【燭光】死者の砲弾

マスター:植田誠

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/07/22 22:00
完成日
2015/07/30 07:13

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「その程度か! ヒンメルリッターの兵長殿!」
 ブルーネンフーフ上空。当地に更なる混乱をもたらすためにゾンビを輸送してきた量産型剣機が数騎。そのうち1体を駆るフリッツ・バウアーと1騎のグリフォンライダー……兵長オットー・アルトリンゲンが激しい空戦を繰り広げていた。といっても、旗色はオットーの方が悪そうだ。
「ほら、脇が甘いぞ!」
「……うおっ!?」
 言うが早いか、フリッツの鞭がオットーの胴に纏わりつき……そのまま空中に放り投げられる。
 主を空中に投げ飛ばされたグリフォンは慌ててその姿を追いかけ、背中でなんとかキャッチする。
「サンキュー! しかし……くそ、遊ばれてんな」
 以前の戦闘でもオットーはフリッツと遭遇しているが、その時は師団長の指示で戦うことは出来なかった。今なら師団長が戦わせなかった、その理由も分かる。
「貴様らの十八番である空戦でもこの様だ。悔しかろう」
「くそ……言ってくれるぜ」
 だが、押されているのは事実なので言い返しようもない。
(まじぃな……俺でもこの様じゃ誰が援護に来ても状況は変わらないだろうな)
「これは……死んだかな……?」
 そうオットーが呟いたとき、視界の端に一つの影が映った。
「これで分かっただろう。貴様らは俺の足元にも……!」
 及ばない、と続くはずだったのだろう。だが、フリッツがその言葉を言い終わることは無かった。フリッツの側頭部に……脚甲がめり込んでいたからだ。オットーとの戦闘に集中していたからか、それとも慢心していたのか。フリッツは援軍の接近に気づいていなかったようだ。そのまま剣機の背から蹴り落とされる。
「我が名は双撃の以下略! 久しぶりだなフリッツ!」
 蹴りを入れたのは第5師団長、ロルフ・シュトライトだ。斜め上方から剣機に向かってグリフォンを急降下させて加速をつけ、然る後にその背から飛び出し突っ込んだのだ。
「……でも空中でそれやるか!? 頭おかしいだろ!」
 思わずオットーは声を上げる。グリフォンライダーは基本的に命綱の類は付けない。当然フリッツと共にロルフも空中に投げ出される。
 すぐさまフリッツは鞭を振るい、剣機の足を狙う。巻きつかせて地上への落下を防ぐつもりだ。
「悪いけど、そうはいかない」
 ロルフは落下しながら狙いをつけ、剣を投擲。鞭は剣機の足との線上に割り込んだ剣の方に絡みついてしまう。すぐにもう一方の鞭を振ろうとするが、そうはさせまいとロルフが機導砲を撃ち込み牽制する。
「……くそ!」
 苦し紛れにフリッツは手を返し、鞭で絡めとった剣を投げ返す。だが、ロルフは落下しながらも冷静にそれを受け止める。
「返してくれて礼を言うよ。それでは、御機嫌よう」
 同時に、フリッツとロルフの距離が一気に広がる。見るといつのまにやら追いついてきたグリフォンが足でロルフの腕を掴んでいる。一方、フリッツの方はただ落ちていくだけだ。
 その様子を見て、ロルフはホッと息を吐きグリフォンの背に跨りなおす。
「団長!」
「オットー。遅くなって悪かったね」
「それはいいんだけどよ……落ちたらどうする気だったんだ!?」
「いや、落ちないよ? 僕は」
「はぁ!?」
「こいつがいるからね」
 そう言ってロルフはグリフォンの背をポンポンと叩いた。
 ロルフはグリフォンを全面的に信頼しているのだろう。だからあんな無茶を平然と出来る。
(……これが、兵長と団長の差って奴なのかね)
 オットーはそれほどの信頼をグリフォンには預けられない。だから自分と団長の空戦能力に差が出来る。彼はそう理解した。
「呆れるねぇ全く……俺には真似できねぇや」
「ハハ……まぁ褒められたと思っておくよ。さて、それじゃこのまま上の敵を片付けよう」
「え? でもよ。落ちたフリッツはどうするんだ? ダメージはありそうだが、あいつは俺か団長じゃないと相手にもならないんじゃ……」
「大丈夫、手は打ってあるよ」
 そう言って下を指差すロルフ。見ると、下方からグリフォンライダーが数騎上がってくる。
「地上戦は専門家を連れてきたよ。彼らに任せておけば当面は大丈夫だろう」
 ブルーネンフーフから逃げ出してくる人々の保護や残党処理などで当地にはハンターが多くいた。その中でも選りすぐりの人材をグリフォンに乗せて連れてきたのだ。
「そういうことだからオットー、僕たちは剣機を直接叩くよ」
「おう! 任せてくれ!」
「それ以外は散開。地上落着前にコンテナを破壊、ゾンビ共を無事に地上には降ろさないように……それじゃ、始めようか」
 ロルフの指示に従い、グリフォンライダーたちが各々の役目を果たすため空に散った。


