• 東征

【東征】隠の吹上/九曲三魂

マスター:剣崎宗二

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
6~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/07/20 22:00
完成日
2015/07/27 23:09

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 山本五郎左衛門を討ち果たし、歓喜に湧いた東方が、再び絶望で塗りつぶされようとしていた。
 突如その姿を表した九つの蛇をその尾に宿した大狐。妖怪の首魁にして、憤怒の歪虚の至高存在。比喩抜きに山の如き巨体を誇る妖狐は既に展開されていた結界を抜け、東方の地を蹂躙しながら天の都へと至ろうとしていた。
 ――数多もの東方兵士たちの生命を貪りながら。
 同時に、妖狐は東方の守護結界に大穴を作っていた。今もその穴を通じ妖怪たちが雪崩れ込んでおり、百鬼夜行が成らんとしている。

 かつて無いほどの窮地に立たされながら、東方はそれでも、諦めなかった。
 最後の策は指向性を持った結界を作り九尾を止め、結界に開いた穴を新たなる龍脈の力を持って塞ぐこと。それをもって初めて、最終決戦の為の舞台を作る。

 そのために今必要とされるのは人類たちは九尾達の後方――かつて妖怪たちに奪われし『恵土城』の奪還と、可及的速やかな結界の展開。
 東方の民と東方の兵の亡骸を――僅かでも減らすその為に。



 暴れ回る大妖狐を大きく迂回し、漸く辿り着いた恵土城を遠方に見やったハンターと東方武士達は、言葉を無くしていた。美しき東方の城。その天守閣を覆うほどに黒々と広がった、『泥』。
 同道していた術士が呆然と呟いた。
「……龍脈が」
 喰われている、と。
 地下から吸い上げられた龍脈が天守閣の泥へと吸い上げられている。しかし、果たして、この戦場における狙いは定まった。

 地下と天守閣。その二つを、落とさなくてはならない。
 この局面での失敗は、即ち東方の終わりを意味する。だが、恐れずにハンター達は歩を進めた。
 ――運命に、抗う。
 ハンター達は、その言葉の意義を自ら証するためにこの場にいた。




「そう、ですか……」
 恵土城城内。天守閣に繋がる道。そこでは、一人の男が、正座をするように道を塞いでいた。
 彼と話していたのは、蛇の鱗を体の所々に纏った男。彼らの共通の主からの命を伝えると、蛇の鱗を持つ男は去っていった。
「主様もお人が悪い。何故このようなお戯れを。この城の力など無くともよろしいでしょうに」
 正座したまま、その周囲に、三本の刀が浮かぶ。その一本を掴み取ると、鞘の部分を杖のように使い、ゴン、と地面に叩き付ける。
 リィィィィン。
 鳴り響くは、清らかな鈴の如き音。
 その音が届く所から、次々と赤い装束を纏う、忍者のような者が出現する。

「客人がもう直ぐ来ます。渾身の『おもてなし』をお願いいたしますよ……」

 忍者たちは印を組み、了承の意を示すと。次々と天井や柱など、四方の障害物の裏へと隠れていく。
「さて…これでおもてなしの準備は完了でしょうか」
 良く見れば、正座している男の眼は開かれていない。彼は『盲目』なのである。それでは彼は果たしてどうやって、周囲の状況を確認しているのか?
 リィン。リィ…ン
 僅かに揺れる刀の一本が、低く音を発する。まさかこれが彼の目の代わりなのだろうか。

 正座したまま、彼は動かない。彼の背後で、お互い交差するように、刀たちがこの廊下を封じている。その鞘から一本を抜き放ち、彼は逆手に持つ。
「三刀しかございませんが……十分で御座いましょう」
 残りの六つは、今は主を楽しませる為に、彼女の座の元にある。
 だが、男――御庭番衆が一人、『九刀冥奏』吹上 九弦には、不安はなかった。
 それどころか、彼は殆どの感情を忘れ去って久しい。
 僅かに残っているのは――恨みだけ。
 愛する者を奪い、そしてそれをまるでゴミのように捨てた。その者への恨み。
 それがこの男を。音楽を愛した穏やかな男を、修羅、そして堕落者へ変えたのだった。

 彼に大局等分からない。彼から見れば、この一件は主の『戯れ』でしかない。この城が無くとも、主の力を以ってすれば、如何なる敵も撃ち滅ぼせる。
 それでも主の『戯れ』の為、彼のはこの場――天守閣に繋がる最大の道を守る。

