ディスカード・セレナーデ

マスター:大林さゆる

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~6人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/08/16 07:30
完成日
2015/08/22 02:33

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 私は、欲する。

『僕は、自分自身を捨てた』

 さよなら。

『さよなら』

 私は、望む。

『この世界は、誰も僕のことは知らないから』

 安心なさい。

『どういうこと?』

 貴方の願いは、きっと叶うわ。

『願いなんて、無いよ』

 なら、私が見つけてあげる。

 だから、貴方は何もしなくても良いの……。



 港湾都市「ポルトワール」。
 その近郊に、小さな漁村があった。
「奴らめ、また出て来たな」
 村人たちは漁師道具を片手に、海からやってくる海賊たちを待ち構えていた。
 波の音が響く中、船がゆっくりと漁村に近づいてくる。
 緊張しながら、身構える村人達。
 海賊たちは何やら叫んでいたが、波の音でかき消された。
 突如、轟音のような水飛沫が上り、海の底から巨大なタコ…グレート・オクトパスが2匹、姿を現した。水撃砲を放ったかと思うと、瞬く間に海賊船を破壊し、波に揉まれるがごとく沈めていく。
 大タコはさらに水撃砲で村を襲撃し始めた。
「あれは……ただのタコではない。雑魔だ!」
 海賊が相手ならばまだしも、さすがに雑魔では一般人の村人たちでは倒せない。
 ふと気が付けば、水面から青黒い鱗で覆われた半漁人が数匹ほど現れ、村人たちに狙いを定めて、弓矢を放つ。
 悲鳴があちらこちらから響き、我が子を助けるために身体を張って庇う母親がいた。
「お母さん!」
 子供の呼び声も空しく、母親は子供が無事だと分かると、安堵したような優しい表情で息絶えた。
「おのれっ」
 村の男たちも弓で応戦するが、不気味な形相をした半漁人たちは、追い打ちをかけるように弓矢で攻撃をしかけてきた。
 敵の攻撃で、数名の村人が犠牲になり、船に乗っていた海賊たちは全滅。
 グレート・オクトパスは水中にいる限り、水撃砲を無制限に使うことができるのだ。
 2匹の大タコは巨大な頭部が日の光で生々しく照らされ、複数の脚は海中でユラユラと蠢いていた。
 海に近い家々は、大タコの攻撃で破壊され、生き残った村人は陸の方へと避難することにした。
 だが、半漁人たちは陸に上がり、村人たちを追いかけて、本能的に弓矢を引く。
 恐怖のあまり、泣き叫ぶ子供たちの手を引きながら、父母たちは避難所への道を急いだ。
 このままでは、村人たちは全滅してしまうだろう。
 母を亡くした子供は必死に立ち上がり、助けを求めた。
「誰か……誰か、助けて!」
 その叫びに気がついた者は、果たして……?

