみたいだし、今回は退いたら?
 ここで戦いを続けたら気配にまた彼らが起きはじめるよ」
「貴様の思惑通りには、進ませない」
 黒曜の瞳を怒りで煌めかせ、舞を続けながら小夜子がべアルファレスを睨み付ける。
「キミは舞いを続けるつもりでも、お友達が止めるんじゃないかなぁ?
 それに、もし止めなかったとしてもあまりドンパチやってるとさっきキミたちが危惧した通りここは崩れてしまうよ?」
 顔があったらにやにやと笑っていることが容易に想像できるような余裕さをみせるべアルファレス。
「そろそろ一度幕を引いた方が良いんじゃないかな。次の演目は仕掛けが大がかりだから、万端で挑んでくれないとつまらない結果になってしまいそうでね」
「いつまでも地下で戦い続けるわけにもいかないし、小夜子さん、君の身体も限界だろう。悔しいだろうがここは……」
「……、しかし」
「完全に封印しても僕を何とかしない限り、祀られている歪虚はいつでも目覚めるよ。そろそろ手打ちにしないかい」
「小夜子さん……」
 鈴が最後の音色を紡いで小夜子の動きが止まる。
「うんうん、友情は何より強く、何より脆い武器だよねぇ。キミたちが対策を練る時間を使って、ボクは契約者たちと彼らの神を呼び覚まそう。
 また会いまみえる日を楽しみにしているよ、ハンターの紳士淑女諸君。御機嫌よう」
 布の陰へと消えていったべアルファレスを、ハンターたちは追いかけたが向こう側から鍵をかけられた隠し扉が行く手を阻んだ。
「壊すには扉の高さがありすぎるな……下手したら天井が崩れる」
「ここで一時休み、ですか」
「申し訳ない、私にもう少し力があれば……」
「小夜子さんのお陰でジャイアントたちを封印しなおせたんだし、次に備える時間ができたんだから気にしないで、ね?」
 舞の言葉に小夜子は少しの間の後頷き、歪虚の消え去った扉を見据えてきつく拳を握りしめたのだった。
 舞台は、まだ暫し続く。

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重体一覧

参加者一覧

  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士

  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 堕落者の暗躍を阻止した者
    レオン・フォイアロート(ka0829
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人

  • リシャール・ヴィザージュ(ka1591
    エルフ|29才|男性|疾影士
  • 戦いを選ぶ閃緑
    アイビス・グラス(ka2477
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 共に紡ぐ人を包む風
    ミューレ(ka4567
    エルフ|50才|男性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ミューレ(ka4567
エルフ|50才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/07/02 13:00:13
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/01 16:33:27