 ――彼が迎え撃つは、奥の間に進む道を確保する為突入するハンターたち。
 かくしてここに、刃と刃が交わる。

リプレイ本文

●奏

「熱烈な歓迎ご苦労さん。もうちょい手ぇ抜いてくれた方が楽できていい感じなんですけどぉ?」
 大きくあくびし、背伸びして。白衣を靡かせて眠い目を擦り、鵤(ka3319)が、目の前に鎮座する堕落者を見据える。
「眠気を覚ましたいのでしたら、私が一曲、奏でて差し上げましょう。……最も、最後まで聞けるかどうかは――分かりませんけれども」
 対する堕落者――『九刀冥奏』吹上 九弦は、両手にそれぞれ刀を取る。――情報が正しければ、手に取られたのは――『龍鳴』『天問』か。

「九弦さん、あなたにはもう何も奪わせません」
 相手が戦闘体勢に入ったのを察知し、エリー・ローウェル(ka2576)が前に出る。見事なまでの重装備。この堕落者相手に『守り切る』と宣言したのも、あながち根拠が無い訳ではないようだ。
 その瞬間、九弦の頭上から無数の弾丸が降り注ぐ。九弦の体が僅かに浮かび上がり、正座したままコマの如く回転しながら、弾丸の雨の範囲外へと抜ける。
(「やっぱり落下を待ってると、弾速は遅くなるか」)
 音速を超えるライフル弾ならば、聴覚に頼る九弦には回避できない。そのアーヴィン(ka3383)の考えは、一理ある。
 ――が、初速が大きくとも。弾丸が『落下』状態に入る際には、その加速度は重力による物と同一となる。それ故に、落下物を回避するが如く、九弦はそれをかわしたのであった。
「では、始めると致しましょうか」
「上等な首級だ。駄賃代わりに貰っていくぜ」
「不作法をお許し下さい、罷り通りたく願います」
 言葉が交差する。そして武器も、また――


●隠

 バンバンバン。
 銃声が、一帯に響く。だが、今度はアーヴィンが撃った訳ではない。
「……出てきませんね」
 ――射撃を行ったのは、花厳 刹那(ka3984)。目標を定めない盲撃ちで一帯をかき乱し、居るであろう忍者たちの反撃を誘い、誘き出すのが目的であった。
 だが、相当我慢強いのか。それとも、何か九弦から命じられているのか。乱射を経ても、彼らが出てくる様子は無い。
「仕方ありませんね。手当たり次第に隠れ場所を潰すとしましょう」
 真田 天斗(ka0014)の放ったロケットパンチが、天井に穴を穿つ。だが、壁や天井の面積はあまりに広すぎる。連射の効かないこの兵器で、全ての隠れ場所を潰そうとするのは一定の時間を要するだろう。
「…ああ、しかし何と、珍しい刀でしょうか。歪虚の技術とは面妖に御座いますね」
 九弦の持つ刀を、ちらりと目で見ながらも。それは飽くまでもフェイント。
 帚木 椎乃(ka5324)は、未だ油断無く、周囲の様子を観察している。

