• 聖呪

【聖呪】パラダイムシフト

マスター:藤山なないろ

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
6日
締切
2015/07/29 19:00
完成日
2015/08/11 04:12

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●王国の決定

「ゴブリンが、統一の動きを見せ始めたそうです」
 円卓の間でシスティーナ・グラハムが告げ、そしてセドリック大司教が報告書を要約して詳細を語るや、集まった貴族や首脳陣は難しい顔をして深く息を吐いた。
「つまり――先日までのゴブリン騒動は、その大半が荒野から逃げてきたゴブリンの大移動である、と」
 カフェ・W・ルサスールが確かめるように訊く。最近頻発しているゴブリンの強襲は王国の北方三州が中心であるだけに、北方に領地を持つ貴族も多く招集されていた。
「うむ。そして通常のゴブリンを放逐したのが、異形のゴブリン集団だ」
「異形?」
「異形、あるいは亜種と言おうか。大量のマテリアルの影響を受けた可能性があるが、元凶は不明。この一派が荒野を平定しつつある」
 大司教が促し、システィーナが資料を手に取る。そこには、これまでのゴブリンには見られなかった特殊な――まるで歪虚のような戦闘技術を用い知恵を巡らせて戦うゴブリン達の様子が克明に描かれている。
「わたくし達は彼らを――討伐しなければなりません。何故ならば彼らがわたくし達の領域を侵すことは明白だからです」
 互いに不干渉を貫くのなら。そうすればこんなことをする必要はないのに。
 システィーナは僅かに沈む心を奮い立たせ、薄い胸を張る。
「討伐隊を、編成します。ご協力、いただけますか?」
「我が国が下賤の者に侵略されるなどあってはならんこと。つまらん外征になぞ手を貸す道理はないが、此度においてはあらゆる協力を約束致しましょう」
「……、ありがとうございます」
 痛烈な批判と賛意の入り混じった大公マーロウの言にシスティーナは頭を下げる。大公が参戦するなら、と追従する貴族達の姿がちらと見えた。
「北方の皆さま。わたくしは絶対に皆さまを見捨てません。必ずや亜種ゴブリンを討伐します。ですからお願いします。今しばらく、耐えてください」

 王国西部のグリム領領主代行として会議の末席に居た地方貴族のユエル・グリムゲーテはある人物を見つめていた。様々な思惑の針山に立ちながらも、真っ直ぐ前を見据えている少女を。
 会議で発言できずとも、彼女のために尽くす心に揺らぎはない。
 ──もう、悩まないと決めた。完璧でなくたっていい。私は、私の信じた道をがむしゃらに進むだけだ。

●少女が選んだ道

 円卓会議の終了後、すぐにグリム領へ帰還したユエルは、現在実質的に領主として領地を治める母エレミアの執務室を訪れた。
「お帰りなさい、私のユエル。会議への出席、ご苦労でした」
「とんでもありません。今日は……お母様にご報告があります」
 少女の発言に一切の迷いはない。その様子に少々戸惑いを覚えながらも、エレミアは執務室のソファへ少女を促し、自身も腰を下ろした。少女は一呼吸し、ややあって──
「私は、覚醒者になりました」
 きっぱりと、告げた。
 見開かれるエレミアの目は、ただただ驚きの色に満ちている。
「どう、やって……」
「あ、ええと……北の森でゴブリンに襲われた際、恐らくは森の聖霊様が力を貸してくださったのです」
 なぜ、どうして。それを聞かれるとばかり思っていたユエルは、想定外の問いに面食らった。
「……私を叱らないのですか?」
 夏の暑さも今ほど苛烈でなかった頃、ハンター諸氏の力を借りてゴブリンの潜む森から少女が救出された事件があったのだ。恐らく、あの時の事だろうとエレミアは理解した。
「そんなことが……。でも、そう。“あの森”で」
 ──これは、“運命”なのかもしれない。私が何をしても、この子はきっと……。
 エレミアが思考を遮って娘へ向き直ると、自分より少し目線が高いことに気付かされた。娘はいつのまにか成長し、母の背を越していたのだろう。子供はいつまでも、子供のまま──“あの頃”の娘の姿を今なお重ね続け、現実に向き合えないのは自分だったのではないだろうか。今は亡きゲイルに笑われた気がする。
「……貴方は、その力で何を成したいのですか? 貴方には心安らかな日々の幸せを手にしてほしい。その願いは今も変わりません」
 母の不安な面持ちは変わらない。その表情に苦しくなる胸を制して、息を吸った。
「私は大切なものを守りたいのです。領も、家族も、友も、全て。私が私の意思で、そう願っているのです」
 ユエルはそこまで告げると目を伏せ、先程までの気勢はどこへやら、自分を戒めるように呟く。
「私は……ひどく欲深い生き物、ですね」
 しばしの沈黙。それを和らげるように、エレミアは複雑そうに微笑んだ。
「貴方がお父様にそっくりなのは、瞳だけではなかったのですね」