 地上には立ち上がるフリッツの姿があった。上手く衝撃を殺すように着地したのだろう。多少ダメージは負ったようだが、戦闘には支障なさそうだ。
 その周辺にはハンターの姿。事前に落下地点を予測していたロルフの指示により、グリフォンに乗せられてここまで連れてこられていた。彼らの役目はフリッツを倒すことだ。
「よくも……」
 そのフリッツはというと……血走った両目を見開き、視線は空へ。
「俺を見下すのか……? ……また! この俺を!」
 強い怒気を孕んだ叫び。同時に感じ取られるのは負のマテリアル。四霊剣などには及ばないが、それでも強者であることは伝わってくる。
 その様子を見て、ハンターたちは武器を構える。
 フリッツを倒すことが彼らの任務であることもそうだ。加えて、現在周辺にはまだ逃げ出している人もいる。フリッツを野放しにしておくわけにはいかなかった。
「……貴様ら、俺と戦うのか? ……そうか、これもあいつの差し金か……いいだろう」
 周囲のハンターに気付いたのか、フリッツが鞭を構えた。
「ヒンメルリッターの前にまず貴様らだ……殺してやるぞ!」

リプレイ本文


 フリッツが動かない間にハンターたちはそれを包囲していく。
「……う、痛そう……」
 慈姑 ぽえむ(ka3243)は落ちてきたフリッツを見てそう漏らす。だが、あれは倒すべき敵だ。彼女たちはそのためにここへ集められたのだから。
 フリッツに対応するため榊 兵庫(ka0010)、麗奈 三春(ka4744)、Charlotte・V・K(ka0468)は散り、フリッツへ接近するタイミングを計る。
「こちらも行きましょう……それにしても、帝国指揮の航空部隊のことを学べると思いきや……私付いていけますかね」
 ぽえむの前に立つのは辻・十字朗(ka4739)。ぽえむは十字朗の後ろについて動く。
 敵はフリッツだけではない。周囲にはゾンビの姿が見られる。
「あの高さから落ちて元気とか、バケモノっすね」
 無限 馨(ka0544)は距離を詰めつつスローイングカードでゾンビを攻撃。ゾンビは小さな爆発を起こして四散する。
 ユノ(ka0806)は移動しつつ位置を調整。そしてファイアーボール。ぎりぎりの間合いを見極め2体のゾンビを焼き払う。
「ん~、もっとまとまってくるかと思ったけど、結構散ってるね……」
 コンテナが地上に落ち、ゾンビが散開する……その前にファイアーボールで一掃するのがユノの考える理想形だった。だが、すでに落下していたゾンビ。新たに落下してきたゾンビ。またコンテナも複数。戦域に入ってくるゾンビの数と方向は定まってはいない。
「これこそ我が銃。銃は数あれど我が物は一つ……」
 キャリコ・ビューイ(ka5044)がそう言いつつ銃撃。銃弾は過たず命中し、ゾンビを撃破する。
「これぞ我が最良の友、我が命……これ以上、国を乱れさせはしない」
 こういう時射撃武器は便利だ。ある程度間合いをカバーできる。
 さらに、十字朗もフリッツに対し間合いを詰めながら射程内に入っていたゾンビを銃撃する。これで戦域内に入ってきたゾンビは残り1体まで減った。順調な滑り出しといえる。