「……う?」
 ――放たれる三条の光。それは九弦の左腕と、空に浮かぶ刃に命中する。
「いやぁ、やっぱり音の出ない攻撃には反応できない感じですかねぇ」
 できるだけ構えで悟られぬよう、密かに魔力を練り、目の前に魔方陣を浮かべて射出する。
 水面下での鵤の努力は、九弦への直撃という形で実を結ぶ。僅かに体勢を崩した九弦に、左からメオ・C・ウィスタリア(ka3988)が。正面からジャック・J・グリーヴ(ka1305)が、同時に接近する。
「メオさんの斧を受けて、立ってられるかなー?」
 斧頭自体の重量を乗せた、渾身の一撃。受け切るのは困難だろう。メオの斧には、あわよくば防御してくる『焼界』を、叩き割る狙いもあった。だが――
「――話になりませんね」
 渾身の一撃は、同時に多大なる隙を孕む。これが雑魔だったのであれば問題はなかった。が――相手は、堕落者。九尾の近衛なのである。
 回転しながら地を滑り、斧の下から、懐に潜り込む。正座の体勢のまま、その刀を回転の勢いのままに振るう。
「…っ」
 一刀が脚を掠め、痛みに僅かに表情が変わる。が、二刀目が襲い来るよりも先に、渾身の力で斧を引き戻し、地に突き立てる。
 ガン。金属と金属がぶつかり合う音。
 戦斧はその重量の分、頑丈である。引き戻したその斧で、メオは強引に二刀目――『天問』を受け止めた。
「チャンスだよ!」
「おうよ!」
 ――轟音を上げ、振動剣が襲い来る。
 ジャックの狙いは、メオが受け止めた『天問』。受け止め、動かせない今ならば、或いは叩き割る事も可能か。
「…中々考えましたね。ですが」
 渦巻く風が、九弦が持つもう片方の刀――『龍鳴』に纏わりつく。それを、ジャックの振動刀の横に、平行になるよう、並べるようにして押し付ける。
 バァン。
 鈍い金属音と共に、押し退けられる様にジャックの振動刀が弾かれ、横の床に突き刺さる。
「っち、随分と嘗めた真似してくれやがるぜ…!」
 刀を激しく振動させ周囲の床を木屑と化し、武器が拘束される事を避ける。両者追撃する猶予はない。九弦は両刀を使用し、メオとジャックは共に武器を引き戻している。そのカバーに入るようにして、間にエリーが入り、突きを放って九弦の前進を阻む。
「私が居る限り、貴方に仲間を斬らせはしません」
「ほう――ずいぶんと言いますね」
 彼女に九弦が狙いを定めた瞬間。銃弾が飛来し、咄嗟に頭を逸らした彼の顔を掠め、血の痕を残す。
「……探知されているのか? ……そんな筈は…」
 直射ならば、ライフル弾の速度は音速を超える。故に、探知を耳に頼る九弦には、銃弾の回避は不可能であるはず。それが、アーヴィンの想定だった。
 だが、如何なる理か。彼が引き金を引く直前に九弦は頭を逸らし、致命的な一発を回避したのだ。
 ――この時の彼に知る由はないが。九弦の刀は、常に様々な周波数の音を発している。それがレーダーとなり、彼の脳内には見えないにもかかわらず、立体的な周囲の情景が構築されている。
 故に、視力を持たない彼でも、アーヴィンの腕の動き等から次の一手を予測し、回避行動を取る事が可能だったのである。
「やれやれ、面倒くさいヤツだねぇ」
 メイスを担いだまま、一瞬背を向けた鵤の背後上方から、浮かび上がる魔方陣。放たれる三本の光が、再び九弦の腕と、それが持つ刀に命中する。宙に浮かぶ刀に対しては、その不規則な動き故に外してしまったが、彼の右腕から、『天問』を弾き飛ばす事には成功した。
「はて、面倒なのはどっちでしょうね?」
 苦笑いする九弦。
 銃撃する為には、銃を向けなければならない。それ故に九弦はその動きから、攻撃のタイミングを探知、回避する事が可能だった。だが、鵤が完全にランダムなモーションと共に放つ光の軌跡は、音を反射すらしない。故に九弦にとっては、見えない攻撃も同然である。それ故に、刀の自立防御すら…反応しないのである。
「ふむ……実に厄介、ですね」
 僅かな苛立ちが、九弦の顔に浮かぶ。
「仕方ありませんね」
 空いた右腕に向かって、『焼界』が飛来する。それを受け取り、彼は二刀を目の前で交差させる。
「――焼き切ってしまいましょう」


●毒焔

 九弦の眼前に、炎の壁が現れたかと思うと、次の瞬間、暴風がそれを『吹き倒す』。
 延焼した炎は風に煽られ、またたく間に通路全体に広がる。
「来ましたか…!」
 天斗が睨んでいるのは床板の下、天井の上。潜んでいた忍者たちが、そこから現れたのだ。
 多少負傷している者も居る。恐らくは先ほどの刹那による乱射だろう。
「傷ついても出てきませんでしたか…よほど命令に忠実なのですわね」
 呟いた椎乃が刀を抜刀、迎撃に走る。