●分岐した道の先で

 突如勃発したゴブリンの大軍勢強襲の中、町中をかける伝令から、少女は“ある名前”を耳にした。
「北部より空襲! ゴブリンに混ざって一体の人型も確認! 黒大公配下のクラベルです!!」
「え……?」
 少女がこの地へ来たのは、円卓会議で採択された『北部を侵略するゴブリン勢に対し、貴族も含めた討伐隊を編成。これをもって対処に当たる』ためだった。黒大公の──しかも父を殺害した歪虚に遭遇することになるなどと夢にも思わなかった。町中の無線で情報が飛び回る中、少女は咄嗟に走り出していた。



「……ッ」
 突如として、町全体を覆いつくした光が、今まさに町へと侵入を試みる一体の歪虚を強烈に拒んだ。
「町に入れない。……何これ、結界?」
 それは、赤々とした髪を風になびかせる少女。
 それは、昨秋王都を蹂躙し、多くの命を無残に奪い去った歪虚。
 あの大戦を生き抜いたものなら、忘れもしない、見紛えもしないだろう。
「小賢しい。これも“あいつ”の言ってた王国の術の一つかしら」
 歪虚は町から少し離れた位置へ引き、状況整理しながら町を監視していた。そこへ──一人の人間の少女が、町の外へ出てきたことに気付く。
「クラベル……七眷属アイテルカイトの将、黒大公ベリアルの配下」
 呼ばれた少女は眉を潜め、
「……なあに?」
 胡乱げに応える。少女は漸く認識した──彼女が“クラベル”だと。
「貴女に殺されたゲイル・グリムゲーテ侯爵が長子、ユエルです。お初にお目にかかります」
「覚えがないわ。覚えるつもりもないけれど。弔い合戦? くだらない」
 嗜虐的な視線がユエルの全身を嘗め回している。だが、対する少女は“心”で一歩も引けをとらない。
「否定も肯定も致しませんが、幸い私と国の目的は合致しています。……貴女は、ここで倒す」
 父が成したことは、必ず私も成してみせる──宣言を受け、歪虚の顔に感情が滲む。
「面倒事は嫌いよ。でも幸いね。私も手持無沙汰だったの」
「それは良かった」
 ユエルは後方から迫る仲間たちの気配を感じ──覚醒。
 全身を駆け巡るマテリアル。
 今まで抑圧されてきた全てを吹き飛ばすような、力の奔流に心を任せる。

 これが、ありのままの私。

「……速やかに黙らせて差し上げます」

リプレイ本文

●廻る運命

「北部より空襲! ゴブリンに混ざって一体の人型も確認! 黒大公配下のクラベルです!!」
 町中を飛び交う悲鳴や怒号。それらを縫うようにして届く伝令がハンターたちの耳を打つ。彼らは、目撃情報に従って混乱するオーレフェルトの町を迷うことなく走りだした。
 惑う人々の間を通り、出陣する兵の脇を抜け、文月 弥勒(ka0300)が真っ先に“その存在”を捉えた。
「ゴブリンと混ざって降下したなら、あいつが指揮官か」
 門の先に開けた平原。そこには、血に濡れたような真紅の髪をなびかせる少女がいた。
 見覚えのある姿。過去に対峙した者なら、誰もがその名を呼び起こしただろう。
「クラベル……!」
 苦々しい色を帯びた誠堂 匠(ka2876)の声。拳はきつく握りしめられ、皮膚深くに爪が食い込んでゆく。否が応でも匠の記憶に刻まれた光景が鮮明に想起され、手にじわりと滲む汗が否定しようもない“現実”を突き付けてくる。
「……この状況は、あの時と」
 それは、王国を挙げてのクラベル追撃戦。そしてあの時……
 ──目の前で、ユエルさんの父親を“見殺しにした”。
 呪いのように絡みつく言霊。
 けれど、青年の暗い思考を妨げるように、ヴァルナ=エリゴス(ka2651)が疑問を口にする。
「ベリアルの側近が、何故ここに?」
 この場にクラベルが来るなど想定外の事態だ。だが、今その答えが出るとは到底思えない。
「ま、何にせよ今のうちに回り込むぜ」
 がさつそうに髪をかき、弥勒が煌剣の束に触れる。
 少年が顎で示した先で、ユエルとクラベルが“接触を開始した”のが解った。
「……確かに、今は考えている場合ではありませんね」
 弥勒に応じるヴァルナ。腰を深く落とし、少女は言う。
「この街を守る為にも退けるまでです」
 周囲のハンターらも促されるように前を向き、構える。深い息をついて、匠も手綱を握る手に力を込めた。
「以前のようには、させない」
 誓って、彼らは走り出した。