「もっとしぶといかと思ったけど、さすがに落下のダメージは大きいか……あまり関係ないのもいるみたいだけど」
「確かに……慎重にいかないといけませんね。回復は頼みますよ」
「任せて。こまめに早めに回復すれば、このくらい大丈夫」
 十字朗の後ろにはぽえむ。ヒールをいつでも使える状態にしつつ緊張した面持ちだ。
 その様子を、フリッツは見ていた。
「まずは、こっちからだな」
「な!?」
 動き出したフリッツ。その最初の狙いは……十字朗だ。
 十字朗に対して鞭を振るうフリッツ。
「何とか……見えるかな」
 円舞による流麗な動きが複雑な軌道を描くフリッツの鞭をいなす。見事だ。だが、フリッツの鞭は2本ある。もう一方の鞭が十字朗を腕ごと絡め取る。
 十字朗は鞭を斬ろうと試みたが……
「貴様は後だ」
 その前に十字朗は宙を舞う。投げ飛ばしたのだ。
「くっ……大丈夫か?」
 投げ飛ばされた先にいた兵庫は歩みを止め十字朗を受け止める。凄まじい勢いだ。衝撃で二人ともダメージを受ける。
「さて、壁はいなくなったぞ?」
 そう、このフリッツの行動は十字朗への攻撃ではない。その後ろにいるぽえむに対する攻撃のためだ。
 フリッツは十字朗の後ろに隠れるような動きを見せたぽえむをこの戦いにおいて比較的重要度の高い人物だと判断したのだ。
 この間もゾンビはやってくるが、その数は先と比べて少ない。ユノとキャリコが順当に処理していく。
「聖なる力を持つ慈姑君は切り札の一つ……ここで失うわけにはいきません!」
 十字朗は態勢を整えると全力で移動し、ぽえむの救援へと向かう。
「まず貴様を殺す」
「……あ、そういうのいいんで」
 頬に伝う冷や汗を感じながら、ぽえむはレクイエムを使用する。正ならざる生命の行動を阻害する歌だ。フリッツにも効果はある……
「……この状況で歌か? 呑気だな」
「っ!? 効かないの?」
 はずだった。だが、フリッツは並の歪虚ではない。抵抗力も高い。
 応戦するため剣を構えるぽえむ。だが、フリッツの方が射程は長い。
「まず一人」
 右方から脚を狙った鞭による攻撃。体勢を崩すためのもの……ではあったが、この時点でぽえむは大きなダメージを負い倒れる。
「まだ……!」
 それでも諦めず、咄嗟にヒールを使用しようとするぽえむ。
(耐えればまだ勝機が……)
 だが……
「遅い」
 そうフリッツが告げる、と同時に吐血するぽえむ。フリッツの鞭はただ打つだけの物ではない。巧みに操られた鞭が、補強の為張られた板金ごとぽえむの腹部を貫いていた。
「くそっ!」
 全力移動で間合いに入った十字朗がしかける。そこにCharlotteがタイミングを合わせて銃撃を行う。
(前衛の攻撃が通るか、射撃を弾くか……)
 二者択一を迫るような攻め。通常であれば、効果的だっただろう。フリッツの選択は……弾く。これもまたCharlotteの狙い通りだ。銃弾を弾くなら、その分十字朗の攻撃が届く……はずだった。
「知らんと見るので教えてやろう……俺に銃は利かん」
 倒れたのは十字朗だった。胸のあたりに銃痕がある。フリッツは銃弾を弾き、それを十字朗に当てたのだ。
「これで2人……あと6人か」
 そう言ったフリッツの視界には駆け込んでくる兵庫、三春の姿が見えた。