 ――最後尾に居るのは、アーヴィンと鵤。九弦に『最も厄介』と認識された彼らは、陣形の最後尾に居た。だが、忍者たちは全ての者の頭上と足元に等しく有る『天井』『床下』から現れた。この方法の前には前衛も後衛も、襲いやすさでは変わりはない。
「あぶねぇから退いてな…っ!」
 アーヴィンが鵤を押し退けた直後、その鎧に二本の手裏剣が突き刺さる。
 ダメージはきわめて低い。多少の機動力を犠牲にして着込んだ全身鎧が、殆どの衝撃と切っ先を防いでしまっている。だが、その刃に塗られた毒までは防げない。少しでも肌を傷つければそれは即、体に入り、蝕むのだ。
 だが、忍者たちが更なる攻撃を行う前に、彼らに対策するハンターたちは反転、到着していた。
「この間合いならそう速くは投げられませんね?」
 急激な突撃で間合いを詰め、刹那が忍者に肩から体当たりする。そのまま、神速の一閃が、下段から上段へと忍者を切り上げる。だが、死に際に忍者がばら撒いた手裏剣と鎖鎌が、彼女の服に引っかかる。その隙に他の忍者が、一斉に彼女に向かって手裏剣を投擲する!
「くぅぅ…っ!」
 警戒して居なかった訳ではない。ただ、忍者たち全員が彼女に向かってくる事を、想定してはいなかった。太刀で何発かは防御した物の、無数の手裏剣が、突き刺さる。

 だが、それは即ち、忍者たちの意識が、他のハンターたちから逸れたという事。

「はぁっ!」
 飛び上がった天斗のノーモーションからのロケットパンチが、忍者の一体を壁に叩きつける。
 直後、椎乃の光り輝く刀が一閃。完全にその忍者を両断し、止めを刺す。
「まだです、私はまだ戦えます…!」
 手裏剣自体の攻撃力はそれ程ではない。問題なのは、そこに塗りつけられていた、毒。
 回復させる術を持たない今回のハンターたちでは、この毒に対処することは出来ない。故に手裏剣を受けた刹那が取った行動は――体力がまだある内に、一人でも多くの忍者を斃す事。
 刃が、追撃で投げ込まれた鎖鎌を弾く。次の瞬間には、その投げた忍者に詰め寄り、一閃がそれを上下に断ち、炎の中へと落とす。
「はぁ…っ」
 毒、そして炎の熱が、無情にも体力を奪っていく。幾人のも忍者を切り捨てた後、刹那は炎の中へと、倒れ込む。
「…大丈夫ですか?」
「ああ……」
 気遣うような椎乃の問い。無事を装った物の、天斗もまた、幾ばくかの手裏剣をその身に受けている。
「っ!」
 その一瞬に、背後から鎖鎌が伸ばされ。椎乃を捕縛する。
 捕縛されれば自分は動けないだろうが、それを保持する敵もまた動けない。そう考えた椎乃は、せめて引き寄せられないように、脚に力を込め、耐える。だが、次の瞬間、足が宙に向かって浮く。上方に鎖鎌の鎖を引っ掛け、吊り上げられたのだ。
「本場の忍者、流石に一筋縄ではいかないようですね…そこっ!」
 発射した天斗のロケットパンチが、忍者を打ち落とす。だが、跳躍し、鎖を切断したその瞬間。背後から、忍者の手裏剣が彼の背中に突き刺さる。
「退散!ですわ!」
 束縛が解けた椎乃の刀が、忍者を地に縫い付ける。だが、既に天斗の体力も残り僅かであった。