●傲慢、故の傲慢

 真紅のカウルに覆われたエンジンから唸るように響く音。それが滑り込むようにクラベルとユエルの会話を強制遮断する。割って入ったのは、魔導バイクに乗ったエリス・ブーリャ(ka3419)だった。バイクの移動力で瞬く間に表れたエリスは、ユエルの目の前に位置取ると突如クラベルを挑発し始めた。
「ここにきた理由は何かなー? 応えないなら力尽くで聞かせてもらうよ」
 冷めた目で自分を見つめながら溜息をつくクラベルに、エリスはなおも続ける。
「この時期にこの場所に単体で来た以上“制圧”じゃあないはずだ」
「早計ね。なぜそう思うのかしら」
「なぜ? だって……」
「“出来ないとでも思っている”の? 貴女、酷く無知よ」
 仕方がないから、教えてあげるわ──刹那、クラベルが動いた。
 その時ちょうど、匠はクラベルの後ろを、弥勒はそのサイドを確保し、メル・ミストラル(ka1512)もあと少しで後ろに回り切るところだった。クローディオ・シャール(ka0030)はと言えば、クラベルの脅威を本能的に察した乗用馬が怯えて動くことが叶わず、下馬したばかり。
 ハンターたちにとって“この展開は想定通りのものだった”だろうか?
 エリスめがけて恐ろしい速度で駆ける赤髪の少女。それを牽制するかのように、門の前、ハンターたちの最も後方に位置していた静架(ka0387)が和弓を構え、弦を引き絞る。青空のような弓身から放たれる風のように鋭い一矢は、彼女を確実に捉えたはずだが、しかし。
「煩い」
 ヒュッという風を切るような音と同時、矢は真っ二つに折れて地に落ちた。町の人々が見れば、何が起こったのか全く分からない光景だっただろう。
「なるほど、状態は良いようですね。しかし殺さねば戦友が、いえ……自分がやられる」
 意識を逸らすことも歩みを止めることも叶わなかったが、冷静に判断し、静架は再び矢筒へと手を伸ばす。
「皆さん、クラベル含めた高位の傲慢には他者を操る強制の力があります。だから、己を見失わないでください」
 クラベルの猛進に対し、ヴァルナが叫びを上げる。周囲のグリム騎士団員が応と声を上げ、彼らもハンターに続くように布陣。其々に持ち場へ向かう覚醒者たちのなか、ユエルの隣にエステル・L・V・W(ka0548)が駆け付けた。
「ねえユエル、思いっきりやるのよ」
 少女の鮮やかな長い髪がふわりと揺れる。お互い視線を交わすことはしなかったが、存在を感じ合うことは出来る。今集中すべきは、襲いかからんとする眼前の敵だ。
「はい。私は……」
 しかしユエルの応答は、歪虚の声に重なって消えた。
「さぁ、お馬鹿さんに授業を始めるわ」



「来た来た!」
 エリスが自身の狙い通りクラベルの誘引に成功。結果、両雄の戦闘地点は町から“ほど近い”場所になってしまったのだが、“今は”関係ないのだろう。
「前回はロクに相手にされなかったから今度は思う存分邪魔させてもらうよ」
 ──そして、衝突。放たれた鞭は生物のように気ままにしなり、そして稲妻の如き速さでエリスの両脚を薙ぎ払うように叩きつけられる。その一撃は余りに重く、エリスの纏っていたローブは大きく裂け、ぱくりとあいた両大腿部の裂傷から多量の血液が噴き出した。
 もとより、この戦いが始まる前からエリスは既に多少の体力を消耗しており、万全の状態ではなかった。そんな彼女にとってこの一撃は“相当の痛手”だったと言える。あと一撃もらえば死に至れることは間違いない。だが、にやりと口の端を上げて、エリスは笑んだ。
 彼女が握りしめていた純白の杖を介し、保有するマテリアルが見る間にエネルギーへと変換されてゆく。瞬く間に渦を巻くエネルギーが集約し、そして……
「ココにきた以上ただでは帰さないぜ!」
 放たれる機導砲。一条の光が、クラベルを一直線に捉える。
「温いわ」
 しかし、少女の表皮を焼き焦がすに留まって、光のエネルギーは霧散。それでもこのタイミングに重ねるようにして放たれた矢が、クラベルの体に突き立ってゆく。
「何を待っているのか知りませんが……手持ち無沙汰というならば自分達と遊んで頂きましょう」
 射手は静架と、グリム騎士団員たち。矢は雨のように降り注ぎ、歪虚を牽制し、時に穿ってゆく。だがそんなクラベルへと畳みかけられたのはまたも“挑発”だった。
「今日はお一人ですか?」
 クラベルの注意が間近いエリスに向いている中、ヴァルナが追い打ちのように挑発を重ねる。クラベルが初手から正面班へ向けて移動を開始した為に、後衛たちはそれを追うべくまだ布陣を完了出来ていないのだ。これもその時間稼ぎだろうか。
 だが先ほどから余りに“煩い”状況に、確実に溜まってゆくフラストレーション。クラベルがぎろりとヴァルナへ視線をよこすと、対する少女はにこりと笑う。
「人間を唆してまで逃げたと聞いたもので、配下を潜ませているのではないかと思いまして」
「意味がわからないわ。挑発するならもう少し頭を使って」
 見事にヴァルナの挑発に応じたクラベル。そこへ向けて、突き出されたのはエステルの槍の一撃。
「頭が高いというものだわ、たかが歪虚というものが!」
 眼前に伸びてくる円錐状の穂先。クラベルは間一髪のところで避けたが、胴部を掠めた槍の衝撃は不自然なほどに強く、少女は俄かによろめいて後方へと押しやられる。
「たかが歪虚」
 苛立つクラベルが手首を軽くスナップさせれば、鞭の先は面白いほどに踊る。瞬間、攻撃直後のエステルの首に鞭が幾重にも巻き付いた。
「……ッ!!」
 余りの力。余りの圧迫感。途方もない力で呼吸を遮られた少女の顔は徐々に赤く染まってゆく。
 ──それは、あの時の光景に、似て。
「“たかがニンゲン”に私が付き合ってあげる事を光栄に思いなさい」
 振り上げた鞭に従って、思いのほか容易にエステルの体は宙を舞う。絞められた首はそのまま、少女は頭の先から大地に叩きつけられる──はずだった。
「鞭を改良したのか」
 その流れは、寸での処で“何者かに強制的に解除させられた”。驚きに目を見開くクラベルをよそに、鞭は突然の衝撃からの微振動に緩み、エステルは頂点位置約4mから平地に落下。致命傷には至らなかったが、倒れ伏す少女へとユエルがすかさずヒールを唱える。
「……以前、“誰かさん”に斬られたものだから」 
 くるりと首を回し、肩越しに“気配”を睨む。驚くほどに間近い距離。睨み合う少女は眼前のニンゲンの瞳に、何かを思い出したようだった。
「あなた、あの時のニンゲンね?」
 それは、匠だった。
 少なからずクラベルに動揺が見えたのは間違いない。二人の相対する間を好機と、ハンターたちは一斉攻撃へ打って出ようとしていた。