「くっ……やはり手強い……!」
「少しは手ごたえがあるじゃないか」
 兵庫と互いに攻撃を交わしフリッツが言う。兵庫の防御力はかなり高い。加えて守りの構えをとり防御を優先した動きをしてく。そう簡単にその防御は突き崩せない。
「遅れをとる訳には参りません!」
 兵庫の対応にかかりきりになっているところに、三春が疾風剣を利用して間合いに飛び込んでくる。懐に潜り込むと、腕を狙って攻撃する。鞭の制御を狂わせようというのだろう。フリッツはその攻撃を鞭の根元で受け止め、弾く。
「くっ……やはり強い」
 押し返される三春。だが、先の依頼では強力な歪虚を抑えきれず甚大な被害を出す結果になってしまったのだ。ここでまた負けるわけにはいかない。
 そんな決意を撃ち砕くかのようにフリッツが鞭を振るう。瞬間、目の前に光の壁が生まれ衝撃を和らげる。
「慈姑に使うには間合いが遠かったけどここなら、ね」
 Charlotteの防御障壁だ。銃を使うよりこうした形での補助を行った方が効果的という判断か。
多少面倒そうな表情を浮かべるフリッツ。防御障壁が邪魔なので潰しに行きたいところだが、そういう動きを見せると……
「こっちにもいるんすよ!」
 馨が飛び込んでくる。この男がかなり厄介。攻撃力そのものは三春と比べて低いため無視できなくもないが、とにかく素早い。Charlotteを狙おうとすればその隙を狙い飛び込んできて、攻撃を行う。反撃しようとしてもアームズダンシングによる踊るような動きはその回避力を大いに活かすもので、フリッツといえどもそう簡単には当てられない。さらに追撃しようとするとドッジダッシュによるアクロバティックな動きで距離を取る。距離を取ったところに兵庫と三春が踏み込んでくる。
(周辺のゾンビ……あれを使えば……)
 爆発すれば自身にも多少のダメージがある。だが、あのゾンビたちの体内には毒が充満しており、近接戦で向かってくる連中を牽制するには十分以上の効果がある。
 だが、それも難しい。
「ゾンビも漏らさずお掃除★」
 ユノが出現するたびファイアーボールで焼き払ってしまうからだ。範囲攻撃を駆使してゾンビを戦場に居座らせない その動きはこの状況を作り出す影の功労者と言える。無論位置によってはユノが処理しきれないゾンビも存在している。だが、そこはキャリコがライフルで撃ち抜く。ライフルの射程は完全ではないものの、ほぼ戦域全部をカバーしている。どこにいても多少の動きで撃破が可能だ。
「とはいえ、出番も少なくなってきたか」
 落ちてくるゾンビの数も減ったようで、ユノが一人で処理できる。
 ならばとキャリコは味方が攻撃するタイミングに合わせてフリッツを銃撃。だが、これが悪手。先程のCharlotteと同様だ。
「っ……!」
 銃弾はフリッツのちょっとした手の動きで踊った鞭に弾かれ、そのまま疾風剣で入り込んできた三春に直撃する。
 兵庫と同じく三春も頑強。この程度ではやられはしないが、体勢は大きく崩れる。そこにフリッツが蹴りを入れ大きく吹き飛ばす。地面を転がり倒れる三春。なんとか立ち上がろうとしているがすぐには動けないだろう。
「これで数が減ってやりやすく……なったな!」
「くっ……こりゃまずいっす!」
 次いで、向かってきていた馨に対し鞭を振るう。すぐさま馨はドッジダッシュを使い離れようとするが、そう毎度逃げられるわけでもない。Charlotteによる防御障壁が鞭の威力を若干殺すが、それでも大きなダメージを負いこちらも吹っ飛ぶ。
「ならばこれだ……!」
 キャリコは牽制のためにナイフを投擲。だが、これは若干外れたかフリッツは鞭による防御すらしない。これはその攻撃以上に目の前に残された兵庫を厄介とみたからか。
「好機!」
 その兵庫は、三春、馨を攻撃する隙を突いて側面……フリッツの死角に入り込み大きく槍を振るう。
「この一撃……喰らえフリッツ!!」
 強打を乗せた攻撃。フリッツは軽く飛び退くが、それでは躱し切れず攻撃が命中。多少のダメージを与えた……が、守りの構えをとっていたからか、常程の効果は出ない。フリッツは反撃のために鞭を振るう。狙いは脚。どちらかといえば態勢を崩すのが狙いか。兵庫は躱すことが出来ず攻撃を受けるも、なんとかこれに耐える。だが、これで隙が生まれた。
(これであの女へ向かう余裕が出来たな)
 目線を向けられたCharlotteは銃を構えつつ射程に捉えるため後退。しかし、果たして当てられるかどうか……
(ここはナイフを使ってエレクトリックショックを使う方が……)
「俺は……」
 その様子を見て動いたのはキャリコだった。手に持つ銃が狙うのはフリッツ……ではなく、先程投げたナイフ。外したのではない、あえて外し地面に突き刺した。全てはこの一瞬、跳弾によりフリッツを狙うためだ。
「俺は生きるために、お前と戦う!」
 銃弾は思惑通りナイフに弾かれフリッツに向かう。そして……
「浅知恵だな」
 キャリコの頭部を撃ち抜いた。フリッツは跳弾による攻撃を予期し、完璧なタイミングで弾き返していた。
フリッツは以前跳弾により大きなダメージを受けたことがあった。その為跳弾に対する警戒は通常のそれより大きい。そして、キャリコがとった武器を地面に刺すことで跳弾の障害物とする。これもまた以前別のハンターが戦闘中行ったことがある。対策は万全だった。
「だが……無駄ではない、か……」
 その言葉を最後に倒れるキャリコ。言葉通り、完全に無駄ではなかった。お陰でCharlotteへ向かうタイミングをフリッツは逸した。そして……
「……来たか」
 空を見上げたフリッツ。その視界には援軍のグリフォンライダー、オットーの姿が見えた。