●終幕

「……ふむ。もう全滅しましたか」
 意外そうな九弦の表情を、ジャックは見逃さなかった。
「なぁ、てめぇ、ここら辺が潮時じゃねぇか?」
 カン、と炎を纏う小太刀で『焼界』を受け止め、語りかける。
「てめぇの主ってのは強ェんだろ?だったらここでてめぇが引いても、大局は変わらねェんじゃねェか?」
 ぱっと、間合いを離す。
「そうですね。一理あります。…ですが、上に居るあの者たちに文句を言われるのも耐え難い事デスので。…もう少しだけ、お付き合いいただきますよ」
 『龍鳴』を宙に投げ出し、代わりに『天問』を掴み取る。宙に投げられた龍鳴が、鵤のデルタレイを弾くが、直後、アーヴィンの銃弾が九弦の肩を貫く。
「ぐっ…!」
 追撃は終わらず。メオとジャックが再度両側から九弦を襲う。
 ガン。完全には受け流せず、大きく『焼界』が揺れる。返す刃は、間に飛び込んだエリーの交差したバスタードソードが受け止める。鋏み切られる事を警戒してか、すぐさま九弦が剣を引く。そこへ、更にメオの追撃。
「このまま割ってやるよぉ!」
 振り下ろされようとしている戦斧。くいっと唇を噛み、九弦は『天問』をメオに向けて、一周回転させる。
 ぶぅん。低い音。その瞬間、メオには違う情景が見えていた。地に座った仲間たちに向けて、正に刀が振り下ろされようとしている瞬間を。
「……!」
 無言で、斧を刀の方に向ける。
「なっ!?」
 だが、次の瞬間、その斧を受け止めたのは、エリー。バスタードソードを以ってして一撃を受け止めた物の、それは九弦に付け入る隙を与える事になる。
「どうした!?」
「いや、今一瞬、ジャックちゃんが九弦に斬られそうになったから、それを助けようと思って、何か急に止められなくてねぇ」
「んなこたぁ起こって……そうか、そういう力か…!くそったれがァ!」
 メオのその反応で、ジャックは何が起きていたのかを、理解した。つまり、『天問』の能力は『そう言う』事なのだ。
「皆、気をつけろよ!!」
 己の仮定を、全員に伝達するジャック。思えば彼自身も天問を向けられたことはあった。何かしら、心にノイズを感じた事はあった。それを跳ね除けられたのは、抵抗力の差なのだろう。

 一方。その一瞬の隙を突き、九弦が襲撃したのは、メオ。今の偏差した一撃で背を向けていた彼女は反応できず、攻撃を受け止めたエリーも、直ぐには動き出せない。
「ふむ…」
 鵤が放った光の軌跡を、回転しながら移動する事で打点を集中させず、分散させる。アーヴィンの狙撃も、彼の肩を貫通する物の、その前進を止めるには至らず。
「ヤロウ…っ!」
「最後の一手です…!」
 天斗が、最後の力を振り絞り、奥の手の合図を出す。それに頷くように、鵤がメイスの先にあるトランシーバーのスイッチを入れる。更に天斗がそのまま持っていたトランシーバーを宙に投げ。そこから出る音でかく乱しながら、天井近くから、垂直に襲い掛かる!
「無駄ですね……私の耳には、雑音は入りません」
 『焼界』に受け止められる。フィルタリングが出来る以上、九弦に対して音での干渉は効果が無い。
 単に聞く音を自分の刀が発した周波に絞り、それで周囲の実態を把握すれば良いのだから。
「…落ちなさい」
 逆手に入れ替えた『龍鳴』を振るい、猛烈な暴風が、上からメオと天斗に叩き付けられる。
 みしみしと、床板が悲鳴をあげる。
 ――炎によって弱められた床が、暴風の鉄槌に耐えられるはずもなく。それは音を立てて、崩れ去る。
 ギリギリでジャックとエリーは大穴を脱した物の――天斗、そしてメオが、下の界に暴風と共に、たたきつけられる事と成る。
「――これだけやれば、十分でしょう」
「待て…っ!」
 大穴を回り込む都合上、追撃はどうしても一歩、遅れる。九弦がその場から消えると共に、ハンターたちは、鞘の壁が消えた出口へと全速で向かう。
「やれやれ、おっさんに無理させるんじゃないよ?」
 鵤、エリー、ジャック、そして椎乃が、その場に間に合った。だが、最後尾に位置していたアーヴィンだけは、通り抜けが間に合わず、落下する瓦礫に道を遮られてしまう。

 かくして、通路の一戦は――半数のハンターが通り抜けに成功する、という結果になったのであった。

依頼結果

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MVP一覧

  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴka1305
  • は た ら け
    ka3319

  • アーヴィンka3383

重体一覧

  • Pクレープ店員
    真田 天斗ka0014
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那ka3984
  • たかし丸といっしょ
    メオ・C・ウィスタリアka3988

参加者一覧

  • Pクレープ店員
    真田 天斗(ka0014
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 『未来』を背負う者
    エリー・ローウェル(ka2576
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師

  • アーヴィン(ka3383
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那(ka3984
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • たかし丸といっしょ
    メオ・C・ウィスタリア(ka3988
    人間(蒼)|23才|女性|闘狩人

  • 帚木 椎乃(ka5324
    人間(紅)|16才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/16 01:28:12
アイコン 依頼について話し合いましょう
真田 天斗(ka0014
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/07/20 20:12:32