 エリスの光がクラベルの背を焼き、それを追いかけるように放たれた静架の矢が光に焦がされた部位に突き立つ。ヴァルナ、エステルがユエルの脇に立つように構え、自らにかけ終えた術をクローディオは同様にユエルへと施す。
「一応これをかけておくが、決して彼女の言葉に屈するな」
「はい。クローディオさんも、お気をつけて」
 じりじりとクラベルを攻めるハンターたち。その中で匠に注意をひかれて彼女の“正面”から相対することになったメルが一度だけ鈴をシャンと鳴らすと、そこから黒い影が生まれ出る。強力なマテリアルの集合体──それを祈りと共に放つとシャドウブリットがクラベルめがけて放たれた。
 だがクラベルは黒塊を空いた方の手で受けとめたかと思うと、
「足りないわ」
 目の前でそれを握り潰した。塊から飛び散る影がエネルギーの滓として大気に溶けて消えゆく中、隙を逃さず二振りの刃が同時に少女に襲いかかる。
「……いいぜ、満足するまで付き合ってやる」
 一つは、鞭を持つ右手側へ回り込んだ弥勒。少年の振り下ろす刃が少女を切り裂くまであと僅か。だが……
「足りないの。こんな“威力”じゃ、少しも足りない」
 その刃は少女の鞭にあしらわれるようにして弾かれた。しかしそれは同時攻撃としては成功の部類だ。なぜなら、直後もう一方の攻撃手である匠の刃がクラベルの胴部を何なく切り裂いたからだ。思った以上の一撃に顔をしかめるクラベルをよそに、弥勒は唐突にこんなことを告げた。
「なぁ、俺は人間だ。だから生き物を殺して食うし、資源を使う。全部生きる為だ」
 あまりに脈絡がない話に、クラベルは俄かに呆気にとられたようだった。
「もしあのときの問いが俺のと等価だと言うなら、歪虚は生きる事が目的の自然の生き物と変わらない」
「そう……蜜のように甘く美しいお話ね。苛立たしい」
 問答無用で鞭を構えるクラベルだが、それを静架や騎士たちの矢が、そしてエリスの機導砲が遮る。隙が生じた歪虚へと追い打ちをかけると同時、弥勒は憚らずこう言い切った。
「生きたいというその意思があるなら、俺たちは共存できる」
 驚くべき発言。その“傲慢”な言い草に、クラベルは思わず吹き出してしまう。
「共存したいの? でもね、残念。“させてあげない”」
 クラベルは弥勒の言い分を戯言のように扱うが、食い下がるように弥勒は声を張る。
「はぐらかすな、ちゃんと答えろ。いいか、もう一度聞く」
 続くメルのシャドウブリットをもう一度、受けとめて握り潰す。そんなクラベルへ再びルクス・ソリスを構えると、少年は上段から一気に振り下ろした。
「歪虚って何だ」
 仄白い刃が空を裂き、少女に接触する直前……またも“弾かれた”。それはまるで、弥勒の言葉を“拒絶”するかのような仕草にも見える。
「歪虚が何かなんて知らないし、どうだっていいわ」
 そして弾かれた瞬間にがら空きになった弥勒の胴へと、渾身の力で鞭を叩きつけた。衝撃に吹き飛ぶ少年へ少女の冷たい声が落ちてくる。
「私は私。否定するが故にここに在る」
「否定?」
「この目に映る全ての世界を」
「なるほど、お前が先の大戦で潰えた歪虚の片割れか」
 突如、貴族然とした落ち着きのある声が戦場を揺らす。声の主はクローディオだった。青年はその挑発の影で、密やかに弥勒へと癒しの術を施し始めている。だが青年の挑発に一向にクラベルは振り向こうとしない。それでももう一度注意を引こうと放たれたクローディオの挑発は、
「寂しくなって自ら首を差し出しに来たのか? 殊勝な心掛けだな」
 直後、重ねるように飛んできた別の挑発にかき消された。
「妹はたいそうお喋りだったって?」
 ぴくりと反応を示し、漸く振り向いたクラベル。少女は先ほどまでと“明らかに様子が違う”。その様子は不気味なほど静かで。
「何ならエルちゃんが妹の代わりをやってやろうか、減らず口なら負けないよっ!」
 どうやら“それ”が、彼女にとっての引金となったようだった。