リプレイ本文

 小さな漁村に辿り着くと、海岸にはグレート・オクトパスが2匹、水撃砲を放ち、村人やハンターたちを威嚇していた。
「さあ、かかってこい!」
 ザレム・アズール(ka0878)は敵の気を引くため叫ぶと、魔導二輪「龍雲」のエンジン音を響かせ、バイクから飛び降りた。
 ある程度の社会性を持つ半漁人ならば、リーダー格のモノがいるかもしれない。
 そう思いついたザレムは、半漁人たちの動向に目を付けたのだ。
 見れば、何を言っているのかは不明ではあったが、他の半漁人たちに指示を出しているモノが一匹いることに気が付いた。
「おそらく、あいつが……」
 まだ確信できなかったが、ザレムは壊れかけた家の陰から敵を挑発するため、魔導拳銃「ペンタグラム」で攻撃をしかけた。
 銃声で漁村に残っていた半漁人が3匹、ザレムの居る位置に向かってくる。その隙にキアーラ(ka5327)が逃げ遅れた村人たちを避難所へと誘導する。
「6人は、いたけど……他の人たちは……どこ?」
 情報によれば逃げ遅れた者は11人だが、5人の行方はまだ分からなかった。
 オクトパスの水撃砲が海岸から放たれる度に、凄まじい波の怒涛が響き渡る。
 臆することもなく、柊 真司(ka0705)は避難所から漁村までの道程を試作魔導バイク「ナグルファル」に乗ったまま、半漁人の群れに飛び込んでいく。真司は敵の矢を全て回避すると、次の攻撃で水中用アサルトライフルP5を巧みに構え、半漁人を仕留めていく。
「エヴァンス、両サイドから攻めるぜ」
「道端には村人はいないようだが、慎重に…といきたいところだが、派手にかき乱してやるか」
 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)も『チャージング』の勢いで魔導バイク「グローサーベーア」を走らせ、敵に接近した刹那、グレートソード「テンペスト」を振りかざし『渾身撃』を叩き込む。その威力で半漁人は頭から一刀両断され、奇声を上げて消滅していった。
「こちら柊、道中の半漁人は4匹倒せたが、逃げ遅れた者が5人見つかっていないそうだ」
 真司はザレムから連絡を受けて、魔導短伝話で高良(ka3986)へと報告。
「了解。こちら高良、避難所付近にて半漁人を2匹発見した。どうやら村人を追いかけているようだ。こっちは俺が倒す」
「任せたぜ。俺たちはこのまま漁村へ行く」
 幸運を祈ると告げ、目的地までバイクを走らせる真司とエヴァンス。
 避難所の近くにいた高良は『メイスファイティング』で全身を活性化させた。このスキルは棍、鞭、盾のいずれか一つを持つことが条件だ。ロッドを持っていた高良はスキルを発動させ、半漁人に攻撃をしかけると飛沫のごとく消え去った。
 もう一匹の半漁人は仲間が倒されて消滅しても無関心で、ひたすら村人たちを追い回していた。
「こいつらには仲間意識がないのか? それとも、本能のみで動いているだけなのか……」
 高良は人々を助けるため、ユナイテッド・ドライブ・ソードを2つの剣に取り外して、二刀流で半漁人を斬り付けた。互いに接近していたせいか、半漁人は弓矢を使わず、両手を掲げて高良に襲い掛かってきた。
「村人たちは必ず守る……」
 意思の強い眼差しで高良は敵を睨み据え、受けで払いのけた。
 続いて高良が攻撃をしかけるが、それが止めとなった。高良の剣に突き刺された半漁人は生命力がなくなると、海風に舞うように消えていった。



 ミオレスカ(ka3496)は漁村から避難所へと続く道を戦馬に乗って進んでいたが、眼前にいる半漁人を正確に狙うため、馬から降り、ボウ「レッドコメット」を構えて矢を放った。その矢は半漁人の胴体に当たり、衝撃で敵が消えるほどだった。命中率を優先したことで、通常攻撃でもかなりのダメージを与えることができたのだ。
「ん? エヴァンスさんのバイク音?」
 ふと前方を見遣ると、エヴァンスと真司がバイクを走らせて向ってきていた。
 それだけではない。半漁人がハンターたちに挟まれるような場所で何故か立ち往生していた。
「あの半漁人、何やってるの、かな」
 村人を連れてキアーラは立ち止り、『防御障壁』を張って防衛に徹した。
「……私が、撃ち倒します」
 ミオレスカは中間地点で待機し、味方を支援するため、宣言通りに半漁人を『高加速射撃』で貫いた。
 そして、少し離れた場所にいる真司に魔導短伝話で連絡を入れた。
「こちらミオです。逃げ遅れた村人6名は、キアーラさんが避難誘導しています」
「こちら柊、さきほど高良から連絡が入った。残りの5人を保護して、避難所へ行ったそうだ」
「これで11人全員、無事……良かったです。私は漁村の海岸に向いますね」
 そう告げた後、ミオレスカは戦馬に騎乗し、オクトパス退治へと向った。
「それじゃ、村人の皆さん。わたしと、一緒に……避難所へ、行きましょう」
 キアーラは遠慮がちに言うが、彼女には「ある声」が聴こえた。
『キシシ、雑魔の半漁人が消えた……消えた! あははっはー、ほけー!』
 魔導機械「くまんてぃーぬ」……黒いクマのぬいぐるみ「グレゴリー」がそう言っているようにキアーラには思えた。
 その思念はキアーラにしか聞こえない。
 村人たちは、可愛らしいクマのぬいぐるみを持ったキアーラの後を追って、避難所にて家族と再会することができた。
 