「僕の助けは、ひょっとしてもういらないかな?」
「貴様……ぬけぬけと!」
 ロルフが援護に駆けつけた時には、完全に戦況はハンターたちに有利なものとなっていた。
 兵庫が攻撃を受け止め、Charlotteが防御障壁による支援。空中からはオットーが攻撃を行う。加えて馨がカードを投げて攻撃。本来であれば問題なく打ち落とせるはずだったが、馨は広角投射によるマテリアルでの軌道変更を活かして鞭による迎撃を躱すことでダメージを与える。これにはフリッツも驚いたようでそちらにも注意力を割かなければいけなくなった。結果、被弾が増える。ゾンビはキャリコが倒れたことで多少数が残り始めたが、それでもフリッツが利用する前にユノがきっちり倒す。ここに、ロルフが機導砲による援護を始める。それでもフリッツが倒れないあたりその耐久力の高さがうかがえる。
「……! オットー、避けろ!」
 だが、そんな状況も長くは続かなかった。上空に新たな敵……小型の剣機が現れる。そこからオットーに対し狙撃が行われ、肩口に命中する。
「あれは……シュナイダー副師団長か……!」
 剣機に跨ったミイラ……レオン・シュナイダーはそのままフリッツの周囲に銃弾をばらまいていく。
「あれに援護されるとは癪だが……この場合致し方ないか」
 そう言いながらフリッツは鞭を最大に伸ばし剣機の足に絡ませる。
「させるか!」
 飛びかかるロルフ。だがその動きは、上空からレオンによる射撃で制される。
「貴様らは良くやった。勝負は預けておくぞ」
「ねぇ、おじさん」
 そのまま空へ逃げようとするフリッツに対し、ユノがこんな質問をぶつけた。本当はロルフが援護に来た時にと考えていたが、ゾンビの処理に多少手間取ってしまったためこのタイミングになった。
「なんで歪虚になったの? まさかロルフお兄さんたちに空じゃ勝てないから……!」
 瞬間、ユノを剣が貫いた。射程内にあった刀……十字朗が持っていたものだ。それを、鞭で思い切り放り投げたのだ。逃げる間もなかった。傷口と口から血を吐き出す。
「馬鹿にするな! 空で戦えるから……グリフォンに乗れるから何だというのだ!!」
 激昂するフリッツ。ここに、この戦いで最も大きな隙が生まれた。
「その腕……いただきます!」
 倒れていた三春が、最後の力を振り絞り疾風剣を使用。肘部分からフリッツの腕を斬り飛ばした。
「貴様ぁぁぁっ!!!」
 痛みと怒りで絶叫するフリッツ。三春を蹴り飛ばしさらに止めを……刺すことはなかった。
 剣機がそのままフリッツを引き上げ上昇していったからだ。上空にいたレオンの判断だろうか。仮に攻撃を仕掛けていたら三春がどうなっていたか分からないが、引き換えに武器を構えた兵庫や馨、Charlotteによる攻撃でフリッツもここで死ぬことになっていただろう。
「逃げたか。援護があっても倒し切れないとは、俺もまだまだ未熟だな」
 気を失った三春を抱え兵庫が呟く。周辺での戦闘も大凡収束に向かっているようだ。
「……だが、この様子だとかなりダメージ与えられたみたいだ」
「それで良しってことに……ならないっすかね?」
 足元にころがった腕が塵となるのを見ながら、Charlotteと馨が言った。
「いや、十分な成果だよ。倒せなかったのは残念だけど……上空からの援軍に対応できなかった僕らにも責任がある」
 ロルフがそう言ったころには、他のグリフォンライダーも集まってきていた。重傷を負ったユノ、ぽえむを始め怪我人はグリフォンに乗って運ばれていく。
 こうして、ブルーネンフーフで行われた戦闘は終わった。強敵であるフリッツにも大きなダメージを与えることが出来た。作戦は成功と言っていいだろう。 

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重体一覧

  • 無邪気にして聡明?
    ユノka0806
  • にゃーにゃーにゃー
    慈姑 ぽえむka3243

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 金色の影
    Charlotte・V・K(ka0468
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • スピードスター
    無限 馨(ka0544
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 無邪気にして聡明?
    ユノ(ka0806
    エルフ|10才|男性|魔術師
  • にゃーにゃーにゃー
    慈姑 ぽえむ(ka3243
    人間(蒼)|13才|女性|聖導士
  • 刀工
    辻・十字朗(ka4739
    人間(蒼)|23才|男性|舞刀士
  • 戦場の舞刀姫
    麗奈 三春(ka4744
    人間(紅)|27才|女性|舞刀士
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/19 21:07:48
アイコン 相談卓
麗奈 三春(ka4744
人間(クリムゾンウェスト)|27才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2015/07/22 21:35:38