 突如、目の前で閃いた匠の“刀”を裕にかわして踏み台にすると、クラベルはぽんと青年を頭上を飛び越えた。くるりと身を翻して少女は青年の後ろへ着地。振り返った彼女は、全てのハンターと、その後ろに控える町を見渡して、酷く冷たい目をして笑う。
「貴方達、本当に命が惜しくないのね。私の気を引きたいのはわかるけれど、あちこちで五月蠅くされたらたまらないわ」
 少女の瞳の奥底に強烈な怒りを感じとったのは、間近にいたメル。
「皆さん、注意してください!!」
 どう見ても様子がおかしい。だが──“それ”を妨げることは出来ない。

『“今すぐ黙りなさい。永遠に”』

 少女から発せられた声は、凶悪な負のマテリアルとなって瞬く間に伝播していく。それは物理的な何かで止められるようなものではない。抗い難い“心への命令”。
 エリスが、静架が、ヴァルナが、クローディオが、メルが、匠が、レジストを施されていたユエルが、それに打ち勝つことができた。だが、しかし“そうでない者もいた”。
 俊敏で行動の素早いエリス、ヴァルナは、すぐさまクラベルへと向き直って攻撃を再開し、静架も再び矢を番えている。つまり、“そうでない者が行動を起こすまで”に彼らを止める行為はなかった。そうとなれば、“強制”は何の妨げもなく、“執行”されることとなる。
 それは、“自害の強制”。
 弥勒は、自らの首に自身の背丈より長大な刃を押し当て、何の迷いもなく切り裂いた。鈍い血が飛沫を上げ、直後、エステルも槍の穂先を首と頭部の間にある全身鎧の継ぎ目へと押し当て、自ら突き立てた。
 あれだけ自尊心に溢れたエステルが、自らに刃を突き立てて果てるなど本人の心は如何程の怒りに震えただろう。だが、彼女らはその行為を“当然のこと”と想い、“やり遂げる以外の選択肢などまるで頭になかった”のだ。
「────ッ!!!」
 ユエルの声にならない叫びが、戦場に響く。2人だけではない。彼女の率いていた騎士たちの約半数も、同様に少女の目の前で“自害”を遂げてしまったのだ。
「今まで与えてあげていた慈悲に気づいてもいなかったのね。本当に度し難いわ、ニンゲンという名の愚か者。『二度同じ手は食わない』? ふふっ、奇遇ね、『私もよ』」
 くすくすと響く笑い声の中、5人の覚醒者がその場に崩れ落ちた。
「まずい、すぐに回復を……ユエル、エステルを頼む」
 すぐさまクローディオは状況を把握し、ユエルに指示を飛ばすと自らは離れた位置に居る弥勒へと祈りを捧げる。
 ──ユエルを守ることは出来たが、全ては守り遂せなかったか。
 自らにクラベルの注意をひきつけることが出来ていれば、それも変わったのかもしれない。現に青年はここまで回復と支援とに注力していたため、『クラベルにとって実害がない相手』とみなされているのか一度も攻撃を受けていないのだ。クローディオの胸中を満たす、苦々しい想い。だが、今は目の前の仲間とこの戦場を生き抜くことに意識を凝らした。
 他方、ユエルはエステルに突き立ったままの槍を引き抜き、同時に傷口を自らの手で懸命に抑えると必死に患部へ意識を集中しヒールを施してゆく。
「エステルさん! 目を開けてください、エステル!!」
 周囲を見渡せば、クローディオが弥勒の傷を治療しているところが見える。弥勒が血を吐き噎せ込む様子に、“生きている”ことを確認すると、少女は改めて守るべき友へと視線を落とした。
 これで駄目なら、目の前でエステルを──友を失うことになる。けれど、その時。
「ユ、エル……泣いて、るの?」
 エステルの瞳にうっすらと光が差し込んだ。
「笑って、泣いて、怒って、悲しんで……それを、糧にするのは、大事。でも……」
「喋らないで! まだ、血が止まらないの。お願いだから」
 エステルには少女が泣いているように見えたのだろう。少女が自分の血に塗れた手でユエルの頬を拭うようにして触れれば、ユエルの頬は次第に少女の血で真っ赤に染まってゆく。
「……人は、いつだって、歪虚に……なる。わたくし、だって、貴女……だって」
 ぼんやりとしたエステルの手を、ユエルはそっと握りしめる。弱々しい手が、弱々しく握り返すけれど、彼女の言葉は彼女らしい強さをもって発せられている。その事にどこかユエルは安心感を得ていた。
「だから……その感情を、理性という、手綱で、乗り……こなし……」
 エステルは再び思考を薄靄に覆われるようにぼんやり瞼を閉ざしてゆく。けれど焦ることはない。少女は確かに規則的な鼓動を繰り返し始めている。もう、大丈夫だろう。友の体をそっと横たえると、ユエルは迷いなく立ち上がった。エステルが“少女の異変”に気がついたのは、夢か現か、解らないまま。