 少し時間が遡る。
 ザレムは『ムーバブルシールド』で迫り来る半漁人の矢を回避すると、ユー・ボウで右端にいた半漁人の頭を射抜いた。
 リーダーの半漁人はザレムが武器を持ち変えたことに気付いて、間合いを取り始めた。もう一匹の半漁人は前衛に立ち、弓矢を構える。またもや矢が放たれるが、ザレムはリーダーに目星を付けながら、回避。
「貴様がリーダーだな!」
 ザレムが『ジェットブーツ』による噴射でジャンプすると、リーダーに狙いを付けて近距離から銃を放った。
 頭部が飛び散り、その反動で半漁人のリーダーは倒れ込むように消滅していった。
 先にリーダーを倒したことで、半漁人たちは指示が分からなくなり、バラバラに動いていたのだ。
 避難所の近くに半漁人が出没していたのも、リーダーがいなくなったことで、指揮が乱れていたためだ。
「これで、半漁人たちもリーダーを失って、統制が取れなくなるだろう」
 ザレムの読みは的中した。
 しばらくすると、ミオレスカとエヴァンス、真司がザレムと合流した。
「そうか。逃げ遅れた者は全員、避難所へ行くことができたか」
 ザレムは真司から話を聞いて、そう告げた。
「半漁人がバラバラに動いていたのは、ザレムが先にリーダーを倒していたおかげだな」
 真司の言葉に、エヴァンスが頷く。
「雑魔が出没するのが日常茶飯事でも、助けを求めている声があれば駆けつけるのが俺達ハンターの役目でもあるからな。これでタコ退治に専念できる。高良とキアーラが漁村に戻ってきたら、一斉攻撃だ」
「タコは水中にいる方が有利のようだからな。キアーラに何やら策があるようだから、しばらく敵の動向を探っていよう」
 真司がそう言うと、ザレムが応えた。
「射程距離内までタコがいれば、俺にも打つ手はある。なんとか陸の方へ引きずり出すか」
「私も弓で応戦しますね。半漁人は退治できましたから、残りの力を全て使う覚悟です」
 少し照れたように言うミオレスカ。覚悟と口に出して言うと、何故か心が熱くなった。
「ミオレスカ、頼りにしてるぜ」
 ザレムは仲間の心強い姿勢に、己もまた身を引き締めた。



 ハンター全員が、漁村から少し離れた海岸に集った。
 真司の提案で、漁村に被害が出ない場所にしたのだ。
 グレート・オクトパスは海中に揺られながら、右と左に分かれて、ハンターたち目掛けて水撃砲を放った。
 だが、オクトパスの攻撃は射程外から行われているため、ハンターたちには当たらない。
「あれだけでかいと、ホラー小説の怪物みたいだぜ」
 真司の呟きに、高良が言った。
「確かにな。海中にいるオクトパスは、意外と賢いのかもしれない……わざと陸から離れて攻撃を繰り返しているようにも感じる」
「だとしたら、こちらから遠距離攻撃をしかけるか」
 ザレムは弓で右にいるタコの目に狙いを定めて矢を放つと、見事に命中して突き刺さった。視界を奪われたタコはダメージを受けたせいか、体勢を崩して、そのまま陸の方へと流されていった。
 もう一匹のタコが、波に流されていくタコを追うように海岸へ接近してきた。
 だが、剣で攻撃するには距離が足りない。もう少し引き付けてから……ハンターたちは身構え、足並みを揃える。
 巨大なタコは狂気に満ちた勢いで、怒りの水撃砲を繰り出した。
「?!」
 凄まじい水の砲撃が放たれると、高良とキアーラは敵の攻撃を浴びてしまい、水圧によってダメージを受けてしまった。
「うう……ボクの、こと…」
 キアーラは覚醒して、その表情は自信に溢れていた。
「上等だね! これで暑さも吹き飛んだよ」
「……ここで引き返す訳にはいかない」
 高良も怪我をしていたが、それで怯む男ではない。治癒のスキルも整っている。
「俺は、しばらく治癒に専念する」
「私たちがオクトパスを引きつけますね。そのうちに」
 ミオレスカは弓を構えると『レイターコールドショット』で左にいるタコに冷気を纏った矢を放った。
 水属性の攻撃ではあったが、矢に頭部を撃ち抜かれたタコは冷気で身動きが取れなくなり、海岸に打ち寄せられていた。もう一匹のタコは、ザレムの弓から放たれた矢が脚に突き刺さり、そのまま砂浜に一本の足が叩きつけられた。
「よし、今だ!」
 真司は『ジェットブーツ』で砂浜にいるタコに素早く接近すると、『エレクトリックショック』による電撃を解き放った。震撼するがごとくタコの身体が麻痺して、その場で行動不能となった。
「陸に上がったタコとは言え、油断は禁物だ!」
 エヴァンスはバイクを走らせ、砂埃が舞う中、『チャージング』からの『渾身撃』をタコの頭部に叩き込んだ。弾け飛ぶように割れたかと思うと、オクトパスはサラサラと砂のように散っていった。
 仲間たちのおかげで、高良はキアーラに『ヒール』を施すことができた。見る見るうちにキアーラは回復して、体勢を整えた。
「見てなさい。とっておきの技、見せてあげるからね!」
 キアーラは『絡繰小熊の悪ふざけ』を駆使して掌から電撃を放った。
『キシシ、やるじゃーん!』
 灰色の電光が迸り、海岸でジタバタしていたタコに命中……完全に敵は行動不能になった。
 無理もない。さきほどミオレスカの放った矢が突き刺さり、今度は電撃を喰らったのだ。
「これで逃げられないからな」
 ザレムは弓で、さらにタコの足に矢を突き刺し、海へと移動できないように敵の動向に注意を払っていた。
「こいつで決めてやるぜ、タコ野郎!」
 真司の技が炸裂…『超重練成』で巨大化させた試作光斬刀「MURASAMEブレイド」がタコの頭部を叩き割り、砕け散っていく。矢で止められた足だけが残っていたが、高良が剣で切り裂くと、その場から消滅して、オクトパスの姿は跡形も無くなっていた。
「……やれやれ、しばらくタコは食べたくないな」
 高良は退治した後、ふと呟いていた。