 倒れた覚醒者と、それを何とか引き戻そうと治療に腐心する聖導士たち。戦線は、半壊したと言ってもいい。だが、今クラベルをおさえなければ被害は拡大する一方。
 ──そんなハンターたちを嘲笑うかのように、歪虚が再び攻勢に転じた。
「そうね、次は一番煩い貴女にしましょう」
 エリスへの殺害宣言。既に切り裂かれていた脚の傷は、多少のヒールでは全快に至れない。
 だからと言って逃げるでもなく、エリスは再びエネルギーを集約させ始めるが──間に合わない。「煩い」と言われたその喉を叩き斬られるように鞭で払われ、エリスは大きく後方に吹き飛び、意識を手放した。
 状況は、圧倒的に不利。
 恐らくクラベルを撃退することは相当難しいだろう。だが、その時メルがあることに気がついた。
「……クラベルはどうして、すぐ町を攻めずにあんな所に留まってたんでしょう?」
 今でこそ、町の近くに彼女を引き寄せてしまったけれど、傲慢の歪虚クラベルが町への侵攻を躊躇していたように見えたこと、それ自体が奇妙だと思える。
 ──そういえば先ほど何かが光ったような。……もしかして、あれが原因?
 戦闘中のクラベルはこれと言って町へ向かう素振りもないが、改めて目的が不明瞭である点がどうにも心にしこりを残す。だが、“挑戦”を試みるにも今現在クラベルを相手に立ちまわれる覚醒者は自分以外に匠とヴァルナ、そして遠くから射撃を試みる静架と騎士たちのみ。今は匠とヴァルナがスイッチしながら持ちこたえているが、このままでは遠くない未来、確実に“全滅”してしまう──メルは、覚悟を決めると、匠へとその場を託してバイクを全力で疾走させた。



「貴方には効かなかったのね。つまらない。凛々しい首を刀で切り落とす様が見たかったわ」
 匠とヴァルナ、2名の覚醒者は降り注ぐ矢の雨に生じた隙を突くように、同時攻撃を繰り出していた。
 だが、ヴァルナの大剣は鞭の先で容易く弾かれ、空いた方の手が匠の刃を握るようにして受けとめる。これでは埒が明かない──そう見えた。しかし、少女の掌から明白に血が溢れ出しているのを匠は見逃さなかった。
「以前、“誰”と戦っているのか、と聞いたな」
「……覚えがないわ」
 握りとめられた振動刀から、駆動音がいつもより甲高く鳴り響いている。刃はそのままに、匠は咄嗟にもう一方の手で銃を抜くと、迷うことなく引金を引いた。
「俺は、お前達歪虚が嫌いだよ」
 瞬間、吠えたてるように射出された弾丸を、クラベルは驚異的な身のこなしで回避。
「シンプルね。私も同意見よ」
 そして匠の腕へ目がけ、少女は鞭を嗾けた。衝撃に態勢を崩した匠は、心もぐらつかせたのだろうか。
「だが、それ以上に――」
 途方もない想いを、苦しげに吐き出した。
「無力な俺が、憎いんだ」
 意図せず零してしまった、心底に隠していた想い。
 ──だから、お前達を倒し、人を、守ってみせる。
 それでも匠は、自分なりに闇を乗り越えその先へと腕を伸ばそうとしている。それなのに。
「“誰”と戦っているのか、ね。ふふ、あはは。そう、少しだけ面白いわ、貴方」
 クラベルは青年の瞳に宿る暗い淀みに改めて気付いたのか、にんまりとした笑みを浮かべる。
「貴方、私達が嫌いなら“堕ちないように”、気をつけるのね」
「……どう言う意味だ」
 クラベルが振りかぶった鞭。対抗するように刀を振り抜く青年が耳にした言葉は──
「“貴方、私達にとても近い”もの。なんなら“契約”してあげてもいいわ」
「ふざけるな……!」
 そうして、衝撃と共に体に刻みつけられた。
 ──その時。
「あの町も襲えないなんて、ベリアルやあの世のフラベルが聞いたら何と言うか♪」
 一か八か、メルがバイクで乗り付けた町の門の前から高らかに言い放つ。しかし、クラベルへ告げた直後に、メルはある光景を目の当たりにしてしまう。
「……まさか、町の中まで!?」
 挑発を受けてメルに視線を向けていたクラベルには、突然顔色を変えたメルが“一体何を見たのか”察しがついたようだった。面白そうに口の端を上げると、
「町の中に何が見えたの? ねぇ、言ってみて?」
 嗜虐的な視線で、クラベルは問う。
 メルは町へとクラベルを誘引するつもりでいたが、“それは絶対にしてはならない”と漸く気がついた。もとより正面班は初手でクラベルを挑発して町からほど近い場所で戦闘をしていたのだ。これ以上近付けて、そしてもう一度“あれ”が起これば──
「町の中……ひょっとして“自死したニンゲンが、山になっている”んじゃない?」
 嘲笑を含む声色。周囲のハンターたちが一斉に町へ視線を向ける。
「そんな、山になんて……」
「そう。“結界”とはいえ多少の力は通るのね。ありがとう、いいことを教えてくれて」
 反論を示そうとするメルの様子に、ハンターたちも終ぞ気がついた。クラベルをこれ以上町に近付けてはならない──その本当の意味を。
 次の瞬間、戦場のハンターたちから最後の総攻撃が浴びせられることとなった。
「なせるべき事を為すために、参ります」
 静架が照準を合わせるのは、的として良く目立つ真っ赤な髪の少女。風の音を聞きながら心を研ぎ澄ませ、最大まで引き絞った弦を、一気に解き放つ。
「この一矢は我が心の牙……敵を貫き、穿つ……物っ」
 まるで青年の瞳のように冷気を纏って放たれた矢は、躊躇なく空を裂いて進み、そして
「な……ッ」
 少女の体に接触した瞬間、凍りつくような音を立てる。クラベルの脚が、少女の意思に反し鈍い動きを返す。今の一撃は、一体なんだというのだろう。その隙へ迫ったのは、ヴァルナ。先のメルの“発見”を直ちに理解した少女は、即座に“守りを捨てた”。今解っていることは、これ以上、1秒たりともこの少女をここに居させてはならないということ。ならばこそ、やるべきことは明白だった。
「これが、最後の一撃……!」
 クラベルの懐へと入り込む勢いに乗せ、青緑色の長大な刃を渾身の力で突き出す──それを、歪虚の少女は回避することが叶わなかった。腹部へと叩きつけられる切っ先に大きくよろめく少女だが、しかしそれを耐えきったところに待ち受けていたのは、 
「そう、何度も……同じ技が、効くかよ」
 ぎりぎりのところで心身を保って戦線復帰を果たした弥勒と、そして……
「貴女だけは、絶対に……」
 エステルを守るように立ち、その剣の先に“光”を集約させるユエルだった。
「許さない!!」
 放たれた光はクラベルに受けとめられ、呆気なく握り潰された。けれど、その時既に弥勒は走り込み、その勢いのままに剣を残った力の全てで振りかぶっていた。
「クラベルーーーッ!!」
 陽の光すら斬り伏せるように大きく閃く渾身の一太刀。先に炸裂した静架の一撃が、少女の回避の脚を引っ張った。敢え無く叩きつけられた弥勒の刃に、少女の小さな体は無様に宙を舞うこととなった。

 ──が、しかし。傲慢故の、傲慢。クラベルは未だ余裕に満ちた表情で、相対するハンターたちを見渡した。
 今回クラベルは“まともに力を出していなかった”のだから、それも当然のことだろう。
 対するハンターたちは、既に半壊状態。少女としては全員殺して行ってもいいが、“既にある程度の目的を果たせている”ことが彼女の自尊心を満たしている。
「まぁ、いいわ。手ごたえのない連中だったけれど、見物の役にはたったから」
 意地悪そうな顔をすると、クラベルはそのまま身を翻す。遂に訪れた、撤退の予兆。
 ハンターたちが戦闘終了の合図を見送ろうとする中、
「おい、待て!!」
 たった一人、弥勒がそれに追い縋ろうとした。だが、少年の馬は戦いの直前に騎士へと譲っており、その弓兵は離れた場所から射撃を繰り返していたのだ。馬を取り戻して追いかけることができるのか──この怪我をおして?
 少年は力の限りに駆けたが、相手は既に遠い平原の彼方。
「いいか、生きていたいなら大きな戦場には出るな!」
 その声が、クラベルに届いたのかは解らないまま、黒大公配下の少女は王国北部から姿を消して行った。