 念の為、他にも半漁人が漁村に潜んでいないかと、高良は仲間たちと共に探し回ってみたが、気配はなく、雑魔も見当たらない。
『キシシ、奴らめ、恐れ入ったようだね。強いお兄さん、お姉さんがいるから、へっちゃらだ』
 黒いクマのぬいぐるみ「グレゴリー」が、そう自分に話しかけているようにキアーラには感じた。
「そう…だね。村人たちを助けること、できたから……うれしかった…よ」
 キアーラはグレゴリーを抱きかかえ、一人で海を眺めていた。どうやら普段通りに戻っていた。
 グレゴリーの気持ちはキアーラの妄想であり、他の者には彼女の独り言であった。
「どうやら、全て倒せたようだな」
 高良が言うと、ザレムが気になっていたことを皆に告げた。
「ヤツらは何故、村を襲ったんだろうな?」
「こんなことは言いたくないが、『餌』が欲しくて、偶然通りかかった村を襲った可能性もある」
 エヴァンスはどこか、哀しそうな瞳をしていた。
「本能ってヤツは恐ろしい。人間的な理性がないからな。ただ欲するままに、食べたいものを食べる……ただ当り前のことが、時として恐怖に繋がることもある……これからも、そんな悲劇が繰り返されるだろうが、俺は絶対に見捨てないぜ」
 そう言うエヴァンスの眼差しは、怒りにも似た炎が見え隠れしていた。
 戦士として、ハンターとして、今後の行く末を案じるエヴァンスの姿に、真司は自分でも不思議なほど、微かに武者震いをしていた。
「……雑魔はまだ、この世界に蔓延っているからな。ヤツらが一般人を『餌』として狙うなら、容赦はしないぜ」
「私も、です」
 ミオレスカは自然と拳を握りしめていた。
 この感情を、何と呼ぶのだろうか……。
 様々な想いが、ミオレスカの脳裏に駆け巡っていた。

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MVP一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズールka0878

重体一覧

参加者一覧

  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士

  • 高良(ka3986
    人間(蒼)|17才|男性|聖導士
  • グレゴリーの人形術師
    キアーラ(ka5327
    人間(蒼)|14才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/13 10:35:23
アイコン 相談
高良(ka3986
人間(リアルブルー)|17才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/08/15 11:15:21