●答えのない問い

 未だ動くことが出来ないエステルとエリスを静架とヴァルナが抱え、なんとか自らの体を引きずりながら歩く弥勒を見守りながら、治療手としてクローディオとメルが共に町中の救護施設へと向かってゆく。
 最後に残ったのは、最後まで守られたユエルと、最後までクラベルを圧倒し続けた匠、そして生き残った5人のグリム騎士たちだった。
 ユエルは呼び寄せた馬車の荷台へと死んだ3人の騎士の遺体を運びこむと、手を重ね合わせ、目を閉じる。祈りに言葉はなく、少女はしばらくの間静かにそうしていた。
「解りました。皆にも伝えておきます」
 その間、グリム騎士団の副長を名乗る男と匠が話をつけると、遺体を乗せた馬車は一足早く騎士たちを乗せてグリム領へと向かってゆく。その後ろ姿を見送りながら、すぐ傍に控える青年へ少女はぽつりと呟いた。
「ごめんなさい。私、匠さんとクラベルの話を……聞いてしまいました」
 匠は意図が解らず、少女の言葉を黙って促す。
「なぜ、無力だなんて仰ったんですか?」
 どくりと匠の心臓が音を立てる。無力の理由──亀裂が入ったかのような、痛みにも似た苦みが広がってゆく。
「間違いなく、あなたは私が今まで出会ったハンターの中で、誰より“強い”方です」
「そんなはずはないよ。……俺は、別に」
 言い淀む匠。その胸中に去来する思いは、何であっただろう。それを知らず、少女はいつもより饒舌に想いを吐露してゆく。
「あなたの言葉を聞いてから、すごく苦しいんです。だって、あなたは私に似てる。私は歪虚が嫌い。死ぬほど嫌い。でも……それ以上に、無力な私が、一番憎い」
 ぱたりと、少女の瞳から大粒の涙が落ちる。
「匠さんのように強くなっても、この途方もない無力感は、どうにもならないの……?」
「……それは……」
 そこまで零した後、少女は青年の表情に漸く気付いた。
  きっと“マテリアルの奔流に心を委ねた”後だから、いつもより開放的になりすぎて、思いがけず“汚い心”を晒してしまったのだろうと少女は自らを恥じる。
「ごめんなさい。今の話は、忘れてください……」
 青年は、伝えるべき答えに苦慮し、思わず唇を閉ざしていた。

「これが、クラベルの力……」
 メルたちは、先ほど門の外から目にしていた光景を、町に踏み入って改めて確認していた。
 首から血を流して死んだ男のその手に、鉈が握られている。父親に目の前で首を切って死なれたのだろうか。男に覆い被さるようにして泣き叫ぶ子供が一人。周囲を見渡せば、他にも幾人か“自害”したように見える町人の姿があった。
 メルは男の遺体にそっと寄り添い、祈りを捧げ始める。子供の涙が止むことはないが、それでも戦場となったこの町で、父の死を悼んでくれる存在はその子の気休めになったのかもしれない。
「町の門から多少離れたところまで、影響があったようです」
 周辺を調査し終えたのか、静架がヴァルナの元へ戻ってきてそう告げる。
「とはいえ、覚醒者の犠牲者は1人もいませんでした。町の外では覚醒者である私達に被害が出たことは間違いないのですが……」
「つまり、町の中では“威力が弱まった”、と。それなら、効果範囲も弱まった可能性がありますね」
 静架の確信に、頷くヴァルナ。そこへ、メルとクローディオが治療を終えて施設から出てきたところに遭遇する。皆にここまでに得た情報を共有すると、クローディオが思い出したように呟く。
「……そういえば、奴はあの時"結界"と、口にしていたな」
「クラベルと戦うより前に、町の外周を覆うように光が発せられた──あれと、何か関係があるのでしょうか」
 メルが町をぐるりと見渡す。目に見えるものもなく、町の出入りで何かを感じることもなかった。となれば、"歪虚"や"負のマテリアル"に何らか影響を及ぼすものなのだろうか?
「そうとなれば、クラベルの本当の目的は……“結界”、だったのか」
 だが、クローディオの確信めいた言葉に応じられる者は、ここには居なかった。

 こうして、オーレフェルトは守られた。多少の犠牲を払いながら──。

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  • フューネラルナイト
    クローディオ・シャール(ka0030
    人間(紅)|30才|男性|聖導士
  • 壁掛けの狐面
    文月 弥勒(ka0300
    人間(蒼)|16才|男性|闘狩人
  • アークシューター
    静架(ka0387
    人間(蒼)|19才|男性|猟撃士
  • その名は
    エステル・L・V・W(ka0548
    人間(紅)|15才|女性|霊闘士

  • メル・ミストラル(ka1512
    人間(蒼)|21才|女性|聖導士
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    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 黒の懐刀
    誠堂 匠(ka2876
    人間(蒼)|25才|男性|疾影士
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ヴァルナ=エリゴス(ka2651
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
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2015/07/28 08:08:27
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静架(ka0387
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最終発言
2015/08/11 18:29:58
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/24 20:44:14